「S」と一致するもの

My Bloody Valentine - ele-king

 じつに22年ぶりの最新作『mbv』をリリースしたマイ・ブラッディ・ヴァレンタイン(以下、マイブラ)。08~09年の「再始動ツアー」以来となる大規模なライヴ・サーキットを、アジアを皮切りにおよそ1年かけておこなってきた彼らが、その締めくくりの公演を11月11日(月)、12日(火)とニューヨークでおこなった。このライヴを終えたらすぐ、アイルランドの新居に設立したプライヴェート・スタジオにこもり、ニューEPのレコーディングに入る予定だと話してくれたケヴィン・シールズ(ヴォーカル&ギター)。「次のライヴは、来年の夏頃やりたいな」とも言ってたが、常人とは時間感覚が著しく違う彼のこと、この機会を逃したらしばらくライヴは観られないのではないか、ひょっとしたらこれが最後のチャンス……? などと考えているうちにいても立ってもいられなくなり、気づけばニューヨークまで来ていた。
 会場は両日とも、マンハッタンの中央に位置する〈ハマースタイン・ボールルーム(Hammerstein Ballroom)〉。2年前にポーティスヘッドの単独公演を観た場所だ。オープニング・アクトは、初日がオーストラリアのシンガーソングライター、アダム・ハーディング率いるダム・ナンバーズで(おそらくダイナソーJr.繋がり)、最終日はニューヨーク出身のバンド、ダイヴが務めた。地元の若手バンドが出るとあってか、客層は最終日のほうが圧倒的に若く、フロアにはアンドリュー・ヴァンウィンガーデン(MGMT)の姿もあった。  オープニング・アクトが終わると、BP.ファロン(ジャーナリスト/写真家)によるDJタイム。ドキュメンタリー映画『アップサイド・ダウン:クリエイションレコーズ・ヒストリー』に語り部として登場していた彼のDJは、とにかく大ネタの連発。T・レックスやストゥージズ、セックス・ピストルズの名曲を惜しげもなくスピンしていく。ニューヨークは、少なくとも筆者の行く先々ではルー・リード追悼一色という感じだったが、ファロンがヴェルヴェット・アンダーグラウンド“ヴィーナス・イン・ファーズ”をかけると、フロアからはひときわ大きな歓声が上がっていた。  ビートルズの“オール・ユー・ニード・イズ・ラヴ”が大音量で流れ出すと、客電が徐々に暗くなっていくなか、あちこちからシンガロングが響きわたる。最新作を「“愛”に包まれたアルバム」と公言していたマイブラと、そのファンに対するファロンからの心憎いプレゼントだ。
 21時を少し過ぎた頃、デビー・グッギ(ベース)、コルム・オコーサク(ドラム)、ケヴィン、ビリンダ・ブッチャー(ヴォーカル、ギター)の順でステージに登場。コルムとケヴィンはアコギを抱え、デビーはエレキギターをセッティング、ビリンダはキーボードの前に立つ。東京国際フォーラムと同じく、名曲“サムタイムズ”でライヴはスタートした。続いてサポート・メンバーのジェーン・マルコ(ギター、キーボード、コーラス)が加わり、通常の楽器編成に戻って“アイ・オンリー・セッド”“ホエン・ユー・スリープ”と『ラヴレス』からのナンバーを披露。ジェーン加入前の彼らは、シンセの印象的なシーケンス・フレーズをサンプリング音源で再現していたが、これをジェーンに弾かせることによって曲のテンポから完全に自由になった。ここぞとばかりにコルムがスピードを上げ、デビーのベースがグイグイとドライヴする“ホエン・ユー・スリープ”は、心拍数が跳ね上がるくらいカッコいい。マイブラのライヴの醍醐味は、なにもケヴィンの爆音ギターや、“ユー・メイド・ミー・リアライズ”中盤のノイズ・ビット(10分を超えるフィードバック・ノイズ)だけじゃない。この、鉄壁のリズム隊による唯一無二のグルーヴにもあるのだ。他にも、「叩き終わった途端に絶命してしまうのではないか?」と心配になるほど渾身の力を振り絞るコルムのドラミングが印象的な“ナッシング・マッチ・トゥー・ルーズ”、うねるようなデビーのベースラインが腰を揺さぶる“カム・イン・アローブ”、刹那的なケヴィンのギター・ソロに聴くたび身震いさせられる“ユー・ネヴァー・シュッド”など、毎度お馴染みのセットリストながら何度観ても鳥肌が立つ。
 最新作『mbv』からは、国際フォーラムと同じく“ニュー・ユー”“オンリー・トゥモロー”“フー・シーズ・ユー”そして“ワンダー・2”を演奏。変則的なブレイクが挿入される“ニュー・ユー”は、日本公演では毎回ミスしてヒヤヒヤものだったが、今回は無事に完奏して一安心(シロウトか)。ビリンダとデビー、そしてジェーンも加わった重層的なコーラス・パートは見どころのひとつだ。“フー・シーズ・ユー”は、銀河系をイメージしたスクリーンをバックにケヴィンとビリンダがユニゾン・ヴォーカル。ビリンダはケヴィンのギター・ソロ・パートもスキャットでユニゾンしていたのが印象的だった。ヒプノティックな“トゥー・ヒア・ノウズ・ホエン”に続いて演奏された“ワンダー・2”は、メンバー全員がエレキギターをプレイするという変則的なフォーメーション。E-Bow(エレキギターの弦に当てて、電気的にフィードバックを発生させるエフェクター)を弦の上で小刻みに揺らし、高音フレーズで宙を切り裂くケヴィン。「トレモロアーム(ギターのトレモロバーを掴んだままギターをストロークし、音色に“ゆらぎ”を与える奏法)」に続いて編み出した彼のこの奏法は、来日時のインタヴューによれば、“イン・アナザー・ウェイ”など『mbv』の他の曲でも多用されたそうだ。  ここからは、早くも終盤戦。“スゥーン”“フィード・ミー・ウィズ・ユア・キス”“ユー・メイド・ミー・リアライズ”と畳み掛けていく。国際フォーラムでは、“スゥーン”に余計なキック音を足していたのが気になって仕方なかったが、今回それは改善されていた。2日めは撮影をしながらステージを観ていたのだが、特にサプライズ的なこともなく、セットリストから何からほとんどいっしょ。ただ、最終日ということで多少は開放的な気分になっていたのか、ラスト2曲の前に珍しくコルムとビリンダでMCをはじめたのにはびっくり。また、“ユー・メイド・ミー・リアライズ”のノイズビットのときにステージ袖へと回ってみたら、フランス人の女性PAエンジニアとローディーがかたくハグし合っていたり、ケヴィンを担当する天才ギター・テクがコブシを振り上げて大声で叫んでいたり、ちょっとしたお祭り騒ぎになっていた。こんな凄まじい爆音に包まれながら祝杯をあげるなんて、いかにもマイブラのクルーらしいなあと思っていたら、少しだけウルッときてしまった。
 終演後、楽屋にはパティ・スミスの姿が。「『ラヴレス』こそわたしの人生を変えた一枚」と公言する彼女とケヴィンは、05年と06年にロンドンの〈クイーン・エリザベス・ホール〉にて即興ライヴをおこなっている(2枚組CD『コーラル・シー』として08年にリリースされた)。今年はじめの韓国公演で再会したときには、12年10月にニューヨークを襲ったハリケーン「サンディ」の被災地への支援活動についてふたりは話し合ったそうだ。そんなふたりが並んでソファに座っている様子は、まるで映画のワンシーンを観ているようだった。  さて、大阪、東京、メルボルン、グラスゴー、マンチェスター、ロンドン、バルセロナ、苗場、国際フォーラムそしてニューヨークと、追いかけ続けたマイブラのライヴも、これでしばらくは見納めである。冒頭で紹介したケヴィンの計画どおり、新居でのレコーディングが無事にスタートし、来夏には再びライヴをおこなうかどうかは神のみぞ知るところ。「ケヴィン時間」に過剰な期待もせず絶望もせず、気長に待ち続けることにしよう。

interview with Kindan no Tasuketsu - ele-king


禁断の多数決
アラビアの禁断の多数決

AWDR/LR2

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 2011年。古今東西ありとあらゆる音源が一並びに混濁する景色のなかで、彼らは「透明感」と歌った。

 禁断の多数決、その名は、フロンティア・ラインが複雑に歪んだシーンにとても鮮やかな印象を残した。アニマル・コレクティヴ譲りのサイケデリア(ほうのきは日本のエイヴィ・テアだ)、一大気運であったシンセ・ポップ、ひたひたと押し寄せるニューエイジ・リヴァイヴァル・モード――当時もっとも影響力のあった音楽的トピックを、ドリーミーかつエクスペリメンタルに巻き込み、バンド名からもうかがえるようなノイジーな批評性を漂わせ、またリスナーとしての喜びも溢れさせ、日本のポップスとしてもしっかり着地する、誰もが気になる(けれどもいまひとつ謎の)バンドとして。

筆者はEPにもなった“透明感”にビリビリときていた。世の中はとうに透明な場所ではなかったので、透明には「感」をつけなければならなかった。「感」をつけるフィーリングが、そのフェイクな味わいのシンセ・ポップからよくつたわってきた。いまこの世界にあるのは、透明によく似た、透明の偽物だけ……。

かといって、彼らの音楽はドリーミーで、なにか得体のしれないエネルギーと音楽的記憶を宿していて、ニヒルや偽悪のそぶりは感じられない。むしろその逆であるところにリアリティがある。本物の透明がない以上、そのことが「本当」になる……本物がないことが本当になっている時代を、アルカイック・スマイルで肯定しているような彼らの音のたたずまいに、筆者はとても親近感を抱いた。その頃、世間は『けいおん!』旋風のただなかで、筆者はあの素晴らしいアニメ版が宿している、抜けるような透明「感」にも、同じようなことを感じていた。

それから2年が経って、彼らはいま旅をしている。セカンド・フル『アラビアの禁断の多数決』では、やっぱりどこかフェイクな感触を残す旅が繰り広げられていて、奇妙に実体のない国名や地名がたくさん散りばめられているのが特徴だ。彼らの旅は「現地」にあるのではなく、『世界の車窓から』(テレビ朝日)の現地「感」にある。本物に触れられない切なさが、禁断の多数決の強度である。それは音を磨き、無二の個性を生み出している。CDケースの中敷きに印刷されたシノザキサトシによる短編で、好奇心旺盛なコロンブ・ハッチャーマンが「なんかくれ」とものをねだるのも、ほうのきがピーター・ゲイブリエル(過激な仮装)をリスペクトすることも、「本物」に対する両義的な希求感の表れだということができるかもしれない。

 シノザキの短編はこのアルバムのアート・ワークのコアをなすような内容で、ある砂漠の村が、そこに突如現れた「浮遊人」たちの存在によってちょっとした変化を迎える顛末を描いている(『アラビアのロレンス』が下敷きになっている)。が、変化といっても決定的なことは何も起こらず、最後は砂漠がめくれあがって、その下からまた砂漠が出てくるという、どこか閉塞的なクライマックスが、バカバカしいタッチで展開されることになる。そのとき空には「リバースター」なる謎の物体が浮かんで妙なる音楽を奏でていて、砂漠がめくれるきっかけになったのは、くだんのハッチャーマンによる「なんかくれ」発言だ。砂漠がめくれてもまた砂漠。「なんか」はいつまでも手に入ることはない。ハッチャーマンは物乞いをつづけるだろうし、しかし「なんか」が手に入らなくても塞いだり暗くなったりすることなどなにもない……。

 おそらくこのアルバムで鳴らされている音楽が、このとき「リバースター」から流れていた音楽だ。俗物として描かれる元宗教家の床屋は、その体験を「そりゃ驚いたよー、(中略)こんなことを言ってもわかんないと思うけどさ、実物のリバースターを見たら、そんな気難しい顔はしないと思うなー」と語る。筆者はこのくだりが好きなのだけれども、『アラビアの禁断の多数決』は、実際、それと同じような感じで、気難しい顔になって向かい合うものではない。砂漠の下から砂漠が出てくる世界で、それをそのままに、心地よく聴けばいいと思う。

この短編はいいライナーノーツかもしれない。インタヴューの時点でこのテキストのことは知らなかったが、話をきいていて、筆者には禁断の多数決についてのいろんなことが、ほぼこのテキストに沿うような内容で、すーっと氷解していくように感じられた。

目次
音楽雑誌の記憶
なぜか3.11以降……
偽物談、地名談。
ガブリエル世代のポップの裏表
禁断の組織論!
日本脱出

音楽雑誌の記憶

ほうのきさんって、『スヌーザー』とか読んでました?

ほうのき:年末の年間ベスト号には大変お世話になりました。

リアルですね(笑)。なんというか、ひとりのリスナーとしてのほうのきさんにすごく親近感がありまして。不特定多数の洋楽リスナーが、音専誌を通じて大きな話題を共有できていた、その最後期くらいの記憶をお持ちなんじゃないかなって思うんですよ。

ほうのき:なるほど。

「洋楽ファン」っていうカテゴリーがまだギリギリ生きていて、紙メディアが機能していて。しかもたぶんロック寄りで、ちょっと突っ込んだ情報や言葉が欲しくて、みたいな、自分と近い聴き方・読み方をされていたんじゃないかという勝手な妄想なんですが。

ほうのき:もともとはたくさん買っていたんです。たぶんいま言っていただいたのは合っていますね。他には『クッキー・シーン』とか『アフター・アワーズ』とか。

そうそう! まさに。

ほうのき:『リミックス』、『ロッキング・オン』、『クロスビート』、『(ミュージック・)マガジン』とかも、年間ベストの号はなんでも全部、必ず買ってましたね。

よくわかりますよ。田舎のせいもありますけど、シーンってそんなふうに感じるものでした。

ほうのき:ちゃんと月々買ってたんですよ。それがいつのまにか買わなくなってしまって……。

ああ、なるほど……。

ほうのき:当時、僕も僕の友人もみんな音楽が詳しくて。レコード屋にもよく行っていたんです。みんな本当にマニアックでした。けれど、なぜだかどんどん掘らなくなっていったんです。

ああー、それは根深い。時代性の問題でしょうか。

ほうのき:僕は鈴木慶一が好きで。彼が、「“いまいい音楽がないよね”ってみんな言うけど、それって自分が掘ってないだけで、本当はあるんだよ」っていうようなことを言っていたんですよ。自分が古くなっているってことに気づいてないだけなんだ、って。それには感銘を受けました。Hi-Hi-Whoopeeって人いるじゃないですか。あ、明後日、ele-kingで何かやりますよね?

ああ、はい!  2.5Dさんで番組をやらせていただきます(2013.10.25「2.5D×ele-king 10代からのエレキング!」)。Hi-Hi-Whoopeeのハイハイさんにもご出演いただく予定ですよ。

ほうのき:僕、ハイハイさんのこと何かで知ってそれ以来ずっと見てるんですけど、最近は、ele-kingさんとかハイハイさんとか、あとはベタだけどPitchforkとか、そのあたりはなんとかいまでも追っています。

普通に恐縮ですけれども……。

ほうのき:このアルバム(『アラビアの禁断の多数決』)の制作があって大変だったということもありますけど、もっと言えば、3.11ですね。あのあたりからなんです。なにか追えなくなってきたのは。

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音楽雑誌の記憶
なぜか3.11以降……
偽物談、地名談。
ガブリエル世代のポップの裏表
禁断の組織論!
日本脱出

なぜか3.11以降……

ちょうど3.11から年末まで止まってたんです。その間はほぼ聴いてない。そのときまでの知識で作ったのが前のアルバム(『はじめにアイがあった』)です。

それまではさまざまな音楽雑誌やラジオ、レコード・ショップまでもう何もかも、ひととおり網羅していた自信はあったんですよ。音源をハードディスクに入れられるという喜びも覚えて、大量に入れていたんですね。それが、3.11以降やらなくなっちゃって……。

それは、不思議なきっかけですね。

ほうのき:はい。あの出来事があってファースト・アルバム(『はじめにアイがあった』)ができたんです。(東京から)富山に帰ったし。だからあのアルバムにはそのときまでに得たものが反映されているんです。

へえー。3.11以降、なぜか情報を細かく追うことをやめちゃったんですね?

ほうのき:そうなんです。僕、Tumblrが好きなんですね。あの頃Tumblrをばーって見てたら、なんだっけ、あのコンサルみたいな人……

篠崎:大前研一じゃない?

ええっ?

ほうのき:そうそう、大前研一が「人間、変わろうと思ってもそんなスグに変われるもんじゃない」みたいな感じのことを言ってたんですよ。人間が変わるには3つくらいしか方法がなくて、早起きすることと、付き合っている人間を変えることと、引っ越すことだ、みたいな(※)。僕もう、そうだな、ほんとだなと思って(笑)。

※「人間が変わる方法は3つしかない。ひとつ目は時間配分を変えること。ふたつ目は住む場所を変えること。3つ目は付き合う人を変えること。どれかひとつだけ選ぶとしたら、時間配分を変えることが最も効果的なのだ」(『時間とムダの科学』プレジデント社)

ははは! 啓発されちゃったんですか。

ほうのき:ははは! 僕、それまですごく中途半端に音楽やってたんですよ。3.11まではほんとに。だけどその後、本気でやろう! って思ったんです。それが3.11と結びつく理由がどっかにあったんですけど……なんか、思い出せないですね。

なるほど、でも3.11がきっかけで富山に戻られたということなんですね。

ほうのき:そうですね、3.11がきっかけで戻ったのと、あとは大前研一……。

(一同笑)

(笑)あ、なるほど、そのとき何かを変えたいって思ったんですね。それで、住むところを変えるっていう大前研一の言葉にも触発されて。

ほうのき:そうそう、ちょうどTumblrでその言葉が流れてきて。でも、変わりたいというのは前から思ってたんですよ。たまたまそのときにその話を知って、3つとも当てはまって、これ自分だ!ってなったっていうだけで。

ははあ。たしかに3.11っていうのは、陰に陽に、人々に変化のきっかけを与えるものとして働いた部分があるみたいですね。一見関係ないけど離婚した、とか。

ほうのき:ねえ?

はい。被害が出た出ないということと別のところで、人と人との関係とかムードを変えるタイミングだったりもしたわけですけれども……。それがほうのきさんの上に、音楽にまつわる変化として現れてきてもおかしくないですよね。

ほうのき:それで、その年の年末ですかね。僕、ele-kingさんのとかPitchforkだったりとか、いろんなところで年間ベストで挙げられている音源をほぼすべて落とした(ダウンロードした)んですよ。真面目な話、橋元さんとはかなり気が合うんです。

わー、そうなんですね。

ほうのき:はい。で、2011年の末にベスト音源を全部落としたあと、少しずつまた聴くようになったんですね。日々掘って、日々聴いて、っていうことはなくなりましたけど、まとめて聴くようにはなって。そしてそのときに、ドリーム・ポップとかチルウェイヴみたいなものがばーっと入ってきたんです。一気に。年間ベストのをまとめて聴くわけだから。それで、うわ、これおもしろい、と思って。

たしかに、2011年の末はドリーム・ポップ的なトピックが連続してました。 ※前号の特集が「シンセ・ポップふたたび」、前前号の特集が「現実逃避」

ほうのき:ちょうど3.11から年末まで止まってたんです。その間はほぼ聴いてない。そのときまでの知識で作ったのが前のアルバム(『はじめにアイがあった』)です。ララージとか、アンビエント系のものから、カフェ・デル・マーのコンピとかも好きで、そういうの全部入れようって思って作ったんですけど。で、それを作り終えた頃に年末号があって、おもしろかった。だから、1枚めはチルウェイヴとか意識しないで作ってたんですけど、出した後にみんなにけっこう「チルウェイヴ」って言われて、なんかそれがうれしくて。

へえ!

ほうのき:まとめて聴くのはいまも続いていて、正直Hi-Hi-Whoopeeさんとかの教えてくれるおもしろい音とかも全部保存してあるんですけど、全部聴けてない(笑)。フォルダにたまる一方で、いつか聴くつもりなんですけど、そのままなんです。たとえば、tofubeatsがいいって言っていて、Hi-Hi-Whoopeeもいいって言っていたらその場で聴きますけど……。

わかりますよ。たまる問題の病理はリアルなトピックですよね。しかし、3.11のお話はおもしろいです。どちらかというと政治性とも結びつきやすい話題ですし、下手をするとすごく型にはまった窮屈な議論にもなってしまうので、アーティストさんとかに振りにくい話題なんですけど、ほうのきさんのその、謎の影響と謎の空白時間は興味深いです。チルウェイヴがその空白の後に入り込んできたのは偶然ではないですよ。現実逃避ってことにポジティヴなマナーを与えた流れでしたから。後っていうか、本当は同機してたわけですしね。

ほうのき:ああ……、なるほど!

まあ、でもこういういわゆるバズワード的なものは、たまたまでっちあげられたものでもあるわけで、それが偶然3.11後のタイミングで音として興味深く自分のなかに入ってきただけなのかもしれないですけどね。

ほうのき:3.11に関して言えば、あれだけ大きなことだし、僕もそんなに好んで発言したいわけじゃなくて、自然と変化が起きたってことなんです。だからおっしゃるとおり、偶然なんです。

偽物談、地名談。

ブライアン・イーノは僕のなかでフェイク感なんです。ロバート・フリップは本物感。

前作の話ばっかりで恐縮ですけど、わたし“透明感”って言葉にビビッときたんですよね。「透明」じゃなくて「透明感」っていうところが、すっごく生きてきた時代を象徴的に切りとってるなって思いまして。偽物なんですよ、透明の。透明「感」だから。

ほうのき:ああ、そうですね(笑)。たしかに。

その偽物っていうところを素直に肯定する感性……。偽物ってことにちょっと屈折したカッコよさを感じていたりする感じじゃなくて、です。その偽物ばっかりになっている場所とか世の中を、とくに斜めから見ることなく、生まれたときからそうあるものとして肯定していく、楽しんでいくというか。そういう感覚がひとつ禁断のキャラクターというか特徴なんじゃないかなと思いました。 「偽物」とかってどうです? そういう感覚あります?

ほうのき:ありますね。ラウンジ・リザーズ。僕、ジョン・ルーリーがフェイク・ジャズって自分たちのことを言うのがすごく好きなんですよ。あと、サム・ライミ。『死霊のはらわた』とかも好きなんですけど、彼らの作った言葉に「フェイク・シェンプ」っていうのがあるんですよ。役名のない役のことをフェイク・シェンプと呼んだそうです。フェイクというのはなにか、好きなのかもしれません。よくわかりますね! 今度飲みにいきましょう。

わー!

ほうのき:フェイクと本物で必ず思い出すのがキング・クリムゾンがなんです。キング・クリムゾンになれない感。

キング・クリムゾンになれない! ……音楽的に? 存在として?

ほうのき:ギタリストに、「この曲、ロバート・フリップみたいに弾いて」っていつも言うんですけど、絶対にそうならないんで。でも、ならないなりに、ブライアン・イーノは褒めてくれるかなって。ブライアン・イーノは僕のなかでフェイク感なんです。ロバート・フリップは本物感。

(一同笑)

いや、何か伝わりましたよ。いまフェイクじゃなくてすごいなって思える人とかいますか?

ほうのき:あ、そうですね、うーん……

その、フェイクっていうのが、ほうのきさんのなかの倫理みたいなものなのか、あるいは趣味なのか。それともとくに意識してない部分なんですかね?

ほうのき:フェイクじゃないもの……。スカーレット・ヨハンソンが出ている新作で、こっちにはまだ来てないですけど、『アンダー・ザ・スキン』っていう映画。そのトレーラーがすごくて。ペンデレツキみたいな不協和音とか、新幹線がトンネル入った瞬間の「スヴォー!」っていう感じの音だけで構成されたトレーラーなんですよ。そういうのに鳥肌が立ちます。でもこれもフェイクかな……。あと、ちょっと関係ないかもしれないですけど、アニマル・コレクティヴは僕、本当に衝撃を受けて。

ああ、きた……

ほうのき:だいぶ衝撃でした。あの人たちはフェイクじゃないと思います。

フェイクやれないから、いまポルトガルとか行っちゃったのかもしれないですね。

ほうのき:ああ、パンダさんですか? 

あ、エイヴィー・テアのほうが好きでした?

ほうのき:僕、エイヴィー・テアが好きですね。両方好きですけど。

わたしもひとつの原点ですよ。それこそチルウェイヴ的なものの始原でもあると思いますし。けっこう直接的な意味で。

ほうのき:あ、僕もそう思います。

はい。それに、ロック寄りのシーンだと、彼らが出てくるまではそれこそロックンロール・リヴァイヴァルとかポストパンク・リヴァイヴァルとか、「リヴァイヴァル」っていう批評的な音ばっかりが溢れていたじゃないですか。そこへかなり素直に、サイケデリックっていうものをいまやるとこうなる、っていう超おっきな例をドーンと出してきたのがアニコレだと思うんですよ。

ほうのき:ああー。

そしてシーンはどんどんとドリーミーに、サイケデリックに。それまでストーンドなノイズを出してた人たちもニューエイジっぽくなっていったりして。みんなアンビエントになって。

ほうのき:メディテーションな感じになって。

そうですよ。ジャンル関係なく眠りのムードに突入して。

ほうのき:僕、2010年くらいに京都のメディテーションズってお店が大好きだったんですけど、まさかいま大人気なお店になるなんて思ってもみませんでした。

ははは!  駆け込み寺的な。何でも早いですよね。……ええと、フェイクの話に戻りますけど、これ、何なんですかね。これ、このアー写の。それこそアニコレ的というか、ちょっとあの頃のブルックリンの偽物みたいな感じじゃないですか!

篠崎:(ぼそっと)フェイクですね。

ほうのき:ははは! これちょっと、見てください。影もおかしいんですよ。

ああ、気づきませんでした!  だから(笑)、いまこれをやるとしたら超遅れてきたブルックリン主義者か、なんかわざと偽物をやっている人たちじゃないと理解できないというか。

(一同笑)

ほうのき:説明になっているかどうかわからないんですけど、『アラビアのロレンス』をやりたかったんですよ、まず。

ああー! そうか。

ほうのき:それで、まず砂漠を探そうと思って。そしたら千葉にあるっていうから、千葉なんですよ、これ。どこだっけ……

尾苗:館山。

ほうのき:ああ、そうだそうだ。ミケランジェロ・アントニオーニの『砂丘』って映画で、砂丘で何組ものカップルがスワッピングをしてるんですけど、それをやりたかったっていう。このコラージュは、写真を撮ってくれた江森(丈晃)さんがやってくれたんですけど。

ああ、そうなんですね。いろんな偶然も重なりつつ、でも基本は『アラビアのロレンス』だったと。ほんとにアラビアとは思いませんけどね。

ほうのき:そうですよね(笑)。

いえ、否定じゃなくてですね。今回、曲にいろんな世界の地名が出てくるじゃないですか。でも、どれもちょっとふざけた感じというか、生のその土地じゃなくて、やっぱりちょっとフェイクというか。電脳空間にしかないような、情報の断片みたいな感じで国とか土地名が使われてませんか?

ほうのき:あ、合ってます、合ってます。

ちょっと怪しげですよね。“勝手にマハラジャ”とかだって、シタールとか入れてもっとベタにインドっぽくしたってよかったわけじゃないですか。だけど、エレクトロ・マハラジャって感じの、言っといてそれほどインドでもないというアレンジで。そういうあたりのコンセプトについて訊きたくて。地名に何か狙いはあるんですか?

ほうのき:ああ、それはバックパッカー感を出したかったんです。バックパッカーに憧れていて。いや、憧れるってほどでもないんですけど。

ぜんぜん駄目じゃないですか。丘サーファーならぬ……

篠崎:丘パッカー。

丘パッカー(笑)。基本丘ですけどね。なんていうか、脳内パッカー?

ほうのき:ああ、そうだ。じぇじぇ。

出た(笑)。

ほうのき:まあ、詞も僕が書いてるんで、このときはバックパッカー感を出したかったんですね。

篠崎:“ワールズエンド”とかも出てきますよ。

ああ、そうか! 国の名前を列挙してますよね。

『世界の車窓から』。僕はテレビ局に電話かけてました。曲名を見落としちゃって。あれ、ちゃんと教えてくれたんですよ。

ほうのき:兼高かおるさんの世界旅行のとか好きで。ああいうのをやりたいというのもありました。バンドっていう括りであんまり考えていなくって、とにかくおもしろいことがしたかっただけで。その手段としての音楽なんですよ。で、ラッキーなことに富山出身者が4人集まっていて。

そこ、すごいとこですよね!

ほうのき:そうなんですよ……この話、関係ないか。

(一同笑)

ほうのき:バックパッカー感を出したいというのは、音の部分だけじゃないんですよ。基本的には、やっていること全部のなかにあって、それが音にも出たという感じです。

なるほど。でも、それなら『世界の車窓から』みたいな、イイ感じの音楽、もっとその土地のそれらしい雰囲気を出していくという選択肢もあったわけじゃないですか。

ほうのき:ああ、『世界の車窓から』も好きです! ハードディスクにためていた音源のなかには、あの番組で紹介されていた曲もたくさん入ってます。あれはけっこうマイナーな音楽が流れるんですよ。探せないのもけっこうありましたね。

あ、そうなんですね。篠崎さんも?

篠崎:メモったりする程度ですけどね。

ほうのき:僕はテレビ局に電話かけてました。見落としちゃって。ちゃんと教えてくれたんですよ。いまはネットで紹介されてますけど、昔は何時何分に流れたやつ何ですか? って電話で訊いたら、教えてくれたんです。

あはは、すごいですね! いや、でも、そういうもっともらしさとか本格へ向かわないじゃないですか、禁断の多数決は。そこがいいなと思って。いろんな知識があって、音の趣味も幅広いのに、モノホンなセッションをやりたい、本格的に民俗音楽をやりたい、みたいにはならないでしょう?

篠崎:まったくないんじゃない? そんな話、出たことがない。

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音楽雑誌の記憶
なぜか3.11以降……
偽物談、地名談。
ガブリエル世代のポップの裏表
禁断の組織論!
日本脱出

ガブリエル世代のポップの裏表

僕は爆笑問題の太田光が好きなんですけど、彼はアートでも何でも、世間一般に広がらなければ意味がないっていうようなことを言うんです。

あ、ジョー・ミークが好きな篠崎さん。……前作は存在自体が問題提起、みたいなところがあったようにも思うんですが、今回はもうちょっとポップスとしてのアルバムの厚みみたいなものも目指されている、もうちょっとリスナーに寄せた作品なのかなと思いました。

ほうのき:あ、そこはひとつ話があるんですよ。もともとこれは2枚組のものだったんですね。

え、そうなんですか? めちゃくちゃ曲数があったということはうかがっていますが。

ほうのき:今回出せなかったもう1枚の方は、メンバー内では通称「ピッチフォーク盤」と呼ばれているもので。

ええっ。そんなはっきりとした性格のあるものだったんですね。

ほうのき:ピッチフォーク盤じゃないほうがこれ(『アラビアの禁断の多数決』)なんです。通称ピッチフォーク盤は、コアなやつばかり集めていて。ジェイムス・ブレイク風からダーティ・プロジェクターズ風、アダルト・コンテンポラリー、ファンカデリックっぽいものまで、いろいろ入っています。かなり分けて作りましたね。

なるほど、ではこのアルバムはある意味では上澄み液というか、難解めなものを落としたかたちだと。

ほうのき:そうですね、振り分けたんです。ポップなのを集めちゃったんですね。

なるほどなあ。Tofubeatsさんとか、若いアーティストの方にわりと感じるんですけど、「ポップスっていうものをちゃんと考えよう」っていうところがありませんか?  そんな問いは放っておいて、天然で好きなものを作っていいはずなんですが、なにか「いかに僕らはポップを作るか」というようなことを詰めようとする。ほとんど倫理として内面化されているようにも思えます。そういう感覚への共感はありますか?

ほうのき:僕は爆笑問題の太田光が好きなんですけど、彼はアートでも何でも、世間一般に広がらなければ意味がないっていうようなことを言うんです。チャップリンが好きだそうなんですね。その意味では岡本太郎ですらまだ弱いって。だからポップっていうことをもっともっと超えたかった、それが今回のアルバムで、「ピッチフォーク盤」のほうはその反対をやりました。だから本当はふたつともいっぺんに出したかったんです。そうしたらスケジュールの関係で最初に作りはじめたポップな方だけ出た……。

なるほどなあ。もっと若い人たちには、ポップスというか、ポップス産業への懐疑みたいなものがわれわれ以上に強いんだろうなって感じるんです。それに比べれば、ほうのきさんの感覚はもうちょっと柔らかいのかなとは思います。逆襲を仕掛けてやるっていうようなモチヴェーションはないですよね?  そこまで意識的でなくポップスが好きだったりするのかなと。わたしは“くるくるスピン大会”とか好きですよ。“トゥナイト・トゥナイト”とか。そのへんアルバムの顔ではないのかもしれないですけど、素直にポップス好きが出ている部分なんじゃないですか?

ほうのき:そうですね。“くるくるスピン大会”は、20歳くらいのときに作ったものなんですよ。はました(まさし)が作ったオケに唄を乗せたものです。適当に多重録音していた頃の作品で、久々に聴いたら「けっこういいんじゃない?」って感じになって。バグルスっぽいかな。“トゥナイト・トゥナイト”もはましたから来た曲です。僕はマニアックなものが好きなんですけど、はましたはわりかし普通の音楽が好きで、だけど彼がある意味いちばん変かもしれないですね。

ははは!

ほうのき:僕ら保育園からいっしょなので。彼はフェニックスとか、ちょっと洒落たAORとかが好きなんです。それで、彼が送ってきた音に僕がいろいろ加えてやりとりしているとすごい変なものができる。バランスがちょっとおかしいんですよね。

へえー、はましたさん。

ほうのき:僕はあの頃、(ザ・)シャッグスみたいな音ばっかり録ってましたね。

ははは。“くるくるスピン大会”がシャッグスに直には結びつかないですけどね!

ほうのき:僕ひとりでやると全部シャッグスになります(笑)。

“踊れや踊れ”とかは、アラン・パーソンズとか10ccとか、ちょっとリッチに味付けされているような印象ですが、祭りのお囃子ってこんなところと相性がいいのかって、ちょっと新鮮でした。……ピーター・ガブリエルがお好きなんでしたっけ?  そこにつながっていくのかあ、って。

ほうのき:そうなんですよ。そこへの自負はありますね。ピーター・ガブ――あ、ピーター・バラカンさんが怒るので、ピーター・ゲイブリエルって言いますね。

あ、わたしもまよいます。じゃ、ゲイブリエルに統一しましょう(笑)。

ほうのき:はい(笑)。ピーター・ゲイブリエル、デヴィッド・バーンが好きなので、そのへんを目指したいというのはあるんです。でも、最近けっこう名前を聞くんですよね。セロの人がトーキングヘッズのオマージュみたいな曲を演ってたり、The 1975とかもピーター・ゲイブリエルがいちばん好きって言ってたように思うんですが、「あれ?  僕だけじゃないのか?」って(笑)。案外そういう若い人がけっこういるんですね。

バンド全体としても重要な部分なのでしょうか? 篠崎さんとかも?

篠崎:重要ですね。それを音にして、偶然性みたいなものも詰め込んでできたのが今回のアルバムです。

ほうのき:最終的に(尾苗)愛さん、ローラーガール、ブラジルの声が入って雰囲気が一気に変わるので、アルバムはおもしろいですね。化学反応というか。そこで一気に禁断の多数決になるんだなっていうところがあります。

いや、それはよくわかります。実際に替えがきかないというか、他の方だと禁断の多数決にならないですよね。でも、すごく平面的に「萌えヴォイス」ってタグづけされてしまうことはありませんか? 今作はもうすでにそんな段階を超えてますかね?

ほうのき:去年まで多かったのは、相対性理論との比較ですかね。

なるほど、それはありましたね。禁断は、要は洋楽じゃないですか。それがちゃんと日本の土壌のなかに、日本固有の表現でもって着地しているところが素晴らしいなと思います。いろんなポイントがありますけど、尾苗さんたちのヴォーカルが果たしているものも、その重要なひとつじゃないかって感じますね。

ほうのき:「よくわかんないけどいい」って言われるのはうれしいです。

篠崎:はっきり「いい」「悪い」っていう反応がないよね。そのへんは曖昧とした感じです。

ほうのき:批判があんまりないのが、ちょっと不安ですね。自分はどちらかというと、否定とかがなきゃだめなのかなって思う方なんですけど、いまのところすごく悪く言われることがあんまりない気がして。

言葉で簡単に言いにくいバンドかもしれません。

ほうのき:そうなのかもしれませんけど、大丈夫かなあって心配になったりはします。

そういう部分で、バンドの方向とかについての話し合いとかをしたりするんですか?

篠崎:いやー、全然ないですね。何かひとつのコンセプトがあって、そこを目指そうというようなこともないですし。

禁断の組織論!

メンバー募集をしていまして。チェ・ホンマンみたいな大きい人、それからダニー・デヴィートみたいな小さいおじさんと、サルバドール・ダリみたいなヒゲで長身の伯爵みたいなゲイのおじさん。そういう集団に近づきたい感じがありますね。

さて、話は変わりまして、禁断の組織論といいますか、みなさんというのがどういう集まりなのかということをお訊きしたいんですけれども。「ノマド」という言葉をわりと使っておられますよね。

ほうのき:はい(笑)。

組織と呼ぶにはもしかすると柔軟すぎるつながりなのかもしれませんが、どうなんでしょう、コアにあるのは富山という地元の縁?

ほうのき:そうですね……。自然に、ですかね。

東京で音楽活動やろう、ってみんなで一念発起して出てきたんですか?

ほうのき:いや、そういうことではなくて、こっちで出会ったりしています。はましたは保育園からですね。篠崎は大人になってからです。ほんとに自然に集まっていて。愛さんは●●の店員さんですね。

尾苗:ああ、はい。そうなんです。

ええっ!

ほうのき:普通に店員さんで、僕が客だったんです。

尾苗:でも、わたしも富山の出身ですよ。

えっ、それは富山のお店で出会ったってことですか?

尾苗:東京です。

めちゃくちゃ偶然、富山だったんですね。

尾苗:たまたまその日だけ、「自分を売り出せ」っていうことで、名札に出身地を書いていたんですよ。そしたら「富山県なんですか?」って声をかけられて。

ほうのき:そうなんです。かわいいなあーと思って。それで、ググって(笑)。

ははは!

ほうのき:ストーカーですよね。でも、そしたら偶然にも共通の友だちがいたんです。

尾苗:わたしはわたしでバンドにいたりもしたので、その声を聴いてもらって……っていう感じですね。

すごいですね。篠崎さんも偶然東京で出会った組ですか?

ほうのき:篠崎は、メンバーの弟とバンドをやっていたりしたつながりですね。

それもまた富山だったと。どちらですか?

篠崎:高岡です。

へえー。そういう、地名が結ぶ縁というものがあるのかもしれないですけど、この10年って、バンドっていうものの説得力がなくなってきた10年でもあったと思うんですね。これ、いろんなバンドの人に訊いている質問なんですけど。

ほうのき:ああー、なるほど。それはわかります。

インディ・ロック系のアーティストが、どんどんソロとかデュオ、もしくは……

ほうのき:アニマル・コレクティヴとかですよね。メンバーも必ずしも揃ってなくていい。

そうそう、そんな世界で、なんでわざわざ5人とか6人とかで関係を結んでいるのか。ひとりやふたりのほうがいろんな部分で面倒くさくないですよね。デュオやソロに存在感が生まれたのもそういうムードの高まりだったのかなと思うんですが、みなさんはどんな感じなんです?

ほうのき:『あまちゃん』にちょっと似てますかね。

出た。

ほうのき:『あまちゃん』は好きで、あと僕は『ツイン・ピークス』も好きなんです。登場人物が全員好きですね。出ている人たちも全員擬似家族っぽい感じがしませんか。あのふたつの作品のいいところは、登場人物全員を愛せるところというか。ひとりもいやなキャラがいなくって。ツイン・ピークスみたいな集団を作りたいっていう感じが昔からあります。

ああ、『ツイン・ピークス』なんですか。誰か死にますね。

ほうのき:死んでも生き返ってくるんですよ、篠崎さんは。

(一同笑)

あはは!

ほうのき:だから、「バンドやりたい」からはじまってないんですよ。劇団というか……。必ずしも劇団が好きなわけではないんですけどね。

なるほど。

ほうのき:いま、メンバー募集をしていまして。チェ・ホンマンみたいな大きい人、それからダニー・デヴィートみたいな小さいおじさんと、サルバドール・ダリみたいなヒゲで長身の伯爵みたいなゲイのおじさん。そういう集団に近づきたい感じがありますね。サーカス団というか。

なるほど、なるほど。映画に出てくる、ちょっと古めかしい旅の興行団みたいな。おふたりもいっしょですか? バンドという意識ではない?

篠崎:そうですね。

仲良しグループでもない?

篠崎:仲良しではないと思いますね(笑)。

ほうのき:ほんとよくわからないんですよ。

特殊ですね。でもそんなかたちでけっこう楽しく、長くいっしょにいられるんだったらおもしろいことですよね。

ほうのき:音楽好きなのは共通していると思うんですけど、6人が集まって音楽の話をすることはほとんどないですよね。

映画観たりする感じですか?

篠崎:いや、そんな仲良くないです(笑)。

ほうのき:昔はよく篠崎とふたりで飲んだりしましたけど、政治の話とかですね。

オブ・モントリオールとかは色が違いますけど、あれもちょっとしたサーカス集団みたいな感じがありますよね。

ほうのき:トーキング・ヘッズの『ストップ・メイキング・センス』っていう映画がありますけど、あれを観ていると、黒人のコーラスの女性サポートが居たり、黒人のギタリストとかキーボードもサポートだったりしますよね。僕のコアにはそういう、さまざまな人といっしょにやりたいという感じがあるんです。だから、必ずしも6人だけでライヴをしたいとかっていうこともないんです。

ひとりひとりが主役になるスピン・オフもありつつ、集まると禁断の多数決になる。

ほうのき:そうですね。

でも、ひとりやふたりだと「多数決」っていう名前ともちょっと違ってきますよね。多数決って、暴力的なものでもあるわけじゃないですか。それが嫌という人が1人いれば、1人には犠牲を強いるわけですから。民主的なんですけど、民主的ってこと自体が必ずしもひとりひとりに優しくないというか。禁断の多数決っていう名前には、そういうことへの問題提起があるなーというか、時代性があるなというか。わたしは初めて聞いたときビリビリっとしました。そういう意味でつけたんじゃないとしても。

ほうのき:僕にはその感覚はけっこうあります。

篠崎:僕はとても多数決に弱いんです。

ははっ! マイノリティなんですね。

篠崎:いつも負けるので、「本当に俺は間違っているのか?」っていうことをずーっと幼少の頃から感じてきたんですよね。そういう気持ちや会話の流れから(禁断の多数決というバンド名が)生まれた部分はあるのかもしれないですね。鍋のときとかに(笑)。

あはは!

ほうのき:しょっちゅう飲んでたんです。政治を語る友だちでした(笑)。あの頃なんであんなに政治の話が好きだったんだろう?

篠崎:転換期というか、ちょうど自民党が崩れていく時期だったりしたからね。

民主党政権が成立してからむしろ興味が引いていったみたいな。

ほうのき:そうかもしれないですね。

篠崎:こんなもんかという。

そして、フェイクな国の旅をはじめた(笑)?

ほうのき:ははは、そうかも! まとまった!

まとめるのも暴力ですけどね!  でも、とっ散らかっているようで芯があるバンドだというのはとてもよくわかりますよ。

ほうのき:醸し出しているつもりはないんですけどね。

しかし、多数決で必ず少数派になっちゃう人っていうのはおもしろいですね。禁断の場合、それが恨み節になってないじゃないですか。

篠崎:恨み節ですか。

そう、マイノリティが逆襲してやるぞって感じにはならないですよね。

篠崎:それはないですね。いじけるだけみたいな(笑)。

ほうのき:ルサンチマンがない。

篠崎:溜め込んだりしないですね。

それで必要以上に皮肉屋になったりとか。それも立派な表現のモチヴェーションなんですけどね。

ほうのき:わかります、わかります。

篠崎:僕らは決してマイノリティのほうが正しいっていうふうに思っているわけではないんですよね。

ほうのき:一見バンド名とは違っちゃうんですけど。

よくわかります。そこが禁断のねじれたところというか、素直なところというか。

日本脱出

ワールドカップとか、日本を応援しますね。めっちゃ応援して、負けると悔しいんですけど、これがナショナリズムかっていうとそういうものだとは思えない。

ほうのき:ある有名な音楽家の発言なんですけど、日本はもう脱出するしかないって。うまく説明できないけど、逃げるってポジティヴなことかもしれないとも思ったりもするんです。

へえー、そうなんですね! いま「逃げる発言」には勇気がいりますけどね。

ほうのき:逃げてるだけといえば、そうなんですけど、逃げてるわけでもないというか……。

わかります。日本に内在すること――tofubeatsさんのインタヴューがとてもよかったんですけど、彼には日本とかJポップ市場の内側からルールや仕組みを変えていってやろうというモチヴェーションを感じるんです。それに対して禁断はどこか外側にいるかもしれませんね。外在的というか。

ほうのき:ワールドカップとか、日本を応援しますね。めっちゃ応援して、負けると悔しいんですけど、これがナショナリズムかっていうとそういうものだとは思えない。もちろん土地とかに感謝の気持ちはあるんですけど。だからその音楽家の日本脱出っていうのは、何かとても重たい言葉だと感じるんです。うまく言えないですけど。

篠崎:曲に国の名前がよく出てくるっていうこととつながりがあると思いますけどね。日本というものにこだわっているわけではないということは、歌詞を見てもわかるはずだと思うので……。バックパッカーになりたいわけだしね。

曲には「おわら」からチンドン屋までフィーチャーしてますよね。それをひとつのトライバリズムだととらえれば、一時期のブルックリンにも似ているというか。日本の中だけど、日本の中の異次元、別の場所に向かう感じ。

ほうのき:ああー。あと、ベイルート好きなんです。ベイルートを日本でやるとしたらチンドン屋かなと思って。日本の文化を大切にしたいっていうのは常に念頭にあります。

郷土や歴史や神々みたいなものへの愛はあるわけですよね。じゃあ、今度は禁断の多数決のオカルト思想について訊いてみましょうか!

ほうのき:オカルト(笑)。ええ!?

篠崎:……宇宙とかなら(笑)。

ほうのき:でも、呪術とか、あるといえばあります。僕、ロッジを持ちたいんですよ。で、ホワイト・ロッジとかブルー・ロッジとかブラック・ロッジとか名前をつけて、そこで呪術をやりたいですね。

尾苗:ははは。

ほうのき:ロッジで、何か焚いて……

篠崎:何かキタ! みたいな(笑)。

ほうのき:「よしよし、曲にしよう」(笑)。

篠崎:「これこそが曲だ」(笑)。

まさに『キャンプファイア・ソング』じゃないですか。それがクラブとかじゃなくて、パーソナルな感じで営まれているというのもおもしろいですよ。さて、最近はどんなふうに音楽を聴いていますか?

篠崎:iTunesとかが便利なので、シャッフルして流しちゃってたりはするんですが、ちょっと久々にレコード聴こうと思ってかけていると音が全然ちがいますね。太いです。MP3の音に慣れすぎてて、忘れていました。なので最近はレコードをまた探すようになりました。

ほうのき:変なのばっかり買ってるね。レジェンダリー・スターダスト・カウボーイだっけ?とか。

どのへんで買ってるんですか?

篠崎:大きいところは(ディスク・)ユニオンとかしかないじゃないですか。あとはリサイクル・ショップにダンボールで置いてあるようなやつとか。そこでソノシートとかを買ってみたり、『(がんばれ!!)ロボコン』のお話レコードとか。ロボコンの考えているときの音がすごくいいというか……「ロボコン、いまから考えるねー」みたいなときにポコポコポコーって鳴っている音がかっこよかったりするんですよね。

ほうのき:あ、篠崎さんはアニコレでいうジオロジスト担当なんですよ。変な音は基本的に篠崎さん。

なるほど!  ネットでも変なものはいっぱい集められそうですが、何かフィジカルを探すこととのあいだに差があったりしますか?

篠崎:ありますね、やっぱり。過程があるかどうか、ということですかね。ゴミの山のなかから一枚見つけるときの喜び。

ネットも、まあ、ゴミの山から探す作業ではあるわけですが。

篠崎:思い入れは違ってくるかな、と思います。わざわざ電車に乗って、何もないかもしれないけど行く。そうすると聴き方も違ってくるような気がしますし。……ちょっとかっこつけて言ってしまったかもしれないですけど。

ほうのき:僕も、たとえばヴェイパーウェイヴとミューザックの違いについて考えてみたいですね。そこにいまの質問の答えになるものがあるような気もします。

The Field - ele-king

 白よりも黒、光よりも陰、そしてイエスよりもノー……。ザ・フィールドの新作である。
 これまで白(正確にはクリーム色だが)を貫いてきたアルバム・ジャケットを真っ黒にする。ただそれだけのことで何か劇的な変化を期待させること自体が、彼、アクセル・ウィルナーのはじめのプレゼンテーションである。そうして乗せられたリスナーはしかし、多くのひとが僕と同じように、アルバム1曲めの“ゼイ・ウォント・シー・ミー”を聴いてこう思うだろう……「えっ同じやん」。ビートは4つを打ち、シンセのフレーズが繰り返され、そこにシューゲイジングな味つけがされ、じょじょに、じょじょに楽曲に熱が帯びていく。幕開けとしてはもちろん最高にスリリングだが、しかし、これは紛れもなくこれまでもわたしたちが馴染んできたザ・フィールドである。いったい「劇的な変化」はどこに? と怪訝なまま、2曲め“ブラック・シー(黒海)”へ。ここでもまたビートは4つを刻み、シンセのフレーズが繰り返され、そこにシューゲイジングな味つけがされ、じょじょに、じょじょに楽曲が熱を帯びていく……これも、ザ・フィールドである。が、トラックが7分に差し掛かるころである。ビートが微妙に乱れ、それまでと別の不穏なリフが底のほうから静かに立ち上がってくる。ハットは16を刻み、吐息のサンプルが左右から飛んでくる。気がつけば、曲が始まった瞬間とはまったく異なる、ダークなダンス・トラックがそこに出現している……ここでようやくこう思うのだ。「こんなザ・フィールドは聴いたことがない」。つまりこういうことだ……ザ・フィールドの新作『キューピッズ・ヘッズ』のスタイルは、これまでと何も変わらない。が、同時に、「これまでと全然違う」。ここで、1曲めのタイトルの巧みさに気がつくのである……「やつらは俺がわからない」。

 これはアクセル・ウィルナーによる、「変化」に対する繊細なコメンタリーのようであり、ある種の批評的態度であるように思える。たとえばこんなインタヴューを、あなたは読んだことがないだろうか。Q:新作は前作とかなり印象が異なりますが、これはどういう理由によるものなのでしょうか? A:前作と同じことはやりたくなかったんだ。僕はほら、飽きっぽい性格だから、同じことは繰り返したくないんだよね。毎回違うことをやることが僕の挑戦なんだよ…………とか何とか。そしてこうしたものを読むたびに、「それが「同じこと」なんだよ」とつっこみたくはならないだろうか。わたしたちはそんなありきたりの、お決まりの「変化」を、日常的にじつにたくさん消化している。ザ・フィールドはそんなクリシェを周到に避けるようにして、じっくりと作品に向き合った人間にだけ届くような変身をここで見せているのだ。
 前作『ルーピング・ステイト・オブ・マインド(ループする精神状態)』はタイトルにもあるように、自らの音楽スタイルに自己言及するようなアルバムであった。そういう意味で、彼は自分の様式というものにつねに自覚的で、それを対象化し続けている。このアルバム全体で行っている繊細な変化とはそもそも、これまでの楽曲のなかで彼がつねに取り組んできたことでもあるだろう。同じフレーズをひたすら繰り返しながら、しかし何か決定的な違いを混ぜ込んでいくこと……。セカンド・アルバムのタイトル、『イエスタデイ&トゥデイ(昨日と今日)』はまさしく、そんな「わずかな、しかし決定的な違い」に言及するものであったろう。新作に戻れば、タイトル・トラック“キューピッズ・ヘッド”にしても、“ア・ガイデッド・ツアー”にしても大筋は変わらないが、ファースト『フロム・ヒア・ウィ・ゴー・サブライム(ここからわたしたちは絶頂へ)』でザ・フィールドの徴であり人気を集めた要素であった、高揚によるカタルシスは徹底して避けている。そして、本作でもっともチャレンジングなトラックが続く“ノー、ノー...”である。「ノーノーノーノーノーノー」というヴォイス・サンプルが乱れ飛び、ビートも乱れ、しかしあくまで構造としてはループしている。トラック中盤、奇妙に拍を刻みながら気分がずぶずぶと沈んでいくような展開は、間違いなくこれまでのザ・フィールドにはなかったものであり、また他でもなかなかお目にかかれないものだ。クロージング・トラックの“20セカンズ・オブ・アフェクション”の頃には、エクスタシーを迎えないまま酩酊し続けるザ・フィールドの新たな快楽に耳と身体が馴染んでいることに気づく。〈タイニー・ミックス・テープス〉がスタイルを「good sex」とする妙なレヴューを書いてしまうのも頷ける。

 前作のレヴューで僕は「反復が持つ可能性のより奥へと分け入ることに成功している」と書いたが、ウィルナーはなかば求道的にさらにその奥にここで進もうとしている。もはや、これは茶道とか華道とかで言う「道」に近い領域に突入しているようにすら思えるがしかし、これはあくまでダンスも含んだ快楽のあり方のひとつである。その、さらなる複雑な領域をフレーズの繰り返しとともにウィルナーは探り当てようとしている。ノーノーノーノーノーノーノーノーノー……

Liveミュージックのつくり方 - ele-king

 「Ableton Live」といえば、DTM用でありながらリアルタイムの操作性に優れた、ソフトウェアというより、触れれば音の鳴る弦楽器や打楽器のような、というか、エレクトロニック・ミュージックに携わる者にとってはまことに使い勝手のよい名機だが、Ableton Liveをテーマにデモンストレーションとパフォーマンスを行うイヴェント〈FADE TOKYO〉を今週および来週末開催するという。開催にあたり、米国から公認トレーナーであるジョシュ・ベスが来日。両日にわたり質疑応答とライヴ演奏をまじえながら、Ableton Liveでの楽曲制作方法、MIDIアウト使用したライティングの操作を教授する一方で、24日のスペシャル・ゲストに井上薫、29日はKOYASを招き、創作やライヴの場でソフトウェアをどのように用い、かつその相関関係でいかにして音楽ができていくかを体験する、またとない機会になるにちがいありません。

 ほかにも、今年、実験的でありながらやわらかなポップ・センスを感じさせるファースト・アルバム『In Between The Last Tone And Silence』をリリースしたEcho in Mayも両日ともに出演し、入門者にもやさしいレクチャーとパフォーマンスを披露してくれるとのこと。

 かくいう機械音痴なわたしでさえ、フィールド・レコーディングした音を加工したり打ち込んだり、Ableton Liveにはひとかたならぬお世話になっているくらいですから、これから音楽をつくろう、つくりたいと思っている読者はひとつ、PC持参で参加してみてはいかがでしょう。

■Ableton live Conference「FADE Tokyo」 ~supported by High Resolution~

会場: fai aoyama

■Day 1:2013年11月24日(日)
open 16:30
price ¥2000 / 1d

special guest speaker & performance
Kaoru Inoue

guest speaker & performance
Josh Bess
Echo in May(Fluxia)
coa(ROKURO/coma)

Live performance
Reatmo
inotsume takeshi
疋田 哲也+中山剛志
DJ At(BlackRussian)
and more…

■Day 2:2013年11月29日(金)
open:21:00
price:¥2000/1d

special guest speaker&performance
KOYAS

guest speaker&performance
Josh Bess

Live & DJ performance
Kazuaki Noguchi (Modewarp)
Echo in May (Fluxia)
MINIMA LIEBENZ (DJ SAIMURA×SHINYA MIYACHI)
GORO (Arabesque Greenling | Snows On Conifer)
DJ At (BlackRussian)
DJ Kohei Suzuki
SASAKI JUSWANNACHILL
DJ Oikawa
Yosuke Onuma
Uka
and more...

Anton Zap - ele-king

 「俺は絶対にダフト・パンクもディスクロージャーもかけない」と胸を張ったのはブラウザだった。彼も関わっているレーベル〈My Love Is Underground〉の名付け親は、DJディープだそうだ。90年代末のフレンチ・タッチ(90年代末にポップの表舞台に躍り出た、ダフト・パンクやエールなどのフランス勢の総称)とは意識的に距離を置いたベテランDJで、僕はパリで彼と会ったことがあるのだが、この男、自分が知っているDJのなかでも3本の指に入る反骨精神の持ち主だ。まさに信念の人といった感じで、誇り高きアンダーグラウンドの住人とでも言えばいいのか。
 そんな彼のやってきたことが新しい世代に受け継がれていることは歴史を知る者にとってかなり感動的な話なのだが、君にとっても喜ばしいことだと思う。“キャン・ユー・フィール・イット”でも「アトモスフィアEP」でも〈Prescription〉時代のロン・トレントでも、その手の音楽がかかっているとき、あり得ないほど優しい気持ちにはなれても、無理なナンパをしたり、暴力的な気持ちにはならないだろう。重要なのは音楽であり、人だ。
 アンダーグラウンド・パリスやブラウザをはじめ、ディープ・ハウスへの世間の注目を加速させたのは、ザ・XXやジョイ・オービソンらベース・ミュージック世代のハウスへのアプローチと90年代リヴァイヴァルであることは、ブラウザ本人もわかっている。5年前、ハウスはほぼ死んでいたと彼も言った。あの頃はベルリンのミニマルばかりが騒がれ、ディープ・ハウスなんざぁ誰も見向きもしなかったけどな……と愚痴りたくもなろう。しかし、好むと好まざるとに関わらず、ディープ・ハウスは90年代リヴァイヴァルという流行のなかで蘇った。ベルリンのテクノと拮抗するかのように、パリがまた重要な役割を果たしそうなところも興味深い。
 スターDJがいて、だーっと大量の客が入って、がーっと踊って、わーっと騒いで、だーっと家に帰ると。あれ、それって財布の中身と体力を消耗しただけで、なんか違うんじゃない? それはカタルシスなのか? はっきり言って空しい……などと思った方々が「バック・トゥ・ベーシック」をスローガンに、もう一回小さいところから仕切り直そうぜとおっぱじめたのが、90年代なかばのディープ・ハウスだった。俺らが求めていたのは、水商売でもないし、ナンパでもない。音楽だろう、ロン・トレントだろう、ノーザン・ソウルだろう、last night DJ saved my lifeだろう。これがいまふたたび起きている。いや、ずっと起きているのだが、急速に見えやすくなったディープ・ハウスなるシーンである。
 アントン・ザップはロシアのDJ/プロデューサーで、NYのディープ・ハウス・シーンのキーパーソンのひとり、Jus-Edの〈Underground Quality〉から多くの作品を出してる。本作は〈R&S〉傘下の〈アポロ〉からリリースされた2枚組の12インチである。
 〈アポロ〉らしく、ひと昔前ならアンビエント・ハウスなどと呼ばれていたであろう、ゆったり目のBPMに、ハウスのビート、アンビエントなループと音響が重なっている……って、あれ? これって何年の作品? 1991年のエイフェックス・ツインの変名じゃない? 淡い残響のなか、電子音の優しいさざ波が打ち寄せる1曲目の“Water”を聴いていると、『アンビエント・ワークス』の頃にエイフェックス・ツインにあまりにも似すぎていて……。要するに、ここにはIDMやテクノのセンスが注がれているのだ。個人的には無茶苦茶好みの音だけれど、やっぱりまだ大手を振って喜びきれないなぁ。しかし、期待はしたい。僕が知っているディープ・ハウスのシーンは、(主役となる音楽はUS産だが)いわばヨーロッパ型の、コミュニティありきのシーンだった。小さいシーンがいろんな場所にたくさんあるイメージで、そこは明らかに都市の避難所だった。
 アントン・ザップを、今日のディープ・ハウス・シーンのキーパーソンのひとりだったと言ったのはブラウザ、彼のインタヴュー記事は、次号の紙エレキングに掲載します。

DJ Hakka-K (Luv&Dub Paradise主宰) - ele-king

年末に向けて一度は覗いて欲しいお店ばかりを列挙しました!どこへ行っても良いDJや良い仲間と近い距離で知り合えるはずです!
順位に特別意味はありません。まだまだいいお店一杯あるのでpt2へと続く予定です!
風営法にもマケズ、近所の苦情にもマケズ、良質な音とハートを提供してくれるDJとお客さんの最前線なお店ばかりです。
都内じゃなかったりCLUB形態のお店は割愛しました。

以下で近況や良いPARTYをつぶやいたりつぶやかなかったり
Luv&Dub Paradise:https://www.luvdub.jp/
Luv&Dub TW:https://twitter.com/Info_Luv_Dub
DJ_Hakka_K:https://twitter.com/DJ_Hakka_K

求めればソウルメイトと必ず会える都内のDJ BAR&小箱10選 pt.1


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東高円寺GRASSROOTS
先日16周年を迎えたばかり。説明不要都内の小箱の代表!の割には狂った人が多数よく来る!
https://www.grassrootstribe.com/

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原宿bonobo
名物店主「SEIさんと愉快な仲間達」なお店。ハイエンドオーディオの研究にも熱心!アホばかり集まる割には内装はシャレオツ!
https://bonobo.jp/

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吉祥寺bar Cheeky
ジャニ顔のミュージックラバー「アビー」を中心にジャンルレスで吉祥寺界隈の強者共が集う店
https://twitter.com/barCheeky

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三茶bar Orbit
Chillな感じでゆったり音を楽しめるナイスな内装!靴を脱いで自宅感覚で音にハマれる!
https://bar-orbit.com/

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渋谷re:love
いかがわしいエリアのいかがわしい場所にあるいかがわしいお店。底抜けにアホな連中ばかりが時を忘れに集まる魔窟。
https://www.facebook.com/shibuya.relove?ref=ts&fref=ts

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青山BAR OATH
ありえない立地にあり得ない音量で勝負するとんでもない店。外タレを連れてくと「これが東京か?」とみんな感動する!
https://bar-oath.com/

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三茶天狗食堂
三茶の妖精ことDJ INAHOとドスコイ感満載のダーチーが運営する「THE 場末」。レジデントの関ヒデキヨのDJは必聴!
https://tengushokudo.com/

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下北沢MORE
内装は80年代カフェバーを想わせるアーバン感満載だがブッキングも内容も狂人ばかりが集ってる!!
https://smktmore.com/

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神泉メスカリート
いかがわしいエリアをちょっと抜けるとあるいかがわしいお店。re:loveと同じく底抜けにアホな連中ばかりが時を忘れに集まるやっぱり魔窟。
URL等情報ソースなし、、、

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渋谷DJ BAR KOARA
小箱には珍しく真っ暗闇でハマれるので要注意。バーテンの作る酒の上手さは常に上位クラス!
https://www.koara-tokyo.com/

DJ Yogurt (Upset Recordings) - ele-king

DJ Schedule
11/22(Fri.)@中野・Heavy Sick Zero
11/24(Sun.)@新木場・Studio Coast(Rovo and System7 Live/Opening DJを午後4時から)
11/30(Fri.)@三軒茶屋・Cocoon
12/4(Wed.)@渋谷・En-Sof
12/7(Fri.)@新宿・Be-Wave(19時-24時開催)
12/13(Fri.)@代官山・Unit
12/19(Thu.)@笹塚ボウル(りんご音楽祭・忘年会。19時-23時開催)
12/20(Fri.)@渋谷・Sundaland Cafe(19時-24時開催)
12/26(Thu.)@原宿/千駄ヶ谷・Bonobo
12/29(Sun.)@代官山・Unit
1/10(Fri.)@神戸
1/11(Sat.)@大阪
1/12(Sun.)@京都
1/18(Sat.)@高円寺・CAVE

HP : https://www.djyogurt.com/
Twitter : https://twitter.com/YOGURTFROMUPSET
Facebook : https://www.facebook.com/djyogurtofficial

2013年11月4日、5日の二日連続で恵比寿Liquid Roomで開催されたElectronic Music Of Art Festival Tokyo・・・
略してEMAF TOKYO 2013で自分はオープニングで50分間DJした後、その後のlive actが交代する間の「転換タイム」にもDJして、結局夕方4時から夜10時の間に計6回のDJをやりました。
このイベントはその名のとおり、基本的には電子音楽が流れ続けるイベントで、自分もこのイベント出演の為に選曲を色々と考えて、普段の週末のクラブプレイとは一味違う、「4つ打ち以外の曲だけをDJプレイする」コンセプトでDJしました。
これが自分でも新鮮で、一部のお客さん達の間でも好評だったので、当日に実際にかけた曲の中から、かけた順に10曲選んでコメント付きで公開します。
読みながら、音を聴いてもらって、当日の雰囲気が少しでも伝わったら・・・!


1
Synkro - Disappear - Apollo
お客さんが少しずつダンスフロアに来始めたPM4時半頃にPlay。
2013年に12inch2枚組"Acceptance EP"の1枚目B-1としてReleaseされた、Acoustic GuitarとElectricな音をセンス良く融合させた曲で、打ち込みだけどオーガニックな雰囲気も感じさせて、メロウなところもある曲。
R&S傘下のAmbient/Electronic Label、Apolloのここ数年のReleaseは気になる曲、興味深い曲が多い印象があり、自分にとって、Releaseする曲はなるべく一度は聴いてみたいLabelのひとつ。
https://youtu.be/-IvMw2DqP1Q

2
Lord Of The Isles - Nustron - Little Strong
2013年Release、"Galaxy Near You Part1"12inchのB-2に収録の"Nustron"は、前半は美しいAmbient、中盤にGroove感が強まって踊れそうなリズムに変化しながらも、後半は再びAmbientに戻る構成も面白く、この日は早い時間からお客さんが来つつあったので、フロアがやや賑やかになってきた時間にAmbientとAmbientの間に挟んで、ちょっと刺激を加える感じでPlay。
https://youtu.be/7BjLQovXkdY

3
Bola - Glink - SKAM
Autechre に作曲方法を教えたとも伝えられているDARRELL FITTONのユニット=Bolaが、Autechreと関係の深いマンチェスターのレーベルSKAMから1998年にReleaseした1stアルバム"Soup"の1曲目。自分はこの曲は90's electronicaを代表する名曲の一つと思ってて、Bolaの曲の中で一番好きな曲でもあったり。
https://youtu.be/pbtfx0h4pnc

4
Four Tet - Sun Drums And Gamelan - Domino
2005年にU.K.の人気レーベルの一つDominoからReleaseされた12inchのB-2に収録。
強烈にFunkyなDrum BreakbeatsのGroove上を、ガムランや笛等がミニマルに響く、ワールドミュージックとクラブミュージックの融合が産んだ傑作。
EMAF初日は自分の2度目のDJ時に既にダンスフロアがほぼ満員で、フロアのテンションが予想していたよりも高い印象を受け、Aoki TakamasaさんのliveもかなりDance Grooveを打ち出したliveになるのでは、と考えて、早い時間からテンションを上げていきました。
https://youtu.be/P7VuxbQB8bw

5
2562 - Intermission - When In Doubt
2011 年に12inch2枚組"Fever"の1枚目B-1に収録。PM4時に自分のDJで始まったEMAF2013も、3度目のDJを始める頃にはPM6時半 に。このあたりでDanceを念頭に置いた選曲でDJを始め、Aoki Takamasaさんのlive後、自分のDJ一発目にこの2562のDub Stepを。
https://youtu.be/aC2BzXUi1Ic

6
Beaumont - Rendez-Vous - Hot Flush Recordings
2012年にReleaseされたPost Dub Step良作。
MellowでJazzyな感覚も漂いつつ、リズムはDub Stepを通過した鋭さを感じさせるGrooveが心地良い。
自分にとっては多くのDub Stepがあまりにもメロデイーを軽視している気が多少していたので、この曲のようなメロディーが美しいDub Stepは待ってました、という感じ。
Hot Flushは他にもメロウな感覚が漂うPost?Dub StepをReleaseしていて、この数年すっかり注目のレーベルに。World's End Girlfriendのlive前、4度目のDJではDub Step~Post Dub Step多めな選曲でDJ。
https://youtu.be/qTn76STVKgQ

7
Throwing Snow - Clamor - Snowfall Records
1分22秒以後のメロデイーとリズムの絡みが生み出す高揚感がとてもカッコよく、2分36秒以後にはバイオリンのメロディーもミニマルに入ってきて、フツーのDub Stepとは二味違う豊穣な音楽性を感じさせるPost Dub Stepの良曲。
https://youtu.be/OAvbyO5q-hs

8
Lapalux - Close Call / Chop Cuts - Brainfeeder
World's End Girlfriendのlive直前に自分がDJ Playしたのがこの曲。
Ninja Tuneのサブレーベルから2012年冬に出た12inch"Some Other Time"のB-2に収録。
これが最新型の歌ものPOPSの理想形と思ったりすることもあるほど好きな、一応「歌もの」曲。エフェクトの使い方が強烈。
https://youtu.be/NIiRPmNmSLg

9
Divine Styler - Directrix(Indopepsychics Remix) - Mo'Wax
EMAF2013を主催したPROGRESSIVE FOrM主宰のnikさんは、以前にはDJ KENSEIさん、D.O.I.さんと3人で"Indopepsychics"という音楽制作ユニットを組んでいて、この2000年作は彼らがノリに乗っていた頃の傑作Remix。
自分がDJ光君と出会った2003年~2004年頃に、光君がよくDJ Playしていた「光クラシック」の1曲。2013年に聴いてもカッコいいと思う。
https://youtu.be/nkJIKH1GW7Y

10
Hauschka - PING(Vainqueur Remix) - Fat Cat
いよいよ大トリのCarsten Nicolai(Alva Noto)のlive直前、自分の6度目のDJの最後にかけたのが、Fat Catから2012年にReleaseされた12inchのAA面に収録の、Dubby Abstruct Electronic Grooveの傑作。
Basic Channelフォロワーの中で一番Basic Channelの感覚を理解しているんじゃないかと思う事もある、Vainquerの最近作をLiquid Roomのメインフロアで爆音で鳴らして、Carstein Nicolaiの登場へ・・・
https://youtu.be/YP7LclEsMWs

Jake Bugg - ele-king

 イタリアから戻って来た翌日のことである。
 出勤前にマクドナルドで朝飯を食っていると、見るからにアンダークラス&チャヴな青年がベビーカーを押しながら入って来た。
 いやー。英国に戻って来たな。と思っていると、店内音楽がオアシスに切り替わる。と、くだんの若い兄ちゃんが、ベビーカーをゆらゆらさせて赤ん坊をあやしながら、メイビーーーー、ユーゴナビーザワンザットセイヴズミーーー、アンドアフタアアーオーーーーーールとリアム・ギャラガーと一緒に歌いはじめた。

 いやー。英国の公営住宅地に戻って来たな。と思った。

              *********

 米国の大物プロデューサー、リック・ルーベン所有のマリブのスタジオの名前をタイトルに掲げたジェイク・バグのセカンドには、英国メディアは賛否両論のリアクションを見せている。もろ手を挙げて大絶賛だった前作とは違う。
 『NME』は、オアシスが遺した穴に自分をすっぽり入れようとする時のジェイク・バグの楽曲はまったくつまらないが、ファースト同様のボブ・ディランエスクな音を奏でる時は素晴らしいと書いた。『ガーディアン』紙は、バーバリーのファッション・イヴェントでギグをおこない、スーパーモデルと浮名を流す身分になったジェイク・バグが、いまさら公営住宅地を歌うのは偽善だろう。英国のボブ・ディランになるかと思われた若者の音楽は、もはやリチャード・アシュクロフトや後期オアシスにしか聞こえない。と書いた。
 英国のアーティストは全部ダメで、ボブ・ディランならクール。という論調には、英国人のコンプレックスを見るような気もするが、実はわたしも1年前、「公営住宅地のボブ・ディラン」とジェイクを形容した人間である。で、セカンドを一聴した感想は、あれ? であった。
 アルバム・ジャケットの如く、今回はモノクロじゃない。カラーなのである。サウンド(楽曲ではなく、音の処理という意味で)にアナログ・レコードのように聞こえる細工や歪みが施されていないので、ずっと現代的に聞こえる。ブリット・ポップみたいじゃねえか。と大人たちが言うのも道理だ。一見シンプルに聞こえていた前作のほうが、実はサウンドのイメージ構築(レトロ化)には凝っていたようで、いろいろやってる感じの今回のほうが逆説的にシンプルというか、普通のロックに聞こえる。

 が、半信半疑で2回、3回と聞き込むにつれて、あることに気づいた。
 それはジェイク・バグが非常に優れたメロディー・メイカーであるということであり、即ち優れたアンセム・メイカーだということだ。これは前作では十分に発揮されていなかった資質だろう。
 アンセム。というのは小バカにされがちな言葉だが、その語源は英国国教会の祈祷合唱曲であり、言葉(スローガン)とメロディーが耳と心の両方で聞き取りやすく、万人に歌うことができ、何よりも祈祷者(歌う者)の魂を鼓舞する唱歌のことだ。英国国教会の賛美歌のジャンルが語源になっているだけにUKの人びとはアンセム作りが得意で、もっとも優れたもののひとつにはナショナル・アンセム(国歌)の“God Save The Queen”があるし、その裏ヴァージョンを歌ったジョン・ライドンなんかもアンセム作りの天才である。

 わたしは1996年から英国に住んでいるが、この国の貧民街にいまほどアンセムが必要とされていたことはなかったと思う。公園で人が喧嘩して刺されたり、オーバードーズで若者が病院に運ばれたりしてサイレンの音が頻繁に聞こえている世界では、人は知らず知らずのうちに祈祷するからだ。祈祷の方法というのが単に流行歌を歌うことだとしても、人はなんとか魂を高揚させて生きていこうとする。
 もう末期としか言いようのない保守党政権下で締め付けられ、荒廃した暗い社会が、その終焉を切望していた90年代前半にアンセミックなブリット・ポップが生まれた。というのは拙著にも書いたところだが、やはり今という時代はあの時代とよく似ている。

「電灯は打ち割られ
街の通りは封鎖されている
誰もうろつこうなんて思わない場所だ
ずっと前に俺たちは切り捨てられた 見込みはないって
聞こえるのは風の音だけ ストーンドしようぜ」(“Messed Up Kids”)

 嘘くさ。
 とかいうシニカルな批評は、彼のファーストを聴いて勝手にうっとりしていた中年文化人たちに任せておけば良い。
 同世代の若者たちの耳や心にリアルに響く限り、それは10点中8点だの9点だの採点されるブリリアントなだけの楽曲を超えて、時代を象徴するアンセムになるのだから。
 “Seen It All(すべて見てきた)”と言ってシーンに登場した少年のしんと醒めた瞳は、最近ではある種のふてぶてしさすら帯びて来た。
 ジェイク・バグはきっと自分の進むべき道を知っている。

ぶっちぎりのネガティヴィティ! - ele-king

 今年、『止まらない子供たちが轢かれてゆく』で第1回せんだい短編戯曲賞を受賞した若き劇作家・綾門優季が、受賞後初の公演を来年早々に行う。
 21歳での戯曲賞受賞はタイミングとしてかなりはやいそうだ。しかも賛否両論どころか逆選をほしいままにしながらの受賞という印象が強く、なかなかにやんちゃな存在感を放っている。シャープな批評性、ぶっちぎりのネガティヴィティ、仰々しい文語的セリフまわしなどが注目されるが、そんな彼が発表する新作のテーマは、SNS時代のコミュニケーションと自意識(というふうに紹介文からは読めるけれども違っているだろうか?)。「情報量過多」とも評される作風の綾門が、「SNS疲れ」という問題にどう向かい合うのか、豪華なゲストによるアフター・トークとともに楽しみたい。
 チケットの発売は今週末から。

無隣館若手自主企画 vol.2 綾門企画
『天啓を浴びながら卒倒せよ』

作・演出:綾門優季
2014年1月16日(木)- 19日(日)
会場:アトリエ春風舎

『止まらない子供たちが轢かれてゆく』は、小学校のときに巻き込まれた学級崩壊の体験を、わりとそのまま注ぎ込みました。これ以降、日常生活の実感をそのまま注ぎ込む、ということに興味をそそられています。
いま、僕の世代でいちばん切実な問題は、SNS疲れ、と断言できます。twitterのフォロワー数やfacebookにアップする楽しそうな写真やLINEの返答の速さで、人間の価値が決まるわけではありません。僕は僕の周りにみえる邪悪な触手を、ぶっちぎって走りぬきたい。綾門優季

■公演日程
2014年1月16日(木)~1月19日(日)

1月16日(木)19:00※
   17日(金)19:00※
   18日(土)14:00※/19:00※
   19日(日)13:00/17:00
※マークは終演後にアフタートーク開催
受付開始は開演の30分前 開場は開演の20分前

【アフタートークゲスト】
16日(木)佐々木敦氏(批評家/HEADZ代表)
17日(金)山本充氏(『ユリイカ』編集長)
18日(土)14:00の回 豊崎由美氏(書評家)
     19:00の回 渡邉大輔氏(映画批評家)

公演詳細
https://s.seinendan.org/link/2013/10/3211


■綾門優季(あやとゆうき)
1991年生まれ、富山県出身。劇作家・演出家・Cui?主宰。
2011年、専属の俳優を持たない、プロデュース・ユニットとして「Cui?」を旗揚げ。
2013年、『止まらない子供たちが轢かれてゆく』で第1回せんだい短編戯曲賞を受賞。
短歌や批評等、演劇外の活動も多岐にわたる。

■Cui?
2011年、綾門優季を主宰として旗揚げ。専属の俳優を持たない、プロデュース・ユニットとして活動を開始。どうしようもなく避けられなかった鋭利な言葉、釈然としない事態、忘れたくても忘れられないしこりを残す出来事など、だれもがいつの日か抱えるかもしれない、あらがいようのないざらざらとしたものに、焦点をあてた芝居を展開する。
 
Cui?公式サイト https://d.hatena.ne.jp/ayaayattottotto/




渋谷慶一郎+岡田利規 『THE END』
- ele-king

 客層のまったく読めない客席だった。〈Bunkamuraオーチャードホール〉にここまで異なる人種が集まること自体かなり珍しいのではないだろうか? わたしの右隣のおじさんは小難しい評論集を紐解きながら、連れのおじさんと、最近のチェルフィッチュは迷走しているように思えるね、『三月の5日間』から『ホットペッパー、クーラー、そしてお別れの挨拶』までは若者特有の切実さが保たれていたんだよ、しかしその主題から離れて以降は……うんちゃらかんちゃら、と自説を開陳している一方で、わたしの左隣のお姉さんは全身、初音ミクそのもの(かつらではなくあれは地毛をこの日のために緑色に染めたのだろう)。この落差。どこで知ってだれを観に来たのか、という質問を投げかければとてつもなくばらばらの答えが返って来るに違いない。それほどまでに多くの要素を含んだ公演だった。客席にたどり着くまでに否応なく目に入るような位置に展示されていた、〈ルイ・ヴィトン〉のコスチュームに身を包んだ初音ミクの等身大フィギュアがその点では一種の踏絵と化していて、さかんに撮影する者と完全に素通りする者とに、人種がはっきりとわかれていたことを余談として付け加えておく。

 2013年5月23日、24日の二日間、〈Bunkamuraオーチャードホール〉にて行われたボーカロイド・オペラ『THE END』は、2012年12月の〈山口情報芸術センター(YCAM)〉での初演時からすでに話題にはなっていたが、8トンという客席そのものが震えるほどの音響機材が投入されたり、ラスト・シーンに大幅な変更が施されたりと、もはや再演というにはアップデートされすぎた東京公演は、注目の的となっていた。

 そもそも『THE END』とはいかなる公演なのか? 通常、オペラといえば、舞台上で衣装を着けた出演者が、演技や台詞だけではなく、大半の部分を歌手による歌唱で進める演劇のことを意味する。しかし、『THE END』の際立った特徴としては、人間の歌手もオーケストラも登場しないことが挙げられる。電子音響と立体映像によって構成された、世界初のボーカロイド・オペラ・プロジェクト。渋谷慶一郎と岡田利規と初音ミク、という発表されるまで想像したこともなかった組み合わせ。「どういういきさつでこの三者が一堂に会することに?」はじめて知ったときには耳を疑い、思わず首をひねったものである。

 ここで音響機材の重さをもう一度確認しておこう。8トン。想像の埒外にある重さ。無用な心配だとは承知しながら、カバンに耳栓を忍ばせていった臆病者がここにいることを告白しておく。そのあまりにも付け焼き刃的な対策は、正直に言ってまったくの杞憂に過ぎなかった。もちろん最初から最後まで客席は大音量で震えていた。しかしながら音響スタッフの行き届いた配慮のなせる業であろう、どれだけの轟音が届いたとしても、耳にじんわりと痛みが走るどころか、不快さを抱くことさえないままだった。

 オペラということで華々しいものを期待していた観客は面食らったのではないだろうか。いや、確かに圧巻の映像は華々しい、けれども、語られるあらゆることが、拭いようのない陰鬱さを帯びていた。
 初音ミクは一貫して正体不明の不安に苛まれていた。もちろん、いくつかの原因らしきものは物語のなかに存在する。髪も色も似せようとした、しかし全然似ていない初音ミクの劣化コピーが自分のほうへ向かってくること。いままで考えたこともないだろうけれど人間と同様にあなたも死ぬ運命にある、と突然告げられて動揺すること。記憶が曖昧であるいは嘘で、知らない場所か来たことのある場所かの区別もつかないこと。何かを与えられないと、動くことも話すこともここにいることもできない、常に「短く死んでいる」存在であることに気づくこと。それらのすべては不安の原因らしきものだが、原因ではない。
 不安を煽る初音ミクの劣化コピーに惑わされるけれど、注意しておきたいのは、初音ミクは最初から正体不明の不安に苛まれていた、ということだ。ここに原因と結果は存在しない。物事と物事が繋がっていって、結末が導き出されたわけではない。初音ミクは登場時からすでに、コンセプトの段階で、そのような病を抱えなければならない存在だった。蜂の巣を突っつかれただけで、はじめから大量の蜂が巣のなかを飛び回っていたのだ。
 無限に増幅する不安、という病。
 この病をどのように受けとめればいいのだろう?

 いまさら『THE END』についてわたしには何も語れない。21世紀にオペラがボーカロイドで行われることの意義、各界から噴出した過剰なまでの反発、旧来の初音ミク像をぶち壊したともアップデートしたともいえるデザインとその映像美、どれも言い尽くされてしまった。半年もたてばあらゆる要素は言い尽くされ、検索をかければ簡単に全体像が浮き上がってくる。というわけでここでは、ともすれば「はあ?」とあっけにとられてしまうような、一見なんの関係もなさそうなものを無理矢理ぶつけてみることで、『THE END』像をぶち壊したりアップデートしたりしてみたい。ただの劣化コピーに終わらなければいいけれど。

 『THE END』のラストシーンを目にしたとき、真っ先に脳裏によぎったのは中澤系だった。中澤系はディストピア的なシステム社会に疑義を唱える作風の歌人で、今回の物語の根幹にかかわる問題意識と深いところで響きあっていた。特に関係のありそうな短歌を引用しておこう。

終わらない だからだれかが口笛を嫌でも吹かなきゃならないんだよ
サンプルのない永遠に永遠に続く模倣のあとにあるもの
ぼくたちはこわれてしまったぼくたちはこわれてしまったぼくたちはこわ
中澤系『uta_0001.txt』(雁書館 2004年)所収

 もちろん渋谷慶一郎と岡田利規が知っていたとは当然思えないが、これらの歌は、初音ミクの劣化コピーが初音ミクを責め苛み、ラスト・シーン間近に「終わりはくりか」という「終わりはくりかえす」という字幕の途中で「くりか」が消去され、あらためて「終わりはいくつある?」と打ち直されるこの趣向に、不思議と寄り添ってはいないだろうか?
 わたしは口笛を無意識に吹いてしまう悪癖がある。もちろんひんしゅくを買うような公共の場ではなるべく慎むように努めているけれど、感銘を受けたライヴのあとにはついつい先ほどの心の震えを取り戻そうと悪あがきを試みるかのように、耳に焼き付いたメロディを口元で復唱してしまうのだ。今回もやった。渋谷駅まで渋谷慶一郎+東浩紀 feat.初音ミク“イニシエーション”の口笛を吹き続けたのである。
 帰りの電車の中でふと“イニシエーション”でイニシエーションをしていたことに気がついた。
 わたしは無意識に、いましがた目撃したばかりの初音ミクの劣化コピーになろうとしていた。

 イニシエーションとは、いうまでもなく通過儀礼のことだ。観客は『THE END』という一種の通過儀礼を経て、初音ミクの劣化コピーを体内に受精させていた。終わりは繰り返さない。終わりは交尾する。終わりは繁殖する。終わりは感染する。終わりは永遠に模倣され、歌のなかに宿る。模倣された歌がわたしに歌われた瞬間だけ、初音ミクは壊れるまえの表情を取り戻す。どれが劣化コピーか見分けがつかなくなるほどに大量の劣化コピーが、わたしを容赦なく蝕む。
 わたしは蝕まれることを愛おしく思う。終わりがいくつもいくつもいくつも、数えきれないくらいの終わりがわたしを包囲することを疎ましくは思わずに愛おしく思いたい。劣化コピーの影に常に怯えなければならない21世紀の宿痾を慈しみたい衝動を、誰かに糾弾される筋合いはない。糾弾もいずれ劣化する。
 膨大な『THE END』のレヴュー、その劣化コピーのレヴュー、その劣化コピーのレヴューの劣化コピーのレヴュー、その劣化コピーのレヴューの劣化コピーのレヴューの劣化コピーのレヴュー、その先にあるものに未来を託したいわたしの思考回路はすでに終わっているのかもしれない。いくつかあるうちの終わりのひとつがいま、ここにある。

『THE END』
渋谷慶一郎+初音ミク
発売日 11月27日(水)

■完全生産限定盤
8500円(税抜) MHCL2400〜2403

・20世紀記録メディア仕様:
LPサイズBOX、EPサイズブックレット(写真、図版多数)、カセットサイズ・ブック(オペラ台本完全版)、オペラ全曲を収録したCD2枚組、「死のアリア」など3曲のミュージック・ビデオと制作風景の記録DVDを所収。スペシャル・ブック:ジャン=リュック・ショプラン(パリ・シャトレ座支配人)、茂木健一郎×池上高志対談、蜷川実花、高橋健太郎、鈴木哲也(honeyee.com)ほか豪華執筆陣によるオリジナル・テクスト、渋谷慶一郎による全曲徹底解説など120ページを収録。

Tower HMV Amazon

■通常盤(EU edition)
2381円(税抜) MHCL 2404
・紙ジャケット(仕様1枚)

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