「P」と一致するもの

Issugi - ele-king

 スラックもそうだが、イスギのアルバムにもリリックが掲載されていない。言葉は音ともにあることをダウン・ノース・キャンプ(DNC)は暗に主張しているのだろう。日本の音楽シーンの言葉好きに関しては、歌詞カードがあって当然というリリース形態に象徴されているが、それは世界共通の考えではないことは輸入盤を聴いている人なら当たり前のように知っている。音楽における言葉は音ともにある。しかし、われわれは言葉だけを聴いているときがある。音はせいぜい伴奏であり、言葉の意味のみをどこまでも追いかける。そして言葉に寄りかかり、ときとしてミュージシャンは道を示す導師のごとき扱いを受ける。そうしたある種の自己啓発めいたシーンから遠く離れた場所で、DNCのようなDIY主義者によるヒップホップは動き続けている。

 イスギはこのアルバムを発表する前に、超限定で前作『Thursday』のインスト&リミックス集を発表しているが、今年はスラックもブダムンキーとのリミックス・アルバムを発表しているように、DNCクルーはずいぶんと音作りの冒険にはまっているようである。イスギのセカンド・ソロ・アルバムとなる『ザ・ジョイント』というタイトルも、一面では、このアルバムに参加した多彩なトラックメイカー――マス・ホール(メダラ)、16フリップ(モンジュ)、パンピー(PSG)、ブダムンキー、マリク、グラディス・ナイス、およびラッパー――仙人掌、Mr.PUG、O.Y.G、タム、ヤヒコ、スラックたちとの協同作業を意味しているのだろう。イスギのハスキーな声は、彼らの作る素晴らしいうねりの数々のなかで息づいている。それらの楽曲は〈ストーンズ・スロー〉やジェイ・ディラのソウルフルな破壊衝動、ウータン・クランやMFドゥームの薄明かりの地下街へと連結するように感じられる。

 ビッグ・バンド・ジャズのホーン・セクションが不吉なイントロを吹くと、霧の中から1曲の"ザ・ジョイント"がはじまる。そしてひび割れた音とピアノのループによる"ニューデイ"へと続く。この2曲だけでも充分に、夜遅く静まりかえった通りに潜んでいる魔物たちの夢に連れていかれる......と、まあ、とにかく格好いいのである。
 16フリップによるエレガントでメロウな"ビッグ・マウス"は路上の叙情詩で、マス・ホールによる"ジ・アンセム"はファンクの部品をひとつづつずらしながら解体していくような幻覚を与える。イスギは、彼の日々の雑感のような言葉をラップしている。混乱、酩酊、生活と厭世、そして怒りと夢が語られている。"ミスター・ランページ"は容赦ない憤怒のスリリングな一撃だ。パンピーの手掛けるトラックは、尺八のような音とトライバルなビートが夜の新宿のような、独特な無国籍感を演出している。危険な風を運ぶストーンしたビートの"タイムイズナウ"とジャジーなピアノ・ループによる"ファイン・バット・サッド・ウエザー"はブダムンキーによる曲で、後者の曲でイスギは真夏のけだるいひとときを、海辺の青春のひとコマではなく、アスファルトと冷房の夏を描いている。16フリップによるメランコリックなヘヴィ・ファンク"ジャス・ミュージック"は地下室に深く反響し、アルバムがいよいよ佳境に来たことを告げる。そして『ザ・ジョイントLP』は、スラックが参加した"キングダム"でさらに激しさを増す――。

 だが、ある意味では『ザ・ジョイントLP』には、クライマックスがない。いわばアンチ・クライマックスと言える。彼のリリックにはリスナーを勇気づけるような気の利いた言葉もなければ、偉そうな教訓も色恋もなく、お涙頂戴のメロドラマもない。断片化された古いジャズやソウルの残骸の上から、何かを生み出そうとする衝動があり、そして東京で暮らすボヘミアンとしての小さな放浪が描かれている。正しくなくてもかまわないという意味においては、迷いのない現在が表現されている。いや......、彼はひょっとしたら、世間や音楽が押しつける正しさやポジティヴな態度に抵抗しているのかもしれない。

Chart by TRASMUNDO 2010.11 - ele-king

Shop Chart


1

DJ Holiday

DJ Holiday 『The music from my girlfriend's console stereo』
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2

ISSUGI from MONJU

ISSUGI from MONJU 『The Joint LP』
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3

D.O

D.O 『I'M BACK』
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4

PARAdice

PARAdice 『ijiVE』
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5

CE$&STARRBURST(SEMINISHUKEI)

CE$ & STARRBURST (SEMINISHUKEI)
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6

CMT

CMT 『OBSERVACION ASTRONOMICA』
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7

DA PENCH MOB

DA PENCH MOB 『MURDA MUZIK vol.1 EAST COAST SEVEN ISSUE』
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8

HVSTKINGS

HVSTKINGS 『BLACK FOCUS』
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9

ROCKCRIMAZ

ROCKCRIMAZ 『STRAIGHT UP MEMACE』
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10

blahmuzik

blahmuzik 『ONLY』
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Evil Madness - ele-king

 まずはスウェーデンからB・J・ネルソン。90年代後半からハザードの名義でアッシュ・インターナショナルやタッチからフィールド・レコーディングの作品を数々手掛け、00年代に移ってからは他の名義も加えてゼヴやクリス・ワトスンらともコラボレイト・アルバムを制作。そのなかにはアイスランドで実験音楽の限りを尽くしてきたスティルアップステイパとの持続的なシリーズもあり、そこからもふたり。そして、同じくアイスランドから現在、ポスト・クラシカルの代表とされ、すでに貫禄のある存在と化してきたヨハン・ヨハンソン(裏アンビエントP182)と、やはりアイスランド・テクノからまだ無名のDJミュージシャン(という名義)と、すでに脱退したロック系のカーヴァーというアイスランドのアンダーグラウンド・オールスターズ+1による3作目。前2作はアイスランドの地元レーベルからリリースされていたものが、なぜか癖のあるベルギーのレーベルからとなり、内容にも大きく変化が起きている。

 ひと言でいえば、ヨハン・ヨハンソンもメンバーにいるとはいえ、アンダーグラウンドの集まりにしては、これまでもエレクトロなどに色目を使っていたものが、ここへ来てはっきりとクラウトロックを意識したものにフォーカスされ、中期のクラフトワークやハルモニアをそのまま発展させたスタイルとなっている(エメラルズの変化も唐突だったけれど、もしかして世界同時クラウト・ロック化?)。スティルアップステイパやB・J・ネルソンがこれまでにやってきたことを知っている人にはとても信じられないだろうけれど、ちゃんと音楽になっているし、リズムもあればメロディもある(笑)。オープニングこそドローンじみたはじまりで、北欧の寒々しいランドスケープを想起させるものがあり、あえて00年代のすべてを切り捨てているとはいえないものの、ヘタをするとOMDにさえ聴こえるほどオプティミスティックなシンセサイザー・ミュージックは不況や右傾化が深刻化しているヨーロッパのそれではないし、そもそもユニット名にも合っていない。もしくは所々で差し挟まれるドローンには不安や恐怖などが凝縮されているような面があり、いわば現実とそこからの逃避がある種の葛藤状態にあることを表現しようとしているのかもしれない(し、ミュージシャンのつねで何も考えていないのかもしれない)。

 飽きないというより何度聴いても腑に落ちないアルバムである。あきらかにヨハン・ヨハンソンがイニシアティヴを取っていると思わせる曲もあるし、全体に彼のファンタジックな性格が吉と出たのだろうか、凶だったのか。何かが曲がり角に来ているのだろう(でも、何が?)。

 なお、ビヨークやシガー・ロス以降、急速に細分化が止まらなくなっているアイスランドの音楽シーンについては「アイスランディア」で。

Chart by JETSET 2010.11.01 - ele-king

Shop Chart


1

IFEEL STUDIO

IFEEL STUDIO THE COPTIC SUN »COMMENT GET MUSIC
International Feelから新シリーズ"Ifeel Studio"ファーストです!!レーベル9番のコンピレーションCDにてその全貌がより鮮明なものとなった International Feelに、新シリーズ"Ifeel Studio"が発足。第一弾となる本作へは、カントリー・ムード漂うレイドバック・ギターで織り成す極上のダウンテンポ・ナンバー"The Copic Sun"を収録。片面プレス/限定500枚でのリリースです。

2

DAM FUNK

DAM FUNK ADOLESCENT FUNK »COMMENT GET MUSIC
Funkの申し子、若き日の記録。CDに続いてアナログ2枚組で登場!!先の7"シングル"It's My Life!"、"I Like Your Big Azz (Girl)"も含む全14曲を収録! 当時の熱気が伝わって来そうなジャケも最高です。

3

DENT MAY

DENT MAY THAT FEELING / EASTOVER WIVES »COMMENT GET MUSIC
ダメすぎ込み上げすぎ奇跡のインディ・ブリージン・ブルー・アイド・ソウル。Ariel Pinkに並ぶ天才と言い切りたい!!Paw Tracksからのデビュー・アルバムが当店鬼ヒットしたDent May。Forest Familyからの新曲が到着!!絶対お買い逃しなく。

4

PETAR DUNDOV

PETAR DUNDOV DIATANT SHORES »COMMENT GET MUSIC
ディープ・テック一押し盤!!Sven Vath, Francois K, Ame, Agoriaらがフル・サポート!!'08年リリースの名作"Escapements"で知られるクロアチアン・プロデューサーPeter Dundov最新作が到着。自身の名曲"Oasis"を彷彿とさせる美しいシンセ・ワークを基調としたトランシー・テック、渾身の1トラック収録です。

5

J ROCC

J ROCC PLAY THIS TOO »COMMENT GET MUSIC
正にJ Roccの真骨頂。アルバムからの先行シングルは一撃必殺のファンキー・ブレイクス!更に装飾を削ぎ落としたボーナス・ビート、多国籍感が最高な"Party(Boogie Man Remix)"、パーカシヴなビートが心地よい"Star"の全4曲を収録。

6

DJ NATE

DJ NATE DA TRAK GENIOUS »COMMENT GET MUSIC
リスニングにも断然対応可能なエレクトロニカ・ジューク大傑作アルバム!!UK名門Planet Muが始動したシカゴ・ジューク紹介路線からの1st.LPリリース。ウォンキー・セットとの相性もバッチリのポップなキラー・ジューク満載です!!

7

GUMMIHZ & NIKOLA GALA

GUMMIHZ & NIKOLA GALA SAPFO EP »COMMENT GET MUSIC
エキゾチックでジャジーなモダン・ミニマル・ハウス大推薦盤!!Mobilee、Real Tone等からのリリースで着実に評価を高めるGummiHzと、プログレッシヴ系スタイルからシフトしてきたEscada Music主宰Nikola Galaによるコラボが新レーベルから登場。

8

GANGRENE

GANGRENE SAWBLADE EP »COMMENT GET MUSIC
いや、コレは(文字通り)危険過ぎる! AlchemistとOh Noの新プロジェクト作!来るフルアルバムを前に、サンプリング巧者の二人が最高にロウな4曲+各インストを収録した限定12"をリリース! 切れ味も抜群です。

9

VANDERVOLGEN'S HAUNTED HOUSE

VANDERVOLGEN'S HAUNTED HOUSE BLACKDISCO VOL.9 »COMMENT GET MUSIC
Justin Vandervolgen a.k.a. TBDも遂にBlackdiscoから!!リリースごとに大ヒット御礼のLee DouglasとのユニットTBD、そしてGolf ChannelからのTry To Find Meシリーズを始めとしたリリースも人気のJustin Vandervolgen(ex. !!!)がLovefingers主宰Blackdiscoからまたしても最高の新作をデリバリー!!

10

V.A.

V.A. SPACEBOUTIQUE »COMMENT GET MUSIC
温もりと煌きのアンビエント音響ミニマル・テック超強力トラックス!!Jazzmoonによる極上の10""White Tools"が当店ヒット&定番化しているジャーマン音響ミニマル・ハウスPlaytracksから、素敵過ぎるコンピ12"が到着しました~!!

iLL - ele-king

 90年代のバブル景気の余韻とその崩壊から忍び寄る空虚さ。ゆっくりと変わりゆく時代のなかのほんの一瞬のモラトリアムなムードから生まれたいわゆる「98年世代」を代表するバンドのひとつにスーパーカーがある。
 スーパーカーの魅力には、作品ごとに新たな音楽的邂逅を果たしてきた折衷主義は言うにおよばず、ある種の青春性、青春の蒼さとその煌めきがある。中村弘二の囁くような幽玄とした歌声。石渡淳治の文学的なリリック、フルカワミキがもたらすフェミニンな調和、そしてそれらを天高く昇華させる田沢公大によるダイナミックなビート。個々が描く"アオハル・ユース"な世界観が乱反射するように、バンドは化学反応を起こした。そしてその結果、彼らは「失われた10年を生きるボーイズ&ガールズのピーターパン・シンドローム」そのものを体現したとも言える。僕を含め当時のユースたちは彼らの音楽に自分自身を重ね、永遠の純真無垢を祈っていた。

 バンドは解散し、メンバーも年齢を重ねたことで、その後のソロ・ワークにスーパーカーのような青春性を見出すことはできなくなったものの、イルこと中村弘二の作品にはいまもなお、少年的なところがある。クラフトワークのライヴ盤のタイトルを拝借して自身の新作に使ってしまうように、中村弘二はいまでも純粋に音楽を愛する人間で、彼自身のサイトのレコメンド・コーナーでは、自らが影響を受けた音楽作品などについて少年が初めてロックのレコードを手にした瞬間のように目を輝かせながら語っている。そういった無垢な佇まいと折衷主義的な態度から見える彼の少年性は、スーパーカー時代からまったく変わることがない。

 新作は、前作『∀』に収録の、向井秀徳の歌をフィーチュアリングした"死ぬまでダンス"でも顕著に表れている、ミニマル・テクノ/クリック・ハウスからの影響が色濃く出ている。総じてロッキンなエレクトロ・ハウス仕立ての曲が目立っている。これまでにも"フライング・ソーサー"や"デッドリー・ラヴリー"など、似たような趣向の曲は数多くあった。が、アルバムのタイトルが表している通り、ここに収録された新曲は、どれも音数は必要最小限まで削ぎ落とされている。曲の展開や音色による抑揚の上下も抑えられ、まるで鋭く滑空するために最適なフォルムを突き詰めた飛行機のように美しい流線型を描いている。グランジ調の曲も2曲ほどあるが、そのどちらもミニマルな仕上がりとなっている(このあたりはThe XXからの影響も感じられた)。

 前々作『ロック・アルバム』と前作『フォース』では、往年のスーパーカー・ファンが思わず顔を赤らめてしまうような、初々しいシンプルなギター・ロック調の曲が多く見られた。そのような懐古主義的なものよりも、この新作で表現されている、しっかりと前を向いて前進しようとする冒険的な音楽のほうが間違いなく彼には合っている。「アイ・ワナ・ダンス・ウィズ・ユー」と歌った直後に「アイ・ドント・ワナ・ダンス・ウィズ・ユー」と歌ったり、相変わらず突拍子もないフレーズが多く飛び出すが、それもまた、彼らしいと言えば彼らしい。スーパーカーはもうこの世には存在していないが、中村弘二の音楽は前進している。『ミニマル・マキシマム』を聴きながら「死ぬまでダンス」することに思いを巡らしたい。

DJ MASACO - ele-king

TRIBE/HARDTEK/TRIBECORE 12" Top 10s for October 2010


1
69db & Mc Tablloyd - Rave Roover

2
Yumani - Putain d'Syatem

3
Jt Labo14 - Vitessoox

4
Alryk - Techno Pink

5
Cemtex - Eternal Torment(scratch's by Dj Zeb)

6
Sagsag23 - Sauve Toi

7
Disakortex - Mang ton Disak o Kortex

8
Azhot (xlr) - Bubles

9
Bassmaker - Kawatt

10
Suburbass - Cocaination Was Low Level

#2 DJ Krush & Prefuse 73 @KOKO - ele-king

 去る10月16日(土)、SOUNDCRASH presents 〈DJ Krush & Prefuse 73@KOKO〉にて、両ヘッドライナーのサポートを務めさせてもらいました。

 トップバッターとして登場したのは、DMCチーム部門の決勝戦に出演するために日本から訪英していた、YASA & HI-CによるKIREEK。バトルDJとして、世界中のヘッズから支持される彼らですが、当日はそのスキルを無理に見せつけることなく、ゆっくりと、しかし確実に、温まりはじめたばかりだったフロアの温度を上げていき、彼らが単なるバトルDJではなく、ミックスを中心としたオーソドックスなパフォーマンスでも力を発揮できることを、集まったオーディエンスの前で証明しているようでした。また、彼らは翌日に同会場で開催された〈DMC黴€Team World Championship 2010〉にて、再度世界チャンピオンの座の防衛に成功し、フランスのC2Cが持つ記録と並ぶ、4連覇を達成しました。

 続いて登場したのは、The Cinematic OrchestraのギタリストであるStuart McCallum。当日は同じくThe Cinematic Orchestraで活動するドラマーのLuke Flowersと、シンガーHeidi Vogelによるトリオ編成として出演。その技術とたしかなセンスに裏打ちされたジャジーかつパワフルなパフォーマンスは、当日のラインナップの中で異彩を放ちつつも、ほろ酔いのオーディンエンスを大いに湧かせていました。


アンカーソングのライヴ風景。

 ちょうど日付の変わった深夜0時に、僕は3番手として出演させてもらいました。冒頭の2曲をソロとして演奏した後、弦楽四重奏をステージに迎え入れ、新曲の"Ornaments""と"Plum Rain"を含む、合計6曲を演奏しました。前者はダブステップのビートを、後者はUKガラージの要素を取り入れ、どちらも自分なりに新しいことにチャレンジした楽曲で、フロアの反応に多少の不安もありましたが、蓋を開けてみれば、どちらも好意的に受け止めてもらえたようでした。宮殿のような造りをした会場の〈KOKO〉は天井が非常に高く、場合によっては弦楽器の音が分離し過ぎて、一体感のないものになってしまうこともあるのですが、すでにフロアを埋め尽くしていたオーディエンスの熱意あるレスポンスを目の当たりにして、胸を撫で下ろすとともに、後に控えるふたりのヘッドライナーにうまくバトンタッチできたことを、とても嬉しく思いました。


いまだ根強い人気のあるPrefuse 73

 ヘッドライナーとして先陣を切ったのはPrefuse 73。普段はドラマーやターンテーブリスト等をゲストに迎えて、バンドとして演奏することが多い彼ですが、当日はラップトップとMPC1000を中心とした、ややチルアウト気味のソロセットを披露していました。エレクトロニカ/ヒップホップのシーンの中心人物として数多くの作品を発表し、確固たる地位を築いている彼の曲群は、ただモダンなだけでなく、音楽的な深みに満ちていて、自身の音楽に対する深い愛情が現れているように思えます。集まったオーディエンスも、広く知られた『One Word黴€Extinguisher』などの作品からの楽曲のみならず、未発表だと思われるものに対しても、ゆっくりと身体を動かし、そしてじっくりと耳を傾けているようでした。完成したばかりだという、女性ヴォーカリストたちとのコラボレーション作品となるニュー・アルバムへの期待を、大いに膨らませてくれるセットでした。


DJ Krushへのリスペクトは変わらない

 そして当日のトリを飾ったのはもちろんDJ Krush。フロアの温度も最高潮に達し、彼の登場にフロアからは大きな歓声が沸き起こって、彼の名を世界に轟かせる発信地となったここロンドンで、いまでも変わらず多くのファンが彼を待っているということを、改めて目の当たりにしました。
 当日は来年発表予定だという新作からの楽曲と、過去のクラシックを織り交ぜたセットを披露して、フロアのオーディエンスの期待にがっちりと応えているようでした。ロンドンのダンス・ミュージックのシーンは非常にサイクルが早く、新しいもの好きというイメージが強くありますが、そのいっぽうで彼の楽曲のような、風化してしまうことのないタフさを備えた音楽に対する理解と情熱も、この街のオーディエンスには、たしかに備わっているように思えます。またステージ脇には、そのパフォーマンスをまじまじと見つめるPrefuse 73の姿がありました。DJ Krushとの競演は初めてだったそうで、いち音楽ファンとして彼のパフォーマンスを堪能しているようで、その演奏を終えたときに、フロアのオーディエンスとと同様に、惜しみない拍手を送り続けていました。
 すべてのミュージシャンにとって、自分の尊敬するアーティストと競演することほどエキサイティングなことはないのだと、改めて思い出すことができた一夜でした。


Mark McGuire - ele-king

 少々面食らうほど、感傷的でノスタルジックな作品。オハイオ州クリーヴランドの3人組、エメラルズのギタリスト、マーク・マッガイア、今年は2007年にカセットテープで発表した『タイディングス』と2008年に同じくカセットテープで発表した『エメスィスト・ウェイヴ』のカップリングが〈ワイヤード・フォレスト〉から『タイディングス/エメスィスト・ウェイヴ』としてアナログ盤とCDで再発されている。つい先日は2008年のカセットテープ作品『オフ・イン・ザ・ディスタンス』もアナログ盤として再発され、それが日本では瞬く間に完売、そして〈エディション・メーゴ〉から待望の新録によるアルバムが本作『リヴィング・ウィズ・ユアセルフ』となる。こちらも最初のアナログ盤は即売で、僕も手に入れるのにそれなりに労をとっている。エメラルズ(およびOPN)は、欧米のメディアではこの1年あまりでけっこうな評価を受けているが、日本での人気も大したもののようだ。
 
 誰の耳にも明らかなように、マーク・マッガイアの音楽の根幹にあるのはマニュエル・ゲッチングである。ゲッチング以外の影響に関しては、本人の弁に寄ればクラフトワークと初期から中期にかけてのポポル・ヴーだというが、クラウトロックからの多大なインスピレーションは何よりも彼の音楽そのものが雄弁に物語っている。彼らの大量のカセットテープやCDRによる超限定リリースも、初期のクラスターのようなワイルドな即興性に重点を置いているがゆえに可能なのだろう。ちなみに彼らがカセットテープというレトロなメディアを使う理由は、CDよりも温かいその音質ゆえである。そういう意味で彼らは、いまふたたび音楽メディアのあり方を問うている若い世代の代表でもある。
 
 『タイディングス/エメスィスト・ウェイヴ』のテーマが題名通りの「海」であったように、マッガイアは彼の新作にも幼少期から思春期までの思い出と家族という明確なテーマを与えている。インナースリーヴには彼の育った家の写真があり、スリーヴには彼の思い出の写真がコラージュされている。つまりアルバムはきわめて個人的な自叙伝である。
 家族のざわめきが聞こえ、アコースティック・ギターの素朴なストロークがゆっくりと重なり、やがてノイズとともにフラッシュバックがはじまる。1曲目の"記憶の広大な構築物(The Vast Structure of Recollection)"は、そしてマッガイアの十八番とも言えるミニマリズムの煌めきへと展開する。よりメロウな2曲目の"アラウンド・ジ・オールド・ネイバーフッド"は多くの人がアプローチしやすい曲のひとつで、続く"クロウズ・ローリング・イン"~"ブレイン・ストーム"同様にゲッチング・チルドレンとしてのマッガイアの特徴がよく出ている。ギターの反復のうえにいくつかのギターが階層化され、そして絡み合い、いわばコズミック・ミュージックとしての華麗なテペストリーを編んでいく......というわけだ。B面の1曲目"トゥ・ディフレント・ピープル"から3曲目の"クリア・ザ・コブウェブス"まではアルバムでもっとも美しい瞬間が用意されている。記憶のなかを彷徨いながら、自分にはまだこの音楽をうまく語る言葉がないことに気がつかされる。
 最後の曲"ブラザーズ"でもまた、家族の会話が挿入される。父親か叔父らしき人物が息子にガールフレンドについて警告している(こうした会話は、歌詞カードとしてインナーに印刷されている)。そしてこの曲は、アルバムのなかで唯一ドラムの入っている曲としてノイズ・ロック・サウンドを展開する......そして"ブラザーズ"はビートレスとアルペジオの煌めきへと突入し、嵐のように過ぎ去った日々のなか、家族のざわめきとともに消えていく。良い思い出と悪い記憶が彼方へと追いやられるように。

 アルバムには「すべてを聴き逃さないようにヘッドフォンで聴いてください」と記されている。その意味するところは実際にヘッドフォンで聴くとよくわかる。テーマは 個人的なものであっても、この音楽は多くの耳を潤すことだろう。しかもそれは同時に、この先さらに多くの耳に発見されるであろう才能の存在を強く主張している。

Spoek Mathambo - ele-king

 南アフリカからゲットー・エレクトロの1作目。サイモン・リングローズと組んだプレイドーの名義ではすでに数枚のEPやミニ・アルバムをリリースしているMCのンサロ・ジェイムズ・モンド・モクガタ(とお読みするんでしょうか=Nthato James Monde Mokgata)がひと足先にソロ・アルバムとして完成させたもので、スパンク・ロック風のダンスホールから南アならではのクワイトなど思わず腿に力が入る全14曲。ドンガドンガラ......と、トライバル調でスタートし、タイトル曲はグライムやダブステップをアフロ・ビートと融合させた見事なミクスチャー・エレクトロ("パート2"はそのビートを銃声に置き換えたバイリ・ファンキへのアンサー・ダブ?)。全体にシャッフルの効いたエレクトロのヴァリエイションが、前半は重力からの解放を約束してくれ、どう聴いてもジョイ・ディヴィジョン"シーズ・ロスト・コントロール"のカヴァーから後半は反対に地の底まで沈められる。"ウォー・オン・ワーズ"は本当に重い......(新作が〈プラネット・ミュー〉からリリースされたジュークのDJラシャドをはじめとするフル・リミックス・アルバムも配信のみでリリースされている)。

 いま、中国の評判はアフリカでもとても悪く、中国からの投資が上手くいっていないコンゴをはじめ中途半端なやり方に怒り心頭な国が少なからず、そのツケをアメリカが引き受けることによって、アメリカの経済的な進出がかつてないほど歓迎を受けているという(ソマリアでのアルカイダ掃討作戦など政治的な進出はもちろんその限りではない)。失業率90%のジンバブエが最大のチャンスになるというリチャード・ブランスンには戸惑っている経済人も多いようだけれど、インドへの投資には失敗したドイツのBBE(本社はイギリス)がこのアルバムのリリース元となっており、そのせいか、とてもアフリカの音楽とは思えないジャケット・デザインになったといえる(フェラ・クチのデザインだって、もっとダイナミックな感性を貴重としていた)。それが、しかし、コーラス・ワークなどは典型的なアフリカ調でありながらも、それだけではない重さを内包したこの音楽をパッケージするには最適だったという気もしないではない。ゴールド・パンダソラー・ベアーズによってチルウェイヴとの境すら曖昧になったポスト・ダブステップに対して、ダブステップの闇を南アが引き継いだか......。

interview with Agraph - ele-king


agraph / equal
Ki/oon

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ゴールド・パンダから〈ラスター・ノートン〉の名前を聞いて、そしてアグラフの『イコール』にはアルヴァ・ノトが参加していることを知る。同じ時期にふたりの新世代の、背景も音楽性も異なるアーティストから、同じように、しかも久しぶりにカールステン・ニコライの名を耳にして、ひっかからないほうが不自然というものだろう。エレクトロニック・ミュージックの新局面はじつに忙しなく、かつて〈ミル・プラトー〉が宣言したようにいろんなものが絡み合いながら脱中心的に動いているように感じられる。
 クラブ・ミュージックに関して言えば、多くの論者が指摘するように、ジェームス・ブレイクが新しいところに向かっている。ドイツ語で"ピアノ作品"を意味する「クラヴィアヴェルクEP」を聴いていると、彼が単なるブリアル・フォロワーではないことを知る。ピアノの心得があることを、彼は5枚目のシングルで披露しているのだが、おかしなことにアグラフもまた、『イコール』において彼のピアノ演奏を打ち出している。なんというか、気兼ねなく自由に弾いている。彼のセカンド・アルバムを特徴づけているのは、ピアノとミニマリズムである。
 
 アグラフの音楽は清潔感があり、叙情的だ。きわめて詩的な広がりを持っている音楽だが、その制作過程は論理的で秩序がある。作者の牛尾憲輔と話していると、彼ができる限り物事を順序立てて思考するタイプの人間であることがよくわかる。その多くが感覚的な行為に委ねられるエレクトロニック・ミュージックの世界においては、彼のそれはどちらかと言えば少数派に属するアティチュードである。そして思索の果てに辿り着いた『イコール』は、いまIDMスタイルの最前線に躍り出ようとしている。
 
 リスナーが、スティーヴ・ライヒ・リヴァイヴァルとカールステン・ニコライを経ながら生まれたこの音楽の前から離れられなくなるのは時間の問題だ。アグラフの、傷ひとつないピアノの旋律を聴いてしまえば、多くの耳は立ち止まるだろう。息を立てるのもはばかれるほどの、控えめでありながら、どこまでもロマンティックな響きの前に。

実家が音楽教室でピアノをやっていたので、坂本龍一さんの曲は弾いてました。それは手癖として残っていると思います。坂本龍一さんの手癖にライヒがのっかているんです(笑)。だから混ざっているように聴こえるんでしょうね。

日常生活ではよく音楽を聴くほうですか?

牛尾:最近は聴かなくなりましたね。本ばっか読んでいます。ぜんぜん聴いてないわけじゃいんですけどね。

音楽が仕事である以上、当然仕事の耳で音楽を聴かなくてはならないと思うんですけど、自分の快楽として聴く場合の音楽はどんな音楽になるんですか?

牛尾:基本的にはすべて電子音楽かクラシックです。

どんな傾向の?

牛尾:一筆書きで描かれた、勢いのあるものよりかは、家で聴いて奥深くなっていける細かく打ち込まれたもの。アパラットみたいな、エレクトロニカとテクノのあいだにあるようなもの。ファーストを作っているときからそうだったんですけど、そういう音楽家、(スティーヴ・)ライヒ的な現代音楽......ミニマルであったりとか、そういう音像の作られ方をしているものをよく聴きますね。

いまの言葉はアグラフの音楽をそっくり説明していますね。

牛尾:そうかもしれません。僕の音楽はそういう影響を僕というフィルターを通して変換しているのかなと思うときもあります。

最初は鍵盤から?

牛尾:はい。

今回のアルバムの特徴のひとつとしては、鍵盤の音、メロディ、旋律といったものが挙げられますよね。

牛尾:そうですね。

自分の音楽をジャンル名で呼ぶとしたら何になると思います?

牛尾:さっき言った、エレクトロニカとテクノのあいだかな。

アンビエントはない?

牛尾:その考え方はないです。

ない?

牛尾:アンビエントをそれほど聴いてきたわけではないんですよ。ファーストを作ったときに「良いアンビエントだね」と言われたりして、それで制作の途中でグローバル・コミュニケーションを教えてもらって初めて聴いたりとか、ブライアン・イーノを聴いてみたりとか......。

イーノでさえも聴いてなかった?

牛尾:意識的に作品を聴いたのはファーストを出したあとです。

カールステン・ニコライ(アルヴァ・ノト)みたい人は、エレクトロニカを聴いている過程で出会ったんだ。

牛尾:そうです。東京工科大学のメディア学部で学んだんですけど、まわりにICC周辺、というかメディア・アートをやられている先輩や先生だったりとかいたんですね。そういう人たちに教えてもらったり、いっしょにライヴに行ったりとか、スノッブな言い方になりますが、アカデミックな延長として聴いていました。

なるほど。アンビエント......という話ではないんだけど、まあ、エレクトロニカを、たとえばこういう説明もできると思たことがあったんですよね。ひとつにはまずエリック・サティのようなクラシック音楽の崩しみたいなところから来ている流れがある。もうひとつには戦後マルチトラック・レコーディングの普及によって多重録音が可能になってからの、ジョージ・マーティンやジョー・ミークやフィル・スペクターみたいな人たち以降の、レコーディングの現場が記憶の現場ではなく創造の現場になってからの流れ、このふたつの流れのなかにエレクトロニカを置くことができるんじゃないかと。アグラフの音楽はまさにそこにあるのかなと、早い話、坂本龍一と『E2-E4』があるんじゃないかと思ったんです(笑)。

牛尾:なるほど(笑)。でも『E2-E4』はそこまで聴いてないんですよ。

やはりライヒのほうが大きい?

牛尾:大きい。『テヒリーム』(1981)みたいにリリカルなものより、彼の出世作が出る前の、テー プ・ミュージックであったりとか、あるいは『ミュージック・フォー・18ミュージシャンズ』(1974)であったりとか、当時のライヒがテープを使って重ねていたようなことをシーケンサーで再現できるように打ち込んだりはよくやりますけどね。

なるほど。

牛尾:坂本龍一さんはたしかにあります。実家が音楽教室でピアノをやっていたので、坂本龍一さんの曲は弾いてました。それは手癖として残っていると思います。坂本龍一さんの手癖にライヒがのっかているんです(笑)。だから混ざっているように聴こえるんでしょうね。

しかも坂本龍一っぽさは、ファーストでは出していないでしょ。

牛尾:出ていないですね。

今回はそれを自由に出している。ファーストの『ア・デイ、フェイズ』よりも自由にやっているよね。

牛尾:ピアノを弾けるんだから弾こうと思ったんですよ。

僕は3曲目(nothing else)がいちばん好きなんですよ。

牛尾:ありがとうございます(笑)。

あの曲は今回のアルバムを象徴するような曲ですよね。

牛尾:そうですね。

ファーストはやっぱ、クラブ・ミュージックに片足を突っ込んでいる感じがあったんだけど。

牛尾:そうです、今回は好きにやっている。ファーストも実は、制作の段階では4つ打ちが入っていたり、エレクトロのビートが入っていたりして、だけど途中で「要らないかな」と思ったんです。それで音量を下げたり、カットしたりしたんですけど、基本的に作り方がダンス・ミュージックだったんですね。展開の仕方もすべて、ダンス・ミュージック・マナーにのってできているんです。今回はクラシカルな要素、アンサンブル的な要素を取り入れていたんです。

まったくそうだね。

牛尾:こないだアンダーワールドの前座をやったんですけど、前作の曲は四分が綺麗にのっかるんです。でも、今回の曲ではそれがのらないので、ライヴをやってもみんな落ち着いちゃうんですよね(笑)。

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「人がない東京郊外の感じをロマンティックに切り取っているよ」と言われて、それはすごく腑に落ちる言い方だなと。とにかく僕の牧歌的な感覚は、そっから来ていると思います。


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今回自分の世界を思い切り出そうと思ったきっかけは何だったんですか?

牛尾:新しいことをやりかったというのがまずあります。前作ではやらなかったこと、まだ自分が出してないものを出そうと。それと、オランダ人で、シメオン・テン・ホルト(Simeon Ten Holt)というミニマルの作家がいて、その人の『カント・オスティナート(Canto Ostinato)』という作品があって、フル・ヴァージョンだとピアノ6台、簡略化された聴きやすいヴァージョンではピアノ4台なんですけど、そのCDのピアノの響きというか、サスティンの音に含まれる空気感みたいなものにとても気づくところがあって、まあ、具体的なものではないんですけど、その空気感に触発されというのはありますね。

ちょっとのいま言った、えー、シメオネ?

牛尾:シメオン・テン・ホルトです。

スペルを教えてもらっていいですか?

牛尾:はい。(といって名前と作品名を書く)

僕もスティーヴ・ライヒは行きましたよ(笑)。90年代に来たときですね。あれは生で聴くと本当に最高ですよ。

牛尾:僕は昨年の来日のときに2回行きました。質疑応答までいました(笑)。

この10年で、スティーヴ・ライヒは見事にリヴァイヴァルしましたよね。

牛尾:僕は技法的にはすごく影響受けましたね。

ミニマル・ミュージックには反復と非連続性であったりとか、ライヒの技法にもいろいろあると思いますが、とくにどこに影響を受けたんですか?

牛尾:フェイジングという技法があって、ずらして重ねていくという技法なんですけど、それを根底においてあとは好きなように作っていく。そうすると反復性と非連続性が、重ねた方であるとか響きの聴かせ方で、再現とまではいかないまでも自分のなかに取り込めるのかなという意識がありました。テクニカルな要素ですけどね。

それはやっぱ、アグラフがピアノを弾けるというのが大きいんだろうね。

牛尾:そうかもしれないですね。とにかくピアノを弾こうというのが今回はあったので。

楽器ができる人はそういうときに強い。ダブみたいな音楽でも、感覚的にディレイをかける人と、ディレイした音とそのとき鳴っている音との調和と不調和までわかる人とでは作品が違ってくるからね。

牛尾:僕はそこまで音感が良いほうではないんですけどね。音楽の理論も多少は学んだけど、ちゃんと理解しているわけでもないし、すごく複雑な転調ができるわけでもないし、ワーグナーみたいな方向の和声展開が豊富にできるわけでもないので、その中途半端さがコンプレックスでもあるんです。ただ、その中途半端さは自分のメロディの描き方にも出ているんですよね。だから、それが欠点なのか、自分の味なのか計りかねているんですよね。

なるほど。

牛尾:このまま勉強していいものなのか、どうなのか......好きなようにやるのがいいと思うんですけど。だからいま、菊地(成孔)さんのバークリー・メソッドの本を置いて、「どうしようかな」と思っているところなんです(笑)。

ハハハハ。まあ、音楽理論が必ずしも作品をコントロールできるわけではないという芸術の面白さもあるからね。それこそ、さっき「一筆書き」と言ったけど、ハウスとかテクノなんていうのは、多くが一筆書きでパンクなわけでしょ。感覚だけでやっていることの限界もあるんだけど、そのなかから面白いものが生まれるのも事実なわけだし。

牛尾:そうですね。そこをどうスウィッチングするのかは僕も考えていかなくてはならないことですしね。

きっと牛尾くんみたいな人は曲の構造を聴いてしまわない? 「どういう風に作られているんだろう?」とか。

牛尾:聴いてしまいますね。

だからエレクトロニカを聴いていても、曲の作り方がわかってしまった時点でつまらくなってしまうという。

牛尾:それはあるかもしれませんね。あと、楽典的な技術ではなくて、音響的な技術に関しては僕はもっとオタクなので、たとえば僕、モーリッツ・フォン・オズワルドのライヴに行っても音響のことばかりが気になってしまうんですね(笑)。だから、内容よりも音像の作り方のほうに耳がいってしまうんですね。

そういう意味でも、アルヴァ・ノトはやっぱ大きかったんですかね。最近、ゴールド・パンダという人に取材したらやっぱその名前が出てきたし、今回のアグラフの作品にもその名前があって、ひょっとしていまこの人も再評価されているのかなと。

牛尾:エポックメイキングな人ですね。

〈ラスター・ノートン〉もいま脚光を浴びているみたいですよ。

牛尾:それは嬉しいですね。僕が好きになったのは大学時代だったんですけど、とにかくやっぱどうやって作っているのかわからない(笑)。すごいなーと。そういえば、こないだミカ・ヴァニオのライヴに行ったら、グリッジを......ホットタッチと言って、むき出しになったケーブルを触ることでパツパツと出していて、僕はもっと知的に作っていたかと思っていたので、すごいパンクだなと思ったんです(笑)。

フィジカルだし、まるでボアダムスですね(笑)。

牛尾:しかもコンピュータを使わずにサンプラーだけでやっている。しかもエレクトライブみたいな安いヤツでやってて。スゲーなと思った(笑)。エイブルトン・ライヴであるとか、monomeというソフトがあって、そういうアメリカ人が手製で作っているハードウェアとソフトのセット、Max/MSPのパッチのセットであるとか、スノッブなエレクトロニカ界隈でよく取り立たされるようなソフトウェアって、実は適当に扱うようにできているんですね。僕からはそういう見えていて、僕はCubaseというソフトを使っているんですけど、すごく拡大して、できるだけ厳密に、顕微鏡的に作ることが多いんです。つまり(ミカ・ヴァニオみたに)そういう風にはできていなくて、ああいう音楽がフィジカルに生まれる環境が実はヨーロッパにはすごくあって......、で、そういう指の動きによる細かさが、ループだけでは終わっていない細かさに繋がっているのかなと。

なるほど。

牛尾:僕は典型的なA型なんで(笑)。

たしかに(笑)。そこまで厳密に思考していくと、どこで曲を手放すのか、大変そうだね。

牛尾:それはもう、そろそろ出さないと忘れられちゃうなとか(笑)。そういうカセがないと、本当にワーク・イン・プログレスしちゃうんで。

それは大変だ。

牛尾:でも、「あ、できた」と思える瞬間があったりもするんです。

ちょっと話が前後しちゃうんだけど、ダンスフロアから離れようという考えはあったんですか?

牛尾:それはないですね。ただ、自由にピアノを弾こうと思っただけで。フロアから離れようとは思っていなかったです。追い込まれた何かがあるわけではないですね。

音楽的な契機は、さっき言った......えー、イタリア人だっけ?

牛尾:いや、オランダ人のシメオン・テン・ホルト。ファーストのときはハラカミ(・レイ)さんへの憧れがすごく強かったんですね。高周波数帯域が出ていない、こもっているような、ああいう作りにものすごい共感があったんです。それでファーストにはその影響が出ている。だから、次の課題としてはその高い周波数をどうするのかというのがあった。それを思ったときも、ピアノのキラキラした感じならその辺ができるなと思って。ピアノの、たとえば高い方の音でトリルと言われる動きをしたときとか、感覚的に言えばハイハットぐらいの響きになるんですね。だから高周波数の扱いを処理すれば、新しいところに行けるかなと思ったんです。

ピアノは何歳からやっていたんですか?

牛尾:6歳です。でも、適当にやってました。

じゃ、ご両親が?

牛尾:いやいや、家が団地の真んなかにあったので、「それじゃ牛尾さん家に集まろうよ」という話になって、そのあと引っ越してから一軒家になってからもそのまま続いているってだけで、親が音楽をやっていたわけではないんですよね。

出身はどこなんですか?

牛尾:東京の多摩のほうです。だから、多摩川をぷらぷら散歩するのが好きで、ファーストは散歩ミュージックとして作っていたので。

牛尾くんの作品の牧歌性みたいなのもそこから来ているのかな?

牛尾:そうだと思いますね。ディレクターから「人がない東京郊外の感じをロマンティックに切り取っているよ」と言われて、それはすごく腑に落ちる言い方だなと。僕は人は描かないんですけど、橋とか建物とか人工物は描いていると思うので。とにかく僕の牧歌的な感覚は、そっから来ていると思います。ただ、ちょっと斜陽がかっていますよね。

なるほど。ずっとピアノだったんですか?

牛尾:とはいえ、ドラクエを弾いたり(笑)。

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夜の海を散歩したこと、夜の街を山の上から見たことが大きなヒントになっています。そのとき感じたのは、「そこにあるのに見えていない」ということだったんです。夜の海は真っ暗で海の存在感はあるのに見えない、夜の街も街はあるのに人が見えない。


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音楽体験として大きかったのは?

牛尾:アクセス。

なんですかそれは?

牛尾:浅倉 大介さんとか、どJ-POPです。僕はそれをテレビで見て、「将来ミュージシャンになろう」と。それからTMN、小室哲哉さんを見て、「やらなきゃ」と(笑)。

はははは。

牛尾:痩せているから運動部はやめようと(笑)。まあ、そういう感じでしたね。

自分で意識的にCDを買いに行ったのは?

牛尾:クラフトワークですね。中学校まではJ-POPだったんですけど、卒業間際に友だちの家で『ザ・ミックス』を聴いて、もう「すごーい!」と(笑)。"コンピュータ・ラヴ"の「ココココココ......」と短いパルスみたいな音にリヴァーブがかかっているだけというブレイクがあるんですけど、それだけテープに録ってずっと聴いてたっりとか。

はははは。

牛尾:音フェチみたいなのは、もうその頃からありました。気に入った音色をずっと追い続けていたりとか......ピアノを弾いていると戦メリを弾きたくなってくるので、そこから坂本龍一さんを聴いて、YMOを聴いて、みたいなのがちょうどクラフトワークを聴きはじめたのと同じ時期で。そうこうしているうちに90年代後半で、卓球さんやイシイさんも聴いたり、雑誌を見ると「〈ルーパ〉というパーティがあってそこでは80年代のニューウェイヴもかかっているらしい」とか、で、「あー、行かなきゃ」って(笑)。それからジョルジオ・モロダーを探してみたり。そうやって遡っていってるだけなんです。

最初から電子音楽には惹かれていたんだね。

牛尾:家にはピアノとエレクトーンがあったんですけど、ずっとエレクトーンに憧れがあったんですよ。それが大きかったかもしれないですね。で、クラフトワークにいって、それから......「卓球さんが衝撃を受けた"ブルー・マンデー"とはどういう曲なのか」とかね。

そうやって一筆書きの世界に近い付いていったんだね(笑)。

牛尾:そうです(笑)。だから、エレディスコなんです。卓球さんにコンピに入れてもらった曲も、最初に出したデモはオクターヴ・ベースがずっと「デンデンデンデン」と鳴っているような(笑)。ちょうど当時はシド・ミードのサウンドトラックを作るんだと自分で勝手に作っていた時期で。

いまのアグラフの原型は?

牛尾:浪人か大学のときです。でも、ハラカミさんを聴いたのは、高校生のときでしたけどね。だから、エレディスコを作りつつ、そういう、小難しい......。

IDMスタイル(笑)。

牛尾:そう、IDMスタイルと呼ばれるようなものを作りはじめたんです(笑)。だんだん知恵もついてきて、細かい打ち込みもできるようになったし、アグラフの原型ができていった感じですかね。

小難しいことを考えているかもしれないけど、ファーストよりも今回の新作のほうが若々しさを感じたんですよ。だって今回のほうが大胆でしょ。ファーストはもちろん悪くはないんだけどわりと型にはまっているというか。

牛尾:ハラカミさんへの憧れですからね。エレディスコをやっていたのも卓球さんやディスコ・ツインズへの憧れでした。それはいまでもあるんですけど、自分のなかで結実できていないんですよね。それよりも自分に素直に自分の味を出すべきだと思ったんですよね。自分がいま夕日を見ながら聴いて泣いちゃう曲とか(笑)、そこに根ざして曲を作りたかったんです。

なるほど。

牛尾:そうなんです。ファーストは(レイ・ハラカミへの)憧れでしたね。

この新作は時間がかかったでしょ?

牛尾:かかりましたね。ファーストをマスタリングしているときにはすでに取りかかっていましたから。でも、最初はうまくいかなった。『ア・デイ、フェイズ』の"II"になってしまっていたんですね。

最初にできたのは?

牛尾:1曲目(lib)と2曲目(blurred border )です。テクニカルな細かい修正を繰り返しながら、だんだん見えてきて、それで、1曲目と2曲目ができましたね。「行けるかも」とようやく思えました。

アルバムを聴いていてね、ものすごく気持ちよい音楽だと思うんだけど、たとえば1曲目にしても、かならず展開があるというか、だんだん音数が多くなっていくじゃない? ずっとストイックに展開するわけじゃないんだよね。そこらへんに牛尾くんのなかではせめぎ合いがあるんじゃないかなと思ったんですけどね。

牛尾:僕の曲は、後半に盛りあがっていって、ストンと終わる曲が多いんですよ。

多いよね。

牛尾:小説からの影響なんでしょうね。小説をよく読むんです。小説って、それなりに盛りあがっていって、ストンと終わる。あの感じを自分が紡ぎ出す叙情性の波で作りたいんだと思います。

なるほど。

牛尾:僕は散歩しながら聴くことが多いんですけど、曲を聴き終わって、いま見ている風景を......、夕焼けでも朝焼けでも夜の街でもいいんですが、曲が終わったときに風景をそのまま鳥肌が立ちながら見ている感覚というか、それをやりたいんです。

それは面白いね。実際に曲を聴いていて、その終わり方は、きっと考え抜いた挙げ句の結論なんだなというのが伝わってきますね(笑)。

牛尾:ありがとうございます(笑)。

あと、たしかにヘッドフォンで聴くと良いよね。

牛尾:まあ、やっぱ制作の過程で散歩しながら聴いているので、どうしてもそうなってしまいますね。でも、どの音量で聴いても良いように作ったし、爆音で聴かないとでてこないフレーズもあるんですよ。それはわざと織り込んでいる。

ちなみに『イコール』というタイトルはどこから来ているんですか?

牛尾:僕の音楽はコンセプトありきなんです。ファーストは日没から夜明けまでのサウンドトラックというコンセプトで作りました。今回は、夜の海を散歩したこと、夜の街を山の上から見たことが大きなヒントになっています。そのとき感じたのは、「そこにあるのに見えていない」ということだったんです。夜の海は真っ暗で海の存在感はあるのに見えない、夜の街も街はあるのに人が見えない。それはひょっとしたら見ている対象物と自分とが均衡が取れている状態なんだなと思ったんです。そのとき、今回のタイトルにもなった"static,void "とか"equal"とか、そういう単語が出てきた。それでは、これを進めてみようと。抽象的だけど、寄りかかれる柱ができたんです。

なるほど。最後のアルヴァ・ノトのリミックスがまた素晴らしかったですね。

牛尾:そうなんです。今回は10曲作って、最後はもう彼に託そうと。ドイツ人がわけのわからないアンビエントをやって終わるという感じにしたかったんです。そうしたらカールステン(・ニコライ)から「フロア向けにする?」というメールが来て。「あの人も、リミックスのときはフロアを意識するんだ」と驚きましたけどね。

しかもあれでフロア向けというのが(笑)。

牛尾:でも突出していますよね。マスタリングをやってくれたまりんさんにしても、もう1曲リミックスをしてくれたミトさんにしても、あとブックレットに小説を書いてくれた円城(塔)さんにしても、僕の描いた青写真以上のものを挙げてくれた。だから満足度がすごく高い。

僕、小説はまだ読んでないですよね。僕も日常で聴いている音楽はインストが多いんですけど、それはやっぱ想像力が掻き立てられるから好きなんですね。同じ曲を妻といっしょに聴いていても、僕と妻とではぜんぜん思っていることが違っていたりする。そこが面白いんです。

牛尾:そこは僕もまったく同じです。たとえばtwitterで曲を発表すると、僕が持っている「この曲はこういう気持ちで作りました」という正解と、ぜんぜん違った感想をみんな返してくれるんですよね。それが面白いんです。

まさに開かれた解釈というか。だから小説を読んでしまうと、イメージが限定されてしまうようで恐いんです。

牛尾:円城さんは文字を使っているんですけど、ホントに意味わかんないんですよ。言い方は悪いんですけど(笑)。せっかく音楽があるのに、愛だの恋だのと、なんで歌詞で世界観を狭めてしまうんだろうなというのはずっとあるんです。でも、円城さんの言葉は違うんですよ。もっと開かれている言葉なんです。小説を付けたかったわけじゃないんです。円城さんの言葉が欲しかったんです。

なるほど。

牛尾:さらに勘違いしてもらえると思うんです。

わかりました。じゃあ、僕も読んでみます。

牛尾:ぜひ(笑)。

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