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Evil Madness

Evil Madness

Cafe Cicago

Ultra Eczema

三田 格   Nov 02,2010 UP

 まずはスウェーデンからB・J・ネルソン。90年代後半からハザードの名義でアッシュ・インターナショナルやタッチからフィールド・レコーディングの作品を数々手掛け、00年代に移ってからは他の名義も加えてゼヴやクリス・ワトスンらともコラボレイト・アルバムを制作。そのなかにはアイスランドで実験音楽の限りを尽くしてきたスティルアップステイパとの持続的なシリーズもあり、そこからもふたり。そして、同じくアイスランドから現在、ポスト・クラシカルの代表とされ、すでに貫禄のある存在と化してきたヨハン・ヨハンソン(裏アンビエントP182)と、やはりアイスランド・テクノからまだ無名のDJミュージシャン(という名義)と、すでに脱退したロック系のカーヴァーというアイスランドのアンダーグラウンド・オールスターズ+1による3作目。前2作はアイスランドの地元レーベルからリリースされていたものが、なぜか癖のあるベルギーのレーベルからとなり、内容にも大きく変化が起きている。

 ひと言でいえば、ヨハン・ヨハンソンもメンバーにいるとはいえ、アンダーグラウンドの集まりにしては、これまでもエレクトロなどに色目を使っていたものが、ここへ来てはっきりとクラウトロックを意識したものにフォーカスされ、中期のクラフトワークやハルモニアをそのまま発展させたスタイルとなっている(エメラルズの変化も唐突だったけれど、もしかして世界同時クラウト・ロック化?)。スティルアップステイパやB・J・ネルソンがこれまでにやってきたことを知っている人にはとても信じられないだろうけれど、ちゃんと音楽になっているし、リズムもあればメロディもある(笑)。オープニングこそドローンじみたはじまりで、北欧の寒々しいランドスケープを想起させるものがあり、あえて00年代のすべてを切り捨てているとはいえないものの、ヘタをするとOMDにさえ聴こえるほどオプティミスティックなシンセサイザー・ミュージックは不況や右傾化が深刻化しているヨーロッパのそれではないし、そもそもユニット名にも合っていない。もしくは所々で差し挟まれるドローンには不安や恐怖などが凝縮されているような面があり、いわば現実とそこからの逃避がある種の葛藤状態にあることを表現しようとしているのかもしれない(し、ミュージシャンのつねで何も考えていないのかもしれない)。

 飽きないというより何度聴いても腑に落ちないアルバムである。あきらかにヨハン・ヨハンソンがイニシアティヴを取っていると思わせる曲もあるし、全体に彼のファンタジックな性格が吉と出たのだろうか、凶だったのか。何かが曲がり角に来ているのだろう(でも、何が?)。

 なお、ビヨークやシガー・ロス以降、急速に細分化が止まらなくなっているアイスランドの音楽シーンについては「アイスランディア」で。

三田 格