「Dom」と一致するもの

Wiley - ele-king

 以前ワイリーが来日したとき、本人が言葉の壁をひどく重たく感じたという話を関係者から聞いたことがある。なるほどとうなずけはするが、少々意外にも思った。なぜならワイリーは、その音だけでも充分に魅力的だ。
 ワイリーの音楽は、その昔は、「エスキービート(ないしはエスキモー)」なる呼称で語られるほど寒々しかった。せっかちな早口ラップとダークなガラージ・ビートによる独特のアーバン・サウンドは、ぞんぶんに尖っていた。そして、それは実に多くの若い世代に影響を与えた。ゴス・トラッドもワイリーがひとつの契機になったと話していたが、ラスティもゾンビーも、あるいはジョーカーも、多くのダブステッパーはワイリーのエスキービートに影響されている。
 実際のところいまやグライムの古典とされる2004年の『トレッディン・オン・シン・アイス』、2007年の『プレイタイム・イズ・オーヴァー』の2枚はUKアンダーグラウンドからの奇襲攻撃だった。エスキービートとは、ワイリーが自らのオルターエゴを「エスキーボーイ」と名乗ったことに由来するが、グライムというジャンルを定義したワイリーの発明は、いわば氷点下のmp3によるガラージで、それはジャングルのブレイクビーツのパートをそっくりラップに入れ替えることで生まれる氷のハーフステップだった(たとえば、140bpmの言葉、70bpmのスネア)。
 『プレイタイム・イズ・オーヴァー』がリリースされたときワイリーが何をラップしているのかを知りたくて訳してもらったことがある。そこで描かれていたのは、東ロンドンのボウ、縄張りのこと、路上の緊張感、仲間や彼女のこと、あるいは服のブランドのことなど、まあ、僕にはいまひとつピン来るような言葉ではなかったが、これがUKにおいてマイクを通して拡声されればとんでもない騒ぎへと発展するわけだ。グライムのパーティあるところに警察ありとは有名な話である。
 とはいえ、ワイリーがシーンの幅広いところから脚光を浴びたのは紛れもなくサウンド面における革新性ゆえだった。当時はオウテカのようなIDMの巨匠までもが「エスキービート」を賛辞したほどで、おそらくワイリーが思っている以上に彼のアートはさまざまな次元で伝播している(ちなみに言っておくと、グライムも立派にベッドルーム・ミュージック)。

 ワイリーは、無計画にひたすら作り続ける、野性的なタイプのアーティストである。嗅覚とリズム感、そしてひらめきをもっている、いわば天才型のプロデューサーだ。ハウス路線を展開した2008年の『シー・クリア・ナウ』もUKファンキーの台頭と歩調を合わせていると言えばそうだし、USラップに刺激されながらもUKレイヴ・カルチャーという彼のアイデンティティを明かしている点においても興味深い内容だった。が、自分の性に合ったのはワイリー直系で言えばスケプタ(ボーイ・ベター・ノウ)、もしくはテラー・デンジャー、ガラージ系だったらスティッキーのようなダンスホール寄りな感じ、さもなければ関西在住のCESのミックステープ......そんなところだった。『シー・クリア・ナウ』に収録された4/4ビートのポップ・ダンス"ウェアリング・マイ・ロレックス"はワイリーにとって最初のメインストリームでの商業的成功作となったが、ポップに舵を取ったワイリーに僕はそれ以前までのような魅力を感じなかったのである(これはリアルタイムで聴いてきた人にはわかる話だ)。
 『プレイタイム・イズ・オーヴァー』以来4年ぶりの〈ビッグ・ダダ〉からのリリースとなった昨年の『100%パブリッシング』に続いての同レーベルからの本作、『進化するか、さもなければ絶滅させられるか』というタイトルのこれは、Discogsで数えると7枚目となるが、2008年には〈エスキービーツ・レコーディングス〉から『グライム・ウェイヴ』も出しているのでワイリー名義では8枚目......いや、前作『チルアウト・ゾーン』を入れたらワイリー名義としては公式には9枚目だ。しかし、ネットにupされたzipファイル、エスキーボーイ名義を入れたら彼のカタログはさらにもっと増える(本人でさえも過去の自分の作品をすべて覚えていない)。

 アルバム・タイトルが言うように、新しいことをやってやろうという意気込みを具現化したのが『イヴォルヴ・オア・ビー・イクスティンクト』だ。CDで2枚組、アナログ盤で3枚組となったこの大作は、彼の多様なビートが詰め込まれている。それはこの2~3年のあいだワイリーから遠ざかっていた僕にとって都合の良いコレクション......というわけでもなかった。
 ワイリーの魅力は、5~6年前まではその寒々しさ、路上の緊張感にあった。コンピュータに取り込まれた低容量データの屈折した混合で、プロデュースの行き届いたヒップホップとは対極の、むしろフットワークと共振しうるような、ダンサーさえも戸惑うような少々せっかちな変異体にあった。『イヴォルヴ・オア・ビー・イクスティンクト』は活気のある作品だが、初期のカオスに回帰することはない。ワイリーは、このアルバムでは彼におけるポップ路線を新たなアプローチによって再構築しているように思える。『シー・クリア・ナウ』のときのような4/4ビートによる露骨なポップ・ダンスをやっているわけではない。が、アルバムのリリース前にネットでupされた"ブーム・ブラスト"と"アイム・スカンキング"の2曲、前者はエレクトロ路線で後者はご機嫌なトライバル、前者はスタイリッシュで後者はシンコペーションの効いた リズミックなトラック、どちらもユニークな曲だが耳に入りやすいキャッチーな曲でもある。実際、"ブーム・ブラスト"はものの見事にUKのナショナル・チャートに入ったが、僕はこれはワイリーがヒットを狙ったんじゃないかと思っている。だとしたら、『イヴォルヴ・オア・ビー・イクスティンクト』は無鉄砲なワイリーがいままで以上に練ったアルバムということになる。

 この10年でグライムの一流の役者すなわち街の問題児たちは、UKではポップの主役の座をモノにしている。それでもなお、幅広い層へのインパクトという観点で言えば、『ボーイ・オン・ダ・コーナー』と『トレッディン・オン・シン・アイス』の冷淡なカオスを脅かす作品は出ていない(まあ、新世代から出きそうな気配はいまある)。『イヴォルヴ・オア・ビー・イクスティンクト』は、グライムの親玉が『トレッディン・オン・シン・アイス』の高評価に自ら反論するかのような力作である。
 気持ちの良さを持ったアルバムだが、ビートの実験も忘れていない。"ブーム・ブラスト"にはワイリーらしい解釈が加えられているし、本作における最高の驚きのひとつ、UKテクノのベテラン、マーク・プリチャードの参加はアルバムに新鮮な活力を与えている。その2曲"スカー"と"マネーマン"にはUKテクノとグライムとの濃密な邂逅がある。前者ではアシッド・ハウスとの、後者はオールスクール・エレクトロとグライムとの溝を埋めている......というのは安直な説明だが、2曲とも真剣に格好いい。
 何はともあれ、これぞアーバン、そう、UKアーバン・ミュージックの最良の1枚だ。アルバムにはしっとりとしたR&Bバラードもあれば寸劇もある。タクシーの運転手との喧嘩らしいのだが、言葉がわかるとそれなりにバカバカしくて面白いらしい。かつて薄氷のうえを歩いていたグライムの長老は(といっもまだ33歳だが)、ユーモアも忘れない。
 ジョーイ・バートンというフットボーラーがいる。UKでは貧困と犯罪で知られるエリアで育ったミッドフィルダーである。少年時代、親類は殺され、学校には暴力があった。バートンはしかし、彼の才能と努力でイングランド代表にまでになったが、刑務所にも入った。模範生として釈放されると、フットボーラーとして活躍してはまたしても事件を起こし......数々の試練を経ていまも現役の、そして有能なパサーである。ワイリーとは、音楽におけるジョーイ・バートンであるとBBCはたとえている。

Diagrams - ele-king

 フォークトロニカとは、1990年代末のエレクトロニカ(IDM)の影響下でサンプリング・ループが使用されたロック・サウンドのように、電子音楽が注がれたフォーク・サウンドを指す。フォー・テットやカリブー(マニトバ)などがその最初の代表で、アニマル・コレクティヴのUKデビューも実はこのフォークトロニカの延長線上で起きたことだった(筆者がもっとも好きな『サング・タングス』がまさにそれで、彼らは最初のUKツアーをフォー・テットの前座としてやっている)。
 フォークトロニカとは、いち部の人たちからは対極だと思われていたアコースティック・サウンドとエレクトロニック・ミュージックとの相性の良さを証明したわけだが、しかし、僕はフォークトロニカ的な展開のなかにこそ実はポップ・ミュージックの最大の面白さがあるんじゃないかと思っている。フィル・スペクター、ビートルズやビーチ・ボーイズ、こうした人たちに共通しているのは音への執着心で、ローファイと呼ばれるタームも早い話、録音物としての音質へのこだわりのひとつの表明だ。
 トクマル・シューゴもスフィアン・スティーヴンズも、ジ・アルバム・リーフもフォークトロニカで、いまではそれをわざわざレフトフィールド・ポップなどとも呼んでいるが、そもそもポップがレフトフィールド(急進的)であることを内包している。

 ダイアグラムスは新人ではない。ギターを弾いて歌っている中心人物は、フォークトロニカのバンド、タン(Tunng)の人。もうひとりのキーパーソン、機械を操っているのは、ロイシン・マーフィーと一緒にモロコ(90年代後半、ジャジーなダウンテンポで人気を博していた)をやっていたメンバー。ダイアグラムスにはさらにまたサブリミナル・キッド(フィーヴァー・レイとの共作でも知られる)も参加している。このバンドには実績のある人たちがけっこう集まっている。
 フォークトロニカとは、実験的ではあるがリスナーを選ばず、来る者を拒まない。つまり親しみやすい。このジャンルの初期のクラシックの1枚にフォー・テットの『ポーズ』があるように、温かさもまたフォークトロニカの魅力である。春先の陽光のように、この音楽の多くは心地よい。
 もちろんこのジャンルにも落とし穴がある。それは、昼間の子供番組のような、白々しいほどのほのぼのたる善意に支配された世界をねつ造してしまうことである。ダークサイド、汚れのない世界を目の当たりにすると苛つくような人には不向きな側面が多々ある。
 『ブラック・ライト』というタイトルは、そういう意味では、フォークトロニカのかまととぶった態度を皮肉っている。ジャケにはカラス、うちの3歳の娘はこの絵を見て怖いと言ったが、良かった良かった(笑)。ダイアグラムスの基本は伝統的なフォーク・ロックで、甘いメロディ、アコースティック・ギターの魅力もたっぷりあって、少しばかり可笑しい電子処理がある。骨董品と最新の機械が同居する、ある種のファンタジーだ。が、ここにはたわいのない冗談、ちょっとした悪意が隠れている。

Chart by TRASMUNDO 2012.02.21 - ele-king

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1

SEMINISHUKEI presents ERA

SEMINISHUKEI presents ERA"3 WORDS MY WORLD"REMIX ALBUM 3 WORDS HIS WORLD (FREE DOWNLOAD) / »COMMENT GET MUSIC

2

BUSHMIND

BUSHMIND Killa Killa Inside Me (7inch) / »COMMENT GET MUSIC

3

DNT


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THUGMINATI(T.O.P.&DJ 8MAN)

THUGMINATI(T.O.P.&DJ 8MAN) NEW WORLD MURDER THE MIXTAPE »COMMENT GET MUSIC

5

TAMU

TAMU SLOW START »COMMENT GET MUSIC

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DJ PACO

DJ PACO CHICANO LOVE »COMMENT GET MUSIC

7

373

373 HURT... »COMMENT GET MUSIC

8

DJ FUNKACE

DJ FUNKACE DANGEROUS R&B MIX »COMMENT GET MUSIC

9

T2K a.k.a.Mr.Tee

T2K a.k.a.Mr.Tee TOKYO RULES »COMMENT GET MUSIC

10

OYG

OYG NOW...THEN、again »COMMENT GET MUSIC

Chart by STRADA RECORDS 2012.02.21 - ele-king

Shop Chart


1

STING

STING INSIDE-TIMMY REGISFORD & ADAM RIOS REMIXES TIMMY ADAM / WHITE (US) »COMMENT GET MUSIC
昨年度よりTimmy Regisford自身がプレイを重ねてきた話題作が日本先行でヴァイナル・リリース!2003年リリースのアルバム「Sacred Love」のリード・トラック「Inside」をハウス・リミックスした本作、StingのパワフルなヴォーカルとShelter直系のシンセが絡み合う強力なピークタイム・チューン!世界に先駆けて日本先行リリースとなりますので是非この機会をお見逃しなく

2

STEVIE WONDER

STEVIE WONDER LATELY-TIMMY REGISFORD & ADAM RIOS REMIXES TIMMY ADAM / WHITE (US) »COMMENT GET MUSIC
昨年度よりTimmy Regisford自身がプレイを重ねてきた話題作が日本先行でヴァイナル・リリース!Stevie Wonderの言わずもがなの超名曲「Lately」をハウス・リミックス!パーカッシヴなトラックにメロディアスなピアノ&ヴォーカルが最高で、中盤以降の盛り上がるパートには新たにシンセが加わり、これまた強力なピークタイム・アンセムに仕上がっています!世界に先駆けて日本先行リリースとなりますので是非この機会をお見逃しなく!

3

JOUBERT SINGERS

JOUBERT SINGERS STAND ON THE WORD FAVORITE(FR) »COMMENT GET MUSIC
Larry Levan、David Mancuso、Francois K、Danny Krivitらもフェイヴァリットな超レア盤が遂に!中古市場でも万超えの人気盤がフランスのレーベルFavoriteから正規再発!ピアノが印象的なトラックと、子供達によるゴスペル調のヴォーカルに心動かされる85年リリースの超人気曲!重鎮Tony Humphriesもミックスに参加!これはマスト!

4

VA

VA SOULMATES EP SHARIVARI(FR) »COMMENT GET MUSIC
DERRICK MAYのミックスCD「Mix Up」にも収録されていた96年リリースの大人気曲House Proud People「Lonely Disco Dancer」を収録したEPが登場!途中でSUSAN CLARK「DEEPER」のサンプリングが飛び出すグルーヴィーで盛り上がる傑作!中古市場でも値段が高騰しているのでこれは嬉しい収録!他にもNDATLレーベル主宰のKAI ALCEの作品等を収録!

5

VEDOMIR

VEDOMIR VEDOMIR EP SOUND OF SPEED(JPN) »COMMENT GET MUSIC
ウクライナの気鋭Vakulaが初となる変名プロジェクトVedomirでEPをリリース!生々しいベースやパーカッションにヴィブラフォンやピアノ、シンセが絡む極上インスト・ハウスのA1を筆頭にクオリティーの高いジャジーなインスト作品を計3曲収録!既にMark Eら様々なDJ/アーティストが賛辞を寄せプレイ・サポートの強力盤です!

6

FLIGHTS OF FANCY

FLIGHTS OF FANCY VOLUME ONE INTERNATIONAL FEEL(EU) »COMMENT GET MUSIC
【Todd TerjeやChris Coco, Soft Rocks, Max Essaらも絶賛!】ファンキーなベースにグルーヴィーなギター、さらにスペイシーなシンセ・ソロがフィーチャーされた極上バレアリック・ブギー・インスト!スローでバレアリック度がさらに高いB面のカップリング曲も最高!いつもの通り初回プレス分のみアートワーク・ジャケット付き重量盤仕様ですのでお見逃しなく!

7

MK

MK THE MKAPPELLA(10inch) DELSIN (EU) »COMMENT GET MUSIC
人気レーベルDelsinの復刻シリーズX-DSRにMKことMARC KINCHENのレア作品が登場!91年にリリースされた「The Mkappella」は、川の流れる音や小鳥のさえずりをミックスしたディープなアンビエンス・ハウス的作品!B面にはLUKE SLATERが94年にTHE 7TH PLAIN名義でリリースしたアルバムに収録されていた人気曲「Lost」をカップリング!どちらもオリジナル盤はレアですのでこの機会をお見逃しなく!

8

BEN WESTBEECH

BEN WESTBEECH SOMETHING FOR THE WEEKEND D:VISION(ITA) »COMMENT GET MUSIC
Gilles Petersonが発掘したブルー・アイド・ソウル・シンガーBen Westbeechのアルバム収録曲が嬉しいシングル・カット!温かみのあるトラックにソウルフルでエモーショナルな彼のヴォーカルが最高!途中のトランペットのソロも◎!

9

ROBERT COTTER

ROBERT COTTER TIMELESS(LP) DERBY(UK) »COMMENT GET MUSIC
イタリアのレーベルDerbyからリリースされていた80年産の激レア盤がオリジナル仕様で再発!ディスコ、AOR、アーバン、トロピカル・・・と幅広い音楽性が見事に1枚のアルバムに集約された好盤!お見逃しなく!

10

BUCIE

BUCIE GET OVER IT FOLIAGE(FR) »COMMENT GET MUSIC
Black Coffeeの大ヒット曲「Superman」でヴォーカルを務めていたBucieのソロ作が人気レーベルFolliageから登場!リミキサーにはEzelが参加しており、メロディアスで洗練されたトラックにあの可憐な歌声が乗った極上な仕上がりとなっています!

Jason Urick - ele-king

 17日から公開されているアンドリュー・ニコル監督『タイム』は、アメリカ人が愛してやまないアンチ・エイジがテーマかと思って観ていると、すぐにも格差社会の話だということがわかってくる。ふたつのテーマを単純化して見せてしまう手腕は鮮やかで、実にわかりやすく、しかもボニー&クライドを思わせるアクション映画としてまとめてしまうのだからかなわない。オキュパイという直接行動をとる者がいるかと思えば、『タイム』のようなエンターテインメントをつくる人がいる。ひとつひとつが単純極まりないものでも、それらが集まって「流れ」がつくられることに、日本にはないダイナミズムを感じてしまう。

 『裏アンビエント・ミュージック』のあとがきで僕はアンビエント・ミュージックというのはジャンル・ミュージックではなく、様々なジャンルに偏在するスタイルだと書いた。そして、とくにジャズならジャズの、あるいはテクノならテクノにおけるアンビエントの特徴といった議論には向かわなかった。むしろ撹乱させたといった方がいい。しかし、現代音楽にはそれなりに傾向があるし、ワールド・ミュージックにもどこか似通ったセンスは感じられる。ロック・ミュージックも同じくで、とくに近年、USアンダーグラウンドが生み出す発想には単純なものが多く、なかでもロウ・ファイから転じたものには「流れ」以上のものを感じ取れることが少ない。そして、数だけが多い。グレッグ・デイヴィス、ミルー、マウンテンズ、エメラルズ、ピーター・ブロデリック、ロバート・A・A・ロウ、インフィナイト・ボディ、モーション・シックネス・オブ・タイム・トラヴェル......

 ジェイスン・ユーリックのセカンド・ソロも発想の面では前作をそのまま踏襲し、レイヤーを微妙にズラしながら重ねるなど、全体としてはスキルを上げまくっている。冒頭からジ・オーブをドライにしたようなスモーク・サウンドが浴びせられ、そのままエンディングまで続いても文句はないぞーと思っていると、またしてもヴァージン・プルーンズを思わせるミニマル・ラーガやエスニック・タイプへと曲が変わっていく。1曲で1枚をやりきらないところがロック的だともいえるし、コンセプトではなく、演奏を聞かせたいというのもそうなのだろう。そして、最後に置かれたスモーカーズ・ドローンが圧巻のひと言。3時間ぐらいは聴きたいと思っていると、たったの6分で終わってしまう......

 また、ヘックスラヴ(アンビエント本P223)という名義はもう使わないのか、88人目のボアドラマーだったザック・ニールスンが本人名義でリ リースしたセカンド・アルバムも『ウォント・トゥー・ビー・ナイス』以来のフル・アンビエント作となった。前作にあたる『ウィックト・ワーク・イット・アウト』はいつも通りドラミングをあれこれと試す作風で、説明が複雑になるので、まー、おいておくとして、彼が思い出したようにアンビエント表現へと回帰してくるのはなぜなのか。しかも、この男の場合は前にも増して曲の構造が単純というか、ドラムで複雑なことをやっている反動としか思えないほどシンセサイザーの厚塗りでことを済ましてしまうとも。バリアリック・ヴァージョンのクラウス・シュルツェか、限りなく上昇気分にさ せてくれるシャルルマーニュ・パレスタイン......などといったら松村正人にテキサスのライヴハウスでベースをお見舞いされてしまうかな。つーか、ジャ ケット・オブ・ジ・イヤー?

 そうはいっても『タイム』は問題をとても単純化してしまったために(『コン・エアー』が『恐怖の報酬』にはなれなかったように)問題提起はあっても人間を描いた作品としての深みには欠けている。経済格差が人間関係にもたらす微妙で複雑な機微はそれこそチョン・ジュウン監督『子猫をお願い』にはかなわない。あの重層的な配置の妙こそ格差問題の核心に迫っていたといえる(彼女はもう映画を撮らないのかなー)。

duenn feat. Nyantora - ele-king

どんな音でも受けて入れてしまえ文:野田 努

 カセット・レーベルがこの日本でも増えている。東京の〈コズ・ミー・ペイン〉をはじめ、〈クルックド・テープス〉、そして福岡の〈ダエン〉......〈コズ・ミー・ペイン〉は昨年に欧米進出を果たしつつ、〈クルーエル〉からビューティが12インチをリリースし、〈クルックド・テープス〉はロサンジェルスの〈ノット・ノット・ファン〉などとの協調しながらリリースを重ね、そして福岡の〈ダエン〉はレーベルとしての第二弾を発表した。それが今回の中村弘二によるニャントラ名義の作品。100本の生産らしいが、こうした超限定盤を土台としながら、今日USアンダーグラウンドが盛り上がっていることを思えば、当たり前の話、ちょっと期待してしまう。日本国内でのカセット・テープの生産は終了したというから、それなりに強い気持ちがないと継続はできない。
 もっともUSのインディ・レーベルがアナログ盤とカセットのみのフィジカル・リリースに至った理由も、昔は良かった的なノスタルジーというよりも、実利的な観点に立ったときの前向きさにあるんじゃないだろうか。CDでリリースしても勝手にダウンロードされてしまうわけだし、だったら数は少なくなくても買ってもらったほうがいい。ボロ儲けたい人には向かないが、経済活動と芸術活動を両立させるうえではひとつの可能性だと言える。
 ここ数年、USのカセット作品を買いまくっていたという中村弘二にとっては、こうしたリリースは望むところだったに違いない。この作品は、アンビエント・テイストが際だっていた過去のニャントラ名義のどの作品とも違っている。作り方としては、ジェームス・フェラーロやOPN、ハイプ・ウィリアムスなんかと近いと思われる。音の断片を集め、それを編集していく。ナカコーらしく、まったくもって感覚的な作品だが、ひとつ思うのは、一時期のトーマス・ケナーのようにこの音楽には多くの静寂があるということだ。ケナーはかつて自分の音楽を「ふだんは聴こえない音を聴く」行為だと定義しているが、ニャントラのカセットもそれと似た謙虚さからはじまる。デヴィッド・リンチの映画のように一瞬だけ暴力的な世界に引きずり込みはするが、すぐにまた柔らかい電子の海へと戻してくれる。
 ナカコーらしく、まったくもって感覚的な......と僕は先に書いたが、彼の音楽においてもっとも重要なことは、彼が音に対してオープンであるということである。年を経るごとにどんどん開かれていく。多くの時間を空想に費やすであろう彼だが、部屋に引きこもるだけではなく、彼はアルヴァ・ノトのライヴにも石野卓球のDJにも出かけ、灰野敬二と同時にガムランの響きにも耳を傾ける。彼の鼓膜はつねに好奇心を帯びている、そうだ、どんな音でも受けて入れてしまえ。
 本作は、そういう意味では様式(スタイル)を持たない印象的音楽(アンビエント)で、中村弘二の自由の断片を聴くことができる。スーパーカーのファンの期待から逃れながら、販売戦略の文脈には乗らないこの音楽性がカセットで発表されるということも、まあ、微笑ましいと言えば微笑ましい。本当に聴きたければ聴けばいいし、手続きが面倒であるのならそれだけの話。

文:野田 努

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素直に楽しめない作品では、あるが...... 文:竹内正太郎

いつかは君と本当の空を飛べたらなぁって、それだけさ
スーパーカー"CREAM SODA"(1997)

 本当じゃない空を走る、真っ白なひこうき雲。成熟に対する拒絶と、未熟に対する拒絶を同時に抱えながら、反抗という社会性をなんら帯びなかったそのバンドの思春期は、シューゲイジーなギター・プロダクションと、倦怠をはらんだ歌唱、そして何より、言葉に落とし込まれた過敏な十代の感性によって、世の典型さや平凡さを斜めに断裁しながら、あっという間に過ぎていった。癖になった意味のないため息、うんざりするような馴れ合い、不必要に甲高い連中の笑い声、ありふれた虚栄、虚飾、駆け引き、出し抜き、気持ちの悪い上昇志向、そして、それらをシニカルに見つめる自分の凡庸さ。『スリーアウトチェンジ』(1998)は、およそ十代という罪深い幻の季節を、コンパクト・ディスクの許容値ぎりぎりまで使い、ギター・ロックのエチュードとして録音している。

 1995年、青森県八戸市にて結成。どう考えても遅すぎる出会いだったが、私は彼らの解散がアナウンスされた後、初めてその車に乗った。従前のギター・プロダクションにエレクトロニクスが屈託のない表情で交わる『JUMP UP』(1999)は、作品のバランスという点で、彼らの早熟さをもっとも端的に捉えている。ウォーク・スローリー。しかし、この時期のシングルB面で、ドラムンベースの試験的導入や、憂鬱なダウナー・ポップを披露せずにはいられなかった彼らにとって、そうした思春期性はもはや足枷でしかなかったに違いない。ろくにトリートメントされていないようなロウなミックスで過去を一括清算した『OOYeah!!』『OOKeah!!』(1999)を経て、彼らはトランス・ロックの加速度でもってゼロ年代の始まりを一気に駆け抜ける。『Futurama』(2000)は、レイヴ・ミュージックへの憧憬を、ロックの文脈においてヴァーチャルに昇華させた意欲作だった。

 ところで、良くも悪くも独りでは曲を作れないという点に、団体音楽の大きな魅力がある。密室で顕微鏡をのぞくような、省察が行き届いた孤独なベッドルーム・ミュージックにはない、共同体の中でのある種の運動(ときに競争原理)が働くことによって、バンドのポップ・ポテンシャルが大きく引き出される例を、私たちはよく知っている。『HIGHVISION』(2002)は、互いの方向性に違和を感じ始めた彼らにとって、ポップ・バンドとしては最後の結実だった。益子樹や砂原良徳らとの合流、テクノの跳躍力、電子音の煌めき。全反射するような"愛(I)"は光の伝送路で無限に増幅され、ひこうき雲が消えた本当じゃない夜空に、"Strobolights"を何本も突き刺す。終盤、勝井祐二のバイオリンが外界の光を閉じていくそのアルバムは、バッド・トリップ気味に暗い示唆をまき散らしながら終わっていく。

消えてしまったストーリー
出番を独り待っている
静かに 静かに ただ静かに 夢を見ている
スーパーカー"LAST SCENE"(2004)

 そして、最後の妥協点を探るように作られた『ANSWER』(2004)は、ポップ・バンドとして結成された彼らが、かつて拒絶していた成熟(少なくとも高度化や洗練)を受け入れ、セミ・ポップの領域へと踏み出したことを如実に物語る。音の装飾よりも空間のニュアンスを重視した、メロウなプロダクション。散文的な歌詞。ミニマルな展開。その削ぎ落とされた妥協点は、逆説的に彼らの飽和でもあった。翌年、バンドは解散を選ぶ。これ以降の4人の物語と、私はなぜか一定の距離を保ってきた。個人的にもっとも親しみをもって追いかけたのは、リミックス・ワークを通じてTV・オン・ザ・レディオやデイダラスら海外のオルタナティブ、そしてボーカロイド文化とも前向きに交わってきたフルカワミキであるし、一般的にもっとも成功した存在として認知されているのは、ロック・バンドのプロデュースからK・ポップの作詞まで手掛ける、いしわたり淳治であろう。

 中村弘二(以下、ナカコー)はといえば、アンダーグラウンドを好み、端的にはiLLを名乗ってレフトフィールドの開拓を試みてきた。テクノ、アンビエント、グリッチ、ドローン、ストーナー・フォーク、チェンバー・ポップ、ひと回りしてのロック、あるいはスーパーカーの再考、そしてLAMA。そうした変遷の先に、いつの間にか復活させたNYANTORA(ニャントラ)名義によって、ナカコーは相変わらずの実験趣味(と孤独趣味)を爆発させている。〈ダエン〉からのリリースとなった、レーベルの代表アーティストでもあるダエンとのコラボレーション『duenn feat nyantora』は、相当時間の無音部・微音部を含む、実に抽象的な作品となっている。カセット・テープなので、スキップもできずにとりあえずは黙って聴いているしかないわけだが、音も鳴らないし、あー、眠ってしまおうか、と、忘れたころに浮かび上がる音。かと思えば、あれ、いつから音、鳴ってないんだっけ、と、気付いたら霧散している音。鳥のさえずりもあれば、心地よいグリッチ、耳をかすめる程度のノイズもある。
 正直にいえば、一応、遅れてきたスーパーカー世代である筆者としては、素直に楽しめない作品では、ある。私はまだ音楽に加速度を欲しているし、ポップのある意味での下品さを必要としている。とはいえ、狭く聴かれることと、広く聴かれないことを同時に望んできたナカコーの立場からすれば、本作は完全な匿名性をまとうことに成功した作品ではある(いま、無条件でカセット・テープを聴ける人はそう多くないはずだし、ネット上で聴くこともできない)。というか、不況だ、不況だと言われて久しい昨今の音楽業界にあって、内容的にも外装的にも、"あえて広がり過ぎない音楽"をアナログ・メディアでリリースすることを、私は贅沢なことのように思う。DIY文化のプライドか、LAMAとのバランスか。いずれにせよ、小さな承認を大仰に分け合う、繋がりすぎた私たちのネットワークを断ち切るように、聴き手の受動性を拒絶するアンダーグラウンドの精神は続く。

文:竹内正太郎

Chart by JET SET 2012.02.20 - ele-king

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1

LINDSTROM

LINDSTROM SIX CUPS OF REBEL »COMMENT GET MUSIC
Mungolian Jetsetによる傑作シングル/アルバムやDJ Harvey Remixを収録したDiskjokke新作12"など人気作のリリースが相次いでいる"Smalltown Supersound"から、天才Lindstromによる話題の最新アルバム「Six Cups Of Rebel」がアナログ2枚組で登場。

2

PITCHBEN

PITCHBEN STAND UP »COMMENT GET MUSIC
昨年"Compost"からデビューしたドイツの新鋭Ben Pitchによるデビュー・アルバム『Pitchslap』から、シーン屈指の人気を誇るRunawayとTiger & Woodsの2トップによる強力リミックスを収録した話題の12"カットが待望の入荷!!

3

EDDIE C

EDDIE C ALL I WANT »COMMENT GET MUSIC
昨年リリースされた待望の1stアルバム『Parts Unknown』をはじめ、"7 Inches Of Love"シリーズも大好評頂いた、カナディアン人気アクトEddie Cによる新録4楽曲。

4

RAY MANG

RAY MANG LOCK & POP / VIVA LAS VEGAS »COMMENT GET MUSIC
Dr. Dunksによる前作22番がビッグ・ヒットとなった"Disco Deviance"最新作に、UKディスコ・シーンの才能Ray MangによるダブルサイダーEPが登場。

5

GANG COLOURS

GANG COLOURS FANCY RESTAURANT »COMMENT GET MUSIC
Gilles Petersonが絶賛する逸材、Gang Coloursの会心の1曲。柔らかいピアノに切なく響く歌声、優しく刻まれる裏打ちから滲み出る最新モード。文句なしのスウィート・メロウ・キラー!!

6

QUANTIC & ALICE RUSSELL WITH THE COMBO BARBARO

QUANTIC & ALICE RUSSELL WITH THE COMBO BARBARO LOOK AROUND THE CORNER »COMMENT GET MUSIC
Rotary Connection「Les Fleur」直系の鮮やかなストリングスとソウルフルなコーラスが、キューバのリズムに乗って感動的な歌声を盛り立てる特大名曲!!

7

LAPALUX

LAPALUX WHEN YOU'RE GONE »COMMENT GET MUSIC
大人気KorelessやSeamsらのリリースでお馴染みPictures Musicからのカセット・リリースでデビューを飾った美麗ウォンキー新星Lapaluxが満を持してのヴァイナル・デビュー!!

8

NEW AGE STEPPERS

NEW AGE STEPPERS MY NERVERS (PUNK) »COMMENT GET MUSIC
まさかの最新作『Love Forever』に収録のテイクとは別ヴァージョンの7インチ。アルバムver.よりも危ない雰囲気が増していて、相当ヤバイです!!

9

GEORGIA ANNE MULDROW & MADLIB

GEORGIA ANNE MULDROW & MADLIB SEEDS »COMMENT GET MUSIC
更に制作力を増し続ける鬼才MadlibとGeorgia Anne Muldrowがコラボした話題の楽曲が、ニューレーベルSomeOthaShip Connectより限定500枚でリリース! クリア・バイナル仕様。

10

VEDOMIR

VEDOMIR VEDOMIR EP »COMMENT GET MUSIC
Eddie C、Luke Vibertのリリースが大好評を博したブギー・ディスコ・シリーズ"Kerrier District"に続く、Jazzy SportとSound Of Speedによるコラボレート企画最新作。

Chart by JAPONICA music store&cafe bar 2012.02.20 - ele-king

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1

LORD ECHO

LORD ECHO MELODIES WONDERFUL NOISE / JPN / 2012/2/15 »COMMENT GET MUSIC
SISTER SLEDGE"THINKING OF YOU"のレゲエ/ソウル・カヴァーを収録した先行12"EPが各所で大好評即完売に至った話題のレゲエ/ラヴァーズ・ソウル・プロジェクトLORD ECHO、お待たせの2LPフル・アルバム!

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ANDRES

ANDRES NEW FOR U LA VIDA / US / 2012/2/15 »COMMENT GET MUSIC
<KDJ>や<MAHOGANI>を中心としたリリース作品はいずれも即ソールドアウト、内容も言わずもがなのフューチャー・クラシックな傑作を 数多く残してきたデトロイトの至宝=ANDRESが遂にセルフレーベルを立ち上げ、その第1弾をリリース。

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EL NEGRO & ROBBY / ALAYAVIJANA

EL NEGRO & ROBBY / ALAYAVIJANA SPLIT EP CROSSPOINT / JPN / 2012/2/15 »COMMENT GET MUSIC
ワールド~ラテン/ジャズを包括する至高のNYアンダーグラウンド・ミュージック!鬼才KIP HANRAHANプロデュースによる03年作をライセンス・アナログ・リリース!from <CROSSPOINT>

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EP-4

EP-4 BRUTAL 500 SERIES PART 3 BRUTAL MUSIC / UK / 2012/2/8 »COMMENT GET MUSIC
京都の伝説的プロト・テクノ・バンド=EP-4レア・トラック編集盤がまさかのクレイツ・ディガーDOM THOMAS主宰<BRUTAL MUSIC>よりリリース!この骨太肉厚サイケ・ファンク・サウンドは今の感覚にドンピシャです・・!

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BURNT FRIEDMAN

BURNT FRIEDMAN BOKOBOKO NONPLACE / GER / 2012/2/14 »COMMENT GET MUSIC
生音と打ち込みのバランスが絶妙すぎるエクスペリメンタル・トラック満載!鬼才BURNT FRIEDMAN通算5枚目となるフル・アルバム「BOKOBOKO」!オウン・レーベル<NONPLACE>より。

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FLIGHTS OF FANCY

FLIGHTS OF FANCY VOLUME ONE INTERNATIONAL FEEL / URY / 2012/2/14 »COMMENT GET MUSIC
<INTERNATIONAL FEEL>2012年ファースト・リリースは詳細不明のニュー・プロジェクト=FLIGHTS OF FANCYによるウォーミーなスローモー・バレアリック/コズミック・チューン×2!

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MR. K ALEXI SHELBY

MR. K ALEXI SHELBY FINEST CUTS LEGENDS AMOUR / FRA / 2012/2/7 »COMMENT GET MUSIC
今回も反則級のネタ使い&粋なエディット・ワーク披露してます!シカゴ・ハウス重鎮MR. K ALEXI SHELBYが仕掛けるフランス発の注目エディット・レーベル<AMOUR>第2弾。

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THE UNITY SEXTET

THE UNITY SEXTET THE UNITY SEXTET LEGERE / UK / 2012/1/28 »COMMENT GET MUSIC
極上の漆黒スピリチュアル/コズミック・ジャズ・ファンク・アルバム!昨年末にCDリリースされていた本作がこの度アナログ・リリース!あの MADLIBの仮想ジャズ・バンド・プロジェクト=YESTERDAYS NEW QUINTETを彷彿とさせるとびきり黒い艶やかなジャズの世界を偏差値高めなヒップホップ感覚をも取り込み描き上げた濃厚スピリチュアル/ファンクネ ス・ナンバー全13曲収録。

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J.M.F.G.

J.M.F.G. #1 J.M.F.G. / FRA / 2012/1/18 »COMMENT GET MUSIC
詳細不明"謎"のクリエイターJ.M.F.G.によるかなり怪しい体裁でのMOODYMANN音源リワーク集が緊急リリース!全4トラック共にオ リジナルのそれに勝るとも劣らない絶品にリメイクされた極々上盤。インフォには「Kenny Dixon Jr. Real work ! Limited」と記載あり。

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SLUGABED

SLUGABED ROCKIN U UNKNOWN / UK / 2012/2/11 »COMMENT GET MUSIC
<PLANET MU>や<RAMP>、そして<NINJA TUNE>と名だたるレーベルより確かな作品を残してきたビート・シーンきっての注目株=SLUGABEDがブート仕様で以前よりSOUNDCLOUD上 にアップされていたプライベート・ワークスを限定アナログ・リリース!

Wild Flag - ele-king

 今週の月曜日に竹内正太郎が書いたラナ・デル・レイの評だけれど、少し説明を加えたい。彼女のアルバムは僕がよく読んでいる欧米メディアからはけちょんけちょんに言われていて、1周回ってそれを評価するのが頭が良いみたいな論もあるのかもしれないが、ラナ・デル・レイを契機としながら、人間の醜悪さ、あるいはポップの資本主義の議論へと飛躍している点ではレディ・ガガどころの騒ぎではないく(そういう意味ではポップ・アイコンとしては充分な役割を果たしている)、ひとつ議論の焦点を言えば、彼女の露骨な名声欲というよりも、彼女が「偽物(fakeないしはshtick)」であることへの批判と「それでは偽物のどこが悪いのか?」という意見にある。メッセージと思わしきものなどには目もくれず、ポップ商品の戦略としても凡庸な偽物があることが前提で議論が進んでいるという、なかなか面白い展開を見せている。この件に関して異様な執念を見せたのが(ドローンやノイズやアヴァンギャルド系に強い)『タイニー・ミックス・テープス』で、5点満点中0点としながらも、彼女の歌詞の主題/言葉を科学者のように何の感情も見せず分析して、その言葉のセンスがいかに型にはまったものであるかを立証するためであろう、ものの見事にインデックス化している。それはアメリカのポップ文化の内部におけるインディ文化からの憤りに思えるが、『TMT』は皮一枚の冷静さを装って「我々はなぜ偽物を拒否するのか」という観念的な問題提起までそれとなくしている(この情熱には、我々にも見習うべきところが大いにあるのでは......)。

 そこへいくとワイルド・フラッグについて考えることは気が楽に思えるかもしれない。ワイルド・フラッグは、沢井陽子さんが昨年レポートしているように、「このバンドは、スリーター・キニー(キャリー、ジャネット)、ヘリウム(メアリー)、マインダーズの(レベッカ)メンバーで結成された、いわばスーパー・ガールズ・バンド」である。スリーター・キニーといえばライオット・ガールを代表するバンドのひとつで、活動家であり、フェミニスト・バンドとしてよく知られている。と同時に、1997年のマスターピース『ディグ・ミー・アウト』がそのもっとも高みといわれている作品だが、ギター・ロック・バンドとしての実力も充分に認められたバンドだ。キャリー・ブラウンスタインはそのバンドのヴォーカル&ギターで、彼女はワイルド・フラッグにおいても、元ヘリウム(スリーター・キニーと同時期のインディ・バンド)のロリータ・ルックで知られるメアリー・ティモニーとともにギターを抱えて歌っている。『ガーディアン』によればロンドンではいよいよ90年代リヴァイヴァルが本格化しているようだし、20年前にフランネル・シャツ姿で歌っていたメアリーはいまやファッションとしてもど真ん中だ。
 とはいえ、僕がおよそ半年前にリリースされたワイルド・フラッグのデビュー・アルバムについていまさら書いているのは、そうしたトレンドとは関係ない。ライヴ・レヴューにも書いたように、ザ・ガールのライヴが良かったことも引き金となっている。実はこのアルバムについては「いつか書こうといつ書こう」と思いながら昨年から机の上に積まれたCDのなかの1枚となっていたが、ヴァレンタインの夜にようやく「自分で書こう」と思い立った。

 ロックンロールにとっての大きな問題点は、ノスタルジーである。亡きモノに未練たらしく思いすがってしまうこと。多くのガールズ・バンドは、たとえばヘリウム時代のメアリーが学生スカート姿でノイズを鳴らしているだけでも充分に新しかったように、ロックンロールの思い出話に砂をかけながら巧妙に、あるいは勇気を持って前に進んでいる。ダム・ダム・ガールズは思い切りクリシェを強調することで、ロックンロールをマニア向けの中古レコード店から解放する。で、それでは......ワイルド・フラッグのまずはどこが気を引くのかと言えば、繰り返しになるが、キャリー・ブラウンスタインとメアリー・ティモニーのふたりがギターを抱えて歌っているという点にある。誤解を生むような喩えで申し訳ないけれど、PHEWと戸川純が一緒にパンク・バンドを組んだとしたら......それはスーパー・バンドになるだろう。タイプの異なった女性ふたりがふたり同時にバンドの顔になるというのは、いままでなかった。
 が、このバンドのもっとも肝心なことは、『ワイルド・フラッグ』というネーミングが暗示するように、これがひとつの声明、宣戦布告であるということだ。「私たちはロマンスとはなんたるかを知っている」と歌う1曲目の"ロマンス"(アルバムにおけるキラー・チューン)は、いろいろな意味に受け取れる曲だ。音楽の喜び、ロックンロールへの忠誠心、男性社会への反旗、インターネット依存者への嘲笑、純粋な愛......しかし僕がこのバンドを(あるいはザ・ガールを)格好いいと思えるのは、彼女たちが"生意気さ"をまったく包み隠さないところにある。すべての楽器が有機的に絡んで生まれるグルーヴは、楽しもうという気持ちと彼女たちの小生意気さとを結合させる。「私たちは音を愛する。私たちの見つけた音。音は私とあなたのあいだに流れる血」――アルバムには聞き分けの悪い子たちも耳を傾けるであろう堂々とした良い言葉、すなわち力強い自己主張でいっぱいだ。
 ワイルド・フラッグは、ラナ・デル・レイ的なものとは対極にある。ジェームズ・ディーン、グレイト・ギャツビー、ウィスキー、ギャングスタ、そしてセックスとドラッグとアメリカン・ドリームといった耳にたこが出来ているような言葉を並べているラナ・デル・レイとは100万光年離れたところで"野性の旗"は涼しい風になびいている。キャリー・ブラウンスタインに関して言えば、サタデー・ナイト・ライヴのフレッド・アーミセンと一緒にケーブルTVでコメディ番組までやるような、あちらではいわば国民的な人気者で、彼女の番組にはボン・イヴェールやセイント・ヴィンセントも出演している。ワイルド・フラッグにはアメリカのポップ文化の最良なものがあると思うのだが、我が国ではラナ・デル・レイの"shtick"のほうがメディ的にも大衆的にも受けているようである。まあ、別に良いんですけど。

派手にやろう
私たちに失うものなんて何もない ワイルド・フラッグ"ブーム"

THE GIRL, TADZIOほか - ele-king

 DOMMUNEで「GOTH-TRAD特集」をやった翌日の晩、筆者はブルックリンのライヴハウスにいた......というのはもちろん嘘だが、沢井陽子さんが本サイトでレポートしているようなイヴェントにいた。2月14日、いわゆるヴァレンタインのチョコレートには縁のない筆者と小原泰広は、小雨の降るなか、3組のガールズ・バンドが出演する新代田の〈FEVER〉に向かった。「BATTLE AnD ROMANCE」という名前のイヴェントで、筆者のお目当てはタッツィオである。
 7時になると最初のバンド、THE EGLLE が登場。ヴォーカル&ギター、ベース、ドラマーの3人組のガールズ・バンドで、「グッド・イヴニング」という英語の挨拶からはじまった。音は初期のキュアやデルタ5といった感じで、気だるいミニマルなビートとぺらぺらのギターが暗いムードを誘い、(オーディエンスとコミュニケーションをはかるというのではなく)引きこもりを思わせるヴォーカルが際だっている。〈4AD〉リヴァイヴァルとも重なっている雰囲気もあって、興味深い演奏だった。

 この日の主宰者はきくりんと呼ばれていた21歳の青年で、長州ちから(28歳)という名前のパートナーと一緒にセット・チェンジの合間のDJとMCも担当していた。歌謡曲をかけたり、ヒップホップをかけたり、ハードコアをかけたり、意味がわからなかったが、とにかく陽気で、バカみたいにご機嫌な連中だった。ちょっとオタクっぽくも見えたが、絶えずツイッターをやっているようなタイプではなかったし、どこか20年前の小林を彷彿させた。「BATTLE AnD ROMANCE」の主題は? と訊いたところ「クロスオーヴァーであります」と21歳は語気を強めていたが、それは多くの自由時間をPCの前で過ごしているSNS世代への反発とも受け取れなくもない。

TADZIO

 7時半を過ぎて、ステージにはタッツィオのふたりが登場する。いきなりラウドなノイズ・ギター、そのすぐ横ではドラマーがしっかりとリズムをキープしている。ルックス、そして演奏にもポップとノイズが衝突しているが、実に感覚的なこのバンドが素晴らしいのは、言葉に酔うことを拒むかのような衝動、その威力、その勇気にある。「ブス」「こんにちわ」......闇雲にわめき散らしている彼女たちを観ていると、微笑みがこみ上げてくる。説明よりもノイズが先走る。言葉を口から出す前の、そのうまく言えないもどかしさを音は突き抜けていく。そう、いい感じです。新曲の"3939"は素晴らしいドライヴ感を持った曲で、演奏は後半のほうが良かった。何度もライヴを観ている人に訊いたら、その日の出来は60%ぐらいだったとか。

TADZIO

THE GIRL

 8時を過ぎると日暮愛葉率いるTHE GIRLが出てくる。THE EGLLE と同様に3人組のガールズ・バンドで、ヴェルヴェッツの"フー・ラヴズ・ザ・サン"をBGMに演奏ははじまった。そしてTHE GIRLは......ロックンロールのジェットコースター、ドラムとベースが創出するグルーヴは素晴らしいうねりとなって、オーディエンスをすっかり魅了する。彼女たちの演奏は否応なしに身体を揺らすもので、気持ちをどんどん上げていく。
 THE GIRLを訊いていると筆者は13歳のときにラジオで大貫憲章さんが紹介した"シーナ・イズ・パンク・ロッカー"すなわちロックンロールというものを初めて聴いた夜の気持ちを思い出すことができる。音楽を聴いて、生きていることにわくわくしてくる。それはいつまでも変わることのないファンタジーであり、ロマンスであり、永遠なのだ。

 これだけの圧倒的なステージのあとに出演するバンドは、ちょっと気の毒だった。杏窪彌(アンミン)は台湾人の女性ヴォーカルをフィーチャーしたバンドで、相対性理論を思わせた。MCは中国語と日本語だった。トリを飾ったバンドは、男ふたり組のGAGAKIRISEで、ライトニング・ヴォルトを思わせた。それぞれ個性的なパフォーマンスだったし、GAGAKIRISEは迫力満点の演奏によって、今後おそらくもっともっと知名度を上げていくだろう。
 しかしこの晩に限って言えば、誰が何と言おうとチャンピオンはTHE GIRLだ。久しぶりにロックンロールで踊り、筆者は彼女たちのロックンロールにプラトニックな恋に落ちたのである。

THE GIRL

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