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チリ出身(で、現在はNY在)のディンキーことアレハンドラ・イグレシアスの4作目。手法や雰囲気がどんどん変化していて、マシュー・ジョンスンのレーベルからはミニマルをメインにしつつ、南米の高地を思わせる乾いた民族音楽の破片が(南アのポータブルと同様)そこはかとなく、あるいはあからさまに散りばめられている。その処理の仕方に象徴的に顕れているように、彼女の音楽は非常に洗練され、新しい服に袖を通すような気分でさらさらと耳に入ってくる。潜水で泳いでいるような"ロマニクス"にはじまり、アルバム・タイトル曲ではデリック・メイを思わせる細かい音のループが冴え、ベイシック・チャンネルとカール・クレイグに影響されたというセンスもそのまま健在。ヴォーカルにアップデイツをフィーチャーした"ウエストイド"では頽廃的なムードを漂わせた『ブラック・キャバレー』(03)も鮮やかに甦る(音楽性に変化はあってもスタイリッシュという意味では一貫していたといえる)。元々、微妙な感性に訴えかけてきた人だけに、破片と破片が手を取り合って曲のイメージを押し上げている時にはその効果は無限大の威力を発揮する。ミニマルには、そして、ダパイク&パドバーグやトウアネなどファッショナブルなデザインの作品が多くなっている。それらはゲットーやそれに関心を持つ人たちではなく、明らかにスノッブな層を惹きつけようとしているし、実際、この辺りの音はクラブの外部にもじわじわと波及しているのだろう。リスニング・ミュージックとしても楽しまれてしかるべきというか。曲数がたくさん聴きたい人はCD、おっぱいの谷間が気になる人はアナログがお奨め(つーか、デザイン的には圧倒的に後者ですよね。トリミングが違うだけなんだけど、シャンデリアーズのセカンドとかついついデザイン・ワークで買ってしまいます......)
三田 格