「Lea Lea」と一致するもの

Shobaleader One - ele-king

 本日3月8日、スクエアプッシャー率いる覆面バンド、ショバリーダー・ワンのアルバム『Elektrac』が日本先行でリリースされました。それにあわせて、ショート映像「Scream Elektrac 1」が公開されています。

 そしてこのタイミングで、かれらからele-king編集部宛てに新たなインタヴューが届けられました。前々回前回に続いて3度目でございます。どうやら編集部はいまショバリーダー・ワンに付け狙われているようです。相変わらず興味深い内容のインタヴューになっています。以下よりご覧ください。


SHOBALEADER ONE
STROBE NAZARD / SQUAREPUSHER / COMPANY LASER / ARG NUTION

東京公演即日完売の来日ツアーも話題!
スクエアプッシャー率いる超絶技巧バンド、ショバリーダー・ワン
待望のデビュー・アルバム『Elektrac』がついに本日リリース!
ショート映像「Scream Elektrac 1」が公開!
iTunesではジャンル別チャート初登場洋楽1位を記録!

Shobaleader One - Scream Elektrac 1

ライヴ・バンドのコンセプトを根底から改革すべく、スクエアプッシャーが招集した、凄腕ミュージシャンたち:STROBE NAZARD(キーボード)、COMPANY LASER(ドラム)、ARG NUTION(ギター)。結成された超絶技巧バンド、ショバリーダー・ワンは、スクエアプッシャーの初期作品を中心に、ジャズ~フュージョン~ドラムンベース~エレクトロニカを横断する超刺激的なライヴを世界中で展開する。昨年公開された“Squarepusher Theme”と“Coopers World”のライヴ映像が話題を呼び、アルバム発表時にも公開されたファン垂涎の名曲“Journey To Reedham”が公開されるや、同時に発表された来日ツアーには、規定枚数を大幅に超える予約が殺到!

Shobaleader One performing “Squarepusher Theme”

Shobaleader One performing “Coopers World”

Shobaleader One - Journey To Reedham (Live Edit)

東京公演が即日完売となるなど、大きな注目を集めるジャパン・ツアーを来月に控える中、すべてのファンが熱望し、ファンならずとも想像を超える演奏力に度肝を抜かれるであろう衝撃作の全貌が明らかに!

タイトなキメを多用しながら饒舌なソロがつばぜりあいを繰り広げる展開は、エレクトロニック時代のマイルス・デイヴィスやウェザー・リポートの影はもちろん、ジョン・マクラフリンのソロやジミ・ヘンドリクスのエクスペリエンスなども脳裏をよぎる。
- Music Magazine

破天荒な打ち込みを再現するばかばかしいまでの志の高さと技術
- CD Journal

2016年末に公開されるやいなや瞬く間にバズったそのライヴ動画を見てうかつな輩は「ベースの人、うまい」などと頓珍漢なコメントを寄せたのだった。うまいに決まってるだろ。弾いてるのスクエアプッシャーだぞ。
- WIRED Japan

Shobaleader One - Elektrac
01 The Swifty
- from Feed Me Weird Things
02 Coopers World
- from Hard Normal Daddy
03 Don’t Go Plastic
- from Music Is Rotted One Note
04 Iambic 5 Poetry
- from Budakhan Mindphone
05 Squarepusher Theme
- from Feed Me Weird Things
06 E8 Boogie
- from Hard Normal Daddy
07 Deep Fried Pizza
- from Feed Me Weird Things
08 Megazine
- from Shobaleader One: d’Demonstrator
09 Delta-V
- from Just a Souvenir
10 Anstromm Feck 4
- from Do You Know Squarepusher
11 Journey To Reedham
- from Big Loada

スクエアプッシャー率いる超絶技巧バンド、ショバリーダー・ワン待望のデビュー・アルバム『Elektrac』は、本日いよいよ日本先行リリース! 国内盤2枚組CD(ブックレット付の特殊パッケージ)には、オリジナルのシースルー・ステッカーが封入される。またスペシャル・フォーマットとして数量限定のTシャツ付セットも販売中。

label: Warp Records / Beat Records
artist: Shobaleader One ― ショバリーダー・ワン
title: Elektrac ― エレクトラック

cat no.: BRC-540
release date: 2017/03/8 WED ON SALE(日本先行発売)
初回生産特殊パッケージ
国内盤2CD(¥2,500+税):オリジナル・シースルー・ステッカー/解説書 封入
国内盤2CD+Tシャツセット(¥6,000+税)

interview with Asagaya Romantics - ele-king


阿佐ヶ谷ロマンティクス
街の色

Pヴァイン

RocksteadyPop

Amazon Tower HMV iTunes


 街にはいろいろな人がいる。学生もいれば労働者もいる。男性もいれば女性もいる。子どももいればお年寄りもいる。じつにさまざまな人びとが街を行き交っている。あそこに佇んでいる彼は買い物を終え休憩している最中だろうか、それとも恋人と待ち合わせをしているのだろうか。いますれ違った彼女は商談へ向かう途中だろうか、それとも飲み会へ急いでいるのだろうか。彼や彼女はどこで生まれ、どのように育ち、どのような事情でいまこの場所にいるのだろう。彼の好きな音楽はなんだろう。彼女の好きな映画はなんだろう。

 そんなことを想像しながら街を歩いていると、はっと我に返る瞬間がある。私がそうしていたように、彼や彼女もまた私を観察していたのではないか。あてどもなくぶらぶらと街を行くこの私の事情を、彼や彼女もまた同じように想像していたのではないか。このような気づきが訪れたとき、私は「私」になる。「私」は彼であり、彼女である。あそこの彼も「私」であり、ここの彼女もまた「私」である。じつにさまざまな「私」たちが街を行き交っている。


 阿佐ヶ谷ロマンティクスの音楽を聴いていて思い浮かべるのは、そういうどこにでもいる「私」たちの存在だ。それはある意味でとても無個性な「私」である。でも阿佐ヶ谷ロマンティクスはそんな無個性な「私」たちを、ロックステディのリズムに乗っけて夕焼けのかなたまで運んでくれる。『街の色』と題されたかれらのファースト・アルバムは、あるときはスウィートに、あるときはストレンジに、街を歩く「私」たちの歩幅にそっと寄り添う。このどこまでも暖かい珠玉のポップ・ソング集は、夕暮れの街を行き交うさまざまな「私」たちのサウンドトラックなのだ。

 この素敵なアルバムがどのように生み出されたのか、阿佐ヶ谷ロマンティクスのメンバーたちに話をうかがった。


自分は大学の頃からロックステディが大好きなので、歌謡曲っぽいというか、歌がちゃんと目立って、メロディがあって、歩く歩幅に合うような、聴いていて気持ちのいい音楽にしようというのはありました。 (貴志)

阿佐ヶ谷ロマンティクスの結成は2014年の春ということで、この春でちょうど3周年を迎えることになりますね。みなさんは(早稲田大学のサークル)中南米研究会で出会ったと聞いたのですが、まずは結成に至るまでの経緯を教えてください。


貴志朋矢(ギター。以下、貴志):そうですね。メンバー個人個人がみんな中南米研究会というサークルに入っていて、そこで知り合いました。サークルの引退ライヴみたいなものがあって、その後、結成当初からのマネージャーというか、佐藤タケシというのがもうひとりいるんですが、彼と私で外向きな活動をしていこうという話をしたんです。それまでは内向きな活動しかしていなかったので。

有坂朋恵(ヴォーカル。以下、有坂):それと同時期に、今サポートでギターをやっている荊木(敦志。結成メンバーのひとりで、このアルバムを出すタイミングでサポートになった)と私で何かやろう、という話になっていて。そのふたつのグループがくっついたような感じですね。

古谷理恵(ドラムス。以下、古谷):私と有坂は高校のときに同じ部活でやっていました。

アルバムにはロックステディやレゲエの要素もありますが、全体としてはまずポップスであることに重点が置かれていると思いました。それで、阿佐ヶ谷ロマンティクスの音楽的なルーツが気になったのですが、みなさんの音楽遍歴はどのような感じだったのでしょうか?


貴志:自分の音楽のルーツは小学生の時に聴いていたサザンオールスターズなんですけど、中学校入学と同時に心の変化があったのか、ガンズ・アンド・ローゼスとかに行って。

古谷:心の変化が(笑)。

貴志:それでエアロスミスとか大好きで聴いていて、高校ではエリック・クラプトンを好きになったり、ギタリストとしては真っ当な道を歩んでいたというか(笑)。

古谷:オーソドックスなギタリストの形(笑)。

それが、大学に入って中南研に入るというのはおもしろいですね。

貴志:うーん、なんで中南米なんだろ……。入った時に、今まで聴いたことのないリズムが印象的だったのを覚えていますね。カリプソとかを何十人もの人数でやっているのは斬新でしたし、それまで裏打ちの音楽に触れることなんて全然なかったので、大学に入って逆に「これだ!」と思いましたね。

なるほど。有坂さんはどのような音楽遍歴を辿ってきたのでしょう?

有坂:私は小さい頃から歌うのが好きで、小学生の時は合唱団に入っていたこともありました。中学の部活もコーラス部で、高校では軽音楽部があったのでそこに入りました。ジャンル的にわかりやすく音楽の趣味があったというよりは、ただ歌える曲を聴いて歌っていたというだけですね(笑)。合唱のときは地声よりも裏声を使うことの方が多かったんですが、でもそれがちょっと自分的に気持ちよくなくて(笑)。それで、ポップスを歌うようになっていきました。なので自分が歌って気持ちいいものを聴いて、歌っていたという感じです。

中南研にはどういう経緯で入ったのですか?

有坂:「ヴォーカルが足りないから歌って」と誘われて(笑)。

古谷:「フィリス・ディロンを歌えるのは有坂しかいない。頼む!」と(笑)。

有坂:それがすごく自分にもハマって。

古谷さん(の音楽遍歴)はどんな感じですか?

古谷:私は中学の時はBUMP OF CHICKENとかアジカンとかELLEGARDENとかが大好きだったんですけど(笑)、高校に入って新入生歓迎ライヴがあった時に、先輩がレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンをやっていて、「カッケー!」と思って(笑)。(軽音楽部に)入ってからは、くるりやはっぴいえんどをすごく聴いていましたね。クラムボンのコピバンを(有坂と)一緒にやったりしていました。スカパラを聴き始めて「スカってなんだ?」と思ったり、あとはフィッシュマンズを聴いたりして、「レゲエ、スカってカッコいい。ホーンとかいっぱいいるし、やってみたいな」と思って中南に入りました。

今ちょうどクラムボンの名前が出ましたが、有坂さんのヴォーカルを聴いていて、音程が変わるタイミングの声色や子音の発音のしかたなどから、原田郁子さんを思い浮かべたんですよね。

有坂:あー、ときどき言われます。クラムボンをコピーしていた時も感じたんですけど、すごく歌いやすくて。高校の部活は「まず完璧にコピーをして技術を上げていく」という風潮だったんですけど、もうその時から「似せなくても似ている」と言われていて。(クラムボンとは)違う曲をコピーする時は他のアーティストに寄せようとしていました。

今バンドはサポートになった荊木さんを含めて6人ですが、曲作りの際は誰かひとりメインとなる方が素材を持ってきて、それをみんなで練り上げていく感じなのでしょうか? それとも全員がそれぞれ曲作りをして持ち寄る感じですか?

古谷:完全に前者で、貴志が(曲を)持ってきていますね。最初は色々と試行錯誤をして、みんな(曲を)持ってきていたんですけど、貴志の持ってくる曲に合わせようという話し合いをしました。

貴志:自分の中で「これは出せる」となったら、みんなに曲を出すという感じですね。自分の中で曲のイメージが湧いていって、1コーラスくらいできた状態でみんなに持っていくという感じです。

今回のアルバムはいつ頃から制作されていたのでしょうか?

貴志:レコーディング自体は去年の6月から始めて、8月くらいにはもうできていました。そこから出しかねていたという(笑)。

古谷:録ったはいいものの「どう出す?」みたいな(笑)。

貴志:“チョコレート”という曲があるんですけど、それはバンドの結成当初からあった曲ですね。“春は遠く夕焼けに”はシングルで出していますし。

古谷:言っちゃえば制作期間3年だよね。

貴志:「ちゃんとレコーディングしよう」ってなったのは、去年の1月に群馬まで2泊3日の合宿をしに行った時ですね。そこでプリ・レコーディングをして、そこからです。

古谷:群馬に行ったの忘れてた……(笑)。朝から晩まで1日練習して、ストイックな合宿をしました(笑)。

有坂:スタジオに泊まりながら、でしたね(笑)。

その時に「こういう方向性にしたい」とか、あるいは逆に「こういうことはしたくない」というような方針みたいなものはありましたか?

貴志:自分は大学の頃からロックステディが大好きなので、歌謡曲っぽいというか、歌がちゃんと目立って、メロディがあって、歩く歩幅に合うような、聴いていて気持ちのいい音楽にしようというのはありました。後はあんまりうるさくしないというか……、表現が抽象的ですけど。

古谷:ポップ? キャッチー?

有坂:キャッチー! ははは(笑)。

キャッチーにしたかった、と。合宿をしてセッションや練習をしていると、たまに「アルバムの方向性とは違うけど、今のすごく良くなかった?」みたいな瞬間があると思うのですが、そういった曲は断腸の思いで捨てたり?

貴志:4曲目の“道路灯”でエフェクトをかけているのは合宿での挑戦で、この曲はどんどん好きなことをやっていこうと思って作りました。“道路灯”はみんなの好みが詰まった曲になっているんじゃないかな、と思いますね。“コバルトブルー”は、レコーディングでのギターの擦れをそのまま使ったり、そういうノイズは極力減らさないようにしましたね。

「歌が目立つように」という話が出ましたが、たしかにアルバムを聴いていてヴォーカルの音量が大きめに入っているように感じました。

貴志:今回のアルバムは意図的に聴きやすく音を丸くして、みんなの音が混じるようにしました。なので自分の中ではけっこうイージー・リスニングな感じがしていて、何度もリピートしていただけるというか、あえてそういうようなミックスにしました。

いわゆるコアな音楽ファンだけでなく、一般の人たちにも届けたいという気持ちがあったということでしょうか?

貴志:そうですね。曲自体が聴きやすいポップスや歌謡曲のような感じなのは、あえてそうしたという部分があります。逆に“道路灯”みたいに阿佐ヶ谷ロマンティクスの中でキワモノな曲はそこ(キワモノな部分)を追求して、自分たちなりにはバランスを取ったつもりです。

昔、中島美嘉がORIGINAL LOVEの“接吻”のカヴァーをシングルで出していて、それはラヴァーズロックなんですが、B面にデニス・ボーヴェルのダブ・ヴァージョンが入っていたんですよね。そういうふうに、A面で良質なポップスを届けつつもB面ではそういうリミックスだったり、あるいは“道路灯”のような少し変わったものをやっていきたいという思いはありますか?

貴志:それはあります。5曲目の“不機嫌な日々”はメロディが立っているので、普通にポップスに聴こえると思うんですけど、じつはコード使いにこだわっています。ベースだけ聴くとその音階にないルート音に対応しているので不協和音になっているんです。そういう風にスパイスを入れるというのは心がけてやっていますね。サビとか1音ずつ上がるので、普通だと「ドレミファ」だったら「ミ」と「ファ」が半音違いなんですけど、そこはルート音を1音ずつ展開させていて。

古谷:中島美嘉ヴァージョンの“接吻”ってやろうとしてなかったっけ?

有坂:やろうとした気がする……。「これヤバくない?」みたいな(笑)。

貴志:結局あれはやったんだっけ? 練習はした気がする。

古谷:結局普通のヴァージョンのセットになったんだ。こんな曲があるのかと(笑)。

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「僕」という一人称を使いながらもあえて感情がないようにするために三人称的に使いました。主人公を客観的にイメージして「僕」を使っているんですよ。極力、主観的な感情を排除した無機質な歌詞にしたつもりです。 (貴志)

リリックについてなのですが、アルバムのタイトルが『街の色』ということもあり、「街」で起こる小さな出来事やちょっとした出会いみたいなものを拾い上げてその「街」の風景を喚起させる、というのが基本的なスタンスかなと思いました。それで、歌詞には「僕」や「わたし」、「君」という人称が出てきますが、それらが三人称のように使われている印象を抱いたんですよね。このアルバムからは街の中にいる複数の「僕」や「わたし」が感じられたんです。そこは意識してやられたのでしょうか?

有坂:まさにですよね。

貴志:まさにですね。

有坂:このアルバムだと歌詞も貴志さんがけっこう書いていて。

貴志:“チョコレート”と“離ればなれ”は有坂が書いているんですけど、それ以外は私が書いています。たとえば“所縁”は、この曲はずっと1曲目にしようと決めていたので、ホーンやパーカッションを入れて演奏や音自体は華やかにしたつもりで、だけども自分の中では曲を作った時に少し後ろめたいというか寂しいというか、心が晴れやかにならない曖昧な気持ちがあって、それを入れたかったので、「僕」という一人称を使いながらもあえて感情がないようにするために三人称的に使いました。主人公を客観的にイメージして「僕」を使っているんですよ。極力、主観的な感情を排除した無機質な歌詞にしたつもりです。

普通は「わたし」という言葉を使うと、その言葉を発する人の強い個性が出る感じがすると思うのですが、「わたし」という言葉自体は全ての人が使えるので、実はかなり無個性な言葉なんですよね。このアルバムにはその無個性さが出ていると思いました。そういう無個性な「わたし」たちが行き交う場として「街」が呈示されているというか。ただ、その「わたし」たちは確かに無個性ではあるんですが、たとえば新宿や渋谷などのものすごく大量に人が行き交っている中での無個性というよりは、顔が見える無個性という印象を抱いたんです。だから『街の色』の「街」って、「シティ」というよりも「タウン」という感じがするんですね。それで、おそらくみなさんもある程度いまのシティポップの流れを意識されていると思うのですが、このアルバムにジャンル名をつけるとしたら「タウンポップ」という言葉がふさわしいのではないかと思いました。そこで改めて「阿佐ヶ谷ロマンティクス」というバンド名が気になったのですが、メンバーのみなさんは阿佐ヶ谷という場所に特別な思い入れがあるのでしょうか?

貴志:最初は私が佐藤タケシと、有坂は荊木や古谷と、それぞれがバラバラにバンドを組んでいて、そこにベースの小倉(裕矢)とキーボードの(堀)智史が入った時に、みんなで初めてちゃんと集まったのが阿佐ヶ谷だったんです。

古谷:いい街だよね。飲み屋もいっぱいあるし。でも住んではいないんですよね。

有坂:やっていきたい音楽のイメージと阿佐ヶ谷の街がピンと来たというか。

なるほど。「タウン」って中央線のどこかだろうなというイメージはあったんですが、中野でも高円寺でも荻窪でもなく、阿佐ヶ谷というチョイスは面白いなと思いました。

貴志:うまく言葉では言えないんですけど(笑)、中野は確かに違うというか。

古谷:なんでなんだろうね(笑)。中野は違うね。

有坂:中野は違う。

古谷:西荻窪は惜しい?

有坂:あー惜しい、惜しい(笑)。

貴志:西荻もいいなあ。

有坂:高円寺とかちょっとお洒落すぎだし。

貴志:さっきの「シティ」、「タウン」の話で言うと、高円寺は微妙なラインだけど、中野はシティな感じもするし……。

古谷:中野はちょっとギリ見えない感じがするよね。

貴志:阿佐ヶ谷の方が変な意味で雑踏というか、混沌としている。だから逆に個性がありふれていて、みんな違うベクトルで、でも同じ方を向いているんだけど、阿佐ヶ谷という箔というか……。

箔?

(一同笑)

貴志:同じ方向を向いているのに個性的というか。阿佐ヶ谷のイメージかあ……。

有坂:絶妙かなという感じですね(笑)。

古谷:同じ方向を向いているけど、阿佐ヶ谷という場所に収まっていることによって……、統一感が……。

貴志:地理的な問題もあるのかもしれないですけど、中野とかだと……。

古谷:なんでそんなに中野を(笑)。

貴志:中野がやっぱり説明しやすくて。

中里(A&R):高円寺はけっこうディープなイメージがありますよね。荻窪は街としてもちょっと大きいし大型施設もあったりするので、品があるイメージ。阿佐ヶ谷は確かにいちばん下町っぽくて、風情が残っていて絶妙な塩梅なんじゃないかなと。

貴志:(阿佐ヶ谷は)居酒屋街のところなんかは2、3階建てで家の高さがなくて街が低いのが良い(笑)、そういう意味でこぢんまりとしているというか、あの雰囲気がね。

古谷:あの雰囲気がいいっていう(笑)。

なるほど。ヒップホップのアーティストのように、地元をレペゼンする感じなのかなと思っていたのですが、どちらかと言うと外部から見たイメージなんですね。

貴志:そうですね。逆に客観的に阿佐ヶ谷を見たというか。

バンド名の後半は「ロマンティクス」ですよね。これにはどういった意味が込められているのでしょうか?

貴志:語呂が良かったんですよね。

古谷:漢字とカタカナってやっぱり語呂がいい感じじゃないですか。

貴志:あとはやりたい曲のイメージに合っているかなあと。最初に自分たちで「四季折々のロマンスに寄り添った(バンド)」ということで売り出したくらいなので(笑)

古谷:「キープ・ジュブナイル」という合言葉があって。

貴志:そういうイメージと「ロマンティクス」という言葉が合っていたんですよね。

Lampかな。 (貴志)
スピッツで(笑)! (有坂)
スラロビ説で(笑)。 (古谷)

今回ファースト・アルバムがリリースされましたが、こういうふうに一度パッケージになって音楽が世に出ていったら、本人たちが意識するかどうかは別にして、それは音楽の歴史に連なっていくものだと思います。もし阿佐ヶ谷ロマンティクスの音楽をどこかの文脈に位置づけなければならないとしたら、自分たちではどの系譜に属していると思いますか? たとえばはっぴいえんどだとか、フィッシュマンズだとか、あるいは一見ポップスに聴こえるけどマインドはドラヘヴィなんだぜとか。

貴志:Lampかな。必ずしもそのレールに乗るというわけではないですけど、Lampが好きで、曲のイメージとして多少意識しているところはありますね。あと、フィッシュマンズも少なからず(意識しています)。

古谷:たぶんメンバーそれぞれで見ているものが違うんじゃないかな。

貴志:みんな好きな音楽が全然違うので(笑)。

ではそれぞれお訊きしてもいいですか(笑)? まず貴志さん的には「阿佐ヶ谷ロマンティクスはLamp」ということで(笑)。

古谷&有坂:Lamp説(笑)。

貴志:Lampと、なんだろうね。あとは、ユニークスというロックステディのバンドがいるんですけど、完全にメロディが立ってゆったりとしているんです。そういう何度でも聴ける音楽が好きなので、自分としてはロックステディと日本の音楽がうまく交わるような音楽にしたいなと思っています。

有坂:私は気持ちよく歌えればいいというだけなので。

貴志:有坂は完全にスピッツだもんね。

有坂:あー、そうですね。

古谷:井上陽水じゃないの?

有坂:井上陽水も好き。趣味的にはスピッツとかが好きで、爽やかで聴きやすくて、でも音楽的に変な感じもありつつ。

スピッツは意外と変な曲も多いですもんね。

有坂:そうですね。歌詞もけっこう意味わかんないですし(笑)。だけど聴きやすくてみんなに愛されるみたいなところが(好きですね)。

なるほど、わかりました。有坂さん的には阿佐ヶ谷ロマンティクスは……、

有坂:スピッツで(笑)!

(一同笑)

古谷さんはどうでしょう?

古谷:何説か、どうしようかな(笑)。やっぱりビートがバック(寄り)で流れているのがいいですね。私はヒップホップがすごく好きなので。うーん、ドラヘヴィ説かな(笑)。じゃあ、むしろスラロビ(スライ&ロビー)説で(笑)。

古谷さん的には阿佐ヶ谷ロマンティクスはスラロビの系譜だと。そうなるとやはりデニス・ボーヴェル・リミックスはやるべきですね(笑)。

古谷:そうですね(笑)。たぶんリズムだけ聴くと阿佐ヶ谷ロマンティクスもけっこう変なことやっていると思うので。

ファースト・アルバムが1月に出たばかりですが、今後のご予定を教えてください。

古谷:レコ発が3月に2本ありまして。

貴志:3月4日に大阪で、18日に東京でやります。ほかに漠然と思っていることは、今年中にもう1枚EPか何かを出したいと思っていますね。曲は作っているので。

EPと言えばB面ですよね(笑)。

(一同笑)

古谷:デニス・ボーヴェル・リミックス……。

貴志:作っている感じだと、今のところこのアルバムよりはディープなサウンドになりそうですね。3拍子の曲もあったりして。

古谷:そうですね。(3拍子が)すごく楽しいです(笑)。

おー、それは聴いてみたいですね。それでは最後に、このアルバムの聴きどころを一言でお願いします。

貴志:(聴きどころは)コード進行とか(笑)。

有坂:ははは(笑)。これだけポップに、とか言っているのに(笑)。

貴志:あとはメロディの不安定さと、それにリンクした歌詞とか。それと……何かあります?

古谷:たぶん、何回か聴いたら「こんなことやってたんだ」という新たな発見がある1枚だと思います。何度も聴いて欲しいです!

阿佐ヶ谷ロマンティクス
LIVE情報

2017/3/4(Sat.)
『阿佐ヶ谷ロマンティクス"街の色" Release Party 大阪公演』
@大阪 artyard studio
OPEN 18:00 / START 18:30
ADV ¥2500
with/ 浦朋恵バンド / 本日休演 / 甫木元空(映画監督 / 短編映画上映) / IKEGAMI YORIYUKI(イラストレーター / 作品展示)

2017/3/18(Sat.)
『阿佐ヶ谷ロマンティクス"街の色" Release Party 東京公演』
@ TSUTAYA O-Nest
OPEN18:00 /START18:30
ADV ¥2500
With/ 入江陽と2017(NEW BAND) / Wanna-Gonna /IKEGAMI YORIYUKI(イラストレーター / 作品展示)

2017/4/12(Wed.)
DADARAY presents『DADAPLUS vol.1 ~Tokyo~』
@ 新代田FEVER
OPEN19:00 /START19:30
ADV ¥3000
With/ DADARAY

https://asagayaromantics.weebly.com/

Gonjasufi × Daddy G - ele-king

 これはおもしろい組み合わせだ。西海岸の奇才、ゴンジャスフィが昨年リリースしたダーティでブルージィなアルバム『Callus』。その冒頭を飾る“Your Maker”を、マッシヴ・アタックのダディGがリミックスしている。このリミックスは4月18日よりはじまるゴンジャスフィのUK/EUツアーを記念したものと思われ、無料でダウンロードすることが可能となっている。ダウンロードはこちらから。

GONJASUFI - UK/EU TOUR
w/ support from Skrapez

Tickets and more information available here.

APRIL
18 – Leipzig, DE @ UT Connewitz
19 – Cologne, DE @ Gebude 9
20 – Frankfurt DE @ Das Bett
21 – Hamburg DE @ U&G
22 – Berlin, DE @ Gretchen
23 – Munich, DE @Feierwerk
25 – Nuremberg DE @ Z-bau
26 – Geneva, DE @ La Graviere
27 – Zurich, CH @ Hotel Fabrik
28 – Bern, CH @ Dampfzentrale
30 – Krems, AT @Donau Festival

MAY
02 – Copenhagen, DK @ Lille Vega Club
03 – Paris, FR @ Badaboum
05 – Arnhem, NL @ Willemeen
06 – Brussels, BE @ Botanique
07 – Aachen, GER @ Musikbunker
09 – London, UK @ Archspace
10 - London, UK @ Archspace
12 – Bucharest, Romania @ Club Control
13 – Cluj Napoca, Romania @ Form Space

Support from Perera Elsewhere and Waq Waq Kingdom (Andrea Belfi, DJ Scotch Egg; Kiki Hitomi of King Midas Sound) in select cities.

label: Warp Records / Beat Records
artist: Gonjasufi - ゴンジャスフィ
title: Callus - カルス
release date: NOW ON SALE
BRC-521 国内盤CD: ¥2,200+tax

国内盤特典: ボーナストラック追加収録 / 解説書付き

New Gen - ele-king

HD画質のUK・ギャングスタ・ラップ

 言うまでもないことだが、いまアンダーグラウンドのストリート・ミュージックを聴くなら YouTube である。「ユーチューバー」と同じ広告収益モデルで立ち上がってきた音楽チャンネル、The Grime Report などは頻繁にビデオをアップロードする。ミュージック・ビデオからフリースタイル、お悩み相談、MCによる料理番組まで、マルチなタレントを持ったスターがビデオで日々競い合っている。MC自身も、驚くべき「まめさ」で、彼らの日常を切り取っている。Snapchat へのコンスタントな動画投稿、Instagram ストーリーでのフリースタイル・ラップ、ミーム……「ギャングスタ」の日常は iPhone カメラで演出される。

 インディペンデントな YouTube チャンネルの台頭と、「新世代」を短くした「NEW GEN」のリリースはかなりリンクした動きだ。コンピの A&R を務めるのは Caroline SM、以前は『GRM Daily』というメディア、YouTube チャンネルでグライムを中心にUKのアンダーグラウンドな音楽を紹介していた編集者であり、Radar Radio のプレゼンターでもある。
 コンピに参加した 67、Avelino や Abra Cadabra、AJ Tracey といったMCもミュージック・ビデオがヒットし、UK・アンダーグラウンドで人気に火がついているラッパーだ。そのサウンドはUSで言えば Drake と比較してみたくなるような、Trap / R&B であったり、メローでリラックスした雰囲気のものだ。「巻く」話を堂々展開して見せた Renz の“Flexing”、銃の話から展開される警察とストリートの話をマイクポッセで回す 67(シックスセブン)の“Jackets”がハマった。

 曲の冒頭で、「You can’t trust everyone, that’s one thing I learnt」と言う。漢 a.k.a. GAMI がこのビデオで「人には期待しないほうが無難」と話したのを思い出す。

 ギャルの話やいざこざ、銃、酒、ブリンブリン。アメリカのヒップホップをどこまで辿っても、彼らのスラングやパトワを駆使したワーディングがある。「らしさ」が脱臭されることはなく、さらに味になっている。Stefflon Don & Abra Cadabra の“Money Haffi Mek”はそんな1曲だ。頑張って聞き取ったが一言も理解できなかったのは力不足であるが、フローには中毒性アリだ。

 MCたちの舞台として用意されるサウンドは、iPhone 画質と同じくらい綺麗で透き通っている。グライムのザラザラした質感とは違って聴きやすい。しかしラップはハードな日常を切り取り、そのコントラストはさらに際立っている。

interview with YUKSTA-ILL - ele-king

E王
YUKSTA-ILL
NEO TOKAI ON THE LINE

Pヴァイン

Hip Hop

Tower HMV Amazon iTunes

 ラップの巧みな技術を披露しながら、そのリリックの意味や作家の意図するところをリスナーまで届けるのは簡単なことではない。それは単純にラップ・ミュージックは言葉数が多いということもあるし、リスナーの耳に頼らざるをえないという側面もある。いま大人気のMCバトルのテレビ番組が字幕を付けている、あるいは「付けざるをえない」事実からもわかるだろう。これは皮肉や揶揄ではないのでそこは勘違いしないでほしい。ヒップホップ、ラップ・ミュージックという音楽文化に特有の言語(スラングや専門用語)や文脈やコードというのも深く関係している。もちろん解釈や聴き方はリスナーの自由だ。それでもラッパー=作家が「伝える」ことを諦めないのであれば、彼/彼女らは努力を怠らず試行錯誤をくり返す必要があり、そしてその過程と軌跡がそのラッパーの音楽の個性や魅力になっていく。

 そこで三重県鈴鹿市のラッパー、YUKSTA-ILL(ユークスタイル)のセカンド・アルバム『NEO TOKAI ON THE LINE』である。この作品でYUKSTA-ILLはその類いまれなラップ・スキルを披露した上でアルバム1枚を通してストーリーを紡いでいく。これまで彼は、ファースト『questionable thought』(2011年)、EP『tokyo ill method』(2013年)、ミックスCD『MINORITY POLICY OPERATED BY KOKIN BEATZ THE ILLEST』(2015年)といった作品をリリースしている。それらと比較すれば、本作が彼の中で「伝える」ことに重きを置いた作品であることもわかる。

また、YUKSTA-ILLはSLUM RCという名古屋を拠点とするラップ・グループのメンバーでもあり、この近年まれに見るハードコアなマイク・リレーを武器とするポッセにはC.O.S.A.やCAMPANELLA(本作にも参加)という昨今注目を集めるラッパー(C.O.S.A.はビートメーカーでもある)や、3月にファースト・アルバム『SNOWDOWN』を発表するMC KHAZZらが所属している。SLUM RCについてはヒップホップ・メディア『Amebreak』に掲載した取材記事を参照してほしい。つまり、本作のラップの言語感覚やビート、アグレッシヴなサウンドには東海地方という地域のヒップホップの特殊性も加わっている。

多彩なビートメーカー――GINMEN、Olive Oil、MASS-HOLE、PENTAXX.B.F、PUNPEE、DJ SEIJI、OWL BEATS、SNKBUTNO、RAMZA――が参加、ビート選びからしてYUKSTA-ILLの独特の個性が出ている。当然そこにも彼なりの意図がある。ということで、僕は『NEO TOKAI ON THE LINE』を聴く際の手がかりとなるような取材を目指した。この記事を読みながら作品を聴けば、より深く理解し楽しめることを保証しよう。本作のA&RのひとりであるWDsoundsのファウンダーのJ.COLUMBUSも同席しておこなわれたインタヴューをお送りする。

YUKSTA-ILL “KNOCKIN' QRAZY ~ GIFT & CURSE” (Official Video)

今回のアルバムはこれまででいちばん、聴き取りやすくなったんじゃないかなと。アメリカのヤツらがラップを口ずさんで街を歩いてるように、俺のラップを聴いた人に口ずさんでほしいんですよ。

どのように制作していきました?

YUKSTA-ILL(以下、Y):8割ぐらいできるまでは誰とも話さずに作り続けて、去年の10月ぐらいに一度マーシーくん(J.COLUMBUS)に相談しましたね。

ということは、セルフ・プロデュースの比重が大きいということですよね。ビート選びに関して意識したことはありますか?

Y:まず、当たり前なんですけどかっこいいビートでやりたいっていうのがありますね。ビートメーカーからこれでラップしてほしいと言われてもらったビート、膨大なストックの中から選んだビート、制作終盤でピンポイントで作ってもらったビートもあったりする。でも基本、俺はどんなビートがきてもラップできますね。

トラップとかブーム・バップとか簡単にカテゴライズできないビートを選んでいると感じましたね。例えば、MASS-HOLEにしても、RAMZAにしても、それぞれのビートメーカーのオルター・エゴ・サイドのユニークなビートを選んでいるって感じてそこが面白かったです。

J.COLUMBUS(以下、J):たしかに。

Y:それぞれのビートメーカーの味が出ればいいと思っていますけど、ヒネリのあるビートも選びましたね。OLIVEくんのビートも“RIPJOB”はまさにOLIVEくんっていう感じだけど、“KNOCKIN' QRAZY”の方はめちゃくちゃ破壊力があって、これまでの自分が抱いていたOLIVE OIL像を超えた新しい感じがあると思ってて。ビートメーカーの人たちも俺のチャレンジングな気持ちを受け取ってやってくれてると思いますね。

ビートメーカーにディレクションはそこまでしなかった?

Y:RAMZAにだけしましたね。RAMZAのビートがアルバムのタイトル曲なんですけど、いちばん最後に作った曲なんです。あの曲はアルバム全体の流れを考えてここにハメたいというイメージがはっきりあったので。あとアルバムの軸になったのが、4曲のビートを作ったGINMENだと思います。彼は『questionable thought』でも2曲のビートを提供してくれてて、MVにもなってる“CAN I CHANGE”がそのひとつです。GINMENは出身は宮崎で、いまは鈴鹿に住んでいて自分と家がすごく近いんですよね。FACECARZのベースでもあり、ラッパーでもあり、ビートメーカーでもある、マルチなヤツなんです。GINMENはもっと脚光を浴びて欲しいと思う。

YUKSTA-ILL“CAN I CHANGE”

“FCZ@MAG SKIT”のスキットってそのFACECARZのライヴですよね。FACECARZは東海地方の音楽の話になると、必ずと言っていいほど名前が出てくる鈴鹿のハードコア・バンドですよね。

Y:もともとDOSっていう名前でやってたみたいで。自分もその頃は知らないんですけど、DJのBLOCKCHECKが改名後に出したテープを持ってて、「ジャンル関係なくかっけーヤツはかっけーんだよ」っていう勢いであいつに車の中で聴かされたんです。

J:緑色のテープ(『DEMO TAPE』2002年)だ。

Y:そうそう、それです。

J:もう10年以上前になるけど、俺がレコード屋で働いていたときにFACECARZはかっこいいって噂になってた。FACECARZは出てきたときからかっこよかった。俺と同じ世代なんですよ。ニューヨーク・ハードコアから派生したイースト・コーストのスタイルで、音楽性もオンタイムですごく洒落てた。ヒップホップの要素も強くて、ドラムの取り方、音の取り方もわりと直球のヒップホップに近いよね。

Y:そう。ヒップホップが好きなヤツが聴いてもノれる。

J:鈴鹿のフッドスターだよね。三重にはFACECARZのヴォーカルのTOMOKIの格好を真似してるヤツが超いっぱいる。アイコンみたいな人ですね。

Y:まさにアイコンですね。TOMOKIくんは〈KICKBACK〉って服屋もやってるんですよ。

鈴鹿のゑびすビルに入ってるお店ですか。

Y:そうですね。地元の鈴鹿に本田技研があって、鈴鹿サーキットを貸し切った〈HONDA祭り〉っていうのが昔あったんですよ。今も本田の敷地内で社員のみでやってるみたいですけど、当時は一般開放されてて芸能人がゲストに来てたりするような夏祭りだった。そこに遊びに行ったら、TOMOKIくんが〈MURDER THEY FALL〉のフライヤーを配ってて、俺は「地元にもこんな人がいるんだ」ってなって。〈MURDER THEY FALL〉は東海地方でバンドやヒップホップやってるヤツだったら、誰もが憧れるような伝説的な名古屋のイベントで、俺らがTYRANTで名古屋にガンガン出て行く前から、FACECARZは名古屋、そして全国に出て行っていて、勿論〈MURDER THEY FALL〉にも出ていたんですよね。

僕は体験したことがないけれど、〈MURDER THEY FALL〉は東海地方の音楽を語る上で絶対に欠かせない重要なイベントですよね。TOKONA-Xも、もちろんTYRANTも出演していますよね。

Y:そうですね。

ところで、YUKSTA-ILLくんは、日本語を英語のアクセントでラップするというスタイルを採っていますよね。90年代後半にアメリカのペンシルベニア州に住んでいた時期もあって英語もある程度話せる状態で帰国して、本格的に日本語でラップをし始めたときからどのようにいまのスタイルを確立してきましたか?

Y:最初は日本語と英語を混ぜてラップしていたんですよ。でも、日本語と英語を混ぜたら日本人には半分しか意味が伝わんねーなと思って日本語でラップするようになった。ATOSONEとの『ADDICTIONARY』(2009年)、TYRANTの「KARMA」(2009年)のあたりから、アメリカのラップっぽく日本語を乗せようというアイディアをひらめいて、英語のような乗せ方でラップし始めて。だけど、若気の至りじゃないけれど、難しいラップをしすぎて聴いている人は何を言っているのか意味がわからなかったと思う。いま自分が聴いても理解するのが難しかったりするから(笑)。テクニカルなことをやりすぎていた。そこからさらに試行錯誤して、今回のアルバムはこれまででいちばん、聴き取りやすくなったんじゃないかなと。アメリカのヤツらがラップを口ずさんで街を歩いてるように、俺のラップを聴いた人に口ずさんでほしいんですよ。

J:全部英語でラップしようと思ったりはしないの? 世界のヤツ、英語圏の人間に自分の音楽を聴いてほしいっていうモチベーションが生まれたら、全部英語でラップするっていう設定は頭の中にあったりするの?

Y:英語でやりたいっていう気持ちがないことはないですね。これまでにもFACECARZとTYRANTでやった“B.O.W”、FACECARZと俺でやった“OVERCOME”って曲があって、ラップじゃない部分の絡みは全部英語でやってる。だから、その可能性は閉じてはいないけど、そういう考えもある中で、あえて日本語に落とし込んだのが今回のアルバムですね。

ここ最近のアメリカのラップで聴き込んだアルバムとか曲はありますか?

Y:ケンドリック・ラマーの2枚のアルバムには感銘を受けましたね。俺もアタマからケツまで構成があって起承転結がある作品を作りたかったから、今回のアルバムはそういう風に作ってますね。小説にしてもそうですけど、クライマックス迎えてからのその後があるじゃないですか。そこは今回意識しましたね。

ラスト曲“CLOSED DEAL”のあとに、OWL BEATSが作った激しいドラムンベースの隠しトラックがありますよね。

Y:もともとGINMENビートの“CLOSED DEAL”で終わろうと思ってたんです。あの曲で終わってもういちど頭に戻ってくると流れとしては良かった。ただ、“CLOSED DEAL”がラストだとネガティブに終わるとも考えて、ポジティブに終わらせたくてあの曲を入れましたね。制作終盤に鹿児島へ行ったとき、OWL BEATSからもらったビート集に入ってたもので、これでラップしたいと思ったのが大きい。今回のアルバムでは超絶早口でスピットするラップは比較的抑えていたから、自分のそういう側面も最後に見せつけときたい!っていうのもありましたね(笑)。

なるほど。ケンドリック以外だとどうですか?

Y:J・コールの新しいアルバム『4 Your Eyez Only』もすごく良かった。

やっぱりJ・コールはリリックも含めて好き?

Y:そうですね。コンセプチュアルなアルバムですよね。あと、アルバムには入っていないけど、MVもある“False Prophets”はかっこよかった。最初のヴァースは、おそらくカニエ(・ウェスト)のことをラップしている。昔の自分のアイドルだったラッパーが自分でリリックを書いていなくて幻滅する、というような内容のリリックで。そういう気持ちを率直にラップしているのがかっこいい。

J. Cole“False Prophets”

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フリースタイルがどれだけうまくてバトルで優勝してもかっこいい作品を作って良いライヴができなかったら意味がない。ヒップホップはそいつのライフスタイルを作品やライヴで表現する音楽でアートだと俺は思います。

E王
YUKSTA-ILL
NEO TOKAI ON THE LINE

Pヴァイン

Hip Hop

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あと、YUKくんと言えば、バスケですよね。

Y:タイトル曲のリリックに現役バスケット選手のデイミアン・リラードが出てくるんですけど、そいつはDame D.O.L.L.A(デイム・ダラー)という名前でラップもしているんですよ。デイミアン・リラードは才能やプレーが常に疑問視されてきた選手で、バスケのエリート・コースを歩んできたわけではない。でも、オークランドのゲットー育ちで反骨精神があって土壇場の勝負強さがある。で、当初の低い評価を覆していまはスター選手の仲間入りしている。苦労人なんです。ラップにもそういう彼の人生が反映されていて興味深いですね。そのデイミアン・リラードが1、2年前ぐらいからインスタで始めた「#4BarFriday」がまた面白い。動画をアップして自慢の4小節をキックするんです。で、ハッシュタグを付けて拡散していった。そうしたら、その「#4BarFriday」が全米中で火が点いちゃって一般のヤツらまで同じようなことをやり出して、いまや「#4BarFriday」のコンテストまで開催されたり、謎のムーヴメントになっている。しかもDame D.O.L.L.Aが今年出したアルバム(『THE LETTER O』)にはリル・ウェインとかがゲストで参加していて、けっこう良いんですよ。アメリカではヒップホップとバスケは密接ですよね。(アレン・)アイバーソンはラップするし、マスター・Pはバスケ選手だったりして。

“GIFT & CURSE”ではいまのフリースタイル/MCバトル・ブームを受けてだと思うんですけど、フリースタイルをダンクに喩えているのはうまいと思いました。「まるでダンクぶちかました後にゲームボロ負け」というラインがありますよね。

Y:フリースタイルはあくまでヒップホップ、ラップの付加価値だと思うんですよ。ダンク・コンテストで優勝しても試合に勝てなかったら意味がないでしょと。つまり、フリースタイルがどれだけうまくてバトルで優勝してもかっこいい作品を作って良いライヴができなかったら意味がない。ヒップホップはそいつのライフスタイルを作品やライヴで表現する音楽でアートだと俺は思います。もちろん、そういう意味でドープさを競うスポーツ的要素はあるかもしれない。俺も最初はMCバトルに勝ったことで名前が広まったし、メディアがフリースタイル/MCバトルのようなわかりやすいエンターテインメントにフォーカスするのはしかたのないことだとは思う一方で、本来付加価値であるものの優先順位が入れ替わってしまってるのは複雑だし、そんな現状を悲しく思いますね。

NEO TOKAI DOPENESSやSLUM RCのラップには「ドープ=DOPE」というのが重要な要素としてあると思うんですけど、YUKくんが定義するドープとは何ですか?

Y:それは難しい質問すね。ただひとつ言えるのは、リリックやラップに忍ばせられているダブル・ミーニングや裏に潜む意味の中にドープさはあると思います。俺が若いころにアメリカのヒップホップやラップに魅力を感じたのもそういう部分なんですよ。さっきも話しましたけど、若いころはラップをテクニカルにやりすぎていて、そういう言葉が持つドープさが伝わりにくかったと思う。だから、今回のアルバムではドープな部分をよりわかりやすく提示しようとしています。

その一方で、PENTAXX.B.F がビートを制作した“OVERNIGHT DREAMER”みたいなキラキラしたメロウ・ファンク風の曲はYUKくんにとって新たなトライですよね。

Y:PENTAXXくんは三重県の横の滋賀県に住んでて、BOSSさんの流れで知り合ったんです(YUKSTA-ILLとPENTAXX.B.Fはともにtha BOSS『IN THE NAME OF HIP HOP』に参加)。それで大量のトラックを送ってきてくれたんですけど、アルバムの流れの中でのハメ所が見当たらず戸惑っていたんですよ、最初は。そんなときに聴いたこのアーバンなトラックから暖色の夜の街灯のイメージがわいてきてこの曲ができたんです。ラップしろ!って言われたら、どんなビートでも俺はできます。ただ、今回のアルバムは全体の構成を練って作りたかった。

J:最後に曲を並べ替えて作ったというよりも曲順まである程度最初に決めて作った感じ?

Y:そうですね。GINMENが作った1曲目“NEW STEP”と最後の曲“CLOSED DEAL”が前提で始まっている。

J:自分が制作、プロデュースにも関わった仙人掌『VOICE』(YUKSTA-ILLは“STATE OF MIND”に参加)やMASS-HOLE『PAReDE』(YUKSTA-ILLは“authentic city”に参加)も最初の段階で曲順や全体の構成を本人たちが考えて作っている。KNZZくんの『Z』とかもそういう作り方に近いと思う。シングルとして切れるような独立した曲としてすべてがあった上で全体の流れの中で存在感も持つ。そこがヒップホップのアルバムらしいと思う。例えば、ビギーの『レディ・トゥ・ダイ』とかもそうじゃないですか。ここで名前を挙げた“1982S”の人たち、その年代の人ら特有の何かがある気がする。お互い交流もあるし、制作に関する真面目な話もするだろうしね。

Y:ビギーの『レディ・トゥ・ダイ』は俺のヒップホップへの入り口でもありますね。あの作品はまさにストーリー・アルバムじゃないですか。最後に自殺して死んでしまう。“CLOSED DEAL”もビギーのそのアルバムの最後に若干近いイメージで作りました。

メディアも名古屋までは来るんですよ。でも三重県や鈴鹿までは来ないしフォローしない。それはかなりローカルだからわかるんだけど、すごく魅力的な音楽のシーンがありますよ。俺が鈴鹿に住み続けている理由もそこにあるし、そのシーンを伝えていくのも自分の役目だと思っていますね。

ラッパーのSOCKSをフィーチャーした“LET'S GET DIRTY”はクラブ・バンガーで、“WEEK-DEAD-END”はクラブ空けの週末の曲で、“RIPJOB”という仕事を退職することについてラップした曲へ、という流れがしっかりあったりしますよね。風景が見えてきますよね。

Y:で、“LET'S GET DIRTY”の前の“OVERNIGHT DREAMER”は車で鈴鹿から名古屋に行く曲だったりして、そういう風に流れがありますね。

“LET'S GET DIRTY”のPUNPEEのビートはクリプスをプロデュースしていたころのネプチューンズのビートを彷彿させるなと。

Y:このビートは、俺が『TOKYO ILL METHOD』(2013年)をリリースしたころから予約していたんですよ。レッドマンに“LET'S GET DIRTY”って曲があるじゃないですか。その曲のタイトルを拝借している。イントロの「LET'S GET DIRTY」っていう声はレッドマンのその曲のサビ部分をアイバーソンが試合前に歌ってるところですね。PUNPEEくんにその声ネタを投げてイントロを付け加えてほしいって頼んだんです。

Redman“Let's Get Dirty (I Can't Get In Da Club)”

そういう仕掛けが張り巡らされているのがこのアルバムの面白さだなと思います。

Y:そうですね。仕掛けはいっぱいあります。

SOCKSも名古屋のラッパーですよね。

Y:SOCKSくんのアルバム『Never Dream This Man』(2015年)でも一緒にやってて、“Ownerz of Honor”っていう曲で刃頭さんのビートでラップしていますね。俺、刃頭さんのビートでやれることにぶち上がっちゃって、自分のヴァースのシメは「YUKSTA-ILLMARIACHI!!」ってキックしてて(笑)。

SOCKS“Ownerz of Honor feat. Yuksta-ill”

ビートの年代はそれなりの幅があるんですね。

Y:そうなんですよ。“WEEK-DEAD-END”のSEIJIさんのビートは、SEIJIさんのアルバム(2014年リリースの『BOOM BAP BOX』)に参加したころにもらったものですし、“TO MY BRO”のGINMENのビートはもっと古くて、2011、12年ぐらいかな。“RIPJOB”のOLIVEくんのビートも、『questionable thought』をリリースしたころに福岡のOLIVEくんの家にお邪魔してもらっていますね。だから、「お待たせしてすみません!」って感じです(笑)。

J:NERO IMAIもOLIVEくんのビートでけっこう録ってますよね。

Y:そうっす。実はNEROは録ってて。自分が参加してる曲もあります。

J:でも全然出てないんだよね(笑)。

ははは。それだけ年代に幅のあるビートを選んで1枚のストーリー・アルバムを作っているのが面白いですね。

Y:そうですね。いずれやるつもりでストックしていたビートと最近お願いして作ってもらったビートで構成されている。

J:そうやってちょっと前のビートもあるのにこのアルバムは古く感じない。そこが良いところですよね。

Y:まあ言い訳なんですけど、フィーチャリングや客演の仕事が多くて、なかなかアルバム制作に本腰を入れるペースをつかめなかった。だから、余裕ができたタイミングで一気に作った感じですね。

今後はツアーをやっていくんですよね?

Y:そうしようと思ってます。いまいろいろ調整してます。

ツアーのコンセプトやアイディアもあったりします?

J:バスケのセットじゃない?

Y:ドリブルして出てくるってことですか?

J:いや、ボールとマイクを両方持ってたらちょっとした大道芸になっちゃうから(笑)。

Y:そうっすね。たしかに。

J:バスケのセットを組むとか(笑)。

Y:でも真面目な話、日本でもヒップホップとバスケはもっとリンクしてもいいと思いますね。ちなみにB.LEAGUEのアルバルク東京っていうチームのヘッドコーチは俺と同い年で鈴鹿出身なんですよ。その弟も選手でロスター入りしてて。もっとリンクしたいっすね。

日本のラッパーでヒップホップとバスケで思い浮かべるのは、SHINGO★西成ですかね。

Y:西成くんはたしかにそうっすね。実は昔、誘ってもらって一緒にバスケの試合を観に行ったことがあります。

J:俺の勝手な妄想としては、ファイナルは鈴鹿のクラブでYUKの仲良いメンツが集まったら面白いと思う。

Y:ゑびすビルの2階の〈ANSWER〉ってライヴハウス兼クラブでやりたいですね。鈴鹿のシーンをもっと推したいんです。名古屋はもう心配しなくていいというか、メディアも名古屋までは来るんですよ。でも三重県や鈴鹿までは来ないしフォローしない。それはかなりローカルだからわかるんだけど、すごく魅力的な音楽のシーンがありますよ。俺が鈴鹿に住み続けている理由もそこにあるし、そのシーンを伝えていくのも自分の役目だと思っていますね。

YUKSTA-ILL 『NEO TOKAI ON THE LINE』 Trailer

 あんたのビスケットを盗み
 あんたのツレを笑い 
 あんたのトイレでマスをかく
“You're Brave”(2014)

 ひとりの人間の狂おしい思いが世界の見方を変える。こういうのは久しぶりだ。ぼくは日本におけるスリーフォード・モッズ過小評価を覆すためにライナーノーツの執筆を引き受け、書いた。同じテンションのまま違う言葉で彼らについてもういちど書くことは無理な話である。何クソという気持ちがぼくを駆り立てたのだから。だいたいこのぼくに、20代、30代とちやほやされたことのなかった人間の燃え上がる魂を、どうして否定できようか。




  19.4度 高いな

  18.6度 ボブ、ちょうどいいよな?

  19.2度 高い

  18.4度 ちょうどいいな(註)


  求職者!


  ストロングボウの缶

  俺は取っ散らかってる

  うつ病についてのパンフレットを絶望気味に握りしめる

  NHSからもらったやつだ

  どうして俺がこうなっちまったか

  これから俺がどうなっていくのか

  どいつもこいつもこう思ってるわけだ

  おれは手巻きを吸う 

 「ズボンをちゃんとはきなさい!」

  くそったれ 俺は家に帰るぜ


  求職者!


 「それではウィリアムソンさん、

  最後にお見えになってから実りある雇用にむけて、

  あなたは何かしてこられましたか?」

  クソくらえ!

  ずっと家でごろごろしながらマスかいてたよ

  それからさ 

  コーヒーの一杯くらい出してもいいんじゃねぇのか?

  約束の時間は11時10分のはずなんだけどよ 

  もう12時だぜ

  この臭うクズ野郎どもめ 

  くたばったちまえよ


“Jobseeker”(2013)

(註)トラックで鶏を輸送する労働者間での会話。ウィリアムソンの説明によれば、輸送中、鳥かごの温度は22度以下に保たなければいけない。温度計を見ながらふたりの作業員が話している。


 “Jobseeker(求職者)”──こんな曲をBBCで演奏するぐらいの度胸がスリーフォード・モッズにはある。面倒なので、スリーフォード・モッズにおいて重要なポイントを要約してみよう。


・ジェイソン・ウィリアムソンは10代でモッズ・カルチャーに影響を受け、アンドリュー・ファーンは菜食主義になるくらいザ・スミスのファンだった。


・ジェイソン・ウィリアムソンとアンドリュー・ファーンのふたり組になってからのスリーフォード・モッズのアルバムのタイトルが、『緊縮財政下の犬ども(『オーステリティ・ドッグス』)であったように、彼らはキャメロン前首相から加速した福祉予算カット時代の申し子として現れた。


・スリーフォード・モッズは緊縮時代の英国を見事に記述している。と、いう評価はさんざん英メディアに書かれている。


・とにかく彼らは怒っている。


・ガーディアンいわく「彼らを非凡にしているのは、怒りとその激烈さにあり、それは今日のポップにおいて絶対的に不足している感覚である」。


・その音楽は、ラモーンズ的でもあり、ESG的でもあり、スーサイドっぽくもあるが、なんだかんだいいながらダンス・ミュージックになっている。言葉ばかりに目がいきがちだが、パウウェルが言うように、彼らは音楽的にもユニーク。


・とはいえ、そのライヴにおいて、ファーンはPCのリターンキーを押すか缶ビールを片手に乗っているかで……。


・ウィリアムソンはジェレミー・コービンの支持者として知られるが、彼らの歌詞を読めばわかるように、スリーフォード・モッズは必ずしも政治的メッセンジャーというわけではない。


・むしろファンキーで、頻繁に出てくる「マスかき」も意訳すれば「惨めさ」であり「当てつけ」であり、また「やりたいことを自分がやりたいようにやったる」ってことだろう(さすがに)。


・ツイッターやSNSもまた彼らの批判対象である。



 パッとしねぇ火曜のはじまりだ

 バスの窓についた汗のシミ

 コートを台無しにしたかねぇけど

 なるようにしかならねぇ

 「がんばれよこのクソ野郎!」

 あいつはたしかにそう言った

 白いバンのセイント・ジョージ・フラッグ

 これが人類ってやつだ

 UKIP 貴様の恥さらし

 ロンドンの路上の 脳ナシども

 うじゃうじゃいやがるゾンビどもが

 Tweet Tweet Tweet


 売女を回す車

 このバスはゲス野郎でパンパンだ

 ゲドリング・カウンシルでの8時間

 まったくクソな人生だな

 予備部屋でのつばぜり合い

 重荷になってんのは生身の体

 俺らはもうはや特別じゃねぇ


 後ろ髪を引っ張られまくる

 生きられねぇ人生

 俺はそんなの気にも止めねぇ


 これが人類ってやつだ

 UKIP 貴様の恥さらし

 ロンドンの路上にたむろする 脳ナシども

 うじゃうじゃいやがるゾンビどもが

 Tweet Tweet Tweet


 俺は自分のメシを半分食ったとこ

 地下鉄に体をブチ込む

 電車で帰る頃にゃ

 ステラでぶっ飛ぶのさ


“Tweet Tweet Tweet”(2014)



 

 その昔ザ・ストリーツの『オリジナル・パイレーツ・マテリアル』で描かれた日常は、緊縮財政時代の地方の小さな街において、よりハードかつダーティなリアリズムへと変換される。彼らの遺伝子にはセックス・ピストルズからザ・ジャム、あるいはオアシスからクラブ・ミュージックまでと、さまざまな英国流の抗い方が含まれているようだ。「かまうもんか、やっちまえ」的な大胆不敵さもまたUKミュージックならではの魅力であったわけだが、スリーフォード・モッズがいるお陰でそれが途絶えることはなかったと。彼らこそいまこの時点でのジョーカー(最強のカード)である。

 そしていま、〈ラフトレード〉からリリースされる新作『イングリッシュ・タパス』によって、ようやく日本でちゃんとこのバンドが紹介される。さあ聴こう。我々がいまいちばん忘れてしまっている感性を呼び起こすためにも。

 これはロンドンの坂本麻里子宅からノッティンガムのジェイソン・ウィリアムソン宅への電話取材のほぼすべてだ。答えてくれたウィリアムソンはスリーフォード・モッズのヴォーカリストであり、ブレイン。怒りと同時に自己嫌悪めいたわだかまりも打ち明けつつ、彼のモッズ精神も垣間見れるロング・インタヴューとなった。彼らを理解するうえでの助けになれば幸いである。




“アナーキー・イン・ザ・UK”ってのは、フラストレーションのエネルギッシュな爆風、みたいな曲だったわけで。その意味で、あれは俺たちが初期にやっていた楽曲にかなり近いよね。ところがいまの俺たちっていうのは、自分たちのソングライティングの技術をもっと磨くべく努力する、そういう領域にグループとして達しているわけだ。









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最新のプロモーション写真でもうひとりのメンバー、アンドリューの着てるピカチューのTシャツ、いいっすね。

JW:んーと……あー、それってどのTシャツのことを言ってるんだろ?? 

ポケモンのキャラの、ピカチューのTシャツですけど。

JW:ああ、(急にピン! ときたように)絵が描いてあるやつ、あれのことかな?! うん、わかる。うんうん、あれは俺もいいなと思う! あれはたしか、あいつがどっかから仕入れて来たシロモノで……っていうか、あいつ、どこであのTシャツを手に入れたんだっけな??

(笑)。

JW:あれを、奴はエドウィン・コリンズからもらったはずだよ。俺たち、(元パルプの)スティーヴ・マッケイ所有のスタジオで作業していたんだ。そこで、あのTシャツをゲットしたんだと思うけど。

(笑)マジですか!?

JW:うんうん、俺たち彼のスタジオで作業してたし……っていうか、俺がいまここで思い描いてるのって、「白地に黒でドローイングの描いてある」、そういう図柄のTシャツのことなんだけど?

いやいや、それのことじゃないですね。

JW:あー、そう!?

あの、あれ。「ピカチュー」です。日本の「ポケットモンスター」というアニメを元にした、ゲームでも有名なキャラのピカチューのことなんですけどね。

JW:(素直にびっくりしたように)へえ! なんと! そうなんだ。

はい。

JW:(どう返答していいのかわからない&どのTシャツなのかサッパリ見当がつかない、といった風で困った様子)ワーオ……オーケイ……。

ともあれ、アンドリューはあの手の妙なノベルティTシャツ(※他にも、米アニメ「シンプソンズ」の警察署長キャラ:ウィガムをフィーチャーしたTなどを着用)をたくさん収集してるみたいですよね?

JW:ああ、うん。あいつはそれこそ他に誰も着ないような、ケッタイな古い服を見つけてくるんだよな(苦笑)。

(笑)アハハ。
でまあ、それってあんまりこう、一般的には「すごくクールな服ですね!」って風には思われない、そういうシロモノなわけで。

(笑)いやー、あのピカチューTシャツはかっこいいな! と思いましたよ。まあ、それはあのキャラが日本のアニメ発だから、というのもあったかもしれませんけど。

JW:ふーん、なるほど。

でも、アンドリューがロゴTだのキャラの描かれたTシャツ姿なのが多いのに対して、あなたは無地/モノクロームというか、何も描かれてない服装が多いですよね?

JW:うんうん、たしかに……。

それって、あなたにとってのファッション面でのこだわり、みたいなものだったりします?

JW:いやぁー、それはないよ! ただ……だからまあ、俺は服を買いに行くとか、ショッピングするのはかなり好きな方だし……そうは言っても、俺の好みは(ノベルティTとかとは違う)、もうちょっと高級なタイプのファッション、みたいなものなんだけどさ。

へえ(笑)!?

JW:いやいや、だからさ、「高級」って言ったって、それはなにも「金がかかってる、これみよがしに派手な服」っていうのじゃなくて、一見したところ、ものすごーく平凡なんだよ。

ああ。

JW:ただ、見た目は地味でも非常に良く仕立てられているし、だからこそ長いこと付き合い愛用できる服、という。

なるほど。ちなみに、そんなあなたにとって、リアム・ギャラガーが関与しているモッズ系なブランド:Pretty Greenの服はどうですか?

JW:あれはひどい! うん、ひどい。

(苦笑)気に入らないみたいっすね……

JW:あれはダメだろ? っていうか、リアム・ギャラガー本人を非難するつもりは、俺には一切ないんだけどね。そこはわかってほしいし……言うまでもなく、彼はとても良いシンガーだしさ。ただ……(息を深く吸い込んで)彼の関わってるブランドの服、あれは、好きじゃない。ノー。あれはヒドいよ。

(笑)でも、彼はあのブランドを通じて「現代のモッズ」をやろうとしているんじゃないですか?

JW:あー、うん。そうだよな。ただ、あのブランドの「モッズ」って、とにかくミエミエ過ぎなんだって。

(苦笑)なるほど。

JW:だから──たとえばの話、かつての時代のモノホンのモッズを振り返ってみれば、彼らはあそこまでわかりやすい、ミエミエに「モッズ」って見た目じゃなかったわけ。

ええ、わかります。

JW:だから、「モロにモッズ!」な格好じゃなくて、実際の彼らは、ある意味もうちょっと控えめだった、という。だろ? それこそ、「これはファッショナブルとは言えないな」とすら映るような、野暮ったさの一歩手前なルックスだった。で、なんというか、そういう面に俺は魅力を感じるんだよ。「お洒落だろうか?」と気にしていないっていう。

なるほど。まあ、お金って面もあるでしょうしね。リアムみたいにいったん大金を手にしたら、その人間は道楽のように「モッズが好きだから、じゃあ自分自身の『モッズ・ギア』のファッション・ラインを作ってみるか」なんて考えるものなんでしょうし。

JW:ああ、だよな〜。でもまあ、あれってのは……いや、きっとあれ(Pretty Green)をやるのは、彼(リアム)にとってはいいヴェンチャー・ビジネスの機会でもあるんだと思うよ。

ええ、もちろん。

JW:きっと、あのブランドをやることで彼もいくらか稼いだんだろうし。だけど、こと……あのブランドそのもののテイスト/趣味って意味で言えば、ありゃあんまり上品とは言えないだろう、俺が思うのはそれだけだな。

はっはっはっはっはっ!

JW:(苦笑)分かるだろ?

(笑)それに、かなり高いお店ですしね。

JW:うん、ファッキン・イエス! 大枚はたかされるよな。とんでもない……ってのも、Pretty Greenはここ、ノッティンガムにも支店を出しててね。

あ、そうなんですか。

JW:ああ、まだ順調に経営が続いてる。うん……でまあ、あの店はたくさんの人間に受けててさ。こっちで言う、いわゆる「若い野郎連中向けのマーケット」にね。だから、アークティック・モンキーズだとか、もちろんオアシスもそうだし、それとか……カサビアンとか? とにかくまあ、その手の音楽にハマってる若いラッズをターゲットにしたマーケットのこと。で、Pretty Greenは、そういう音楽が好きでフレッド・ペリーなんかを買いに走る若い野郎、それとか若い女性連中の関心を掴んでるわけだ。だからそういう類いの「市場」がちゃんと存在してるってことだし、実際、もうかるマーケットなんだよ。かなりの額の金が動くからね。

ええ。

JW:というわけで……ただまあ、俺から見るとあれは「あんまり趣味が良くないな」。と。うん、服としてのテイストは良くないし、見てくれもヒドいよ。

(笑)了解です。

JW:おう。

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ノッティンガムってのはかなりの多文化都市だしね。多様なカルチャー、色んな人びと、様々な肌の色、それらが混ざり合っている……それは快適で気持ちの良いミクスチャーであって、人びとはみんな、他の連中の持つ独自のカルチャーをリスペクトし合ってきたよ。ただ、そんななかにもごく一部に分派、かなり人種差別な傾向を持つ団体が存在している、だけど、それってもう、昔からずーっとそうだったわけだろ? 


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ブレグジットが浮上して、半年以上が経ちますが、ノッティンガムに変化はありますか? 

JW:(軽く「ハーッ」と息をついて)「これ」といった変化はまだ起きていないと思うけど?

そうですか、それは良かった。

JW:(つぶやくように)まだ、この時点ではなにも起きてないよ。まだ、ね……。(一拍置いて)ただ──そうは言っても、いまの俺はもう、昔みたいな単純作業系の職には就いていないしね(※ジェイソンは2014年から専業で音楽活動をやっている)。だから、そうだな……俺は、いわゆる「クソみたいな仕事」であくせくしてはいない、ってこと。というわけで、ブレグジットが民営セクターにまで影響を与えているのかどうか、本当のところは俺にもわからないんだ。いままでのところは、ね。

そうは言っても、たとえば地元でパブに行ったり通りを歩いているうちに、ノッティンガムのなんらかの「変化」に気づくことはありませんか?

JW:ああ、ノッティンガムの都市部ではなく周辺の田舎のエリア、それはちょっとあるかも。俺の住んでるあたりでは、そういうのはそれほどないな。だから……なんというか、ある種の「人種差別的な気質」はたしかに存在するし、そうした面が表に出てきて目につく、というのはある。でも、そんなことを信じてるのはごくごく少数な連中だし、なのにあいつらは脚光を浴びて不相応な注目を集めている、と。

はい、わかります。

JW:だろ? だけど、連中の言ってることは広く伝わってしまうんだよ。というのも、あいつらの発しているメッセージはものすごく卑しいもので、だからこそ人目を引く。音を立ててる人間の数そのものは少ないのに、それが倍の音量で伝わってしまう、みたいな。

ですよね。

JW:でも……ノー、だね。「これ」といった、あからさまな経験は自分の身には降り掛かっていないな、正直言って──いまの段階では、まだないよ。うん、とりあえず、いまのところは、まだ。っていうか、ノッティンガムってのはかなりの多文化都市だしね。多様なカルチャー、色んな人びと、様々な肌の色、それらが混ざり合っている、そういう場所なんだ。だから……それは快適で気持ちの良いミクスチャーであって、人びとはみんな、他の連中の持つ独自のカルチャーをリスペクトし合ってきたよ。ただ、そんななかにもごく一部に分派、かなり人種差別な傾向を持つ団体が存在している、そこは俺にもわかっていて。だけど、それってもう、昔からずーっとそうだったわけだろ? 

はい。

JW:ただ、ブレグジットってのは……さっきも俺が言ったように、そういう不満を抱える少数の人間たちが、自分らの意見をもっと声高に叫ぶ機会を与えてしまった、と。

なるほど。それを聞いていると、日本も似たような状況なのかな? と感じます。イギリスと日本はどちらも島国ですし、そのぶん「自分たちの国境を守る」という意識が強いと思うんです。もちろん、日本人の9割は善良で優しいタイプだとは思いますけど──

JW:もちろん、そうだろうね。

ただ、一部にバカげた差別意識を持つひとがいるのは事実だ、と。

JW:ってことは、日本だと人種差別って結構多いの?

いや、おおっぴらで頻繁ってことはないと思いますけどね。ただ、イギリスがヨーロッパ大陸に面しているように、日本も中国・アジア/ロシアという大陸を背にしている国で。でも、アジアからやって来る人びとを蔑む傾向があったりしますし。

JW:うん、なるほど。

それってまあ、「日本は島国で、純粋な民族である」みたいな、アホでナンセンスな認識が残っているからだろうな、と思ってますけど。

JW:だろうね……うん、言ってることはわかるし、そうだよね。うん、いまの話は面白いな。でも、訊きたいんだけど、ってことは、いまも日本には「アンチ西洋」、あるいは「反米」みたいなフィーリングが強いのかな?

いやー、それはないと思いますよ!

JW:そう?

ええ、それはないですよ。心配しないでください。だから……日本人の奇妙なところって、知性とか文化の面で「こいつらは自分たちよりも進んでいるな」と感じる相手には、好意を示すんですよ。

JW:なるほど。

だから、外国人に対しても……これはとても大雑把な言い方になりますけども、もしもその外人がいわゆる「金髪青眼」だったら、日本人は「わー、かっこいい!」と気に入る、みたいな。

JW:あー、なるほど。

それってまあ、おかしな感覚ですけどね。

JW:うんうん……。

自分でも、そういうノリは理解できないんですけど。ただ、そういう感覚はまだ残っていて……うーん、すみません、自分でもうまく説明できない。

JW:オーケイ。興味深い話だ。

というわけで要約すると:「あなたがアングロ・サクソン系の見た目であれば、日本でトラブルに遭うことはまずないでしょう」というか(笑)。

JW:(苦笑)おー、オーケイ、わかった! だったら安心だな。俺たちもひとつ、日本に行くとしようか!

(笑)ぜひ、お願いします。

JW:クハッハッハッハッハッ!

 この生まれたばっかの地獄には
 悲しみまでもが積もってく
“Time Sands”(2017)

俺としてはさほど「怖がってる」わけでもないし、あるいは「連中を恐れてる」っていうんでもないんだけどね。そうではなくて、俺はあいつらが「憎い」んだ。ものすごい激しさで彼らを憎悪しているし、だからこそ、そんな俺にやれる唯一のことというのは、なんというか、自分自身をそこから切り離してしまうことだと感じる、みたいな。

ブレグジット、トランプ、世界はこの1年で大きな衝撃を経験しましたが、いまどんな気分でしょうか?

JW:うん、うん……(咳き込んで声を整える)いやほんと、かなり不安にさせられるよな。だから、だから……このあり得ない、ひどい状況をすべてギャグにして笑い飛ばすのは、ほんと簡単にやれるんだよ。ってのも、ある意味色んなヘマを起こしながら進んでいるわけで。

ただ、政治なんでジョーク沙汰じゃないですよね。

JW:ああ、もちろん冗談事じゃないよ。ノー、これはジョークなんかじゃない。だから、いまのこの事態を大笑いしている人間が多くいるのに気づくわけだけど──でも、そうやって笑っていないと、泣くしかないしさ。だろ? 

たしかに。

JW:で……まあ、うん、これからどうなるのか、まだわからないよね。ってのも、俺としても彼らが一体なにをやってるのか理解できない、彼らがイングランドでなにをやっているのか、さっぱりわからないんだ。彼らは本当にひどいし、とても残酷なことをやっていて……だから、どうしてそうなってしまうのか、理解できないっていう。混乱させられるばかりだし、俺は完全に疎外されてしまった。彼ら脱退賛成派を人間として理解できないし、どうして彼らがああいう風に動いているのかも理解できない。ってのも、ブレクシットを進めながら、彼らは緊縮財政で予算削減も続けてるわけだろ? この国はいまや、完全にどうしようもない状態にあるってのにさ。
 でも、まあ……かといって、俺としてはさほど「怖がってる」わけでもないし、あるいは「連中を恐れてる」っていうんでもないんだけどね。そうではなくて、俺はあいつらが「憎い」んだ。ものすごい激しさで彼らを憎悪しているし、だからこそ、そんな俺にやれる唯一のことというのは、なんというか、自分自身をそこから切り離してしまうことだと感じる、みたいな。わかる?

ええ。

JW:でも、思うに……トランプ政権に対しては、そこまで感じないな。というのも、あれはアメリカ人の問題であって、俺の国じゃない。アメリカに住んでるわけじゃないからね、俺は。だから、自分に(トランプの)直接的な影響が及ぶことはない、と。

ただ、あなたたちはもうすぐアメリカをツアーしますよね(苦笑)?

JW:ああ、アメリカ・ツアーを控えてる。うん、これから5週間後くらいにあっちに行くよ。だから、いまのアメリカがどんな感じなのか、現地で見聞きできるのは興味深いよな。

そうですね。

JW:それでもまあ、共有されてるコンセンサスっていうのはいまだに──「あなたが健康な身で、銀行口座に残高がある限りは大丈夫です」なんだよ。ところが、いったん健康を損ねたり、あるいはお金が尽きてしまうと、途端にその人間はおしまい、アウトだ、と。

ええ。

JW:というわけで……そういうもんだろ? その点はほんと、ちっとも変わっていないよな。ところがいまというのは、やかましい主張を掲げたもっと声のでかいアホどもが権力を握ってしまったし、しかもあいつらはひどい信念の数々を抱いてるわけで。でまあ……そうだね、前政権よりはわずかに劣るよな。

その前政権とは、キャメロンのこと?

JW:いやいや、アメリカの話、オバマだよ。だから、多くの意味で「みんなおんなじ」って感じじゃない、実は? いやまあ、俺だって無知な人間みたく聞こえる物言いはしたくないし、様々なことを実現させるべくオバマは最大限の努力をした、というのは承知しているんだよ。彼は「大統領を退任して優雅に引退」するに値する、多くのリスペクトを寄せられるにふさわしい、それだけの働きはしたんだし(※ちなみに:2月初め、引退後さっそくイギリスの大富豪リチャード・ブランソン所有のカリブ海にあるネッカー島でのホリデーに招かれ、ボート遊びやカイトサーフィンに興じるオバマの姿がSNSに登場。批判する声も多かった)。
 ただ、やっぱり人間ってエリート主義が抜けないんだなぁ、と。それってもう、ダメだよ。とにかく終わってるって。それって問題だよ。でも、そこで生じる問題というのは、これはとてもでかい問題だけど、じゃあ、そこでどうすればいいんだ?と。誰かが去って行っても、また代わりに他の人間が入ってきて「これからはこうなる」と指図するわけで。

なるほど。それってもう、「椅子取りゲーム」みたいなものですよね? 主義がリベラルであれ保守派であれ、エリートのグループに属していればいつか順番が回ってくる、みたいな。

JW:まさにそういうことだよな。で、こうしたことについてくどくど話してる自分自身が、我ながら嫌でもあってね。そうやって現れる小さな側面をいちいち理解しようとトライしているわけだけど、支配する側の集団はおのずと生まれている、という意味で。ってのも、ある意味同じ「鋳型」から彼らは出てくるんだし……だけど、人民ってのは巨大だし、ものすごい数の人類が存在するわけだろ? なのに、俺たちはみんな、ひとりの人間に、それからまた次のファッキン誰かさんの手へ、って風に振り回されているだけっていう。自分らがどこからやって来たのか、それも一切関係なし。
 だから、俺たちはあちこちに振り回されたらい回しされてるだけ、なんだよ。「これをやりなさい」、「あれをやりなさい」って命じられるばかりで、俺らは隅の一角にどんどん押しやられていく。戦争が起きると、ひとつの国は完全な悪者として処罰を受け、国土をすっかり破壊されてしまう。かたや相手の国は、そこまでひどい扱いを受けることはないわけで……ただまあ、世界って常にそういうものだったわけじゃない? で、そこが……(勢いあまって、やや言葉を詰まらせる)そこ、そこなんだよ、俺としてはとても混乱させられるし、そしてフラストレーションを感じさせられるものっていうのは。とにかく、「それ」なんだ。だから、統治する側は永遠に優勢な立場にいるし、それが変化することもないだろう、と。その状況にフラストレーションを感じるっていう。

その「諦め」に近い感覚は、日本にもあると思います。イギリスほど階級制が強くないとは思いますけど、やっぱり一部にエリートの支配層が根強いですし。「なにも変わらないんじゃないか」と感じるひとはいるでしょうね。

JW:うん、きっとそうだろうね。


 俺たちはこれ以上魂を売らねぇ 

 でも3ポンドでくれてやるよ

 お願いだよ もう最悪 

 ブレクジットはリンゴ・スターのアホを愛してる

“Dull”(2017)


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『イングリッシュ・タパス』という言葉は、いまのイギリスの現状を大いに物語るものでもあるよな、と思ってね。だから、無学だし、チープ。そんな風に、人びとはとりあえずのありもので間に合わせざるを得ない状態にある、と。


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「英国的」と言われているスリーフォード・モッズですが、自分たちの音楽が英国以外で聴かれることについてどう思いますか?

JW:(即答)グレイトだと思うよ!  

(笑)なるほど。

JW:うん、最高。だって、自分たちとしては「きっと俺らはノッティンガム止まりに違いない」とばかり思ってたしね。

あっはっはっはっはっ! そうだったんですか?

JW:(ややムキになった口調で)いや、マジにそう思ってたんだって! ってのも、俺たちの音楽ってのは、こう……とてもローカルで地方限定なものなわけじゃない? 他の地では通じないような言葉だらけ、ローカルな通語でいっぱいな音楽だしさ。

ええ、そうですよね。

JW:だから……「地方喋り」そのまんま、なわけ。それに、俺が歌のなかで語っている事柄にしたって……ぶっちゃけ俺以外の誰にも理解できないであろう、そういう話を扱ってるんだし。

(苦笑)なるほど。

JW:もちろん、その「正直さ」が伝わる、ってところはあるんだろうけどね。だから……うん、俺たちとしても、(英国以外の国の人びとが聴いている、という事実に)本当にびっくりさせられたよ。

そういえば、あなたたちはドイツで人気が高いなって印象を受けてるんですけども。

JW:ああ、あっちでは人気だね。

それってどうしてなのかな、なんでドイツ人はスリーフォード・モッズに反応してるんだろう? と不思議でもあって。やはりドイツだと、「言葉の壁」はあるわけですし。

JW:うん、それは間違いなくあるよ。ただ、俺が思うに……ドイツってのはパンク、あるいはポストパンクのあれだけ長い歴史がある国なわけで。だから、ミニマリストな国なんだよな。で、彼らが俺たちに惹かれるのは、俺らの音楽にあるミニマリズムもひとつの要因なんじゃないか? そう、俺は思っていて。で、んー……俺自身としては、自分たちの音楽にはかつてのなにかを思い起こさせる面もあると思う。と同時に、この歌い方のスタイルにしても、おそらく聴いていると昔いた誰かを思い出させるんだろうし……だからまあ、これってちょっと奇妙なバンド、なんだ。ただ、考え抜いた上でこういう音になったわけじゃない、っていう。うん、色々と考えあぐねたりはしないよ。

新作を『イングリッシュ・タパス(English Tapas)』と命名した理由を教えていただけたらと思います。

JW:まあ、俺たちはこれまでも「スペインのタパス」は体験してきたわけだよね。「スパニッシュ・タパス」と言っても、そのバリエーションの一種、ということだけど。だから、スペインのバーで出てくるタパスといえば、一般的にはピンチョス(※パンを使ったカナッペ風、あるいは楊枝を刺したバスク風の軽食。屋台他でも供される)なんかがそれに当たるよね。でも、その一方でもっと高級な「タパス」なんてのもあって……だからまあ、とにかく俺たちはスペインのタパスは経験豊富、色々と触れてきたわけ。で、ある日、アンドリューがイギリスでどっかのパブに入ったとき、そこのメニュー板に「イングリッシュ・タパス」って書かれているのを目にしてね。それがどういうシロモノかと言えば、スコッチ・エッグ(※ゆで卵を味付けしたミンチでくるみ、衣をつけて油で揚げた庶民的なスナック)にお椀に入ったフライド・ポテトが添えてあります……みたいな、(さも可笑しそうにクククッと半分吹き出しながら)とにかく、あーあ、これってマジにしょぼくてクソじゃん、(苦笑)、そういうメニューでさ。

(笑)。

JW:だから、俺たちも「これは笑える!」とウケたけど、と同時に、このフレーズってある意味、いまのイギリスの現状を大いに物語るものでもあるよな、と思ってね。だから、(タパスのなんたるかを知らないで「タパス」という言葉を使っている意味で)無学だし、(料理そのものも安上がりで)チープ。そんな風に、人びとはとりあえずのありもので間に合わせざるを得ない状態にある、と。そんなわけで、「これってどんぴしゃなフレーズだな」、俺たちにはそう思えた、というだけのことなんだよ、ほんと。

なるほど。フィッシュ&チップスみたいなありふれた料理のミニチュアでイギリス流に「スペインの伝統」をやっているのが滑稽に映った、と。

JW:うんうん、ほんとひどいよ! あれはひどい。せっかくタパスをやるんなら、もっと他に色んなやりようがあるのにさ……。ただまあ、これって一部のイギリス人にある態度だったりするけどね。だから、他のカルチャーに存在する美しいアイデアを引っ張ってきて、それをすっかり粗悪なものに歪曲してしまう、という。

ああ。でも、それがまたイギリス人の長けているところ、でもあると思いますけどね? 粗悪にしてしまうとは限らず、他のカルチャーから影響を受けて、それを自分たちなりに解釈し直す、という。

JW:うん。

たとえばレゲエのUK音楽への影響は大きいし、アメリカのブルースを、ローリング・ストーンズのようなバンドは1960年代のアメリカにある意味「逆輸入」したわけです。

JW:あー、うん、それはそうだよね……。たしかにそうだ。

その意味で、他文化の翻案はイギリスの遺産でもあるのであんまり恥じなくてもいいかな、とも思いますが?

JW:いやいや、全然、そういうつもりじゃないんだ! だから、そうしたイギリスの遺産を恥じるっていうのは、俺にはあんまりないんだよ。ってのも、俺がこういう音楽をやってるのも、主にそうしたかつてのイギリス産のバンドたちのおかげなんだしね。ただ……最近の自分たちってのは、この国の持つ良い面よりも、そのネガティヴな側面の方ともっとつながってしまっていて。

ああ、なるほど。

JW:だから、俺の考え方もネガティヴなそれになってしまうわけ。人びとに失望させられたって感じるし――保守党に投票した連中に裏切られた、EU脱退に賛成票を投じるのが得策だと考えた人びとに失望させられた、そう感じるっていう。というわけで、イギリスをネガティヴに捉えるのは俺個人の問題っていうか、うん、きっと俺の側にバイアスがかかっているんだろうね。

でも、その感覚はもっともだと思います。自分の周辺の正気な人間、イギリス人の友人はみんな、いまが大変な時期と承知していますし。聖ジョージ旗(※白地に赤いクロスが描かれたイングランド国旗で、連合王国フラッグの意匠の一部)だのユニオン・ジャックを誇らしげに振り回す時期ではない、と。

JW:まったくその通り。そういうのをやるには、実に悪いタイミングだよな、いまってのは。


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イギリスの遺産を恥じるっていうのは、俺にはあんまりないんだよ。ってのも、俺がこういう音楽をやってるのも、主にそうしたかつてのイギリス産のバンドたちのおかげなんだしね。ただ……最近の自分たちってのは、この国の持つ良い面よりも、そのネガティヴな側面の方ともっとつながってしまっていて。









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名前に“MODS”という言葉を入れたのは、ジェイソンがかつてザ・ジャムやMODカルチャーに影響されたからだと思いますが、最大級の皮肉にも感じます。

JW:だよな。

あなたたちの音楽にはモッズ風なギター・サウンドも、ランブレッタも含まれていないわけで。

JW:うん、ないない! ノー、それはまったくない。

では、バンド名になんでモッズと付けたのでしょうか?

JW:それはだから、俺が「モッズ」ってもんにすごく入れ込んでいるからであって。俺がハマってる「モッズ」の概念ってのは、新しいものを取り入れるって面なんだ(※モッズはもともと「Moderns」の略で、先進的な感覚を称揚した)。かつてのモッズというのは前向きに物事を考える、そういう考え方のことだったし……わかるだろ? 多くの人間が過去のなかで生きていたのに対して、モッズの姿勢は「過去に捕われずにいよう」、そういうものだった。それなんだよ、俺が好きな、多くの人間が抱いている「モッド」の概念ってのは。過去に留まってはいない、というね。
 だから、「モッズ」の字義通りの意味合いを考えなくちゃいけないんだよ。あれは要するに、「モダニズム」から来ている言葉だしね。だから、その本来の意味は考えてもらわないと。で──その意味で、「モッズ」というのはクリエイティヴィティを生み出すってことじゃなくちゃいけないし、同時代的なものであり、それに今日(こんにち)についてなにかを語らせる、そういうものであるべきなんだよ。

はい。

JW:ってのも、この世界の根本は変化していないしね。俺たちは永遠に、この「資本主義」っていうでかい傘の下で生き続けるんだろうし。まあ、この意見は「俺からすればそう思える」ってものだけど、少なくとも自分の知る限りはそう。だからこそ、その点について語るのは重要なんだよ。その点を音楽のなかに含めるのは大事なことなんだ、と。

なるほどね。この質問の意図には、日本における「モッズ」というものの理解も混ざっているかと思います。日本だとモッズは常に「ファッションのひとつ」という捉えられ方で。

JW:ああ、そりゃそうだろうね。

スクーターにモッズ・パーカ、映画「さらば青春の光」……とでもいうか、風俗として伝わっているけれど、さっきおっしゃっていた「(それそれの時代の)モダニスト」という真の意味はあまり伝わっていない気がします。

JW:うん。だけど、人びとはそこを理解しないといけないんだよ。だから、「モッズ=1963年」っていう概念は、捨ててもらう必要がある。ってのも、いまは1963年じゃないし、それは過ぎ去ってしまった。過去、だよ。

ただ、さっきも言ったように、いまでもPretty Greenの服やフレッド・ペリーのポロシャツを買う若者は絶えないわけで──

JW:ああ、その通り。だから、根強い人気があるんだよね。いまだにすごくポピュラー。ということは、俺の持つ「モッズ」の概念ってのはいつだって、彼らの考える「モッズ」ってのにかなわないのかもしれないな(苦笑)。

ハハハ!

JW:要するに、俺がスリーフォード・〝モッズ〟でなにがしかのトレンドをはじめたわけじゃない、と。ってのも、そんなの起こりっこないからさ!

はい。

JW:んー、だから、そういう風に一般化した「モッズ」の概念ってのは、これまでも、これからも続いていくものなんだよ。ただ、俺はとある時点で、その一般像に辟易してしまってさ。すっかり、嫌気がさした。ってのも、そんな「モッズ」の概念はなにもやってなかったし、形骸化していた、とにかく俺にはそう思えて。だからこそ俺はより突っ込んでモッズについて考えるようになったし、それに取り憑かれてしまった、と。というわけで……うん、だから、スリーフォード・モッズには「モッド」がたっぷり含まれているんだよ。ただし、聴く人間にすぐわかるあからさまなものではない、というだけで。

ちなみに、あなたたちのライヴをいわゆる「モッズ」なタイプは観に来る? それともそうした層からは無視されてる、とか?

JW:ああ、それなりの数のファンはいるよ。間違いなく、俺たちはモッズ連中からも共感は得ているね……うん、それは確実にそう。

それは良かった。というのも、自分のイメージだとモッズは純粋主義者というか、「ひたすらノーザン・ソウルで踊る」みたいな。

JW:うんうん、その面はあるよな。たしかにそういう面は持ってる。そうだなぁ、その手の「純粋主義」な連中が俺たちのことをどう思うのか……俺にもよくわからないけども。まあ、たぶん気に入らないんじゃない?

(笑)。

JW:きっと、全然俺たちの音楽を気に入らないと思う。聴いて即、「こいつらは却下!」だろうな。でも、そうは言ってもそうした純粋主義者のなかにもオープン・マインドな奴らはたくさんいるし、なんというか、「新しいこと」を取り入れるのに積極的って奴はいるからね。

**************

あなたたちの音楽から、自分は「いまのブリテン」に対する失意を多く感じるんですね。

JW:ああ。

では、10代、20代、30代のあなたがたは、人生に対してどんな夢を描いていたのでしょう? あなたの年齢だと10代は1980年代に当たりますが、まずそこからお願いします。1980年代のあなたの夢は?

JW:うん、とにかく生まれ故郷から脱出したかったね。そうやって外に出て行って……つまらない仕事に従事すること、その不快なリアリズムから逃れたかった。若いうちから住宅ローンを抱えていたし、それが鎖みたいに俺を縛り付けていたんだよ。

ああ〜、そうだったんですね。

JW:でも、俺自身はそんなのまったく欲していなかったし……俺はいろんなことを体験したかった。(軽く息をついて)でまあ、そういう生き方にトライしてみたし、ある程度それは実現させたんだ。けど、俺は自分自身の面倒をみるのがあんまり上手じゃなくてね。だから、しょっちゅうどうしようもない状態に自分自身を落とし込んでいた、と。だけどまあ……うん、若いうちから、俺はエスケープを求めていたね。

その状況は、20代=1990年代にはどう変化しました? この時期に、あなたはおそらく音楽をはじめて、バンドにも参加していたかと思いますが。

JW:うん、だからあの頃は、「音楽をつくる」のが夢だったんだよ。要するに、音楽活動を通じてどこかに出て行ければいいな、と。というわけで、俺は音楽について学び始めたし、自分の技術、クラフトを学んでいった。そこからだったんだよね、俺が「モッド」に対する疑問を非常に強めていったのは。「どうしてこうなるんだ?」と。ってのも、俺は以前にいろんなモッズ・バンドに参加していたし──それはまあ、「モッドな傾向を持つ」と言っていい類いのバンドのことで(※以下の発言からも伝わると思いますが、ここでジェイソンの言っている「モッズ寄りなバンド」というのは、一時のブラーやオアシスのように「ブリットポップにアレンジされて再燃した、広い意味でのそれ」のことだと思います)、そういうのに2、3、関与したことがあったんだ。で、それらは……とても限定されたものだと感じてね。リミットがあったんだよ。
 だから、当時の俺には世のなかが変わりつつあるのが見えたし、そういうのは終わりを迎えていた。ブリットポップ熱はあっという間に過ぎ去ってしまった。世界は変化してしまったし、なのに「モッズ」という概念は旧態依然としていた、と。

なるほど。ということは、あなたにとって最悪な時代というのは「その後」=30代に入った00年代、になりますか?

JW:うん、30代に最低な時期を迎えたね。まったくもって、良いとこなしの時期だった。

それは、あなたが自分の方向性を見失ってしまったから? 「なにをやればいいのかわからない」みたいな?

JW:ああ、うん……でもまあ、「方向性を見失った」ってのはちょっと違うかな。ってのも、そんな時期にあっても、俺は「自分は音楽だ」って姿勢を崩さなかったし、曲を書き続け、学んでいたから。

なるほど。

JW:ただ、こと「自分が持つ自己のイメージ」っていう意味では、「こうありたいと思う自分」という意味で、自らの方向を失っていたね。だから、俺は長いこと……かなり思慮に欠けた人間だったんだよ。それでも、この考え、「音楽で進路を切り開こう、音楽で生計を立てよう」って思いつきになんとか執着し続けてきたわけだけど、と同時に同じ頃、自分でも悟った、というのかな。だから、いったん30代になってみて、「音楽のなかにおける自分の〝居場所〟を理解し、学ばなくちゃいけない」って思いが浮かんだんだ。
 というわけで、そんな俺にとって、ただ「自分以外の何者かのフリをする」ってだけでは物足りなくなってしまったんだよ。ってのも、あの手のバンドの多くがやってるのってそういうことじゃない?

はい。

JW:だから……うん、30代は「学びの時期」だったね。もちろんそうは言ったって、楽しい思いも味わったんだけどさ。でも……と同時に、あれは決して「グレイトな時期」ではなかった、という。

“Jobseeker”の歌詞は実体験を元にされているんですか?

JW:もちろんそう。

非常にタフな内容で、「うわぁ……」と感じてしまうんですが。

JW:あれは実体験に基づいてる。だから、あんな風に俺は長いこと、とても低調な状態にあったんだよ。職業斡旋所に申し込みをしなくちゃいけなくて……そうやって、職を見つけてなんとか事態を解決しようとするわけ。ところが俺にはそれができなかったし、最悪だった。どうにもうまくいかず、機会をおじゃんにし続けるばかりでね。というわけで、“Jobseeker”ってのはそういう状況にぱっと目線を落としてみた、という曲なんだ。で──あの曲のストーリーは、いまも語る価値のあるものだと俺は思っている。というのも、いまだに多くの人びとが毎日、あの体験を経ているわけだから。

ええ、ええ。

JW:だから、成功したにも関わらず俺たちがあの曲をプレイし続けている、その点を批判されてもきたんだよ。だけど、あそこで歌われているのは俺が実際に体験した物事なわけだし。で……「のど元を過ぎれば」って具合に、その人間が過去に味わった経験を忘れるのは当然だと人びとが考えるのって、ほんと無礼な話だと思っていて。
 だから、もしもあれが俺の実体験を歌ったものじゃなければ、なるほどそう批判されても仕方ない、ごもっともです、と。ところがあれは、俺自身がかなり何回も潜ってきた体験だからね。で、俺としてはあの経験/ストーリーはいまでも有効、伝える必要のあるものだと思っているし、“Jobseeker”はやっぱりまだかなりパワフルな歌であって。だから俺たちはいまも歌うよ、と。

具体的にはどんなお仕事をされていたのでしょうか? 以前は区の失業手当のアドバイザーもやっていたそうですが、他には?

JW:うん、洋服屋、色んな洋服屋で働いてきたよ。洋服屋の経験は豊富だし……あれはかなり良い仕事だよね。ってのも、俺はもともと洋服が大好きだし、だからある意味、あれは興味深い仕事だった。それから……倉庫の人夫仕事に、工場勤めもやったし、警備員だったこともある。カフェで働いたこともあったな。

(笑)あらゆる類いの仕事をやってきた、と。

JW:そう、なんでもやった。

(※ウィリアムソンの職歴に関して野田ライナーは間違えています。ここに訂正、お詫び申し上げます)


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イギリスの遺産を恥じるっていうのは、俺にはあんまりないんだよ。ってのも、俺がこういう音楽をやってるのも、主にそうしたかつてのイギリス産のバンドたちのおかげなんだしね。ただ……最近の自分たちってのは、この国の持つ良い面よりも、そのネガティヴな側面の方ともっとつながってしまっていて。









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さて、音楽的な話をしたいのですが、『イングリッシュ・タパス』は、『オーステリティ・ドッグス』の頃にくらべて、機材的な変化はありましたか? 

JW:それはない。変化なし。以前とおんなじ。

(笑)。

JW:いやまあ、アンドリューは2、3個くらい、「おもちゃ(ガジェット)」を買ったけどさ……。

はっはっはっはっ!

JW:ただ、それにしたって、たぶんたかがiPadとプログラムをいくつか購入、程度のもんだろうし。うん、変化と言ってもそれくらいだよ、ほんと。

あなたたちのライヴの映像をネットで観ても、基本アンドリューはラップトップ1台きりで、実に「経済的」なセットアップですもんね。

JW:うんうん、だから、実際のとこ、俺たちはあんまり多くの機材を必要していないんだよ。ふたりともエレクトロニカに入れ込んでるし、それにヒップホップもいまだに好きで。その手の音楽はシンプルな機材を使う媒体だし、そういうのが好きな俺たちもまた、自然にコンピュータ使いに向かう、と。それに言うまでもなく、テクノロジーは発展しているわけで。あれらの装置……マシーンも、技術の進歩を受けて小型化してもいる。だから、それこそもう、(苦笑)「なにも使わず音楽をやってる」みたいな?

(笑)なるほど。では2013年頃以来で、とくにレコーディングにおける機材面での変化はなし、と。

JW:ないない。唯一の変化と言えば、おそらく俺たちはもっとベターな曲を書く術を学んだ、その意味で、だね。だから、歌詞の面においてもいままでとは違う題材を扱うようになったし……それに、俺はシンガーとしても学んで、たぶん以前より良くなったんじゃないかな? だから……変化と言ったらとにかくそういう事柄だろうし、うん、そうやってなにもかも、実に絶え間なく発展している、と。
 でもほんと、そうあるべきなんだよ。ってのも、この俺たちの「公式」はあんまりいじれないからね。そもそもとてもミニマルなフォーミュラだから、過度にその領界を押し広げようとすると、逆に良さをブチ壊すことになってしまう、と。わかるだろ?

たしかに、ヘタにそれをやるとバカげたものになっちゃいますよね。

JW:うん。

たとえばあなたがたが急にEDM系のビートを取り込み始めたら、それだけでも「ソールド・アウトした!」ってことになるでしょうし(笑)。

JW:(苦笑)そうそう、まさにその通り。

マイクやサンプラーなどの機材はどのように集められたのでしょうか?

JW:まあ、「あっちでひとつ、こっちでひとつ」って具合に集めてきた、その程度のもんだよ。アンドリューは以前から色々機材を集めていたし、安物のラップトップだとか、チープなマイクロフォンなんかをいくつも持ってて。それに音楽づくりに使ってるプログラム群にしても、思うにアンドリューの奴は海賊版ソフトウェアとかをいくつか持ってた、程度じゃないかな。だから、他の連中の持ってたプログラムの複製、みたいな。でも、エレクトロニカをやるのに、そんなに色んな機材は必要じゃないんだよ。だから……エレクトロニカでためしになにかやってみるのに、最初の時点で大金をはたくことはまずない、と。

ええ。

JW:もちろん、その人間が「本物の、高級なサウンドでエレクトロニカをやりたい」と思うのなら、話はまた別だよ。そういう考え方だと、(機材他で)高額の出費を覚悟することになるだろうし。だけど、俺たちのサウンドってのは──あれはむしろ、そこからどんなアイデアが生まれるだろうか?なんだ。俺たちの手元にあるツールの数そのものはごくわずかだよ。ただ、それらをすべてちゃんと活かしてやりたい、それが狙いなんだ。

あなたたちの音楽はミニマルとはいえ、アルバムを聴き終わるとぐったりすることもありますしね。歌詞といい、その意味合いといい濃いので、40分足らずの作品でも大作を経験したような気がします(笑)

JW:うん、たくさん詰め込まれてるし、聴く側にはかなりの量だよな。

新作『イングリッシュ・タパス』では、ドラムマシン・ビートがよりミニマル(音数が少なく)で、ときに冷酷になっている気もするのですが、そこは意識しましたか?

JW:フム。でも、なんであれアンドリューが持ち込んだものだし、ビートはあいつ次第だから。

(笑)。

JW:要するに、ただあいつがつくってくるだけ、みたいな。で……彼がやっていることは、俺にもわかっちゃいないんだよ。彼がどんな影響を受けてああいうことをやることになったのか云々、そこらへんは俺も知らない。

(笑)なるほど、そうすか……。

JW:だから、詳しいところまでは俺もよくわからない、ってこと。だから、彼はすごく……とにかくうまくやってのけてるし……ほんと、とても、とても腕が立つ奴なんだよな。彼がビートを持ち込んできて、そこから俺たちは一緒に音楽に取り組む、と。

でも、アンドリューのつくる音楽部は、基本的にあなたの書く歌詞とそのムードにマッチしなくちゃいけないわけですよね?

JW:うん、基本的にはそういうこと。うんうん。ただ、俺の歌詞ってのは……型に合わせることが可能っていうか、ループに合わせるのも、ある程度までは簡単にできるものだからね。ばっちりハマるときもあるし、イマイチ合わないなってこともあるわけだけど……んー、だから、かなりストレートなプロセスなんだよ。

 オーガニックのチキンを食った
 ありゃクソだぜ
 夕暮れの寝室で1日が終わる
“Cuddly”(2017)

“Cuddly”なんかはダブっぽいんですけど――

JW:うん、あれもアンドリューが持ってきたビートで、とにかくかなりダビーなものだよね。あるいはスカっぽさがある。

ということは、今作において音楽的な変化は意識しましたか? あなたたちのセットアップはとてもシンプルで、音楽的なバリエーションは決して多くないわけですけども。

JW:ああ、それはあるよね。「音楽的に広げなければ」の考えは俺たちにもあったし、ふたりともそこは自覚していたよ。だからスタジオに入るときも、その点はちゃんとケアしなくちゃいけないんだよ。でまあ──ラッキーなことに、これまでのところ俺たちには曲が浮かんできた、書き続けることができたわけだけども、今後「(書き手としての)壁」にぶつかることになったら、それはそれとして、やっぱ対峙しなくちゃいけないだろうな、と。

つねに踊れる曲を意識していると思うんですけど、ダンス・ミュージックであることのポジティヴな点をどのように考えますか?

JW:うん、そういうポジティヴな要素は間違いなく含めたいね。ポジティヴだし、ほんと、俺たちの音楽って実はポジティヴな形式の音楽なんだ。というのも、中身が濃い音楽だし、たくさんの思考が注ぎ込まれてもいて……だから根本的に、俺たちのやってるのってポジティヴなことなんだよ。でも、うん、かなり「ノれてがんがんヘッドバングできる」、俺たち流のそういうなにかをやるのは、自分たちにとって大事だね。

はい。でも、Youtubeとかであなたたちのライヴの模様を観ていると、お客のなかには「これってなに? どうリアクションしていいかわからない」みたいに当惑しているひともいますよね。

JW:……(沈黙)。

いや、もちろん、ノリノリで踊ってるお客さんもたくさんいますよ! ただ、なかには「ワーオ……! なんでこのひと、こんなに怒りまくってるの??」と不思議そうな表情を浮かべている連中もいるな、と。

JW:ああ……そうだよね。ただまあ、俺がライヴでああいう風なのは、とにかくエネルギーが強いからであってさ。自分は曲そのものの持つエネルギーを取り入れているだけ、なんだ。

なるほど。

JW:でも、俺はなにも……(ハーッと軽く息をついて)まあ、俺って気難し屋の厄介な奴になっちまうこともあるしね!(苦笑)

あっはっはっはっはっ!

JW:(笑)だから、自分には「とてもポジティヴなひと」とは言いがたいときもある、と。思うに、そういう面もちょっと出て来るんだろうね。自分のパーソナリティに備わった側面をそこに乗せてもいる、と。

でも、とくにライヴをやっているときですけども、基本的にハッピーで楽しんでいるオーディエンスと向かい合っていて、ふと「なんで俺はぎゃぁぎゃあわめいてるんだ? なぜ自分はこんなに怒ってるんだ? 俺ってフリーク?」なんて感じることはありますか?

JW:いやいや、それはまったくないよ。どのライヴでも、毎晩俺たちのやろうとしているのは同じこと。ステージに上がり、思い切りプレイして、曲を良く響かせよう、それだけのことだから。

そうなんですね。いや、こっちにいるあなたと年代も近い知り合いには、普段の生活のなかで思わず怒りを感じる、「これは間違ってる」と思うような物事に遭遇して、人目をはばからず声を上げて怒るひとがいるんですよ。

JW:ああ。

それは別に根拠のない怒りでもなんでもなくて、怒って当然ってシチュエーションなんですけど、それでも彼らが我慢せずに怒っていると、周囲の人間はそれが理解できずに「こいつ、なにに怒ってるの? 問題ないじゃん、チルしなよ〜」みたいな冷静なノリで。

JW:ああ、うんうん。

で、そういう目に遭うと、彼らは疎外感を抱くそうなんですね。「みんな黙ってるのに、怒る自分の方がおかしいのか?」みたいな。

JW:(苦笑)だろうね。

で、あなたもときにそんな風に感じるんじゃないか? と想像してしまうんですが。

JW:いやー、そういうのはないな。それはただ、俺たちのやってる音楽のフォームがそういうものだから、であって。ああいう「表現の形式」を、俺たち自身でクリエイトした、ということに過ぎないから。

ふたりとも、レイヴの時代(89年〜91年)には、20歳前後だったと思いますが、その頃レイヴにはまることありましたか?

JW:うん、当時の俺はレイヴ・カルチャーに相当ハマってたよ。90年代前半、91、92年あたりだったかな? クラブにさんざん入り浸って、エクスタシーを食っていた。

(笑)。

JW:だからしばらく間、レイヴ・カルチャーはつねに俺の一部だったね。

あなたがヒップホップ好きだったことは知られていますが、ハウス・ミュージックもOKだった、と。

JW:うん、好きだったよ。

ノッティンガムには、DiYというとんでもないレイヴ集団がいたのですが、ご存じでしょうか? 

JW:あー、うんうん、DiYね。

おー、ご存知ですか! 

JW:DiYは、うん、ノッティンガムではかなり名が知れていたよ。それにいまも、形を変えてある意味続いているし。

そうなんですね。

JW:ああ、彼らはその名の通りかなり「Do It Yourself」な連中だったし、ノッティンガムの歴史のなかに自分たちで塹壕を築いた、みたいな。

彼らはフリーでパーティを企画していた集団ですよね。

JW:うんうん。いまだにフリー・パーティは続いているよ、折に触れて、ね。

ちなみにあなたは、ゲリラ的な野外レイヴに参加したことは?

JW:ああ、1、2回行ったことはあったよ。でも、俺はそっちよりもクラブの方にもっとハマっていたんだけどね。無料の野外パーティに行くよりも、俺はクラビングの方が好きだったんだ。

それはたとえば、野外レイヴには「どうなるかわからない」不安定さがあったから?

JW:いや、っていうよりも、とにかく俺は……クラブに出かけるときにつきものの、「良い服でキメる」みたいなのにもっと惹かれていたからさ(笑)。

 やったな おい これがブツだ
 家でフェイマス・グラウスを傾けながら
 俺のケータイで良い感じの曲でも流して
 俺とお前でキマるのさ
 どうしようもないエクランド(女優)みたいな 
 俺らはダメイギリス人
 クソ輸入モノの1パイン缶を飲み干す
 スパーへの旅行は火星へ行くようなもん
“Drayton Manored”(2017)

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Sleaford Mods
English Tapas

Rough Trade/ビート

PunkModRapElectronicMinimal

Amazon Tower HMV

オーステリティ・ドッグス』から『デイヴァイド・アンド・イグジット』にかけて、ガーディアンをはじめとする欧米の主要メディアはスリーフォード・モッズに対して最大限の賛辞を送りましたよね(※ガーディアンは2年連続で年間ベスト・アルバム/後者はWIREも年間ベストに選出)。スリーフォード・モッズは新人ではないし、それより何年も前から活動してきたあなたがたが、2013年頃から急に脚光を浴びたことについてはどのように思っていますか?

JW:ああ。まあ、あれはかなり妙な状況だったけれども、いまの俺はもう「大丈夫、気持ちの落とし前はついた」ってもんで。オーケイ、わかった、と。ってのも、これは俺にとっての「仕事」でもあるんだしね。だからああした突然の脚光についても、自分なりのパースペクティヴに収めることができてるよ。

なるほど。

JW:だから、いまの俺はもう、ああいうのに驚かされたりショックを受けることはなくなった、と。ってのも……仮に自分たちがもっとビッグになって成功していたら、もしかしたら、ちょっとはそんな風に感じるのかもしれないよな? ただ、俺たちの音楽がそこまで「大きくなる、人気が出る」ってことは、まずないだろうと思っているし。

(苦笑)そうですか?

JW:まあ、未来がどうなるかは誰にもわからないけどね(笑)?

たしかに、あなたたちの音楽は聴き手に向き合う/ある種挑戦する類いJW:のものだし――
うん。

いわゆる「万人に愛される」音楽ではないですよね。

JW:ああ、それはない! まったくそういうものではないよ。ただ、そうは言ってもいままでのところ俺たちの人気はますます伸びているみたいだし、「これからどうなるか、お楽しみに」ってところだね。でも、うん、急に脚光を浴びるとか、そういうのには俺も慣れたよ。

なるほど。でも、そうなる以前はやはり違和感があった、「ええっ? 俺って急に人気者かよ?」みたいな感覚があった、と?(※新作では彼らの成功への妬みへの憤怒もちょくちょく出てくる)

JW:イエス! そうだった。だから、俺たちのギグに急に有名人なんかが来るようになった云々、そういうのはちょっとばかし妙だったね。けど、うん、いまはもうオーライ。これはとにかく自分のやってる「仕事」につきものの一部であって、だからいちいち「わあ!」なんて驚いちゃいられないしね。

そうやって「突然の奇妙な状況」も受け入れられたのは、あなたのなかに変化に左右されないような、「スリーフォード・モッズとはなにか」っていう強い理解があったから、でしょうか?

JW:うん。だから、それはまあ……

あなたにとって、こういう音楽をやる動機ってなんですか? もちろん、あなたは音楽が好きで、だから音楽をできるだけ長くつくり続けたいひとだ、そこはわかってますよ。

JW:ああ。

でも、それ以外でスリーフォード・モッズをやる目的、動機と言えば?

JW:とにかく「良い曲を書きたい」、それだよ。そうやって良い曲を書き続けたいし……

そこで言ってる「良い曲」というのは、長く聴き継がれる曲、という意味で? たとえば“アナーキー・イン・ザ・UK”みたいな?

JW:まあ、“アナーキー・イン・ザ・UK”ってのは、フラストレーションのエネルギッシュな爆風、みたいな曲だったわけで。その意味で、あれは俺たちが初期にやっていた楽曲にかなり近いよね。ところがいまの俺たちっていうのは、自分たちのソングライティングの技術をもっと磨くべく努力する、そういう領域にグループとして達しているわけで。どこまで自分のソングライティングをプッシュできるかやってみよう、と。それに俺たちは、必ずしも以前のように「ものすごく怒っている」というわけでもないからさ。だからいまの俺たちは、それよりむしろ「曲づくりという技」を研究している、というのに近いんだ。

 俺たちは国会を乗っ取り 
 アイツらをぶちのめさなきゃならねぇ 
 当然だろう?
 あいつらは貧乏人を殺そうとしてるんだぜ
“Dull”(2017)


なるほど。そこはちょうど次の質問にも被りますが:怒り(rage)がスリーフォード・モッズの音楽の根源にあるとよく言われますが、新作においてもそれは変わりないと思います。あなたがたは明らかにブレグジットに対して怒っている。ジェレミー・コービンが非難されたことにも怒った。いま、いちばん怒っているのはナンに対してですか?

JW:あーんと……(フーッ! と軽く息をつく)いま、俺がもっとも怒りを感じるもの、かい? そうだなぁ〜、クソみたいなバンド連中とか(笑)?

はっはっはっ!

JW:(苦笑)クソみたいな、ファッキン・バンドども。

(笑)でも、ダメなクソ・バンドはずっと嫌ってきたじゃないですか。

JW:シットなバンド、同じくクソな音楽業界。ギョーカイは自己満なマスカキ野郎だし、政治もマスカキ。

でも『イングリッシュ・タパス』には、ダイレクトに「名指し」してはいませんけど、ボリス・ジョンンソン(※元ロンドン市長で、現英内閣の外務大臣である保守党政治家。EU懐疑派として知られ、ブレクシットでも大きな役割を果たした。ブロンドのおかっぱ髪と一見温和そうで政治家らしからぬ親しみやすい「クマのぬいぐるみ」的キャラで人気がある)のことかな? と解釈できるキャラが何度か出てきますよね(※“Moptop”、“Cuddly”の歌詞参照)。


 お前がやってることなんてまったく可愛くねぇよ 

 クソテディ・ベア野郎

“Cuddly”(2017)



 仲良くしろよって俺が言う前に

 そう言う前にセリフを忘れちまった

 あの野郎はブロンドだ

 おまけにモップトップだぜ

“Moptop”(2017)



JW:ああ〜、うんうん。

ということは、ボリス・ジョンソンはいまあなたが大嫌いな「道化野郎」のひとりなのかな?と思いましたが。

JW:ああ、最低なオマ*コ野郎じゃない、あいつ? 

(苦笑)。

JW:ファッキン・オマ*コ野郎。ただのクソだよ。

(笑)その通りだと思います……。

JW:っていうか、あいつはただの「ガキ」なんだよな。成長してない「子供さん」だから、こっちもどうしようもない、お手上げ、と。あいつはいまいましい子供だよ。というわけで……まあ、今回の作品で扱っている対象は色々だけど、その意味では、これまでとそんなに変わっていないんだ。

とはいえ『イングリッシュ・タパス』では、これまでにくらべて実在人物の名前を歌詞に含める、というのをあまりやっていませんね。

JW:ああ、そうだね。というのも、バンドとしてビッグになればなるほど……とにかく無理、ああいうことはやれなくなってしまうんだよ。ちょっとした嘆きの種をこっちにもたらすだけだ、みたいな。わかるだろ?

(苦笑)なるほど。

JW:それもあるし、自分のこれまでやってきたことを繰り返す、というのは避けたいわけで。だから、俺としてもただ他のバンドだの誰かをクソミソに罵るとか、そればっかり続けていたくはないっていう。仮にそれをやりたいと思ったら、(これまでのように実名ではなく)もっとさりげなくやるよ。だから……ビッグになればなるほどこちらに跳ね返ってくるものも大きくなるわけで、それにいちいち対応してると時間もやたらかかるし──

時間の無駄だ、と。

JW:そう。だからこっちとしてもわざわざ関わりたくないよ、と。俺は議論はそんなに得意な方じゃないし、誰かさんがなにか言ってくる、俺に反論してくるような状況って、対応に時間ばっかりかかるからさ。

それもありますけど、いまの過度なPC(ポリティカル・コレクトネス)の風潮、とくにSNSにおけるそれが怖い、というのもあります? 

JW:ああ、その面もあるよね。

ツィッターや発言の一部が、前後の文脈とまったく関係なしに取り上げられて、意図したこととは違うものが大騒ぎになったりしますし。

JW:うんうん。

でもツイッター上でのあなたはかなり活発ですよね? まあ、バンドをやっているから仕方ないでしょうけど。

JW:まあ、あれはやらないといけないしね。だから、間違いなくそういう面もあるけれど、んー、とにかくああしたもののベストな利用の仕方を自分で見極めようとトライするのみ、だからね。

SNSを罵りながら、あなたはツイッターを使い、たまに炎上していますよね? あなたがたは明らかにツイッターやSNSを嫌っていますが、使ってもいます。現代では必要なものだと思うからですか?

JW:ああ。まあ、欠点もあるけど、俺自身はそこまで気にしてないんだ。だから、乱用し過ぎると悪い結果に結びつくけど、そうならないように、たまにSNS等から離れるように心がけていればオーライ、と。

批判を受けたりツィッター上での粘着された経験があっても、別に構わない、やり続ける、と?

JW:ああ、もちろん! 全然、俺は構わないから。以前にいくつかそういうのもあったけど、そこにあんまりかかずらわっちゃいないしね。自分はそれほどあれこれと悩まされたりはしないし、そうならないようトライしてもいるし。

かつてよりも面の皮が厚くなった、と。

JW:イエス。まったくその通り。

**************

スリーフォード・モッズがケン・ローチの『わたしは、ダニエル・ブレイク』のプロモーションをサポートしたという話を聞きましたが、あなたがたは、あの映画をどのように解釈し、どこに共感しているのでしょうか?

JW:あの映画は、まだ観てないんだけどね。

ええっ、そうなんですか!?

JW:ああ。

でも、FBにあの映画の台詞を朗読するヴィデオ・メッセージをアップしてましたよね??

JW:うん、それはやったよ、うんうん。ただ、映画そのものはまだ観てないっていう。

あら〜、そうなんですね。

JW:だから……これから観なくちゃいけないんだけど、でも、あの映画がどんなものなのか、俺には観る前からすっかりわかっているよ。で……んー、だからまあ、どうなんだろうな? もちろん、どこかの時点で観るつもりなんだよ。ただ、あのヴィデオへの協力で俺がやろうとしたのは、あの映画の発するメッセージを応援する、ということだったわけでさ。

なるほど、わかります。でも、まだ観れていないというのは、単純に忙しくて観に行く時間がなかったから? それとも、あなたの知る現実にあまりに近い話なので、当事者として逆に観る気がなかなか起きない、という?

JW:うん、身近過ぎるよね。だから、あれは……心に深くしみる、そういう映画になるだろうし、自分が現役を退いたらやっと観れる、そういうものだろうね。でも、うん、いつか観るつもりだよ。

**************

最後に、UKのロック文化はなぜ衰退したんだと思いますか?

JW:どうしてだろうね? 俺にもわからないけど、やっぱりそれは、『The X Factor』でロックってものの概念にとどめが刺されちゃったから、じゃないの? だから、人びとはもうロック文化とはなにか? について学んだりしないし、なにもかも額面通りに受け止めるだけ、と。それにまあ、ここ10、15年くらいの間、イギリスで音楽的にすごいことってあんまり起きてこなかったしね。だから、いま出てきてる若い連中にとっても、励みになる、目指すような対象が正直そんなにたくさんいないっていう。で……いまのキッズが聴いてるバンドってのは、おそらく90年代発のバンド連中なんだろうし、それとか70年代勢に入れ込んでる子たちもいるよね。ただ、ただ……ギター・ミュージックってのは、もうさんざん複製されてきたものなわけでさ。だから、人びとにはもうちょっとイマジネーションを働かせはじめる、その必要があるんじゃないのかな?

はい。

JW:でも、バンド連中がやってないのはまさにそれ、であって。そんなわけで、レコード会社の側も「なんとなくいまっぽい」風に仕立て上げたアクトを色々と送り出してくるわけだけど、そこにはなにもない、空っぽなんだよ。そうしたアクトは、利益を生むためにコントロールされているからね。だから、イギリス産のアクトで伸びている、そういう連中はあんまりいないよね。ほんと。

ということは、もしかしたら90年代のオアシス以来、イギリスのロック界は変わっていない、と?

JW:ああ、そうだね。おそらく最後のグレイトなバンドだったんだろうな、オアシスが。

あ、オアシス、お好きなんですか?

JW:うんうん。素晴らしいよ──初期作はね。

(笑)なるほど。1枚目のアルバムはすごい! みたいな?

JW:ああ、(苦笑)1枚目ね。


 俺は自由にマスをかき 

 生まれながらにして自由 

“Dull”(2017)



 だからどうしたってんだ

 オレはやりてぇようにやる

“Army Nights”(2017)



(註)

『Xファクター』:2004年から始まり、現在も続くイギリス産の大人気リアリティTV。公募オーディション+視聴者投票による勝ち抜き音楽コンテストでレオナ・ルイス、ワン•ダイレクションら人気スターもこここから出発。「カラオケ・コンテスト」と揶揄する声もある。

OH91 Asia Tour 2017 - ele-king

 OH91——。この謎めいた記号は特定の化学物質を表すものではない。インドの国際電話番号「+91」でも、コーランの91章(スーラ)にならって「The Sun」を意味しているのでもなく、その太陽よりも高い位置で輝く今日のグライム・シーンで暗躍するひとりのプロデューサーを指している。OH91(オーナインワン)、名だたるプレイヤーたちと同じく、彼もまたイングランドのブリストルからやってきた。
 SkeptaやWiley、Stormzyらに代表されるMCたちの力作が続くここ最近のシーンにおいて、OH91はラップトップとCDJを駆使し、グライムとトラップの低音域化学反応を試み、クラクラするようなビートを熱心に発明してきた。このページの最後にあるプロフィールが言うように、彼は「グライムのプレミア・ヤング」であり、オーディエンスだけではなく、Sir SpiroやSpookyといった強者プロデューサー/DJたちからも注目を集める人物のひとりだ。
 そんなOH91が初の来日ツアーを敢行、3月3日に大阪、4日には東京にやってくる。両日とも、プレイするべき音を熟知しているDJたちが出るので、彼らと若き才能が衝突する火花散る夜を楽しんでほしい。

【公演情報】
【大阪】
【HILLRAISER Vol.2 ft.OH91】

2017年3月3日金曜日
会場:SocoreFactory
開演:19:00
料金:2000円+1D
出演:
OH91
young animal
CE$
satinko
ECIV_TAKIZUMI

【東京】
【PLAYGROUND】

2017年3月4日 土曜日
会場:Forestlimit
開演:23:00
料金:2000円+1D
出演:
OH91
Sivarider
DADDY VEDA
SHORTIE
Sakana
Shirakosound
dekishi

【プロフィール】
OH91(White Peach、Coyote Records)from Bristol

ブリストルの緊密な音楽コミュニティにおける重要人物、OH91(オーナインワン)。その超新星のごとき登場は2011年。以降、Kahn&Neek、Boofy、Lemzly Dale、Hi5Ghost、そしてJokerといったブリストルの同志たちや、良友のRoyal-Tとともに、過去6年にわたって自身のプロダクション・スキルに磨きをかけつつ、その周りで発展を遂げる膨大な音からも恩恵を受けてきた。彼の成長に真っ先に目をつけたブリストル拠点のインディペンデント・レーベル〈Durkle Disco〉と〈Subdepth Records〉からの一連のリリースに続き、2013年に〈Coyote Records〉から会心の単独デビュー作を発表。

その曲名は“Stealth”。このハードでサグいクラブ・チューンの照準はフロアへ直に向けられ、グライムのアイコンでありベテランのSpookyからは、リミックスという形で支持を得る。ファーストによって、広大なシーンの多くが彼のポテンシャルへ目を向けた。Royal-TのRinse FM内の番組で披露したライヴ・ミックスや、スリップストリームなクラブ・ブッキングの主催によって箔がつき、この1曲よって、彼はグライムのプレミア・ヤング・ビートメイカーとしての地位を確実なものとした。

そして2014年、よりヘヴィーでトリッピーなビートの“Goon Mode”は〈White Peach〉に見出され、4曲入りサンプラー「Peach Bits Vol.1」の1曲として12インチでリリースされた。その一方、シーンで暗躍し、OH91はMCたちのプロダクションにも目を向けはじめていた。今日に至るまで、ロンドンへ定期的に訪れ、Sir SpyroやGrandmixxerのような影響力のある人物の注目を浴びながら、KwamやMIKといったMCたちと楽曲を制作、そして後者との楽曲はFamily TreeのMCであるEgoとのフィーチャリング曲 “New Ting”として、彼のアルバム/ミックステープである『Ghostwriter』に収録されている。以来、先ほどのSir SpiroとはLil Nastyの2014年のシングル“I’m Heavy”でタッグを組んだ。

“New Ting”のバックドラックに、OH91は偶然にもRapidのクラシック・ナンバー“Xtra”の音を使用した。そしてレーベル・メイトのChemistと2014年の終わりに〈Coyote Records〉へ凱旋を果たしたのも同曲によってである。2曲入りの何も印刷されていない真っ白なラベルのレコードでリリースされると(この作品はレーベルの「WHT」シリーズの1目でもある)、リミックス曲“Xtra91”は10日も経たずに売り切れてしまった。

マンチェスターで産声をあげたばかりのインディペンデント・レーベル〈Trapped Audio〉からのリリースや、〈White Peach〉への凱旋作でもあるEP「Shanks」など、2016年もOH91は堅実に作品の発表を続けた。その一方で、〈Coyote Records〉のショー・ケースの担うひとりとして、Boiler RoomとFabricへ初出演。優れたDJとしての経歴にそのデビューは刻まれた。

2017年、MCを主体としたより多くのトラックのリリースと、3月には初のアジア・ツアーを予定。年を追う毎に、OH91は着実に前進していくのである。

Releases Info:
https://www.discogs.com/artist/3557160-OH91

Boiler room:

https://www.youtube.com/watch?v=&t=816s

Fabricmix:

Arca - ele-king

 ど、ど、どんと三段重ねのニュースである。アルカが〈Mute〉を離れ、〈XL〉とサインを交わした。そして4月7日にニュー・アルバム『Arca』がリリースされる。それに先駆け新曲“Piel”が公開されたが、そこではなんとアルカ本人が歌っている。
 本人によるヴォーカルがフィーチャーされているのは、今回公開されたこの1曲のみなのだろうか。それともアルバム全編にわたってアルカのヴォーカルが導入されているのだろうか。そのあたりの情報はまだ明かされていないが、レーベルの移籍やアルバムのタイトル、あるいは「内面」や「感情」といった本人のコメントから推測するに、来るべきアルカの新作はこれまでとは異なる作風に仕上がっている可能性が高い。
 「OPNとは何者なのか」という問いに答えが出ていないのと同様、アルカという現象もいまだ解明されていないと言っていいだろう。しかし今度の新作はもしかすると、「アルカとは何者なのか」という問いにひとつの手がかりを与える内容になっているのではないだろうか。まあ現時点ではまだ何もわからないので、さしあたりは公開された新曲を聴きながらおとなしく待っていよう。


A R C A
奇才アルカが〈XL Recordings〉との契約を発表!
最新アルバム『Arca』を4月7日(金)に世界同時リリース!
ジェシー・カンダによるアートワークと新曲“Piel”を解禁!

“我々の期待を完全に超えている”
- Pitchfork【Best New Track】獲得


Artwork by Jesse Kanda


これは僕の声であり、僕の内面の全てだ。自由に判断してほしい。
闘牛のように、喜びを求める感情の暴力を目撃することになる。
これは、感情のぶつかり合いの模倣的存在が、不自然なほど深く、自己陶酔していく姿なんだ。
- Arca

ベネズエラ出身ロンドン在住の奇才、アルカことアレハンドロ・ゲルシが〈XL Recordings〉と契約し、待望のサード・アルバム『Arca』の4月7日(金)世界同時リリースを発表した。長年のコラボレーターであるヴィジュアル・アーティスト、ジェシー・カンダの手がけるアートワークと、初めて自身の歌声を披露した新曲“Piel”を公開した。『Pitchfork』では早速【Best New Track】を獲得している。

Arca - Piel (Official Audio)

早くからカニエ・ウェストやビョークらがその才能を絶賛し、FKAツイッグスやケレラ、ディーン・ブラントといった新世代アーティストからも絶大な指示を集めるアルカ。セルフタイトル作となった本作『Arca』は、2014年の『Xen』、2015年の『Mutant』に続くサード・アルバムとなり、〈XL Recordings〉からの初作品となる。国内盤CDの詳細は近日発表予定。iTunesでは、アルバムを予約すると公開された“Piel”がいちはやくダウンロードできる。

Arca: Discography
『XEN』2014
『MUTANT』2015
BJORK『VULNICURA』2015
KANYE『YEEZUS』2013
FKA TWIGS『EP2』2013/『LP1』2014
KELERA『HALLUCINOGEN』2015
DEAN BLUNT『THE REDEEMER』2013
BABYFATHER『BBF: HOSTED BY DJ ESCROW』2016
FRANK OCEAN『ENDLESS』2016


label: BEAT RECORDS / XL RECORDINGS
artist: Arca
title: Arca

release date: 2017/04/07 FRI ON SALE

iTunes Store: https://apple.co/2m9K7um
Apple Music: https://apple.co/2l1GBNJ

Tracklisting
01. Piel
02. Anoche
03. Saunter
04. Urchin
05. Reverie
06. Castration
07. Sin Rumbo
08. Coraje
09. Whip
10. Desafío
11. Fugaces
12. Miel
13. Child
14. Saunter (Reprise) *Bonus Track for Japan

Campanella - ele-king

誰が光で 誰が影で 誰がサグで 誰がオタクで 誰も知らねえ
俺は光で 俺は影で 俺はファックで 俺はカスだ 全部当たりまえ
誰がバビロン 誰がファッション 誰がボスで 誰がルールだ 誰が決めたね
俺がラッパーで俺が詩人で俺が俺であるがゆえの俺のプレイ
“OUTRO” 

 「アンダートウUNDERTOW」という言葉があって、ジャンルを問わないアンダーグラウンド・ミュージックを聴いていてよく思い出す。表面の波に逆らって最深部を力強く流れる底流。KOHHが宇多田ヒカルとコラボレーションし、バトル・ブームの熱気に後押しされた若い世代のトラップが勢いよくポップ・フィールドへと流れこみつつあるいま、日本のヒップホップ・シーンにおけるアンダートウはどこにあるだろう? 2017年1月14日、深夜の渋谷WWWで開催されたCAMPANELLA『PEASTA』のリリース・パーティに足を運んで確信した。現在の日本でもっとも強力なアンダートウのひとつは、NEO TOKAIにある。

 NEO TOKAI。名古屋を中心とする近隣エリアを指すそのスラングを初めて耳にしたのはたしか2、3年前で、やがてそれがHIRAGENのあの『CASTE』を輩出したTYRANTクルーを源流のひとつにしていることを知った。冷却装置がぶっ壊れたように沸騰するその熱をパッケージしたコンピレーション『WHO WANNA RAP』とその破壊的再構築『WHO WANNA RAP 2』。そしてC.O.S.A.が自主流通のみでリリースした傑作『CHIRYU YONKERS』の衝撃……。西日本に大雪が降った1月の真夜中、WWWでのパーティはJET CITY PEOPLEの鷹の目のDJで始まり、Fla$hBackSのJJJとKID FRESINOの東京組がばっちりとオーディエンスをあっためた後には、FREE BABYRONIAとRAMZAのビート・ライヴが会場を襲い、NERO IMAI、呂布カルマ、C.O.S.A.というスタイルは違えどどれもヘヴィ級のMCたちがその夜の主役、CAMPANELLAの登場を準備していた。もちろんその日のアクトに限らず、現在流通している音源や飛び交う噂だけでも、東海地方にうごめく凶暴でソリッドなうごめきを黙殺するのは不可能になりつつある。

 そして名古屋といえばなにより、2004年に急逝したTOKONA-Xという大き過ぎる存在なくしては語れない。しかしその喪失はすでに、彼の姿を熱っぽく見つめていた若い世代によって埋められつつあるようだ。ATOSONEとDJ BLOCKCHECK主催の不定期開催のパーティ<METHOD MOTEL>は名古屋を中心に東海各県の猛者を集めてぶつかり合わせる地下闘技場としてこのシーンの母胎となった。エクスペリメンタルでレフト・フィールド……だがそれだけじゃなく、叩き上げならではのタフな精神性がある。NEO TOKAIはすでに独自の音楽性と毅然としたアティテュードによって東京や大阪に牙をむく、オルタナティヴ・ヒップホップの音楽的爆心地となっている。

 しかし『PEASTA』はNEO TOKAIというよりももっと濃密な、三人の人間のトライアングルから生まれている。C.O.S.A.のシャウトアウトにも登場する名古屋郊外のベッドタウン、小牧市桃花台。そのニュータウンで生まれ育ったCAMPANELLAはまだ十代半ばで、今回すべてのトラックを手がけたビート・メイカーRAMZAとFREE BABYRONIAの二人と出会った。フライング・ロータスに導かれたINDOPEPSYCHICSの子どもたち。そんな言葉さえ浮かぶインタヴューの通り、アンビエント~ノイズ~エレクトロニカのフィールドでも注目を集める二人の仕事は、既存のヒップホップの枠をはみ出し、だが結局はヒップホップと呼ぶしかない異形の音像でそのアートフォームを更新している。

 宮沢賢治『銀河鉄道の夜』からアーティスト・ネームを拝借したというCAMPANELLAは2014年のミックステープ『DETOX』では、タイラー・ザ・クリエイターの“ヨンカーズ”とともに、レディオヘッドの“ナショナル・アンセム”もビート・ジャックしていた。強烈な個性のラッパーがひしめくNEO TOKAIにあって、CAMPANELLAが武器にするのはときにナンセンスなユーモアとリリシズム、そしてフリーキーなフロウだ。刺繍作家RISA OGAWAの赤い刺繍糸が印象的な今作のアートワークにはオズの魔法使いやアルチュール・ランボーのコラージュが並び、楽曲にはチリの革命詩人パブロ・ネルーダやイスラムのスーフィズム由来の詩がまぎれこみ、ミュージック・ヴィデオでは花飾りで顔を隠したコンテンポラリー・ダンサーが踊る。

 狂騒のパーティを繰り返したその先、退廃を拒絶し、怠惰を遠ざけるストイックなストリート・マナーは、ポスト・Jディラ的なビート・ミュージックの音楽的実験性と融合し、トラップ以降の享楽主義とはひと味違う、洗練されたアートの花を咲かせている。このフレッシュさは、USヒップホップの最新トレンドの日本的翻訳ではなく、世界中に拡散するヒップホップそれ自体の実験性が、極東の地方都市の歴史の中で独自に進化し、溢れだした結果だ。

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 アルバムの幕開け、タイトル・トラック“PEASTA”。丁寧に音響処理されたブレイク・ビート、綿密に計算されたタイミングでインしてくるピアノ、ベース、ヴォーカリーズ的にたゆたう女の歌声。チリチリとしたノイズが鼓膜の内側の空気の圧まで調整するような繊細さと緊張感を漂わせる。仲間とハニー、すれ違うビッチズ。ドラッグでヨレるヒマはねえ、というルードなストイシズムと、リリックはため息混じり、ビートは日々の意味、と言い切る詩情。次いで“THE HAVIT”は低音を抜かれたドラム・パターンとループする効果音、腹を震わせるベースで軽快に疾走する。クラブは太陽で音楽は月、というリリカルなパンチラインとともに、ノー・ギミック、完全に言いたいことを言う宣言。

 「A Little Wind Cleans the Eyes…」。13世紀のイスラム神秘主義者、ジャラール・ウッディーン・ルーミーの詩「ライク・ディス」の一節を英女優ティルダ・スウィントンが囁く声で始まる“INDIGO”。「グラスに注いだビアみたいな日々」…それを「うたかたの日々 Mood Indigo」とするなら、ここにあるのは衝動まかせに快楽を追いかける青春を飲み干した後の、葛藤と内省の日々のスケッチだ。美しい恋人と愛する音楽、それ以外のものはすべて消え去っていい。そう言い切れる若い勢いを失って、不規則なブレイク・ビートの上を千鳥足で行ったり来たりする言葉。デューク・エリントンの往年の曲によればインディゴはブルーよりも深い憂鬱を意味する。焦燥と苛立ちから自己を解放するまでの自問自答のモノローグ。

 双璧をなす“BIRDS”は、もともとFREE BABYRONIAのビート・テープ『KOMAKI』に収録されていた同タイトルのインストゥルメンタルを再構築し、ラップをくわえたもの。「わたしになりたい」という回帰願望と「あなたになりたい」という変身願望が、アシッド・トリップ的な鳥の目の幻視を通じて結合される。イントロとアウトロ、そしてピアノのブレイクとともに混線するテレグラフは、タイトルの由来であるパブロ・ネルーダの英詩を伝えるゲリラ・レディオ。去年ついに倒れたフィデル・カストロとチェ・ゲバラは、1956年たった12人でシエラ・マエストラに上陸して始まったキューバ革命の途上、夜になると野営地で兵士たちにネルーダの詩を朗読して聴かせたそうだ。
 
 物騒なのは中盤の2曲。前曲からの鳥のさえずりをディープなベースラインとゆったりとしたブレイク・ビートがかき消す“KILLEME”。幻聴かと思うほどかすかに鳴らされるアコースティック・ギター。ドローン的な音像にのせて引き伸ばされ、それでも棘々しく尖る攻撃的な言葉。次は間髪入れずに威嚇射撃のような強烈なスネアが鼓膜を突き刺す“SHOOT-IN”。逃げ遅れた/あえて逃げ出さなかった人間に突きつけられるC.O.S.A.の16小節。ダセえDJ、ダセえMC、セルアウターをまとめてなぎ倒すタフな殺気と、愛やクルーという言葉の裏に貼りつく寂しさと孤独。「みんな違ってみんないい」とお互いの多様性を認め合って仲良くやれればいいのだけれど、このゲームのルールは「白黒以外必要ねえ」。フックで挑発するのはバンダナを顔に巻いたNERO IMAI。オラついた相棒二人のストレートさに煽られても、CAMPANELLAのラップはフリーキーさとナンセンスさを失わない。このあたりは外野がはやし立てる話じゃないから聴きたければ自分の耳で。

 寝静まったベッドタウンで意識を夜間飛行させる“BLACK SUEDE”以降は、“RELAX, BREAK”の言葉通り、アンビエント的なチル感やナーサリー・ライムを織り交ぜながらぐっとピースフルなムードに変化していく。今じゃUSも日本もビーフの勃発やリスペクトの表明はSNS経由で、便利な反面ずいぶん軽くもなったそのやりとりに「写真にいいね押していい気分に浸ると/なぜか遠くなった気がしたストリート」と正直な逡巡を告白する“NINE STORIES”。ぐにゃりと曲げられたギターの音色がブルース・シンガーのように歌う九番目の雲……そんな幸福な一夜の感覚を永遠に引き延ばすような“YUME NO NAKA”。肌寒い夜にコンビニの前で開ける缶ビールとくゆらすウィード。記憶を飛ばすほどの多幸感は暖かなグルーヴのハンド・クラップによるエンディングに着地する。

 スタンド・アローンでラストに待ち受ける圧巻の“OUTRO”は、ずいぶん前に“COLD DRAFT”というタイトルで配信されていた曲をそっけなく改名したもの。冒頭、きらめき陶然と遊んでいたエレピが、最初のキックの音を合図に意志を持って走り出す。フリークアウトする生のベースとRAMZAのマシンの腕が操るドラムによるコズミック・ファンク。仲間と女、背中を押してくれる歓声、それでもけして他人には触れられない影。吐き捨てるライムの怒りと焦燥の矛先はほかでもない自分自身に向けられ、ラッパーであり詩人であるひとりの青年のメンタルの肖像を彫刻する。たんにエモーショナルというのでもない。アルバムで最初にレコーディングされたというこの曲がすべての葛藤と成熟の出発点だ。

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 DJ クラッシュとDJ シャドウが1990年代に世界中にバラまいたビート・ミュージックとしてのヒップホップ、いわゆるアブストラクト・ヒップホップは、それ自体コンペティティヴ(競争的)な独自のバトル・フィールドを構成した。フリースタイルに端を発した去年のラップ・ブーム以降、バトルと言えばMCバトルのみが想起されるような風潮もあるかもしれないが、ヒップホップでコンペティションに晒されるのはラップだけじゃない、ビートもだ。そしてその熾烈なバトルはもちろんラップとビートの間にも勃発する。トラックに対して、インストゥルメンタルとしても通用する、というのはよく言われる褒め言葉だが、もっといえば、突出したビートは生半可なラップを拒絶する。鍛錬と引き換えに獲得した互いの自由と自由がぶつかり合い、挨拶がわりに口にするだけなら簡単な「リスペクト」という言葉の真の対価を要求する。

 ラップとビートの衝突から生まれる先鋭的な音楽的オリジナリティにくわえて印象的なのが、アートワークや楽曲に臆面もなく散りばめられた古今東西の文化的なコラージュ。ドラッグや喧嘩をやっていれば不良で読書やアートにハマっていればオタクで……なにもかもテレビ向けのキャラクター的なストーリーに落としこんでしまう向きにとってはどうか知らないが、無菌室で育ちでもしない限り、人間は薬物や暴力とも文化や知識とも、自分なりの基準で向き合いながらその人格をつくる。誰に媚びる必要も何を恥じる必要もない。トリップの経験だろうが詩だろうが映画だろうが、自分の血肉になったインスピレーションをすべて遠慮なくつむいで創られたこのアートは、どうにも魅力的だ。傷だらけの拳に光るリングや花束に忍ばされたナイフのように、喧嘩腰の啖呵にリリシズムがきらめき、美しい詩に血の味が混じる。

 「これは音楽、輩の手なら届かない」、「言葉で負けた際に出る手」というCAMPANELLAのラップを聴いて思い出したのは、「誰か殴るわけじゃなく歌詞を書く」というC.O.S.A.のいつかのリリックだった。それはアンセムを一緒に歌うとか、コラボするとか、そんなものよりもっと深いレベルでNEO TOKAIの人間たちが共振していることを教えてくれる。知らざあ言って聞かせやしょう、と居並ぶ男たちのケツを蹴り上げていたTOKONA-Xの豪放なメンタルは、彼が知ることのなかった青春の終わりを生き延びた後輩たちによって、強く、しなやかに受け継がれた。若くして倒れた巨大な背中を見ていたキッズたちが成長し、やがてその年齢を追い越したのだ。

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 現在の東海のこの熱は2010年代なかば、「アンダーグラウンド」という言葉を再定義するだろう。2000年代のハスリング・ラップの本格的な台頭以降あいまいになってしまったことだが、本来アンダーグラウンドとは知名度のあるなしとも、アウトロー的な犯罪性とも本質的には関係がない。ストリートのトラブルで負った傷を地上波でふてぶてしく晒すMC漢のスキャンダラスな態度を見ればわかるように、言ってしまえばギャングスタ・ラップとコマーシャルなショウビズとの相性は必ずしも悪くない。

 清貧主義やギャングスタ・メンタリティの根底にあるアンダーグラウンド・ヒップホップの精神性とはなによりも、インディペンデントであることだ。いまじゃ珍しいものではなくなったアーティストによる独自のレーベル運営という意味で日本のシーンにアンダーグラウンドの種をまいたTHA BLUE HERBのBOSS THE MCのかつての言葉を借りれば、それは「レコード会社の奴隷にならず自ら皿を作り/テレビやラジオに利用されずに利用し/自分だけのアイディアで金を作り/責任を持ち/各地にいる同じ志の仲間達と/イカレた音楽をデカイ音でならす」という独立不遜の哲学だ。

 知っての通り、北と東海とのあいだには因縁がある。今でも語りぐさになるほどのインパクトを持ったTHA BLUE HERBに対するTOKONA-Xのディス“EQUIS. EX. X”、あのトラックを提供したのはINDOPEPSYCHICSのD.O.I.だった。それにSLUM RCのコンピレーションに新たな生命を与えたBUSHMINDやDJ HIGHSCHOOL、MASS-HOLE、アルケミストのビート遺伝子が繋げたC.O.S.A.とKID FRESINOの昨夏の『SOMEWHERE』、そしてあの日のWWWのパーティに集結したNEO TOKAIの面々を迎えた東京のアーティストたち……。M.O.S.A.D.に衝撃を受けたかつてのCAMPANELLA少年は、東京のラッパーのCDをすべて売っぱらったらしい。しょうがない。これは生まれや育ちが違う、ともすればそれだけで拳を交える理由になる物騒なカルチャーだ。しかしそもそも名古屋のレジェンドであるTOKONA-Xその人は、少年期に横浜から東海へと流れてきた異人だった。ウータン・クラン由来の筆で描かれたNEO TOKAIの地図は、すでに地理的な環境の制約をはみ出し、都市と都市を越えた力強いユニティを産み出してもいる。

 実際、このアルバムはとても小さなコミュニティから生まれたレフト・フィールドなたたずまいながら、不思議なほど風通しがいい。「PEASTA」というタイトルは、桃花台にあるショッピング・モールの名だそうで、PEACHにFESTAをかけて作られたというなんとも言えないその造語のセンスは、たぶんいまの日本のニュータウン的な地方都市で育った人間にとってはどこか懐かしいものなはずだ。文化資本など一見まるで見当たらない場所に生まれ育ったキッズたちが、自分や仲間の目と耳、腕だけを頼りに創りあげたアウトサイダー・アート。郊外の子ども部屋やモールのたまり場に響く無邪気な笑い声が聴こえてくるようで、リリースからしばらく経ったいまでも何度も聴き返してしまう。

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 ここ最近熱っぽく口にされる日本のヒップホップの夜明け……やっと朝がきたのだとすればここ10年ほどは夜だったということだろう。だがその長い夜の時代、ひときわ光の射さない地方都市で鍛えられた言葉と音、そして耳は、あらゆる熱狂に浮つきはしない。去年はさんピンCAMPから20年ということで、その黄金時代の思い出が口々に語られたけれど、あの日凄まじいステージングを見せたという弱冠17歳のTOKONA-XとDJ刃頭の姿はその後の映像作品からは完全にカットされている。同じくさんピン以降の東京に敵対心むき出しで登場したTHA BLUE HERBにせよ、日本の地方都市には熱に沸く中央に冷水を浴びせ、強烈なオルタナティヴを突きつける伝統的なマナーがある。

 「オルタナティヴ・ヒップホップなんてものは存在しない。なぜならヒップホップの唯一のオルタナティヴとして知られているのは完全な沈黙だけなのだから(There’s no such thing as Alternative Hip hop Because the only known Alternative to Hip hop is dead silence)」。スワヒリ語で「鳥のように自由」という意味の名を持つミシェル・ンデゲオチェロのファースト・アルバムのインナースリーヴにはそんな書き出しで始まる檄文が刻まれている。「オルタナティヴ」という言葉が切実に求められるのは必ず、ある文化がメイン・ストリームに溢れだし、バブルのように巨大化するときだ。しかし、ヒップホップはオルタナティヴの存在を認めず、対抗的なエネルギーをあくまでその内部に抱えこむ……それじゃヒップホップって?

 バイセクシャルであり、コンシャスなアクティヴィストであり、そして異彩のグルーヴを生み出すベーシスト/コンポーザー/シンガー/ラッパーであるンデゲオチェロの痛烈な檄文は、オルタナティヴ・ヒップホップの存在否定というよりも、むしろ本来オルタナティヴという名で呼ばれるものこそが真にヒップホップの名に値するのだ、と言わんばかりに、次のように締めくくられる。つまりヒップホップとは、「デジタルにグラインドされ、テクノ・モルヒネを生み出すジェームズ・ブラウンの骨盤」……「最高にぶっ飛んでいるときの感覚喪失に対する唯一の解毒剤」……なによりそれは「ドープ認識学/ドープノロジー(DOPE-KNOW-LOGY)」である、と。

 なるほど。たとえ誰もが動画やサイトのヴュー数、視聴率とセールスばかりに目を奪われていたとしても、ヒップホップ・サイエンスの審美眼はいつだってシンプルきわまりない。それは誰が一等ドープかを知るための科学(DOPE-KNOW-LOGY)だ。あらゆるライムとビートはオルタナティヴという冠に満足せず、あくまで文化の正統な後継者の地位を要求する。オルタナティヴ・ヒップホップが存在するとすれば、それは商品ラベルに書きこまれるジャンル名なんかじゃなく、現状の秩序を転覆(Revolve)しようとする、そのエネルギーのことだ。

 CAMPANELLAはつい先日JJJプロデュースでEGO WRAPPINの中納良恵とのジョイント曲“PELNOD”をリリースし、シーンの重鎮YUKSTA-ILLは待望のフル・アルバム『NEO TOKAI ON THE LINE』をドロップ、さらにはMC KHAZZの新譜も予告されている。2017年もNEO TOKAIからの轟音は止みそうにない。ここには確かに、馴れ合いも、ましてや沈黙も拒否する言葉と音がある。なにがドープか知っている人間は、東海の地殻変動からけして目を離せないはずだ。

Clark - ele-king

 オウテカが『Confield』を出し、エイフェックスが『Drukqs』を出したまさにその年に、『Clarence Park』で鮮烈なデビューを飾ったクリス・クラーク。IDMの礎を築いた世代が路線を変更したり長い沈黙に入ったりした時期に、まるでその空白を埋めるかのような形で綺羅星のごとく現れたのがクラークである。当時日本では彼のことをRom=Pariが高く評価していたけれど、以降クラークはコンスタントに……うん、少しは休んでもいいのよと心配になるくらいコンスタントに作品を発表し続け、その成果もあってか、この国における彼の影響力はいまでも衰えていない。たとえば、先日戸川純とともにアルバムを制作したVampilliaも、リミックスという形でクラークとコラボレイトしている。
 そのクラークの新作が4月7日にリリースされる。『Death Peak』というタイトルや、「危険でおそろしい頂にたどり着き、あらゆるものが壊れた光景を眼下に見渡す」という本人のコメントから類推するに、来るべき彼のニュー・アルバムは、2016年という暗い世相を反映したものになっているのではないだろうか(昨年彼が国民投票の結果を嘆いていたことを思い出すべし)。
 ともあれ、いまは公開された新曲“Peak Magnetic”を聴きながら、「破壊を超えた先の絶景」とやらがいったい何なのか、ああだこうだと想像しておこう。

破壊を超えた先の絶景……
3年振り待望のスタジオ・アルバム『DEATH PEAK』完成!!!
新曲“PEAK MAGNETIC”を公開!

自身の名を冠した前作『Clark』から3年、サウンドトラック制作や舞台音楽、オーケストラへの楽曲提供など、〈Warp〉きっての多作家として活躍の場を広げ、さらなる進化を遂げたクラークが、自身の独創性を爆発させた待望の最新作『Death Peak』を携えシーンに帰ってくる。アルバム完成の発表と合わせて新曲“Peak Magnetic”を公開!

Clark - Peak Magnetic
https://soundcloud.com/throttleclark/peak-magnetic

“Peak Magnetic”では、ここ数年で最も明るく、アップビートなクラークを聴くことができる。そのほとばしるエネルギーこそ、彼の新たなサウンドを象徴している。
- Pitchfork

デス・ピーク(死の山頂)というタイトルは2016年の8月からずっと考えていた。完璧だと思ったよ。まるで呪文のように『デス・ピーク、デス・ピーク、デス・ピーク』と繰り返していた。この山の出発地点は、穏やかに蝶の舞う牧草地が広がっている。でも最後には危険でおそろしい頂にたどり着き、あらゆるものが壊れた光景を眼下に見渡すことになるんだ
- Clark

10代で〈Warp〉と契約を果たし、いまやレーベルの象徴的存在にまで成長したクラーク。前作『Clark』リリース後も、BAFTA(英国映画テレビ芸術アカデミー)にノミネートされた海外ドラマ・シリーズ『The Last Panthers』の劇伴や、革新的な作品の上演で知られるヤング・ヴィク・シアターで上演された作品『マクベス』の舞台音楽、さらにLAを拠点とするオーケストラ、エコー・ソサエティーへの楽曲提供など、そのサウンドはさらに進化を続けている。また「不健全で強迫神経症じみた人格を潜在的に備えていればいるほど、作品がより優れたものになる」と語るクラークの内なる狂気とのアンバランスさが、いまだ体験したことのないようなコントラストを生み出し、聴く者の聴覚を完全に支配する。また今作での新たな試みとして、自身が「最も完璧なシンセサイザー」と評する人間の声を、収録曲のほとんどに取り入れ、柔らかで美しいテクスチャーをもたらしている。

クラークのキャリア8枚目となる最新スタジオ・アルバム『Death Peak』は、4月7日(金)世界同時リリース! 国内盤にはボーナス・トラック“Licht (Pink Strobe Version)”が追加収録され、解説書が封入される。初回限定生産盤はデジパック仕様となる。iTunesでアルバムを予約すると公開された“Peak Magnetic”がいちはやくダウンロードできる。


label: WARP RECORDS / BEAT RECORDS
artist: CLARK
title: DEATH PEAK
release date: 2017/04/07 FRI ON SALE

国内盤CD BRC-543 定価 ¥2,200 (+税)
初回限定生産盤デジパック仕様
ボーナストラック追加収録 / 解説書封入

[ご予約はこちら]
amazon: https://amzn.asia/2dFmhIQ
bartkart: https://shop.beatink.com/shopdetail/000000002147
iTunes Store: https://apple.co/2kVM3F6

TRACKLISTING
01. Spring But Dark
02. Butterfly Prowler
03. Peak Magnetic
04. Hoova
05. Slap Drones
06. Aftermath
07. Catastrophe Anthem
08. Living Fantasy
09. Un U.K.
10. Licht (Pink Strobe Version) *Bonus Track for Japan

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