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HD画質のUK・ギャングスタ・ラップ
言うまでもないことだが、いまアンダーグラウンドのストリート・ミュージックを聴くなら YouTube である。「ユーチューバー」と同じ広告収益モデルで立ち上がってきた音楽チャンネル、The Grime Report などは頻繁にビデオをアップロードする。ミュージック・ビデオからフリースタイル、お悩み相談、MCによる料理番組まで、マルチなタレントを持ったスターがビデオで日々競い合っている。MC自身も、驚くべき「まめさ」で、彼らの日常を切り取っている。Snapchat へのコンスタントな動画投稿、Instagram ストーリーでのフリースタイル・ラップ、ミーム……「ギャングスタ」の日常は iPhone カメラで演出される。
インディペンデントな YouTube チャンネルの台頭と、「新世代」を短くした「NEW GEN」のリリースはかなりリンクした動きだ。コンピの A&R を務めるのは Caroline SM、以前は『GRM Daily』というメディア、YouTube チャンネルでグライムを中心にUKのアンダーグラウンドな音楽を紹介していた編集者であり、Radar Radio のプレゼンターでもある。
コンピに参加した 67、Avelino や Abra Cadabra、AJ Tracey といったMCもミュージック・ビデオがヒットし、UK・アンダーグラウンドで人気に火がついているラッパーだ。そのサウンドはUSで言えば Drake と比較してみたくなるような、Trap / R&B であったり、メローでリラックスした雰囲気のものだ。「巻く」話を堂々展開して見せた Renz の“Flexing”、銃の話から展開される警察とストリートの話をマイクポッセで回す 67(シックスセブン)の“Jackets”がハマった。
曲の冒頭で、「You can’t trust everyone, that’s one thing I learnt」と言う。漢 a.k.a. GAMI がこのビデオで「人には期待しないほうが無難」と話したのを思い出す。
ギャルの話やいざこざ、銃、酒、ブリンブリン。アメリカのヒップホップをどこまで辿っても、彼らのスラングやパトワを駆使したワーディングがある。「らしさ」が脱臭されることはなく、さらに味になっている。Stefflon Don & Abra Cadabra の“Money Haffi Mek”はそんな1曲だ。頑張って聞き取ったが一言も理解できなかったのは力不足であるが、フローには中毒性アリだ。
MCたちの舞台として用意されるサウンドは、iPhone 画質と同じくらい綺麗で透き通っている。グライムのザラザラした質感とは違って聴きやすい。しかしラップはハードな日常を切り取り、そのコントラストはさらに際立っている。
米澤慎太朗