「Low」と一致するもの

interview with SHOBALERDER ONE - ele-king

 緊急事態発生。君は、スクエアプッシャー率いる4ピース・バンド、ショバリーダー・ワンを覚えているだろうか。2010年にアルバム『d'Demonstrator』をリリースした、身元不明の連中によるあの奇怪な音楽(エレクトロ・ファンク・フュージョン・ロック・ポップ)を……。
 たったいましがた、つまり12月1日の深夜のことだが、バンドからele-king編集部に謎めいた公式インタヴューが届けられた。じつに興味深い内容であり、またじつに貴重な取材だという。以下にその全訳を掲載しよう。もちろんスクエアプッシャーもメンバーのひとりとして参加している。
 と、その前に、同時に届けられた最新トレイラーをご覧いただこう。まさに別惑星のジャズ・フュージョン・ロック・エレクトロニカ。なかなかの演奏だ! そして身体が温まったところで、彼らのインタヴューを楽しんでくれたまえ。



思考を目に見える言語で表現し、それを他の人びとにも判読可能にするというのが、俺たちの手法だ。自分たちの顔を覆い隠すことによって、より遥かに重要なことを明らかにするのが目的なんだよ。

今日はオフィスまでお越しいただき、また私共のインタヴューにお時間を割いていただいてありがとうございます。来年リリースされる新作、とても楽しみにしています。まずはその件から伺いましょうか。新作はどのようなものになりますか?

Strobe Nazard:戦略の変更!

Squarepusher:スクエアプッシャーの曲から選りすぐったものなんだけど、このバンドで演奏するために手を加えて作り直したんだ。

そうでしたね。ということは、規準を設けて作品を選んだと? 今回のセットでどれを取り上げるかは、もう決めているんでしょうか?

Squarepusher:『Hard Normal Daddy』や他の初期作には、4〜5人組のバンドがすごくタイトにやってるときの状況からインスピレーションを得たものがある。だからそれを試してみるのも楽しいんじゃないかと思ったんだよ。

あなたは以前インタヴューで、モダン・カルチャーにおけるノスタルジアやレトロ現象が嫌いだと発言していましたが、これはある意味ノスタルジックなのではないでしょうか?

Squarepusher:昔のアイディアを未来に向けてプレイしているいくつかの断片。いまのフューチャリズム・ボーブには、それくらいが精一杯だね。

えーと、すみません、“ボーブ”(borb)って仰いました? それは何ですか?

Arg Nution:俺たちが別の惑星でプレイするときは、より新しい、しかるべき機材でプレイするんだよ。こんな金属製とか木製のガラクタじゃなくてな。

Squarepusher:おい、木製は別にいいだろ。樹木から作った楽器で間に合わせることのどこがいけないんだ? まあ、歌は自分たちで歌わなきゃならないけど、大体において、現状を成り立たせてきたのはそいつなんだからさ。

ステージ衣装も凄いですよね、皆さんの外見の進化、すごく気に入っています。

Arg Nution:「外見の進化、すごく気に入っています」だってさ。

Company Laser:これは俺たちが家で着ている普段着だよ。ブランド戦略を実践してるわけじゃない。

家でそれを着たまま、料理したりとかテレビを見たりとか、大変じゃありません?

Strobe Nazard:ウチは、こんなクソみたいなイギリス生活とは違うんだよ。

Company Laser:おいおいStrobe、イギリスってのは国であって、生活じゃないぜ。

Strobe Nazard:ほらな、“生”が好きな人間が大勢いるわけだ(笑)

Arg Nution:だが、ここにはあらゆる死が入り込んでいる。俺はかつて生きていた。だがいまは、死んだ樹木で作った楽器を弾かなくてはならないのさ。

なるほど、では、LEDライトを点灯させて画像を表示するマスクで顔を覆ったりというアイディアは?

Squarepusher:思考を目に見える言語で表現し、それを他の人びとにも判読可能にするというのが、俺たちの手法だ。自分たちの顔を覆い隠すことによって、より遥かに重要なことを明らかにするのが目的なんだよ。

Strobe Nazard:目は闘っているぜ。

Squarepusher:ステージ上にいる者と観客がアイコンタクトを取るのは危険だったんだ。ステージ/シーリング・システムの迫真性によって、そこに両者が通じ合える階段が設けられるとしたら、それは危険な前提に繋がる可能性がある。つまり、紛い物や錯覚としての連帯感だ。実際のところボーブ観客席は、残酷なヒエラルキーの悲しい法則が示されている区域なわけだから。

なるほど、分かりました……だとしますと、あなたたちはどうして集まったんですか? 2010年には『D'Demonstrator』というアルバムを発表していますが、これは何だったんでしょうか?

Company Laser:スクエアプッシャーが俺たちを誘ってくれたんだ。俺たちは何千年も前からの知り合いなんだよ。あのときはどんどん悪い方向に進んでいった憶えがある。彼はまるで自分が本当はボーブじゃないとでも言わんばかりで、それを見せつけようとしていた。俺たちは興奮から醒めたんだけど、実に危険だったね。結局、すごく怖くなってしまってさ。レコーディング・セッションが終わった直後、俺たちは辞めたんだ。でも、彼をひとり残していくのは心苦しかったよ。それでエレクトラックが彼を送り返してきた時、俺たちも彼に同伴したんだ。

あなたが送ったんですか? エレクトラックとは何ですか?

Company Laser:“エレクトリック・トラック”のことだよ。どうかそいつを良心と呼んでくれ。

どこから戻ってきたんです?

Strobe Nazard:英国内のとある惑星からだよ(笑)

それは私たちがいまいる場所ですよね。分かりました。それはさておき、『D'Demonstrator』の収録曲を演奏することについてはいかがですか? 彼の曲の中でも“Plug Me In”はいまいちばん人気があると思いますが。

Squarepusher:人気というのは根拠の類語、しかもおかしな類語なだね。この曲はいまのヘッドセットにふさわしくない。俺たちは、というか俺は、ボーブに及ぼす危険性のせいで元の場所に戻されたんだよ。

エレクトラックによって送り返されたんですよね?

Squarepusher:その通り。

[[SplitPage]]

君が混乱していたのは分かるよ。ショバリーダー・ワンは友好的で寛大な団体なんだ。俺たちは俺たちなりの謙虚なやり方で役に立ちたいんだよ。

危険性というのは、どういう意味でしょうか? またそういった危険と闘う場合、あなたは手を貸すことになっているんですか?

Squarepusher:自分の作品の目的については語らないよう促されているんだ。例のボーブという前提の下で、20年以上ずっとやってきたわけでさ。見せかけを整えるため、俺は絶えず嘘をついてきた、成功のチャンスをもらえるならね。だが、状況は変わった。そして試してみる必要性に直面した諸問題の深刻さもね。

Company Laser:思考能力の制限を企んでいるものが、地球上にはたくさんあるのさ。

それを見下した態度だと感じる人も大勢いるはずです。例外的に良い協議会もあるわけですし……

Arg Nution:実際に聞いたことはないだろ。専門知識を嫌う傾向は顕著にあるんだ。人はエキスパートが好きじゃないのさ。

Strobe Nazard:俺たちはエキスパートなんだよ! プロフェッショナルなんだ!

Squarepusher:ボックスは一般的に、自分たちが直面している悲惨な問題解決に取り組もうとして衰退している。現在のものを過去のレプリカに置き換えるという幻想に逃げ込みながらね。

Strobe Nazard:ボーブが眠たいってさ!

Company Laser:Strobe、お前は黙っとけよ。人をイラつかせるだけならさ。

たしかに私は心配していました。この件についてすごく混乱していたもので。

Company Laser:君が混乱していたのは分かるよ。ショバリーダー・ワンは友好的で寛大な団体なんだ。俺たちは俺たちなりの謙虚なやり方で役に立ちたいんだよ。

Arg Nution:謙虚かつデタラメにね。この連中はもっと謙虚な人びとの役に立たないと駄目だ。

えーと……12月にアメリカを、3月にはヨーロッパの各都市をツアーして回る予定だそうですね。この公演では何か特に計画はありますか? このツアーのギグに関して、ファンの皆さんにお知らせしておきたいことは?

Company Laser:俺たちはスクエアプッシャーの曲を演る。そして自分を貶めることになるにしてもひたすら謙虚でいる。俺たちはヒーローとはみなされていない。俺たちはアンチ・ヒーローだが、反アンチ・ヒーローでもあるんだ。

Squarepusher:今回のライヴはきっと、この上なくエキサイティングなものになるよ。俺たちがその意識に働き掛ける人たちにとってはね。

でもどうすれば音楽は人の意識に異なる作用を及ぼすことができるんでしょうか? たしかに、聴き手は音楽の価値を理解したり、それを気に入ったり、それに触発されたりなどする。でも、人の心の働き方に変化を及ぼしたりしませんよね?

Arg Nution:だからこそ、途方もない混乱状態にいる間抜け野郎は破滅するんだよ。

Strobe Nazard:心をバラバラに働かせられるようにしないと駄目だね。でなきゃ、人生を愛せないだろ。人は死ぬものなんだから。

なるほど。こういう問題は精神科医に任せた方がよさそうですね。

Arg Nution:おバカなアホは笑わせてやらないとな。

Company Laser:分かったから、落ち着けって。対抗心とか怒りとかあるんだろうが、でも取り敢えずいまは、サインするまでわずかな時間しかないんだ。建設的に話そうぜ。

分かりました。それでは名前について伺いましょう。本当に面白い名前ですよね。例えばStrobe Nazard。あなたが考えたんですか?

Company Laser:俺たちは名前の持つ力を妨害したいんだよ。ボーブだとかパワー・バリアだとか、世の中が名前を分析しようとする力をね。普通、機械を作れば、名前について検討し、定期的にそれを見直したりするものだが、この名前を見て、そこから連想されるものが刷り込まれてしまったら、そこであらゆる思考が停止し、ボーブの悲哀に呑み込まれてしまう。

でもあなたたちには、ショバリーダー・ワンというバンド名がありますよね。そこにはたしかに、人間関係や名前やポジティブな組織を構築するための意味がある。そうすれば人びとは、映画を観る時のように、何を期待すべきか想像がつくわけです。

Arg Nution:その期待は破滅に終わるわけさ。

Company Laser:彼のリスナーたちには、期待を捨てるようにって働き掛けようとしてきたんだ。期待は、心理的な解放状態を促進するからね。改名についての国際的原則の教えだ。俺たちは修正を提案して、その後で変えるつもりだよ。

Strobe Nazard:俺たちの宇宙船の側面には、でかい文字で『ショバリーダー・ワン』って書いてあるんだ!

宇宙船を所有していると、あなたたちは本気で主張しているんですか?

Arg Nution:「宇宙船を所有していると、あなたたちは本気で主張しているんですか?」だってさ(笑)。

Squarepusher:この議論にスペース・シャトルは関係ない。

いえ、そうではなく。それで宇宙を旅することができると?

Squarepusher:なあ、追究する価値のある問題は別にあるんだよ。それはテクノロジーへのこだわりに突き動かされてていて、道徳的な理由が完全に欠落していることもよくあるんだ、どんな手法が使われてきたかってことに関して言えばね。

Company Laser:テクノロジーの放棄を論じたかったのかい?

Squarepusher:ああ、俺は火器を全て置くよ。あれは象徴的な提案だった。人びとと音楽テクノロジー、そして人びとと信仰心の特徴との相互作用の不思議さを訴えていたんだ。

それについて詳しく教えてもらえますか?

Squarepusher:このミッションがスクエアプッシャーを危機に晒したと考える理由のひとつは、俺の意に反し、俺が神秘主義的な芸術音楽家として扱われているからだ。こういう展開は不愉快だが、別のやり方を推し進める機会を俺に与えてくれた。だが、そうだな、上位者に教えを授けた神秘主義者もいれば、司祭もいるし、現代のテクノロジーは伝統の継承者にふさわしいという正統信仰もある。だが守護者はその時間と金のすべてを、宗教的権威の眼鏡に適う機材の購入に当てなくてはならないんだよ。

とはいえ、テクノロジー・レヴューのユーザーも言っていましたが、テクノロジー音楽は礼拝所に成り得ると?

Squarepusher:いろいろあるが、そのひとつだと言っていいね。

Strobe Nazard:それもまた、人の脳を死に至らしめる方法のひとつだよ! 音楽テクノロジーは、死ぬべき脳を作り出すのさ(笑) !

Company Laser:だからBluetoothの定期的な切断について非難を浴びせようぜ。俺たちはこのサービスに異説を唱える異教徒だからね。

ですが、テクノロジーを用いて作られた音楽についてはいかがでしょうか? 人びとが無意味な信者達の特性を部分的に操作しているとしても、それはやはり素晴らしい音楽を生み出すのでしょうか?

Arg Nution:それでもやっぱり、時には素晴らしい音楽を生み出すこともあるね(笑) 。

Squarepusher:醜悪な建造物を地震が破壊するからといって、地震を良しとするようなものだ。

Strobe Nazard:音楽を破壊するんだよ! 音楽を破壊(笑)!


※来春にはショバリーダー・ワンのアルバムのリリースが予定されており、ワールドツアーの日程も発表されている。

ツアー日程

09/12/16 SI Ljubljana @ KINO ŠIŠKA (TICKETS)
10/12/16 AT Vienna @ Porgy & Bess (TICKETS)
14/12/16 US New York @ Le Poisson Rouge (TICKETS)
16/12/16 US Los Angeles @ Echoplex (TICKETS)
17/12/16 US San Francisco @ The Independent (TICKETS)
22/03/17 UK Ramsgate @ Ramsgate Music Hall (TICKETS)
23/03/17 UK London @ Village Underground (TICKETS)
24/03/17 UK Brighton @ Concorde 2 (TICKETS)
25/03/17 FR Paris @ New Morning (TICKETS TBC)
26/03/17 DE Cologne @ Club Bahnhof Ehrenfeld (TICKETS)
27/03/17 DE Munich @ Strom (TICKETS)
29/03/17 CZ Prague @ MeetFactory (TICKETS)
30/03/17 DE Berlin @ Berghain (TICKETS)
01/04/17 UK Gateshead International Jazz Festival (TICKETS TBC)
09/04/17 BE Brussels, BRDCST @ Ancienne Belgique (TICKETS TBC)

with Derrick May & Francesco Tristano - ele-king

 この取材は、10月7日におこなわれている。つまり、大統領選のおよそ1カ月前。なんで、そのときにこの記事をアップしなかったんだよ〜と言うのはもっともな意見である。
 いや、アップしたかった。本当に! しかし訳あってアップできなかったのであるが、なにはともあれ、ぼくはトランプが勝利したとき、というか投票結果で最後にミシガン州が残っていたとき、デリック・メイの憂いを思い出していた。彼は、アメリカに広がるエクストリームな感情について知っていたのである。以下のインタヴューは、名目上は、〈トランスマット〉からリリースされたフランチェスコ・トリスターノの新作『サーフェイス・テンション』の取材で、本作によってデリック・メイは20年ぶりにスタジオに入ったらしい。20年前と言えば1996年だが、それってなんの作品だったんだろう、あ、訊くのを忘れた。
 忘れたというより、このときはそれ以上にデリックに訊かねばならないことが多く、そして、読んでいただければわかるように、ひじょうにショッキングが事実を彼は述べている。トランプのことじゃない。ダンス・カルチャーも、いまとなっては娯楽産業であるから、リバタリアンが身近にいても驚くほどのことではないのかもしれない。しかしよりによって……。(僕がここで何を言いたいか、各自探索すれば面白い事実を知るだろう)


Francesco Tristano
Surface Tension

Transmat/U/M/A/A Inc.

HouseTechno

Amazon

 気を取り直そう。ファランチェスコ・トリスターノの『サーフェス・テンション』がリリースされた。坂本龍一の“戦場のメリー・クリスマス”のフレーズからはじまるこのアルバムは、デリック・メイが参加しているのでぼくは聴いたわけだが、聴いて良かったと思った。オリジナル収録曲の8曲あるうちの4曲に参加し、ボーナストラックの1曲ではライヴ演奏に参加したときの模様が披露されている。栄えある〈トランスマット〉レーベルの30周年イヤーの最後を飾るのは、このコラボレーションなのだ。

うん、プリンスも死んだし……悪い年だな……悪い年だ。

デリック、いったいアメリカで何が起きているんだよ!?

デリック:うん、プリンスも死んだし……悪い年だな……悪い年だ。

日本でニュースを見ていても、ブラック・ピープルのコミュニティにただならぬことが起きているのがわかるよ。

デリック:それは、おまえが繫がっているからね。俺が311のとき日本に来たときみたいなものだ。(放射能が漏れているから)みんな「来るな」と言ったけど、俺は、来た。ヒロも20年の仲間だし、おまえも、ヨウコも……日本にいる俺の女たち全員も(笑)。来るしかなかった。

それほど酷いと。しかし、いまのアメリカを覆っている暗さは、さらにまた、より政治的なことだけど。

デリック:うん、とくにドナルド・トランプが大統領選挙に参加してるから。アメリカで国内戦争になってもおかしくないと思うよ、マジで。本当にヤバい時代だ。デトロイトもだいぶ変わった。デトロイト市が倒産したとかみんな貧乏だとか、そういうニュースとかドキュメンタリーのせいで、デトロイトに"悪い要素"の人たちを引きよせたと思う。金持ちで悪い人たち。わかるだろ。(いわゆるニュー・リッチと呼ばれる)あいつらが全部買い上げた。みんなを家から追い出して。だからいまデトロイトに来たら、全然違うよ。

デトロイトが再開発の対象になるなんて、よほどの……、たとえばメジャーなポップ・ミュージックを聴いても、ビヨンセやケンドリック・ラマーとかね……政治色が強まっている。かたや“Black Lives Matter" というムーヴメントもあるし……

デリック:(遮るように)ちょっと、待った待った。おまえが何を訊きたいのかもうわかるよ。ムーヴメント・フェスティヴァルをやってる奴らとか、そういう考え方から完全にかけ離れてるしね。全然わかってないよ。ウルトラ共和党、コンサヴァーティヴ、右翼のやつら。

え、Movementって……あのフェスティヴァルの?

デリック:そう、オーガナイザーたち。俺は(ネーミング・ライツを)売ったからね。俺が売ったやつ、トランプのサポーターだよ。

ホント?

デリック:Yes....

Unbelievable.

デリック:Unbelievable…

しかし、デトロイトみたいな、白人ではない人たちが多い街でなぜトランプみたいな人が支持されるのか……まったくよくわからないんだけど。

デリック:なぜだかわかるか? 俺は思う……トランプを理解しないと……自分から何か大事なものが取られたと思って怒ってる人たちに、彼はアピールしてるから……

Black Lives Matterに関してはどういうふうに思っているのよ?

デリック:俺は、それほど多くは知らないんだ。俺が知っていることは、そうだな、いまより必要なのは、よりもっと、さらにもっと、all peopleに大事なものじゃないのかな、black peopleだけじゃなく。

そうか。

デリック:いまは話さなきゃならないことがたくさんあるな。

重要なことだね。

デリック:俺にとって“Black Lives"とは、俺の娘、俺の母、俺の家族だ。

まさか、ブラック・パンサーやあの時代のようなことが起きるなんて、信じられなかった。ちょっと本当に……

デリック:ああ、なんて恐ろしい時代だろう。たとえば中東の人たちは、これが彼らにも影響する問題だと理解してないんじゃないかと思うよ。(実際はそうじゃないけど)何か大切なものを取られていると思い込んでるたくさんのアメリカの白人の怒りを理解してないんだよね。

この話、別の機会にしよう。あまり時間がないし、今日は、フランチェスコ・トリスターノの新作の話をしなくちゃね。良いアルバムだし、そう、1曲目と2曲目が本当にすごい……すばらしい。しかも2曲目のリズムを聴いたときに、デリック・メイの腕がまださびてないとわかって嬉しかったです。

デリック:どの曲のこと?

2曲目の"The Mentor"ね。

デリック:まぁ……ちょっと待ってくれよ。美味しいワインに、チル、いい場所で、夜遅くに、ストレスもなく、焦ることもなく、オーディエンスもいない……そして最高のプロデューサーが居るわけだ!

といってますが、フランチェスコさん、どうでしょう?

フランチェスコ:ほぼバルセロナの自分のスタジオで……それと一部デトロイトで。“サカモト”のピアノはパリで。一部のリズム・シーケンスはローマで。“Esotheric Thing”の鳥はモーリシャス島で。

いろんなところでじゃあ……

フランチェスコ:フィールド・レコーディングだ。

デリック:坂本(龍一)さんに“サカモト”を聴いて欲しいな。

“サカモト”、いい曲だよね、インプロヴィゼーションなっていくところが格好いいんだよね。デリックは参加してるの?

デリック:いやいや、他の曲だね。サカモトの曲は完全にフランチェスコだ。

フランチェスコ:じつはアルバムに入れる予定じゃなかったんだけど、デリックに曲を聞かせながら喋ってたら、「これ聴こうとしてるんだからちょっと静かにっ!」って怒られて。で、「これ〈トランスマット〉にもらえない?」と言われて。そもそもDeccaのコンピレーション用だったので、サブライセンスもする必要があったけど、最終的にはアルバムに入れたし、みんな知ってる曲だからポールポジション(トラック1)にするしかなかったね。

デリックからたくさん学んだし、デトロイトという町からも。マジで……みんな俺を受け入れてくれた気がした。──フランチェスコ

大好きだよ、おまえ! ──デリック

「養子」にしてくれたような……俺はただの白人ユーロ・トラッシュ野郎なのに(笑)。 ──フランチェスコ

でもおまえは白人じゃないよ(笑)。 ──デリック

デリックはフランチェスコのどんなところを評価しているんですか?

デリック:そりゃおまえ、何度も言うけど彼のプロ意識だ。クラシックの人生とエレクトロニック・ミュージックの人生のちょうど間をたどれること。クラシックのミュージシャンでは珍しいよ。

フランチェスコはよくぞ、デリックをスタジオに閉じ込めて録音させましたね。いったいどんな手を使ったんですか?

フランチェスコ:なんていうかその……『不思議の国のアリス』だよ、デリックを巻き込む方法は。キャンディーとかをシンセサイザーに入れ替えて、デリックが現れる前に全部機材を接続しておいて、しかも彼が気づかないようすでに録音も初めておいて……そうやってやるんだよ(笑)。

デリック:ハッハッハ……俺をハメやがったな、このクソ野郎め!

フランチェスコ:「まだ録音するなよ!」と言われても「大丈夫、気にしないで!」と言いながら、でも既に録音してるという(笑)。

デリック:おまえ、あのとき俺を騙したのか! 騙したんだな!?

え、デリックはこれがリリースされるということを知らないで一緒にセッションしていたってわけ?

デリック:イヤイヤイヤイヤ、彼が言ってるのは……俺が最初に少し練習しようとしてたことを知ってて……俺はまだ録音しはじめてないと思ってたのに……でも録音してたんだ。俺もそれは結局わかったし、彼も教えてくれたからその時点ではサプライズじゃなかったけど。

フランチェスコ:でも、君は……

デリック:うん、ちょっと(録音のために)遊んでた……常に。

さっき言った2曲目("The Mentor")なんかは、クレジットを見なくてもデリック・メイだってわかるんだけど、初期のビートを思い出したな。あれどうやって作ったの? 機材は?

デリック:これはフランチェスコを評価しないと。だって……スタジオの写真はあるか? 

フランチェスコ:"The Mentor"のリズム・シーケンスには、生ドラムのサンプルを使った。もちろん少しプロデュースされてるけど、キックと一部のハイハット以外は生のドラムサウンドだ。で……やっぱり、デリックがいつも言うように、全部ミックス次第なんだよね。レベルの割合と音楽がどう噛み合うか。音楽といえば……メロディとかベースとか。その音楽の大切な部分をどうするかわからなくなってしまうから、やはりリズムはあまり出すぎないようにしないと。

デリック:非常に良いコラボレーションだったよ。彼は俺の考えをよく理解してくれ、それを評価してくれながらも、自分の視点、自分の考え方もうまく表現した。これはみんなに理解してほしい……これは「おまえ(フランチェスコ)のプロジェクト」だということ。それに俺はインバイトされたんだということを。

フランチェスコ:でも、僕もあなたのレーベルにインバイトされたんですよ。それをお返しできるのは光栄ですよ

デリック:いや、これはおまえのプロジェクトだよ!

フランチェスコ:いや……

デリック:おまえのプロジェクト!

フランチェスコは〈トランスマット〉のことをどう思っているの? またデリック・メイというDJについてもコメントして欲しいですね。

デリック:いい質問だな。

フランチェスコ:(笑)

デリック:ほら、おまえの質問が彼にプレッシャー与えてるぜ(笑)。

フランチェスコ:〈トランスマット〉といえば、僕にとって伝説のレーベルだし、デトロイトのサウンドを生み出した唯一のレーベルだと思う。もちろんメトロプレックスとかそのあとプラネットEとかもあるけど……でもやっぱり〈トランスマット〉なんだよ。しかも僕がアナログを買いはじめた当時、デトロイト・テクノにしか興味がなかった。たくさん持ってるよ……〈トランスマット〉のバックカタログをぜんぶ試聴した……たくさん持ってるんだ。
 それから、デリックはナンバーワンのDJだけど、この作品ではDJしていない。僕は彼を快適な場所から引っ張り出したかったんだ。とくにライヴに関しては。彼にDJしてもらいながら僕がその上からプレイすることもできたけど、それはやりたくなかった。デリックに何か違うことをして欲しかった。彼はもうずっとDJしてるし、誰よりもそれは上手……これからはライヴに挑戦するタイミングだ(笑)!

デリック:進化していくのもね。

もう、飽きてきたろうから最後の質問にするね。この作品にはメッセージがありますか?

フランチェスコ:まず、このアルバムは別々として考えるのではなく、全部連動した、流れ的な作品として考えて欲しいんだ。それからタイトルのSurface Tension(表面張力)とは、生化学、地質学における現象だ。液体の表面にある分子を引き寄せる力のこと。だから水の上を歩ける虫もいるよね。海とか、水じゃなくても、音も……その表面は非常にタイトで綺麗に磨かれたものだ。もちろん好きに解釈してもらっても構わないけど。だがその下には巨大な海がある。それがデリックが別の場所でも話していた、デトロイトの歴史、音楽の歴史、シンセの歴史であり、それが全部「海」でその上に存在する表面張力が僕たちを引き寄せてコラボさせてくれた。僕はこの考えがとても気に入っているんだ。それで僕が〈トランスマット〉からアルバムをリリースすることになるとは……ていうか、トランズマットからフルアルバムをリリースしたことはあるのかな?

デリック:うん、アリル・ブリカとか、『The Art of Vengeance』、Microworld……でもこれは全部日本独自規格で、シスコとやったものだけど。

フランチェスコ:だから、〈トランスマット〉で出すアルバムは特別だよ

デリック:数少ないよ。そこは気をつけてる。

フランチェスコ:本当に少数だよね。僕にはすごく大事。

デリック:俺たちにも大事だよ

フランチェスコ:本当に光栄だよ。しかも イノヴェーターに参加してもらうなんて……ある意味オマージュでもあるね。で、僕がそれのお返しをしたというか。

デリック:Wow、ありがとう。

フランチェスコ:デリックからたくさん学んだし、デトロイトという町からも。マジで……みんな俺を受け入れてくれた気がした。

デリック:大好きだよ、おまえ!

フランチェスコ:「養子」にしてくれたような……俺はただの白人ユーロ・トラッシュ野郎なのに(笑)。

デリック:でもおまえは白人じゃないよ(笑)。

フランチェスコ:でも、僕はデトロイトを感じる。だから〈トランスマット〉は……でかい存在だ。

デリック:ひとつだけ言いたいんだけど、今回のことはまた自分でも音楽作りにチャレンジしたいという気持ちのインスピレーション、モチベーションにもなったよ。それはフランチェスコのおかげだ。俺のオーケストラのコンセプト、それからフランチェスコとオーケストラの仕事をしたから、今回彼の作品にスタジオ参加することにもつながった。そしてそれを僕は受けた。
 俺は音楽をリリースするけど、1989年のデリック・メイにはなりたくない……前の自分になろうとしてるんじゃない。音楽的にどこか別のところに行きたいし、自分にチャレンジするのが大事だ。だから彼とこのプロジェクトに参加することにしたんだ。

フランチェスコ:光栄です。喜んで。

デリック:そう! (俺の)スイッチをオンにした!

フランチェスコ:残念ながら、みんな最近集中力がないからね。でもそう考えちゃダメだし、フェードアウトはしてはならない。

OK、ありがとう。


FRANCESCO TRISTANO P:ANORIG Feat. DERRICK MAY Live in Berlin

七尾旅人 - ele-king

 11月15日、自衛隊に「駆けつけ警護」の任務が付与された。11月20日、陸上自衛隊の先発隊が不安定な状況の続く南スーダンに向けて出発した。つまり、安全保障関連法が本格的に稼働しはじめたということである。そしてそれは、七尾旅人の映像作品『兵士A』に新たな意味が発生したということでもある。
 『兵士A』はそういう緊迫した日本の状況に問いを投げかけた、今年唯一の音楽/映像作品と言っていい。兵士Aとは誰なのか――観る者に否応なく強烈な印象を刻み込むこの映像作品は、この夏東京と広島で上映されひとつの映画作品としても話題になったが、このたび同作の全国上映が決定した。それとあわせて、七尾旅人4年ぶりの全国ツアーも開催される。
 彼は一体何を伝えようと/描こうとしているのか? 日本ではいま何が起こっているのか? 余計なことは言わない。あなた自身の目で確かめてほしい。

七尾旅人 "兵士Aくんの歌" (映像作品『兵士A』より)

The xx - ele-king

 きました。ついにきました。
 全英1位を獲得した前作『コエグジスト』から4年半。ザ・エックス・エックスが新作を来年1月13日にリリースします。タイトルは『アイ・シー・ユー(I See You)』。レーベルは〈ヤング・タークス〉。プロデューサーはロディ・マクドナルドと、メンバーのジェイミー。現在、同アルバムから先行で新曲“On Hold”が公開されています。

 どうです? これはアツいでしょう。ザ・エックス・エックス新章の幕開けです。いやがうえにもアルバムへの期待が高まります。また、ザ・エックス・エックスは新作にさきがけて12月に来日することも決定しています。この年末年始はエックス・エックス漬けでいきましょう!

■リリース情報
アーティスト:The xx(ザ・エックス・エックス)
タイトル:I See You(アイ・シー・ユー)
レーベル:Young Turks
発売日:2017年1月13日(金)

トラックリスト
01. Dangerous
02. Say Something Loving
03. Lips
04. A Violent Noise
05. Performance
06. Replica
07. Brave For You
08. On Hold
09. I Dare You
10. Test Me

■公演情報

東京  12月6日(火)豊洲PIT

開場18:00 開演19:00 前売:¥9,000(standing、1ドリンク別)

問い合わせ:03-3444-6751(SMASH)

企画/制作:SMASH

総合問合せ:SMASH 03-3444-6751 smash-jpn.com smash-mobile.com



■チケット詳細

一般発売 : 発売中

東京 :e+(pre order:10/26-30)、ぴあ(P:313-155)、ローソン(L:73355)



■バイオグラフィー

サウス・ロンドン出身のドラムレスな男女混合3人組。08年初めのNME誌「今年の注目新人」特集でいきなり大フィーチャーされ、09年『エックス・エックス』でデビュー。アンニュイでメランコリーな独特の世界観が口コミで評判となり、主要メディアの年間ベストアルバムに次々に選出。10年5月には初来日公演をソールドアウトさせ、同年フジロック'10でもレッドマーキーを埋め尽くす満員のオーディエンスを熱狂させた。12年にセカンド・アルバム『コエグジスト』を発表。イギリスを含む全世界5カ国でチャート1位を獲得。翌年フジロック'13ではホワイト・ステージのヘッドライナーを務めた。16年12月に豊洲PITにて来日公演を行うことを発表した。

新作リリース記念 - ele-king

 10月19日に『TOSS』をリリースしたトクマルシューゴと、11月9日に『ハンドルを放す前に』をリリースしたOGRE YOU ASSHOLEの出戸学。ほぼ同じタイミングでアルバムを発表したこのふたりは、実は古くから交流があるそうです。この絶好の機会を逃すわけにはいかない! ということで、おふたりに対談していただくことになりました。これまで聴いてきたもの、これまでやってきたこと、音楽に対する熱意や誠意……互いに似ているところや逆に異なっているところを、思う存分語り合っていただきました。


「俺がソロ弾くから、ブルースのスリー・コード弾いてろ」みたいに、シークエンサーとして使われてた(笑)。それに乗せて親父が熱血ソロを弾くみたいな感じだったね。(出戸)


トクマルシューゴ
TOSS

Pヴァイン

Amazon Tower


OGRE YOU ASSHOLE
ハンドルを放す前に

Pヴァイン

Amazon Tower

おふたりが最初に出会ったのはいつ頃なのでしょうか?

トクマルシューゴ(以下、トクマル):僕とミラーとタラ・ジェイン・オニールのツアーが2004、5年にあったと思うんですけど、その時に松本にライヴをしに行ったんですよ。その時に一緒に出ていたのがオウガ・ユー・アスホールで、それが初めてでしたね。めちゃくちゃかっこいいバンドだなと思って、それからの付き合いだからもう10年以上になるのかな。

初めて会った時のお互いの印象はどうでしたか?

出戸学(以下、出戸):ギターをディレイで重ねたり、いろんな意味でギターがすごくうまくて、そういう感じで弾き語りをするというのを初めて観て、それまで弾き語りってフォーク・ギターで歌う感じだと思っていたので、びっくりはしましたね。何をやっているんだ、という感じはありました。

トクマル:東京にも当時いろいろなバンドがいたんですけど、それとはまた違った概念で活動しているバンドがいるなと思って、すごいびっくりした記憶があります。やっていることもめちゃくちゃ面白くて、それこそ「普通じゃないロック・バンド」でした。今のオウガの形とも全然違うんですけど、相当面白かったので東京に帰ったあとにいろんな人に吹聴した覚えがありますね(笑)。

出戸:本当?(笑) 当時の僕らは今と比べて何も考えていなかったんですよ。変なことをしようというか、聴いたことのない感じにしようとは思っていたんだけど、それをどうやってやればいいのかがわからなくて、高い声を出してみたり、変なフレーズや展開を出してみたり、頭じゃなくて肉体的に聴いたことのない感じをやろうとしていた頃だね。

トクマル:まだCDを出してなかった頃だよね。5曲入りのCDをもらった記憶はあるんだけど。その後ってどうなの?

出戸:その後にファースト・アルバムを出したのかな。それは吉本興業の〈R&C〉というレーベルから出たんだけど、小室哲哉のスタジオで録ったんだよね。ファースト・アルバムを録ることになった時、ちょうど小室哲哉が吉本興業に入っていて、なぜか彼のスタジオでレコーディングすることになった。ポップスを録るスタジオだったから、ファースト・アルバムは独特の音なんだよね。変なことをやろうと思っているのに、録り音がポップスっていう、今聴くと余計ねじれたものになっていて(笑)。当時はなんでロックっぽくならないんだ、と思っていたんだけど、今一周回ってから聴くと面白かったりするんだよね。逆に今は録れない音だよね。

おふたりはそれぞれ違うタイプの音楽をやられていると思うのですが、お互いの作品を聴いて刺戟されることはあるのでしょうか?

トクマル:僕はGELLERSというバンドもやっていて、ロック・バンドなんですけれども、そちらの方ではいろいろなバンドのサウンドを研究して、取り入れてみたり真似してみたりしているんですが、オウガのエッセンスを取り入れてみようとしたこともあるんです。いかんせんGELLERSというバンドがとても難しいバンドで、そういうことを一切できないバンドなので(笑)。やろうとしても、一切できなくて、それが歪んだかたちになってGELLERSというバンドになっていくので。そういうことはあったかもしれないですね(笑)。

出戸:僕らはGELLERSとよく対バンしたりしていたから、(バンド・メンバーの)みんなGELLERSは好きだった。トクマル君の新譜も欠かさず聴いていますね。会った頃からずっと。

トクマル:僕も全部聴いていますね。全部マスタリング前段階のものばっかり聴いている気がする(笑)。先に聴いちゃっていますね。

音楽をやろうと思ったきっかけはいつ頃までさかのぼりますか?

トクマル:僕(のきっかけ)はあんまり面白くなさそうなんですけど、出戸君は面白そうだなと思っていて。そもそも育ちがおかしいじゃないですか(笑)。僕は徒歩10分で小学校に通えるような都市部に住んでいたんですね。でも出戸君はたぶん違うんじゃないの? その時点で音楽を知っていたというのはすごく不思議に思っていて。

出戸:まあ親(の影響)だよね。家に楽器がある状態だったから、自然と中学1年生くらいの時にビートルズのコード・ブックを見ながら“イエスタデイ”とか“レット・イット・ビー”をギターで弾くところから始めたね。

トクマル:それまではギターとか弾いてなかった?

出戸:弾いてなかった。(ギターが)あるな、と思っていたくらい。いくつくらいから弾いてた?

トクマル:俺はピアノをやっていて、音楽は元々すごい好きだったんだけど。

出戸:俺もピアノはやってた。

トクマル:ピアノは難しくてやめて、ギターをやりたいとは思っていたんだけど、(自分では)持っていないし家にもなくて。でもコード譜を買ってきてエアーで練習して(笑)、いつか弾いてやるぞと思っていた。14、5歳の時に自分で買ってきて弾いたね。

出戸:エアーはすごいね(笑)。何を最初に弾いてたの?

トクマル:その頃はパンクが大好きで、パンクのコードがわりと簡単だったこともあって弾いていたね。あとはビートルズとかも一通りやってたかな。

出戸:速弾きに目覚めたのはいつなの?

トクマル:目覚めたってわけではなくて(笑)、ギターが大好きでギターの世界を追求しようとするとどうしてもそっちへ行くというか。『ギター・マガジン』を買うと、タブ譜に数字がたくさん書いてあったりするんだよね。曲は知らないんだけどその数字を追うのが楽しくて、「これ、どういう曲なんだろうな」と思ってその曲を買いに行くと「こんな速いんだ!」と知って頑張ってみるという。ギターはそうやって続けていたね。ギターはお父さんに教えてもらったりしたの?

出戸:いやあ、教えてもらうというか、「俺がソロ弾くから、ブルースのスリー・コード弾いてろ」みたいに、シークエンサーとして使われてた(笑)。それに乗せて親父が熱血ソロを弾くみたいな感じだったね。

ライヴをやろうと思ってバンドをやり始めたね。(出戸)

僕は別にライヴをやらなくてもいいし、一緒にいられるならいいやというバンドかな(笑)。(トクマル)

初めて買ったレコードやCDを教えていただけますか?

トクマル:たぶん子ども(向け)の童謡を買ってもらったんだと思いますね。あとはピアノを弾いていたのでピアノのレコードとか。CDが流行りだして、「レコード屋」(という呼び方)があったのに、みんな「CD屋」ってあえて言うようになってきた時に、駅前のCD屋にみんなで行って、当時流行っていたチャゲアスを買ってきたことがありましたね。

出戸:俺は子どもの時に親から買い与えられたものもあるけど、自分のお小遣いで初めて買ったのはビートルズの『ヘルプ!』だったな。白いジャケに4人が立っているアルバム。廉価盤でちょっと安くなっているようなCDだけど。街まで降りて、本屋とCD屋が一緒になっているようなところで買ったね。

自分が音楽をつくる側になって、これはすごいなと思った作品などはありますか?

トクマル:難しいですね。自分はこういうことをやりたかったんだなと思い返せたアルバムはありますね。僕はレス・ポールという人が大好きで、「レスポール」(というモデル)はギターとしてすごく有名なんですけど、レス・ポールという人自体が発明家として面白いんです。その人のアルバムを聴いた時に、これがやりたかったのかもなという発見があったんです。そもそも僕が(初めて)ギターを買った時に、なぜこんな形をしているのかとか、なぜギターは音が出るんだろうとかギターの構造自体に興味をもっていたんですけど、その構造を作った人のひとりであるレス・ポールの音楽がめちゃくちゃ面白くて、編集も凝っていたりしていたので、それは衝撃を受けた1枚かも。しかもある楽器フェアにたまたま来ていたレス・ポールと握手をして、2回くらいすれ違ったことがあって(笑)。その思い出もあって、いまだにすごく尊敬していますね。

出戸:それこそ最近、馬渕(啓)がミュージシャンの方のレス・ポールがいいとなぜか急に言い出したんだよ。偶然だね。じゃあトクマル・シューゴ・モデルのギターは作らないの?

トクマル:作りたい。木から作りたいですよね(笑)。

出戸:俺は何かなあ。ひとりに絞るのは難しいですね。

トクマル:ビートルズのあとに聴いていたのはなんだったの?

出戸:ベックとかニルヴァーナとか90年代のバンドだね。ベックが〈K〉レーベルから出してた流れでUSのインディは聴いていたけど、だから初期はUSインディの感じなのかな。ちゃんとしてない音楽がけっこう好きかも。ジョー・ミークみたいな感じの。〈K〉レーベル周りでも、ちゃんとしていないようでちゃんとしている人たちがいい。ジョー・ミークも演奏としてはちゃんとしているんだけど、どこかネジが外れているし、そういう音楽が好きかな。ひとりには決められないんだけど。

音楽を制作していく上で、技術的な部分や精神的な部分で、お互い似ていると思う点や、逆にここは全然違うという点はありますか?

トクマル:音楽に対する考え方というか、音楽に対する接し方が似ているとは少し思うかも。付き合う上でも楽だし、やっている音楽が全然違っても、互いに普通に接することができるのは、(音楽に対する接し方が似ているから、というのが)あるかも。

出戸:表面的なことで言えば、違うところのほうが多いのかもしれないけどね。

トクマル:なんでライヴをやろうと思ったの?

出戸:ライヴをやろうと思ってバンドをやり始めたね。

トクマル:そっか。初めてライヴをやったのはどこ?

出戸:もうなくなったけどトクマル君ともライヴをやった松本のホット・ラボというバーみたいなところで、高校生の時に(初ライヴを)やったね。

トクマル:文化祭とかじゃないんだ。

出戸:頼まれてギターでは文化祭に出たけど、歌ったのはホット・ラボが初めてかな。

トクマル:元々オリジナル曲をやろうということになっていたの?

出戸:そうそう。GELLERSはライヴをやろうと思っていなかったの?

トクマル:思ってなかったかも。いつも(メンバーで)集まっていて、たまたまみんながギターを買いだして、俺は参加していなかったんだけど、中学生の時に彼らが文化祭に出ると急に言いだして(笑)。文化祭に出るということはライヴをやるんだよ、と僕は言ったんだけど、それもよくわかっていなかったのかもしれない(笑)。ベースもギターもふたりいて、ヴォーカル、ドラムがいるという編成もよくわからないし、なんでも良かったのかもしれない。とにかくみんなで一緒にいたくて、僕も一緒にいたかったから照明として参加してた(笑)。(ライヴには)出てないんだけど、照明を良いところに当てていたね。だからみんなは違うのかもしれないけど、僕は別にライヴをやらなくてもいいし、一緒にいられるならいいやというバンドかな(笑)。グループ? サークル?(笑)

[[SplitPage]]


めちゃくちゃ辛いんですね、登山。辛いし、登り始めるとやめたいと思うんですけど、でも上まで行って帰ってくると「また行きたいな」と思うようになっているのが、僕のアルバム作りとすごく似ていて。(トクマル)












トクマルシューゴ

TOSS


Pヴァイン


Amazon
Tower




OGRE YOU ASSHOLE

ハンドルを放す前に


Pヴァイン


Amazon
Tower


音楽をやっていて良かったことはなんですか?

トクマル:たいがい良かったことかもしれないですよね(笑)。悪かったことを探す方が難しいかも。音楽をやってなきゃよかった! ということはないかもしれないですね(笑)。音楽をやらなきゃ良かったな、と思う瞬間ってある(笑)?

出戸:うーん。なかなかないかもね。でもレコーディングからミックスまでひとりでやっていて辛くならない? たまにトクマル君げっそりしてるな、と思う時があるからね。

トクマル:単純に体力がなくてげっそりしているんだと思う(笑)。精神的にはずっと安定はしていて、面倒くさい作業はあるしそういうのは嫌になるけど、作ることにおいては別にストレスはなくて。

出戸:(トクマル君の)新しいアルバムを聴いて、表面上はアッパーで、賑やかな曲が多くて、大団円でみんなが肩を組んで「わーい」みたいな祝祭感があるんだけど、これをひとりで作ったと思うとちょっとゾッとするというか(笑)。そういう感じはして。

トクマル:たぶん、ひとりの世界に入り込むと鬱々としてきて暗くはなるよね。

出戸:普通はそうなりそうなのに、めちゃくちゃ人がいてすごく幸せな空間ができているじゃない。(トクマル君)本人も知っているからさ、あれが怖いよね(笑)。

トクマル:不思議なんですよ。自分でもそれはわからないですね。

音楽をやっていて困ることなどはありますか?

トクマル:僕は車とかで音楽を聴かなくなりましたね。ここ10年くらい同時に音楽を聴くことができなくなって、「ながら聴き」ができないんだよね。どうしても音楽に耳をもっていかれて疲れちゃう。同時にふたつ以上のことをやるのが苦手で、どうしてもコードとか音響とかを聴いてしまったりするんだよね。だから音楽を聴くときは、「よし、聴こう!」という感じで聴きますね。

出戸:俺も読書しながら音楽を聴くのが無理なんだよね。本が入ってこなくなっちゃう。あと、困りはしないけど、リサイクルショップとかレコ屋とかがあると寄っちゃうというのはあるね。それはバンドをやっている人はけっこう多いと思うんだよね。別に困りはしないんだけど、周りが困っているんじゃないかな(笑)。

トクマル:なるべくレコード屋を出戸君たちに見せないようにしないと(笑)。

音楽以外にやる趣味などはありますか?

トクマル:なんかある?

出戸:ない。

トクマル:ははははは(笑)。僕もね、なかったんですよ。最近ね、急に山登りを好きになってしまって。僕は機材がすごく好きで、道具がめちゃくちゃ面白いんだよね。そこには知らない世界が広がっていて、素材とかいちいち細かくて、機能性がすごいことになっていたりするのが面白くてしょうがなくて(笑)。

出戸:へえ。じゃあ最近はアクティヴになってるんだ。

トクマル:そう。前作を作った時に体がボロボロになってしまって、「これはいかん、なんとかしないとな」と思いながら何もしていなかったんだけど、今年急に思い立って「登山はいいな」と思ったね。

SPACE SHOWER TV ディレクター:登山のどんなところが音楽と通じますか?

トクマル:いろいろあるんですけど、まずは機材ですよね。機材がカッコいい(笑)。あとは計画を立てないと何も達成できないというところですかね。達成感も似たようなところがあって。めちゃくちゃ辛いんですね、登山。辛いし、登り始めるとやめたいと思うんですけど、でも上まで行って帰ってくると「また行きたいな」と思うようになっているのが、僕のアルバム作りとすごく似ていて。アルバム作り中はやっぱり、途中で辛くなるんです。作りたいけどやめたいというか、なんでこんなものを作ろうと思っちゃったんだろう、っていう。もっと簡単なものにしとけば良かった、とか思うんですけど。でもそれを目指したくなっちゃう。すごくエクストリームなものに対する憧れというか。(山の)頂上に着いても別に大した達成感はなくて、降りてきて安堵すると「ああ、良かった」ってなるのが、アルバム作りもそうなんです。完成して、(アルバムが)出て、一通りツアーが終わって、落ち着いて家に帰ってくると、「はあ、終わったー」ってなるのとすごく似ている(笑)。



トクマル君は、ひとりでここまでやるという忍耐力がすごいと思うので、そこは見習いたいような見習いたくないようなところではあるんですけど(笑)。(出戸)



僕は子どもの頃、自分の机に「忍耐」と書いたことがあって(笑)。(トクマル)

今度出るオウガの新作がセルフ・プロデュースで、トクマルさんもご自身でプロデュースされていますが、自分で楽曲をプロデュースするということの魅力や大変さを教えてください。

トクマル:元々(オウガで)セルフ・プロデュースをしたことはなかったんだっけ?

出戸:ファースト・アルバムの時は一応セルフ・プロデュースなんだけど、プロデュースもできていないというか、何もわからないで、エンジニアの人のそのままの音で録れているから、何も注文していないんだよね。セカンドは斉藤(耕治)さん、そのあとずっと石原(洋)さんとやってたから、本当の意味でプロデュースしたのは今回が初めてかもね。

トクマル:何が大きく違うの?

出戸:トクマル君にとっては当たり前なんだけど、全部の決断を自分でしなきゃいけないことだね。

トクマル:じゃあ全然外部に意見を求めたりしなかったの?

出戸:バンド内だけ(で完結)だね。あとはエンジニアの中村(宗一郎)さんとのやり取りだけだね。今までは(自分たちの)意見がそのまま通るにしても、プロデューサーのハンコが押されるか押されないかで気分が違っていたんだけど、今回はずっとハンコを誰にも押されないままずっと積み上げていかなきゃいけないから、トクマル君にとっては当たり前かもしれないけど、その違いはあったかな。だから(制作は)長くかかったね。

トクマル:最終的な決断は全員で「よし、これで行こう」という感じなの?

出戸:そうだね。基本的に俺と馬渕とエンジニアの中村さんがオーヴァー・ダビングの現場にいるから、その3人のうちの誰かが「ここどうなの?」と言ったら、また3人で考え出すという感じで、3人が良いと思うところを決めていったね。でも(トクマル君は)全部ひとりで決めるんでしょ?

トクマル:ひとりです。

出戸:でも、今回の最初のとっかかりみたいなものは違うんでしょ?

トクマル:そう。とっかかりはフワッとしたものがあって、それをチョイスしていくという方法で、むしろ今回はセルフ・プロデュースしなければ良かったなと思っていて。というのは、辛かったから(笑)。例えば、誰かが弾いてくれたものとか出してくれた提案をチョイスするんだけど、なんで俺はそれをチョイスしたんだろうという自問自答に入るというか、自分のセンスを疑うというか、そこですごく悩んでしまったんだよね。なんでこれが好きなんだっけなとか、本当に好きなのかなあとか思いながらやっていたかも。それはわりと辛くて、誰かが選んでくれたら楽だったのにとは思うけど、それをしたら自分の作品じゃなくなっちゃうからやらなかったね。

出戸:そもそもなんでそういう作り方にしたの? 異常でしょ、作り方が。

トクマル:うん。初めは、正直な話、楽をしたかった。でも、楽じゃなかった(笑)。バンドみんなで「演奏するぞ、せーの、バン!」で録って、持って帰って、それを出そうと思っていたんだけど、そんなにうまくいくわけはなくて、それ(録音素材)をチョイスして曲にするという作業になってしまったんだよね。

出戸:曲がなかった時点でレコーディングしたんでしょ? それ、どういう現場なのかすごく気になるんだけど(笑)。

トクマル:やっぱり無(の状態)ではあるし、僕の注文が「普段やっていないことをやってくれ」という感じだったから……

出戸:「普段やっていないこと」って言って、みんな何を演奏したの?

トクマル:(手で拍子をとりながら)とりあえずテンポを出して……テンポを出すときと出さないときがあって、出すときは(手拍子をしながら)「ハイ!」みたいな感じでやっていく。

出戸:キーとかも決まっているの?

トクマル:決まってない。音をくれ、という感じ(笑)。

出戸:それは勝手にアンサンブルになっていくの?

トクマル:ならないです。アンサンブルにする必要はないという感じにして。

出戸:(演奏するのと)同時に録っているの? 

トクマル:同時には録ってる。

出戸:じゃあ不協和音が鳴りっぱなしになっていたりするってこと?

トクマル:する。だから音楽って難しいんだなと(笑)。

出戸:でも、そういう過程を経ているけど、全体的にはトクマル君って感じになっているよね。今までのアルバムの流れではあるというか、ぶっ飛んで変なものになっているというよりも、ちゃんとその流れでトクマル君の新しいアルバムという感じになっている。

トクマル:わりと悩んだ挙句、自分がチョイスしたらやっぱり自分の曲になっちゃうんだな、と思う。それがやってみて面白い点だったかも。

出戸:編集権がある人が、結局いちばん個性が出るというか。

トクマル:オウガの新しいアルバムを(バンド・メンバーの)みんなで聴いたことがあって、うちのドラマーが気づいたんだけど、絶対にシンバルを打つだろうというところで「なんで打たないんだろう?」って話題になって。自制心が働いているのかわからないけど、「タカタカタカタカ、ツッツッタッ」って、「そこ(シンバル)打つだろう」というところで打たないんだ、って(笑)。ああいうのをどうやって決めているんだろうなと思っているんだけど。

出戸:レコーディングの最中とかプリ・プロの時点で決めているんだけど、今回はあまりはじけた感じにはしたくないと思っていて、ドラムがライド(シンバル)とかをバーンと叩くと空間が埋まっちゃうんだよね。それを補う音をあとで考えようと。ドラムって強力だから、ドラムのパーツを少なくしたり、スネアを入れない曲もあったりして、わざと曲を構成しにくいところから始めてみようと。それなりに全部(のパーツが)が(曲に)入ってしまうと、曲として安定感が出てよく聴いた感じのものになるから、それにはドラム(の影響)がけっこうデカいんじゃないかなと思って。当たり前のことをカットして。曲として成立するかしないかギリギリのところで止めようと。バスドラムとコンガだけとかあまり聴いたことがないから、そういうのはチャレンジでもあった。

トクマル:ドラマーとしてドラムを始めた人って、普通にシンバルを叩きたくなっちゃうよね(笑)。「タカタカタカタカ、ジャーン」みたいなやつね(笑)。

出戸:それはやりたがっていたけど、やめようということにしたね。

トクマル:バンドとしてそれが成立するのはカッコいいよ。

出戸:ドラムの音色も曲ごとに変えたりしたね。今回のセルフ・プロデュースというのは大変でしたね。

トクマル:オウガは1個1個の音がちゃんと作り込まれているから、聴き応えがあって。1音1音がちゃんと大切に作られているというのがすごくわかるアルバムだし、特に今回の(アルバム)は、なぜかはわからないけどすごく聴きやすくて。

出戸:エンジニアの中村さんのやり方なんだけど、あとで加工しないっていう。録ったときの音で、ミックスのときにEQをなるべくしない。よっぽどはまらない時はやるけど、音作りは基本的に録っているときに決める。今だとエフェクトとか、あとでリヴァーヴかけようとか、あとでディレイかけようとか、音色そのものをモジュレーションで変えたりするのかもしれないけど、それも全部その場で、エフェクターとかを通して音を作ってその場で決めていくというやり方にしたいって、中村さんに言われて。それですごく時間もかかったと思う、音色ひとつ選ぶだけで。音色選びの、機材繋ぎ直しの大変さ(笑)。音色がひとつ違うだけで急に本格的なレゲエっぽくなったり、こんなはずじゃなかったというくらい曲の像が変わったりして。1音でほどよい自分の思っていたフィールドに落とせるのか、全然違うレゲエのところにいっちゃうのかというのは、今回いろいろ試していて「ここまで違うのか」というのは発見としてあったなあ。

SSTVディレクター:自分にはない、相手から学びたい魅力は何でしょう?

トクマル:僕は(オウガの)メンバーが全員大好きなので、精神面的なことをわりと学んでいますよ(笑)。学んでいるというか尊敬するというか、いいなあと思うポイントがいっぱいあるかも。人柄的なこともあるし、近くにいて欲しいタイプのバンドではあるかもしれないです。

出戸:トクマル君は、ひとりでここまでやるという忍耐力がすごいと思うので、そこは見習いたいような見習いたくないようなところではあるんですけど(笑)。やったら最後、自分で耐えられるかわからないような追い詰め方をしている感じがするので、それは見習うべきなんだろうけど、近寄りたくないなという感じもある(笑)。

トクマル:僕は子どもの頃、自分の机に「忍耐」と書いたことがあって(笑)。

出戸:そりゃひどい(笑)。

トクマル:俺はこの十字架を背負って生きていく(笑)。

出戸:そういうのが好きなんだね。だからそういう意味だと登山は向いているんじゃない?

トクマル:たぶん向いているのかもしれない(笑)。

出戸:俺は「忍耐」とは机に書いてないなあ。書いていないし「忍耐」じゃないなあ。

トクマル:違うと思うよ(笑)。

※今回の対談の一部が動画としてSPACE SHOWER NEWSにて公開されています。下記よりチェック!

interview with Ogre You Asshole - ele-king


Ogre You Asshole
ハンドルを放す前に

Pヴァイン

Indie RockKroutrockExperimental

Amazon

 世界に激震が走った……とニュースが言っている。ブリグジットに次いでトランプ勝利という波乱。マスコミや識者の予想もあてにならないという事実も明るみになった。そんな世界で、オウガ・ユー・アスホールを聴いている。
 以下のインタヴューで、新作『ハンドルを放す前に』とは、何かが起こる前の感覚を表していると説明している。起きてしまったときの感覚ではない。起こる前の感覚だと。ぼくはこの話を聞いたとき、彼らに意図はなくても、それは現在の社会/自分たちの生活を反映しているのではないかと、そのときは思った。何かが起きることの手前にいる感覚。
 だが、どうして、なんで彼らは……アルバムには、“かんたんな自由”という曲がある。リバタリアンの台頭、リベラル弱体のいま、充分に深読みできる。「かんたんな自由に/単純な君が/関心もなく ただ立っている/(略)/なんだっていいよ/勘だっていいよ/なんてことになっている/そんな自由が/かんたんな自由が/こんな ピタッと合っている/そうやってここにも/だんだんといきわたり/問題になり出している」

 こうした世の中との関連づけは、バンドが望むところではないことはわかっているが、この音楽が、ただのお楽しみのためにあるとも思いたくはない。なにせ新作は、出戸学の歌がいままで以上に入ってくる。と同時にアルバムでは、これまで試みてきたオウガの実験が、じつに洗練され、開かれ、そして滑らかな音楽へと結晶している。
 誰がどう見たっていまはロックの時代ではないだろう。それをわかったうえで石原洋は自らの拭いがたきロックへの幻想──それはありきたりのロックの美学とは異なる極めて独特なヴィジョンではある──を彼らに托し、バンドはそれを受け入れたわけだが、吐き出し方はドライだった。ゆらゆら帝国よりもずっと乾いていた。とにかく、2011年という年において『homely』は、日本の他の音楽のどれとも違っていたし、それから『100年後』(2012年)があり、そして『ペーペークラフト』(2015年)と、石原洋とのロック探索作業は続いた。
 新作『ハンドルを放す前に』は、石原洋との3部作を終えてからの、最初のセルフ・プロデュース作である。いったい世界はどうなってしまうのだろう。とてもじゃないが“寝つけない”……、そう、“寝つけない”、それがアルバムのはじまりだった。

このアルバムのなかで劇的なことは本当になにも起こっていなくて、ぜんぶがその予兆だけで終わっていくんですよね。

石原洋さんがいなくなってから最初の作品ということで、逆に気合いが入ったと思うのですが、『ハンドルを放す前に』を聴いていて(石原さんが)いるのかいないのかわからないくらいの印象でした。アルバムはどのようなところから始まったのでしょうか?

出戸:この(前の)三部作はコンセプトありきで作っていたのですが、今回はプロデュースを自分たちでやるかどうかも考えていなくて。どういうコンセプトでやるかということも考えず、僕と馬渕で好き勝手に1曲ずつ作ってお互いに聴かせあうというところからはじめましたね。

ゴールを決めずに作ったんですね。その、ある種リラックスした雰囲気は音楽にも出ていると思います。

馬淵:好きな音像をどんどん作っていくというのが、レコーディングの前までにしたことですかね。

出戸:ただ、実際にセルフ・プロデュースということが決まったときからリラックスはしていないんですけどね。

馬淵:むしろ石原さんがいるほうが、石原さんがいるってことでリラックスしていたね。

はははは、そういうことか。

出戸:責任は自分たちに来るし、セルフ・プロデュースだとつまらなくなった、という話になりかねないじゃないですか。そういった意味で僕はいつもより気合いが入っていましたけどね。

最初にできた曲はどれですか?

出戸:ちゃんと歌詞までできたのは“寝つけない”かな。

この“寝つけない”って言葉はどこから来たのですか?

出戸:あまりコンセプトがなくて歌詞を書いていて……、最終的には自分なりにこのアルバムは『ハンドルを放す前に』という単語に集約されるとわかったんですけど、その前までは「なんで寝つけないことを俺が書くんだ」と深追いはせず、書きたかったから書いたという感じですね。最後に全部(曲が)できたあとでこういう分析をしてみたというのはありますけどね。

清水:どうでもいいですけど、出戸君はすごく寝つける人なんですよ。

(一同笑)

ああ、そういう感じですね(笑)。僕はその真逆で寝つきがとても悪いので、自分のことを歌われている気持ちになりました。

出戸:僕はめっちゃ寝るんですよね。

それは言われなくてもわかります。

(一同笑)

寝つけない現代人はとても多いと思います。これは風刺なんですか?

出戸:いや、そこは風刺してないですよ。何かがはじまる前に次の未来のこととか先のことを考えていて、いまリラックスできないって感じがあるじゃないですか。その感じがこのアルバム全体にあって、なにかの一歩手前の感じというか、そういうことを歌いたかったんじゃないですかね。

その“なにか”というのは前向きな“なにか”ですか? それとも後ろ向き“なにか”ですか?

出戸:僕のなかでそれはどっちでもないんですね。何かが起きる前の感じ、ってのがよくて、それがポジティヴでもネガティヴでも起こっちゃったら今回の作品のテーマじゃなくなっているというか。(なにかが)起こるちょっと前の感じ。注射を打ったときより打つ前のほうが打つときよりも怖い(感じ)というか、遠足に行く前の日のほうがワクワクするというか。そういう感じなだけで、それが感情の陰か陽かということはどっちでもいいんですよ。

はぁー。出戸君の歌詞はすごく独特じゃないですか。久しぶりに振り返って(オウガのアルバムを)聴いてみたのですが、歌詞を書く際のスタンスが基本的にはそんなに変わっていないのかなと思いました。“100年後”とか

出戸:大幅には変わっていないですけど、今回の“頭の体操”とか“移住計画”はいままでと違った書き方だと自分のなかでは思っています。いままでは行間に「クエスチョン・マーク」がつくような幅をもたせて想像力を湧かせるような書き方もあったんですけど、今回はまったく行間がなくて“頭の体操”のことをただただ歌っているというか、それ以上でもなくそれ以下でもない歌詞にしましたね。でもそれをやることによって、なんでそれを歌っているんだという大きい「クエスチョン・マーク」ができるということに気づいて、その2曲に関しては自分のなかでは、いままでとちょっと違った書き方なんです。

[[SplitPage]]

あんまりガツガツしすぎるとだんだん疲れてきちゃうし、ガツガツしている人を見るのも疲れるじゃないですか。自分がげんなりしない程度にはいろいろ嫉妬とかガツガツしたりもしますけど、自分があとでダメージをくらわない程度ですよね。


Ogre You Asshole
ハンドルを放す前に

Pヴァイン

Indie RockKroutrockExperimental

Amazon

みなさんは出戸君の歌詞に関してはどのような感想をもっていますか? 何について歌っているのか聞いたことはありますか?

馬淵:ありますよ。今回はけっこう(歌詞について)話していたかな。

出戸君の歌詞は二通りの捉え方があると思います。ひとつはシュールレアリズム的な捉え方と、もうひとつは世のなかに対するアイロニーという捉え方。「なんて屈折した世のなかの見かただろう」と思うような、後者の捉えられ方というのもとてもあると思います。“100年後”とかそうでしょう?

(一同笑)

「これまでの君と これからの君が 離れていくばかり」とか。たしかに出戸君本人が言ったように「クエスチョン」が立ち上がりますが……。

馬淵:勝浦さんは「自分のこと歌われている」って言っていたじゃないですか(笑)。

(一同笑)

アイロニーとして感じたことはないですか?

勝浦:たぶんもっと根っこの部分がそういう感じで、僕は本人(出戸)が思ってもいないままそういうふうになっていると思っています。だから本人は「アイロニーを歌ってやろう」とは思っていないと思います。

そのとおりだと思います。

出戸:だからいわゆるアイロニー的な感覚で作品で作りたいとはあまり思ってないんですよね。社会を風刺してやろうとかそういう思いはなくて、もっとフラットに作品をどうしようとか、この言葉の感じと歌を合わせたらいいなあとか、好みで選んでいるつもりなんですけどね。

“頭の体操”なんかは解釈次第では「なんて意地の悪い歌なんだろう」って思えるような歌詞でしょう?

勝浦:思わなかったですね(笑)。

馬淵:中村さんは言っていたけどね。

出戸:中村さんは「頭の体操をしろ」という上から目線の歌詞にも感じるって言っていました。

(一同笑)

出戸:そんなつもりはまったくないんですけど(笑)。

勝浦:なんてカッコ悪い歌詞を作るんだろうなあと思って、それがいいなと思ったんですけどね(笑)。“頭の体操”ってすごくカッコ悪い響きの言葉を使うのが出戸君らしいと思いました。

そうなんだ。世のなかを皮肉っているとしか言いようがないですけどね。

清水:本人は意識してないと思うんですけど、出戸くんには批判的な視線というのが常日頃からあると思うんですよね。わりと世のなかとか外界というものを批判的に見ているというか。

出戸:いや、自分に対しても批判的ですよ!

清水:出戸くん自身に対しても批判的だよね。なんというか外界をぜんぶ批判的に見ていて、そういう人だから、どうしても時代というものと無関係じゃなくなってしまうんです。今回のアルバムの何かがはじまる前の感覚というのも、いつからなのか、ずっとそういう時代が続いているのと無関係ではなくて。破滅しそうなしないような、ハッピーになるようなならないような、そういう中を生きてるような時代感があると思っていて。

ああ、そうですね、いま清水くんが言ったことは本当に頷けます。

出戸:俺はかなり楽観主義ですよ。そういった皮肉とか批判する視線もありますけど、半分はなんだかんだ良くなるかもしれないし、という気持ちもありますよ。

勝浦:どっちのスタンスかということじゃなくて、たぶん日常とか現実からの距離が人と違うんですよ。すごく離れているから、どっちの立場ということではないと思うんですよね。

清水:時代がどうなろうと確固とした自分があるから、出戸くんは揺るがないんだと思う。対象と距離が取れているから、現実がどう変わっていこうとそれを見つめ続けられる強さがすごく出てくるというか。そういう感じがするけどね。

3.11があって、ぼくはその年の夏に『homely』を聴いたんですよね。そのときのオウガは、日本がんばれとかいろいろあったなかで、ある種の居心地の悪さを絶妙な音で表現していたというか、その感じがぼくにはすごく引っかかったんですよね。クラウトロックとかなんとかいう註釈は後付けであって。

出戸:もちろんまったく関係ないとも思っていないですよ。社会とか、いまの時代の空気感と離れすぎてもいないですけど、野田さんが思っているほど近くないというか。どこがポイントなのか自分でもよくわからないんですけど。

歌詞を書くときはどういうところから書いていくのですか?

出戸:曲ありきで歌詞を書いていますけど、なにかひとつアイデアがあったらそれを元に絵を(頭に)浮かべて描いていくという感じですね。

『ハンドルを放す前に』というタイトルは、なにかが成し遂げられる一歩手前の感覚という話でしたが。

出戸:そうですね。でも感情とかそういう話ではなくて。ピサの斜塔って倒れそうだけど、多分あれを見て悲しいと思う人はいないじゃないですか。あんな感じのアルバムというか(笑)。

(一同笑)

勝浦:「運転する前に」じゃなくて「放す前に」なんだよね。

おかしい言い方ですよね。

出戸:「運転する前に」というか「放棄する前に」という(感じですね)。

でもその先には「放棄する」というのがあるわけですよね。

出戸:いや、それは放棄する予兆だけ、でまだハンドルは持ったままの状態でしかないです。このアルバムのなかで劇的なことは本当になにも起こっていなくて、ぜんぶがその予兆だけで終わっていくんですよね。

たしかになにも起こっていない感じはすごく音に出ていますね。でもなぜそのなにも起こっていない感じをこんな緻密な音楽で表現しようとしたのですか?

(一同笑)

出戸:そういう置物が好きだったとしか言えないですね。ちゃんと立っているやつより、斜めに立っているものが欲しかっただけです。

それはわかりやすく言ってしまうとオウガ的なメッセージというか、すごくオウガらしいですよね。ロックというのは常になにかが起こっていなければいけないし、常に物語があるじゃないですか。それは彼女との出会いかもしれないし、あるいは社会であるかもしれない。とにかくなにかが起きているということに対して、本当になにも起こっていないというスタンスですよね。

出戸:でもさっきの注射を打つ前の話とか遠足に行く前の日の話とかのように、予兆というのはいちばん重要なポイントなんじゃないかと思っていますね。

勝浦:SF映画で宇宙人が出てくる前は良いけど、出てくるとがっかりするとか、狂気の前のなにかが起こりそうな感じとか、たしかにそこが一番ピークといえばピークだよね。

出戸:ピークだし表現のしようがある場所というね。

なるほど。今回のアルバムは歌メロが違うのかな、と感じたのですがどうでしょうか?

出戸:あまり意識はしてないんですけど、これまでの三部作より全体のミックスで歌が大きくなってます。

1曲目(「ハンドルを放す前に」)や“はじまりの感じ”、“移住計画”といった曲にあるようなメロウなメロディはいままであまりなかったじゃないですか。

出戸:そうですかね、“夜の船”とかありましたよ。

簡単な言葉で言ってしまうと、“はじまりの感じ”はとてもポップな曲に思えたし、そこは今回挑戦した部分なのかと思ったのですが、どうでしょうか?

馬淵:“はじまりの感じ”は、もともとシングルに入れたヴェイカント・ヴァージョンの方をアルバムに入れようと思っていたんですけど、(結局入れたのは)わかりやすいアレンジのほうになりましたね。アルバムに入れた“はじまりの感じ”が、今回では一番バンドっぽいですよね。普通のロック・バンドがやっている演奏って感じの曲ですね。でも出戸のメロディに関しては、結局あまり変わってないと思うんですけどね。あとは歌がシングルっぽいですよね。

それは録音としてでしょうか?

出戸:録音ですね。いままではダブリングといって2回録音した歌を重ねてにじんだ声にしてヴォリュームも小さかったのが、(今回は)歌が生々しくて、わりとにじみが薄くて1本でドンとある感じで(ヴォリュームも)でかいという歌に耳がいっちゃうような作り方になっていますね。

それには出戸君の歌を聴かせたいという意図があったのでしょうか?

出戸:最初はいままでどおりのミックスで進んでいたんですけど、最後のほうで中村さんから「もうちょっと歌(のヴォリュームを)上げてみませんか」という提案をもらって、それで上げてみたらそっちのほうが奇妙で面白かったという感じです。いままで聴きなじんで当たり前だったものよりも新鮮に聴こえたというか。

馬淵:バックが無機質で上モノの音とか飛び出してくる音が少ないんですよ。そこに声を(上げて)入れてみたらバコンときたから、その対比が面白かったんです。

出戸君の歌詞というものをさっ引いて音としてメロディを聴くと、「お、いいヴォーカルじゃん」と思いました。ある意味でオウガのスタイルというものを作り上げている感じはするのですが、今回のアルバムは人によって好きな曲がバラけるのかなという感じもしました。メンバーとしてはどの曲が好きなのですか?

出戸:僕は「はじまりの感じ」のシングルにしか入っていない(アルバムから)外されたヴァージョンが好きでしたけどね。

(一同笑)

清水:詞とか含めて3曲目が好きかなあ。あとは“寝つけない”も好きかな。曲調がバラバラだから、どっちが良いってのは考えにくくて、全部好きなんですよね(笑)。個人的に今回はどれも違う味で、どれも美味しいという聴き方ができるんですけど。あえて言うなら“寝つけない”とか“なくした”が好きって感じです。単純に自分の好みですね。

勝浦君はドラマーの立場からどうでしょうか?

勝浦:僕は最初に馬渕君が“寝つけない”のデモが来たときから、今回はうまくいくなと思ったんですよね。あとは4曲目の“あの気分でもう一度”もメロウで好きですね。

馬渕くんは?

馬淵:僕も“寝つけない”ですね(笑)。いい曲ですね。

では“寝つけない”が最初にシングル・カットされたのは、みなさんが好きだったかななんですね。

出戸:そうですね。最初にできたからというのもあるし。

馬淵:12インチだったしね。

清水:みんなが(“寝つけない”を)好きというのが、いま明らかになったね(笑)

出戸:そうだね(笑)。

これまでは石原さんがいたからソースとして頼りになっていたことがあると思うのですが、今回のアルバムを作っていくなかで音楽的にどのようなところからインスピレーションを得ていたのでしょうか?

出戸:最初にコンセプトをもうけていないから、普段自分たちがいろいろ聴いて消化したものが出てきているので、これという取っかかりになったような作品は、バンド内であまり出てきていないですね。日常生活であれがいい、これがいいというものはあるんですけど。なにかあります?

馬淵:モンド感とかエキゾ感を散りばめようとか、そういったようなことはチョロっと話したような気がするけど。

勝浦:たしかに最近馬渕君の車に乗るとエキゾっぽい曲がかかっている気がするね。

馬淵:あと僕はバンドがやっているという感じではなくて、人がいなくて機械がやっている感じがいいなと思っていました。ちょっと冷めていているけど、ロボット達が血の通ったことをやろうとしているような感じをイメージしてましたね。

[[SplitPage]]

石原さんの基本には多分、ペシミスティックな感覚があって、それが独特の美意識にもつながっているんだけど、もともとオウガが強く持っているものではないから、今回はペシミスティックでデカダンな感じが希薄なのかもしれません。


Ogre You Asshole
ハンドルを放す前に

Pヴァイン

Indie RockKroutrockExperimental

Amazon

どのバンドも長いことやっているとマンネリズムの問題があると思うのですが、オウガはそういうようなことはなかったのでしょうか?

出戸:昔はそんな感覚もありましたね。でも『homely』以降はないですね。“ロープ”をライヴでやりすぎて飽きてくる、とかはありましたけど(笑)。レコーディングに関しては新曲をもってくるときに「またその曲かよ」とみんなのテンションが下がることはいまのところないと思います。

清水:今回の新譜のために曲作らなきゃという話をふたりがしはじめてから、ボツになった曲がけっこう沢山あるんですよね。ライヴでやってからボツになった曲もあるし、練習だけしてやらなくなった曲もけっこうありました。でも、二人からたくさん(曲が)出てきて、それが尽きないという感じがあった。そこからどんどん削ぎ落としていくという作業が、僕の知っているなかではいちばん激しかったと思います。だから、すごく磨きこまれた感じがあるんですよね。曲が採用されるまでに戦いがあったというか。

馬淵:勝浦さんとのね。

(一同笑)

清水:やってみて、「これはやめたほうがいいんじゃない?」ってことはあったよね(笑)。

バンドを続けていくうえでのモチベーションは『homely』の頃から変わっていないですか?

出戸:そこはまだ疑問視もしてないくらい。

(一同笑)

焦りもない(笑)?

出戸:あるはあると思うんですけど……。それはありますよね。

清水:でもはたから見ていると出戸くんも馬渕くんも曲作りとかで困る状況をけっこう無邪気に楽しんでいるというか(笑)。

出戸:あんまりガツガツしすぎるとだんだん疲れてきちゃうし、ガツガツしている人を見るのも疲れるじゃないですか。自分がげんなりしない程度にはいろいろ嫉妬とかガツガツしたりもしますけど、自分があとでダメージをくらわない程度ですよね(笑)。

(一同笑)

それは長野にいるということも一つにはあるのでしょうね。

出戸:住んでいるからというか、だから長野に住めるんだと思いますけどね。もっとガツガツしていたら東京にいなきゃダメでしょということになって、(長野に)いれないと思いますよ。なにもない日々が続く感じなので。

(一同笑)

オウガは音楽的を追求するバンドですが、音楽リスナーのみんながそこまで音にこだわっているわけではないですよね。そういったことに不満やストレスといったものはあるでしょう?

馬淵:僕はないですね。リスナーの人もそうだけど、好きに聴いてもらえればいいと思っているし、わかってほしいと思う近しい人に伝わっていれば満足できるというか、自分がすごいと思っている人にいいと言ってもらえたら嬉しいというのはありますけどね。どう?

出戸:うーん……。

この沈黙はやっぱりちょっと思っているところがあるんだ。

(一同笑)

清水:ふたり(出戸、馬渕)の作品作りは、すごくよくできた椅子とかコップとかを作っているのに近いなと思っているんですね。飾り気もないんだけど実用性はあって、歴史も踏まえていて、いまの時代にあって日用雑貨として使いやすいんだけど奇をてらっていなくて、そんなふうに考えてキッチリ作られた家具とか、そういうものに近い感じがしてて。色々踏まえてきっちり作ってあるから楽しむ人は楽しんでくれるし、合わない人もいるとは思うけど、作った職人さんは「合わないよね」くらいに思うだけで、ただいいものを作ろうとして作っているだけだという。だからユーザーに対する不満なんか、職人さんは特に持ってない。そんな境地じゃないの?

出戸:大衆に向けて作ろうとしていないと言っているけど、それよりさらに(対象が)狭いかも。信頼している人が何人かいるからそういう人たちの顔は見えるけど、あとは自分のなかで(完結していて)、外部といったら10人くらいかな。「あの人はどう思うのかな」というのはちょっと思ったりしますけど。野田さんの話もたまに出ますよ。

馬淵:これは野田さん嫌いでしょ、みたいな(笑)。

(一同笑)

出戸:これは野田さんが好きそうとか、よく名前は出てきますよ(笑)。知っている人の範疇でしか想像できないからね。

清水:でもその向こうにはいっぱい人がいるわけでしょ? 野田さんの向こうにはいっぱい人がいて、その集約として野田さんがいるという感じがしますよね。

出戸:そういう意味ではお客さんに対しては(不満は)ないですけど、ライターの人とかにちょっとイラッとするときはありますね(笑)。でもそれはこっちの説明不足というのもあるし。多分誰しもがあることですよね。

さきほどアイロニーの話をしたときに出戸君が「自分に向けても」と話していましたが、歌詞のなかに自分が出てくることはあるのですか?

出戸:自分が出てくることもありますね。自分の気分が歌詞になっているから、舞台に自分を立たせているかはわからないですけど、歌詞の感じが自分の気持ちに似た雰囲気をもっていると思いますね。だから登場人物として自分がでてくるというニュアンスよりも、監督としているという感じかな。

自分のエモーションを歌うということはありますか?

出戸:ないかも。感情の出し具合というのもあると思うんですけど、すごく号泣している人を見ても一緒に泣けないというか、むしろ引いちゃう感じがあるじゃないですか。でもロボットが泣いていると「どうしたんだ」と思う感じもあるというか。

清水:ええ(笑)?

出戸:俺はそういう感じ(笑)。

清水:そもそもロボットが泣いているというシチュエーションがすごい(笑)。

勝浦:出戸くんはあんまり情動がないんだと思います。短期間の激しい上がり下がりはなくて、長くてゆるやかな変動はあるけど気分という感じなんですよ。歌詞も気分はよく出てくるけど、感情とかそういうのは歌詞に出てこないですよね。波風が立っていない海みたいな、そういうイメージですね。

はははは、すごいイメージ(笑)。勝浦君が一番付き合いが長いのですか?

勝浦:いや、馬渕君ですね。

馬淵:高校から(の付き合い)ですね。

ずっとこういう感じでした?

馬淵:いや、どんどん冷静な感じになっていますね。

(一同笑)

さすがに高校時代はそうでもありませんでしたか?

馬淵:それは若いからいまよりありましたけど、みんなそうでしょ? まあ、でも冷静ですよね。

勝浦:冷静すぎて腹が立つときもあるよね。

(一同笑)

勝浦:なにか言ってすごくまともな答えを返されたりして、合っているんだけどこっちがすごくみっともない感じがして(笑)。もうちょっと動揺してよ、と思うくらい安定しているというんですかね。

内に秘めているタイプですよね。

出戸:でも勝浦さんを見ていて「すぐ怒るなあ」と思うけどね(笑)。

(一同笑)

勝浦:この感じなんです(笑)。

勝浦君は感情の起伏が激しいのですね。

勝浦:僕は情動ですね。

清水:二人とも極端で、どっちも普通じゃないというか(笑)。

ちょうどバンド内のバランスがとれているのですね(笑)。ドラムはとてもミニマリスティックなのにね。さて、これまでコンセプチュアルな作り方をしてきて、今回のアルバムはゴールを決めずに作ったような話でしたが、最終的になにをゴールとしたのか、どうやってアルバムをまとめあげたのでしょうか?

出戸:最後まで曲順を決めるのに難航してどの曲順もしっくりこない感じがあって、曲を入れかえたり、アレンジが違うものを入れかえたり、曲をボツにしたり、削ったり尺を変えたり、最初に好き勝手に作った分まとめるのに苦労したんですけど、「ハンドルを放す前に」を1曲目にしたところからようやくまとまりそうな気配がでてきたという感じでした。それ以前はなにがどうなるのか、自分たちでもよくわからなかったですね。

どうしてアルバムができるまで2年かかったのでしょうか?

出戸:レコーディングのスケジュールを長めに取ったりしていたら、自然とそうなったんですけどね。

ではとくに難航したということでもなく?

出戸:レコーディングはもともと1ヶ月半くらいで終わる予定だったんですけど、さらにその倍の時間がかかってしまいましたね。(今回は)最初から音決めを丁寧にやっていて、ずっと中村さんに「これで本当に終われるんですか?!」って言われてたよね(笑)。

(一同笑)

出戸:(それくらい)丁寧にやっていたので、難航したというよりも積み重ねるのに時間がかかったという感じですね。

ひらたく言えば、前作より聴きやすいアルバムになったと思います。それは意図せずそうなったのでしょうか? 前作が実験作であったので、比較するのも変な話ではあるのですが……。

出戸:ミックスの感じで聴きやすくなっているというのはあるよね。いままでは聴き手側が「聴くぞ」と思ってちゃんと(聴き)取りにいく感じがあったと思うんですが、今回ももちろんそういう聴き方もしてほしいんですけど、そうじゃない聴き方でも聴けるミックスになっていると思いますね。

なんかリラックスしているというとそれは違うという話ですが、たとえば、“見えないルール”のような曲のテンションとは違う感覚を打ち出しているアルバムですよね。

清水:たぶん(三部作とくらべて)悲壮感が薄いんです。石原さんの基本には多分、ペシミスティックな感覚があって、それが独特の美意識にもつながっているんだけど。(その悲壮感は)もともとオウガが強く持っているものではないから、(今回のアルバムは)ペシミスティックでデカダンな感じが希薄なのかもしれません。だから、リラックスしたわけではないんだけど、比較的リラックスしているように聴こえるのかなと思いますね。(今回は)悲観でも楽観でもない中間に浮かんでなにもない真空みたいな感じになっていると思うんだけど。意識としてはリラックスはあまりしてないよね? 

出戸:でも重くしたくないというのはありましたよね。重くて大仰じゃないアルバムを作りたいと思っていましたね。

清水:最後の曲順とかアレンジを考えているときまでそれは話していたよね。重くなりすぎないようにとか、大仰にならないようにとか、(曲が)ほとんどできて並び替えとか曲の長さを決めているときにも話した気がする。

なぜ?

出戸:今までと違うことをしたかったからですよね。

(一同笑)

なるほど。じゃあそんなところでいいかな。

(一同笑)

『homely』はしばらく聴いていないですよね?

出戸:レコーディング中に聴きました。

あのアルバムをいま聴くと、ずいぶんトゲがありますよね。それに比べると、今回のアルバムはすごく滑らかなサウンドですよね。

勝浦:この前ちょっとひさしぶりに(『ハンドルを放す前に』を)聴いたら、おこがましいんですけどヨ・ラ・テンゴのような雰囲気を感じて、それが野田さんのおっしゃっているリラックスというかスルメっぽい感じというか、表面のゴテゴテがなくて、いままでより奥にあるものに近づいた感じがしていて。

カンでいえば『フロウ・モーション』ですよね。

勝浦:こういう感じでやれたら長くい続けられるんじゃないかなと思ったんですよね。

出戸:「後期のカンっぽい」って言っていう感想もあったなあ。

オウガもいよいよ成熟に向かったかという感じで。

出戸:残念ですか(笑)?

もっと成熟していくように思いますね。

勝浦:みんなですごくたどたどしくやっているという感じで、そのたどたどしさを僕はいいと思うんですよね。ああいう成熟した人たちって演奏もうまいし、かたちになっているんですけど、自分たちのはインディーズ感がありつつ落ち着いているというのが面白いバランスだと思いましたね。

(了)

アルバム発売記念・全国ツアー・14公演
「OGRE YOU ASSHOLE ニューアルバム リリースツアー 2016-2017」

11/26(土)  仙台 Hook
11/27(日)  熊谷 HEAVEN’S ROCK VJ-1
12/03(土)  札幌 Bessie Hall
12/09(金)  長野 ネオンホール
12/10(土)  金沢 vanvanV4
12/11(日)  甲府 桜座
12/16(金)  岡山 YEBISU YA PRO
12/17(土)  広島 4.14
01/14(土)  福岡  BEAT STATION
01/15(日)  鹿児島 SRホール
01/21(土)  名古屋 CLUB QUATTRO
01/22(日)  梅田  AKASO
01/28(土)  松本  ALECX
02/04(土)  恵比寿 LIQUIDROOM ※ツアーファイナル

Aphex Twin - ele-king

 日本標準時11月8日1時57分。エイフェックス・ツインが新しいヴィデオを公開した。「エイフェックス・ツインからの承認メッセージ」というツイートとともにシェアされたその42秒の動画は、UKから合衆国へ核ミサイルが発射されるという内容で、その冒頭には実に彼らしいやり方でデフォルメされたドナルド・トランプとヒラリー・クリントンが映し出されている。映像の制作は、これまでにレディオヘッドなどを手がけているWeirdcore が担当。

 エイフェックスは12月17日にヒューストンで開催される Day for Night フェスティヴァルにヘッドライナーとして出演することが決まっており、今回のヴィデオはその8年ぶりの合衆国でのライヴを告知する動画なのだけれど、これ、間違いなく狙ってやっているでしょう。
 彼のファンならご存じのように、エイフェックスはあまりこういうポリティカルな演出をやらないアーティストだ。そんな彼が、まさにこのタイミングで、わざわざトランプとクリントンを変形した映像をポストしているのである。たしかに、今回のヴィデオは何か直接的なメッセージを発しているわけではないし、そもそも「承認メッセージ」なんて言い回しも彼流のジョークなのだろう。でも、言葉をそのまま愚直に受け取る真摯な僕たちは、これをメッセージだと捉えることにしよう。だって、今日はそういう日だ。
 大統領選は、日本標準時で11月8日の夜から投票が開始され、明日11月9日の昼頃には大勢が決し、夕方には開票結果が確定する見通しである。ある程度結果は予測されているみたいだけれど、ブレグジットの先例だってある。何がどうなるかはまだ誰にもわからない。エイフェックスよ、きみ自身はどう思っているんだい?


TOYOMU - ele-king

 ネットで好き勝手やっている古都在住のポスト・モダニスト、TOYOMUが、星野源、カニエ・ウエストに続き、今度は勝手に宇多田ヒカルを●●●して話題になっているところ、デビューEPに先駆けてMVが公開された。これを見ながら彼のEPを妄想しましょう。

■TOYOMU / EP 『ZEKKEI』

2016年11月23日発売/ TRCP-208/ 定価:1,200円(税抜)

Coldcut - ele-king

 いったい何年ぶりだろう。ひい、ふう、みい……じゅ、10年ぶりじゃないか! ついにコールドカットが再始動する。まずはEPからだ。
 色々と思いはある。もしこのふたり組がいなければ、UKのクラブ・シーンは、いや、世界のクラブ・シーンはまったく別物になっていただろう。……が、とりあえず僕の感慨は脇に置いておいて、とにかくいまはみんなで、この伝説のデュオの帰還を祝おうではないか。リリースは11月25日。あと3週間だ!

〈NINJA TUNE〉主宰の大重鎮、コールドカットが再始動!
超待望の最新作『Only Heaven EP』のリリースを発表!
新曲「Donald’s Wig feat. Roses Gabor」を公開!


Photo : Hayley Louisa Brown

アンダーワールド、ケミカル・ブラザーズ、ファットボーイ・スリムらとともにUKクラブ・シーンの黄金期を牽引したサンプリング・カルチャーのパイオニアであり、アンクル、DJシャドウ、カット・ケミスト、DJクラッシュらと並んで、ブレイク・ビーツ黎明期の最重要ユニットにも挙げられるレジェンドがついに再始動! ジョン・モアとマット・ブラックによる伝説的ユニット、コールドカットが、〈Ninja Tune〉発足以前に初音源をリリースした伝説的レーベル〈Ahead Of Our Time〉から、超待望の最新作「Only Heaven EP」のリリースを発表! 新曲“Donald’s Wig feat. Roses Gabor”を公開した。

Coldcut - Donalds' Wig feat. Roses Gabor

「Only Heaven EP」には、“Donald’s Wig”や、M.I.Aやビヨンセのプロデュースやメジャー・レイザーの初期メンバーとして知られるスウィッチとの共同プロデュースで、ヴォーカリストに盟友ルーツ・マヌーヴァ、ベースにサンダーキャットが参加した“Only Heaven”を含む5曲が収録される。

長い沈黙を破り、ついに復活したコールドカットの最新作「Only Heaven EP」は、11月25日(金)にデジタル配信と12”でリリースされる。iTunesでアルバムを予約すると、公開された“Donalds' Wig feat. Roses Gabor”がいちはやくダウンロードできる。

label: Ahead Of Our Time
artist: Coldcut
title: Only Heaven EP

release date: 2016.11.25 FRI ON SALE
cat no.: AHED12014(12"+DLコード)

beatkart (12") : https://shop.beatink.com/shopdetail/000000002120
iTunes Store (Digital) : https://apple.co/2fkgmkO

[Tracklisting]
1. Only Heaven feat. Roots Manuva
2. Creative
3. Dreamboats feat. Roots Manuva and Roses Gabor
4. Donald’s Wig feat. Roses Gabor
5. Quality Control feat. Roots Manuva

Jlin - ele-king

 RP Boo率いるD'Dynamicsクルー所属のフットワーク第2世代プロデューサー、Jlin(ジェイリン)。僕が初めてその名を認識したのは、2011年に〈Planet Mu〉からリリースされたコンピレイション『Bangs & Works Vol.2』だったのだけれど(“Erotic Heat”のかっこよさといったら!)、その後の彼女の活躍はめざましく、あれよあれよという間にフットワークの新世代を担う中核アーティストへと成長していった。実際、昨年〈Planet Mu〉からリリースされたアルバム『Dark Energy』は、英『WIRE』誌の年間ベスト・アルバム第1位に選出されるなど、海外での彼女の評価の高さは尋常じゃない。

 このたび、そのJlin初の来日公演が開催されることとなった。大阪と東京の2ヶ所をまわる今回のツアーは、ジューク/フットワークのファンにとってのみならず、広くベース・ミュージックを愛する者たち全員にとってスルー厳禁の公演と言っていいだろう。詳細は下掲のリンクから!

フットワーク新章! 英『WIREマガジン』年間ベスト・アルバム第1位、Pitchfork Best New Musicなど2015年の年間チャートを総なめにし、シーン初の女性アーティストとして華々しいデビューを飾ったシンデレラJlinが満を持しての初来日!!

Jlin Japan Tour 2016


11.19 sat at CIRCUS Osaka | SOMETHINN Vo.18
w/ D.J.Fulltono, CRZKNY, Keita Kawakami, Hiroki Yamamura, Kakerun
OPEN / START 23:00
ADV ¥2,000+1D | DOOR ¥2,500+1D
https://circus-osaka.com/events/somethinn-vol-18-feat-jlin/


11.23 wed holiday at CIRCUS Tokyo | BONDAID #11
w/ Theater 1, D.J.Fulltono, CRZKNY
OPEN / START 18:00
ADV ¥2,500+1D | DOOR ¥3,000+1D | UNDER 25 ¥2,000+1D
https://meltingbot.net/event/bondaid11-jlin-theater1

主催 : CIRCUS
制作 / PR : SOMETHINN / melting bot

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294