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Home >  Interviews > 新作リリース記念 - 特別対談:トクマルシューゴ × 出戸学(OGRE YOU ASSHOLE)

新作リリース記念

新作リリース記念

特別対談:トクマルシューゴ × 出戸学(OGRE YOU ASSHOLE)

司会:小林拓音    Nov 12,2016 UP

 10月19日に『TOSS』をリリースしたトクマルシューゴと、11月9日に『ハンドルを放す前に』をリリースしたOGRE YOU ASSHOLEの出戸学。ほぼ同じタイミングでアルバムを発表したこのふたりは、実は古くから交流があるそうです。この絶好の機会を逃すわけにはいかない! ということで、おふたりに対談していただくことになりました。これまで聴いてきたもの、これまでやってきたこと、音楽に対する熱意や誠意……互いに似ているところや逆に異なっているところを、思う存分語り合っていただきました。

「俺がソロ弾くから、ブルースのスリー・コード弾いてろ」みたいに、シークエンサーとして使われてた(笑)。それに乗せて親父が熱血ソロを弾くみたいな感じだったね。(出戸)


トクマルシューゴ
TOSS

Pヴァイン

Amazon Tower


OGRE YOU ASSHOLE
ハンドルを放す前に

Pヴァイン

Amazon Tower

おふたりが最初に出会ったのはいつ頃なのでしょうか?

トクマルシューゴ(以下、トクマル):僕とミラーとタラ・ジェイン・オニールのツアーが2004、5年にあったと思うんですけど、その時に松本にライヴをしに行ったんですよ。その時に一緒に出ていたのがオウガ・ユー・アスホールで、それが初めてでしたね。めちゃくちゃかっこいいバンドだなと思って、それからの付き合いだからもう10年以上になるのかな。

初めて会った時のお互いの印象はどうでしたか?

出戸学(以下、出戸):ギターをディレイで重ねたり、いろんな意味でギターがすごくうまくて、そういう感じで弾き語りをするというのを初めて観て、それまで弾き語りってフォーク・ギターで歌う感じだと思っていたので、びっくりはしましたね。何をやっているんだ、という感じはありました。

トクマル:東京にも当時いろいろなバンドがいたんですけど、それとはまた違った概念で活動しているバンドがいるなと思って、すごいびっくりした記憶があります。やっていることもめちゃくちゃ面白くて、それこそ「普通じゃないロック・バンド」でした。今のオウガの形とも全然違うんですけど、相当面白かったので東京に帰ったあとにいろんな人に吹聴した覚えがありますね(笑)。

出戸:本当?(笑) 当時の僕らは今と比べて何も考えていなかったんですよ。変なことをしようというか、聴いたことのない感じにしようとは思っていたんだけど、それをどうやってやればいいのかがわからなくて、高い声を出してみたり、変なフレーズや展開を出してみたり、頭じゃなくて肉体的に聴いたことのない感じをやろうとしていた頃だね。

トクマル:まだCDを出してなかった頃だよね。5曲入りのCDをもらった記憶はあるんだけど。その後ってどうなの?

出戸:その後にファースト・アルバムを出したのかな。それは吉本興業の〈R&C〉というレーベルから出たんだけど、小室哲哉のスタジオで録ったんだよね。ファースト・アルバムを録ることになった時、ちょうど小室哲哉が吉本興業に入っていて、なぜか彼のスタジオでレコーディングすることになった。ポップスを録るスタジオだったから、ファースト・アルバムは独特の音なんだよね。変なことをやろうと思っているのに、録り音がポップスっていう、今聴くと余計ねじれたものになっていて(笑)。当時はなんでロックっぽくならないんだ、と思っていたんだけど、今一周回ってから聴くと面白かったりするんだよね。逆に今は録れない音だよね。

おふたりはそれぞれ違うタイプの音楽をやられていると思うのですが、お互いの作品を聴いて刺戟されることはあるのでしょうか?

トクマル:僕はGELLERSというバンドもやっていて、ロック・バンドなんですけれども、そちらの方ではいろいろなバンドのサウンドを研究して、取り入れてみたり真似してみたりしているんですが、オウガのエッセンスを取り入れてみようとしたこともあるんです。いかんせんGELLERSというバンドがとても難しいバンドで、そういうことを一切できないバンドなので(笑)。やろうとしても、一切できなくて、それが歪んだかたちになってGELLERSというバンドになっていくので。そういうことはあったかもしれないですね(笑)。

出戸:僕らはGELLERSとよく対バンしたりしていたから、(バンド・メンバーの)みんなGELLERSは好きだった。トクマル君の新譜も欠かさず聴いていますね。会った頃からずっと。

トクマル:僕も全部聴いていますね。全部マスタリング前段階のものばっかり聴いている気がする(笑)。先に聴いちゃっていますね。

音楽をやろうと思ったきっかけはいつ頃までさかのぼりますか?

トクマル:僕(のきっかけ)はあんまり面白くなさそうなんですけど、出戸君は面白そうだなと思っていて。そもそも育ちがおかしいじゃないですか(笑)。僕は徒歩10分で小学校に通えるような都市部に住んでいたんですね。でも出戸君はたぶん違うんじゃないの? その時点で音楽を知っていたというのはすごく不思議に思っていて。

出戸:まあ親(の影響)だよね。家に楽器がある状態だったから、自然と中学1年生くらいの時にビートルズのコード・ブックを見ながら“イエスタデイ”とか“レット・イット・ビー”をギターで弾くところから始めたね。

トクマル:それまではギターとか弾いてなかった?

出戸:弾いてなかった。(ギターが)あるな、と思っていたくらい。いくつくらいから弾いてた?

トクマル:俺はピアノをやっていて、音楽は元々すごい好きだったんだけど。

出戸:俺もピアノはやってた。

トクマル:ピアノは難しくてやめて、ギターをやりたいとは思っていたんだけど、(自分では)持っていないし家にもなくて。でもコード譜を買ってきてエアーで練習して(笑)、いつか弾いてやるぞと思っていた。14、5歳の時に自分で買ってきて弾いたね。

出戸:エアーはすごいね(笑)。何を最初に弾いてたの?

トクマル:その頃はパンクが大好きで、パンクのコードがわりと簡単だったこともあって弾いていたね。あとはビートルズとかも一通りやってたかな。

出戸:速弾きに目覚めたのはいつなの?

トクマル:目覚めたってわけではなくて(笑)、ギターが大好きでギターの世界を追求しようとするとどうしてもそっちへ行くというか。『ギター・マガジン』を買うと、タブ譜に数字がたくさん書いてあったりするんだよね。曲は知らないんだけどその数字を追うのが楽しくて、「これ、どういう曲なんだろうな」と思ってその曲を買いに行くと「こんな速いんだ!」と知って頑張ってみるという。ギターはそうやって続けていたね。ギターはお父さんに教えてもらったりしたの?

出戸:いやあ、教えてもらうというか、「俺がソロ弾くから、ブルースのスリー・コード弾いてろ」みたいに、シークエンサーとして使われてた(笑)。それに乗せて親父が熱血ソロを弾くみたいな感じだったね。

ライヴをやろうと思ってバンドをやり始めたね。(出戸)

僕は別にライヴをやらなくてもいいし、一緒にいられるならいいやというバンドかな(笑)。(トクマル)

初めて買ったレコードやCDを教えていただけますか?

トクマル:たぶん子ども(向け)の童謡を買ってもらったんだと思いますね。あとはピアノを弾いていたのでピアノのレコードとか。CDが流行りだして、「レコード屋」(という呼び方)があったのに、みんな「CD屋」ってあえて言うようになってきた時に、駅前のCD屋にみんなで行って、当時流行っていたチャゲアスを買ってきたことがありましたね。

出戸:俺は子どもの時に親から買い与えられたものもあるけど、自分のお小遣いで初めて買ったのはビートルズの『ヘルプ!』だったな。白いジャケに4人が立っているアルバム。廉価盤でちょっと安くなっているようなCDだけど。街まで降りて、本屋とCD屋が一緒になっているようなところで買ったね。

自分が音楽をつくる側になって、これはすごいなと思った作品などはありますか?

トクマル:難しいですね。自分はこういうことをやりたかったんだなと思い返せたアルバムはありますね。僕はレス・ポールという人が大好きで、「レスポール」(というモデル)はギターとしてすごく有名なんですけど、レス・ポールという人自体が発明家として面白いんです。その人のアルバムを聴いた時に、これがやりたかったのかもなという発見があったんです。そもそも僕が(初めて)ギターを買った時に、なぜこんな形をしているのかとか、なぜギターは音が出るんだろうとかギターの構造自体に興味をもっていたんですけど、その構造を作った人のひとりであるレス・ポールの音楽がめちゃくちゃ面白くて、編集も凝っていたりしていたので、それは衝撃を受けた1枚かも。しかもある楽器フェアにたまたま来ていたレス・ポールと握手をして、2回くらいすれ違ったことがあって(笑)。その思い出もあって、いまだにすごく尊敬していますね。

出戸:それこそ最近、馬渕(啓)がミュージシャンの方のレス・ポールがいいとなぜか急に言い出したんだよ。偶然だね。じゃあトクマル・シューゴ・モデルのギターは作らないの?

トクマル:作りたい。木から作りたいですよね(笑)。

出戸:俺は何かなあ。ひとりに絞るのは難しいですね。

トクマル:ビートルズのあとに聴いていたのはなんだったの?

出戸:ベックとかニルヴァーナとか90年代のバンドだね。ベックが〈K〉レーベルから出してた流れでUSのインディは聴いていたけど、だから初期はUSインディの感じなのかな。ちゃんとしてない音楽がけっこう好きかも。ジョー・ミークみたいな感じの。〈K〉レーベル周りでも、ちゃんとしていないようでちゃんとしている人たちがいい。ジョー・ミークも演奏としてはちゃんとしているんだけど、どこかネジが外れているし、そういう音楽が好きかな。ひとりには決められないんだけど。

音楽を制作していく上で、技術的な部分や精神的な部分で、お互い似ていると思う点や、逆にここは全然違うという点はありますか?

トクマル:音楽に対する考え方というか、音楽に対する接し方が似ているとは少し思うかも。付き合う上でも楽だし、やっている音楽が全然違っても、互いに普通に接することができるのは、(音楽に対する接し方が似ているから、というのが)あるかも。

出戸:表面的なことで言えば、違うところのほうが多いのかもしれないけどね。

トクマル:なんでライヴをやろうと思ったの?

出戸:ライヴをやろうと思ってバンドをやり始めたね。

トクマル:そっか。初めてライヴをやったのはどこ?

出戸:もうなくなったけどトクマル君ともライヴをやった松本のホット・ラボというバーみたいなところで、高校生の時に(初ライヴを)やったね。

トクマル:文化祭とかじゃないんだ。

出戸:頼まれてギターでは文化祭に出たけど、歌ったのはホット・ラボが初めてかな。

トクマル:元々オリジナル曲をやろうということになっていたの?

出戸:そうそう。GELLERSはライヴをやろうと思っていなかったの?

トクマル:思ってなかったかも。いつも(メンバーで)集まっていて、たまたまみんながギターを買いだして、俺は参加していなかったんだけど、中学生の時に彼らが文化祭に出ると急に言いだして(笑)。文化祭に出るということはライヴをやるんだよ、と僕は言ったんだけど、それもよくわかっていなかったのかもしれない(笑)。ベースもギターもふたりいて、ヴォーカル、ドラムがいるという編成もよくわからないし、なんでも良かったのかもしれない。とにかくみんなで一緒にいたくて、僕も一緒にいたかったから照明として参加してた(笑)。(ライヴには)出てないんだけど、照明を良いところに当てていたね。だからみんなは違うのかもしれないけど、僕は別にライヴをやらなくてもいいし、一緒にいられるならいいやというバンドかな(笑)。グループ? サークル?(笑)

司会:小林拓音(2016年11月12日)

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