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interview with Ogre You Asshole

interview with Ogre You Asshole

何かが起こる前、いや、もう起きている

──オウガ・ユー・アスホール、インタヴュー

野田 努    Nov 11,2016 UP

Ogre You Asshole
ハンドルを放す前に

Pヴァイン

Indie RockKroutrockExperimental

Amazon

 世界に激震が走った……とニュースが言っている。ブリグジットに次いでトランプ勝利という波乱。マスコミや識者の予想もあてにならないという事実も明るみになった。そんな世界で、オウガ・ユー・アスホールを聴いている。
 以下のインタヴューで、新作『ハンドルを放す前に』とは、何かが起こる前の感覚を表していると説明している。起きてしまったときの感覚ではない。起こる前の感覚だと。ぼくはこの話を聞いたとき、彼らに意図はなくても、それは現在の社会/自分たちの生活を反映しているのではないかと、そのときは思った。何かが起きることの手前にいる感覚。
 だが、どうして、なんで彼らは……アルバムには、“かんたんな自由”という曲がある。リバタリアンの台頭、リベラル弱体のいま、充分に深読みできる。「かんたんな自由に/単純な君が/関心もなく ただ立っている/(略)/なんだっていいよ/勘だっていいよ/なんてことになっている/そんな自由が/かんたんな自由が/こんな ピタッと合っている/そうやってここにも/だんだんといきわたり/問題になり出している」

 こうした世の中との関連づけは、バンドが望むところではないことはわかっているが、この音楽が、ただのお楽しみのためにあるとも思いたくはない。なにせ新作は、出戸学の歌がいままで以上に入ってくる。と同時にアルバムでは、これまで試みてきたオウガの実験が、じつに洗練され、開かれ、そして滑らかな音楽へと結晶している。
 誰がどう見たっていまはロックの時代ではないだろう。それをわかったうえで石原洋は自らの拭いがたきロックへの幻想──それはありきたりのロックの美学とは異なる極めて独特なヴィジョンではある──を彼らに托し、バンドはそれを受け入れたわけだが、吐き出し方はドライだった。ゆらゆら帝国よりもずっと乾いていた。とにかく、2011年という年において『homely』は、日本の他の音楽のどれとも違っていたし、それから『100年後』(2012年)があり、そして『ペーペークラフト』(2015年)と、石原洋とのロック探索作業は続いた。
 新作『ハンドルを放す前に』は、石原洋との3部作を終えてからの、最初のセルフ・プロデュース作である。いったい世界はどうなってしまうのだろう。とてもじゃないが“寝つけない”……、そう、“寝つけない”、それがアルバムのはじまりだった。

このアルバムのなかで劇的なことは本当になにも起こっていなくて、ぜんぶがその予兆だけで終わっていくんですよね。

■石原洋さんがいなくなってから最初の作品ということで、逆に気合いが入ったと思うのですが、『ハンドルを放す前に』を聴いていて(石原さんが)いるのかいないのかわからないくらいの印象でした。アルバムはどのようなところから始まったのでしょうか?

出戸:この(前の)三部作はコンセプトありきで作っていたのですが、今回はプロデュースを自分たちでやるかどうかも考えていなくて。どういうコンセプトでやるかということも考えず、僕と馬渕で好き勝手に1曲ずつ作ってお互いに聴かせあうというところからはじめましたね。

■ゴールを決めずに作ったんですね。その、ある種リラックスした雰囲気は音楽にも出ていると思います。

馬淵:好きな音像をどんどん作っていくというのが、レコーディングの前までにしたことですかね。

出戸:ただ、実際にセルフ・プロデュースということが決まったときからリラックスはしていないんですけどね。

馬淵:むしろ石原さんがいるほうが、石原さんがいるってことでリラックスしていたね。

■はははは、そういうことか。

出戸:責任は自分たちに来るし、セルフ・プロデュースだとつまらなくなった、という話になりかねないじゃないですか。そういった意味で僕はいつもより気合いが入っていましたけどね。

■最初にできた曲はどれですか?

出戸:ちゃんと歌詞までできたのは“寝つけない”かな。

■この“寝つけない”って言葉はどこから来たのですか?

出戸:あまりコンセプトがなくて歌詞を書いていて……、最終的には自分なりにこのアルバムは『ハンドルを放す前に』という単語に集約されるとわかったんですけど、その前までは「なんで寝つけないことを俺が書くんだ」と深追いはせず、書きたかったから書いたという感じですね。最後に全部(曲が)できたあとでこういう分析をしてみたというのはありますけどね。

清水:どうでもいいですけど、出戸君はすごく寝つける人なんですよ。

(一同笑)

■ああ、そういう感じですね(笑)。僕はその真逆で寝つきがとても悪いので、自分のことを歌われている気持ちになりました。

出戸:僕はめっちゃ寝るんですよね。

■それは言われなくてもわかります。

(一同笑)

■寝つけない現代人はとても多いと思います。これは風刺なんですか?

出戸:いや、そこは風刺してないですよ。何かがはじまる前に次の未来のこととか先のことを考えていて、いまリラックスできないって感じがあるじゃないですか。その感じがこのアルバム全体にあって、なにかの一歩手前の感じというか、そういうことを歌いたかったんじゃないですかね。

■その“なにか”というのは前向きな“なにか”ですか? それとも後ろ向き“なにか”ですか?

出戸:僕のなかでそれはどっちでもないんですね。何かが起きる前の感じ、ってのがよくて、それがポジティヴでもネガティヴでも起こっちゃったら今回の作品のテーマじゃなくなっているというか。(なにかが)起こるちょっと前の感じ。注射を打ったときより打つ前のほうが打つときよりも怖い(感じ)というか、遠足に行く前の日のほうがワクワクするというか。そういう感じなだけで、それが感情の陰か陽かということはどっちでもいいんですよ。

■はぁー。出戸君の歌詞はすごく独特じゃないですか。久しぶりに振り返って(オウガのアルバムを)聴いてみたのですが、歌詞を書く際のスタンスが基本的にはそんなに変わっていないのかなと思いました。“100年後”とか

出戸:大幅には変わっていないですけど、今回の“頭の体操”とか“移住計画”はいままでと違った書き方だと自分のなかでは思っています。いままでは行間に「クエスチョン・マーク」がつくような幅をもたせて想像力を湧かせるような書き方もあったんですけど、今回はまったく行間がなくて“頭の体操”のことをただただ歌っているというか、それ以上でもなくそれ以下でもない歌詞にしましたね。でもそれをやることによって、なんでそれを歌っているんだという大きい「クエスチョン・マーク」ができるということに気づいて、その2曲に関しては自分のなかでは、いままでとちょっと違った書き方なんです。

取材:野田努(2016年11月11日)

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