「AY」と一致するもの

interview with Jameszoo - ele-king


Jameszoo
Fool

Brainfeeder/ビート

AbstractAvant-garde JazzExperimental

Amazon

 カマシ・ワシントンの大作を筆頭に、サンダーキャットやニーボディ&デイデラスなどカッティング・エッジな現代ジャズを送り出し続けるかたわら、ジュークのDJペイパルをリリースしたり、はたまたジョージ・クリントン御大と契約を交わしたりと、近年の〈Brainfeeder〉の勢いには目を見張るものがある。その怒濤のような快進撃のなか、フライング・ロータスが自信を持って発掘してきたのが、オランダの若き才能・ジェイムスズーことミシェル・ファン・ディンサーである。たしかにそのサウンドを聴けば彼が大いなる可能性を秘めたタレントであることはおのずとわかるのだけど、いざその音楽がどういうものか説明しようとすると、なかなかどうして一筋縄ではいかない。

 ジェイムスズーが昨年リリースしたアルバム『Fool』を初めて聴いたとき、「IDM的な感性のもとでジャズをやる」というのがコンセプトなのかなと思った。けれど何度か再生しているうちに、ジャズから影響を受けたプログレッシヴ・ロックのようにも聴こえてきた。フリー・ジャズそのもののようなトラックがある一方で、ブラジリアン・ジャズから影響を受けたようなトラックもある。変拍子があったり沈黙があったりとアヴァンギャルドな側面が展開される一方で、メロディの部分はときにユーモラスであったりときにメランコリックであったりと、一体どういう文脈に位置づけたらいいのかわからない。その後彼の来日公演を体験する機会があったのだけど、そのあまりに雑食なDJセットにこちらのはてなマークはますます増殖していった。アルバムを出す前はダブステップ――しかも、かなり独特のそれ――をやっていたし、いやはや、ジェイムスズーとは一体何者なのだろう?

 天真爛漫。先に結論を述べてしまうと、この言葉こそジェイムスズーにふさわしい。彼はミュージシャンである前に、ひとりの無邪気な音楽ファンだったのである。そんな彼は現代っ子らしく、「俺にはルーツがないんだ」と言う。それはなぜかと言うと、彼は音楽をはじめるまでは……ここから先は以下をお読みください。

音楽って、人がそのトラックの背景から判断して決めるものじゃなくて、内容でジャンル分けされるべきものだと思う。

小林(●)、野田(■)

あなたのアルバムをベスト30に選出したのは、ビヨンセの作品のように世の中にプロテストする内容であったり、あるいはブレグジットやトランプみたいな暗い世界を反映したようなアルバムが多い中、あなたのアルバムには何か突き抜けた感じがあったからです。すごい知的なんだけれどもファンキーで、あなたがどんな内容のアルバムを作ろうとしたのかがわからないくらい他の作品とは違い、印象に残ったからです。

ジェイムスズー(以下、JZ):ありがとう。俺は音楽の教育を全く受けていなくて、音楽学校に行くことを考えたこともあったんだけど、結局実現せず、きちんとした曲作りの知識がないんだ。でも、フリー・ジャズなんかも好きだし、俺自身も自分なりにレコードを作ってみようと思った。知識はなくても、自分が大好きな音楽をコンピュータで表現してみようと思って作ったのが、このアルバムに収録されているトラックなんだよ。

なぜ『Fool』というタイトルにしたのですか?

JZ:アルバムを作っているプロセスの中で、「フール」な決断をしてしまう自分がいたんだ。自分自身に納得がいかないことが多々あったしね。そういう自分の状態からこのタイトルをとったというわけ(笑)。なりたくはないけど、「バカ」になってしまう自分もいる。そんな自分のポートレイトみたいなタイトルなんだ。それに、「フール」って言葉そのものがおもしろい名前だと思うしね。タイトルに関しては、変に凝ったりはしていない。アルバムもそうだし、タイトルもそうだし、長いタイトルはあまりつけたくないんだ。音楽ってみんなそれぞれに意味のあるものだと思うから、その内容を決めつけるようなタイトルはつけたくないんだよ。

たしかに、曲のタイトルもワンワードで短いものばかりですね。

JZ:タイトルで格好つけたくないんだ。最近の音楽って、内容よりも状況や背景を重視しすぎたものが多いと思う。それでIDMとか呼ばれたりもしてるけど、音楽って、人がそのトラックの背景から判断して決めるものじゃなくて、内容でジャンル分けされるべきものだと思う。

ついでにもうひとつ言葉の質問をすると、なぜジェイムスズー(Jameszoo)という名前にしたのですか?

JZ:特に理由はないよ(笑)。名前を考えているときに、たまたま思いついたのがこの言葉だったんだ。で、じゃあそれでいいやって思って(笑)。

アルバムに収録されたスティーヴ・キューンの曲も、原曲“Pearlie's Swine”のタイトルが“The Zoo”に変えられていますが、それには何か意味があるのでしょうか?

JZ:彼は以前〈Buddah〉っていうレーベルにいたんだけど、そのレーベルが破産して、パブリッシングの都合で、スティーヴ自身がタイトルを“The Zoo”に変えたんだよ。タイトルを変えたのは俺じゃないんだ。

ジェイムスズー(Jameszoo)の「zoo」と繋がってるのかなと思っていました(笑)。

JZ:最高の偶然だよね(笑)。あの曲は、アルバムの中でも俺のお気に入りでもあるし。

俺にはルーツがないんだよ(笑)。おもちゃ屋にいる子どもみたいなんだ。音楽のすべてが魅力的で、ひとつひとつの作品に興奮する。

スティーヴ・キューンとはどういう経緯で出会ったのですか?

JZ:9ヶ月くらいずっと彼とメール交換をしていたんだけど……

通訳:メール交換はそもそもどうやってすることに?

JZ:知り合いを通じて、彼の連絡先を知って、俺から彼にメッセージを送ったんだ。会ってもらうまで長いこと彼を説得しないといけなかったんだけど、9ヶ月経って彼がやっとニューヨークに招待してくれた。で、ニューヨークに着いて、彼から来るように言われたバーに行くと、ジョーイ・バロンとバスター・ウィリアムスもそこに座っていてさ(笑)。スティーヴだけいると思ってたからいきなり3人のレジェンドと一緒に座ることになって緊張したね(笑)。その3人の前で「スティーヴがなぜ自分とコラボするべきなのか」っていうのを説明しなきゃいけなかったんだ。変な雰囲気だったよ(笑)。最初は何ともいえない雰囲気だったけど、シュトックハウゼンに関する話をしはじめると、自分も彼も好きなミュージシャンの話でどんどん盛上がって、「今日自分のセットで“The Zoo”をプレイするから、もしそれを気に入ったらコラボしよう」と彼が言ってきてくれた。それから数日後にニューヨークのスタジオに入って、一緒に曲を作ったんだ。

彼から学んだことはありましたか?

JZ:彼のファンすぎて、学ぶというよりはただただ魅了されていたね(笑)。もっといろいろ学ぶべきだったと思うけど、雰囲気に圧倒されてしまっていたから。

もうひとり、このアルバムにはビッグなアーティストが参加しています。アルトゥール・ヴェロカイとはどのようにして出会ったのでしょう?

JZ:〈Brainfeeder〉の前、俺は〈Kindred Spirits〉っていうレーベルにいたんだけど、そのレーベルをはじめたキース・ヒューズ(Kees Heus)が、アムステルダムのパラディソ(Paradiso)っていうイベントのプロモーター兼オーガナイザーだったんだ。で、彼がアルトゥールをそのイベントに招待したんだけど、キースが俺にメールしてきて、「アルトゥールが来ることになったから、彼に自分の音源を送ってみろよ。もしかしたら、彼が来たときに一緒にスタジオに入って何か作れるかもしれないぞ」と言ってきた。それでアルトゥールのFacebookに音源を送ったら、彼から「いいよ。コラボしよう」という返事が来て、彼がオランダに来たときに3時間くらいジャムをして、そこから俺が一部を取って曲を作ったんだ。アルトゥールはいままで自分が出会った中でもいちばんと言ってもいいくらい良い人だったよ。アルトゥールとスタジオに入っていたときは、アルバムを作ろうなんて考えもなかった。でも『Fool』を作りはじめたとき、あのセッションを使った作品を絶対入れようと思ったんだ。

普段からブラジリアン・ミュージックは聴くんですか?

JZ:そうだね。エルメート・パスコアール、ペドロ・サントス、カエターノ・ヴェローゾ、ティン・マイアも好きだし、好きなミュージシャンはたくさんいるよ。

あなたの作品からは、あなたが一体どんな音楽を聴いて影響されてきたのかがわからないくらい、すごくたくさんの音楽の要素が聴き取れますが、実際はどんな音楽を聴いて影響されてきたのか教えて下さい。たとえば、この『Fool』には、ジャズの要素もあり、エレクトリックの要素もあり、ソフト・マシーンのような音楽性も感じられます。

JZ:そうそう。ロバート・ワイアットにこのレコードに参加してほしかったんだけど、実現しなかったんだ(笑)。ロバートから、「君の音楽を気に入っている」っていうメッセージはもらったよ。でも、彼はもう音楽制作をやっていないから、コラボできなかったんだ。俺は、ミュージシャンである以前に音楽ファンなんだよね。だから、家にいるときはつねにeBayやDiscogsをチェックしているし、すべての音楽サイトをチェックして新しい音楽を追い続けている。そのすべてから影響を受けているんだ。エレクトロニック・ミュージックというジャンルひとつでも、俺はミュジーク・コンクレートやシュトックハウゼンからディムライトやドリアン・コンセプトまで、昔のエレクトロニック・ミュージックから現代のそれに至るまで、そのジャンルのすべてを知りたいと思うし、知ろうとするんだ。ジャズも同じ。オーネット・コールマンからペーター・ブロッツマンに至るまで、できるだけたくさんのミュージシャンの作品を聴いて学ぶようにしているよ。

先日あなたのDJを聴いていて、ジャズやヒップホップはもちろんなのだけれども、『AKIRA』のサントラだったりスティーヴ・ライヒだったり、あるいはエイフェックス・ツインからバトルズまでがかかって、あなたの音楽のルーツがわからないところがすごくおもしろかったんですが、いまの話を聞いてあなたが深い音楽ファンであることが伝わってきました。

JZ:俺にはルーツがないんだよ(笑)。おもちゃ屋にいる子どもみたいなんだ。音楽のすべてが魅力的で、ひとつひとつの作品に興奮する。DJをするときは、サウンドシステムをチェックして、それに合ったセットをプレイするようにしているんだ。初めて日本でプレイしてみて、日本のオーディエンスはヨーロッパのオーディエンスと違うなと思った。ヨーロッパってダンスのムードを作り出すことがすべてだけど、日本のオーディンスは音を聴き込もうとするんだよね。それに合わせたセットを考えるのは、自分にとって新しい経験だったよ。俺も音楽を聴きたい派だから、嬉しかったね。

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音楽を作りはじめる前、俺はプロのテコンドー選手で、それで生活していたんだ。

あなたはいまもデンボスに暮らしているんですよね?

JZ:そう。

あまりシーンと関係ない場所で暮らしているという意味で、日本人と近い部分があるのかもしれませんね。

JZ:たしかに。

いまでも故郷に住み続けている理由とは?

JZ:友だちや家族がいるからさ。

音楽活動のためにアムステルダムに引っ越そうと思ったことはありませんか?

JZ:アムステルダムからもたくさんオファーが来たし、友だちもたくさんいるけど、俺にとって、アムステルダムという場所は、「作品の内容よりも背景を重視した場所」なんだよね。音楽を作るのに、たくさんのものや特別な環境は必要ない。俺に必要なのは、家と友だちだけなんだ。

アムステルダムの〈Kindred Spirits〉から作品をリリースするようになった経緯を教えてもらえますか?

JZ:音楽を作りはじめる前、俺はプロのテコンドー選手で、それで生活していたんだ。

一同:へえええ!

JZ:その経験で歯を折ったり膝を痛めたり、身体がボロボロになって、もうやっていけないと思った。で、また学校に戻ろうと思ったんだ。でも、実際戻ってみると、自分には合ってなかった。で、学校に行かないとしたら何ができるだろうと考えていたんだけど、隣の席のクラスメイトが音楽を作っていたから、自分もそれをやろうと思ったんだ。テコンドーをやめてからは酒が飲めるようになって、地元のバーに行ったんだけど、『Beat Dimensions Vol.1』っていうコンピレイションを作ったシナマン(Cinnaman)というDJが、ハドソン・モホークやディムライト、サミヤムをプレイしていたんだ。それを聴いて、自分もそれを作りたいと思った。で、アップルストアに行ってパソコンを買って、そこから4曲を作って、それを友だちに送ったんだ。そしたら彼が〈Kindred Spirits〉に送って、リリースが決まった。音楽を作りはじめて半年で、音楽がリリースされることになったんだ(笑)。

それはあなたが何歳のとき?

JZ:たぶん19か20歳だったと思う。

それ以前は音楽は作ってなかったんですよね?

JZ:作ってなかったね。

しかし、なぜテコンドーの選手になろうと?(笑)

JZ:父親がテコンドーのプロだったからだよ。俺は若すぎてオリンピックには出られなかったけど、オランダの国内では優勝したこともあるし、12ヶ国が参加する大会でも賞をとったことがある。世界選手権では2位になったし、(『Fool』は『ele-king』の年間ベスト30で9位だったので)ミュージシャンとしてよりもファイターとしての方が上なんだ(笑)。

間違いなく、いまの音楽シーンの中でいちばん強い男ですね(笑)。

JZ:だね(笑)。

その後〈Rwina〉からダブステップを取り入れたような作品を出していますが、それは、音楽ファンとしてダブステップが好きでインスピレイションを受けていたからそのような音楽を作ったのですか?

JZ:そう。〈Kindred Spirits〉からのリリースの後、ショウをやるようになったからDJをはじめたんだけど、そこからクラブに行く機会が増えて、クラブ・ミュージックにハマっていったんだ。デジタル・ミスティックス、マーラ、コーキ……そのへんのアーティストを聴くようになったね。だから、そういった音楽の自分ヴァージョンを作りたくなったんだ。そうしてEP「Faaveelaa」ができあがったんだ。

そしてその後、フライング・ロータスと知り合うんですよね?

JZ:そうだよ。その前に、彼とはニューヨークのレッドブル・ミュージック・アカデミーで会ったことはあったけどね。でも、そのときはアルバムを作るつもりもなかったし、あえて彼に自分の音楽を聴かせたわけではなかった。ただスタジオで音を作って楽しんでいるところに、たまたま彼が入ってきて、俺がそのときに作っていた音を聴いたんだ。〈Brainfeeder〉と正式な契約の話をしはじめたのはそのずっと後なんだ。アルバムを作りたいと思ってすべてを完成させたときに、初めてそれを〈Brainfeeder〉に送ったんだ。

彼は初めてあなたの音楽を聴いてどういう反応でした?

JZ:レッドブルのときはすごくエンジョイしてたみたいだよ。音源を送ったときは、俺はオランダにいたからわからない。でも聞くところによると、彼のマネージャーがすごく気に入っていたらしい。ふたりで一緒に聴いて、リリースを決めたらしいよ。

俺はケイジ・ハイノ(灰野敬二)の大ファンなんだけど、彼はいつも、どう演奏してほしいかを楽器に尋ねているらしい(笑)。俺はその考え方が好きなんだよね。


Jameszoo
Fool

Brainfeeder/ビート

AbstractAvant-garde JazzExperimental

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あなたはたくさんの音楽を聴いているので、今回のアルバムに反映されているのはその中のほんの一部だと思います。次に出す作品はまったく違うものになる可能性もあるのでしょうか?

JZ:あるね。オランダでちょっとしたフェスをスタートしたんだけど、スピーカー・ミュージックやミュジーク・コンクレートのフェスで、ピエール・ブーレーズ、ピエール・シェフェール、ピエール・アンリ、シュトックハウゼン、クセナキスとか、最近はそういった音楽にインスパイアされているんだ。そのフェスをきっかけに友だちと一緒にデンボスでスタジオに協力することになって、そのスタジオで新しいアルバムを制作しようと考えているよ。

そのアルバムも〈Brainfeeder〉から?

JZ:そう。そのスタジオは自分のものではないけれど、スタジオ・セッションを仕切っているんだ。(そう言って、スタジオにある50年代の機材の写真を見せてくれる。)

その当時の機材でないと作れない音があるとは思うのですが、それに拘る理由とは?

JZ:やはり、その時代の機材でしか作れない音があるんだよ。ギアって、ひとつひとつ作れる音が違うと思うし、そういった機材を使うことは、俺にとってはチャレンジなんだ。俺はケイジ・ハイノ(灰野敬二)の大ファンなんだけど、彼はいつも、どう演奏してほしいかを楽器に尋ねているらしい(笑)。俺はその考え方が好きなんだよね。俺自身も楽器や機材の使い方を勉強したわけではないし、自分で探り出すしかないからね。

シュトックハウゼンやブーレーズやクセナキスのような音楽は、クラシックの延長にあるもので、いうなれば理論的な、すごく理屈っぽい音楽なんですけど、そういう意味でいうと、あなたはもっと感覚というか、直感的に音楽を作っていますよね? そんなあなたにとって、50年代のああいった現代音楽はどこが魅力ですか?

JZ:サウンド・デザインがいまだに時代を感じさせないところ。いまでこそみんながコンピュータを使っているけど、当時はテープやそういうものを使っていたわけで、知識がある人も誰もいなかったわけだよね。そこが魅力的なんだ。みんな勉強不足だったわけではなくて、新しいサウンドだったから知識の持ちようがなかった。ブライアン・イーノも、何か新しいものを作る場合、そこにクオリティは存在しないと言っていたしね。

ブライアン・イーノは好きですか?

JZ:大好きだよ。デヴィッド・バーンとの作品とか素晴らしいと思う。

このアルバムには、音が突然止まって間が生まれる瞬間のある曲がいくつかあります。そういった間や沈黙は意識して作っているんですか?

JZ:そうだね。俺はダイナミックな作品が好きだから。音楽制作において、いちばんパワフルな手法は静寂だと思うんだ。たとえばファンクのブレイクも、奏者がそれをどうプレイするかではなくて、どうストップするかがすべて。ときには、どういう音を鳴らすかではなくて、どこで音を鳴らさないかが大切なんだよ。ジェイムス・ブレイクが大好きなんだけど、彼の作品も複雑すぎない。サウンドは少ないのにいい曲を作り出しているところがすごいと思うね。

テコンドー、スポーツと音楽の共通点はあると思いますか? 私も柔道をやっていたのですが、リズムの外し方って大事ですよね? その辺で共通するのかなと思って。

JZ:そうそう。タイミング。相手のタイミングを見計らいながら動くというところ。それって即興みたいなものだと俺は思うんだ。セットされたリズムはないわけだしさ。

だいぶあなたの音楽の秘密がわかってきました(笑)。

JZ:だね(笑)。

テコンドーをやっていた頃も、音楽は聴いていたんですよね?

JZ:いや、聴いてなかったよ。

ということは、短期間ですごい量の音楽を聴いてきているわけですね?

JZ:そうなんだ。本当にハマったからね。まるで中毒さ。家族は誰も音楽ファンじゃなかったし、周りに音楽はなかったからね。

音楽にハマりだしたとき、お母さんから何か言われませんでした?

JZ:最初は不安がっていたけど、シュトックハウゼンなんかに関する音楽理論があって、それを俺が勉強しているのを知って、息子がいかに真剣かがわかったらしい。パフォーマンスをするときはジャズ・バンドとやるんだけど、それを見たとき、本気なんだなと感じたみたいだね。

パフォーマンス、DJ、音楽制作、いろいろと活動されていますが、どの作業がいちばん好きですか?

JZ:すべてだね。どれが欠けてもダメさ。どれかひとつだけをやるんじゃなくて、すべてのバランスをエンジョイしているよ。

テコンドーでは怪我などがあったと思いますが、音楽活動をはじめて何かマイナスな面はありましたか?

JZ:自己中心的にならなければいけないときがあることかな。そんな自分の一面とは向き合いたくないけど、向き合わなければいけないし、自己中になっている自分に気づかされる。ライヴがうまくいかないとか、そういうのはあまり気にしないんだ。ミスは犯して当然だし、そこから学ぶしね。でも、我が強くなるのはあまり心地よくはない。テコンドーでは身体を痛めつけていたけど、音楽制作はマインドを痛めつけている感じかな。

アルバムが出てからしばらく経ちますが、これからのご予定は?

JZ:2017年の春にEPをリリースする予定。内容はもっとエレクトロニックだよ。で、そのあと次のアルバム作りに集中するつもり。今度もまたさまざまな音楽が詰まった内容になるだろうね。あと、『Fool』のアートワークを手がけてくれたペインターとのコラボのプロジェクトも計画しているんだ。

もし次の作品にリミックスを入れるとすれば、誰にリミックスを頼みたいですか?

JZ:ペーター・ブロッツマン。またはケイジ・ハイノ(灰野敬二)、メルツバウ。

ありがとうございました!

JZ:こちらこそありがとう!

Children Of Alice - ele-king

 サイケデリックで、メロディアスで、実験的でもあったバーミンガムのロック・バンド、ブロードキャスト。そのヴォーカリストであったトリッシュ・キーナンの逝去から、明日で丸6年が経つ。このタイミングで、彼女のかつての相方であったジェイムス・カーギルが新しいプロジェクトを始動、デビュー・アルバムをリリースすることがアナウンスされた。
 新しいバンドの名は「チルドレン・オブ・アリス」で、トリッシュ・キーナンが好んだ小説『不思議の国のアリス』およびジョナサン・ミラーによる同名の映画作品から採られており、彼女へのオマージュとなっている。メンバーはジェイムス・カーギルの他に、同じく元ブロードキャストのロジ・スティーヴンスと、ブロードキャストのラスト・アルバムに参加していたデザイナーのザ・フォーカス・グループことジュリアン・ハウス。
 セルフ・タイトルのアルバムは2月24日にリリースされる。

artist: Children Of Alice
title: Children Of Alice
label: Warp
release date: 2017/02/24

[Tracklist]
01. The Harbinger Of Spring
02. Rite Of The Maypole — An Unruly Process
03. Invocation Of A Midsummer Reverie
04. The Liminal Space

https://warp.net/releases/children-of-alice-children-of-alice/

宇多田ヒカル × PUNPEE - ele-king

 あれはもう6年前のことになるのか……。3. 11直後に放送されたDOMMUNEで、PUNPEEが宇多田ヒカルを回したのを覚えているリスナーも多いだろう。Bボーイたちの間に宇多田ヒカルの名を広めたのはPUNPEEである、と言っても過言ではない。
 そんなPUNPEEをリミキサーに起用するのだから、宇多田もまたひとりのディープな音楽ファンなのだ。海外では、すでに名声を獲得したビッグ・アーティストがおもしろいことをやっている若手をフックアップしていく文化が根づいているが、昨年のKOHHの起用からもうかがえるように、いま宇多田は日本でもそういう流れをしっかり作っていこうとしているのではないだろうか。
 配信されるやいなや全米iTunesで2位にランクインした「光 –Ray Of Hope MIX–」(REMIXED BY PUNPEE)。要チェックです。

宇多田ヒカル 配信リリース
「光 –Ray Of Hope MIX–」(REMIXED BY PUNPEE)
全米iTunesで日本人アーティスト最高位となる2位にランクインの快挙!!
日本を含む9ヶ国で1位獲得
ほか26ヶ国・地域でベスト100入り

 昨年発売したアルバム『Fantôme』のセールスも好調な宇多田ヒカル。2017年第1弾のリリースは1月12日(木)発売のゲームソフト『キングダム ハーツ HD2.8 ファイナル チャプター プロローグ』のテーマソングとなっている「光 –Ray Of Hope MIX–」(REMIXED BY PUNPEE)を配信! この楽曲はゲームソフト『KINGDOM HEARTS』のテーマソング「光」を、大の宇多田ヒカル・ファンでもあり、様々なアーティストのプロデュースを手がけるPUNPEEがREMIX。
 昨年末からゲームのトレーラーや、宇多田ヒカルのネット・イベント「30代はほどほど。」で披露されるやいなや、リリースの要望が殺到! 満を持して本日(1月11日)より全世界で配信販売がスタートされ、たちまち全世界のチャートを席捲、日本をはじめ全9ヶ国で1位を獲得のほか、26ヶ国・地域でベスト100入り、さらに全米のiTunes総合ページでは日本人アーティスト最高位となる2位にランクインの快挙! アルバム『Fantôme』の全米iTunes最高位3位を越える勢いで売れています!

 いよいよゲームソフト『キングダム ハーツ HD2.8 ファイナル チャプター プロローグ』も1月12日に発売! ゲームもテーマソングとともに世界を駆け巡ります! 引き続きご注目ください!

▼PUNPEE(パンピー)
'06年Libra主催【UMB】東京代表。トラックメイカーとしてもRhymester、般若、Seeda、TOWA TEI、tofubeats、後藤正文等、Hip Hopアーティストを中心にトラック、REMIXを提供。
2009年Akai主催によるサンプラー・バトル【MPC Gold Fingaz Kitchen】優勝など、良い言い方だと幅広く活躍中、悪い言い方だと何だかよくわからなく活動中。
2009年、自身のグループPSGでの1stアルバム『David』、ソロとしてもMIX CD『Mixxed business』や、2012年には作品集MIX『Movie On The Sunday Anthology』を発表。
その他にもRedbullのTVCM、TBS系「水曜日のダウンタウン」のOPほか、断れない性格ゆえに色々活動(中)。 P

PUNPEE オフィシャルサイト
https://www.summit2011.net/punpee/


▼『キングダム ハーツ HD2.8 ファイナル チャプター プロローグ』について
『キングダム ハーツ HD2.8 ファイナル チャプター プロローグ』は、
「キングダム ハーツIII」へ繋がる以下の3作品を収録したスペシャル・パッケージです。

① 完全新作のプレイアブル作品
「キングダム ハーツ0.2 バース バイ スリープ -フラグメンタリー パッセージ-」
② 新規HD映像作品
「キングダム ハーツχ バック カバー」
③ HDリマスター作品
「キングダム ハーツ ドリーム ドロップ ディスタンスHD」
キングダム ハーツ シリーズのいまだ語られていない物語を、プレイステーション4でお楽しみいただけます。

2017年1月12日発売 

『キングダム ハーツ HD2.8 ファイナル チャプター プロローグ』OFFICIAL HP
https://www.square-enix.co.jp/kingdom/khhd_fcp/

『キングダム ハーツ HD2.8 ファイナル チャプター プロローグ』最新トレーラー
https://youtu.be/J3SHrNEtL1k

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配信リリース

「光 –Ray Of Hope MIX–」(REMIXED BY PUNPEE)
ゲームソフト『キングダム ハーツ HD2.8 ファイナル チャプター プロローグ』テーマソング
配信日:2017年1月11日
収録内容:
1:「光 –Ray Of Hope MIX–」
2:「Simple And Clean –Ray Of Hope MIX–」
3:「光 -P’s CLUB MIX-」
4:「Simple And Clean -P’s CLUB MIX-」

※iTunes
https://po.st/it_utada_hikarimix

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NEW ALBUM『Fantôme』
2016年9月28日(水)発売
品番:TYCT-60101 (SHM-CD)
税抜価格:3,000円

01. 道 (サントリー天然水CMソング)
02. 俺の彼女
03. 花束を君に(NHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」主題歌)
04. 二時間だけのバカンス featuring 椎名林檎 (レコチョクTVCM)
05. 人魚 (「大エルミタージュ美術館展 オールドマスター 西洋絵画の巨匠たち」テーマソング)
06. ともだち with 小袋成彬
07. 真夏の通り雨  (日本テレビ「NEWS ZERO」テーマ曲)
08. 荒野の狼
09. 忘却 featuring KOHH
10. 人生最高の日
11. 桜流し(「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」テーマソング)

▼iTunes『Fantôme』DLページ
https://po.st/itfantome
▼レコチョク「宇多田ヒカルスペシャルページ」
https://po.st/recouhsp
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【宇多田ヒカル オフィシャルサイト】
www.utadahikaru.jp
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【お問い合わせ】
ユニバーサルミュージック合同会社/Virgin Music
TEL:03-6406-3045 FAX:03-6406-3130
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Arto Lindsay - ele-king

 ノーウェイヴの実験性とブラジル音楽の官能性を繋ぐことができる唯一無二のアーティスト、アート・リンゼイ。彼が卓越した音楽家であることはすでに知られているが、しかしその本質がどこにあるのかを見極めるのは非常に難しい。たとえば彼はいまはなき昔の『ele-king』でドラムンベースの偉大さについて語ったり、アウトキャストやウータン・クランに熱中していることを告白したりする一方で、暴力温泉芸者やメルツバウ、ボアダムスを褒め称えてもいる。「僕の見方だと、ノイズもポップなんだ。一般的にはそうは考えられてないけど。同じものを違った面から捉えたものなんだ」。そう言って彼は自身の作品でノイズとボサノヴァを両立させてみせるのである。
 『別冊ele-king』第5号は、そんなアート・リンゼイの全景を俯瞰する。
 あるときはノーウェイヴの尖鋭として、あるときはギターの弾けないギタリストとして、あるときはフェイク・ジャズのパフォーマーとして、あるときはアヴァン・ポップの職人として、あるときはブラジル音楽のプロデューサーとして、これまでじつに多様な音楽を世に送り出してきたアート・リンゼイ。その幼少期から現在までを、そしてDNAから最新ソロ・アルバム『ケアフル・マダム』までをあますところなく語り、みずからその多面性を振り返った最新ロング・インタヴューも興味深いのだけれど、それ以上にカエターノ・ヴェローゾとの対談がすさまじい。レヴィ=ストロースからゴダールまで、人種差別から脱構築まで、とてもミュージシャン同士の会話とは思えないほど人文学的な単語が飛び交っており、そのさまはまるで学者同士の対談のようだ。もちろん音楽の話題も多岐にわたっていて、ジェイムス・ブレイクからディアンジェロまでもが次々と俎上に載せられていく。
 いったいアート・リンゼイとは何者なのか? ノーウェイヴ世代最高のこの知性の本質を、ぜひあなた自身の目で確認してみてほしい。

別冊ele-king 第5号 アート・リンゼイ――実験と官能の使徒
contents


【LONG INTERVIEW】

●アート・リンゼイ、新作『ケアフル・マダム』とヒストリーを語る
Part 1:ニューヨーク前史から90 年代へ(松村正人/高橋龍)
Part 2:ソロ活動期(中原仁)
Part 3:付言と断片もしくは解題(松村正人/高橋龍)

【CROSS REVIEW】
●『ケアフル・マダム』クロスレヴュー(高見一樹、吉本秀純、松林弘樹)

【INTERVIEW】
●メルヴィン・ギブス「音の干渉主義者の名参謀」
●イクエ・モリ「いつでも、自分にすごく近い音楽をやってきた」
●菊地成孔「ジョイフルなのにエレガント」
●今福龍太「ブラジルから広がるアメリカの地平」
●オノ セイゲン「誰も聴いたことのない音楽をつくるとなったとき
 最初にコラボしたのがアートだった」
●三宅純「彼の魅力は自己矛盾を抱え込みそれを隠さないところです」

【COMMENT】
●大友良英:アート・リンゼイのギターを語る
●ドローイング、コラージュ、テキスト:やくしまるえつこ

【DIALOGUE】
●中原昌也×湯浅学「ノーウェイヴ放談」

【CRITIQUE, COLUMN, ESSAY】
●畠中実「初期アート・リンゼイにおける特異性」
●吉田ヨウヘイ「フェイクジャズは、その後本当のジャズになった」
●佐々木敦「歌えるか歌えないのか、弾けないのか弾かないのか、
 そんなことはどっちでもいいじゃないか」
●吉田雅史「イニシャルAL の裂け目たち」
●恩田晃「都市の変調」
●ケペル木村「アートをアートたらしめるもの」
●江利川侑介「ブラジルの混淆」
●ケペル木村「ディスクガイド アート・リンゼイから聞こえるブラジル音楽」
●松山晋也「表層の官能」

【SPECIAL】
●アート・リンゼイ「トロピカリスタたち」
●特別対談:
 アート・リンゼイ×カエターノ・ヴェローゾ(松村正人/宮ヶ迫ナンシー理沙)

【DISCOGRAPHY】
●アート・リンゼイ セレクテッド・ディスク・ガイド


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別冊ele-king 第5号
アート・リンゼイ――実験と官能の使徒
松村正人(編)
2017/1/7 Release
本体 1,850円+税
ISBN:978-4-907276-73-7
https://www.amazon.co.jp/dp/4907276737

Brian Eno - ele-king

小林拓音

ゆく河のながれは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消え、かつむすびて、久しくとどまりたるためしなし。世の中にある人と栖(すみか)と、またかくのごとし。鴨長明『方丈記』浅見和彦校訂

 あまりにタイトル数が多いので数え方が難しいが、本人単独名義としては19作目ということになるのだろうか。このたびリリースされたブライアン・イーノの最新作『Reflection』は、『Discreet Music』(1975年)から開始された試みの最新の成果であり、『Thursday Afternoon』(1985年)や『Neroli』(1993年)、そして『Lux』(2012年)の系譜に連なる作品である。それはすなわちアンビエントであり、「Thinking Music」であり、「ジェネラティヴ(自動生成的)」な音楽である。昨年の『The Ship』でそれまでのスタイルとは異なる方向性を模索し、果敢に自身のディスコグラフィに抗ってみせたイーノだが、そのような実験的なチャレンジを経て彼はいま、素朴に「原点」をリフレクト=回顧したくなったのだろうか。『Reflection』は多くのリスナーが彼に求めているだろう王道の、じつにイーノらしい長尺アンビエント作品に仕上がっている。
 とはいえかつてスクラッチ・オーケストラやロキシー・ミュージックに参加していた彼の「原点」がどこにあるのかというのは難しい問題で、本人もライナーノーツにおいて1965年にアート・スクールで制作した作品のことを回想しているが、本作に『Reflection(反射=反映=回顧=熟考)』というタイトルが冠せられているのは、そのようにこの作品がイーノ自らに過去を振り返らせ、自身と対話する機会を与えるものだからである、とひとまずは考えることができる。つまり本作のテーマはさしあたりパーソナルなものであり、その点においても、タイタニック号の沈没と第一次世界大戦という出来事を現代の世界情勢へと接続しようと試みた前作『The Ship』とは対照的な作品となっている。
 本作ではイーノらしいベルのような電子音が優しいメロディを紡ぎ出し、それがときおり挿入される低音や風のような電子音とあいまって穏やかな空間を創出している。音の質感は“The Ship”の冒頭部分に似ているが、『The Ship』のような音声の実験やノイジーな展開が繰り広げられることはない。CD盤『Reflection』には全1曲54分のトラックが収められており、その形式は『Thursday Afternoon』や『Neroli』と同じだが、さすがに当時とはテクノロジーの水準が異なっており、テクスチュアは今日的な感触を与える。アナログ盤『Reflection』は四つのパートに分かれており、その形式は『Lux』に似ているが、本作に『Lux』のような明るさはない。このように『Reflection』はイーノ節全開の王道アンビエント作品ではあるものの、かつての彼の諸作の二番煎じというわけではないのである。

 この作品が興味深いのは、それがiOS/Apple TV対応のアプリとしてもリリースされているところだ。イーノはこれまでも『Bloom』や『Trope』といったアプリをピーター・チルヴァースとともに開発しているが、本人名義のスタジオ・アルバムと連動した形でアプリを発表するのは今回が初めてである。なるほど、たしかにどれほど一回性を追求して作品を制作しようとも、それがCDやヴァイナルという形で公開される限り、音はデータとして固定されてしまい、彼の求めるジェネラティヴな音楽が真の姿を現すことはない。その問題を解決するために彼は今回、作品それ自体をアプリ化することに踏み切ったのだろう。
 イーノは本作を制作するにあたり、素材の選択、規則の設定、試聴という三つのプロセスを経由したことを明らかにしている。まずは音の素材やモードを選定し、次にそれらが自動的に結合しさまざまなヴァリエイションが生成されていくアルゴリズムを組んで、その後それを実際にプレイし聴き込んでいく。そしてその試聴の体験を第一・第二の段階までフィードバックさせ、改めて素材やアルゴリズムに調整を加える。気の遠くなるような作業だが、アプリ版『Reflection』にはその成果がリフレクト=反映されており、1日の時間帯や1年の時期に応じて異なるムードが生成されるよう綿密にルールが設計されている。
 ということは、CD盤『Reflection』は、無数に生成される本来の『Reflection』から任意のパターンを切り取った、ある種のサンプルのようなものなのだろうか? どうやらことはそれほど単純ではなく、イーノ本人はアルバムとアプリがもたらす聴取体験は別物だと考えているようだ。つまり同じ『Reflection』という名のもとに、既存のアルバム概念を踏襲したフィジカル盤と、無限に音を生成していくソフトウェアのふたつが共存しているということになる。では、なぜそれらに同じタイトルが冠せられているのか? 本作の核心は、このふたつのヴァージョンの並存にこそある。

 アプリ版『Reflection』では、起動するたびに異なる音の組み合わせが発生し、二度と同じ展開が訪れることはない。他方CD盤『Reflection』では、プレイするたびに何度も同じ展開が訪れる。しかし、では「同じ」とは一体どういうことだろう?
 ミュージック・ラヴァーなら一度は経験したことがあるはずだ、同じであるはずの音源が同じようには聴こえない、聴こえてくれないという事態を。あなたはある曲を再生し、享受し、感動してもう一度再生ボタンを押す。けれど、ついたったいま体験したばかりの感動がまったく同じように生起することはない。不安に駆られたあなたはもう一度再生ボタンを押すが、そのときに訪れるのは一度目に再生したときとも二度目に再生したときとも異なる感動である。あなたは不思議に思い、改めて翌日また同じ曲を再生してみる。同じ部屋、同じ再生装置、同じ音源であるはずなのに、やはり昨日と同じようには聴こえてくれない――
 当たり前の話ではあるが、聴き手は生きている。それはつまり、リスナーは決して時間の外部へと逃れることなどできないということだ。いまのあなたは10分前のあなたとは違う。そのことに自覚的であろうがなかろうが、あなたは10分という時間が過ぎ去った後の世界を生きている。その10分の間に、あなたの感情や気分や体調は変化している。だから今日のあなたは昨日のあなたではないし、明日のあなたも今日のあなたではない。

 ふたつの『Reflection』がリフレクトしているのは、音の送り手であるイーノと音の受け手であるあなたというふたりの存在だ。絶えず変化し続け、二度と「同じ」状態を発生させることのないアプリ版『Reflection』は、ブライアン・イーノというアーティストが長年追求してきたジェネラティヴな試みを、現時点でもっとも適切にリフレクト=反映する作品である。それと連動しながら、しかしそれとは異なりつねに「同じ」状態を発生させるCD盤『Reflection』は、あなたというリスナーが刻一刻と変化し続けている事実をリフレクト=反射する。CDに刻印されたデータがどれほど「同じ」であろうとも、聴取はつねに一回的である。それは、あなたというリスナーもまた「同じ」主体でありながらつねに変化し続けているからだ。遷移的なアプリ版と不変的なフィジカル盤とをセットでリリースすることによってイーノは、まさにそのような聴取の一回性を、ひいてはあなたという存在の一回性を告げ知らせようとしているのである。『Reflection』は、音楽がはかないということの、そしてそれを聴くあなた自身もまたはかないということのリフレクションなのである。
 イーノは本作を制作する上で、「流れる川のほとりに座っている時」を念頭に置いている。曰く、「そこにあるのは同じ川だが、流れる水は常に変わり続けている」。日本のリスナーはすでにこの着想になじみがあるはずだ。「ゆく河のながれは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消え、かつむすびて、久しくとどまりたるためしなし」。このあまりに有名な書き出しによって導かれるのは、震災や火災、遷都や飢饉などのルポルタージュであった。かつて鴨長明は過酷な現実を目の当たりにし、情勢の不安定さを「はかなさ」として抽出してみせたのである。そのことを思い返すとき、イーノが悲惨な世界に向き合った『The Ship』というヘヴィな作品の後に、穏やかで二重にはかないこの『Reflection』を世に問うたことの意味が見えてくるだろう。それは、彼による新年のメッセージを読んだ者ならもう気づいていることである。
 まずは落ち着こう、と。そしてリフレクト=熟考することからはじめよう、と。いや、世界にたったひとりのかけがえのないあなたはもう、すでにリフレクト=熟考しはじめているはずだ、と。

小林拓音

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野田努

私は演奏することよりプランを作ることのほうが好きだったため、いったん機械を作動したら、ほとんどあるいはまったく私の側からの介在なしに音楽を作り出しうるような状態やシステムに興味が惹かれていた。1975年『ディスクリート・ミュージック』イーノ自身によるライナー

私は聴くことができて、そして無視することもできる曲を作ろうとしていた。1975年 前掲同

 

バイヤールはこの曲のあるところでは記譜されているテンポの約半分で演奏している。そして私は彼の判断の素晴らしい賢明さに敬意を表して、もっと遅いテンポでやった。1975年 前掲同

ある環境におけるバックグラウンドとして特別に考案された音楽のコンセプトは、1950年代、Muzak社によって提唱された。1978年『ミュージック・フォー・エアポーツ』イーノ自身によるライナー

 あらたまって書くのも野暮な話だが、ブライアン・イーノの先見の明の非凡さに疑いの余地はない。彼がアンビエント理論を打ち立ててから40年後の未来には、Muzak社のバックグラウンド・ミュージックのテンポを遅らせた反復=ヴェイパーウェイヴまで含まれることになる。それはしかしデジタル的退廃で、「思考のための空間」を導くものかどうかは怪しいところである。
 『リフレクションズ』は、感触で言えばここ最近の彼のアンビエント・ミュージックそのもので、コンセプトも、40年前に彼がジャケットの裏面にしたためたそれから逸れるものではない。つまり、「いったん機械を作動したら、ほとんどあるいはまったく私の側からの介在なしに音楽を作り出しうる」ことの最新型だ。ことにアプリでは,その都度その都度自動生成される曲が流れる。そのアンビエンスはバッテリーがもつ限り、終わりがない。このようにイーノは忌々しいスマホ時代に対応しているわけだが、ぼくのまわりにはスマホを所有しないイーノ・ファンもいる。

 『ディスクリート・ミュージック』をはじめとする初期の名作には、牧歌的と言ってもいいほどの楽天性があった。イーノは自らが影響を受けたゴスペル音楽のことを“楽天主義のメッセージ”と形容しているが、自分の体験から言っても教会でゴスペルを聴くということには、とにかくなんだかよくわからないけど良いことあるよという、信仰心のない人間をも前向きにさせる力がある。そこまで際だったものではないにせよ、1978年の定義に基づけばアンビエントとは「平穏を導くもの」で、実際初期の作品にはロマンティックなムードもある。そうしたある種の情緒は、もうここ数年のイーノ作品にはない。曲はより物質的で、物理的だ。
 『リフレクションズ』のジャケが、どうにも気になる。黒のなかをブライアン・イーノ本人の幽霊のように暗い表情が浮かんでいる。紙エレキングvol.19の表紙を見て欲しい。ガラス板にreflections(反射)しているのは、iPhoneを構えているイーノだが、それがまた何とも茫洋と頼りなく見えるのだ。
 BBCによれば、2016年の流行語のひとつに「ポスト・トゥールス(ポスト真実)」があるという。いや、まったく……、時代はいまP.K.ディックというわけだが、要するに、人にとって重要なのはもはや真実ではない。“自分にとって都合が良い”真実なのだと。トランプの醜さという真実よりも、雇用を増やしてくれるという真実を信じるように。細分化されたメディア環境がポスト・トゥールス社会を可能にしている(スマホの話じゃないが、いまは音楽の享受/再生のやり方も細分化し過ぎている)。
 本当に何がなんだかわからなくなっているというのもある。テレビを点けると討論番組をやっている。誰かがリベラルの敗北をしゃべり出す。リベラルは口当たりのいい理想ばかりを並べて経済をないがしろにしてきたからこんなことになったんだと唾を飛ばす勢いで言う。これもまた2016年の風景のひとつだが、2017年はその延長にある。
 近年のイーノは、まるで、あたかも、若き日に多大な影響を受けたコーネリアス・カーデューの政治活動を追っているかのようだ。1981年に事故死したUK現代音楽の巨匠は、シュトックハウゼンに学び、やがてジョン・ケージと出会い、演奏し、晩年は活動家として、マルクス主義者として生きた。そしていまブライアン・イーノは自ら矢面に立って、真摯な態度で政治的意見を述べる。政治コメンテーターも右往左往するポスト・トゥルースの時代、アーティストが政治に言及するのは昔とは違った意味でのリスクがある。知性派として知られるイーノだが、彼は間違いなく情熱家でもあり、つい先日も、ブレグジットで思い知った自らの無知を打ち明けながら、ポリティカル・メッセージを新たに公表したばかりだ。
 アンビエント・コンセプトにおける「無視することも可能」という説明は、真であり、注意深く聴かなければわからないという逆説でもある。『ディスクリート・ミュージック』はぼくをいまでも心地よくさせてくれるが、『リフレクションズ』は上げも下げもせず、むしろ醒めさせ、リスナーを冷静さに導こうとするかのようだ。激烈だった2016年が終わり、2017年がはじまった。紙エレ年末号の特集に沿って言えば、いまぼくたちにできること──しっかりと注意深く聴くこと。

ひとつは作曲、もうひとつが演奏、そして3つめは聴くこと。 ジョン・ケージ(1955年「実験音楽」)

野田努

Sote - ele-king

 親がすべてを駄目にする。そういう話だったと思う。親というものはどうしても子の「幸せ」を願ってしまうがゆえに、必然的に子のやることなすことにケチをつける。子が熱心に芝居に取り組んでいればそんなものはやめてしまえとくさし、海外公演が決まろうものならパスポートを隠匿して子の行く手を阻む。それがもとになって子の友人関係が歪みはじめたとしても、自らにその原因があるなどと思い至ることはない。結果、若き才能たちはぐしゃぐしゃに引っかき回され、表現活動は阻害される。そんなふうに親世代の価値観が若者の未来を押し潰すという話それ自体は、それこそ親が子だった時代から、さらにその親が子だった時代から脈々と存在し続けてきたものではあるが、その舞台が現代イランとなると事情は込み入ってくる。長回しが印象的なこのベーナム・ベーザディの『ルールを曲げろ』という映画を知っているか、とアッシュ・クーシャに問うてみたところ「監督の名前には聞き覚えがある」との答えが返ってきたが、演劇にせよ音楽にせよかの地で表現活動をおこなうことはいまでもやはり困難なのだろう。

 ハンブルクに生まれテヘランとサンフランシスコを往復しながら活動を続けている電子音楽家、アタ・エブテカール。2002年にソート名義で発表された「Electric Deaf」が素晴らしかったので、その後もちょいちょい気にしてはいたのだけれど、彼からの便りはあまり多くなく、もしかしたらもう音楽活動はやめてしまったのかもしれない、と少し心配になったこともあった。しかし2014年の『Architectonic』から彼は再びソート名義で作品を発表するようになり、2016年は一気にアルバムとEPとシングルをリリースしている。1972年生まれの彼はもはや若者ではなく、どちらかといえば子の邪魔をする親の世代に近いが、その彼があえてテヘランという地でエクスペリメンタルな試みを継続していることについて、僕たちはあれこれと想像をめぐらす必要があるだろう。
 『Hardcore Sounds From Tehran』には長尺のトラックが2曲収録されている。ビートがダンスを要求したかと思えば急にそれがつき崩されていったり、ノイズが宙を舞ったりインダストリアルな針が耳を突き刺したりと、“Hardcore Sounds From Tehran A”も “Hardcore Sounds From Tehran B”も、おそらくはいくつかの録音をもとに編集・構成されたものなのだろう、次々とアヴァンギャルドな展開がぶち込まれてきて聴き飽きない。ある瞬間はラッセル・ハズウェルのように、ある瞬間はオウテカのように、ある瞬間はAFXのように、ある瞬間はクラークのように、このアルバムではUKをはじめとする欧米各国で育まれてきたテクノやIDMの分子たちが、ひとつのトラックのなかで動的に対抗したり調和したりしている。それはよりダンス志向のEP「Hyper-urban 20 30」でも同様で、こちらは4分前後の短いトラックが4曲収録されている。

 トラディショナルな音楽との融合を試みる本人名義の作品とは異なり、ソート名義の作品は決して異国趣味を誘発するものではない。『Hardcore Sounds From Tehran』にせよ「Hyper-urban 20 30」にせよ、そのアートワークとは裏腹に特に民族音楽的な要素が散りばめられているわけではなく、ソートはあくまで純粋に「エレクトロニック・ミュージック」としての完成度の高さを追究している。しかしそうであるからこそかえって僕たちリスナーは、その音楽制作の舞台がイランであることに意識を向けざるをえない。

 アッシュ・クーシャがテヘランを去ってから少しだけ状況は好転したようで、若いミュージシャンが政府の許可を得ることは比較的容易になったという話もある。しかし許可が必要な時点で、依然としてかの地の文化や表現を取り巻く状況が厳しいものであることに変わりはないのだろう。ソートの鳴らす動的な音の展開には、そういったイランの困難な文化的状況がこだましている。おそらく『Hardcore Sounds From Tehran』というタイトルはメッセージなのだ。逮捕されるかもしれないと思いながら音を奏でること。摘発されるかもしれないと思いながら音を聴くこと。そういう状況への想像力こそが重要なのだ、とソートの音楽は告げているのではないか。

New Assembly Tokyo - ele-king

 先ずは出演者のラインナップを確認してほしい。メルツバウ、ラシャド・ベッカー、DJスティングレイ、ローレル・ヘイロー、DJ Fulltono、行松陽介、KILLER-BONG……この面子が一堂に会するフェスティヴァルなんて他にあるだろうか?
 テクノやエクスペリメンタルな音楽をメインに扱うベルリンのフェスティヴァルAtonalが、2月17日から19日までの3日間、ここ日本で初のサテライト・イベントを開催する。海外からはもちろん、日本からも多くの尖鋭的なアーティストがブッキングされており、既存の音楽フェスティヴァルとは一味も二味も違ったイベントになるだろう。こういうフェスの良いところは、お目当てのアーティスト以外のサウンドに偶然出会うことができる点だ。出会い、大事。この貴重な機会に、幅広い最尖端サウンドをその耳で確認しておこう。

Berlin Atonal presents New Assembly Tokyo
‪2017.02.17–19‬‬

2017年2月後半、Berlin Atonal(ベルリン・アトナル)は初のサテライト・イベントNew Assembly Tokyo(ニュー・アセンブリー・トーキョー)を開催するため日本へ渡ります。3日間に渡る音の冒険には、今回のために企画された全く新しいプロジェクト、国外からのアーティストと日本のアーティスト、そして過去のBerlin Atonalのハイライトが含まれています。

中でも最も注目すべきはそれぞれの分野の卓越したアーティストたちによる新たなコラボレーションです。まずは日本が誇る唯一無二のノイズ・レジェンドMerzbow(メルツバウ)とAtonalのオーディエンスにはお馴染みとなったエモーショナルなシンセ・サウンドの達人、元Nine Inch NailsのキーボーディストAlessandro Cortini(アレッサンドロ・コルティーニ)の二人。New Assemblyがワールド・プレミアとしてお届けする彼らの新たな共同ライブ・プロジェクトは、2017年の実験音楽シーンにおいて最も興味深く予想不可能な出来事となるでしょう。もう一つのフレッシュな新コラボレーションは、今年〈PAN〉から緻密かつ色彩豊かな傑作アルバムを発表したばかりのRashad Becker(ラシャド・ベッカー)と先見の明を持つ日本人プロデューサー、Ena(エナ)によるものです。

先日〈Token〉からセカンド・アルバムのリリースを発表したSigha(サイア)は独自のディープで豊かなテクスチャーを特徴としたテクノによって、今日の最も先端を行くエレクトロニック・ミュージックの最大勢力の一部として確実な地位を築いています。彼はNew Assemblyで二つのライブを披露することになりました。一つはダンスフロアに向けたリズミックなモードで、そして二つ目はA Vision Of Love(ア・ビジョン・オブ・ラブ)名義でのよりノイジーでエクスペリメンタルなセットです。大阪を拠点とするデュオSynth Sistersは日本でも最もディープでサイケデリックでコズミックなサウンドスケープを描き出すシンセ奏者です。彼女たちの待望のライブは21世紀版のTangerine Dreamと呼ぶべきサウンドを東京で聴かせてくれることでしょう。

インダストリアル音楽に最もエキサイティングな音を提供しているアーティストの一人、デンマークのノイズ作家Puce Mary(ピュース・マリー)も登場します。最近の〈Posh Isolation〉からのリリースにより突出した才能を発揮した彼女のライブは、一度見たら忘れられない、今日におけるダークで、時に美しいノイズの先導者としての個性を放つものです。2015年のBerlin Atonalにおいて強い印象を残したRyo Murakami(リョウ・ムラカミ)も、彼のホームグラウンドである日本でライブを披露してくれることになりました。

DJ Stingray 313(DJスティングレイ313)は現在最も好調かつ需要の高いDJの一人。20年以上に渡りデトロイトの音楽シーンの原動力として活動してきたStingrayの、追随を許さない高速かつハイテクなセットはようやくえるべき評価をえはじめており、一度は味わってみるべき音楽体験です。ここに異種混合のムーディーかつ時に熱狂的なサウンドを紡ぎ出すLaurel Halo(ローレル・ヘイロー)と、日本が誇るフットワーク・ミュータントDJ Fulltono(DJフルトノ)、ruralフェスティバルやVetaのレジデントを務めるOkuda(オクダ)、そして大阪から行松陽介(ユキマツ・ヨウスケ)が加わり、多岐にわたるテイストを調和させていきます。また、最近Lee Gamble主宰の〈UIQ〉レーベルからリリースを果たしたRenick Bell(レニック・ベル)が彼の専門分野である、その場で音楽を生成するプログラムを編集していくライブ・コーディングを用いたパフォーマンスを披露してくれます。

これに加え、現地東京のアヴァンギャルド音楽の最重要集団であり、今年活動20周年を祝う〈BLACK SMOKER RECORDS〉が今回のために特別なラインナップを用意してくれました。レーベルのフロントマンであるKILLER-BONGを筆頭に、伊東篤宏、カイライバンチ、VELTZ、BUNがライブで出演し、Compuma、威力、DJ YaziによるDJセットとMelt Bananaのビジュアルなどを手がけるIrohaがVJとして出演します。

このイベント・シリーズは、DOMMUNEからの生放送番組(2/16)を皮切りに、SuperDeluxeにおける、Berlin Atonal 2016で話題をさらったAlessandro Cortiniによる壮大な「AVANTI」の再演を中心に据えたオープニング・コンサート(2/17)、渋谷Contactでの強力な布陣でお届けするクラブ・ナイト(2/18)、そして最終日のメイン・コンサート(2/19)という構成になっています。

さらに詳しい情報はこちらのページから: https://www.facebook.com/newassemblytokyo

Derrick May - ele-king

 明けましておめでとうございます。今年もele-kingをよろしくお願いいたします。
 さて、さっそくですがデリック・メイが新年早々、来日ツアーをおこないます。札幌、東京、熊本、福岡、大阪、名古屋の6都市をめぐります。これは嬉しいお年玉ですね。昨年フランチェスコ・トリスターノのアルバムに参加し、なんと20年ぶりにスタジオに入ったというデリック・メイ。そんな彼はいま、どんなDJを披露してくれるのでしょう? 2017年はデリック・メイのDJからはじめましょう!

2017/1/7(土)
HI TEK SOUL JAPAN TOUR 2017
10PM | ¥3500 w/f ¥3000 GH S members ¥2500 Under 23 ¥2000 Before 11PM ¥2000
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Studio:
Derrick May (Transmat | from Detroit)
HIROSHI WATANABE aka KAITO (Transmat | Kompakt) -Live
DJ Shibata (TAN-SHIN-ON | The Oath)

Contact:
Alex from Tokyo (Tokyo Black Star | world famous)
Naoki Shirakawa
TERA (CHANNEL | Low Tech Circus)
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DERRICK MAY (Transmat | from Detroit)
1980年代後半、デトロイトから世界へ向けて放たれた「Strings Of Life」は、新しい時代の幕開けを告げる名曲であった。自身のレーベル〈Transmat〉からRhythim Is Rhythim名義で「Nudo Photo」、「The Beginning」、「Icon」、「Beyond The Dance」等今でも色褪せない輝きを放つ数々の傑作を発表し、Juan Atkins、Kevin Saundersonと共にデトロイト・テクノのオリジネーターとして世界中のダンス・ミュージック・シーンに多大な影響を与える。
シカゴ・ハウスの伝説のDJ Ron HardyやGodfather Of House Frankie Knucklesに多大な影響を受け、Music Instituteで確立されたその斬新なDJプレイは唯一無二。時代に流されることなく普遍的輝きを放ち、テクノ・ファンのみならず全てのダンス・ミュージック・ファンから絶大なる支持を得ている。
そして2010年、レコード店に衝撃的ニュースが流れる。何と実に13年ぶりとなる待望のミックスCDをリリースしたのだ。『MIXED BY DERRICK MAY × AIR』と題されたミックスCDは1月に発表され国内外で大反響を巻き起こした。スタジオ・ライブ一発録りで制作されたそのミックスには、彼のDJの全てが凝縮されていると言って良い。そこには“熱く煮えたぎるソウル”“多彩な展開で魅せるストーリー”“華麗なミックス・テクニック”等、天才DJにしか作り得ない独特の世界がある。自分の信じている音楽やファンへの情熱全てを注ぎ込んだかのような圧倒的パワーがそこには存在する。聴くものを別次元の世界へと誘ってしまう程だ。世界中を旅していて日本でのプレイが最も好きだと語るDerrick May、彼は本当に心から日本のファンの方達を大切にしているのだ。2011年には奇跡的に『MIXED BY DERRICK MAY X AIR VOL.2』を発表。また、2013年には自身のレーベルである〈Transmat〉のコンピレーションCD『TRANSMAT 4-BEYOND THE DANCE』を発表し更なる注目を集めている。

Derrick May @ Kappa Futur Festival 2014 // Day 2

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Contact
https://www.contacttokyo.com
東京都渋谷区道玄坂2-10-12 新大宗ビル4号館地下2階
Tel: 03-6427-8107
You must be 20 and over with ID.

※Contactは会員制となっております。ご来場の皆様に登録をお願いしております。
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★☆★☆ Derrick May - HI TEK SOUL JAPAN TOUR 2017 - ☆★☆★
1/6(金) 札幌 PRECIOUS HALL
1/7(土) 東京 CONTACT
1/8(日) 熊本 NAVARO
1/9(月) 福岡 KEITH FLACK
1/13(金) 大阪 CIRCUS
1/14(土) 名古屋 JB’S
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Khidja - ele-king

 アラビックでダビーなハウスを鳴らすルーマニアはブカレストのデュオ、カディージャ(Khidja)が来年1月21日に来日する。
 2014年にリリースされた12インチ「Mustafa & Abdul」で、ジ・アスフォデルスでアンディ・ウェザオールの相棒をつとめるティモシー・J・フェアプレイをリミキサーに迎えていたかれらは、同年、ウェザオール自身の主宰するフェスティヴァルにも出演を果たしている。その後もウェザオールは自身のDJセットでカディージャの手がけたリミックス音源をかけ続けており、これはもう寵愛を受けていると言ってもいいのではないだろうか。いわゆる民族音楽とハウスを融合させたかれらのサウンドは、今秋興味深いアルバムを発表したアシッド・アラブにも通じるところがあるし、この動き、これからどんどん加速していくものと思われる。
 いまのうちにチェックしておいて損はないですよー!



ハウスやテクノ・シーンまでも巻き込む新たな音楽ムーヴメント、モダン・エスニックを牽引する Khidja が国内屈指の Nu Disco Party、Huit Etoiles で初来日!

デビュー間もなく Andrew Weatherall に寵愛され、Red Axes からフル・サポートを受けるのも納得できる頭ひとつ飛び抜けたプロダクションとライヴ・セット! いま最も期待を集めているルーマニアの新鋭デュオ Khidja(カディージャ)が初来日!

近年、いわゆる Nu Disco シーンにおいて新たなるムーヴメントが起こっている。レーベル〈Disco Halal〉や、昨今破竹の勢いで活躍するデュオ Red Axes や Moscoman などはモダン・エスニックと呼ばれ、現在ハウスやテクノまでをも巻き込み時代の中心になりつつある。

そのなかでも彼らに並び称されている驚くべきユニットが Khidja である。彼らのサウンドは中東のエレクトロニック・ミュージックとオーガニック・サウンドを融合させ、シンセサイザーと伝統楽器やグランジーなギターを調和させ、クラウトロックを彷彿させる。

前例のないハイブリッドな進化を遂げ、過去の要素がすべて、電子音とドラムで強化されたら、何が起こるか。できあがるサウンドは、過去に積み上げてきた中東の雰囲気を残しつつ、ハウス、テクノ、ニューウェーヴ、インダストリアルなどに近い、新しいエリアを探求し続けている。

時代から時代へ、ジャンルからジャンルへと、時間を超えて形を変え続ける至極の音楽体験をぜひお見逃しなく!!

Khidja : https://soundcloud.com/poor-relatives

【イベント概要】
" Huit Etoiles Vol.12 ft Khidja "

DATE : 1/21 (SAT)
OPEN : 23:00
DOOR : ¥3,500 / FB discount : ¥3,000

=ROOM1=
Khidja
Sugiurumn
Que Sakamoto
Mustache X
Jun Nishioka

=ROOM2=
Tamaru & Sotaro
EMK & Butch
Ryota O.P.P
PALM BABYS
Bless Hacker
Ayana JJ

※ VENTでは、20歳未満の方や、写真付身分証明書をお持ちでない方のご入場はお断りさせて頂いております。ご来場の際は、必ず写真付身分証明書をお持ち下さいますよう、よろしくお願いいたします。なお、サンダル類でのご入場はお断りさせていただきます。予めご了承下さい。
※ Must be 20 or over with Photo ID to enter. Also, sandals are not accepted in any case. Thank you for your cooperation.

VENT : https://vent-tokyo.net/schedule/huit-etoiles-vol-12-ft-khidja/
Facebookイベント・ページ : https://www.facebook.com/events/1613826875585829/

 

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Danny Brown - ele-king

 ナイン・インチ・ネイルズのことかしらと思って蓋を開けてみると、実際にサンプリングされていたのはグル・グルだった。1曲目の“Downward Spiral”からそういう調子なのである。デトロイト出身でありながらグライムやトーキング・ヘッズへの愛を語るこの風変わりなMCは、一体何を考えているのだろう。シングルとして先行リリースされた“When It Rain”には荒んだデトロイトの情景が描かれているし、DJアサルトの名前も登場する。かつてはJ・ディラの未発表音源に様々なアーティストが手を加えた『Rebirth Of Detroit』(2012年)や、エミネムのレーベルのコンピレイション『Shady XV』(2014年)にも参加していたし、デトロイトの生まれであるというアイデンティティ自体は保守し続けているのだろう。しかしやはりこれまでダニー・ブラウンが世に放ってきた音楽は、通常「デトロイト」という単語から連想されるサウンドとはだいぶ異なっている。



 『Hot Soup』(2008年)に具わっていた「古き良き」ブラックネスは、『XXX』(2011年)以降どんどん削ぎ落とされていく。そのプロセスの終着点のひとつが2013年の前作『Old』だったのだとすれば(ラスティの起用は大正解だった)、本作は「その後」を模索するダニー・ブラウンの「エキシビション」だと言えるだろう。このアルバムでは前作と異なりサンプリングが多用されているが、それも彼の音楽的趣味の異質さを「展示」するためだと思われるし、かつてタッグを組んだブラック・ミルクの手がける“Really Doe”やエヴィアン・クライストの手がける“Pneumonia”といったダークなトラックからは、現在の彼の苦闘や葛藤を聴き取ることができる。



 他方で“Ain't It Funny”や“Golddust”、“Dance In The Water”なんかはもはやロックと言い切ってしまった方がいいような吹っ切れたトラックで、ほとんどやけくそのように聴こえる。これらのトラックを「ハイ」だと捉えるならば、先述のダークなトラックたち、あるいは“Lost”や“White Lines”といった不気味な夢を紡ぐトラック群は「ロウ」だと考えることができよう。そのふたつの極の同居こそがこのアルバムの肝なのだと思う。それらは、まさにドラッグによって引き起こされるふたつの結果だ。実際、リリックの内容は前作に引き続きドラッグに関するものばかり。ダニー・ブラウンは若い頃ディーラー業を営んでいたそうだが、では彼はこのアルバムで自身のサグさを自慢したいのだろうか?
 たしかに、本作で展開されるロック~ポストパンク風のトラックや、ドラッグ体験をひけらかすかのようなリリックについて、「白人に媚を売っている」という判断をくだすことも可能だろう。でも、本当にそうなのだろうか? むしろ本作は、「みんなドラッグについてラップしてる俺が好きなんだろ? だからその通りにやってやったよ」というメタ的な態度の表明なのではないか。アルバムのタイトルはJ・G・バラードを借用したジョイ・ディヴィジョンの同名曲から採られているが、そういう自己の見せ方まで含めて丸ごと「残虐行為展覧会」ということなのではないか。さらに言ってしまえば、〈Warp〉との電撃契約やリリースの前倒しまで含め、何もかもが演出なのではないか。
 なるほど、たしかにルックスにせよトラックのチョイスにせよフロウにせよ(ケンドリック・ラマーやBリアルの参加も話題になったが、しかしゲストよりもやはり本人のラップに耳がいってしまう)、ダニー・ブラウンが一風変わったMCであることは間違いない。そういう意味で彼は、近年のUSインディ・ヒップホップの隆盛の一端を担いながら、そのなかで異端であることを引き受け続けているようにも見える。しかし、練りに練られたこのアルバムからは「狂人」や「変人」といったイメージはそれほど呼び起こされない。じつはダニー・ブラウンは、喧伝されているそのペルソナとは裏腹に、ピュアで知的な音楽的チャレンジャーなのではないだろうか。

 と、ダークでドープなアルバムの後には、リラックスして聴ける1枚をご紹介。



 初めてOLIVE OILの名を意識したのはいつだったろう。たぶんB.I.G JOEの『LOST DOPE』(2006年)だったと思うが、エイフェックス・ツインやスクエアプッシャーが好きだったというOLIVE OILにはどうしても親近感のようなものを抱いてしまう。彼の最新作は、Popy Oil x Killer Bongによるコラージュ・アート・ブック『BLACK BOOK remix』の初回限定版に付属したサウンドトラックCDである。
 コラージュ作品のサウンドトラック、と聞くと現代アートのような何やらハードルの高い音響作品を思い浮かべてしまうかもしれないが、このCDに収められているのは非常に聴きやすい短めのトラックたちだ。『カウボーイビバップ』や『サムライチャンプルー』といった渡辺信一郎のアニメを観ているときの感覚に近いと言えばいいのか、実際には存在するはずのないあんな場面やこんな風景の断片が次々と頭の中を横切っていく。
 “UPDATERs”や“NOO$”などは、00年代前半のプレフューズ73あるいは往年の〈Stones Throw〉や〈Ninja Tune〉の諸作から最良の部分のみを抽出して引っ張ってきた、と言えなくもない。決して強く自己主張するわけではないがしっかりとトラックを支えるハットの横を、IDMを経由した細やかな音響と、美しいメロディの数々が通り過ぎてゆく。この心地よさは、ちょうど年末年始にぴったりだろう。ギャングスタやトラップに疲れてしまったあなたの耳に、最大限の快適さをもたらすこと請け合いである。

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