Home > Reviews > Book Reviews > Popy Oil x Killer-Bong- BLACK BOOK remix
この激動の時代に私たちは何をしたらいい? という問いに、こういう時代だからこそアートに没頭しろ、と言っている人がいたが、たしかにそれは一理ある。Killer-Bongがなんとも妖しげなアート集『BLACK BOOK』をリリースしたのは2006年のことだが、本作は、刊行から10年目にしてのremix版である。一説によれば、オリジナル『BLACK BOOK』のうえに、同作品を愛するPopy Oil があの手この手と手を加えたものだというが、おおよそコラージュ・アートの作品集と言えよう。サイズは、文庫サイズのオリジナルより天地が1cmほど大きいが、左右の幅はほぼ同じ。黒い布張りの上製本で、コンパクトながらモノとしての存在感は申し分ない。ページをめくれば、〈Black Smoker〉と〈OILWORKS〉という連なりから広がる、泣く子も黙るカラフルでサイケデリックな世界へまっしぐらである。
じつは先日、ele-king booksからは巨匠・田名網敬一の60年代末の未発表コラージュ作品集、『Dream Fragment』と『Fragrance of Kogiku』を刊行したばかりだが──、日本には宇川直宏をはじめ、そしてこのPopy Oilと Killer-Bongもそうであるように、コラージュ・アート作品の優れた作り手がけっこういる。こと音楽シーンにおいては、コラージュとはサンプリングの手法を彷彿させる。アンダーグラウンド・シーンで盛んなのもむべなるかな。
もっともコラージュとは、フランス語でのり貼りを意味する。そして切ってのりでぺたぺた貼ったコラージュ作品が一冊の本になるとき、多くはそれが印刷されたものとして流通するもの。が、本作『BLACK BOOK remix』には生の切り貼り作品も少なくない。笑みがこぼれてしまうような手の込んだ仕掛けもある。こうした手作り感、現代ではじつに重要なことだ。
初回限定版にはCD、Olive Oilによる『HARD BODY』なるアルバムが付いている。この作品の素晴らしさについては、小林拓音のreviewに譲ろう。
左が今回のBLACK BOOK remix。右がBLACK BOOK。
中身ですが、上がBLACK BOOK remix、下がBLACK BOOK。remixはカラフルです。
野田努