「AY」と一致するもの

Jeff Mills - ele-king

 はい、こんにちは。現在ele-kingはジェフ・ミルズにジャックされております。またまたニュースでございます。
 先日、アフターパーティの開催をお伝えしましたが、その本公演のお知らせです。来る11月18日(金)、国内屈指の室内楽ホールの1つである浜離宮朝日ホールにて、ジェフ・ミルズのシネミックス(映像体験作品)最新作の日本プレミア上映会が開催されます。同公演は、AACTOKYOが手がけるプロジェクトの第1弾でもあります。構成と演出はジェフ・ミルズ本人が、映像共同演出は新進気鋭の映像集団Cosimic Labが担当します。
連日お伝えしているように、この秋はジェフ・ミルズのイベントが目白押しです。もうこの際みなさんも心を決めて、ジェフ・ミルズにジャックされちゃいましょう!

AACTOKYO 第1弾プロジェクト
JEFF MILLS CINE-MIX “THE TRIP”

!! ジェフ・ミルズのシネミックス最新作 ジャパン・プレミア公演 !!

2014年のプレ開催を経て、昨年は東京、神戸、川崎の3都市で開催したアート・フェスティヴァル「TodaysArt.JP」が、2016年、世界に名だたるコスモポリス「東京」を舞台に、世界と日本を紡ぐアートのプラットフォームとなるべく、世界で開催されている様々なアート・フェスティヴァルとも連携しなが『AACTOKYO (アークトーキョー: Advanced Art Conference Tokyo)』として進化しました。
そんな『AACTOKYO』が手がけるプロジェクト第1弾として、浜離宮朝日ホールでのジェフ・ミルズのシネミックス(映像体験作品)最新作のジャパン・プレミア公演が決定です!

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ジェフ・ミルズがお届けする映像体験作品「THE TRIP」。
実験的でコンセプチュアルなテクノ・ミュージックの象徴的な存在として、またサイエンス・フィクション映画に魅了されたひとりとして、ジェフ・ミルズは「自身の作品をフィルムや映像のために制作しなければ」という衝動に駆られ、2000年より「シネミックス」というスタイルに着手しました。今回ご紹介するシネミックス作品は、日本人映像作家とのコラボレーションによる1時間半に及ぶサウンドとイメージのマスター・ミックス。
60以上のオールド・SF・ムーヴィー(1920~70年代)から抽出した映像+音像のライヴ・ミックスは、彼のエクスペリメンタルかつコンセプチュアルなDJ・ミックスと同じ原則に従い、私たちの美の鼓動、カオス、畏怖なる感情を呼び起こしてくれることでしょう。
「THE TRIP」は住みづらくなってしまった地球から、新しい世界を探すために地球より遠く離れた場所を開拓していくという、これから人間が経験するであろうテーマが描かれています。精神的かつ心理的な強烈な映像+音像体験が、あなたを未知の時空へお連れします。

Oval - ele-king

(デンシノオト)

 ある音楽を、音楽として聴かないこと。その行き着く先は、音楽の統合性が失調した世界だと思うのだが、ノイズや音響などの聴き手は、常にその境界線上を生きているともいえる。エクスペリメンタルなのは音楽ではなく、聴いている人間の方なのだ。となれば、ある音をノイジーと感じる理由は、何に起因しているのか。曲調か。音量か。音質か。音色か。レイヤーか。人間か。聴取する側の解像度の問題か。

 聴取のとき、音楽(の全体像)の解像度を一気に落とすと、音楽は壊れてしまう。試しに、身近な音楽を再生し、そのメロディでもビートでも、なんでも良いが、音楽的な要素に、まったく入り込まないで聴いてほしい。それはすでに音楽ではないはずだ。反対に聴取の解像度を上げると、ある部分がズームアップされ、その音楽は別の音楽に変わる。90年代末期から00年代にかけてのエレクトロニカや電子音響は、聴き手の聴取のレイヤー/解像度を上げたことが革命的だったわけだが、では、もう一度、聴き手の聴取の解像度を急激に下げてしまうと、われわれの聴覚/感覚はどうなるのか。たとえば轟音もある意味、聴き手の解像度を下げる作曲・演奏・発音行為だが、その「中」に没入することで、解像度はもう一度回復する。逆にいえば、解像度が低いまま、音を浴び続けると心身に不調をきたす。つまり、解像度の遠近法が回復しないと人間は崩壊する。

 そこでオヴァルの新作『ポップ』(「Popp」と書く)である。本作が凄まじいのは「ポップになった」とか、「クラブ・トラック」というだけでなく、確実にそれらの音楽でありつつも、「音楽」の解像度が低いまま展開していく点にある。アルバム冒頭の“ai”は、オヴァル特有の非周期的なループを聴きとれるが、実体化した「音楽」は分断され、声=ヴォーカルも分断され、圧縮された音質のようなポップの断片がレイヤーされていく。通常、非周期的なループは、音楽の情報量が上がるはずだが、本作のポップ化したオヴァルの凄まじさは、多量な音響・音楽情報が圧縮されたまま、つまりは「貧しい音楽」のまま、非周期的な構造を展開している点にある。しかも「ポップ」な音楽として聴取「できてしまう」。これは解像度を下げつつ、音へのアディクションを生むという意味で「狂気」の音楽といえよう(ブラックメタル的? オヴァルとバーズムの近似性について……)。

 なぜ、こんなことが可能になったのか。オヴァルは、2003年に発表された豊田恵里子とのユニット、ソー『ソー』以降、「声」と「音楽」への求心力を強めていく。2010年代の「復帰」以降の活動は、ソーでの試みを「オヴァルとして実体化させていくための実験・実践」であったといえる。たとえば、ブラジルの音楽家とコラボレーションをおこなった『Calidostópia!』(2013)、ヴォーカルを全面的に起用した『Voa』(2013)においては、ヴォーカルと電子音楽の融合を実験・実践していたし、2010年の復帰作『オー』や2012年の『オヴァルDNA』においては、生楽器による非周期性=ループを導入し、90年代の自身のグリッチ・ループ・サウンドを「音楽」として実体化させていった。しかし、「ヴォーカル」と「楽器」という彼の繊細な音楽家としての側面が、いかにもオヴァル的な非周期的ループの「貧しい」魅力を削いでいたことも事実である。だが、新作『ポップ』は違う。ループする音楽の対象を「R&B」や「EDM」的という、「あえて」の表層的なグルーヴを起用し、自身の本来の特性である「貧しい音楽」へと、つまりはオーガニックからケミカルへと舵を切っているのだ。その意味で、本作こそオヴァルの「復帰作」にふさわしいアルバムである。

 「聴取の解像度をアップデートして中毒性を上げる」のが2010年代初頭までのトレンドとするなら(情報量アップの知性)、「解像度を下げて中毒性を生む」(だらしない狂気へ)が2010年代中盤以降のモードになるのではないか。その最初の兆候が、このオヴァルの『ポップ』に思えてならない(むろん、マーカス・ポップは、90年代から本質的にはずっと同じだ)。2010年代後半は、「狂気への恐怖」がアウトになって、くわえて「狂気への誘惑」もアウトになって、「だらしなく狂気に行き着く」人間の時代になる。オヴァルの新作は、そんな「新しい人間」像をうまく表象している。統合性が失調する(音楽の)時代の始まり。いや、そもそも「90年代以降グリッチ・ミュージック」とはそのような音楽ではなかったか。貧しく痩せ細ったエラーが、それでいて、フレッシュであること。ここにおいて音楽の統合性はバラバラに分解してしまいそうになっている。廃墟の音楽。

 そう、グリッチとは、廃墟のなかに刹那に消えていく無数の天使たちの残骸/残滓なのだ。となれば、マーカス・ポップとは統合性が失調した時代の音楽を生む「新しい天使」であろうか。「新しい天使」による新しい「非=人間」のための音楽? それが『ポップ』なのだ。

デンシノオト

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●ライヴ情報 OVAL Live in Japan 2016

12月20日(火)
渋谷 TSUTAYA O-nest

12月22日(木)
京都 METRO

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(松村正人)

 河地依子さんの浩瀚なライブラリーと該博な知識に裏打ちされた、黒人音楽のヒストリーによりそいながら形式との相克でつくる音楽をていねいに聴き進めた『ソウル・ディフィニティヴ』、すでにみなさんの座右の書であろうが、その近年の動向をめぐる終章とそのひとつ前の章の導入文を要約しつつ私見をつけくわえるとこうなる。21世紀初頭のネオ・ソウルで電子音を有機的な音色で使う手法が浸透するとともに、エレクトロな方法論は当時のレゲトンやらダンスホールやらとむすびつき、そのビート感覚(とパーティ感覚)はのちのEDMを用意した、のみならず、ジェイ・ディラらのグルーヴの(再)発見をさかいに(政治性を含意した)ネオ・ソウルと合流していく、その合流地点こそ2010年代なかば現在であるのだとしたら――これ以上書くと河地さんの商売をじゃましそうなのでさしひかえたいが、R&Bが「エレクトロ~アンビエント~ドリーム」と形容すべき傾向をみせた2000年代なかば、河地さんのいうとおり「シーンの風景はまたガラリと変わった」。どのように変わったか、くわしくは本書を繙いていただきたいが、ひとつだけつけくわえると、ソウル、R&B、ジャズやヒップホップを問わず、たとえばグルーヴを軸に音楽を腑分けするのがたやすくなった反面、サウンドにおける形式の壁が液化する一方で、アンビエントやドリームといった主観性が幅を利かせる。
 前作から単体では6年ぶりとなるオヴァルの『ポップ』は資料によれば「ポストR&B」だという。いやそのまえに、今作こそ、『o』(2010年)から数年の比較的みじかめの間隔だったがそのまえはというと2001年の『ovalcommers』までさかのぼらなければならない。10年――生まれたばかりの赤ん坊が学校にあがり、きょうから私はオヤジとは風呂に入らないと宣言するまでに成長する、この長きにわたり黙して語らなければ、たいていのひとなら、オヤジであっても忘れ去られる。ところがオヴァルはちがった。『o』で復活したオヴァルは『systemisch』や『94diskont.』といった90年代の諸作でつきつめた「デザインとしての音響」から反転し、音楽のほうへむかいはじめる。もっともオヴァルはかつて一度も音楽的でなかったことはなかった。CDの盤面に人為的に操作をくわえプレイヤーを誤作動させた音をもちいる、初期のオヴァルの代名詞となったこの方法を縦横に駆使したこれらの作品でも、「Textuell」なり「Do While」なり、聴けばたちどころに私のいう意味は了解いただける。マーカス・ポップの含羞とも韜晦ともつかないものがそのような言い方を避けさせてきたのだとしても、90年代の磁場がそう仕向けたふしはなくはない。ワイヤーのだれかがいったという「ロックでなければなんでもいい」なるフレーズとおなじく、私たちはマーカスのことばを箴言としてのみとらえてはならない。背景があるのだ。制度と方法と原理の基底部を思考する、(そもそもアポリアであるかもしれない)その解は得られなくとも一度それを経なければオヴァルはオヴァルたりえなかった、というのは、時制の起点からして命題たりえないが、このパラドキシカルな過程もふくめたプロセスがオヴァルだった。
 なにせ『ポップ』はあざやかにポップなのである。ビートはくっきり輪郭を描き、楽曲はかつてないほど重層的に構造化している。とはいえそれはエレクトロニカの金科玉条だったレイヤーなる(きわめてデザイン的な)形容に収斂しない。IDM的レイヤーが薄い色紙を重ねたさいの色彩の重畳だとすれば、『ポップ』はもっとヴァーチカルである。奥行きがあり厚みがある。音色の選択とサウンド・プロデュースが立体感に拍車をかけるが、リズムの反復はあきらかにビートを指向している。つまるところポップかつダンサブルだが、ひたすら硬度をたもちつづけるアルヴァ・ノトと較べて――というのも、さっきまで渋谷でラスター・ノートンの20周年ライヴを観ていたのですね――有機的で滑らか。
 その一因は声にある。マーカス・ポップは『ポップ』の大半で、かなり加工した声をとりいれているのだが、この声のあり方がこのアルバムのグルーヴの土台を担っている。もちろん声は純粋なリズム楽器ではないが、そしてマーカスは一聴してリズム楽器として加工した声をもちいてはいないようにみえるが、マテリアルと化した声がトラックの一部に埋め込まれることで、音響はシームレスなゆらぎをはらむ。鍵盤楽器と声をシンセサイズしたポルタメントな音の動きには現象だけとりだせば90年代のオヴァルを彷彿させるドローン的な側面があり、2000年代後半を劃したボカロを思い出させるのはいわずもがなである。オートチューンやボカロといった身体をなくした声の身体性の影と、ビートという身体性をもっとも呼びさますものを交錯させる方法を、米国市場の主導権をにぎるR&Bになぞらえ、そこにポストを冠するのも新規なジャンル名をつくってみせたといったたぐいのことではない。かもしれない。すくなくともそれはマーカス・ポップの音楽観の一端ではある、と同時に今日のテクノロジーの人間観の反映でもある。やがてそれが完全に調和した制度(システム)となったとき、マーカス・ポップの批評性は事後的に発見されるだろう、というのは時制の起点からして予測でしかないが、オヴァルのプロセスはそのようにして走りつづけてきた、かつて思弁的なコンセプトと併走しながら、いまはポップさを全開にして。
 マーカス・ポップがこのアルバムに自身のファミリー・ネーム「popp」とつけたのはゆえなきことではないのである。(了)

松村正人

●ライヴ情報 OVAL Live in Japan 2016

12月20日(火)
渋谷 TSUTAYA O-nest

12月22日(木)
京都 METRO

Jlin - ele-king

 RP Boo率いるD'Dynamicsクルー所属のフットワーク第2世代プロデューサー、Jlin(ジェイリン)。僕が初めてその名を認識したのは、2011年に〈Planet Mu〉からリリースされたコンピレイション『Bangs & Works Vol.2』だったのだけれど(“Erotic Heat”のかっこよさといったら!)、その後の彼女の活躍はめざましく、あれよあれよという間にフットワークの新世代を担う中核アーティストへと成長していった。実際、昨年〈Planet Mu〉からリリースされたアルバム『Dark Energy』は、英『WIRE』誌の年間ベスト・アルバム第1位に選出されるなど、海外での彼女の評価の高さは尋常じゃない。

 このたび、そのJlin初の来日公演が開催されることとなった。大阪と東京の2ヶ所をまわる今回のツアーは、ジューク/フットワークのファンにとってのみならず、広くベース・ミュージックを愛する者たち全員にとってスルー厳禁の公演と言っていいだろう。詳細は下掲のリンクから!

フットワーク新章! 英『WIREマガジン』年間ベスト・アルバム第1位、Pitchfork Best New Musicなど2015年の年間チャートを総なめにし、シーン初の女性アーティストとして華々しいデビューを飾ったシンデレラJlinが満を持しての初来日!!

Jlin Japan Tour 2016


11.19 sat at CIRCUS Osaka | SOMETHINN Vo.18
w/ D.J.Fulltono, CRZKNY, Keita Kawakami, Hiroki Yamamura, Kakerun
OPEN / START 23:00
ADV ¥2,000+1D | DOOR ¥2,500+1D
https://circus-osaka.com/events/somethinn-vol-18-feat-jlin/


11.23 wed holiday at CIRCUS Tokyo | BONDAID #11
w/ Theater 1, D.J.Fulltono, CRZKNY
OPEN / START 18:00
ADV ¥2,500+1D | DOOR ¥3,000+1D | UNDER 25 ¥2,000+1D
https://meltingbot.net/event/bondaid11-jlin-theater1

主催 : CIRCUS
制作 / PR : SOMETHINN / melting bot

Acid Arab - ele-king

 「フランスの音楽」と聞いて、あなたはどんな音楽を思い浮かべるだろうか。エディット・ピアフ? イヴ・モンタン? それともダフト・パンクやエールだろうか。
 僕が真っ先に思い浮かべるのはロラン・ガルニエなのだけれど、デトロイト・テクノに影響を受けた彼の音楽に、とりたてて「フランスらしさ」のようなものは感じられない。それはダフト・パンクやエールに関しても同様である。彼らの音楽を、わざわざ「フランスの音楽」として聴いているリスナーはそんなに多くないだろう。フランス産のエレクトロニック・ミュージックはたいていの場合、良いか悪いかは別にして、英米のエレクトロニック・ミュージックの延長線上にあるものとして受容されているはずだ。逆に、いわゆる「フランスらしさ」の感じられる音楽とは、大多数の人びとにとってはいまだにシャンソンなのであり、あるいはフランス語の響きを堪能することができるフレンチ・ポップスなのではないだろうか。
 しかし、当たり前の話だが、フランスにはさまざまな人びとが暮らしている。当然音楽もその多様性を反映しており、かの地にはラップ・フランセもあれば、アフリカ音楽の豊かな土壌もある。そのような多民族国家であるかの地から、ザップ・ママやベベウ・ジルベルトのリリースで知られるベルギーの〈Crammed Discs〉を経由して、『フランスの音楽』と題されたアルバムが届けられた。アーティストの名はアシッド・アラブ。さあ、これは一体どういうことだろう?

 ギド・ミニスキーとエルヴェ・カルヴァーリョのふたりから成るアシッド・アラブ(現在はもっとメンバーが増えているという話もある)は、フランスのクラブ・ミュージックの文脈に唐突に出現してきたユニットである。彼らは、2013年に〈Versatile〉からリリースされたコンピレイション『Collections』に参加したことでじわじわと注目を集め、昨年単独名義としては初となるシングル「Djazirat El Maghreb」をリリース。それに続いて発表されたのが、彼らにとって最初のアルバムとなる本作『Musique De France』である。

 アシッド・アラブの音楽は、簡単に言ってしまえばディスコやハウスにアフリカや中東の伝統的な音楽を合流させるというもので、そういう意味でこのアルバムは昨秋リリースされたサンジェルマンのアルバムと共振しているとも言える。
 まずは、1曲めの“Buzq Blues”にヤられる。イランの弦楽器であるタールの紡ぐ旋律が、TB-303のアシッド音と入れ替わる瞬間は鳥肌モノで、その後両者が重なり合っていく様も見事としか言いようがない。この手法は9曲めの“Sayarat 303”でも採用されており、このような巧みな融合の演出がかれらの基本的なスタイルと言っていいだろう。

 “Le Disco”におけるライザン・サイード(オマール・スレイマンのキーボディスト)の大仰なプレイはどこかダフト・パンクを想起させもするが、おそらくはその音階のためだろう、決して下品な印象は与えない。他の客演陣も興味深く、いちばんのビッグネームは“Houria”に参加しているラシッド・タハだが、シングルカットされた“La Hafla”におけるソフィアン・サイディのラップや、“Stil”におけるセム・イルディズ(オリエント・エクスプレッションズ)のヴォーカルなど、みな本作のアラビックなムードの形成に貢献するパフォーマンスを披露している。
 エレクトロニックな要素を極力抑えたトラディショナルな最終曲“Tamuzica”を除いて、全体的にややリズムが単調なのがいくらか残念ではあるものの、ハウスやダウンテンポとして聴く分には申し分のないクオリティである。

 何よりも、アラビックな旋律や音色が大々的に導入されているこのアルバムを「フランスの音楽」として呈示してみせる彼らの勇気に、僕たちは最大限の敬意を払うべきだろう。アシッド・アラブは、多くの人びとが「フランス」としては認識していないだろうアラブ文化が、かの地でいかに卑近なものであるかということを世界に開示しようとする。このアルバムには、単に「クラブ・ミュージックと中東音楽をミックスしました」という以上の、ポリティカルな冒険がある。度重なるテロを経て、移民排斥を訴える国民戦線が勢力を伸ばし、政権入りの可能性まで取り沙汰されているなか、彼らはあえて「フランス」という名を掲げながら、このようなハイブリッド・ミュージックを世に問うているのである。つまり本作が鳴らしているのは、いま、もっとも生々しい「フランスの音楽」なのだ。

interview with Warpaint (Theresa Wayman) - ele-king


Warpaint - Heads Up
Rough Trade/ホステス

Indie PopIndie Rock

Amazon Tower

 結成12年という安定期に入っているはずなのに、このバンドは決して一定のトーンに安住する気配を見せない。言い換えれば、作品ごと本能的に焦点を絞り込むことができる、常に柔軟なバンドということもできるだろう。2010年のファースト『ザ・フール』はアンドリュー・ウェザオールがミックスを担当、2年前のセカンド『ウォーペイント』はプロデューサーがフラッドでナイジェル・ゴドリッチもミックスを手がけていた。だが、届いたばかりのサード『ヘッズ・アップ』にはそうした“UKの著名人”は関わっていない。かと言って、彼らが拠点とするLA人脈……最初のEP「Exquisite Corpse」のミックスを手がけたジョン・フルシアンテやジョシュ・クリングホファーの姿もここには直截的にはない。では、今作で彼女たちがどこを向いているのか、と言えば、ダンス・ミュージック。それも90年代スタイル(形式だけではなく音質なども含めて)のカジュアルなブラック・ミュージック・オリエンテッドな“踊れる音楽”だ。
 それがたぶんにナイル・ロジャースが制作に関わったダフト・パンクの“Get Lucky”や、マイケル・ジャクソンの“Smooth Criminal”などをサンプリングしたケンドリック・ラマーの“King Kunta”あたりが中継点になっていることは明白で、そこから90年代――それはウォーペイントの4人がティーンエイジャーだった時代だが――へと舵を切った結果、頭で考えず、感覚でビートに抱かれることを望んだような作品につながったのではないかと想像できる。歌詞の簡略化……というよりシンプルなラヴ・ソングである“New Song”のようなリリックの曲を億面もなく提示してきていることからも、今の彼女たちが90年代スタイルのドレス・ダウンさせたダンス・ミュージックを体感的に求めていたことがわかるだろう。
 しかしながら、ウォーペイントの4人が過去積み重ねてきたキャリアにそっぽを向いているのかと言えば全くそうではない。結果、彼女たちはLAを起点に、様々なエリア、世代、フィールドへとさらに大きなストライドで足をかけることになった。それは、リベラルであることを意味するものであり、決して足下が浮ついていることを意味しているのではない。ヴォーカル/ギターのテレサ・ウェイマンが語る新作にまつわる思惑と手応えは、こちらが想像していた以上に邪気がなく、そして開放的だった。それが、何よりの証拠である。

多分、これまで自分たちにはすごく遠かったポップ・ソングをわざと選んだんだと思う。自分たちにとって心地よい領域ではないことをあえて選ぶ事で、領域を広められるから。

この1年ほどずっとメンバー個別の活動をしていたことから、次の作品では何か大きく変化が現れるだろうと想像していましたが、思っていた以上に躍動的な方向に舵を切った印象です。あなた自身もホット・チップのメンバーらと新ユニット=BOSSとしてシングル「I'm Down With That/Mr. Dan' I'm Dub With That」をリリースしたり、Baby Alpacaにジョインしたりと活動の幅が広がっています。このような個別のアクティヴィティが今回の新作にどのようなフィードバックをもたらしたと考えますか?

テレサ・ウェイマン(以下、TW):このアルバムの躍動感は、他のプロジェクトから直接的に影響されたものではなくて、前作のアルバムのツアーを終えて、みんなで次はもっとダンス・ミュージックっぽいアルバムを作ろうって決めてたからなの。自然とライヴでやりたい曲がダンス・ミュージックの要素が強い曲だった、と。その方がライヴで演奏する時に楽しいから。でももちろん他のプロジェクトの経験も刺激にはなったと思う。例えば、私がBOSSでリリースした曲は、プロデューサーのダン(Dan Carey)によるゲームみたいなものだったの。彼は、曲作りをする時に、条件を絞って曲作りをさせるんだけど、その狭められた条件の元に曲作りをするのは新しい経験だったし、すごく興味深かった。やれることもテーマもコンセプトも狭められることで、逆にその範囲でできることをより模索するっていう経験にもなった。それからウォーペイントのメンバーのジェン(ジェニー・リー・リンドバーグ)も、自分のソロ・アルバムに関してはあまり深く考えずにその時に感じた事を表現するようなアルバム作りをしていて、すごく衝動的だったみたい。そういう経験をそれぞれしたことで、また作品作りの新たなヒントにもなったし、いいレッスンになった気がする。あまり何かに固執しすぎないようにすることを教えてくれた気がするわ。

では、最初、あなた自身はこうした個別のアクティヴィティとは別に、このウォーペイントの新作について、どのような作品を目指したいと考えていましたか? 当初思い描いていた予想図を聞かせてください。

TW:コンセプトを持っていたとしたら、もう少しアップビートな作品にするってことくらいかな。今まではずっとBPMを90台に留めていたのよね。98BPMとか。だからそのテンポをもう少しあげて、ダンス・ミュージック要素が強いアルバムにしたかったの。多分、最初に決めてたコンセプトはそれくらいだったかな。決め事とかルールとか基本的に決めないのよね。私たちはいつもその時の衝動に身を任せるっていう方が合ってるから、ルールを決めたりはしないの。それは歌詞に関しても言えることで、テーマとか歌詞のコンセプトも決め込んだりはしない。例えば「このアルバムは失恋アルバムにしましょう!」、「これはラヴ・ソングが詰まったアルバムにしよう!」、「政治的なことを強く主張しよう!」みたいな決まりとかは作らない(笑)。でも今回は「ダンス・アルバム」にすることはキーワードではあったわね。

では、そうしたキーワードのもと、今作の楽曲がどのような環境で書かれたのかについて聞かせてください。今回のソングライティングはジャム・セッションではなく、個別の作業や、全員で合わせて一度持ち帰る……みたいなやりとりを経ての制作だったそうですね。なぜこうしたスタイルに替えてみたのですか?

TW:最初は個々に始めた感じだったの。当初、2015年を通して、作品をこまめにリリースすることにしようって話をしていたこともあって。1、2曲ずつ作って、その度にレコーディングして、そういう自由な流れに身を任せようって思ってて。結局そうはならなかったんだけど、そのつもりで制作を始めて、お互い自分の自宅のスタジオで制作を始めて、気付いたら2015年の終わりにはアルバムになるような曲数はできあがってた。だから最終的にはそれを仕上げるためにスタジオにみんなで入った。この経験を通して、今まで自分たちが持っていたもので出し切れてなかったものが強調された気がしたの。例えば、私とステラ(・モズガワ)が一緒に曲作りをする時、割とビートとかサンプルの要素が強いエレクトロニックな曲を作る事が多いの。でも全員でセッションで作る時はその要素はあまり出ないのよね。だからもともとお互いが持っていた要素だったとしても、制作の手法によってその要素が前に出なかったりするから、今回こうやって個々に制作を進めたことで、今まで目立たなかった個々の要素がいろんな形で前に出てきた気がする。みんながそれぞれ自分をより出せた気がするわ。

その結果、機能性の高いダンス・ミュージック的側面を持ったものになったわけですね。では、こうしたスタイルへと向かった理由を教えてください。具体的な参考になったもの、出会い、インスピレーションなどいくつかのキーワード、リファレンスを教えてもらえれば。

TW:正直に言うと、自分たちの影響を伝えるのって実はすごく難しくて。なぜかというと、本当にいろんなことから影響を受け、いろんな影響を表現している気がするから。まして、4人もいるとなるとなおさら。それぞれが個々のアングルから物事を表現していると、あるひとつのアングルから影響を受けたっていうことがない分、影響の幅がすごく広くて。だから例えば、ケンドリック・ラマーやジャネット・ジャクソンっていう名前を出すと、直接的にそういう影響が現れていないかもしれないから、すごく極端に聞こえる気もする。例えば自分の影響を具体的に説明するとしたら、アジーリア・バンクスの“212”という曲にインスパイアされて、私も“So Good”でそのインスピレーションを試してみたりしたの。もちろんすごく違う曲だけど、“212”の曲の構成がすごく珍しくて、その構成と、あのダンス感に聴いた時にすごく動かされるだけに、そういうアプローチを試してみたかった。すごくポップでとっかかりやすいけど、オーソドックスではない曲を作ってみたかったってわけ。あと、“New Song”はダフト・パンクの“Get Lucky”に影響を受けたの。実は、私たちのマネージャーはミュージシャンでもあるんだけど、彼からの提案もあった。すごく分かりやすいポップ・ソングを研究して、なんでその曲がポップなのか、どこが突き刺さるのかを理解して、それを自分たちも取り入れてみようって。多分、これまで自分たちにはすごく遠かったポップ・ソングをわざと選んだんだと思う。自分たちにとって心地よい領域ではないことをあえて選ぶ事で、領域を広められるから。実際にステラはアルバム製作中によくジャネット・ジャクソンを聴いていたんだけど、その時にすごく感じたのが、90年代のああいうポップ・ソングは、プロダクションがガヤガヤしていなくて、今聴いてもすごく美しいってこと。だから改めてそういう音楽を聴いて、それに気づけたことは、すごく啓発的でもあった。

確かに、ダンス・ミュージック・オリエンテッドな側面から見ても、あるいはオルタナティヴ・ロックなサウンド・プロダクションから見ても、全体的に90年代をひとつのキーワードにしている印象です。なぜ今、ウォーペイントが90年代なのでしょうか?

TW:私たちが影響されたものの多くがその時代のものなのは事実。人生の中でいちばん影響を受けた音楽はやっぱり90年代だと思う。その時私たちは10代、音楽をたくさん聴く中で、音楽が本当に大好きだって気づいた時代でもあるの。だから、いつもその時代の音楽には共感できるし、それは私だけじゃなくて、メンバー全員がそうだと思う。だから自分たちが90年代を狙って作った作品ではないけど、人が聴いた時にそう感じるのは、自分たち自身がその時代を生きて、自分たちの中に染みついているからだと思う。みんなアウトキャスト、ポーティスヘッド、ビョーク、トリッキー、マッシヴ・アタック、ザ・キュアーが大好き。ザ・キュアーに関しては80年代も入っているかもしれないけど……自分たちの青春時代なだけに、やっぱり刻み込まれている感じはするわね。

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私たちは自分たちが感じることをやっているだけなの。いつもコンセプトを持たないバンドだから。

現在、確かに広く90年代の音作りが見直され、若い世代からフレッシュな形で上書きされています。そうした中で、過去2作で見せてくれた美意識を手放さず、どのようにして《ウォーペイント流90年代へのアプローチ》を実践したのか、特にバンドとしてこだわったのはどういうポイントだったのかを教えてください。

TW:すごく説明するのが難しいんだけど、私たちは自分たちが感じることをやっているだけなの。いつもコンセプトを持たないバンドだから。さっきも少し説明したみたいに、今回はもう少しダンス・ミュージックよりの作品にしようっていう軽いコンセプトはあったものの、いつもあまりガチッとしたコンセプトはない。前作も確か「空間を大切にしよう」っていう程度だった気がする。何か決まりがあるとしても本当にそれ程度で、あとは身を任せる感じ。だから曲ごとに感じてもらえる美学は、その時に生まれたもので、目指したものではなくて。だから聴き手側の解釈もそれぞれの解釈で良いと思ってて。自分たちが「こういう風に受け取ってほしい! こういう風に感じてほしい」っていうものは実はなくて。だから90年代のアルバムを作ろうとしている訳ではなく、現代風のアルバムを作ってる訳でもなく、そういう狙いはないのよね。自分の夢はただ一つ、自分が大好きだと思える音楽を人にも大好きだと言ってもらえること。本当にそれだけなの。

例えば、フランク・オーシャンやビヨンセ、ブラッド・オレンジや、去年リリースされたケンドリック・ラマーなど多くのアーティストが90年代の要素を取り込みながらも、ジャズ、R&B、ヒップホップ、ファンクなどを新たに上書きしています。ウォーペイントのこの新作にもそれに連なるかのようなグルーヴが感じられますが、そうした黒人音楽的側面を強く打ち出す方向性に対し、あなた自身はどのような意見を持っていますか?

TW:すごく説明するのは難しいけど、リズムやドラム&ベースやポリリズムやディープ・グルーヴ……音楽っていうことにおいてみんなが興味を持つ部分の多くが何世紀にもわたってブラック・ミュージックから影響されているものも多いと思う。それがどの時代ももっともっと大きくなってきているんだと思う。より多くの人が音楽を聴いて、音楽を作っているから。そこに惹かれちゃうのは、すごく自然の衝動だと思うし、多くの人たちがその衝動を表現したくなるんだと思うわ。

ドクター・ドレの名前からとられたような“Dre”という曲もありますね。

TW:残念ながらドクター・ドレからはとっていないの(笑)。あの曲で難関だったのは、Bメロからのパートかな。なかなかアレンジがうまくいかなくて。最終的には納得できるところに行き着くことはできたんだけど。でも時間がなくて。だからこの曲はミックスも急いでやらなきゃいけなかったのも難点だった。でもそういう困難もありながら、この曲はすごく制作においてもエキサイティングな曲だった。あ、あと思い出したのが、この曲はいろんな要素を織り交ぜたから、混雑している感じもあった。それを整理するためにも、その混雑したパートをひとつひとつ整頓していったなぁ。それでどの要素が重要かが明確になったから良いプロセスだったけど。

昔に起きた素晴らしいことと現在を繋げる。繋げるというよりも混ぜる感じかな。新しいアイデアだって歴史があってこそ生まれるものだったりするし。

とはいえ、全体的に広く多くのリスナーにさらにわかりやすく届けることを目的としたようなキャッチーさ、いい意味でのアイコン性、シンボライズされた音の在り方を、あくまでポップ・ミュージックの観点から意識しているように感じました。多くのツアーをこなし、フェスなどに出演してきた経験から、あなた自身も感じてきたことだろうと思いますが、今やりたいことを追究しつつもそうした“わかりやすさ”が求められていることに応えていく上でのジレンマ、もしくはこれまでのファンの期待にも応じ、でもこれからさらに裾野を広げていくこととの間でのストラグルなどはありましたか?

TW:私たちは揃ってあまりその部分を考えないようにはしてるの。繰り返しになっちゃうけど、あまりそういうことを考えないで、自分たちが感じたままを表現することを大切にしているから。でも自分自身としては、ポップ・ミュージックが響いてくるその即効性もすごく大好きだし、曲中のフックとかもすごく大事だと思ってる。あと、忘れられないようなリズムやダンスのビートだったりもとても大切だとは思う。そういう要素が詰まったキャッチーな曲は、自分にとっても魅力的な曲だったりはする。だから自分たちもお互いスキルを磨いて、徐々にそれができるようになってきているとは思う。自分たちらしさも崩さない形で。自分たちももちろん変わっていかなければいけないし、それは止められないものだから。中にはそれを理解してくれないファンもいるとは思うけど、解ってくれる多くのファンもいるとは思う。私は話したファンの多くは、自分たちが大好きだったポップ・ミュージックが好きっていう人も多くて。それでいて、自分たちの音楽も好きでいてくれて、あまり目立たないような音楽も好きだったり。だからすごくオープンマインドで共用範囲が広いファンもたくさんいると思っている。そういうわけで、私は個人的には新たな音楽性でファンは失わないだろうとは思ってるわ(笑)。

歌詞の面でも“New Song”に見られるようなストレートなアプローチによるラヴ・ソングが多い印象で、その裏には直感的にイイと思えるものを堂々とイイと言ってしまうような決断力が強く感じられます。

TW:そうね、“New Song”はとてもシンプルだと思う……あ、そうそう、このアルバムのことでもうひとつだけ話していたキーワードがあったわ。もう少しヴィヴィッド(鮮明)でクリアなアルバムにしようって話してたのを今思い出した。もう少しいろいろと鮮明になるようにしようって。それは歌詞においてもそう言えると思う。だから前作と比べたら、ぼんやりとした感じは減っているかなぁとは思う。でもこれはどちらかというと、すごく狙ったというよりも、自然な改革だった気がする。もっとリスナーと繋がりたいと思ったし、自分たちの気持ちを鮮明にすることに慣れたかったっていう気持ちもあったかなぁ。

確かに一見、ストレートで物怖じのない情熱的な言葉をまとったラヴ・ソングが多いですが、あえてそれを他の事象にも置き換えていけるようなわかりやすい言葉を多くちりばめ、言葉にも強さを与えている印象も受けました。歌詞の面で、何か大きなテーマ、テーゼを用意していたとしたらそれはどういうものでしたか?

TW:テーマやテーゼは全くなかった。みんなで話し合ったこともないし、本当にその時にでてきたことを歌にしたって感じかな。個人的には最近ラヴ・ソングを書くモードではあって、自分のソロ・アルバムはほぼ全部“愛”についてのアルバムなの。その要素をこのアルバムに1、2曲持ち込んだかなとは思う。ただ、自分たちではあまり変わっている意識はなくて。むしろ、他に何か変わったところがあったら逆に教えてほしいくらい(笑)。結局、とりあげることって自分たちの人間関係であったり、他人の人間関係であったり、自分たちの成長であったり、人生で正しいと思う道に進もうとしたり……いつもトピックは一緒なのよね。とはいえ、ちょっとだけ政治的な思想は歌詞に現れているかもしれない。確かに置き換えた時に何かを感じてもらえるような歌詞は多いのかも。世界で起きている問題の核みたいなトピックだったりね。

ところで、あなたがたは今の米西海岸を支えている代表バンドですが、先輩格のジョン・フルシアンテ、ジョシュ・クリングホファーといった方々との世代の架け橋にもなっていますし、海を超えて英国のアーティストとの交流も積極的に作っています。地域性、その場所の歴史を大切にしつつも、その垣根を崩して広げていくことの醍醐味をどの程度意識していますか?

TW:自分でもそんな立ち位置にいることをとても光栄に思ってる。私たちは年齢的にも少し上だから、違う世代とも若い世代よりもナチュラルに繋がっていらえることもすごくラッキーだと思う。やっぱり先輩格の世代の人たちが生きた時代で起きた楽しいこととか、聞くだけで私たちには刺激や目標にもなるから。まさにこれって人生において大切なことだと思ってて。昔に起きた素晴らしいことと現在を繋げる。繋げるというよりも混ぜる感じかな。新しいアイデアだって歴史があってこそ生まれるものだったりするし。だから私たちも新しい何かを作りだす上で、過去を反省していく楽しさを大事にしているわ。いろんな時代や世界から得たアイデアをしっかり携えて制作するのが一番楽しい。だからイギリスで今何が起きているのかを知ることもすごく楽しい。それは日本もそうだし、オーストラリア、ウェストコースト……どのエリアに対しても同じよ。

Warpaint来日情報

日時/会場

東京  2/28 (火) LIQUIDROOM
open 18:30 / start 19:30 ¥6,300(前売 / 1ドリンク別)
#03-3444-6751 (SMASH)

大阪  3/1 (水) UMEDA CLUB QUATTRO
open 18:30 / start 19:30 ¥6,300(前売 / 1ドリンク別)
#06-6535-5569 (SMASH WEST)

チケット発売

主催者先行: 11/8(火)12:00 – 11/13(日)23:59
【URL】https://eplus.jp/warpaint17/ (PC・携帯・スマホ) *抽選制

一般発売: 11/19(土)
東京: e+ (先着先行: 11/15-17)・ぴあ (P: 315-091)・ローソン (L: 73278)
大阪: e+ (QUATTRO web: 11/14-16, 先着先行: 11/15-17)・ぴあ (P: 314-959)・ローソン (L: 54783)・会場

協力: Hostess Entertainment
お問い合わせ: SMASH 03-3444-6751 smash-jpn.com, smash-mobile.com

Asuna & Opitope - ele-king

 レーベル〈White Paddy〉を主宰し、去る7月にはソロ作品『Grace』をリリースした畠山地平と最近は漢方医として多忙を極めている伊達トモヨシ先生によるオピトープが、Asunaと一緒に最新アルバム 『The Crepuscular Grove』を〈White Paddy〉から発表します。はっきり言って、今回もクオリティが高い作品になっておりますが、これから冬を迎えるこの季節に聴いていると、とても良い気持ちになれます。自然界のいろいろな音を辿りながら、目の前に草原が広がります。彼らはリリースに併せてツアーをします。伊達先生を見かけたら、やさしく肩を叩いてあげましょう。ツアーには、イルハのメンバー、コーリー・フラーも参加します。

●Asuna & Opitope 『The Crepuscular Grove』リリース記念ツアー
with Corey fuller

 2010年のStudents Of Decayからのリリースに続く、6年振りのAsuna & Opitope のセカンドアルバムを11月にリリースするAsuna & Opitope がツアー開催します! 今回はツアーゲストにillhaのコリー・フラーを迎え、各所で様々なユニットでライブを披露します。

●11.17 (Thr) 京都 @ 「外」
Open 19:00 / Start 19:30   
2,000yen

LIVE
Asuna & Opitope
Chihei Hatekeyama & Corey Fuller
ASUNA × Takahiro Yamamoto

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●11.18 (fri) 名古屋 @ spazio-rita
Open 19:00 / Start 19:30   
2,500yen

LIVE
Asuna & Opitope
ILLUHA(Tomoyoshi Date, Corey Fuller)
Chihei Hatekeyama & Asuna

DJ
i-nio

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●11.19 (sat) 伊勢 @ 風見荘
open19:00 / start 19:30
投げ銭
LIVE
Opitope
Asuna × Corey Fuller

---------------

●11.20 (Sun) 東京 @ gift_lab

open18:00 / start 18:30
2,500yen

LIVE
Asuna & Opitope
Kuukoka (Tomoyoshi Date, Corey Fuller,Chihei Hatekeyama)
Carl Stone

 


Asuna & Opitope
The Crepuscular Grove

White Paddy
Amazon


ASUNA

「語源から省みる事物の概念とその再考察」をテーマに作品を制作。これまでにドイツの"transmediale"、ベルギーの"Happy New Ears"、スロベニアの"International Festival of Computer Arts"などメディア・アートの国際的フェスティヴァルにも多数参加するなど国内外問わず展示/パフォーマンスを行う。代表作として「Organ」の語源からその原義を省みた「機関・器官」としてのオルガンを扱ったインスタレーション作品『Each Organ』などがある。並行した音の現象を扱うパフォーマンスにおいても『100 KEYBOARDS』『100 TOYS』などのライブで、これまでにヨーロッパを中心に北米・アジアも含め海外17ヶ国以上での公演/ツアーを行い、ベルギー、イタリア、イギリス、アメリカ、日本など多数のレーベルよりレコードやCD作品も発表している。

伊達伯欣:医師・音楽家

1977年サンパウロ生まれ成田育ち。Opitope(spekk)、ILLUHA(12k)、Melodia(homenormal)として音楽活動を続ける。救急医療と免疫学、東洋医学を学び、2014年につゆくさ医院を開院。これまでに国内外から15枚のフルアルバム、映画音楽などを作成。『からだとこころの環境』を出版。科学と自然、デジタルとアナログ、西洋医学と東洋医学の現在について考察している。

Chihei Hatakeyama

Chihei Hatakeyamaとして2006年にKrankyより、ファーストアルバムをリリース。以後Room40, Home Normal, Own Records, Under The Spire, hibernate, Students Of Decayなど世界中のレーベルから現在にいたるまで多数の作品を発表。デジタルとアナログの機材を駆使したサウンドが構築する美しいアンビエント・ドローン作品が特徴。ヨーロッパ、オーストラリア、アメリカ、韓国など世界中でツアーを敢行し、To Rococo Rot, Tim Heckerなどと共演。NHKのEテレ「schola 坂本龍一音楽の学校シーズン3」にて、アルバム『River』収録の”Light Drizzle”が紹介され、坂本龍一、岩井俊二らからその場を空気を一変させる音楽と評される。映画音楽では、松村浩行監督作品『TOCHKA』の環境音を使用したCD作品「The Secret distance of TOCHKA」を発表。第86回アカデミー賞<長編ドキュメンタリー部門>にノミネートされた篠原有司男を描いたザカリー・ハインザーリング監督作品『キューティー&ボクサー』(2013年)でも楽曲が使用された。またNHKアニメワールド:プチプチ・アニメ『エんエんニコリ』の音楽を担当している。ソロ以外では伊達伯欣とエレクトロ・アコースティックデュオOpitopeとして、SPEKKから2枚のアルバムをリリース。佐立努とのユニットLuis Nanookでは電子音と伝統的なフォークサウンドが混ざり合う音楽世界で2枚のアルバムをリリース。ASUNA、Hakobune等ともコラヴォレーションアルバムを発表。マスタリング・録音エンジニアとしても、自身の作品のみならず、100作品以上を世に送り出している。2013年にはレーベルWhite Paddy Mountainを設立しShelling, Family Basik, neohachi, Federico Durand, suisen, Satomimagaeなどをリリースしている。
https://www.chihei.org/

corey fuller

1976年アメリカ生まれ。現在日本在住。 サウンドアーティスト、ミュージシャン、オーガナイザー、映画家として活動中。
ギター、ピアノ、ローズピアノ、グロッケンシュピール、アコーディオン、ピアニカ、パーカッション、ハンマーダルシマー、フィールドレコーディングを含めた様々な生楽器/生音を素材にmax/mspと言ったデジタル環境やアナログ機材で細かく加工した、繊細な音楽を提供している。
近年は伊達伯欣(ダテ トモヨシ)とのIllhaとして12kより2枚のアルバムをリリース。また、坂本龍一やTaylor Deupree とのコラボレーションアルバムも発売している。2016年には待望のセカンドソロアルバムをリリースする予定である。


Asuna

Opitope

illha

Chihei Hatakeyama

Swans - ele-king

 80年代初頭に結成され、ソニック・ユースとともにUSオルタナティヴ・シーンを牽引してきたエクスペリメンタル・ロックの雄、スワンズ。6月にリリースされた14枚目のアルバム『The Glowing Man』も好評なかれらが、12月に来日公演を果たすこととなった。東京公演は12月7日(水)@SHIBUYA TSUTAYA O-EAST、大阪公演は12月8日(木)@UMEDA CLUB QUATTRO。今回もヴォリューム・リミットなし、2時間超えのパフォーマンスを披露してくれるとのこと。また今回のツアーは、現メンバーでおこなわれる最後のツアーとなっている。これは見逃すわけにはいかないでしょう。詳細は以下を。

オルタナティヴ・ロック・シーンに燦然と輝く暗黒の巨星スワンズ、現メンバーでのラスト・アルバム『The Glowing Man』を引っ提げて、現メンバーでのラスト・ツアー決定!

1982年、Michael Gira(ギター/ヴォーカル)を中心に結成、80年代初頭の混沌としたニューヨークのアンダーグラウンド・シーンを象徴するバンドとして、SONIC YOUTHとともにオルタナティヴ・シーンに君臨した。ジャンク・ロックと称された初期作品『Filth』、『Cop』、Jarboe参加後の聖と俗・静謐と混沌の入り交じった中期作品『Greed』、『Holy Money』、『Children of God』、ビル・ラズウェル・プロデュースによるメジャー作品『The Burning World』で見せた限りなくダークな歌へのアプローチ、自身のレーベル〈Young God Records〉設立後の後期作品『White Light from the Mouth of Infinity』、『Love of Life』でのサイケデリックかつドローンなサウンドなど、幾多の変遷を経て唯一無二の世界観とサウンドを獲得していく。2010年、「SWANS ARE NOT DEAD」の宣言とともに復活。現メンバーはMichael Gira、Norman Westberg、Christoph Hahn、Phil Puleo、Thor Harris、Chris Pravdicaの6人。復活アルバム『My Father Will Guide Me Up a Rope to the Sky』を皮切りに『The Sheer』、『To Be Kind』、そして現メンバーでのラスト・アルバム『The Glowing Man』を本年6月に発表。アルバム発売ごとにおこなわれた精力的なツアーは、現在もっとも体験するべき価値のある最高のライヴ・パフォーマンスと数多くのメディアやアーティストから大絶賛されている。今回決定した現メンバーでのラスト・ツアーでもヴォリュームのリミット無し2時間超えの強靭なパフォーマンスを披露してくれることでしょう。現SWANSの有終の美を五感を総動員して自ら確認して下さい!

東京公演
12/7 (wed) SHIBUYA TSUTAYA O-EAST

Open 18:30 Start 19:30 ¥6,000(前売り/1ドリンク別)
Information: 03-3444-6751 (SMASH)

大阪公演
12/8(thu) UMEDA CLUB QUATTRO

Open 18:30 Start 19:30 ¥6,000(前売り/1ドリンク別)
Information: 06-6535-5569(SMASH WEST)

以下、プレイガイドにてチケット発売中!
東京: ぴあ(P: )・ローソン(L: )・e+(pre: )
大阪: ぴあ(P: )・ローソン(L: )・e+(QUATTRO web、pre: )・会場

共催:root & branch 協力:TRAFFIC
総合お問合わせ:SMASH 03-3444-6751 smash-jpn.com, smash-mobile.com

DJ Marfox - ele-king

 キツネだらけである。誰も彼もが尻尾に「フォックス」をくくりつけてなびかせている。DJ MarfoxにDJ Nigga FoxにDJ Babaz Foxに……数えだしたらきりがない。さりげなく「コックス」も紛れ込んでいるが、一体このキツネ崇拝集団は何なんだろう。たしかにキツネはかわいいし、僕も毎晩キツネ写真館の画像を眺めては癒されているけれど、〈Príncipe〉というレーベルのもとで彼らが展開している音楽は、「かわいい」からはあまりにもかけ離れたゲットー・サウンドである。
 彼らの鳴らすトライバルでポリリズミックな音楽は、既存のスタイル名で呼称するのが非常に難しい。暴力的に単純化してしまえば、クドゥーロなどのアフリカン・ダンス・ミュージックが、ハウスやテクノ、あるいはグライムやダブステップといったベース・ミュージックと衝突する過程で、突然変異的に発生した音楽、と言うことができるだろうか。

 キツネを信奉するこの風変わりなダンス・ミュージックのシーンは、リスボンの郊外へと隔離されたアフリカ系の若者たちによって00年代半ばに生み出された。つまり彼らの音楽は行政によるジェントリフィケイションの産物であり、多分に政治的な側面を具えたものであると言うことができる。彼らの背景に関する情報がなかなか入ってこないのがもどかしいけれど、『RA』誌の記事によれば、ポルトガルで大きな影響力を持つあるジャーナリストが、「〈Príncipe〉は1000の政治集会よりも影響力がある」と書いたことさえあるらしい。要するに、正真正銘のカウンターなのである。リスボンのゲットーというと、ペドロ・コスタの『ヴァンダの部屋』(2000年)を思い浮かべる人も多いだろう。個人的にあの映画の中で最も印象に残っているのは、アフリカ系の若者がボブ・マーリーの歌を口ずさんでいるシーンなのだけれど、あの強烈な諦念の数年後にこのゲットーのシーンが胎動しはじめたわけだ。
 発火点となったのは、2006年にオンライン上に公開されたコンピレイション『DJ's Do Guetto Vol. 1』だったようである。しかしその時点ではまだ彼らの音楽は、リスボン内のローカルなものに留まっていた。彼らのシーンにとってより大きな転機となったのは、DJ Marfoxが2011年に放ったEP「Eu Sei Quem Sou」である。そのリリースとともに活動を開始したレーベル〈Príncipe〉は、DJ Nigga Foxの「O Meu Estilo」(2013年)や複数のアーティストが参加した「B.N.M. / P.D.D.G」(2013年)などのリリースを通して、着実にその特異なサウンドの胞子をばら撒いていった。そして2015年、彼らの奇妙なベース・ミュージックは、UKの名門レーベル〈Warp〉によって再発見されることになる。
 昨年の春から秋にかけてドロップされたEP3部作「Cargaa」は、OPNの『Garden Of Delete』を除けば、昨年リリースされた〈Warp〉のカタログの中で最も重要かつ最もエキサイティングなタイトルであった。その3枚の12インチは、リスボンのゲットー・サウンドをこれまで以上に広く世界に知らしめるものであると同時に(『ガーディアン』紙のような大手メディアが特集を組んだくらいである)、ベース・ミュージックがどんどんワールド・ミュージックと交錯していく近年の潮流を改めて確認する役割を果たすものでもあった。
 もしその「Cargaa」シリーズが1枚のコンピレイションという形にまとめられていたならば、そしてもう少しだけ早くリリースされていたならば、それは〈Planet Mu〉によるジューク集『Bangs & Works』(2010年)や〈Honest Jon's〉によるシャンガーン・エレクトロ集『Shangaan Electro』(2010年)と並んで、後世へと語り継がれる1枚になっていただろう。いつも少し遅いが、ポイントははずさない――たしかにそれこそが〈Warp〉のやり方ではあるものの、このリスボンのゲットー・サウンドに関しては、〈Adam & Liza〉がコンパイルした編集盤『Lisbon Bass』(2012年)がすでにその紹介者としての務めを果たしてしまっていたのかもしれない(ただし、〈Príncipe〉に焦点を絞った「Cargaa」とはコンパイルの趣旨が異なっているが)。

 このリスボンのゲットー・シーンをキツネだらけにした張本人が、DJ MarfoxことMarlon Silvaである。〈Príncipe〉の連中がこぞって「フォックス」を名乗るのは、シーンの中心人物である彼に敬意を表してのことらしい。1988年生まれのMarlonは、幼い頃にプレイしていた任天堂のゲーム『スターフォックス64』の主人公から現在のステージネームを思いついたそうだ。
 彼は上述の「Eu Sei Quem Sou」(「I know who I am」という意味)で高らかに自らの存在を世界へと知らしめた後、「Subliminar」(2013年)を挟んで、いまはFuture Brownの一員でもあるJ-Cushの主宰する〈Lit City Trax〉から「Lucky Punch」(2014年)を発表し、英米のベース・ミュージック・シーンとの合流に成功する。そして昨年は上述の「Cargaa」に参加したり、レトロスペクティヴな『Revolução 2005-2008』をまとめたりと、これまでの彼らのシーンや自身の歩みを総括するような動きを見せていたが、今年の春にようやく2年ぶりとなる新作「Chapa Quente」をリリースした。

 ここ数年の間に〈Lit City Trax〉や〈Warp〉といった英米のレーベルを経由したからだろうか、「Eu Sei Quem Sou」のような無茶苦茶な感じというか、一体どう形容したらいいのかわからない混沌とした感じはほんの少しだけ薄まっているものの、それでも十分強烈なダンス・トラックがこのEPには並んでいる。レゲトンの“Tarraxo Everyday”のみ他の曲とは毛色が異なっているけれど、先行シングルとなった“2685”から最後の“B 18”まで、基本的にはアフリカンな要素を強めに押し出したパーカッシヴなスタイルが貫き通されている。「俺がドンだ」というMarfoxの矜持が示された貫禄の1枚といったところか。

 そしてこの夏、〈Príncipe〉本体からCD作品としては初となるレーベル・コンピレイションがリリースされた。DJ Marfoxやすでに名の知られたDJ Nigga Foxをはじめ、「Cargaa」に参加していた面々(DJ Lilocox、DJ Firmeza、K30、Nídia Minaj、Babaz Fox、Puto Anderson、Puto Márcio、Ninoo、DJ Nervoso、Blacksea Não Maya)や、今回が初登場となる新人も名を連ねており、全23曲というお腹いっぱいのヴォリュームである。

 まずは、これまでの〈Príncipe〉のイメージを踏襲したスタイルの曲が耳に飛び込んでくる。DJ Danifoxの“Dorme Bem”やNídia Minajの“Festive”、あるいはDJ Nervosoの“Lunga Lunga”など、アフリカンで、トライバルで、パーカッシヴで、ポリリズミックなトラック群は、このリスボンのゲットー・シーンを外へ向けてわかりやすく紹介する役割を担っているのだろう。中でもやはりDJ Nigga Foxは頭ひとつ抜けている感があり(DJ Marfoxの「Chapa Quente」と同じ頃に出たコンピレイション「Conspiración Progresso」に収録された彼のトラックも、異様なもたつき感が脳裏に残り続ける極めてストレンジなトラックだった)、“Lua”のぶっ飛び具合は彼らのシーンの特異性を如実に物語っている。
 昨年の「Cargaa」では、まるで「シンプルなリズムを使用してはならない」という戒律でもあるかのようにみながみなポリリズミックに時を刻んでおり、そこに風変わりな上モノが重なることで独特の揺らぎが形成されていたのだけれど、このコンピレイションは「Cargaa」以上に多様なサウンドを差し出して見せる。
 DJ Cirofoxによるメロウなヒップホップ(“Moments”)、DJ Lycoxによるジャポニスム(“Dor Do Koto”)、DJ TLによるフェイク・ハウス(“Deep House”)、DJ LilocoxやDJ MabokuによるUKガラージ~ダブステップ(“La Party”、“Ruba Soldja”)、Niagaraによるシンプルな4つ打ち(“Alexandrino”)、Babaz Fox & DJ BebedeiraやNinoo & Wayneによるレゲトン(“Tarraxeí No Box”、“Cabríto”)、Puto Márcioによるフェイク・ダブ(“Não Queiras Ser”)、Blacksea Não Mayaによるエグゾティスム(“Melodias Rádicas”)、……とむりやり既存の言葉を羅列してはみたけれど、そのすべてにアフリカンなギミックが施されており、本当にストレンジなトラックばかりが並んでいる。彼らの果敢な試みに刺戟されたのか、「ドン」であるDJ Marfoxも自身の“Swaramgami”に細かく刻まれたヴォイス・サンプルを挿入するなど、新機軸を打ち出してきている。
 おそらくこのコンピレイションは、〈Príncipe〉というレーベルの底の深さを証明するために編まれたものなのだろう。しばしば、どこまでもロックの域を越え出ることのない平凡なバンドに「ミクスチャー」なる不相応な単語があてがわれることがあるが、〈Príncipe〉の連中は「ミクスチャー」という言葉の本当の意味を知っている。世界は俺らの手の中――まるでそう宣言しているかのような多彩なコンピレイションだ。

 現実がハードであればあるほど、そこで鳴る音楽は輝きを増す――リスボンの第4世界=ゲットーで生まれたこのベース・ミュージックは、まさにそのことを証明しているのかもしれない。この形容しがたい不思議なサウンドたちは、一体どのような背景から生まれてきたのだろう? かの地のアフリカ系の若者たちは、一体どのような状況に置かれているのか? かの地で進められているジェントリフィケイションは、一体どのような様相を呈しているのか?
〈Príncipe〉の音楽を聴き終えた僕はいま、そのあまりに奇妙なリズムとシンセの狂騒に、キツネにつままれたような気分になっている。

The Cinematic Orchestra - ele-king

 ジャズは古くから映画と蜜月を過ごしてきたが、ヒップホップやクラブ・ミュージックを経由して以降のそれ、となると優れた作品は限られてくる。
 ジェイソン・スウィンスコー率いるザ・シネマティック・オーケストラは、まさにその直球なグループ名が体現しているように、過去の輝けるジャズと映画の親密な関係を、あくまでムードとして現代的にアップデイトさせる試みをおこなってきた(僕のお気に入りは2002年の『Every Day』です)。
 そのザ・シネマティック・オーケストラが来年、なんと10年ぶりのアルバムをリリースするという。詳細はいまだ不明だが、フライング・ロータスやドリアン・コンセプトなど、エレクトロニック・ミュージックとジャズが新たな段階に突入しているいま、ザ・シネマティック・オーケストラの新作がどのような切り口を呈示してくるのか、期待は増すばかり。
 とりあえずいまはアルバムから先行カットされたシングルを聴いて、来年に備えましょう。

ザ・シネマティック・オーケストラが
来年、超待望のニュー・アルバムをリリースすることが明らかに!
1stシングル「TO BELIEVE」を解禁!

音楽家ジェイソン・スウィンスコーを中心に結成され、その名の通り、まるで映画のような壮大なサウンドスケープで人気を博すザ・シネマティック・オーケストラが、来年、10年ぶりとなる最新アルバムをリリースすることを明かし、1stシングルをリリースした。

The Cinematic Orchestra - To Believe feat. Moses Sumney

本楽曲「To Believe」では、ベック、スフィアン・スティーヴンス、ソランジュ、ジェイムス・ブレイクといったアーティストが絶賛し、PitchforkやThe Faderといった主要メディアから早くも注目を集めるLAの新進気鋭シンガー・ソングライター、モーゼス・サムニーをヴォーカリストに迎え、トレードマークである美しいピアノとストリングスのアレンジは見事。未だ詳細は明らかになっていないが、ついに来年届けられるというザ・シネマティック・オーケストラのスタジオ・アルバムへの期待をさらに高めてくれる楽曲となっている。

label: NINJA TUNE
artist: The Cinematic Orchestra
title: To Believe (feat. Moses Sumney)

cat no.: ZENDNLS444

iTunes Store : https://apple.co/2ezgSKR
Apple Music : https://apple.co/2eppX8x

ISSUGI 、格好良すぎるぜ! - ele-king

 ISSUGIや仙人掌って、夜の10時の取材にスケートに乗って来るような連中で、で、12時過ぎに、「じゃ」「お疲れっす」と言って、スケートに乗って帰って行くんですよ。なんかこう、その感じが格好いいんだよね。で、そんなライフスタイル、そんなアーバン・リアリティが彼らの音楽にはよく出ている。
 ヒップホップの文化には、でかいところを相手にぶんどるっていうのがあって、“ペイド・イン・フル”とか、持って行くだけ持って行く金銭闘争というか上昇志向というか、90年代はとくにヒップホップといえばメジャーを相手にそんな格闘をしていたようなところがあるんですけど、DJシャドウ周辺のインディ・ヒップホップと呼ばれるような連中は、パワーゲームには参加せず、好きなことを好きなようにやっていく潮流を作っていった。DOGEAR RECORDS/DOWN NORTH CAMPも大きくはそんな流れにあると思う。過剰にはならない。ビートは黙々と刻まれ、言葉が自然と溢れてくる。
 さて、そのクルーのひとり、ISSUGIやが待望のニュー・アルバム『DAY and NITE』をリリースする。5lack や仙人掌、KID FRESINO、BES が参加。プロデューサーはブルックリン在住のGRADIS NICE。ストリート系とはまさにこのこと。ひとりでも多くの人に聴いて欲しい。

ISSUGI FROM MONJU - DAY and NITE
DOGEAR/Pヴァイン・レコード
Amazon

<トラックリスト>
1. Intro Cut by DJ Scratch nice
2. Navy Nubak
3. Flowr(album version)
4. Skit(PM)
5. Time feat Kid Fresino, 5lack Cut by DJ K-flash
6. Heat Haze feat Mr.Pug
7. How Ya Livin feat BES
8. Water Point(Remix) Cut by DJ Bress & DJ Shoe
9. Midnite Move feat. 仙人掌
10. Interlude(AM)
11. Nite Strings
12. Outro(In the evening)
All Track prod by Gradis nice
#3 "Flowr" prod by Gradis nice & Kid Fresino

ISSUGI - Profile

 MONJU / SICKTEAM / DOWN NORTH CAMP のメンバー。仙人掌、 Mr.PUG と共に MONJU として『CONCRETE GREEN』を始めとする数々の CD への参加で注目を集め、2006 年にファースト EP『103LAB.EP』、2008 年 にはセカンド EP『Blackde.ep』をリリース。2009 年にはソロとしてのファースト・ア ルバム『Thursday』をリリース。16FLIP と共に作られた音楽性は ISSUGI のス タイルや空気を一枚で浮かび上がらせ、音源を通して各地に届くようになる。
 以降は東京内外でライブする中、繋がっていった BEATMAKER達と 2010 年にセカンド・アルバム『The Joint LP』をリリース。BUDAMUNKY(a.k.a. BUDAMUNK)、MASS-HOLE、PUNPEE、Malik、K-MOON as Gradis Nice をプロデュースに迎えた『The Joint LP』は自身の内面をより深く 投影した作品で着実に強度を増した音楽性を示した。2011年にはJAZZYSPORTからBUDAMUNK、S.L.A.C.K.(5lack)とのユニット、SICK TEAMとしてのアルバムや現在NYに渡っているDJ SCRATCH NICE とのミッ クステープ『WHERE OWN WONDER』をドロップ。SICK TEAM のアルバム 『SICKTEAM』では BUDAMUNK、S.L.A.C.K.、ISSUGI、この3人での化学反応や feat に EVIDENCE、ILLA J、ROC MARCIANO を起用するなど話題を集め、海外の HipHop サイトなどでも紹介されることとなった。
その後2013 年 2 月にリリースしたサード・アルバム『EARR』は再び全曲16FLIP と共に作り上げ、ALBUMとしての世界観や中毒性のある BEAT達が高く評価され、Complex UK のサイトでは「The Best Of Japanese Hip-Hop: 25 Artists You Need To Know」の記事に ALBUM とともに記載され、同作は「驚異的な作品(Phenomenal)」とも評された。同年 11 月には以前から数々のJOINTを生み出してきた盟友 BUDAMUNKとのタッグ、ISSUGI & BUDAMUNK名義(II BARRET)でフルアルバム『II BARRET』をリリース。2014 年には SICK TEAM 名義で『SICK TEAM 2』をリリ ースするなどマイペースながらも精力的に活動。2015 年 4 月には ISSUGI & DJ SCRATCH NICE 名義で待望の 4th ALBUM 『UrabanBowl Mixcity』をリリース。2016 年、2 月には ISSUGI×JJJ 名義の FREEMIXTAPE“LINK UP 2 EXPERIMENT"を Dogearrecords の homepage で公開している。そして現在サイゾー動画と連動した自身の番組、"7INCTREE"(毎月 7inch をリリ ースするプロジェクト)を開始。すでに7枚の7inch をリリース中。
https://soundcloud.com/issugi

GRADIS NICE - Profile
アメリカ合衆国 ニューヨーク市 ブルックリン区を拠点に活動するプロデューサー。 近年では IO『Soul Long』、C.O.S.A.×KID FRESINO『Somewhere』、KID FRESINO『Conq.u.er』、ISSUGI & DJ SCRATCH NICE『UrbanBowl Mixcity』、 仙人掌『Be in ones element』、5lack『5 sence』、B.D.『BALANCE』、 Flashbacks『Flyfall』等の ALBUM にプロデューサーとして参加している。
https://soundcloud.com/gradisnice
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