「R」と一致するもの

Autechre - ele-king

 90年代後半には Max/MSP を導入し、初期のサウンドから大いなる飛躍を遂げたオウテカ。そんな彼らの「中期」とも言える00年代を代表する名作──忘れもしない春、転げまわる小さな金属球のごとき独特の響きがいまでも耳にこびりついている “VI Scose Poise”、同曲で幕を開ける『Confield』(2001年)と、同作をさらに発展させメロディアスな瞬間もたびたび顔をのぞかせる『Draft 7.30』(2003年)の2タイトルが、去る2月24日に(オリジナル盤リリース以来)初めてヴァイナルでリイシューされている。
 その復刻を記念し、両作をモティーフにしたTシャツおよびロングスリーヴTシャツが数量限定で発売されることとなった。現在ビートインクのオフィシャルサイトにてオンライン受注がスタートしている。締切は3月26日、商品の発送は4月中旬からとのこと。そういえば『Confield』も『Draft 7.30』も出たのは4月だった。訪れる春、オウテカを着て、オウテカを聴こう。

『CONFIELD』と『DRAFT 7.30』
オリジナルリリース以来初のヴァイナル・リイシューを記念し
サステナブル素材を使用したTシャツと
ロングスリーブTシャツが数量限定で発売決定!


Confield Black T-Shirt ¥5,500 (税込)
ECOPETのリサイクルポリエステルを採用
BEATINK.COM:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13311


Confield Charcoal Grey Long Sleeve T-shirt ¥8,800 (税込)
オーガニックコットン100%
BEATINK.COM:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13313


DRAFT 7.30 Black T-Shirt ¥5,500 (税込)
ECOPETのリサイクルポリエステルを採用
BEATINK.COM:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13312


DRAFT 7.30 Charcoal Grey Long Sleeve T-shirt ¥8,800
オーガニックコットン100%
BEATINK.COM:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13314


label: Warp Records
artist: Autechre
title: Confield
release: Now On Sale
BEATINK.COM: https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13255

tracklist:
01. VI Scose Poise
02. Cfern
03. Pen Expers
04. Sim Gishel
05. Parhelic Triangle
06. Bine
07. Eidetic Casein
08. Uviol
09. Lentic Catachresis


label: Warp Records
artist: Autechre
title: Draft 7.30
release: Now On Sale
BEATINK.COM: https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13256

tracklist:
01. Xylin Room
02. IV VV IV VV VIII
03. 6IE.CR
04. TAPR
05. SURRIPERE
06. Theme Of Sudden Roundabout
07. VL AL 5
08. P.:NTIL
09. V-PROC
10. Reniform Puls

interview with Sleaford Mods - ele-king


Sleaford Mods
UK GRIM

Rough Trade / ビート
※ウィットに富んだ歌詞対訳付き

RapElectronicPost Punk

beatink.com

 いまのぼくがスリーフォード・モッズを愛し聴いているのは、UKの労働者階級に特別な共感があるわけでもなければ、今日のUKの政治的惨状を理解しようと思っているからでもない。そんなこと知ったこっちゃないし──というか、このおよそ10年ほどの我が国たるや、UKのことを案じるほどの余裕をかましている場合ではないのだ。ここ日本から見たら英国なんて腐っても英国であってはるか天上。かつてザ・クラッシュが歌ったセリフを借用して返してやろう。あんたら英国が悲惨だとしたら俺ら日本はどうなるのかと。
 ぼくのスリーフォード・モッズへの愛は、パンクへの愛だ。パンクの魅力のひとつはウィットに富んでいることにあるが、スリーフォード・モッズにはウィットがある。ウィットというのは “賢くて面白い” ことで(つまりバカにウィットはない)、セックス・ピストルズはウィットの塊だった。これにぴったり意味の合う日本語はおそらくないが、忌野清志郎にはウィットがあった。もちろん優れたブラック・ミュージックには優れたウィットの使い手が数多く存在し(その代表をいまひとり挙げるならジョージ・クリントンで、ぼくはサン・ラーもウィットの名人だと思っている)、一流のウィット使いはメタファーやダブル・ミーニングを巧みに多用する。スリーフォード・モッズのジェイソン・ウィリアムソンもメタファーとダブル・ミーニングの達人だ。『UK GRIM』=「悲惨なUK」もしくは「UKグリム(グリム童話、狼=資本主義に襲われる赤ずきんちゃん=庶民)」、あるいはまた、 “GRIM” に “E” を足して「グライム=汚れ」。
 スペシャル・インタレストもそうだが、パンク・ロックはそして、最悪な社会状況をネタにしながら最高にクールな音楽がこの世界にはあるという夢のある話をいまも保持している。深刻な現実があってタフな人生がある、が、それに打ち勝つことができるかもしれないという素晴らしい可能性、自分が自分自身であることを強調し(だからこの音楽は早くから女性や性的マイノリティに受けた)、この社会のなかで生きることを励ます音楽、それがパンクでありスリーフォード・モッズの本質である。
 というのも、彼らはマイブラやブラーやレディオヘッドよりも若いのに、彼らだけが “中年” と言われ続けている(ビートインクの過去の宣伝文句を参照されたし)。しかしながらこれは、ジェイソンとアンドリューがそれだけ苦労してきたことを意味している。つまり彼らは、人びとから無視されている報われない人たちの気持ちをより理解する能力を持っている可能性が高いということの証左でもあるのだ。また、スリーフォード・モッズの快進撃からは、こうしたロックやパンクやラップやエレクトロが、昔のように、若者だけの特権ではなくなったということもあらためて認識させられてしまう。彼らがブレイクしたのは40を過ぎてからだが、スリーフォード・モッズのサウンドと言葉は、笑えるがシリアスで、誰もそれをやっていなかったという意味において“新しかった” し、クリエイティヴだった(クリエイティヴであることを放棄していなかった)のである。これは人生論としても意味があるだろう。
 だから彼らの最新アルバムとなる『UK GRIM』は、こういう怒った音楽が21世紀にも生まれているのだという、年老いた元パンクにありがちな郷愁めいたところで評価する作品ではない。だいたい、アルバム冒頭を飾る表題曲の寒々しいベースが刻まれ、ビートが発動し、ジェイソンのラップが絡みつくと、もう居ても立ってもいられずにジャンプするしかないのだから。チキショー、なんて格好いいんだ。もっともアルバムは3曲目にとんでもない殺し屋を用意している。挙動不審で逮捕されたくなかったらドライ・クリーニングのフローレンスをフィーチャーした曲、 “Force 10 From Navarone” を間違っても渋谷を歩きながら聴かないことだ。これはザ・フォールの“トータリー・ワイアード” やPiLの “アルバトロス” のような、冷たいからこそ炎が燃えるタイプの曲で、希望を持てずに政治不信に陥っている民衆の醒めた感性と確実にリンクしている。アルバムはほかにも良い曲が目白押しで、 コニー・プランク&DAFを彷彿させる“Right Wing Beast(右翼の野獣) ” や トライバルなリズムを使った“Tory Kong(保守党コング) ” といった賢く笑える題名をもった曲もあれば、メロディアスなピアノを挟み込んだニュー・オーダー風の “Apart from You”、シンセ・ポップとオールドスクール・ヒップホップの中間にあるような“Rhythms of Class” も面白い。とにかくアンドリュー・ファーンは、最小の音数で、しかしヴァラエティに富んだサウンド作りに腐心し、それはかなりの確率で成功している。

 今回の取材にはサウンド担当、アンドリュー・ファーン(ステージ上で、静かに立ちながらボタンを押している男である)にも参加してもらった。彼の登場はエレキングでは初めてなので、エディットは最小限にとどめて掲載することした。彼らの誠実な人柄が見えると思うし、10年前と変わらない彼らのアティチュードもたしかめることができるはずだ。最初のほうではファッションについても話している。ジェイソンが服を好きな話は有名だが、アンドリューのTシャツ趣味にも前々から興味があったのだ。
 インタヴューを最後まで読んでいただければわかるように、国としては英国のはるか下にいる日本だが、同じように政治に絶望している人びとにとっての打開策においては、意外と共通し共有しうるヴィジョンがあるようで、そのこともまた、国も言語も違えどスリーフォード・モッズを好きになれる理由なのだろう。UKはお前の声なんか聞いちゃいないと、アルバムの冒頭でジェイソンは繰り返しているが、そこは日本もまったく同じ。たとえそうでも、スリーフォード・モッズとはこういうことなのだ──窮地に追い込まれても思い切りジタバタしよう、諦めずに言うことだけは言っておこう、で、楽しもうと、それはおそらく健康に良い。そう思いながら、今日もジタバタしよう。

だからアンドリュー、お前ははじめから、最初からモノにしてたんだと思う。俺たちの初期の写真から最近のものまで眺めてみても、お前は一貫してぴったりハマってた。お前の服装センスは生き残った、みたいな(笑)。

今年はちょうど、『Austerity Dogs』を出してから10年になるんですよね。その後スリーフォード・モッズ(以下、SM)は評価され、ファンを増やし、あなたがたの生活も音楽へのアプローチもだいぶ変わったと思いますが、新作『UK GRIM』を聴いて、SMのパッションも怒りもまったく変わっていないことに感銘を受けました。自分たちではそのあたり、どう思いますか? 

ジェイソン:あー……とにかく、自分たちのやってることが相当に気に入ってる、ってのがあるんじゃない? 俺たちはなんであれクズなことは絶対にやるつもりがないし……それだと、俺たちの場合はとにかくどうしたって機能しないんだ。俺たちが興味を掻き立てられる何かである必要があるし、かつ、自分たちもその上にしっかり足を据えて立てるものじゃなくちゃならない。ってのも、そうじゃなかったら、不愉快なものになるだろうし、俺たち自身にとってもあんまり良くない何かに変わってしまうわけでさ。でも、俺にとって運が良かったことに、「良い作品を作りたい」って点に関して、自分と同じくらい目先が利いてて鋭く、かつパッションのある――俺は自分はそうだと思ってるんだけど――そういう人間に出会うことができたんだよね。だから、そんな俺たちふたりが合わされば自分は心配する必要はない、ってのかな……要するに、アンドリューは標準以下な質のものには一切我慢しないし、うん、とにかく彼は妥協しないんだ。というわけで、それがあるから、すごくうまくやれてるっていう。

アンドリュー:(うなずきつつ)もうちょっと「誰のお口にも合う」ようなアルバムを作っていたとしたら、きっと俺たちは自分たち自身にがっかりしちゃうんじゃない?

ジェイソン:ああ、だと思う。でも、そうは言いつつ――アンドリュー、お前も以前に言ってたけど、本当に良い作品が生まれるのには、アルバムごとにある程度の運の良さも伴うものだ、って点もあるんじゃない? またも素晴らしい歌を書けて俺たちはすごくラッキーだな、と思うし。実際、これらはグレイトな楽曲群だし、俺たちは今回のアルバムを本当に誇りに思ってる。それはすべての曲に言えることであって。

アンドリュー:うん。

ジェイソン:でもまあ……どうなんだろうな、自分でもわからない。とにかくハード・ワークと固い決意の産物じゃないかと俺は思うけどな……。

アンドリュー:うん、それだね。そうは言っても、はじめのうちは幸運にも恵まれたよな、じゃない?

ジェイソン:たしかに。

アンドリュー:俺たちのはじまりの時点ではツキがものを言った。ただ、なんというか、俺たちのいる音楽の世界――っていうか、これはどのメディア(媒体)形態でもそうなんだけど――いったんドアが開いてなかにさえ入れれば、他の連中よりももっと多くの機会に恵まれるようになる、そういう世界で俺たちが生きているのは事実なわけで。

ジェイソン:うんうん。

アンドリュー:悲しい話だけど、現実はそうなんだよね。

ジェイソン:まあ、そういう仕組みだからな。

アンドリュー:ああ。で、誰であれあのドアを抜けることができた奴は、ドアを潜った際の自分にあったもの/それまでやっていたことを維持する必要があると思うけど、残念ながら多くの人間がそれを棄てているよね。で、音楽産業に吸収されてしまう、というか。

ジェイソン:その通り!

アンドリュー:それをやったって、良いことはなんにもないよ。だから、それでクソみたいなアルバムを作ることにして、でもやっぱり失敗したから、デビュー時にもともとやっていたことに立ち返りました、なんてバンドもなかにはいるわけで。自分を曲げずに頑張り続けなくちゃ(笑)!

ジェイソン:だな、自分を通さないと。

不平だらけ。ほんとブーたれてる。で、ほんと、いまってそれくらい悲惨なことが余りに多過ぎだしさ……しかも、この状態はまだこれからも続くと俺は思う。

アンドリューさんは主にビート/音楽面を担当していますが、SMにとってのこの10年で変わったこと変わらなかったこととは何だと思いますか? あなた自身の機材やギアはどう変化しました?

アンドリュー:ああ、毎回、少しずつ変わってるんだ。思うに、過去10年くらいの間に、音楽作りのためのテクノロジーは以前よりずっと安価になったし、ちょっとしたギアもあれこれも比較的買いやすくなって。だから、何か新しいガジェットを購入したら、それが自分にとって音楽をもっと作るインスピレーションになる、という。それはやっぱり、使えるお金がいくらかあるところの利点だよね、対して以前の自分は全然お金がなかったから。昔はジェイルブレイク済みのiPad(※jailbreak=脱獄。基本iOSを改変し使用できるアプリや機能を拡張すること)を持ってて――

ジェイソン:ハッハッハッハッ!

アンドリュー:(笑)おかげで、無料のキーボードだのシンセだののソフトウェアを全部使えてさ。それって良いよね。何か新しいものを作り出すために、別に多くは必要ないってことだから。
ジェイソン:ああ、それは必要ない。

せっかくの機会ですし、アンドリューさんに訊きたいことがほかにいくつかあるんですが、まずはあなたのTシャツの趣味について質問させてください。

アンドリュー:(苦笑)オーケイ!

ジェイソン:(爆笑)

坂本:(笑)。たとえば今日は「HARDCORE」とロゴの入ったTシャツでかっこいいですが、これまでピカチューであるとか――

アンドリュー:(笑)うん、あのピカチューTはまだ持ってる!

坂本:シンプソンズ、はたまたディズニーのパロディTであるとか、いつもユニークなTシャツを着ていますが、どんなこだわりがあるのでしょうか? 

アンドリュー:(笑)まあ、単にヴァイブってことだよ! とにかくパッと見て、「これはイエス」、「これはノー」、そのどっちかに分かれるしかないっていう(苦笑)。だから、別にギャグとして笑えなくたっていいんだし……要はファッションと同じ話というのかな、「これ、自分は着るだろうか、それとも?」ってこと。うん、基本的にはそれだけ。

坂本:なるほど。

アンドリュー:まあ、たまには背景にちょっとしたストーリーが含まれることもあるけどね……。あ、たとえば、いま話に出たディズニーのパロディT(※「Walt Disney」のお城のロゴを「Want Drugs?」に書き換えたもの)、あれは色んなTシャツを作ってるイタリア人男性の製作したもので、彼は俺にああいうおふざけTをたくさん送ってくれるんだよ。でも、それにしたって、俺がいつもある種の類いのTシャツを着てるからなんだろうしね、うん(笑)。

ジェイソンさんは服装にこだわりがあると思いますが、アンドリューさんのファッション・センスに関してどのような意見をお持ちでしょうか? たまに「こいつ、いったい何着てるんだ?」と思ったりしませんか?

アンドリュー:ブハッハッハッハッ!

ジェイソン:ああ、たぶん、若い頃の俺だったらそう思ってただろうな。若いとほら、まだもうちょっとナイーヴで、頭が悪いもんだし――

アンドリュー:うん。

ジェイソン:――それでこの、「バンドってものはこういうルックスであるべき」云々の概念でガチガチなわけで。

アンドリュー:だよな、うんうん。

ジェイソン:でも、思うに、俺たちも歳を食うにつれて――だから、誰でもある程度の歳になると、「人間は人間なんだし」ってことになるんじゃない? 歳を重ねて何かが加わるっていうか、要するにアンドリューはアンドリュー自身でいるだけなんだし、彼が彼以外の他の誰かになろうとしたって意味はない。同じことは俺にも当てはまるし、自分以外の誰かになろうとは思わないな……そうは言いつつ、俺自身もアンドリューの服装センスからちょっといただいてきたんだけどね。確実に、以前よりも少しカジュアルな方向に向かってる。近頃の俺は、もっとショーツを穿くようになったし。

坂本:たしかに。

アンドリュー:でもさ、ショーツ着用って、それ自体がデカいじゃん? 

ジェイソン:ああ。

アンドリュー:ハイ・ファッションの息の根を止めたのが、実質、スポーツウェアだったわけで……。

ジェイソン:ああ、基本的にそうだよな。だからアンドリュー、お前ははじめから、最初からモノにしてたんだと思う。俺たちの初期の写真から最近のものまで眺めてみても、お前は一貫してぴったりハマってた。お前の服装センスは生き残った、みたいな(笑).。

アンドリュー:(笑)うん。

ジェイソン:お前は見事にやってのけた。

アンドリュー:アッハッハッ!

坂本:(笑)

ジェイソン:いやだから、俺だって、写真のなかでいくらでも自前のデザイナー・ブランド服を着て気取ってポーズを決められるけど、ほかの連中もみんなその手のルックスだと、「それって違うだろ」と思うし。っていうか、ちょっとアホっぽい見た目だよな。

アンドリュー:ああ。

ジェイソン:そうは言ったものの――昔だったらたぶん買う金のなかったような洋服を買うのは、やっぱり躊躇するだろ、お前だって?

アンドリュー:うん、そこだよなー。

ジェイソン:多くの面で、お前はいまやいっぱしの、ファッションの今後の雲行きを予想していく予報官なんだしさ。

アンドリュー:ああ。でもそれをやるのは、時間が経つにつれて、ややこしくなっていくよな。

ジェイソン:うん、(苦笑)予想するのは確実にむずかしくなっていく。そこは、お前もちゃんと考えないと。だけどさ、心配しなくちゃいけないのはかっこいいスニーカーを履いてるかどうか、その点だけに尽きるような時点にまで達したんだから、それってかなりナイスじゃない? ハッハッハッ!

アンドリュー:たしかに、その通り(苦笑)。

アンドリューさんは、Extnddntwrk(extended network)名義でずっとソロ活動もしています。アンビエントやエクスペリメンタル、最新作ではジャングルもやっていますが、こちらのほうのコンセプトもせっかくの機会なので教えてください。

アンドリュー:いや、これといったコンセプトはなくて、完全に自己満足でやってる。思うに00年代あたりって、エレクトロニカのシーンもまだ揺籃期だったんだよな。なかでもとくに、98年〜01年の時期。俺も軽く関わったあの当時のシーンには、誰でもやれる家内工業めいたところが少しあったし、日本もきっとそういう状況だったんだろうと思う。

坂本:ええ。

アンドリュー:ところが、その、いわばポスト・エイフェックス/ポスト・オウテカ的なヴァイブを備えたシーンもいったん終わりを迎えたわけで……もちろんそのシーンはいまも存在してるけど、あの当時の方がはるかに人気が高かった。だからなんだ、さっき言った家内工業的なノリで、俺がアルバムを1枚出したのも。でもまあ、とにかくそういうことだし――かなり「ポスト・エヴリシング」な感じ、ってことなんじゃない? 自分の見方はそれだな。ポスト・アンビエントに、ポスト・あれこれに……で、俺からすれば本当に、それらすべてをひとつにまとめたのがエレクトロニカだ、そう思うから。あれはダンス・ミュージック界の一部を形成していた、ダンス以外の色んな音楽、ブライアン・イーノ等々を聴いていた人びとのことだからさ。とにかく、俺はほかとはちょっと違うことをやろうとしているだけなんだ、(ハウス/テクノの)四つ打ちビートから離れていこうとしながら。

ジェイソン:うんうん。

アンドリュー:その意味ではドラムン・ベースの果たした役割も大きかったよ。ドラムン・ベースは素晴らしい。さっきジャングルを指摘されたけど、俺のパートナーがクリスマス・プレゼントにロニ・サイズのヴァイナル盤を贈ってくれて。

坂本:それは良いですね!

アンドリュー:うん、ただし、アナログ再発されていないから中古盤だったんだ。要するに言いたいことは、あの頃はああいう実に素晴らしいアルバムがコマーシャル面でも成立可能だったんだな、と。すごくクールな作品だけど、それにも関わらず誰もがあれを聴くことになったし、ああいう作品が「ドア」を通り抜けて人びとに達したわけ。で、当時あの手のエレクトロニック・ミュージックを作っていた連中の夢がそれ、何か実に驚異的な作品をやってのけ、それを多くの人びとに届けることだったんだと思う。ほかにもたくさんいるよね、ポーティスヘッドやマッシヴ・アタックといったバンドが、多くの耳に音楽を届けてみせたんだから。

ドライ・クリーニングのヴォーカル、フローレンス・ショウが登場する “Force 10 From Navarone” は最高にクールでしたが、このコラボはどういう経緯から実現したのでしょうか?

ジェイソン:ドライ・クリーニングは2021年の『Spare Ribs』向け英ツアーでサポートを担当してくれてね。俺は彼らの出したデビュー・アルバム(『New Long Leg』)にかなり魅かれたし……俺たちふたりとも、「彼らは本当に興味深いな」と思ったわけ。で、アンドリューが“Force 10 From Navarone”の音楽パートを送ってきたとき、俺もすぐに「おっ、これは良いな」とピンときたし、曲のアイディアをまとめていくうちにフローレンスに参加してもらったら良さそうだなと思いついて。そこで彼女に興味はあるかな?と打診してみたところ、ラッキーなことに彼女もやる気だった、という。あとはご存知の通り。

アンドリュー:ああ。

ジェイソン:うん、あれは俺にとっても、アルバムのなかで抜きん出たトラックのひとつだね、間違いない。

彼女の無表情な歌い方はとてもユニークですが、SMはドライ・クリーニングのどんなところが好きなのでしょうか?

ジェイソン:やっぱり、フローレンスのヴォーカルが俺は大好きだな。でも、バンドの側も素晴らしい。

アンドリュー:だよね。

ジェイソン:ほとんどもう、相当ミニマルなものに近いというか……要するに余計なあれこれでゴタゴタしてないっていう。

アンドリュー:たしかに。

ジェイソン:あのバンドの連中は全員、かなりミニマルなプレイヤーだよな。

アンドリュー:それに、多くの面でかなりオリジナルなバンドでもあるし。

ジェイソン:うんうん。

アンドリュー:いやだから、音楽スタイル云々で言えば色んな影響を受けているだろうけど、こと「現在のシーンで何が起きているか」って点から考えれば、彼らはほんと、突出した存在っていうか。

ジェイソン:ああ、同感。

アンドリュー:フローレンスはもちろんだけど、それだけじゃなく、音楽そのものもね。

ジェイソン:たしかに。だから、彼らはすべてを兼ね備えてるバンド、それは間違いない。

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もうちょっと「誰のお口にも合う」ようなアルバムを作っていたとしたら、きっと俺たちは自分たち自身にがっかりしちゃうんじゃない?


Sleaford Mods
UK GRIM

Rough Trade / ビート
※ウィットに富んだ歌詞対訳付き

RapElectronicPost Punk

beatink.com

『UK GRIM』は、前作『Spare Ribs』に較べて「怒った」アルバムだ、という印象なのですが――

ジェイソン:ああ、うんうん。

今作におけるジェイソンさんの怒りは、イギリスに住んでいないぼくたち日本人にとっても共有できることが多いです。

アンドリュー:グレイト!

で、あなたは基本的にイギリスのことを書いていますが、しかしSMはドイツなどイギリス国外にもファンがいます。日本にだって熱狂的なファンがいます。なぜ言葉が大きな位置を占めるSMの音楽が、イギリス国外/非英語圏でも受けるのか考えたことがありますか?

ジェイソン:あー……どうなんだろ、俺にもどうしてかわからないけど、結局は「音楽」ってことじゃない? 俺たちの音楽には違うタイプのスタイルが色々と混ざってるし、もしかしたらそれらが聴き手にも少し聴き馴染みのあるものに感じられる、とか? さっきアンドリューも話していたように、エレクトロニカも多く残響してる音楽だし、アンビエントやサウンド・スケープ的なものもあり、なんでもありだしね。ああ、それにパンクも混じってる。

アンドリュー:とは言っても、それって「だからじゃないか」と推量するしか俺たちにはできないことだよね。

ジェイソン:うん、その通りだ。

アンドリュー:それに、(非英語圏でも)英語を話す人はたくさんいるんだし。

ジェイソン:たしかに。

アンドリュー:かつては大英帝国があったわけで、それで俺たちイギリス人は、人々に――

ジェイソン:――みんなに英語を話すよう強制した、と。

アンドリュー:そうそう(笑)。

ジェイソン:ハッハッハッハッ!

前作はわりと歌っていましたが、今回はラップがほとんどです。それというのも、怒りが前面にでているアルバムだから、というのもあると思うのですが、いかがでしょうか? 

ジェイソン:うん。まあ、正直、ふたつの要素が組み合わさってる。『Spare Ribs』を書いてた頃、俺は背中を痛めていたせいで鎮痛薬をたくさん服用してたし、それにロックダウン期でもあった。だから、どうしたって普段より少し大人しくなるってもんだし、ほとんどもう、一種の発育不全みたいな状態になったというか。で、そのふたつの要素が合わさったことで、あのアルバム(『Spare Ribs』)収録曲の多くはかなり……とは言っても、アンドリューの作った音楽部そのものは、部分的には『UK GRIM』と同じくらいアップテンポなものだったとはいえ、ヴォーカル面で言えば、俺はいつもより少し退いて力を緩めたっていうのかな、いやほんと、あの頃はかなり(薬の副作用/COVID他の)ショックで打ちひしがれていたと思うし……。

アンドリュー:いつもより少しこう、メランコリックな時期だった、っていうか。

ジェイソン:イエス、その通り。ほんと、そうだったよな、じゃない?

アンドリュー:内省的になった。

ジェイソン:そうそう、あれは自分の内側に目を向けた時期だったし、思うに――それゆえに、「あの時期」の俺たちにしか書けなかったであろう、そういうアルバムになったんじゃない?

アンドリュー:うんうん。

ジェイソン:だからあの時期にふさわしい内容だったと思う。でも『UK GRIM』、これは「ポスト・パンデミック」なアルバムだし――うん、とにかく、これらの楽曲を書いていた頃の俺はものすごく怒ってたっていう(苦笑)。

アンドリュー:アッハッハッハッハッ!

坂本:(笑)。でも、「ジェイソンはいつも怒ってる」って印象があるんですよね。過去に、SMは「UKでもっとも怒れるバンド」という形容を捧げられたこともありますし。

アンドリュー:(苦笑)。
ジェイソン:(爆笑)。

なのでお訊きしたいんです。ジェイソンは、もちろん私人として/プライヴェートでは幸せな方だと思いますが――

ジェイソン:ああ、その通り。

アンドリュー:うんうん。

こうやって、ステージや音楽表現において常に情熱的で、ド迫力で、怒りを持続されるのは、すごく疲れるし、たいへんなことだと思います。ジェイソンさんは、怒り続けるのに疲れたりはしないのですか? 

ジェイソン:いや、それはない。ノー。というのも、俺はその在り方は「正しい」在り方だと思うから。フィーリングってことだし、だから疲れはしない。まあたまに、毎晩立て続けにギグをやるのに、ちょっと消耗させられることはあるけどさ。

アンドリュー:ああ、ツアー自体は疲労することもある。

ジェイソン:とはいえ――

アンドリュー:いやだから、それはある意味、俺たちがイギリス人だってことなんじゃないの(苦笑)?

ジェイソン:(笑)だな! たしかに。俺たち、いっつも不満たらたらな連中だし……。

坂本:(笑)

アンドリュー:「ここんとこずっと、ブーブー文句ばっか言ってるな、俺」みたいな(笑)。

坂本:メソメソ泣き言と文句ばかり垂れている、と。

ジェイソン:(笑)その通り! 不平だらけ。ほんとブーたれてる。

アンドリュー:ハッハッハッ!

ジェイソン:(苦笑)で、ほんと、いまってそれくらい悲惨なことが余りに多過ぎだしさ……(真顔に戻って)しかも、この状態はまだこれからも続くと俺は思う。

アンドリュー:うん。

ジェイソン:このまま続いていくだろうな。でも、ある程度までは、俺たちも以前の状態に戻りつつある。だから……このアルバム(『UK GRIM』)がいつもよりやや怒りの度合いが強いのはたぶん、俺たちは去年、ギグ/ツアー生活に一気に引き戻されたから、というのもあるかもしれないよ? ものすごく慌ただしいスケジュールをこなしたし、このアルバムのなかの怒りやフラストレーションの多くは、もしかしたら、多忙なツアーで消耗したことから来たエネルギーでもあったのかも? まあ、俺にはわからないけど……。

坂本:なるほど。いや、とかく日本人は、文化/慣習として怒りを忘れがちな「水に流そう」な民族なので。

ジェイソン:ああ、そうだろうね。

坂本:一種の東洋哲学でしょうし、そんな我々からすると、あなたみたいに怒りの火を絶やさず燃やし続けるのは疲れないのかな、と思うわけです。我々も、あなたから学んだ方がいいのかも……?

ジェイソン:(爆笑)ブハッハッハッハッ!

坂本:いや、「水に流そう」も良いことだと思うんですが、そうやって忘れてしまうと、同じ過ちを繰り返すことにもなりますし。

アンドリュー:うん。

ジェイソン:でもさ、そうやって水に流すほかないんじゃない? 昔、アンドリューがよく言ってたように、「俺たちが(歌のなかで言っていることを)ストリートで実際に行動に移したら、きっと逮捕されるだろう」ってこと。

アンドリュー:その通り。

ジェイソン:だから、ノーマルな日常生活の場面では、他の人びとと同じように落ち着いていることは大事だと俺は思っていて。というのも、俺は暴力はなんの解答にもならないと思うし――独善的になるだとか、言葉の暴力で罵るだとか、そういうのはとにかく答えじゃないだろう、そう思うから。だけど、「レコードのなかで」であれば、現実よりももうちょっとファンタジーを働かせることが許されるわけで。

アンドリュー:その通り。

坂本:作品のなかでの表現、ということですしね。

ジェイソン:うん、表現ってこと。だから俺としても、歌詞の面でああやって色いろと実験するのはかなり好きだし、それをやるのは全然OKだと思う。で、それって……俺たちがやってるのって、そういうことじゃないかな? 「これ」といったルールは、別にないんだし。

アンドリュー:ああ。要は、セラピーってことだよ。

ジェイソン:うん! たしかにそうだ。

アンドリュー:だから、あれをやるのはお前にとっては一種のセラピーだし、と同時におそらく、それを聴くリスナーにとってのセラピーにもなっている、と。

ジェイソン:ごもっとも、その通り。

アンドリュー:胸のなかにたまってる思いを吐き出してスッキリする、という。

ジェイソン:だね。

アンドリュー:それに、いまはほんと、そういう音楽って多くないし。

ジェイソン:ない、ない。

前進していくための唯一の道は、小さな空間を、ちょっとした余裕を自分に与えることだと思う。自分自身に、自分の家族に、自分の周囲のコミュニティに、息をつけるちょっとした余裕/小空間をもたらすこと。ここを生きていくには、それしかないと思う。

ジェイソンさんが政治的なことを歌詞に込めるとき、リスナーにどんな期待を抱くのでしょうか? リスナーにもそのことを気づいて欲しいから? 考えて欲しいからとか?

ジェイソン:ふむ(考えている)。

坂本:人によっては「ミュージシャンは政治的なコンテンツを扱う必要はない。こちらをエンターテインしてくれればいい」という考え方の持ち主もいますし。

アンドリュー:いや、それは本当だよ。別に政治について歌う「必要」はないんだしさ。

坂本:はい。でもあなたたちの場合、政治を取り上げずにいられないんじゃないですか?

アンドリュー:(苦笑)。

ジェイソン:それは避けられないよね。だからまあ、こちらとしては人びとが楽しんでくれればいいな、と願うしかないわけで。そうした内容が聴き手のなかに議論等の火花を起こすか否か、そこは俺はあまり気にしちゃいない、というか……いやもちろん、俺たちの歌を聴いて、人びとがより広い意味での社会構造に対して疑問を抱き始めてくれたとしたら、嬉しいことだよ! というのも、それをやってる人間の数は充分多くないと思うし。ただ、それと同時に思うのは――俺たちとしては、とにかく人びとが自分たちの音楽を気に入ってくれればいいな、と。というのも、これをやって俺たちは生計を立ててるんだし。

アンドリュー:うん。

ジェイソン:だから、別の言い方をすれば――俺たちはこの仕事を心からエンジョイしながらやっているし、聴き手の皆さんもお楽しみいただけたら幸いです、そういうことじゃないかと。

イギリスの労働者階級/文化のポジティヴな面、あなたが好きな面について話してください。

アンドリュー:……うーん、それは答えるのがタフな質問だな。

ジェイソン:むずかしい質問だ。

アンドリュー:……(笑)皆無!

坂本:いいとこなし、ですか? そんなことはないでしょう(笑)。

アンドリュー:ハッハッハッハッハッ!

ジェイソン:あんま多くないな。俺は、洋服は間違いなく良いと思うけど。

アンドリュー:うん。いや、だから……(軽くため息をつく)話しにくいことだよね、ってのも、イギリスの労働者階級ってかなり独特だから。

ジェイソン:ああ、ユニークだ。

アンドリュー:で、英国人であるがゆえに、それを(客観的に)語るのは自分たちにはあまり楽なことじゃないんだと思う。というのも、自分たち自身のことなわけで。

ジェイソン:うん、うん。

アンドリュー:俺は、ヨーロッパに行くたび、その違いにもっと気づかされる。たとえば、ヨーロッパ各国ではヴァイブがどれだけ違うか等々。それで、イギリスはかなりユニークなんだな、と思ったり。

坂本:なるほどね。

アンドリュー:でも、イギリス国内にいると「それが当たり前」になっちゃうわけで。

ジェイソン:それに、いまの俺たちは、厳密な意味での「労働者階級の環境」っていう概念とはコネクトしてないんじゃないか、みたいに思う。

坂本:ああ、なるほど。

ジェイソン:それくらい、俺たちはとにかく多くの意味で、自分たちの小さな世界のなかに存在している、と。でも……そうは言っても、俺はやっぱりいまも、ワーキング・クラスの服装/ユニフォームは好きだよ。それと、労働者階級の人びとが中流階級の人からどれだけかけ離れているか、両者の間の隔たりがいまだに実に大きいか、というところも。

アンドリュー:うん。

ジェイソン:で、労働者階級の人たちをリスペクトの念と共に扱うって点には、本当に意識的でなくちゃならないんだ。ってのも、多くの場合、人びとは労働者階級を見下していると思うから。彼らの使う言葉が違う、装い方が違う、やってる仕事の職種が違う、所有品が違う、たったそれだけの理由でね。だけど、だからって、労働者階級を動物扱いしていいってことにはならないだろ? それくらい明確な階級間の隔たりが存在してるってことだし、でも労働者階級の面々だって、中流階級人と同じように、その「構造」の範疇内で生きているんだよ。だから実は(本質的には)違いはないし、とにかくコンテンツに差があるだけ。その提示の仕方が違う、という。

アンドリュー:なるほど。

ジェイソン:だけど、見た目が違うからって、彼らはイコール動物だ、ってわけじゃないだろ?

アンドリュー:それは絶対ない。

ジェイソン:うん、そんなことはあり得ない。それってすごく単純な意見だろうけど、絶対に憶えておく必要のあるものだと思う。

『UK GRIM』を聴いていると、イギリスでは物事が本当に深刻で重くなっているんだな……と感じます。

ジェイソン&アンドリュー:うん。

一方で、日本も物価が上がって深刻な状況になりつつあるし、イギリスでここ最近ずっと騒がれている「Cost of Living Crisis」が起きています。

ジェイソン:そうなんだ……でもさ、日本の政治家はどうなの?

ただし日本は、イギリスとはかなり違います。というのも、我が国にはイギリスの労働党のような大きな野党がないので、さらに深刻だったりするんです。与党に絶望している人たちが支持したい野党がないんです!

ジェイソン:オーケイ、そうなんだ。

対してイギリスは、ここしばらくの間で労働党の支持率が上がっていて、少なくともまだ一種の希望があるかな、と思います。で、こうした先行き不安な現実のなかを庶民はどう生きていったらいいと思いますか? 

アンドリュー:……かなりでかい質問だな!

坂本:ですよね、すみません……。

アンドリュー:(笑)

ジェイソン:前進していくための唯一の道は、小さな空間を、ちょっとした余裕を自分に与えることだと思う。自分自身に、自分の家族に、自分の周囲のコミュニティに、息をつけるちょっとした余裕/小空間をもたらすこと。ここを生きていくには、それしかないと思う。というのも、ほんと、それ以外の誰にも頼れないような状況だからさ。いや、たぶん、これまでもずっとそうだったんだろうけど、いまはとにかく、状況がさらにタフになってるじゃない? だから、苦痛を軽減してくれるちょっとした緩衝ゾーンは自分自身、各自の内側から出て来るんじゃないか、と。その人自身の姿勢から生まれる、そういうことじゃないかな。うん、それしかないんじゃないかと思う……ってのも、いまは国家にも頼れないし、っていうか、他人の多くも頼りにできないし。それくらい、生活がハードになってるってことだよね。で、その状況はすぐに変わらないだろうな、と俺は思う。

ここ数年、UKからは新手の魅力的なインディ・バンドが出てきました。ドライ・クリーニングもそうですし、シェイム、キャロライン、ブラック・ミディなどなどがいます。ただ思うのは、そうしたインディ・ロック・バンドの多くは中流階級出身ですし、その手の音楽のファン層も中流階級が占めている印象です。そこを責めるつもりはないのですが、ただインディ・ロックは、かつては(ザ・フォールからニュー・オーダーやオアシスまで)もっと労働者階級の子たちのものだったのではないか? とも思います。そうではなくなってしまった現状については、どう思っていますか?

ジェイソン:――正直、労働者階級の人びとはグライムにハマってるんじゃないかと思うけど?

坂本:ああ、たしかにそうですね。

アンドリュー:だよな。

ジェイソン:グライム、あるいはUKヒップホップと言ってもいいけど、そっちに移ってる。俺の実体験から言えば、労働者階級の面々はラッパーになりたいって傾向の方がもっと強いよ。

アンドリュー:ほんと、そう。インディ・ロックはそれよりもっと中流階級向け、みたいな(苦笑)? でも、さっきも話に出た労働者階級って話で言えば、いまのイギリスはかなり変化した、というところもあると思う。もうちょっとアメリカっぽくなってきてるって意味でね。それくらい、もっと様々な階級のレヴェル/細かい隔たりができてきてる、という。いまはロウワー・ミドル・クラス(やや低級な中流。いわば、労働者階級あがりで中流に達しつつある層)もあるし……。

ジェイソン:うん。

アンドリュー:で、そこはアメリカも同じで、あの国じゃ人によっての経済/収入面での異なる区分が10個くらいあるわけでさ。で、それに似たことが、イギリスでも起きつつあるんじゃないかと俺は思う。

ジェイソン:うん、アンドリュー、それは大きいよ。

アンドリュー:だからって労働者階級が存在しなくなる、ってわけじゃないし、いまでもいるんだよ。ただ、貧困線にはまだギリギリ達していないものの、それでもお金が全然ない、という人びとはいるわけでさ。うん……。

ジェイソン:うん……妙な状況だよな。だけど、さっきの君の指摘、インディ・ロックが労働者階級のものではなくなっている、というのは当たってると思う。でも、いまのインディ・ロックって正直、あんま先進的じゃない、ほとんどそんな感じじゃない? もちろん、そうじゃない連中もいるけど……。

アンドリュー:ちょっとレトロな感じだよね?

ジェイソン:うん。多くのバンドのやってることは、あんまりプログレッシヴとは思えない。

アンドリュー:エルヴィスっぽく聞こえる。

ジェイソン:エルヴィスか(苦笑)。

最後の質問です。いま手元に自由に使える500ポンドがあったら何を買いますか?

アンドリュー:そうだな……。

ジェイソン:500ポンドあったとしたら? たぶん、俺が買うのは……んー、なんだろ? 正直、思い浮かばない。だから銀行に預金する。ってのも、いま、自分が何を買いたいかわからないし、必要なものはぜんぶ買ったと思うし。

アンドリュー:ハッハッハッ!

ジェイソン:だから、預金する!

(笑)わかりました。アンドリューさんは?

アンドリュー:(笑)貯めないで使うんだとしたら、たぶん俺は、実は必要のない余計なものを買っちゃうだろうなぁ。いや、ここんとこずっと、Polyendが気になってチェックしてて。

ジェイソン:へー、そうなんだ。

アンドリュー:あれは一種のガジェットみたいなもんで、トラック・シークエンサー機能とかが付属してて。たしか450ポンドくらいだから、ちょうどいい値段かな。

ジェイソン:それ、買うつもりなの?

アンドリュー:いやいや、別に必要じゃないんだってば! でも、気になってついチェックしちゃうんだ。で、眺めながら「別に欲しくないし、自分には必要ないだろう……」ってブツブツつぶやいてるっていう。

ジェイソン:クハッハッハッハッ! スクロールする指が止まらない、と(笑)

アンドリュー:いやー、だから、商品レヴューとかあれこれ読んで、「ああ、こりゃ結構なプロダクトだな」と思いつつ、でも「自分には必要ないか……」と考えあぐねる、その手の商品だってこと。

ジェイソン:(笑)

アンドリュー:でも、プレイステーション・ポータブルの端末は、CeXで中古で買った(※CeXは中古のPC/ゲームソフト/DVD等をメインで扱う英テック系チェーン)。

ジェイソン:へえ、どんな具合? 良いの?

アンドリュー:いや、まだ届いてないんだ。オンラインで通販したから、明日届く予定。あれはもう入手できないんだけど(※PSPは2004年に発表され、2014年に日本国内出荷終了)、「ビートレーター(Beaterator)」ってアプリが使えるんだ。あれはロックスター・ゲームスとティンバランドが2007年に合同開発したアプリ(※実際の発表は2009年)で、ミュージック・シークエンサー等の機能が収まってる。

ジェイソン:(笑)ナ〜イス! それ、かなり良いじゃん?

アンドリュー:値段は140ポンドくらいだったはず。でも、プレイステーション・ポータブルがイギリスで最初に発売された2005年頃は、自分には手が出ない値段だったんだよ。発売当時は、どうだったんだろ、500ポンドくらいしたんじゃない? でも、こうして中古の端末を140ポンドでゲットしたし、ゲームも色いろついてくる、と。オールドスクールな楽しさを満喫できるよ、これで。

ジェイソン:っていうか、良い楽しみ方だよ、それは。

坂本:もう時間ですので、このへんで。今朝は、お時間を割いていただいて本当にありがとうございます。

ジェイソン&アンドリュー:こちらこそ、ありがとう!

坂本:『UK GRIM』はとてもパワフルなアルバムで、大好きですし――

ジェイソン:ありがとう。

アンドリュー:どうも!

 なお、日本がいまどんな政治的な状態にあるのかをわかりやすく理解するために、エレキングでは『臨時増刊:日本を生きるための羅針盤』を刊行した。『UK GRIM』を聴きながらその本を読んでいただけたらこのうえなく幸いである。とくに巻頭の青木理氏の話は、安倍政権以降の日本がいったいどうなっちまったのかをじつにわかりやすく解説している。立ち読みでもいいので、チェックして欲しい(たのむよ)。
また、今回の取材も例によって坂本麻里子氏の通訳を介しておこなわれたわけだが、『UK GRIM』の日本盤には、ジェイソン・ウィリアムソンのウィットに富んだ言葉を、彼女がみごとな日本語に変換した訳詞が掲載されていることもここに記しておく。これを読むためにCDを購入する価値は大いにある。

Cornelius - ele-king

 去る2月22日にアナログ12インチ・シングル「変わる消える」をリリースしたばかりのコーネリアス。今度はアナログ7インチ・シングルの登場だ。題して「火花」。作詞作曲とも小山田圭吾の手による作品である。「変わる消える」はセルフ・カヴァー的な立ち位置だったので、オリジナル曲としては今回の「火花」がひさびさの新曲となる。発売は5月17日、楽しみに待っていましょう。

Cornelius
火花

収録曲
Side A
 火花
Side B
 QUANTUM GHOSTS
Lyrics & Music by Keigo Oyamada

5月17日発売
WPKL-10008
¥1,900(税抜)/ ¥2,090(税込)
アナログ7インチ・シングル
https://Cornelius.lnk.to/hanabi

R.I.P. Wayne Shorter - ele-king

 モダン・ジャズの黄金時代である1950年代末から1960年代、エレクトリック・ジャズやフュージョンによって新時代を迎えた1970年代、そして現代に至るまで、長きに渡りテナー・サックス奏者の第一人者として活躍してきたウェイン・ショーターが、2023年3月2日に89歳の生涯を終えた。1933年8月25日にニュージャージー州ニューアークで生まれたショーターは、チャーリー・パーカー、マイルス・デイヴィス、ジョン・コルトレーンファラオ・サンダースなどとともに、ジャズの歴史を動かしてきた真の伝説的なミュージシャンと言えるだろう。

 ウェイン・ショーターの活躍期間は大まかに1950年代末のジャズ・メッセンジャーズ加入から1960年代中盤のマイルス・デイヴィス・クインテット時代、1970年代から1980年代中盤にかけてのウェザー・リポート時代、ウェザー・リポート解散後から現在に至るソロ活動期と分けられる。演奏家のみならず作曲家としての高い評価も得て、グラミー賞も幾度となく獲得し、晩年は円熟した演奏を見せていた。遺作となったリーダー・アルバムの『エマノン』ではクラシックの室内管弦楽団と共演するなど、止むことなく進化を続けていたショーターではあるが、もっとも鮮烈な印象を残したのは1950年代末から1970年代前半にかけての、20代後半から40代の頃と言えるだろう。ショーターの作品は多岐に渡るので、個人的にもっともよく聴いたこの時期の作品を振り返りながら追悼の意を表したい。

 ショーターの名を知らしめした最初の一歩は、1959年のアート・ブレイキーとジャズ・メッセンジャーズへの参加だった。若手を育てることに定評のあったブレイキーの目にとまり、当代随一の人気バンドの演奏メンバーのみならず、音楽監督にも抜擢される。この頃のジャズ・メッセンジャーズは、ハード・バップ演奏とアフロ・キューバン的なリズムを主体とするファンキー路線を進んでいたが、マイルス・デイヴィスらによって編み出された当時のジャズの最先端のモード奏法をショーターはいち早く導入し、“ア・ラ・モード” や “ピン・ポン” といった楽曲を生み出した。同僚のフレディ・ハバード、リー・モーガンらとともにバンドの黄金時代を築くことに貢献し、『チュニジアの夜』『モザイク』『キャラヴァン』『ウゲツ』といった代表作を生み出している。ショーターはジャズ・メッセンジャーズの初来日時のメンバーでもあり、それ以来日本のジャズ・ファンにも親しまれる存在となった。

 ジャズ・メッセンジャーズでの活動によってショーターは自身の名前も広め、リーダー・アルバムも次々とリリースしていくようになる。1964年にジャズ・メッセンジャーズから独立し、ソロとなって〈ブルーノート〉で吹き込んだのが『ナイト・ドリーマー』で、ここでは中国民謡をモチーフにした “オリエンタル・フォーク・ソング” はじめ、当時のコルトレーンに共鳴するようなモード・ジャズを披露する。バックの演奏はエルヴィン・ジョーンズやマッコイ・タイナーらが務めており、後にこの “オリエンタル・フォーク・ソング” はロバート・グラスパーもカヴァーしている。他にもっとも美しいジャズ・ワルツのひとつである表題曲や、スタイリッシュという言葉がこれほどふさわしいが曲はない “ブラック・ナイル” と、クラブ・ジャズのDJたちからも愛される曲が収録される名作だ。続く『ジュジュ』も “マージャン” のような東洋志向を持つ楽曲があり、またこの頃のショーターが傾倒した黒魔術にフォーカスした表題曲と充実したアルバムだ。

 そして、同時期にショーターはマイルス・デイヴィスの第2期クインテットに加入する。以前からマイルスはショーターの才能に目をつけてグループへ誘っており、それがようやく叶ったのだ。ハービー・ハンコック、ロン・カーター、トニー・ウィリアムスによる黄金のクインテットは、マイルスの歴史の中でも燦然たる輝きを放ったが、それは作曲家としてのショーターの傑出した能力によるところも大きい。実際、マイルスはショーターの作曲能力に惹かれ、グループに彼を招き入れたわけである。第2期クインテットは『E.S.P.』『マイルス・スマイルズ』『ソーサーラー』『ネフェルティティ』といったアルバムを残し、その中でショーターは “ピノキオ” “プリンス・オブ・ダークネス” “サンクチュアリ” などの楽曲を提供している。なかでも印象的な楽曲は “フットプリンツ” で、『マイルス・スマイルズ』で演奏したほかに、自身のソロ・アルバムの『アダムス・アップル』でも披露している。宇宙の孤独を思わせるような漆黒のモーダル・ジャズで、ポスト・バップとなる新主流派ジャズを象徴する1曲だ。

 新主流派ジャズを牽引したのはショーターのほか、ハービー・ハンコック、フレディ・ハバード、トニー・ウィリアムス、ロン・カーター、アンドリュー・ヒル、ボビー・ハッチャーソンらで、マイルス・クインテットはほぼ新主流派ジャズのバンドとなる。そして、ハンコック、ハバード、カーターらと録音したショーターのリーダー作『スピーク・ノー・イーヴル』も新主流派の代表的なアルバムだ。表題曲はじめ、モダン・ジャズという音楽の洗練を極めた形がここにある。もちろん、ジャズは年々進化してはいるが、ある意味で完成形はこの時点ででき上がっていた。新主流派はモード奏法の発展形と言えるものの、ときにフリー・ジャズやジャズ・ロックに接近する面もあり、前衛的なアプローチの一方でメインストリーム寄りの表現をするなど幅広い側面もあった。たとえば前述の『アダムス・アップル』を例に取ると、“フットプリンツ” や “チーフ・クレイジー・ホース” のようなモード・ジャズから、ジャズ・ロックの表題曲、ラテン・ジャズの “エル・ガウチョ” と多彩な楽曲がある。こうした多彩な音楽性、柔軟さもショーターの音楽を象徴するものだった。

 柔軟な音楽性を持つショーターだからこそ、ジョー・ザヴィヌルの実験的なエレクトリック・ジャズ・バンドのウェザー・リポートに参加し、1970年代のジャズの新しい潮流を生み出した。そして、ウェザー・リポート時代の1975年に発表したソロ作『ネイティヴ・ダンサー』も特筆すべきアルバムだ。そもそも1960年代から『スーパー・ノヴァ』などでブラジル音楽への興味を示していたショーターだが、『ネイティヴ・ダンサー』ではミルトン・ナシメントやアイアートらと組み、本格的なブラジリアン・フュージョンを披露している。ミルトン作の “フロム・ザ・ロンリー・アフタヌーン” や “ポンタ・デ・アレイア” など、ジャズとブラジル音楽が結びついた最高のアルバムの一枚である。1960年代後半はときに呪術的で難解なイメージを持たれたこともあったショーターだが、ここでのプレイはジャズを知らない人にもよくわかる、とてもメロディアスで抒情的なもので、余分なものをそぎ落としてスッキリとした姿を見せてくれる。ショーターのアルバムを聴くなら、真っ先にお勧めしたい一枚だ。ちなみに、ミルトンとの共演を勧めたのはショーターの2番目の妻であるアナ・マリアで、アルバムのなかでも彼女に捧げた “アナ・マリア” を演奏している(アナ・マリアは1996年に飛行機事故で亡くなった)。この美しいバラードをショーターへの鎮魂歌として捧げたい。

Kali Malone featuring Stephen O’Malley & Lucy Railton - ele-king

 ストックホルムのドローン音楽家・実験音楽家カリ・マローンの新作アルバム『Does Spring Hide Its Joy』は、2019年にリリースされたパイプオルガン・ドローン作品『The Sacrificial Code』や、2022年の電子音響ドローン作品『Living Torch』などの近作と比べても、よりいっそうハードコアなドローン・アルバムだった。
 このアルバムの最大のポイントは、SUNN O))) のスティーヴン・オマリーと、〈Modern Love〉からのソロ作品もよく知られているチェロ奏者のルーシー・レイルトンというふたりの優れた音楽家・演奏家が参加している点だ。この3人がめざす音響は、エレクトロニック・ギターとチェロと、マローンによる微かな電子音の持続音が延々と続く、混じりっ気なしの純度100%の持続音、ドローン・ミュージックである。
 中途半端に音楽的な要素が入っていない持続音のみの音を聴取したいというドローン・マニアの方には絶対お勧めできるアルバムだし、同時に音楽に沈静・瞑想的な感覚を求める方にも深く推奨したいアルバムでもある。
 この『Does Spring Hide Its Joy』に収められた音のみに意識を向けて聴いているだけで、世俗の騒がしくも煩わしいあれこれを忘却することができる。世界から隔離されていく感覚こそ、本作の肝ではないかと私は考える(それについては後述する)。

 『Does Spring Hide Its Joy』は、CDでは3枚、LPでも3枚、デジタルでは総収録時間5時間という長大な作品である。フィジカル版では “Does Spring Hide Its Joy” のヴァージョン違い3曲、デジタル版では “Does Spring Hide Its Joy V1” と “Does Spring Hide Its Joy V2” のヴァージョン違いがそれぞれ、3トラックに分けて収録されている。簡単にいえば、『Living Torch』でコンパクトに提示されたドローンの作曲技法(高周波と持続音の交錯)を長時間に渡って展開したとでもいうべきか。ただ『Living Torch』に多少とも残っていた音楽的なハーモニーの要素が本作『Does Spring Hide Its Joy』はさらに希薄になっている。「音」とその「トーン」だけがある。
 だがもっとも重要なのは「時間」への意識だ。この長大な楽曲にはドローン音楽の夢である「永遠に続く音響」への希求があるように思えてならない。まるでラ・モンテ・ヤングの「永久音楽劇場」の精神を継承するかのようなドローンの真髄を聴かせてくれる作品なのだ。
 『Does Spring Hide Its Joy』が、ここまで純粋なドローン作品に仕上がったのは、エレクトリック・ギターのスティーヴン・オマリーとチェロのルーシー・レイルトンというふたりの演奏者との共演だからという側面もあるだろう。じっさいふたりの発する音は本作の印象を決定付けるほどのものだ。
 特にオマリーのエレクトリック・ギターのメタリックなトーンは本当に素晴らしい。硬質な音でありながら、ドローンという音響のに必要な微細な変化を常に生成しているのだ。むろんレイルトンのクールなチェロの響きも本作のマニシックなドローンのムードを促進させていく。電子音楽の伝説的作曲家ピーター・ジノヴィエフとの『RFG Inventions for Cello and Computer』や〈ECM〉からのリリースも有名なピアニスト/オルガン奏者キット・ダウンズとの『Subaerial』とはまた違ったマテリアルなチェロの音響を生成している。
 一方、マローンは本作ではパイプオルガンではなく、サインウェーヴ・オシレーターを用いている。マローンのサインウェーヴ・オシレーターはどこか影のようにふたりの音に寄り添っていく。まるでふたりの「音を影」のように。いわばドローンの作曲者として演者ふたりのコンダクターのようである。
 いずれにせよ3人が発するトーンが微妙な差異を発しつつもレイヤーされていく点がポイントに思える。3人の音が同時に、しかし異なる地平に存在するような多層感覚があるのだ。3人の音が微妙な差異を孕みつつ、一定の持続音として生成していくさまを集中して聴取していると深い瞑想感覚を得ることすらできる。まさにドローンの真骨頂とでいうべきリスニングを可能とするのが本作『Does Spring Hide Its Joy』なのである。

 『Does Spring Hide Its Joy』が録音されたのは2020年3月から5月というコロナウイルスの感染が世界的に増大した時期だ。当時ベルリンに滞在していたマローンたちはベルリンの複合スタジオ施設 Funkhaus(https://www.funkhaus-berlin.net)内にある「MONOM」に招かれて、本作を録音したという。いわば初期のコロナ禍、3人は世界から隔離するかのように、MONOM に滞在し、本作を作り上げたわけだ(アルバム・タイトル「春は喜びを隠すのか」という言葉も、コロナ・ウイルスが猛威をふるいはじめた2020年春の気分を伝えてくれる)。
 録音も MONOM のスタジオでおこなわれ、エディットと編集はステファン・マシュー(Schwebung Mastering)によっておこなわれた。リリースはオマリーが主宰する実験音楽レーベル〈Ideologic Organ〉である。
 ちなみに Funkhaus ではさまざまな先端的なコンサートやイベントがおこなわれ、アルヴァ・ノトと坂本龍一のコンサートも開催されたことでも知られている(https://www.funkhaus-berlin.net/p/jun18.html)。

 パイプオルガン・ドローン、ノイジーな電子音響ドローンなどで培った経験をもとに作曲された長時間ドローンを収録した本作は、コロナウィルス下で隔離されることで生まれた「停滞する時間」の感覚があるように思えた。
 時間を意識し続けることで、時が溶けていくような意識・感覚とでもいうべきか。3人は、MONOM の広い空間をほぼ占有しつつ、「時間」を考察するように本作を作り上げていったのであろう。「密室での隔離」という状況によって、マローンたちのドローン作曲・演奏技法がより研ぎ澄まされていったのではないか。
 気鋭のドローン作曲家と、ふたりの優れた演奏家が生み出す研ぎ澄まされた鋭利で美しい持続音がここにある。そしてコロナ・ウィルスの感染拡大という最悪な状況の中でも、人はこれほどまでに深い瞑想感覚をリスナーに与えてくれる芸術作品を生み出すことができることも教えてくれる。まさに希望のドローンでもある。
 『Does Spring Hide Its Joy』は、確かに長大な作品だが恐れることはない。フィジカルが3時間、デジタル版で5時間ものあいだ音に向かい合う経験は貴重だし、それでしか得られない絶対的な聴取体験はあるのだが(そして本来はそのように聴くべきなのだが)、いっぽうで聴きたいときに聴きたい時間だけ集中して聴くという方法でも本作の魅力を体験することはできるはずだ。
 ドローン音楽の現代最高峰ともいえる本作『Does Spring Hide Its Joy』。ぜひとも多くの音楽ファンに聴いてほしい。

Jitwam - ele-king

 ムーディマンによる素晴らしいミックス『DJ-Kicks』を覚えているだろうか。そこで4曲目につながれていたのがジタム(Jitwam)のトラックだった。
 インドに生を受け、オーストラリアで育ち、ロンドンでエレクトロニック・ミュージックと出会い、現在は(おそらく)ニューヨークを拠点にしているこのコスモポリタンは、すでに3枚のアルバムを送りだす一方、ララージエマ=ジーン・サックレイなどのリミックスをこなしてもいる。ソウルフルでジャジーなダンス・ミュージックを展開する、注目のプロデューサーだ。
 そんなジタムの来日ツアーがアナウンスされている。3月17日から31日にかけ、東京Circusを皮切りに、大阪・京都・広島・金沢・名古屋の6都市を巡回。次世代を担うだろうプロデューサーのプレイを目撃するまたとないチャンス、予定を空けておきましょう。

「インド発、ニューヨーク経由。ネクスト・ネオソウル & ダンスミュージックの新鋭Jitwam来日ツアー!」
インド、アッサム州にルーツを持ち、音楽活動をロンドン、ニューヨーク、そしてメルボルンなどで展開。ビートメーカー、ギタリスト、シンガー、DJとマルチな才能を発揮している。ある人は彼の音楽をジミヘン(Jimi Hendrix)と、ある人はJ Dillaのよう、そしてある人はMoodymann、と聴くにとって多彩な印象を与える彼の独創的なスタイルはジャンルを超えて多くのオーディエンスを魅了。自らのプロデュースに限らず、音楽レーベル「The Jazz Diaries」のファウンダーの1人でもあり、ロンドンを拠点とするアート集団およびレーベル「Chalo」の設立を支援するなど、現在の南アジア音楽シーンの新たなリーダーとしても注目されており、昨年、満を持して3枚目のアルバム「Third」を発表。そんな今が間違いなく「旬」なJitwamの6都市を結ぶジャパンツアーが決定。各都市の個性的なローカルアーティスト達との化学反応を見逃すな。

Jitwam Japan Tour 2023
3/17(金) 東京 Circus Tokyo
https://circus-tokyo.jp/event/eureka-with-jitwam/
3/18(土) 大阪 Circus Osaka
https://circus-osaka.com/event/jitwam/
3/20(月) 京都 Metro
https://www.metro.ne.jp/schedule/230320/
3/24(金) 広島 音楽食堂ONDO
https://www.ongakushokudoondo.com/
3/25(土) 金沢 香林坊Trill
https://www.instagram.com/trill/
3/31(金) 名古屋 club JB’s
http://www.club-jbs.jp/pickup.php?year=2023&month=3&day=31

Jitwam profile
Jitwamにとって、自身の音楽キャリアは常に運命と共にある。彼が最初に購入したたった2ドルのホワイトレーベルのレコードが、Moodymannのトラックであり、それを見つけたのが、まさしく彼の音楽がMoodymannのDJ Kicksコンピレーションにフィーチャーされたのとほぼ同時期だった。インドのアッサム州グワハティで生まれたJitwamは、両親と共にオーストラリアに移住。郊外で育った彼は、The Avalanches、Gerling、Sleepy Jacksonなどのバンドの影響を受け、ギターを弾き、キーボードのレッスンを受け、14歳で曲を書き始めることになる。その後、南アフリカやタイ、そして自身の故郷であるインドなどを転々と移り住み、次に流れ着いたロンドンでエレクトロニックミュージックの洗礼を受ける。そこでの生活の中で、彼が育ったロックの影響を織り交ぜ、Jitwamの代名詞でもある、様々なジャンルを内包したタイトでメロディックな作品へと融合させることを可能にした。その後ニューヨークに移り住み彼のキャリアは一気に前進。2017年に自身のファーストアルバム「ज़ितम सिहँ (selftitled)」を皮切りに、続く2019年にはセカンドアルバム「Honeycomb」をリリース。この作品について彼は「Jimi HendrixやJ Dilla、Moodymann、RD Burman、Bjork… 彼らはまさに自分だけの世界観を作り上げていて、僕も自分自身の音楽で同じようなことを成し遂げたいんだ。『Honeycomb』はロックンロールがソウルと出会い、ブルースがテクノを歌い、ジャズはどんなものにでも変容する世界なんだよ」と語っている。またJitwamは音楽レーベル「The Jazz Diaries」のファウンダーの1人でもあり、ロンドンを拠点とするアート集団およびレーベル「Chalo」の設立を支援するなど、現在の南アジア音楽シーンの新たなリーダーとしても注目されている。そして2022年には満を持して3枚目のアルバム「Third」を発表。数多くの運命に導かれながら多様な土地で吸収した音楽を、新たな高みへと昇華させている。

Soundcloud: https://soundcloud.com/jitwam
Instagram: https://www.instagram.com/jitwam/

YMO、プログレッシヴ・ロック、テクノ、ニューウェイヴ……
いま初めて明かされる、ゲーム音楽の知られざる背景

「この国が生んだもっともオリジナルで、もっとも世界的影響力のある音楽」とまでいわれる日本のゲーム音楽。
はたしてそれはいったいどのようなバックグラウンドから登場してきたのか?
数々の名曲・名作を生み出してきた作曲家たちは何を聴いて育ってきたのか?

プロのコンポーザーたちのリスナーとしての遍歴を掘り下げることで浮かび上がる、ゲーム音楽の源泉──

田中宏和/Hiro/古代祐三/細江慎治/小倉久佳音画制作所/TAMAYO/下村陽子/並木学/菊田裕樹/山岡晃/大山曜/岡素世/川田宏行/杉山圭一/竹ノ内裕治(TECHNOuchi)/中潟憲雄/山根ミチル/渡辺邦孝

四六判ソフトカバー/304頁

目次

序文 ゲーム音楽という名の群像劇 (田中 “hally” 治久)

第一部

Hiro×細江慎治 ゲーム音楽における「フュージョン感」の正体
中潟憲雄×大山曜×渡辺邦孝 プログレッシヴ・ロックは不治の病──世代を超えて伝わるその魅力
並木学×竹ノ内裕治(TECHNOuchi) 90年代、どうしようもなくテクノに魅せられた日々
山岡晃×杉山圭一 ニューウェイヴ、それははかないもの、それは人を驚かせるもの
下村陽子×山根ミチル クラシック育ちだからこその感性──演奏の挫折から作曲家の道へ

第二部

田中宏和 レゲエ・バンドの経験が「ポケットモンスター」の音楽を作るうえでも役立ちました
小倉久佳音画制作所 「筒美京平になりたい」と思っていました
川田宏行 ロック、ラウンジ、ブラック・ミュージックが大きな柱
TAMAYO YMO関連は片っ端から、コラボとか演奏参加とかそういうものも全部
岡素世 原体験はクラシカル、YMOとクイーンの青春からアシッド・ジャズ~トリップホップへ
古代祐三 YMOとアイアン・メイデンにハマり、LAでニュー・ジャック・スウィング~ヒップハウスを知る
菊田裕樹 広く浅く、70年代がまるごとひとつの体験

あとがき (糸田屯)

【著者プロフィール】
田中 “hally” 治久 (たなか・はりー・はるひさ)
ゲーム史/ゲーム音楽史研究家。2001年にライター活動を開始し、ゲーム音楽のルーツ研究に先鞭をつける。またチップチューンという言葉と概念を日本にもたらし、それを専門とする作編曲家としても活動する。主著/監修に『チップチューンのすべて』『ゲーム音楽ディスクガイド』『インディ・ゲーム名作選』『インディ・ゲーム新世紀ディープ・ガイド』など。

糸田屯 (いとだ・とん)
ライター/ゲーム音楽ディガー。物心がついたときからゲーム音楽とプログレッシヴ・ロックに魅了され、digにいそしむ日々を送る。『ゲーム音楽ディスクガイド』『新蒸気波要点ガイド ヴェイパーウェイヴ・アーカイブス2009-2019』『ニューエイジ・ミュージック・ディスクガイド』などに執筆参加。

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ニッポン人のブルース受容史 - ele-king

皆がブルースに熱くなった――。

1960年代から70年代にかけて、まだアメリカは遠く、レコードを一枚手に入れるのにも時間と手間をかけなければならなかった頃、ロック熱の高まりとともに、日本の音楽ファンの間で急激に注目されたブルース。

まだ情報も少ない手探り状態の中、ブルースに取り憑かれた者たちは、この底知れぬ音楽とどう向き合ってきたのか。

当時の雑誌記事、アルバム評、来日公演リポート、現地取材、日本人によるブルースなど、いくつもの視点、未公開写真を含む豊富な図版、読み応えあるテキストで、日本でブルースがどう受け入れられてきたかを伝える史上初の試み!

寄稿者:吾妻光良、鈴木啓志、永井ホトケ隆、ほか

B5判ソフトカバー/368頁/カラーページ多数

Contents

Intro ブルースがはるばるやってきた

chapter I 1960's
chapter II 1970-73
chapter III 1974-76
chapter IV 1977-80
chapter V ブルースああでもないこうでもない
chapter VI ブルース・ライヴの衝撃
chapter VII 日本人ブルースの夜明け
chapter VIII そっと部屋にしのびこむブルース
chapter IX ブルースたった今

Outro Final Moanin’─謝辞

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LEX - ele-king

 それは2017年の3月。まだ14歳だった。初めて世に発表した曲は “こっち見ろ!(Look At Me!)” のリミックス。ダブステップの重要人物、マーラディジタル・ミスティックズ)を大胆にサンプルしたXXXテンタシオン2015年の同曲が、ショウビズ的なレヴェルで大きな注目を集めることになったのが2017年の2月ころ。なのですぐさま反応していることになる。早い。二重の意味で。
 湘南出身のラッパー、LEXはその後自殺未遂を経て死ねなかったことに意味を見出し、本格的に音楽の道を進むことになる。サウンド的にはトラップやイーモ・ラップ以降の感覚をポップに表現、4つ打ちやロックの技法も貪欲にとりいれてきた。精神的不安定、そこから逃れるためのドラッグ、あるいはスマホ、インスタにTikTok──リリックには洋の東西を問わず2010年代を支配することになった鍵概念が散りばめられ、結果、彼は多くのティーンから絶大な支持を獲得。当人もまた10代の代弁者であることを意識していたという。

 他方で彼は同世代のリスナーたちに「べつの見方」を提供することにも心を砕いてきた。2019年4月にリリースされたファースト・アルバム『LEX DAY GAMES 4』のコンセプトは、SNSにとらわれていたり、現実よりもゲームのほうがリアルに感じられたりする状況からティーンたちを解き放つというもので、冒頭 “STREET FIGHTER 888” ではレトロなピコピコ音が鳴り響いている。90年代までのVGMを特徴づけるチップ・サウンドは、以降もときどき彼の曲に顔をのぞかせることになるギミックだ。
 市販薬によるオーヴァードースかヴィデオ・ゲームか──。トー横キッズじゃないけれど、逃走の選択肢が少ないティーンたちの代表たりえているラッパーは、もしかしたら彼以外にもいるのかもしれない。カネを稼ぐことへの執着や「勝つ」という強迫観念、それらヒップホップ/ラップ・ミュージックの世界における定型を活用する一方で、LEXは同業者にはなかなかやれないことをやってのけてもいる。たとえば耳による意味把握が困難なことばたちが走り抜けていく “GUESS WHAT?” (セカンド『!!!』収録)のMV。そこではいまは亡き安倍元首相による国会答弁の様子がブラウン管=旧時代を象徴する機器に映し出され、それをつまらなさそうに眺めるキャラクターたちが配置されていた。政権への違和の表明だ。

 決定的だったのはおよそ1年前、2022年の1月にドロップされた “Japan” だろう。明らかにニルヴァーナを模したサウンドをバックに、やや抽象的な音声が「若者金ない 大人も病んでいる/なのにこの国はシカトをかます/大胆な演説をカマして何度も嘘をつく」と臆することなく歌いあげている。ブリテン島であればこれくらいは「普通」の範疇に含まれるのかもしれない。けれどもここは日本。名指しで国家を批判する19歳の表現に、拍手を送らないわけにはいかない。
 さらに重要なことに彼は、「オトナ=既得権益をむさぼる老害」というありがちな単純化にも与していない。「政府の意見にうんざりするよ/俺達に優しいフリをするのに/働き詰めの若者 老後に困る老人」──高齢者の「集団自決」を推奨する30代後半の御用学者とはえらいちがいで、豊かな共感力と想像力を持ちあわせているからこそ出てくるリリックだ。10代から圧倒的に支持されているファッション・アイコンであり、人気曲 “なんでも言っちゃって” (プロデューサーはKM)のようにご機嫌な曲を書くことのできるラッパーが、他方でこういうシリアスなテーマにも果敢にチャレンジしていることの意義は、「若者の政治離れ」などという惹句がまかりとおる時代・地域にあって、はかりしれない。

 今年1月にリリースされた5枚めのアルバム『King Of Everything』には、しかし、“Japan” は収録されなかった。テーマが異なるということなのだろう。シンプルなギター・ポップ調の “大金持ちのあなたと貧乏な私” のように、置かれた環境や身分のちがいを描写することで格差社会を喚起させる曲もあるにはある。だがこれまで以上にポップさを増した新作は、全体的に、「思春期」の総括のような様相を呈している。昨年20歳を迎えたことが影響しているのかもしれない。
 序盤は「強い自分」を誇示するタイプの曲が目立つが、後半ではよりセンシティヴな感情に光が当てられている。LEXの武器のひとつである、微細に震えるヴォ―カリゼイション。それがいかんなく発揮された “This is me” ではリスナーの承認欲求を受け止め、苦しみに寄り添ってみせる。ドラッグ依存を描写する “If You Forget Me” とセットで聴くと、なぜ彼がティーンから熱烈に支持されているのか、その理由が見えてくるような気がする。アガったり落ちたり、攻撃的になったり優しくなったり、小さな成功を収めたり大きな失敗を繰り返したり、もう四方八方ぐしゃぐしゃで、なにをどうしたらいいのかわからない──だれもが10代に経験しやがて卒業していくことになる苦悶を、等身大で表現してみせること。
 その総決算が THE BLUE HEARTS “歩く花” の本歌取たる最終曲なのだろう。「自分の色も分からない」「窮屈な檻」に閉じこめられている主人公は、「どなたか僕を刺してください」と声を絞り出す。思い浮かべるのはカート・コベインの「俺は俺を憎んでる、死にたい(I Hate Myself and Want to Die)」だ。若さの特権ともいえる過剰な自意識を、みごとにとらえたフレーズといえる。
 このアルバムはきっと、ある種の成長痛の記録なのだと思う。主人公とともにLEXはいま、オトナの世界に足を踏み入れようとしている。「自分」ではなく社会へと目を向けた “Japan” はその前哨戦であると同時に、これから進む先を指し示す道標だったのではないか。だからこそ収録されなかったのではないか。

 まもなくLEXは21歳を迎える。それはすなわち彼が今後、20歳で銃殺されてしまったテンタシオンがけっして歩むことのかなわなかった道を踏破していくことを意味する。現時点でこれほどの共感力・想像力を持つアーティストだ。20代、30代、40代、50代、60代……歳を重ねるごとにその表現には磨きがかかっていくにちがいない。

東京銭湯サウナガイド - ele-king

銭湯サウナの気楽なたのしみ

様々な設備を搭載した高級サウナや大自然の中のテントサウナなど、豪華な施設の開店も相次ぎますますとどまることを知らないサウナの大ブーム

しかし一方で忘れられないのが、生活空間と密着した「銭湯」のサウナです。

昭和の薫りを残す老舗から、リニューアルで新たな魅力を備えた新世代銭湯まで、サウナー視点でのおすすめ銭湯を徹底紹介!

銭湯ファンから熱い注目を浴びるデザイナー銭湯の先駆者、今井健太郎インタヴューも掲載!

目次

今井健太郎 インタヴュー
路線別おすすめ銭湯30選 31
サウナ女子(サ女子)が女性にオススメする銭湯10選
都内銭湯サウナリスト

※東京都の銭湯(公衆浴場)の入浴料は2023年3月現在、500円となっています。
 本書に記載されている「サウナ料金」は、サウナ利用に際して入浴料以外に追加で支払う料金を示します。
 その他、本書に記載の情報は基本的に2023年3月現在のものです。

●執筆者プロフィール

大木浩一
1972年生まれ。子供の頃から銭湯が好きで、数年前サウナの魅力に気付くも、スピリチュアルな方面は若干苦手な永遠のサウナ初心者。サ室のテレビでやっててうれしいのは大相撲か『秘密のケンミンSHOW』。好きな水風呂の温度は16度。

サウナーヨモギダ
北海道旭川市出身。サウナに救われたのをきっかけにサウナの普及活動を始める。サウナに関する執筆、講演、コンサルタント、イベントの主催、メディア出演などを主に行っている。著書に『熱波師の仕事の流儀』(ぱる出版)。

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