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interview with Laraaji

interview with Laraaji

太陽とピアノ

──ララージ、インタヴュー

文・質問:松山晋也    通訳:滑石蒼 Photo by Daniel Oduntan   Jul 16,2020 UP

Laraaji
Sun Piano

All Saints/ビート

Ambient

beatink

 一昨年の圧倒的な来日公演も記憶に新しいララージ。エレクトリック・ツィターを駆使した幻惑的なサウンドは近年のニュー・エイジ・リヴァイヴァルにも大きな影響を与えてきたわけだが、今回の新作ではなんとツィターは一切使われていない。『Sun Piano』なるタイトルどおり、生ピアノだけを演奏した作品なのだ。でも、心配ご無用。天上から降り注ぐ光のようなイメージはそのままに、あのララージ的世界をさらに拡張したものになっている。ここでは、新作の内容のみでなく、ピアノとツィター、ピアノと自身の関係についても詳しく語ってもらった。

ピアノというのは、非常に肉体的な打楽器だ。肉体的に、リズミカルに自己表現する楽器。ハーモニーと音色で表現する楽器。さまざまな楽器のなかでも、触れ合うのが純粋に楽しいと思う楽器なんだ。

■元々ピアノを勉強していたあなたが、今回ソロ・ピアノのアルバム『Sun Piano』を発表したのはとても納得のいくことですが、同時に、これだけピアノ演奏が達者なあなたが、なぜこれまで一度もピアノ作品を作らなかったのか、改めて不思議に感じました。まずは、このアルバム制作の背景、経緯を教えてください。

ララージ:ピアノは私の人生のなかで、重要な位置を占めている楽器だからね。人生の薬のようなものさ。ピアノは常に私の表現の軸にある楽器だが、これまで私は主にエレクトリック・サウンドの実験を進めてきた。そんななかで、近年のアルバムのレコーディングを見てきていたプロデューサーのマシュー・ジョーンズ(Matthew Jones)に言われたんだ。「そろそろピアノでソロ・アルバムを作る頃だろう」って。それが、この新作を作ることにした理由さ。自分のなかで、その助言がとてもしっくりときた。ピアノはずっと好きだったから、時が来たんだね。私の中で、このタイミングでピアノ・アルバムを作るというのはとても自然なことだったんだ。これまでほとんど弾いたことのなかったグランドピアノを使ったりもして、そういう部分でも純粋に楽しかった。ピアノの前に座って、弾くことを素直に楽しむ時間が幸せだったよ。作業にとりかかり始めたのは2018年の頭で、その年の12月に録音を開始した。

■ピアノだけのアルバム制作に際し、なにか戸惑ったり難しかったことはありますか。

ララージ:ピアノだからといって、難しいということはなかったよ。だた、物理的な面で大変だったことがひとつあって……レコーディング途中で、エンジニアのジェフ・ジーグラー(Jeff Zeigler)が拠点を移したんだ。スタジオを引っ越したのさ。それで、ミキシングが途中で止まるなど、作業が遅々と滞ってしまったのが大変だったね。あとは、コロナ・ウイルスの関係でスケジュールの変更もいろいろとあったし。それ以外にはとくに問題はなかった。

■カート・ヴァイルやメアリー・ラティモアなどとの仕事で知られるジェフ・ジーグラーが録音/ミキシング・エンジニアを担当した経緯は? また、録音に際し、ジェフとはどのような対話がありましたか。

ララージ:ジェフとは、ダラス・アシッド(Dallas Acid)とのコラボレーションの際に知り合った。ニューヨークのブルックリンでね。2年前にLaraaji/Arji Oceananda/Dallas Acid 名義のコラボ・アルバム『Arrive Without Leaving』を出した時のことだ。ジェフ・ジーグラーとダラス・アシッドと私を繋げてくれたのは、『Arrive Without Leaving』でエグゼクティヴ・プロデューサーを務めたクリント・ニューサム(Clint Newsome)だ。私とジーグラーは初対面の日から2日間、一緒にスタジオで過ごした。彼は今、私のライヴの際にもシステム・エンジニアを務めてくれている。サウンドのクオリティにこだわる人で、仕事をする上でとても頼もしいよ。レコーディング中に彼と話したことは…そうだな……「どうしたら椅子がきしむ音を消せるか」ということと、「今日のランチはどこにするか」ということぐらいかな(笑)。真面目な話、私たちは、感情の面で偏りが出ないようには気をつけていた。穏やかな面と、攻撃的な面とのバランスをちゃんと持っている作品にしたかったんだ。

■自宅ではこれまでもずっとピアノを弾いてきたのですか。

ララージ:毎日弾くよ。夜はいつもイヤホンを付けて弾いている。ピアノというのは、非常に肉体的な打楽器だ。肉体的に、リズミカルに自己表現する楽器。ハーモニーと音色で表現する楽器。さまざまな楽器のなかでも、触れ合うのが純粋に楽しいと思う楽器なんだ。音程もたくさんあって、強弱も幅広くつけられるから。

■若い頃は、大学でクラシック・ピアノを学びつつ、趣味でジャズ・ピアノを弾いていたと一昨年の日本での取材時に言ってましたが、いま自宅で好んで弾くのはたとえばどういう音楽ですか。

ララージ:自宅では、即興演奏しかやらないんだよ。だから、いつも新しい曲を弾いているんだ。ジャズのような、エネルギッシュなものをフリー・フォームで弾いたりはするが、楽譜を見てクラシックの曲を弾いたりは、もうしないね。即興が楽しすぎて、それどころではないから(笑)。

■伝承曲“シェナンドー(Shenandoah)"以外の『Sun Piano』収録曲もすべて即興なんですか。

ララージ:うん、すべて即興だよ。楽譜は書かない。まずはテーマとなるハーモニーを見つける。そしてそのテーマに従って、肉付けの部分の作曲を即興で進めていくんだ。

■作品全体がイノセンスな輝きに満ちていますが、本作を作る際、あなたの頭のなかにはどのようなイメージ(情景)がありましたか。

ララージ:ある時は、深呼吸を頭のなかで想像する。そうすると穏やかな、リラックスできる曲になる。ある時は、楽しく踊る脚を想像する。そうすると踊り出したくなるような曲になる。そしてある時は、雲の上の高いところでダンスをする、天使や妖精みたいな、想像上の生き物を想像する。それが、君が言ったような「イノセンスな輝き」につながっているのかもしれないね。

文・質問:松山晋也(2020年7月16日)

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Profile

松山晋也/Shinya Matsuyama 松山晋也/Shinya Matsuyama
1958年鹿児島市生まれ。音楽評論家。著書『ピエール・バルーとサラヴァの時代』、『めかくしプレイ:Blind Jukebox』、編・共著『カン大全~永遠の未来派』、『プログレのパースペクティヴ』。その他、音楽関係のガイドブックやムック類多数。

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