「AY」と一致するもの

Eccy - ele-king

The 10 Best Hudson Mohawke Productions

interview with Herbert - ele-king


Herbert
The Shakes

Accidental/ホステス

HouseTechnoAnti-Neoliberalism Pop

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 音楽で世界は変えられないがひとりひとりの意識は変えられるというのは、いわゆる紋切り型の、いろんな場面で使われる一般論となっている。言葉としては面白くないが、まあ、そんなもんかーと思ったりする。はい、その通り、と言うしかない。
 言葉として面白くないのは、シニカルなのか、あるいは未来への期待、音楽への夢を込めたものなのかどうなのか、本気で世界を変えたいと思っているのかどうかが実にアブストラクトな点にあるからだろう(まあ、そのすべてを包含しているのだろうけれど)。ひとつ言えるのは、そして誰も音楽は世界を変えるとは言わなくなったことだ。マシュー・ハーバートを除いては。
 
 ハーバートはUKのハウス/テクノのプロデューサーで、90年代半ばにデビューしている。彼のミニマルで軽快なテック・ハウスは、まだ彼が何者かよくわかっていない最初から人気だった。ポップで、実験的。DJもかけたし、家聴きの人にも誰からも愛されるダンス・トラックだった。
 早すぎた初来日時のライヴも楽しかった。鍋やらフライパンやら料理道具をその場で鳴らし、サンプリングし、そしてその場でループさせて曲を作ってくという無邪気なもので、まさかこの人がその数年後、鬼のような左翼ヴィジョンを展開することになるとは、当時はまったく思いも寄らなかった。ただの愉快な人だと思っていた。
 欧米のミュージシャンは、思い切り商業的なフォーマットに合わせてデビューして、作品数を重ねる毎に、より非商業的でより実験的な道に進みたがると言われるが(日本はその逆とも)、ハーバートはまさにその通りの歩みを見せているひとりである。
 2001年、ライヴ会場で無料配布されたレディオ・ボーイ名義の『The Mechanics Of Destruction』の曲名にはマクドナルドやGAPなどグローバル企業の名前、もしくは実業家、TVや石油など資本主義を象徴するものが付けられている。音はすべてそれら商品の音などから来ている。それがいったい何のためになるのかわからないが、彼はとにかくそれをやり、同じように2003年のビッグ・バンドによる『Goodbye Swingtime』でも、はっきりと彼の政治的な意見を挟み込んだ。(このビッグ・バンドによるライヴも最高に笑えるものだった。たとえば曲のブレイクで演奏者全員がポケットから新聞を出しては破り、そしてまた素知らぬ顔でジャズを演奏しはじめるなど、彼の批評精神は、ほとんどの場合、喜劇的に表出する)
 その後も食事文化の側から多国籍企業を批判した『プラット・ドゥ・ジュール』、豚の一生を描いた『ワン・ピッグ』などなど、執拗なまでにグローバリゼーション批判を続けている。たまたまこの1枚は政治的になったけれど、その次はいつものようにハッピーに……なんてことはこの男に限って言えばない。ただ、先述したように、彼の音楽にはコメディタッチがあるので、説教臭くなることはない。要するに、リスナーを硬直化させることがない。『ワン・ピッグ』のときのライヴも面白かったしね

 ハーバートの作曲の方法論として一貫してあるのは、ミュジーク・コンクレートだ。その手法を意識してハウス・ミュージックに活かしたのがまさにハーバートで、『アラウンド・ザ・ハウス』(1998年)と『ボディリー・ファンクションズ』(2001年)は彼のユニークな音作りがもっともポップに展開されたものとして記憶されている。前者はハウス、後者はジャズの響きを打ち出した、より振り幅の広いエレクトロニック・サウンド。どちらもいまだハーバートの代表作として聴かれ続けているが、新作の『ザ・シェイクス』は、洗練された『ボディリー・ファンクションズ』に近い。つまり、ハイブローとはいえ大衆音楽であり、入りやすいのだ。もちろん、そこには以下の取材で語られているような彼の考え方が、確固たる思いがある。そんなわけでぼくは彼の頑なさ,ブレのなさ、その理想に、あらためて触発されたのである。


それでも音楽に世のなかを変える力があるとまだ100%信じているからだよ。でなければ音楽をやめて政治家になっている。「どうして政治家にならないのか」と訊かれることも多い。なぜかというと、政治家は大勢いるけど、政治的なメッセージを訴えるミュージシャンはあまりいない。だから責任を感じるんだ。


最近の『ガーディアン』に掲載されたあなたの発言のなかの「music’s propensity to noodle inconclusively can seem unhelpful at best(不平等が前例のないほど極端になり、我々が作り出したシステムが育むのではなく破壊するためにあるとき、最善の状況でも音楽は最終的には助けにならないように思える)」という言葉が気になっています。ここにはある種の絶望が込められているのでしょうか?

ハーバート:おそらく絶望ではなく、世のなかを変えたいという欲求を音楽が失ったしまったことへの失望と、いまの多くの音楽、とりわけダンス・ミュージックが退屈に感じることのふたつが込められている。散々ダンス・ミュージックは聴いてきたから、どれも同じようにしか聴こえないんだよ。初めてダンス・ミュージックと出会った人にとっては退屈でないかもしれないけど、30年以上ハウスやテクノを聴いてきた身としては、新しいアイディアや驚きのなさを退屈に感じてしまう。だからあの発言の裏には失望と退屈のふたつが込められているんだと思うな。

あなたが言うように、現在の行きすぎた資本主義社会で、音楽が政治的な局面において「unhelpful(助けにならない)」であったとしても、あなたは音楽を続け、そこに政治的な主張、左翼的なヴィジョンを織り込み続けるわけですよね? 

ハーバート:ああ。

それはあなたにとってアンビヴァレンツな行為なのでしょうか?

ハーバート:それでも音楽に世のなかを変える力があるとまだ100%信じているからだよ。でなければ音楽をやめて政治家になっている。「どうして政治家にならないのか」と訊かれることも多い。なぜかというと、政治家は大勢いるけど、政治的なメッセージを訴えるミュージシャンはあまりいない。だから責任を感じるんだ。何か社会や政治的な問題について強く感じているものがあったら、それを音楽を通して表現する責任があると感じているんだよ。
 ぼくは音楽に物事を変える力があると確信している。実際それをこの目で見てきた。16歳のときにNWAの“Fuck The Police”を聴いたのをいまでも覚えている。「なんで警察をやっつけたいんだ?」って思ったんだ。当時僕は小さな村に住んでいて、その村の警察官が家の向かいに住んでいて、たまに彼が訪ねてきて、紅茶を一杯飲んでいくんだ。彼が友だちだったとは言わないけど、いわゆるご近所さんで、親しみやすい人で優しそうな人だった。だから「なんで彼をやっつけたいなんて思うんだ?」と僕は思った。でもあの曲を通して、アメリカに住む黒人の若者たちの現状がわかった。それまで全く縁のない世界だった。彼らのことをBBCや新聞がわざわざ取り上げるわけじゃない。彼らの声を聞かせるメディアがなかった。音楽を通して知ることができたんだ。そういう力が音楽にはまだあると思っている。

年々、状況は悪くなっているという感覚があるのですね? 

ハーバート:はははは。そうだね。世界の現状に強い失望、憤慨、不信感を抱いている。たとえば女性の権利が自国も含めて世界のいろいろな国で後退していると感じる。宗教と人種の隔たりがさらに広がっている地域もある。世界の多くの地域で状況は悪くなっていると感じる。
 もちろん良くなっている場所もあるけど、例えば二酸化炭素の排出量だけを見てみても、1990年に確か京都議定書が締結されたわけだけど、それ以降61%排出量が増えているんだ。我々は狂っているよ。減らすどころか、悪化の一途を辿っている。肉の消費量は増え、遠くへ移動する人も増え、消費も増え、世界は完全に間違った方向に進んでいる。状況は確実に悪くなっている。

たとえば、“strong”、“battle”とったシンプルで、暗喩的な言葉の曲名を用いて、資本主義の、とくにマッチョなところへの批評性を含んでいると受け止めてよろしいでしょうか?

ハーバート:僕がなぜ音楽を作るかというと……、そもそも自分が満たされて幸せだったら何か作る必要はないよね。僕にとって創造することはすなわち、世のなかで何かが間違っていると思うことだったり、何かを変えたい、解決したいという思いだったり、変化をもたらすきっかけになりたいという思いから生まれるんだ。僕にとって創造することはふたつのことを象徴している。この世のなかがきっと良くなると信じる楽観性と「こうあるべきだ」という世界に対する不満だ。その楽観と不満のふたつの組み合わせが僕を創造へと掻き立てるんだね。

あなたの音楽では、資本主義への批判は一貫しています。『The Mechanics Of Destruction 』や『Goodbye Swingtime』以降、ずっとあるものです。『The Shakes』は、政治的批評性という観点において、これまでの作品とどこが違うのでしょうか? あるいは同じようなことを、あなたは意識して言い続けているのでしょうか?

ハーバート:僕が伝えようとしていることは一貫していて、それは根本的不公正だ。僕が解せないのは、経済危機はリスクをいとわない経済界の行き過ぎた行為によって巻き起こされたにも関わらず、その尻拭いを庶民がしている。貧しい人たち、社会の弱者である障害者や老人、失業者がその代償を払っている。まるで手品だ。最悪の手品だ。僕はそういう不公正が一貫したテーマになっている。
 僕は恵まれた生活ができている。その恩恵には責任がついてくると思っている。その責任のひとつが、その恩恵を疑問視し、それが何によってもたらされているのか理解することだ。例えば自分が日常使っているものを中国の工場で製造してくれている労働者に感謝をしなければいけない。あるいは僕の携帯の部品のためにアフリカで採掘作業を行っている人たちかもしれない。そういう人たちの存在をきちんと把握し、自分の生活が当たり前のものだと思わない責任があると思っている。

サンプリング・ソースについて、あなたはつねにこだわりを持っていますが、今作の「音」も、それぞれに意味があるんだと思います。しかし、それはあなたの説明を得るまでは、リスナーにはわかりえないことだと思います。それでもあなたは音のソースにこだわるのは、音を資本主義から遠ざけることがいかに重要なのかという話だと思いますが、今作における音のソースについて説明お願いします。

ハーバート:僕としては、なんとなくポンペイをイメージしたんだ。ポンペイには実際行ったことがないんだけど、ポンペイに対する僕のイメージは「時間が止った場所」だ。ある時点から全てが止ったまま、という。僕のとってこのアルバムは自分のスタジオあるいは生活がある時点で止った状態なんだ。つまり、自分の身の回りにあるものだけを使って音を作っている。
 例えばゴミ箱や、子供の学校鞄。2014年夏のある一瞬を切り取ったものにしたかった。他のサウンドももちろん取り入れている。“Safty”では、イラクやイスラエルで実際に録られた銃弾や爆弾の音をebayで手に入れて使っている。あの曲は非常に具体的な物語を伝えている。でも他の曲は、身の回りにある無駄なものや消耗品を使っている。例えば食べ物の包装や洋服や家具とか。昨年僕のスタジオと家にあったもののカタログみたいさ。

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僕が解せないのは、経済危機はリスクをいとわない経済界の行き過ぎた行為によって巻き起こされたにも関わらず、その尻拭いを庶民がしていること。貧しい人たち、社会の弱者である障害者や老人、失業者がその代償を払っている。まるで手品だ。最悪のね。



Herbert
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今回はヴォーカリストを起用して、細部において実験的ではありますが、いろんなタイプのポップ・ソングをやっていると言えると思います。たとえば、“stop”で歌われている主語の「僕」は資本主義の奴隷となった「僕」だと思うのですが、これをディスコ調の曲の「ドント・ストップ」というクリシェに結びつけたり、曲調と言葉がコンセプチュアルに結びついていますよね。それは今回のアルバムのコンセプトとどのような関係にあるのでしょうか? それは、『Goodbye Swingtime』のように、政治的であることと同時に娯楽を意識したということとも違うアプローチですよね。より、メタフィジカルにアプローチしているように思いました。

ハーバート:このアルバムはよりエモーショナルな作品だから、例えば“stop”といった曲なんかは、よりパーソナルな視点から見た「誘惑」が枠組みとしてある。我々は常に誘惑に囲まれて生活している。店に入っても、そう。日本ではどうかわからないけど、こっちではちょっとした店に入るとまず目につくところに山のようにチョコレートが並べてある。身体に悪いものを買わせようといちばん目の着くところに置いてある。
 広告も至るところにある。最新型の車や魅力的な旅行先といった広告がね。こういった資本主義的構造のなかで我々は常時誘惑に曝されている。ものを買うように、と。我々が消費しなければ経済は成長しないからって。現行の政治体制ではそれが唯一の経済対策だから。消費者に消費を促すだけ。
 で、僕からすると、それに対する責任は僕たちの肩に乗っかってくる。チョコレートにしても車にしても「要らない」と言えばいいんだ。ドラッグに対しても、あと一杯のワインに対しても「要らない」と言えばんだ。この曲に限らず今作はそういう政治的な考え、政治的枠組みをより個人の立場で捉えている。

アンビエント調のトラックの、古めかしいバラード、“bed”は不思議な曲ですよね。この曲で歌われているのは、それこそあなたの失意のようなものですよね? いままで以上に、あなたの感傷的な、エモーションが表現されているようにも思うのですが、いかがでしょう?

ハーバート:たしかに今回はすごエモーショナルな作品だと思う。この前の一連の作品はドキュメンタリーの要素が強かった。特定の状況だったり、事実を物語に構築して伝えようとしていた。でも今回は、同じようなテーマを、感情の面から伝えたかった。ある事象に対する感情的な反応を表現している。腐敗した政権がこの国を治めていることや、大企業が力を持ち過ぎていることやこの国で税金を免除されていることだったり、いまの社会の仕組みを変えない限り地球の破滅に繫がることだったり。扱っているテーマやインスピレーションはこれまでと変わらない。ただ、ただより感情的な表現をしている、という。

日本では左翼的なものは弱体化していると言われているのですが、UKはいかがでしょう? あなたから見てUKの左翼的な動きは、この時代において、どのような状態にあるとと思われますか? 

ハーバート:可能性としては良くなる見通しだ。明後日に選挙が行われるんだけど、政党を跨がって左翼政治家達が新たに連立を組む可能性がある。それはいいことだと思う(※取材は選挙前にやった、実際の選挙ではご存じのように保守党が勝利)。
 ただ問題は、この国に住んでいない億万長者がメディアを支配していることで、彼らは商売に有利なように政治を影で動かしている。情報操作が蔓延っている。非常に憂鬱な状況だ。他にも問題はあって、それは「究極の中道主義」と呼べる考えだ。つまり緊縮財政を受け入れ、進歩的な政策を受け入れ、成長は必要だ言い、合理的に考えるべきだと言う。でもそうではない。我々にいま必要なのはまったく新しい社会構造であり、現状からの打破であり、革命が必要なんだ。遠慮がちで柔な代替案ではなく、変化を本当に生む為には強く自信に満ちた代替案が必要なんだ。

総選挙を前に、スコットランドのSNPが大躍進をしているそうですね。この事態をあなたはどう見ていますか?

ハーバート:非常に難しい問題で、スコットランドにとってはイギリスから独立することが正解だと思うんだけど、イギリス人としてはスコットランドが脱けてしまったら大惨事だ。イギリス人であることを放棄したいくらいだ。僕は隣人よりもイラクにいる人のほうがよほど共感できる。いまの隣人は右翼政党の議員なんだ。そんな隣人よりもブラジルの工場で働いている労働者のほうがよほど気が合うと思っている。国を細かく区切っていくという発想は理解できない。人びとがもっと混ざり合ってしかるべきだと思う。国境なんてそもそも後でとってつけたようなものなんだから。

“safety”は、あなたのダンス・カルチャーへの期待が感じられる曲だと思いました。階級のないナイトクラブ文化、ハウス・ミュージック、暗に公共圏を主張するレイヴ・カルチャーを政治的抗議運動へと発展させるためには、これまで何が足りていないのでしょうか?

ハーバート:新しいヴィジョンを明確に述べる牽引者がいないんだと思う。例えばクラブに行っても音楽を止めて演説をする人を見たことがないようね。それに「木曜日に選挙があるから絶対に投票に行くように」と促す人もいない。「同性愛者だろうと、白人だろうと黒人だろうと関係ない、それよりも重要なことがある。だからこの人に投票べきだ」ということを語る人がクラブに行ってもいない。ダンス・ミュージックとクラブ・カルチャーの問題は絶え間なく続くことで、音楽が止むことがほとんどない。
 僕たちがやらなければいけないことは、行間を読むことなんだ。政治というのはまさに行間で何が行われるかが鍵なんだ。政治家が語る言葉ではなく、その言葉と言葉の行間に本質が隠されている。僕からするとダンス・ミュージックはそういう行間を読むのがあまり得意ではないと感じる。

“silence”は、いま失われているものとして描かれています。敢えてそれを“silence”はという言葉にしているのは、リスナーに考えて欲しいからですよね?

ハーバート:リスナーは言われなくても考えていると思うし、自分のリスナーの実体も僕にはわからない。誰に向かって音楽を作っているのかって考えはじめたらきりがない。リスナーというひとつの塊があるわけじゃない。なかには取材をしたジャーナリストがいるかもしれないし、自分の祖父かもしれないし、音楽アカデミーの学識者かもしれないし、政治記者かもしれない。その中の誰に向けて音楽を作っているのか、正解なんてないんだ。だからリスナーに何かを求めることは敢えてしたくないんだ。

これだけ政治的なあなたが、しかし単純なプロテストを好まないのは、なぜでしょうか? 

ハーバート:ハハハハ。好まないわけじゃないよ。ただ、同じ問題でも解決策はいくつもなきゃいけないと思っている。問題があまりにも大きい分、解決法もたくさんなければいけない。

ちなみに、AnonymousとSleaford Modsとでは、あなたはAnonymousのほうに共感するのでしょうか?

ハーバート:はははは。なるほど(笑)。Sleaford Modsついてそこまで知識があるわけじゃないから、これには答えるのが難しい。

今作においても、曲順は重要ですが、“warm”〜“peak”という流れは、あなたなりに楽天的なエンディングなのでしょうか?

ハーバート:“warm”はすごく切羽詰まっていると思う。「世界が変わり果ててしまったため、君を守りたいんだけど、その術がない」と訴えている。すごく悲しいよね。“Peak”のほうは楽天的かもしれない。いまはSNSがあって、大企業に依存することなく、自分たちなりの生き方ができる。自分たちの想像力を使っていまある問題を解決するのも自分たち次第だ。
 僕も根は楽天的な人間だ。世界がどうしようもない状況だっていうのはわかっている。そんななかで、さっきも言ったように音楽を作るという行為は楽天的な思いから来ている。だから楽天的なエンディングにするのは大事だった。とくにこれまでの2作はすごくダークな内容だったから。良い方向に物事を変えていけるだろうという確信を今回最後に持ってくることが大事だった。

4年前にUKで起きた暴動に関してはいろいろな意見がありますが、あなたはあの暴動をどのように解釈しているのでしょうか? 

ハーバート:あの暴動がUK全体に与えた影響はさほど大きいものではなかったものの、暴動に参加した人たちやそのコミュニティーにとっては大きな出来事だった。彼らは経済的に貧しく、社会のなかで蔑ろにされてきた人たちだ。コミュニティーは昔からドラッグで溢れ、選挙法の制約で選挙権も剥奪されている。家賃の高騰で家を追い出されたり、酷い労働条件の仕事を課せられている。政府の対応は酷いものだった。ペットボトルの水を盗んだだけで投獄される人もいた。
 その一方で、経済を破綻させた張本人は銀行家たちは何のお咎めもなした。何百万ポンドも盗んでおいてだ。政府からも、年金生活者からも、庶民からも。社会の底辺にいる人たちが立ち上がったときの政府の対応を見ると、そういう社会の仕組みに蔓延る偽善が浮き彫りにされる。暴動に参加した全員が善人だとは言わない。けれども、根深いフラストレーションから起きたことはたしかで、彼らが抱える問題への軽視が生んだものだと思う。

最後に、あなたがいま読むべきだと思う本は?

ハーバート:ナオミ・クラインの『This Changes Everything(これは全てを変える:資本主義Vs気候)』という本があって、これはいま非常に重要な本だと思う。資本主義と環境問題をひとつの大きな問題として捉えていて、資本主義こそが環境破壊の根本的原因だと指摘している。どちらかの問題を解決することは、もう片方の問題の解決にも繫がると。これは非常に重要な本だ。
 もう一冊は音楽本で、『In Search of a Concrete Music(具体音楽の探求について)』というピエール・シェフェールの本で、最近また再版された。サウンドと音楽に関する非常に面白い本だよ。

Akitsa - ele-king

 カナディアン・ブラックメタル・バンド、アキッツァ(Akitsa:正しい発音をご存知の方はご一報ください)による5枚めのアルバム。プリュリエントのドミニク・フェルノウによるブラックメタル・プロジェクト、アシュ・プール(Ash Pool)とのスプリット以来約2年ぶりの音源は、もちろんドミニクの〈ホスピタル・プロダクション(Hospital Productions)〉から。超パンキッシュなヴォーカルがフランス語なので当初はフランスのバンドかと思っていましたが、ケベックです。

 アキッツァは、ドミニクによるアシュ・プールのサウンドからうかがえる彼のブラックメタルへの嗜好、クッソ劣化音質、D-Beat、クラストパンク的ブラックメタルを見事に具現化するバンドであり、ゼロ年代以降USアンダーグランドを中心に再燃した第二波ブラックメタル・ブームを代表するバンドとも言える。
それはたとえばこんな超アンダーグラウンドな文化をスタイリッシュに見せることに成功したサン(SUNN O))))のスティーブン・オマリーや写真家のピーター・ベステ(Peter Beste)、現代美術家/彫刻家のバンクス・ヴァイオレット(Banks Violette)といったマルチ・タレントなアーティストらによりヒップなサブ・カルチャーとして認知され、アイコン化された。そしてそれは、先日H&Mから架空のメタル・バンドのパッチが施されたクソダサいコレクションが発表されたことで完全に終わったのかもしれない。

 相変わらずのアキッツァの『グランズ・ティランス(Grands Tyrans)』を聴きながらそんなことを考えていた。変わらないは言い過ぎか。クラストパンク色はより色濃くなり、USブラックメタル界のアイドルとなったボーン・アウル(Bone Awl)のマルコ・デル・リオが現在活動するラズベリー・バルブス(Rasberry Bulbs)の世界観と重複する。ローファイ・シンセ・ウェイヴのようなトラックも収録され、〈Not Not Fun〉以降のローファイ・インディ・ファンや、エッセティック・ハウス(Ascetic House)周辺をチェックするオシャレ・ゴス・キッズの耳にも届くかもしれん。ヒネくれて聞こえるかもしれんが、こりゃカッチョイイですよ。


 そういえば、先日、いつだったかココに書いたバーザムTシャツを着るのがテクノDJの間でヒップなんてのはファック、という一文を往年のサージョン・ファンから指摘されたのだが、そのとき僕がイメージしていたのはサージョンではなく、スウェーデンはストックホルムのジョナス・ローンバーグことヴァーグ(Varg)である。ノルウェジャン・ブラックメタルからの影響を声高にアピールする彼の最新作『URSVIKEN』が先日発売された。寒々しい光景が広がるエクスペリメンタル・アンビエント・テクノにそのプロジェクト名、本人のノリからわかりやすすぎるほど直球に想起されるバーザムの獄中アルバム・ミーツ・テクノ。ディープ・ミニマルな心地よいビートを洗練された手つきで紡ぎながらも、グルーヴよりもサウンドスケープが際立つ雪山遭難テクノ。いや、わかります。僕もバーザム好きですし。だけどもヴァーグ・ヴァイカーネス本人はマジでいわゆるネトウヨかつ問題の多い人間だと思うから信仰するのはどうかと思うよ。


CMT - ele-king

20150606

Special Talk : peepow × K-BOMB - ele-king


peepow A.K.A マヒトゥ・ザ・ピーポー
Delete Cipy

Blacksmoker

Hip HopExperimentalAbstract

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 目を閉じて想像したまえ。深夜、K-BOMBに呼び出され、マヒトゥ・ザ・ピーポーとの対談の司会を託された二木信の精神状態を。
 それはまるで……たまに電車で一緒の車両に乗り合わせる、名も知らぬあの美しき貴婦人から、いきなり電話をもらって、「いますぐ来て!」と言われるようなものだろう。そんなあり得ない、ウキウキした感情を以下の対談から読み取っていただけたら幸いである。
 もちろん賢明な読者には、これが先日〈Blacksmoker〉からリリースされたマヒトゥのラップ・アルバム『DELETE CIPY』に関する密談であることは、察していただいていることと思う。つまり、もう聴いている人はその余談として、まだ聴いていない人には聴くための契機としてある。

 まあ、悪名高きロック・バンド、下山のヴォーカリストのマヒトゥ(熱狂的なファン多し)が、名門〈Blacksmoker〉からK-BOMBをはじめとする素晴らしいトラックメイカーたちと共演していること自体が、すでに巷では話題となっているわけだが、そこでもっとも好奇心を掻き立てられることのひとつは、マヒトゥとK-BOMBがどのよう状態のなかで会話し、創造していったのかというそのプロセスなのだ。
 二木、この場にいられたお前が心底羨ましいぜ。(野田)

マサトはさ、靴下もさ、あってないんだ。オレと一緒なんだよね。──K-BOMB
たしかに揃ったことがないかもしれない。──peepow

二木:マヒトゥさんとK-BOMBが出会ったのはいつですか?

K-BOMB:わかんない。

peepow:あんまり思い出せないね、オレも。

K-BOMB:カルロス(・尾崎・サンタナ。GEZANのベース)に電話してみたら? 彼はそういうことを憶えている人だ。

二木:ライヴの現場?

peepow:ではない。

K-BOMB:わかるだろ? オレがいつも酔ってるのは。憶えてないな。KILLER-BONGに聞いてみたらいいんじゃねーか? 奴は家で寝てるよ。

二木:K-BOMBから見て、マヒトゥさんの才能とは?

K-BOMB:そういうのは、実のところよくわからない。魅力か。人物とか自由なとこ? かなぁ。

二木:自由とは?

K-BOMB:なんかスケボーにも近いような感じさ。

peepow:オレの〈Blacksmoker〉のイメージもスケボーのりにちょっと近い。好奇心の波みたいのがあって、いい風が吹いている。オレは人も場所もニュアンスでしか感じ取ってない感じがする。

K-BOMB:人といっぱい会うけどさ、才能って人物でしかないと思うんだ。そういうものの塊だと思う。目立つ、そういう雰囲気だ。

peepow:K-BOMBから最初「チャリ、かっこいいな」みたいな話をされたのを憶えてる。

K-BOMB:ママチャリでさ真っ赤に塗られててハンドルが片方無いんだ

二木:マヒトゥさんから見て、K-BOMBの表現者としての魅力は?

K-BOMB:オレとかさ、けっこう関西ノリなんだと思う。関西の人によく言われる。「K-BOMBくん、関西っぽいな」って。

peepow:いや、わかる。東京に来て、数字やデータみたいなもので足場を作ってる人が多いことにげんなりしていた時期にK-BOMBに会って、生き物感バーンって、純度あるなーって感じた。

K-BOMB:そういう軽いノリが似てんだと思うな。

peepow:恋に落ちる時もパッと一瞬目が合って、「あ、好きかも」ってなる。理屈や理由なんかそのだいぶん後でしょ。それは匂いやニュアンスとしか言えない。K-BOMBには細胞レベルの何かってやつを感じた。血なまぐさい獣の匂い。おいしそうなもの目の前に広がってたら、蛍光色でも1回つまんで食ってみる、みたいな感覚に近いな。ドキュメントがまじわるってことは。

K-BOMB:蛍光色っぽい感じだ。わかる?

peepow a.k.a マヒトゥ・ザ・ピーポー feat. K-BOMB「SUNDANCE」

二木:『Delete Cipy』を聴いたり、それこそ“SUNDANCE”のミュージック・ヴィデオを見ると、ふたりが色や感覚で何か感じ合っていることは伝わってくる。

K-BOMB:うん。そうだね。

peepow:利害とかじゃないすよ。

K-BOMB:でも一方で、数字も手にしとかないと、またその逆をというのもある。そういうところを無視してやっているようで、実のところ絡ませたい。そうじゃないとあんまり意味がない。それが数字を相手にした時の面白さなんじゃないか。

peepow:オレは〈Blacksmoker〉やK-BONBをアンダーグラウンドと思ったことはないですね。そういう文脈を超越しよう姿勢で数字と関わってる。いびつなストリート感でしょ。

K-BOMB:アンダーグランドだと言われるけどさ、俺もそういう感覚はまったくないんだ。ただちゃんとリスペクトもある。だからさ、試してる、やってみる、やりたい。ただ、それだけなんだ。

二木:その話につながると思うんですけど、マヒトゥさんはキレイな歌声も出せるし、上手く歌おうと思えばいくらでも歌えて、メロディアスなポップ・ソングも作れる人だと思うんですよ。ただ、今回のアルバムでも上手く歌ったり、ラップすることを追求してるわけじゃないですよね。そこが面白いなと。

K-BOMB:そういうことだと思う。オレにもそういう風に聴こえる。

peepow:ジキルとハイドじゃないけど、朝起きた時は世界も征服をできるかもしれないぐらいの無敵感でも、寝る前にはひとりぼっちで無気力で何もやる気が起きないことすらある。ひとつにキャラクターをまとめることなんて本当は誰も不可能なはずなんだ。オレはいろんな場所を歩いて、歌ったり、形にしながら、自分が思ってることを楽しみながら探してる。おれのなかにいる何人もの顔を解放してあげたいんだよね。だから、卑屈な感じとか悲壮感はない。結局、映画にした時にいちばんグッとくるほうを選ぼうって感覚あるな。最速で最短でキレイなゴールに行きたいわけじゃない。全感覚でいい匂いのするほうに流されてる。

K-BOMB:感覚は大事だよ。絵を描いても写真を撮っても、イイ感覚で見えてると違う。ナナメ感もあるけど、ちゃんとまっすぐしてる。そういう感覚なんだ。マサトはバランスがいいんじゃないか。

二木:さっきの歌の上手さの話で言えば、K-BOMBも上手くフロウするラップもできるわけじゃないですか?

K-BOMB:できる。

二木:でも、あえてやらないわけでしょ?

K-BOMB:やらない。やれちゃうからね、つまらない。オレがつまらないんだからさ、人を楽しませることができない。

peepow:だから、新しい正解のカタチみたいなのを落としたいっていうのはある。

K-BOMB:どんどん知りたいんだからさ、そこら辺が重要で感覚なんだろうね。

peepow:オレのK-BOMBの好きなところは、生き方としてK-BOMBというジャンルになっているところ。その人がそのまんま音楽の言葉とイコールにならないやり方は嘘だと思うから、そこはリスペクトあるね。オレも自分がやるんだから、全部正解って言わせるよ。それは当たり前のことなんだ。

K-BOMB:そういう感覚でチャレンジして、自分を持っている人がやれんだと思う。

peepow:今回『Delete Cipy』を作って、ヒップホップは簡単にできるもんじゃないなって感じた。ただ、ヒップホップは血や生き方や生活だと思うから、そういう意味で言えば、オレもある意味ヒップホップだと思う。自分のフィルターやノドを通ったものはすべてオレのカタチになっていくから。

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上手くなるっていうのは、下手になるっていうことでもある。だから、わざと変えていく。そうすりゃさ、オレははじめた時の気持ちが持続していく。オレがよく知らないものに触れることはラップをはじめた時と同じ感覚に戻ることなんだ。──K-BOMB


peepow A.K.A マヒトゥ・ザ・ピーポー
Delete Cipy

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二木:今回マヒトゥさんがラップ・アルバムを作ろうと思ったのはなぜですか? 

peepow:成り行きだと思うんですけど、自分も最初からそうありたいと思ったんですよね。ただ、オレのラップは、ヒップホップの人が言うラップなのかはわからない。ただ、少なくともオレが純度100%であることは間違いない

K-BOMB:ラップでしょ。

二木:ラップですね。

K-BOMB:うん。ラップにね、定義はないんだよね。韻踏んでりゃラップなんだから。そうだろ?

二木:韻を踏んでればラップか。うん。

K-BOMB:違うの?

peepow:ラップって何なんすか?

K-BOMB:ラップって何なの?

二木:フロウするのがラップじゃないですか。

peepow:オレのアルバム、ラップなんですか?

K-BOMB:だったら、そうとうフロウしてるからね。

二木:ラップですよね。だから。

K-BOMB:そうだね。いいアルバムだよ。

二木:そもそも表現者、ミュージシャンとしてのマヒトゥさんの原点はどこにありますか? 例えば、ロックなのか、パンクなのか、ブルースなのか。

peepow:そのどれでもないですね。何にも考えずに生まれた瞬間は、自分の感情と直結して言葉やルールがまったくわからないのにフロウがバーッと出てくるわけじゃないですか。オギャーって泣いて生まれてくるあの一発目のフロウですよ。いろんなルールや人と会っていく中で上手いこと表現しようとしているけど、オレは最初の、何も考えずに生まれた瞬間に近づきたい感覚がある。失っちゃったものを取り返しにいきたい。

K-BOMB:上手くなるっていうのは、下手になるっていうことでもある。だから、わざと変えていく。そうすりゃさ、オレははじめた時の気持ちが持続していく。オレがよく知らないものに触れることはラップをはじめた時と同じ感覚に戻ることなんだ。だからさ、新しくはじめたことをラップのようにやるだけだよ。何も変わらないんだよね、オレは。気分も変わらない。何をやってもそのうち上手くなっちゃうからな。ふっ(笑)。

二木:それこそ『Delete Cipy』にはK-BOMBの他に、KILLER-BONG、LORD PUFF、KILLA-JHAZZが参加していますよね。とくにLORD PUFFとKILLA-JHAZZは久々登場じゃないですか。

K-BOMB:彼らが連絡して来たんだよ。やらせてくれと。仕方ないよ。

二木:久々に連絡して来たのはなぜ? 

K-BOMB:JUBEくんがコンタクト取ってたみたいだ。そうでしょ?

JUBE:KILLA-JHAZZやLORD PUFFだけでなく、BUN君、WATTER、GURU、そしてKILLER-BONG。狂ったメンバーが集まりました。

二木:LORD PUFFとKILLA-JHAZZはかなり久々じゃないですか?

K-BOMB:だいぶ久しぶりだな。LORD PUFFはカリフォルニア辺りに行ってたらしーし。

peepow:オレも気になるとこですね。

K-BOMB:K-BOMB、KILLER-BONG、KILLA-JHAZZは三つ子だからさ。LORD PUFFはイトコだけど。アナル・ファイタ(ANAL FIGHTER)もイトコなんだ。そーゆーコトになってる。

JUBE:ファイタはTHINK TANKのP……

K-BOMB:彼はエグゼクティブ・プロデューサーだよ。

二木:やはりマヒトゥさんのキャラクターと才能を見て、今回はKILLA-JHAZZとLORD PUFFだと。

K-BOMB:だいたいさ、ヤツらの曲もその場でパッと作って、その場でパッとマサトがラップを入れる感じだったんじゃないか。KILLER-BONGのことも全然わからないからさ。オレ、K-BOMBだからさ。彼らにまた後日インタヴューしたらいいんじゃないの? KILLER-BONGはいま徳島辺りに行ってるんじゃないの? 

二木:なるほどね。アルバム制作はマヒトゥさん主導で作っていった感じですか?

K-BOMB:KILLER-BONGは50曲ぐらい作ったけど、50曲渡すということは、そのすべては完成形じゃない。KILLER-BONGは、他にもっと完成度の高いトラックがあるのに、マサトが20%ぐらいの完成度のトラックでどんどん勝手に歌ってしまったんだと。「なんでそれで歌うの? こっちにもっといいトラックがあるじゃねぇか」と。

peepow:食べ物だってすげぇおいしそうなスパイスの効いたカレーじゃなくて、パーキングエリアのカレーが食いたい時だってある。理屈じゃないんですよ。

K-BOMB:だから、KILLA-JHAZZやLORD PUFFがスパイスを注入する役だ。トマトとかセロリとか。ただ、KILLER-BONGは大変だったみたいだな。ライヴばかりの生活の中50曲近く作って渡すのは。

peepow a.k.aマヒトゥ・ザ・ピーポー feat. K BOMB 「blue echo」

二木:BUNさんがトラックを作った“sleepy beats”(KILLER-BONG『64』収録曲でpeepow a.k.a マヒトゥ・ザ・ピーポーが歌った楽曲をBUNが再構築している)で、マヒトゥさんはいろんな声を出してますよね。

K-BOMB:あれ、いいよね。

二木:もちろんすべてマヒトゥさんの声なんですよね。

peepow:そうです。

二木:これだけ多彩な声が出せるというのはマヒトゥさんのヴォーカリストとしての武器であり、魅力ですよね。

K-BOMB:そうなんだよ。オレも出したい。オレも歌とか歌いたいけど、やっぱヘタなんだ。いい声が出ない。

peepow:はははは。

Fumitake Tamura (Bun) / Sleepy instrumental [[SplitPage]]

K-BOMBと最初に会った頃に、K-BOMBがオレの弾き語りのソロのYouTubeの映像を〈Blacksmoker〉の事務所で観て、「狂ったことしかできないヤツはダメだ」と言っていて、スッと腑に落ちた。──peepow


peepow A.K.A マヒトゥ・ザ・ピーポー
Delete Cipy

Blacksmoker

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JUBE:マヒトゥはラップに初挑戦的なイメージだけど、GEZANのライヴを見たときに「もうラップしてるじゃねーか!」って思ったよ。色は違えど、常に挑戦し、すでに多彩な武器を備えてる。K-BOMBと重なったな。これは面白いと思ったよ。

K-BOMB:武器、いっぱいあるよ。声も七色ぐらい持ってる。オレもやっぱ物真似、上手いからさ。そう言えば、アルバムは13曲だけど、あと10曲ぐらいあった。だからさ、20数曲ぐらいラップを録音して、13曲に絞った。だって、マサトは1日に5曲とか録るんだ。似てるよな

peepow:トラックをもらって、その日にリリックを書いて、次の日には録音してる。そういう曲が入ってる。24時間オレなんだから時間はかからない。

K-BOMB:オレたちのスケジュールが合わないぐらい早かった。

JUBE:しかもだいたい一発録り。

K-BOMB:声の重ね方もラッパーのように上手いね。あと、マサトは少女マンガみたいなさ、雰囲気あるわけよ。

peepow:ははははは。

K-BOMB:ファッションもそうだし。

peepow:オレ、ファッション、少女マンガ感ある? 

K-BOMB:あるんじゃないの?

peepow:どこ?

K-BOMB:たまにあるんだよ。

二木:それ、髪長いとかそういうことじゃなくて?

K-BOMB:そうかもしれない。

peepow:そこじゃん(笑)。

K-BOMB:はっはっはっ。いや、だけど、マサトのファンや客は、いまのオレの意見に「わかります」って納得するはずだよね? マサトはロマンティストなのかもしれないな。ところで、君はマサトのアルバムをどう思ったんだい?

二木:相反する要素がせめぎ合っている作品だと思いましたね。混沌と秩序、理性と感情、上手いと下手、本当と嘘、美しさと醜さ、白と黒、そういうものが常にせめぎ合って闘っている。そのせめぎ合いが凄まじいなと。

peepow:2時間の映画じゃないから、そこで曲が完結したとしても、はじまりや終わりは、オレはないと思う。ずっと続いていて、はじまったり終わったりしている感覚がずっとある。だから、この作品も曲も続きのなかの最初の部分を切り取っただけかもしれない。K-BOMBと最初に会った頃に、K-BOMBがオレの弾き語りのソロのYouTubeの映像を〈Blacksmoker〉の事務所で観て、「狂ったことしかできないヤツはダメだ」と言っていて、スッと腑に落ちた。

二木:マヒトゥさんは、K-BOMBのラップする姿は見て、どういう印象を持ちました?

peepow:音との距離が近い。そう感じた。MPCを叩いている時も会話しながら叩いてるし、自然に手元で絵を描いたり、コラージュを切ったり、そういう速度や距離の近さが面白いと感じた。頭で先に考えて、遅くなる人が多いなかで、細胞レベルでバッと感じたことをそのまま行動に出せる。たとえば、今回のリリースもGEZANやオレのライヴを観て、何かの可能性を感じたとかではなくて、オレと会話している時のニュアンスで何かをやろうとなって実現している。その速度がK-BOMBや〈Blacksmoker〉の面白さだと思う。

二木:ということは、普段からけっこう会話してるんですね。

K-BOMB:してるね。メールもしてるしさ。

peepow:まあ、一向にマサトという呼び方が直らないけど。マヒトゥなのにマサトと呼ぶ(笑)。

二木:あ、本名がマサトじゃなかったの!!?

peepow:マヒトゥ。

K-BOMB:マサトで憶えちゃったんだよね。

peepow:はははは。

K-BOMB:マヒトゥって言う時もあるけど、オレのなかじゃ言いづらい。言いづらくて、会話が続かなくなっちゃう。

peepow:はははは。

二木:さすがですねー(笑)。最近、K-BOMBは自分より若い人とやる機会も当然増えていってますよね。

K-BOMB:若い人といろいろやると楽しいな。オレは知らないあいだ長いことやってるけど、いまでも同じ気持ちでずっとやっている。若者から大人になってそのままずっと続いていくんだろうなと思っていたし、そうやってきている。オレはそういうヤツが好きなんだ。マサトもそういうヤツだ。でも、世のなかはそういうヤツばかりではないってことに最近気づいたんだ。そういうのはつまらないよな。

peepow:あと、何かをテクニックだけで言ったり、やったりするのもつまらない。だからと言って、できない拙さみたいのを売りにするのもイヤだし、つまらない。今回のアルバムもそうはしたくなかった。

K-BOMB:あと、狂人を演じるようなヤツもつまらない。

peepow:狂人を演じるヤツはめちゃくちゃマトモだからね。真面目を絵に描いたようなヤツが狂人を演じる。つまらないからおれの半径10mにはいらない。

K-BOMB:オレの前に狂人ぶったヤツが現れやすいんだ。何故なのかわからねーけど狂人みたいなフリして荒々しい感じで近づいてくるんだけど、無視してると、そいつは普通に戻っちゃう。たまに本物の狂人もいるけどね。そういうヤツとは長年付き合っているよね。ある狂人はオレのライヴに10何年も来てくれている。あとさ、マサトはさ、靴下もさ、あってないんだ。オレと一緒なんだよね。

peepow:たしかに揃ったことがないかもしれない。

K-BOMB:オレもあまり揃ったことがない。そういう意味ではいろいろ似てて面白いんだよね。女物の靴下穿いてたりとかさ。おパンティも穿いてるかもしれないな。

二木:ははは。

K-BOMB:あと、マサトと俺は鼻のデザインが同じだ。

peepow:オレとK-BOMBとジャッキー・チェンの鼻のデザインは同じ。

K-BOMB:オレはけっこう鼻のデザインを見てるからね。HIDENKAも鼻のデザインがオレと似ている。オレは人と目を合わさないで鼻の部分だけ見て喋ったりするんだよね。

peepow:Phewさんがあるライヴで、いちばん簡単に人を騙せるのは目の色だ、みたいなことを話してたのを思い出した。目の色だけは嘘つけないってみんな思ってる分、目つきとかで真実味を出して人を騙すことがいちばん簡単だと。

二木:K-BOMBの目つき、ほんとに怖い時がある。

K-BOMB:ふっ(笑)。やめて。

peepow:鼻は嘘をつけない。

K-BOMB:うん。そうだと思う。

peepow:目は嘘をつける。

K-BOMB:オレは顔がいいのが好きだからね。一緒にやったり、何かをやってもらう時に、こいつがやるんだったらなんでもいいよって思える顔が好きなんだ。マサトもそう。

peepow:ずっとそういう表情で生きてきてるわけだから、自然とそういう顔になりますよね。

K-BOMB:顔に出てくる。顔がさ、輝きはじめる。汚い格好だろうが、シャネルとか、そういう豪華なパーティ会場にでも行ける顔っていうのがある。だから、売れていくヤツは顔がどんどん変わっていく。でも、会った時から顔が変わっていかないヤツっていうのは、わからないね。

peepow:プロフィールに具体名をどんどん出したり、誰々と知り合いとか出したり、そういうヤツはほんとに信用できない。基本的にそういうことを言っている時点で遅い。いや、その前にオレはもうお前の顔を見てるし、鼻も見ちゃってると思う。

K-BOMB:そうだよな。マサト。顔を見れば、だいたいさ、そいつがどれぐらいやってるのかわかるじゃない。そいつがどれだけ真剣にやってんのかは顔にも出てくるよね。

peepow:だからマサトちゃいますけどね。

(協力:みどりちゃん)

■■■■■■■ Release Party!! ■■■■■■■■
6/28(SUN)18:00-
at 中野HeavySickZero
ADV:2300yen+1D

LIVE
peepow special live set feat. GEZAN、skillkills、BUN
OMSB
NATURE DENGER GANG
skillkills
THE LEFTY

DJ
Fumitake Tamura(BUN)
WATTER
ひらっち(MANGA SHOCK)
イーグル・タカ


■前売りチケット
https://eplus.jp/sys/T1U90P006001P0050001P002155789P0030001P0007

interview with Bushmind - ele-king


Bushmind
SWEET TALKING

SEMINISHUKEI/AWDR/LR2

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 街は死んでいる。かつては僕たちの遊び場だった街が。
 いま僕たちが街にいるのには、消費者であることが条件付けられている。渋谷系リヴァイヴァルだって? とんでもない、90年代はセンター街の入口のキノコの屋台が、やって来る外国人を驚かせていたほどだ(笑)。渋谷駅構内では毎週、当時の日本で最高のディジェリドゥ演奏者がパフォーマンスを聞かせていた。コンビニで買ってきた缶ビールを飲みながら、僕はいつも地ベタに座っていた。そんな公共性が残っていたのが1990年代の渋谷で、あの時代がリヴァイヴァルするなんてことは、僕にはとても想像できないな。

 街は僕たちの遊び場だった。ブッシュマインドの2007年のデビュー・アルバムのタイトルは『Bright In Town』=「街の輝き」。まごうことなき街の音楽。ceroも歌っている、いわば「失われた街」の生存者。そして、ブッシュマインドはいまでも街の音楽をやっているひとり。泣くことも嘆くこともなく、たんたんとドリーミーに。

 不良の匂いをさせているところも良い。不良というのは悪人のことではない。管理を拒む者のこと。管理サッカー、管理野球、管理社会……を拒むと言うことは、試合中、臨機応変に自分で判断しなければならないということだから、実は(とくに日本人には)難しい。(シカゴなんかは、管理されることもなく、むしろ臨機応変に自分で判断しかしないから、あんなに多彩なゲットー・ミュージックが生まれるのだろう)
 ブッシュマインドは、そういう意味で本当に自由にやっている。新作『SWEET TALKING』は全21曲が収録されているが、もうひとつ重要なのは、ここに30人以上の人間が参加していることだ。そこにいる30人は、トレンドやハイプなどとは無関係の人たち。『Bright In Town』もそうだったように、いろいろな人たちと繫がることでしかこのアルバムは成立しない。街で出会い、街で遊んでいる人たちと。

音楽が怒りのはけ口だとか、俺はそういうのはとくにないんですよね。ムカついたときに音楽を作るとかもほとんどないですし。俺にとっては、音楽は楽しむものって思っています。

新作『SWEET TALKING』は、いままででベストだと思いました!

Bushmind(以下、B):マジっすか、ありがとうございます!

ブッシュマインドってさ、ヒップホップをベースにテクノを取り入れてるっていう風によく語られてて、たしかにその通りなんだけど、僕はドリーミーなチルアウトってイメージを持っているんですよね。で、まさに今回のアルバムはそれを突き詰めたっていうか。『Bright In Town』からずっと継続されているものなんだけど、それを今回のアルバムはいろんな意味で発展させ、研磨している。素晴らしいと思いました。

B:アップデートするってことをすごく意識しました。過去と似通っちゃわないようにっていうのと、できるだけいろんな引き出しを見せるということ。頭のなかで考えたことをうまく曲に反映できた手応えはありますね。
 こうしたいとか、こうやりたいとかっていうのを、パソコンで細かくいじれるようになって。いままでは一旦サンプリングで強引に形を作って、そっから正解を見つける感じだったんですけど、今回は思ったところにいきやすくなったっすね。技術的にはまだまだ全然ですけど、ここ3年でかなりいろいろ覚えられたので。

8年前とは違うぞっていう。

B:そうです(笑)。

ブッシュマインドらしさがすごく出てるよね。13曲目とか、16曲目とか、本当に良い感じのチルアウト・ヒップホップというか。サイケデリックというよりは、チルアウトでありドリーミーなんだよね。前に会ったときはアンチコンからすごく影響を受けているって言っていたけど、アンチコンはもっと実験っていうかさ。

B:ちょっとアート的なね。

そうそう。ブッシュマインドはもっと陶酔的じゃない?

B:そうですね。単純に音楽として楽しめるようにっていうのは考えてやっていますね

ストリートから来るタフな感覚はあるんだけど、同時にドリーミーでチルアウトな感覚が一貫してあるというのは何でだろう?

B:好きなんですよ。何も考えないで作ると自然とその方向へ行っちゃって。

『Bright In Town』(2007年)でブッシュマインドの印象を決定づけたのって、やけのはらとやった"Daydream"だったと思うんだよね。で、ブッシュマインドは、あの曲で表現した感覚をさらに自分に引き寄せて、どんどんブラッシュアップしていったよね。『Bright In Town』の次に『Good Day Commin'』があったでしょう? あれって3.11の年(2011年)だったんだよね?

B:そうですね。

まだショックが生々しかった時期だったよね。いたるところでネガティヴな感情が表出していた時期に、「良い時代がやってくる」というアルバム名の、しかもあれだけドリーミーでスモーキーな……(笑)。

B:はははは。

だって、あの時期だよ。あの時期に『Good Day Commin'』を出すというのは、やっぱりそこにはブッシュマインドなりの時代へのスタンスっていうかさ。

B:そこはけっこう分けていますね。音楽が怒りのはけ口だとか、俺はそういうのはとくにないんですよね。ムカついたときに音楽を作るとかもほとんどないですし。俺にとっては、音楽は楽しむものって思っています。

ある意味では、あの時期にあれってリスキーだと思ったんだよね。

B:いろいろ起きているなかで、おちゃらけてるみたいな(笑)。

わかってて、あえてというか?

B:自分はああいうドリーミーな部分が好きなんだけど、その裏にハードコアな熱い部分をチラ見せするみたいのが、真っ正面には見せない感じが理想ですね。アーティストを追っかけていても、実はムチャクチャ喧嘩っぱやいとかムチャクチャおっかないとか見せてない、裏の一面があるアーティストがすごい好きで。自分が不良じゃない分、そうゆう人には憧れがありますね。

それは本当の自分じゃないと?

B:はい。

今回の『SWEET TALKING』もそうだけどさ、『Bright In Town』や『Good Day Commin'』にしても、タイトルからして、桃源郷の方へ行くじゃない(笑)?

B:だから俺、今回もかなり意識しましたね。“bright”、“good”ときて、さて次はどうしようかなって(笑)。

はははは。

B:でもなんで好きな部分がそっちの方向なのかというのと……。うーん、なんでですかね。

サイプレス・ヒルというよりは、ナイトメアズ・オン・ワックスなわけでしょう?

B:そこを隠したいというのと、俺はできるだけいろんなひとに聴いてもらいたいというのがあって。そういうポジティヴな方向のほうがよりたくさん聴いてもらえるかなって。

みんなはそこで「グッド・デイズ・カミン」ではなく「バッド・デイズ・カミン」って思っているわけじゃないですか?

B:そうなんですかね。自分は楽しく過ごしたいっていうのがあるんで。自分の音楽にそういうネガティヴな要素を入れたいとはそんなに思わないんですよね。作っていてほんと楽しいんで。

今回のアルバムでも、テクノのビートっていうかさ、ヒップホップのトラックメイカーだったらまず作らない曲も入ってるよね。BPMもダンス・ミュージックのテンポだったりするし。

B:そうですね。

アシッド・ハウスっぽいのもあるんだけど。

B:今回は303を多用してますから。偽物ですけどね(笑)。いやぁ、もう楽しくなっちゃって。本当にあの機材はすごいんですよ。ついつい使いすぎちゃった。自分の好きな音とフレーズを決定づけてくれるというか。キラキラしたコードも出やすいというのもあって。

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自分はああいうドリーミーな部分が好きなんだけど、その裏にハードコアな熱い部分をチラ見せするみたいのが、真っ正面には見せない感じが理想ですね。


Bushmind
SWEET TALKING

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「ヒップホップとテクノの融合」みたいなことよく言われるじゃないですか? 今回もまさにその通りなんだけど、そういうミックス感覚はある程度自分でコントロールしているの? この曲はテクノっぽくいこうとか、あとはロー・ビートで何曲くらい作るとか?

B:全部はできてないですけど、アルバムの全貌がある程度見えてきてからはコントロールしましたね。最初はとりあえず何も考えないで曲を作ってコマとしてを並べていって、最後のほうはその隙間というか被らないようにっていうのを意識しましたね。
 あとは自分が聴いて素直にアがれる曲というか。設定優先とかやり方優先とか、方法論で作っても、最終的に聴いてちゃんと機能するものを意識したっすね。

設定とは?

B:設定が面白かったりする音楽ってけっこうあると思うんですけど。たとえばアート・リンゼイが楽譜をシャッフルして演奏するのとか、ああいうのは最終的な仕上がりよりも設定が優先なのかなって自分は思ったので。

ブッシュマインドのミックス感覚は独特だよね。ヒップホップ系のひととも違っていると思うし。

B:もともと曲作りも混ぜて遊ぶっていう感じだったからっすね。DJをしていて2曲、3曲重ねたときに全然違った感じになるときとか、やっぱすごくアがるんですよ。混ぜてまったく違う曲にするっていうのが、自分のDJをする醍醐味だと思っていて。

いまは何を使っているの? 

B:いまはCDですかね。ターンテーブルも使いますけど、データが多くなってきているんで、CDに焼いてますね。それで混ぜてまったく違う曲にするっていうのが、自分のDJをする醍醐味だと思っていて。

そういえば、『Bright In Town』から8年経ったんだね?

B:そうですね。CDが廃盤になってました(笑)。アマゾンで海外の業者が1,5000円とかで出してて「えー!」みたいな。実際、ネットで探しても全く出てこなくて。「もうそんなに時間が経っちゃったんだ」って。

早いよね〜。あのアルバムは、時代のある場面を描写したっていうか、関わっている人間の数もハンパなかったよね。

B:あのときは友だちがどんどん増えて躁状態になってましたね。友だちが増えるといろんな街に行って遊ぶ機会も増えてったんで。その思い出をパックしたアルバムですね。

この8年のなかで、タカアキ君のなかで変わったことって何でしょう?

B:変わったこと……。この8年ですよね。難しいですね。どんだけ変わったんすかね……。

日本社会でいうと、3.11があってものすごく揺れ動いた。それで『Good Day Commin'』が出た。それから数年後、安倍政権が誕生したと。音楽でいうと風営法があったりとか、ますます音楽が売れなくなったりとか。だって、8年前の『Bright In Town』って〈エイベックス〉じゃん。こういう音楽を〈エイベックス〉から出すことって、もう考えられないでしょう(笑)。

B:俺も本当に信じられない(笑)。その思いが年々強くなってるんですよね。当時は「すげぇ良い話がきた!」くらいにしか思ってなかったけど、いま思えば挑戦的なことをしたんだなって。

〈SEMINISHUKEI〉はその前からだよね?

B:レーベルは2000年初頭くらいですね。ずっと人数が少なかったんですけど、ストラグル(・フォー・プライド)のライヴに行くようになって、友だちが一気にバーンっと増えてメンバーを増えていった感じでした。そのときは大人数で遊ぶのがムチャクチャ新鮮で楽しかったですね。
 ただ、時間が経つと離れていくひともいて。そうゆうときにいかに固く自分たちの世界を作れるかっていうのは、すごく意識するようになりました。大所帯のクルーが時間経ってバラバラになって残念な感じになってくってのはよくあるけど、その流れには抵抗したいですね。

『Bright In Town』は勢いって感じがあって、それが良かったし……。あれを出したときに時代は変わるって思った?

B:いや、そこまでは意識していなかったです。本当に初めてなことばっかりだったので、作ることを楽しんだというか。ラップ・トラックを作るのも初めてだったし、ラッパーの友だちもいなかったっすから。それでいろんなひとに紹介してもらって。楽しかったですね。

セカンドの『Good Day Commin'』のときは、また状況が違っていただろうし。

B:あのときはマーシー君、〈WD Sounds /PRESIDENTS HEIGHTS〉が自由にやらせてくれたんですよ。まあ、逆に大変でしたけどね。

あの作品はマーシー君から出さないかってきたの?

B:そうっすね。ただ今回のリリースの話を振ってもらってからがこれでコケたら周りも道連れにするなって思って(笑)。チャンスが来たと思ったのと同時に責任も感じましたね。

世のなかのコミュニティのあり方も、この8年、ネットの普及によって多様化したよね。だって、8年前はツイッターとかなかったわけだからね。

B:ネットはもちろん使っているんですけど、作品を作る上でネットのみのやり取りっていうのは避けてますね。最初のきっかけとしてはいいと思うんですけど、曲を作って実際会ってみたら反りが合わなかったりとか。実際会わないとズレも生まれるし、国が違ったら文化も違うじゃないですか。ネットでも面白い出会いってあると思うんですけど、現場で繋がってできる音楽の方が魅力を感じますね。

それがブッシュマインドだもんね。

B:そうですね。いまは情報を手に入れやすくなったぶん嘘もいっぱいあるじゃないですか。情報に踊らせれて型にはまらないようにってのは気をつけてます。いまって、世界で時間差なしで流行があるようになってきているじゃないですか?

そんなこともないと思うよ。すごく時間差を感じるこもあるし、言いたいことも言えない監視社会になってきているようにも感じたり。本来は自由な発言の場であったハズなのに、ますます不自由な場になっているような。

B:しかもそれが生産的じゃないですもんね。

批判とかじゃなくて、たたきつぶしてやろうっていうね(笑)。そういう意味では、クラブ・カルチャーにはまだまだ役割があると思うんですけどね。

B:音楽に関しては、ネットは使い方によってはいくらでも広がるし、曲との出会いが、ここ最近いっぱいあるんですよね。いまカヴァー曲を聴くのにハマっていて、あるサイトで検索すると世界中のいろんなカヴァーが出て来て、すごく面白い出会いが増えたんすよね。レコード屋に行ってジャケでピンと来て、買って、家に帰って、ブチ上がるみたいなのとは差がありますけど。

タカアキ君は自分は不良じゃないって言ったけど、もうちょっと広い意味で、オモロい不良が年々いなくなったって感じもする。自分が年取っただけなんだろうけど(笑)。

B:たしかにモンスタークラスのニューカマー、そんなに聞かないすね。

ヒップホップはそれでも受け皿になっているように思うな。ゴク・グリーンかさ。

B:A-Thugって知ってますか?

知らないっす。

B:俺はまだ会ったことはないんですけどムチャクチャ聴いてて。『Streets Is Talking』ってアルバムが最高ですよ。

ちょっと、メモっておくよ。

B:今回参加してくれたなかには面白い不良がいるっすね。でもたしかに、ラップが上手いやつはたくさんいるんだけど、それプラスで不良スピリットの両方を持ち合わせた若手って、あまりいないですね。

俺はゴク・グリーンやコウも好きだよ。

B:ゴク・グリーンは聴いたことないですね

たくさん聴いているわけじゃないから、きっと他にもいるんだろうけど。

B:今回のアルバムに参加しているひと以外では、自分のまわりではあんまりいないですね。いるとは思うし、希望も期待もあるから出会えていないだけかもしれないんですけど、まだ耳には届いていないです。

でも、たとえば、このアルバムに参加しているR61 Boysという人たちなんか街の匂いを感じますよね。

B:こいつらの不良度は計りきれてないんですけど、面白い刺激を求めて遊び回ってる印象ですね。どこまでが軍団かわからないですけど、人数もムチャクチャいるすね。新潟の六日町にあるBARMってクラブで自分の企画やったことがあって。R61 Boysにライヴやってもらったんですけど、友だちが30人ぐらい来て。地元のお客さんより多かったです。

今回集まっているメンバーっていうのは、世代的にはどうなんですか?

B:同年代が多いかな。TOKAI勢はちょい下すね。最年少はCOOKIE CRUNCHす。

NIPPSさんも参加しているんだね。

B:NIPPSさんは本当に夢が叶ったって感じですよね。

この曲、かっこいいよ。ひとりだけ毒を吐きまくっている(笑)。

B:いやー、できてびっくりしたっすわ(笑)。分のトラックがあんな曲になるってほんと最高の遊びですね。

CENJU君も参加しているね。

B:こいつはヤバいっすよ。下北にもトラッシュがいたんだっていう。もうゲットー感が。

彼は〈DOWN NORTH CAMP〉のひとだよね?

B:そうです。CENJUとはここ2年くらいで仲良くなって、こんなやつがいたんだって思ったんですけど。あとはKNZZ、大ファンなんですよ。もう不良道。人生がすごくドラマチックですもん。アシッド・テクノみたいな曲でラップしてるやつなんですけど、”Planet Rock”って曲ですね。

”Planet Rock”もユニークな曲だよね。

B:KNZZ君は元々渋谷のアイス・ダイナシティってグループでけっこうトップの方まで人気が出ていたんですけど、トラブルとかでいなくなった状態になって、そこからの復活なんです。それでいままでの負の遺産を返しつつ新しいことをやって。

“Friday”という曲では、R&Bをやっているんですよね(笑)。

B:これもやりたかったことですね(笑)。歌ものをすごくやりたかったんですよ。かなり力を入れました(笑)。曲を作る前に集まって「クラブでの出会いが良いんじゃないか」って。

歌っているルナさんはどういうひとなんですか?

B:ルナさんはMaryJaneってふたり組のグループで活動してて。まわりの友だちで昔から遊んでた人間がけっこういて、音源といろいろ話も聞いてたので紹介してもらった感じですね。

小島麻由美さんにも新たに歌ってもらっていますね。この曲も面白かった。

B:これはかなりエクスクルーシヴになるなと思って。小島麻由美さんに歌ってもらったら面白いことができるんじゃないかと思ってました。最初はダブっぽい感じで歌が入ってきてみたいな感じで考えたんですけど、途中でラップ・トラックみたいになってきちゃって。

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あと連絡が大変だったっす。セカンドでちょっと人数が減ったんで、忘れてたんですよね(笑)。途中で全員にメールして確認を取らなくちゃいけないんだって思い出したとき、発売の延期をちょっと考えましたね(笑)。


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そういえば、少し前にトーフビーツのリミックスもやったじゃないですか? あれは、さすがにびっくりした。だって、トーフビーツの曲をブッシュマインドやRAMZAがリミックスしてるんだもん(笑)。

B:あれはスタイル・ウォーズというか、好きなアーティストを使ってどれだけ面白いことができるかをやらせてもらった感じですね。大阪のトラック・メイカーも参加したんで。

いや、良い企画だと思いますよ。トーフビーツについてはどう思う?

B:才能があるなって思います。あの曲の構成は自分にはできないんで、勉強になりますね。好みじゃない部分もありますけど。

ふだん向いているところが違うからね。でも、違うトライブが、リミックスという作業を通じて同じ盤にいることは良いよね。

B:ナード的な物も俺は良い物があると思うし、否定するつもりはないですよ。自分の好きものにもそういう音楽はあるし。ただ、音の鳴らし方とかで音色でちょっと物足りなくなってきちゃうかなって。彼のスタンスは好きですね。斜めに見ていそうな感じとか(笑)。

そこへいくとブッシュマインドや〈SEMINISHUKEI〉って、決して人付き合いが得意なほうではないからねー(笑)。

B:そうなんですよ(笑)。だからいまいち広がんないっていうところがあるんすよね。

それは8年経っても変わらない?

B:〈SEMINISHUKEI〉のメンバーでアルバムを出したのって、3、4人とかですよ。総勢30人くらいいるなかで。本当は仲間うちで作品を出して競い合うっていうのが俺の理想なんですけど、なかなか実現できないですね。あ、でもDJ Highschoolってやつが1ヶ月前にすごく良いアルバムを出したんです。かなり刺激になりましたよね。

へー。

B:Highschoolはすごいっすよ。彼は、どんなジャンルでも興味を持ったらすぐに自分でやってみて、簡単な方法でかっこいい物を作ることができるんですよ。もちろん掘り下げもするんですけど。DJ以外にラップやハードコアのバンドもやっているし。

いろんな人が参加しているんだけど、OVERALLというトラックメイカーも面白いと思った。

B:才能があるっすね。レコードの堀り方も尋常じゃなくて、DJもすごくいいんですよ。やっちゃんとクマと3人でミックスを聴いて、みんな「これはヤバい」ってなって、「〈SEMINISHUKEI〉に入ってもらおうか」って。2マッチ・クルー周辺の人間とも仲いいんで、その影響もでかいんじゃないかと思います。

今回は、トラックメイカーも何人もフューチャーされているんだけど、これは土台となるものをタカアキ君が作って、それに手を加えてもらうの? 

B:いや、その逆で、もらう方が多かったすかね。それを俺が料理してちょっと足したりとかループを変えたりですかね。OVERALLと作った曲はけっこうシンプルで、最初のピアノとサンプリングがOVERALLで、途中から入ってくる303を俺が入れた感じで、あとは展開を自分でアレンジしました。なんかひと味足すっていう。

ひとりで黙々と作るよりは誰かとやっていた方が楽しい?

B:作業によりますね。細かい作業はひとりでやりたいです。ただ、その土台になったりする部分で自分にないものが入ったりすると展開が一気に変わったりすることがあるんですよ。たとえばハットを入れてもらったとか。そこから自分の発想が増えていったりもする。フィードバックが起きたときの感覚がすごく楽しいんです。バンドってひとじゃなくてみんなで作るじゃないですか? 僕はやったことがないんでわからないんですけど、そういう感じなのかなって。だからもちろん相性が悪いひととかはなかなかできなかったりするんですけど、気が合うと、あっという間に仕上がることもあるんで。

今回の作品は、タカアキ君のなかで予定よりも伸びた?

B:完成は伸びましたね。ホントにギリギリでしたからね。ラップ取り終わった後にもトラックを最後までいじってた曲とかがあったんで。あと連絡が大変だったっす。

それ、『Bright In Town』のときも言ってたじゃん(笑)。

B:セカンドでちょっと人数が減ったんで、忘れてたんですよね(笑)。途中で全員にメールして確認を取らなくちゃいけないんだって思い出したとき、発売の延期をちょっと考えましたね(笑)。

はははは。それで井坂さん(担当A&R氏)に怒られたと?

B:いや、それで予定を見たら俺が1週間早く勘違いしていて。まだいける、みたいな。3枚目なんでサッとできるトラックメイカーを目指したかったんですけど。

ジャケの絵は〈フューチャー・テラー〉でも書いているひとなんでしょう?

B:そうですね。本人たちは服飾をやっていたりしていて。ROCKASENとかもそうですね。同じクルーみたいです。

アートワークに関してディレクションはしたの?

B:一応、ホークウィンドの『スペース・リチュアル』を(笑)。

ホークウィンドって、ヒッピーだよ(笑)。

B:いやいや、レミーはヒッピーじゃないですよ!

いや、レミーはヒッピーだよ(笑)。

B:まあ、時代的には、そういう要素もあったかもしれないですけどね(笑)。

しかし、なんで『スペース・リチュアル』だったの?

B:サイケデリックの数ある名盤で、自分のなかではこれが金字塔なんです。今回は、そのくらいの作品を作りたかったんです。ワックワックにアートワークをお願いするのは決まっていたんで、じゃあ、何をお願いするのかってなったときに、彼らにこの絵を描き直してもらってリミックスしてもらったら面白いんじゃないかなって。ヒップホップのアルバムにホークウィンドっていう設定自体もないと思うんで。あとホークウインドのファンのひとが間違って手に取ったりしないかなっていう(笑)。

それは感想を聞きたいね。

B:冒涜だとかいって、怒る人とかもいそうですよね(笑)。

ところで、タカアキ君はなんでそんなにヒッピーを嫌うの? ヒッピーいいじゃん。ある意味では、俺らの先輩とも言えるよ。

B:まぁ、切り開いてくれたヒッピーもいたかもしれないんだけど、ラヴ&ピースで全部片付けるっていうのは、ちょっとなっていうのがあるんですよ。裏側がないっていう。その裏側が重要だと思っているんで。そこはあえて見せるものでもないと思いますけど。

ブッシュマインドのドリーミーな裏側だね。

B:あと、俺が良いヒッピーに出会っていないんだと思います(笑)。面白いヒッピーに出会ったら、俺の考え方も変わるかもしれないですね。ダメなヒッピーってたくさんいるじゃないですか。こうありたいっていう理想像と自分が思うヒッピーの姿は全然違うというか、ある程度ひとぞれぞれの美学やルールが必要だと思うんですよ。そこがぶつかるのはしようがない。

でも、8年後には変わっているかもしれないよ(笑)。

B:そこは確認させてください(笑)。「野田さん、8年経ちました」って(笑)。

でもさ、タカアキ君は、60年代とかも好きそうじゃない?

B:サイケデリックも、やっぱりブルー・チアーとか。ブルー・チアーはヘルズ・エンジェルスじゃないですか。アイアン・バタフライは、ヒッピーっぽいすね。あのバンドは大好きですね。あの人たちに出会えたら、ヒッピーが好きになるかもしれないですね(笑)。

interview with OMSB - ele-king

 世界中を見回したうえで、なお天才と呼ぶにふさわしい(本気でそう思う!)OMSBが、セカンド・アルバム『Think Good』をドロップした。音楽ファンの期待と予想を軽々と超える、余裕の傑作だ! サウンドの鳴りかた、リズムの作りかた、ラップの乗せかた――どこを取っても、随所に「こんなの聴いたことない!」という驚きをもたらしてくれる。オリジナリティなど幻想? もはや新しいものなどない? OMSBを聴いてからもう一度考えて欲しい、マジで。フレッシュネスとユニークネスが詰まった本作には、未知の喜びが詰まっている。そして同時に、堂々たるヒップホップのたたずまいでもある。OMSB自身が口にした「なににも劣っていない」という言葉は、大げさではない。ナチュラルに「なににも劣っていない」。『Think Good』を中心に、天才・OMSBの、現時点でのスタンスや音楽に対する考えを聞かせてもらった。

■OMSB / オムスビーツ
日本のヒップホップの新世代としてシーンを牽引するSIMI LABのメンバー、Mr. "All Bad" Jordan a.k.a. OMSB。SIMI LABにおいてはMC/Producerとして活動。2012年にソロ・アーティストとしてのファースト・アルバム『Mr. "All Bad" Jordan』を発表。2014年には、自身も所属するグループSIMI LABとしてのセカンド・アルバム『Page 2 : Mind Over Matter』をリリース。多数のフリー・ダウンロード企画のほか、2014年には〈BLACKSMOKER〉よりインスト作品集『OMBS』も発表。その他、KOHH、ZORN、Campanella,、PRIMAL等、様々なアーティストへの楽曲提供・客演参加を果たしている。

ケンドリック・ラマ―はまだ聴けていないのですが、ぜんぜん負けているとは思っていないですね。


OMSB
Think Good

SUMMIT

Hip Hop

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新作『Think Good』は、かなりの傑作だと思いました。前作『Mr. “All Bad” Jordan』があって、SIMI LABのセカンド・アルバムも出て、『OMBS』というビート・アルバムも出て、そして、今作になるわけですが、なにか特別に意識したことはありますか。

OMSB:いつも通り、ヤバいのを更新したいという感じですね。全包囲的にヤバいのを。ただ、いまの段階だと、自分の内面についてのことが多かったかなと思います。

リリックとかビートとかは、作り置きが多かったんですか。

OMSB:ビートは普段から作っていて、その中で自分用と決めたものをストックしているんです。それで、そこからリリックを書いていって、曲になるやつとならないやつを決めていく感じです。

最近は、菊地凛子さんや入江陽さんの作品での客演など、他ジャンルとの関わりも印象的でした。そういう経験が作品にフィードバックするようなことはありましたか。

OMSB:少なからずありますけど、直接的ではないと思います。洋邦問わず、「やられた!」と思ったものに、刺激をもらっているということのほうが大きいです。菊地凛子さんや入江さんにも「やられた!」という感じがあって、そういうものからどんどん盗むというか、越えようとする。そういう意識のほうが強いです。

最近、「やられた!」というものはなにかありましたか? ケンドリック・ラマ―(Kendric Lamar)の新作など話題ですが、聴かれましたか?

OMSB:じつはまだ聴いていないんですよ。

ケンドリック・ラマ―の新作を聴いて「すごい傑作だ!」と思ったのですが、そのあとOMSBさんの新作を聴いたら、「余裕で匹敵しているよ!」と思って、うれしくなりました。

OMSB:まだ聴けていないのですが、ぜんぜん負けているとは思っていないですね。

その態度には、本当に説得力があります。ナチュラルに勝負していますよね。


ファーストで届きづらかったものがたくさんあると思うので、それを届けるのはどうしたらいいかと考えました。自分のことを歌っていても人に届く余地があるんじゃないか、とか。

今作を聴いたとき、すごく王道のヒップホップっぽいという気がしました。いままではジャンルの外へ外へ行く意識みたいなものを感じ取っていたのですが、今回は、ビートやリリックやスタンスなど、もう少しヒップホップのマナーみたいなものを意識されていたように思いました。

OMSB:ファーストも「外へ」というよりは、単純に好きなヒップホップがそれだった、という感じですよ。好きなヒップホップの感じを自分でトレースしていました。ただ今作に関しては、音の鳴りかたとかトラックの中での振る舞いとか、あと自分の内側について語っていたりもするので、ヒップホップらしさ――これは説明できないですけど――を感じる部分はたくさんあると思いますね。

“Think Good”とかもポジティヴですよね。ヒップホップ的なポジティヴさ、というか。SIMILABのアルバムには“Roots”という曲があって、メンバーがそれぞれ自分のルーツについてラップしています。“Think Good”も、その続編として聴いていたところがあります。そうやって自分の内側を語ろうというモードになっていることについては、理由はあるんですか。

OMSB:ファーストで届きづらかったものがたくさんあると思うので、それを届けるのはどうしたらいいかと考えました。自分のことを歌っていても人に届く余地があるんじゃないか、とか。ファーストは喚き散らしていたように受け取られていたようです、俺はそんなつもりはなかったんですけど(笑)。

ファーストは鮮烈だったし、たしかにそういう印象があったかもしれませんね(笑)。

OMSB:べつに隠居しているわけではないし、そのくらいガツンと行っていいと思うんですけどね。ファーストからすでに達観しているのも気持ち悪いと思うし。ファーストはそういう意味で、若気のいたりみたいですごい好きです。

もともとウータンに衝撃を受けたという話は、よくされていますよね。ファーストとかSIMI LABのトラックなどを聴いていると、僕なんかはRZAやカンパニー・フロウを思い出します。今回は、曲中にEL-Pの名前が出てきますよね。90年代のサンプリング主体のヒップホップと2000年代前後のビートがもっと変態的になっていくヒップホップと、同時に摂取していたんですか。

OMSB:周期がある感じですね。90'sなら90'sだけを聴く時期、サウスならサウスだけを聴く時期、ウエッサイならウエッサイを聴く時期……という周期がずっとあります。季節とかも関係なく、レゲエとかダブとか、ひとつ聴くとそれをずっと聴いています。それこそ、椎名林檎だったら椎名林檎だとか。そのサイクルがずっとあって、その中に新しいものが入ってきたりします。

なるほど。僕なんかからすると、「なんでこんなサウンドが出きちゃうんだ!?」って思ったりします。どういうサウンドに影響を受けて、どういうサウンドを目指すと、こういう音になるんだろう、と。

OMSB:ビートを作るさいは、たとえばRZAとかEL-Pのトラックを真似ようというよりも、イズムみたいな部分を意識していますね。どうしてこの人たちがヤバいと言われるのかを考える、というか。あの人たちのヤバさは、変なところでループさせるとか奇怪なドラムだとか、そういうところだけではないと思うので、それを自分なりにやります。その人たちを頼りにしているんではなくて、自分の中で鳴らしたい音を、レコード聴いて刺激をもらいながら想像する感じです。


たとえばRZAとかEL-Pのトラックを真似ようというよりも、イズムみたいな部分を意識していますね。どうしてこの人たちがヤバいと言われるのかを考える、というか。

そういえば、“Ride Or Die”のサビで“Tom's Diner”のメロディが歌われていますよね。これも、すごく意表を突かれました。

OMSB:あれは、頭の中で鳴っていたから、「じゃあ、リリック付けよう」というノリですね(笑)。合いそうだったので。

そういう遊び心を感じて楽しかったです。ファンキーなネタも多かったですが、レア・グルーヴなどは好きなんですか。

OMSB:好きというか、好きなネタを探しているときにレア・グルーヴが多い、という感じですね。

今作はけっこうサンプリングが多めですよね。

OMSB:サンプリングばっかりですね。

具体的に、ネタとして抜きやすいミュージシャンとかはいるんですか。

OMSB:けっこう無理矢理抜くことが多いので、いちがいになにがいいとかは言えないですね。ラテンが入っているのが好きなので、〈フライング・ダッチマン(flying dutchman)〉レーベルとかは好きです。あとは、〈キャデット(Cadet)〉レーベルとか。

たとえば、元ネタの定番があって、定番の抜きかたがあって、そこにビートを重ねて……みたいな方法論が少なからずあったと思うんです。でも、OMSBさんに限らず、若い世代の人たちは、そういうものからすごく自由だという印象があって、とても新鮮です。これは、必ずしも世代的なものではないかもしれませんが。

OMSB:「自分は他とはちがう」という思いは誰でもあると思うんです。かぶりたくないからちがうものにする、というすごくシンプルな態度。ただ、ちがうものにしたらそれがかっこいいかといえば、そういうわけでもないので、今度はそれをかっこよくする。

聴いたことないようなかっこいいものを作る、ということですよね。そのときに、どういうところを重要視するんですか。

OMSB:音色とリズムと、あとは質感ですかね。でも、作っている段階で変わってきます。替えがきかないものを目指している感じです。

今作は、ラップもすごく多彩なスタイルに挑戦していますよね。

OMSB:そうですね。いろいろやりました。いろいろ挑戦した中でも、間を使って余裕を持たせるという意味では、“Gami Holla Bullshit”がいちばんバシっときたかなと思います。“Think Good”も尺が長いので、いろいろやりました。

“Gami Holla Bullshit”は、途中でテンポが変わっておもしろいですよね。この曲はMUJO情さんのトラックですが、今作はトラックメイカーの起用がいくつかありますね。

OMSB:MUJO情は、たまにトラックを送ってきてくれるんです。送ってもらった中で速攻リリックが書けたものがあって、アルバムに使いたいと思いました。それが“Gami Holla Bullshit”です。あと、Hi’Specのトラックなんかも、聴かせてもらった中でいいなと思ったやつです。

「Scream」ですね。あのギュルギュルなるトラックは、そうとうヤバいですよね。

OMSB:まともじゃない(笑)。

あれは、かなりいいグルーヴになっていましたよね。あのトラックにラップを乗せるのも、すごく楽しそうでした。

OMSB:あれは、自分の曲の中でもけっこう好きですね。


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「ここにいてどれだけ平静を保てるかゲーム」みたいな曲になりました。


OMSB
Think Good

SUMMIT

Hip Hop

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“Goin' Crazy”のトラックを手がけたAB$ Da Butchaさんは、どういう人なんですか。

OMSB:AB$は、Sound Cloudで見つけた外人さんです。自分のほうから「聴かせてほしい」って連絡して、トラックを送ってもらいました。

あのトラックも、ものすごくよかったです。サンプリングの気持ちよさと、すごく歪(ひず)んだ質感が最高でした。あのトラックを聴いたとき、どういうふうに思いましたか。

OMSB:「これはもうリリックを乗せるしかない!」という感じでした。というか、すぐにリリックが思いついて書けたので、もう「これ、ください」という感じです(笑)。

Sound Cloudで聴いて、「このトラックはもう俺がやるしかない!」という感じだったんですね。Sound Cloudはけっこうチェックしているんですか。

OMSB:そうですね。

しかも、“Goin' Crazy”はポッセカットみたいになっていますよね。あの曲のコンセプトは、どういうふうに出来上がったんですか。

OMSB:最初に考えていたことが、「人の前に出る人はおかしくなってしまうのかな?」っていうことだったんです。クスリやっちゃうとか奇行に走っちゃう、とか。でも、「そうはなりたくない」と思って。「というか、おかしくなっちゃうヤツのほうが普通だろう」とか。そんなことを考えていたから、「ここにいてどれだけ平静を保てるかゲーム」みたいな曲になりました。

この曲には、B.I.G. JOEさんのほかに、野崎りこんさんがラップで参加していますよね。僕も以前からYou Tubeなどで見ていたのですが、このトラックの野崎りこん映えはハンパないと思いました。今回、いちばんハッとしたかもしれません。

OMSB:喰いにきてくれたなと思いました。

野崎さんのラップって、けっこう繊細なイメージがありました。だから、きれいなピアノ・ループのトラックとかに映えるのかな、とか勝手に思っていたんです。でも、今回“Goin' Crazy”を聴いて、「このファンキーなトラックと相性のいいラッパーは誰だろう?」と思ったら、野崎りこんさんで驚きました。

OMSB:かなり、かましてくれましたよね。

しかも、かなりエグい言葉とか固有名を入れてきてますよね。「俺だってパスピエにフィーチャリング呼ばれたい」とか、ヒップホップ以外ではあまり歌詞にできないような内容じゃないですか。

OMSB:野崎くんに関しては、他人のネームドロップをできるのはいまだけだと思うので、今回は内容含めとてもよかったと思います。

なるほど。ところで、“Lose Myself”には、G.RINAさんと藤井洋平さんが参加していて、ラストは藤井さんのエレキ・ギターが入ってきます。あのギターもかなりドキっとするのですが、あのアイデアはどこから出てきたんですか。

OMSB:最初はひとりでやろうと思っていたのですが、そのままだと平坦な曲で終わっちゃう気がしました。それで、ギターが欲しいなと思ったときに、少しまえに紹介してもらっていた藤井さんに頼むことにしたんです。藤井さんは、今年の元旦にリキッドルームでソロをやっていて、それを観て「これだ!」と思ったんです。あと、女の人の声が欲しいとも思って、ここにフィットする声と言ったらやっぱりG.RINAさんだろうということで頼みました。

G.RINAさんも藤井さんも、すごくハマっていますよね。曲として聴くと、「こういう発想があったんだ!」と思って、すごくドキっとします。とくに、最後にギターソロでアガっていく展開は、本当に新鮮でした。それで、最後の“World Tour”にいくわけですが、ここでのOMSBさんのラップも新鮮ですよね。

OMSB:そうですね。この曲に関しては、フラットにラップしてもつまらないというところがありました。「自分にはこれが向いていない」「自分にはこれはできない」って言ってなにかをやらないのはもったいない、と思って、いろいろやりました。

そうですよね。「こういう引き出しもあるのか!」という感じで、すごく楽しかったです。ブルースっぽさもあるし、これはこれで黒いグルーヴ感がありますよね。

OMSB:ありがとうございます。いちばん好きなのが“World Tour”かもしれません。あと、それに近いくらい“Think Good”も好きです。もちろん、どの曲もかなり思い入れがあるのですが。

“World Tour”のたたみかけるようなラストは、すごく感動的ですよね。

OMSB:“World Tour”では、単純にピースで終わりたいと思いました。自分で言うのもなんですが、明るい曲なのに涙が出るものを作りたい、という気持ちがあって、自分の中のそういう部分を探しました。


“World Tour”では、単純にピースで終わりたいと思いました。自分で言うのもなんですが、明るい曲なのに涙が出るものを作りたい、という気持ちがあって、自分の中のそういう部分を探しました。

“World Tour”や“Think Good”を含め、リスナーは今作について、すごくポジティヴな感触を受けると思うんです。OMSBさんは、ここ数年で自分を取り巻く状況なども変わったと思うのですが、気持ちの部分で変わったこととかあったりするんですか。

OMSB:たとえば、SIMI LABのセカンドのときなんかはQNが辞めるとかいう話のあとだったから、すごく疑心暗鬼な部分があって――ファーストのときからそういう感じはあったのですが――「音楽作る以外なにをする必要あんの?」とか「頭下げる必要あんの?」とか思っていました。そういう気持ちは現在もなくはないですが、いまはもう少し、いろんな人とつながっていけたらいいな、という気持ちがあります。それが、変化と言えば変化かな。

なるほど。“World Tour”には、そういう雰囲気を感じます。作品を発表すれば、単純に人のつながりとかも出てきますもんね。そのような人との関わりについては、どのように感じていたんですか。

OMSB:単純に1対1で挨拶して話すときに、そういうことができない人もいて、それはめんどくさいと思ったりすることもあります。でも、基本的にはおもしろい人が多いと思いますね。ただ、やりたいことをやるだけで食える世界ではないように見えてきてしまっているのは、嫌ですね。人とつながって「どうも、よろしくお願いします」って言ったりとか、そういうのが少なからず必要だというのが、ちょっと……。やってもらっていてそういうふうに感じてしまうのは、申し訳ないですけどね。「作って、人に聴かせて、それがヤバい」で済む話ではない。そこは、夢を持ち過ぎていたかなと思います。

意外と社会的なつながりがあった、ということですね。

OMSB:すごい金持ちになったら会計士とかいうのが必要になるかもしれない。そういうことを考えると、「めんどくせー!」って思います(笑)。単純に、仲良いヤツとか大事な人とか、そういう人たちといろんなことを共有しながら、ヤバい音楽を発信できればそれだけでいいのにな、と。なんか、無駄が多すぎる気がしちゃいます。そういうことだったら、音楽抜きで関わりたいかもしれません。たまたま出会った人がめちゃくちゃヤバい人だった、みたいな。

“Orange Way”という曲も、ちょっとシリアスでちょっとポジティヴですよね。この曲も、“Think Good”や“World Tour”と同じようなモチヴェーションで書いたものですか。

OMSB:もう少し暗い気分だったかもしれません。

将来生まれてくるかもしれない子どもに対して、最後に「あと、MPCも教えたい」とあるのは、けっこうグっときました(笑)。

OMSB:それが、いちばん本音です(笑)。クソ生意気でも尊敬できなくても最悪しょうがないから、МPCを教えて、そこだけかっこよかったら「よし!」みたいな(笑)。


最近、わりと主流が生音っぽくなっていると思うんですよ。ヒップホップもそれ以外も、じわじわと生音が強くなってきて、それがけっこういい感じだなと思っています。


最近、おもしろい音楽はありますか。

OMSB:最近、わりと主流が生音っぽくなっていると思うんですよ。ヒップホップもそれ以外も、じわじわと生音が強くなってきて、それがけっこういい感じだなと思っています。このあいだのBADBADNOTGOODとGhostface Killahが組んだアルバムとか。そのへんの音の出かたは、気持ちいいなと思います。

バッドバッドノットグッド(BADBADNOTGOOD)とゴーストフェイス・キラ(Ghostface Killah)のアルバムは、ジャズっぽい質感とヒップホップっぽいビート感、それとラップの混ざりかたがおもしろいですよね。ケンドリック・ラマ―のアルバムにもロバート・グラスパー(Robert Glasper)が参加していたりとか、たしかに生音をいかに使っていくかという試みは、じわじわきているように思います。OMSBさん自身は、そういう生音の試みをやろうというつもりはあるんですか。これは、まさに質問しようとしていたことなので、そういう展開になって驚いているのですが。

OMSB:自分のアルバムやSIMI LABのセカンドでも、生音を出してもらっている部分はあるんですよね。だから、そういうプレイヤーともっといっしょにできれば、とは思っています。やっぱり自分が再現できない部分もあるので、トラックを作るうえで頼みたいという気持ちもあります。「自分でここまでやったから、あとはこうしてほしい」みたいな絡みかたをしたいです。世界標準みたいなものを考えたとき、ヒップホップの中に生音が入ることというのは、けっこう大きなポイントだと思います。

そこは本当に同感です。生音のヒップホップというのは、もちろんこれまでもたくさんあったわけですが、それはヒップホップっぽいビートを生音でギリギリまで再現する、という感じでした。いまはもう少し進んでいて、「生音でしか出ないヒップホップっぽいグルーヴ感」みたいな段階にきている印象があります。

OMSB:本当にそうですよね。おもしろい音になっていると思います。

OMSBさんって、ドラムを打ち込むときにクォンタイズは使うんですか。

OMSB:使うときも使わないときもあります。「ここはかっちりハメたいから使う」とか「ハズしたいから使わない」とか、いろいろです。「ハズしたいけど入れる」とか。

なるほど。あと、ドラムの位置や響かせかたとかも、自分が聴いてきたヒップホップの記憶からすると、やっぱりそうとう異質な感じがするんですよね。そのドラムの歪(ひず)みが、またよかったりするのですが。

OMSB:俺自身としては、そんなに異質だとは思わないです。ただ単純に、聴いてきてヤバいと思ったドラムを自分のMPCに取り込んだとき、どれだけ鍛えられるかだと思うんです。単純に、ガツンとくるかどうか。

もちろん、曲によってもちがいますしね。“Storm”とかはドラムがかっちりしていて、気持ちよかったですし。


自分の生活だけできればいいとか、そんなチマチマしたことを俺は言いたくないです。

“Touch The Sky”は、「これが売れねえとか認めたくねえ」というフックになっています。そういう「売れる/売れない」については、どのように考えていますか。

OMSB:「売れる/売れない」は、絶対に重要だと思っています。それが何人だろうが、野心があるヤツや自分がいちばんだと思っているヤツがいないと、どんどん縮こまってしまうので。自分の生活だけできればいいとか、そんなチマチマしたことを俺は言いたくないです。そういうクオリティに達しているから、そういう言葉が出るんだろうとも思っているし。

これが売れたら、最高ですね。普通に流れていてほしいですよね。

OMSB:違和感はたしかにあるんだろうと思うんです。でも、ポップスっていうのは、それがポピュラーなものとしてずっと流れているから「これがポップなんだ」って思っているだけですよね。仮に、血なまぐさい曲とかが茶の間で流れまくっていたら、みんな感化されているはずで、そんなものなんだと思うんですよね。

そうですよね。いま流れている音楽も、少しまえだったらエグかったかもしれません。そもそも、ディアンジェロ(D’Angelo)が売れまくっている現状とかすごいことですし。だから、売れるために曲を作ることと、自分が作った曲が売れることはぜんぜんちがいますよね。OMSBさんは、曲を作るときに宛先みたいなものは考えるんですか。

OMSB:宛先というか、自分がヤバいと思って消化しているものを、自分のフィルターを通して「こういうのありますよ!」と言っている感じです。「超ウケないっすか?」みたいな(笑)。

まさに、最初の“WALKMAN”のときなんて、みんなそういうふうに反応したのではないかと思います。僕自身も、若い友人に「すごいのありますよ!」という感じで教えてもらいました。SIMI LABの面々は、そういう感覚は共有しているんですか。

OMSB:だと思います。ただ、全員としょっちゅう遊ぶわけではないので、うまくは言えませんが。でもとにかく、楽しんでもらいたいですね。それで、めちゃくちゃ売れてほしいですね(笑)。すごくシンプルです。

単純に楽しいアルバムでもありますよね。僕がSIMI LABやOMSBさんを人に薦めるときは、「ユーモアがあって良いんだ」ということをよく言います。今回も、ふたつのインタールードがあって、とくに“Shaolin Training Day”の素と演技が入り交じった感じには笑っちゃいました。

OMSB:考えさせる部分ばかりを作りたくはないですね。考えないで聴いてもらっていいくらいです。そう思って、インタールードなんかは入れています。そこで楽しんでもらって、不意に入ってきた言葉が刺さって、その人のためになればいいのかな、と。

アルバム一枚の中にすごいフロウの振れ幅があるので、ふとしたときに引っかかりを感じてそのまま歌詞を聴いてしまう、ということがすごくありました。本当に、いろんな人に聴いてほしいですよね。

OMSB:というか、マジでかっこいいと思うんですよね! なににも劣っていない!
――随所に「こんなの聴いたことないよ!」という部分があるので、チェックしてほしいですよね。試聴機で聴くだけでもいいので、聴いてください!


入江陽レコ発にジンタナやOMSBも! - ele-king

 洗練されたソウルとおどろくべき表現力で“歌謡曲”を更新するシンガー、入江陽。JINTANA & EMERALDS、OMSB……ジャンルも個性も異なれど、彼の傑作アルバム『仕事』のレコ発イヴェントを急角度で祝福する、すばらしい顔ぶれが報じられた。ソウルとサイケとヒップホップがしなやかに香ぐわしく交差する夜をWWWで、ともに。

6月29日(月)に渋谷WWWにて開催される入江陽『仕事』レコ発に追加ゲスト発表!
入江陽バンド編成、OMSB [DJ SET]に加えて、横浜のネオ・ドゥーワップ・バンドJINTANA & EMERALDSが出演決定です!


仕事
入江陽

Pヴァイン

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ヒップ・ホップ以降のソウル感を感じさせる歌謡曲シンガー入江陽のセカンド・アルバム『仕事』のレコ発が6月29日(月)、WWWにて行われる。この日の入江陽のライヴは大谷能生やYasei Collectiveの別所和洋含む特別バンド編成で行われ、OMSB[DJ SET]の出演も決定している。

そしてこの日、追加で横浜発アーバン&メロウ集団PPPことPAN PACIFIC PLAYA所属のスティールギタリスト : JINTANA率いる6人組ネオ・ドゥーワップバンド、JINTANA&EMERALDSの出演が決定した!

世代もジャンルもクロスオーバーして芳醇なニオイたつこの3組が登場するのはまさに奇跡。忘れられない一夜を保証します。
チケット各プレイガイドにて発売中です!

■入江陽 “仕事” Album Special Release Party
2015年6月29日(月)@渋谷WWW
OPEN 19:00 / START 19:30
ADV ¥2,800 / DOOR ¥3,300(別途1ドリンク代)
出演:
入江陽バンド
・入江陽(vocal,keyboards)
・大谷能生(sax,pc,etc)
・別所和洋(keyboards) from Yasei Collective
・小杉岳(guitar) from てんやわんや
・吉良憲一(contrabass)
・藤巻鉄郎(drums)

JINTANA & EMERALDS
OMSB [DJ SET]

TICKET:
ローソンチケット[L:72333]
チケットぴあ[P:266-155]
e+

◎入江陽 プロフィール
1987年生まれ。東京都新宿区大久保出身。 シンガーソングライター、映画音楽家。
学生時代はジャズ研究会でピアノを、管弦楽団でオーボエを演奏する一方、学外ではパンクバンドやフリージャズなどの演奏にも参加、混沌とした作曲/演奏活動を展開する。
その後、試行錯誤の末、突如歌いだす。歌に関しては、ディアンジェロと井上陽水に強い影響を受けその向こうを目指す。
2013年10月シンガーソングライターとしての1stアルバム「水」をリリース。
2015年1月、音楽家/批評家の大谷能生氏プロデュースで2ndアルバム「仕事」をリリース。
映画音楽家としては、『マリアの乳房』(瀬々敬久監督)『青二才』『モーニングセット、牛乳、ハル』(サトウトシキ監督)『Sweet Sickness』(西村晋也監督)他の音楽を制作。
https://irieyo.com/

◎JINTANA & EMERALDS プロフィール
横浜発アーバン&メロウ集団PPPことPAN PACIFIC PLAYA所属のスティールギタリスト : JINTANA率いる6人組ネオ・ドゥーワップバンド、JINTANA&EMERALDS。リーダーのJINTANA、同じくPPP所属、最近ではあらゆる所で引っ張りだこのギタリスト : Kashif a.k.a. STRINGSBURN、媚薬系シンガー : 一十三十一、女優としても活躍するMAMI、黒木メイサなど幅広くダンスミュージックのプロデュースをするカミカオルという3人の歌姫達に加えミキサーにはTRAKS BOYSの半身としても知られる実力派DJ、CRYSTAL。フィル・スペクターが現代のダンスフロアに降り立ったようなネオ・アシッド・ドゥーワップ・ウォールオブサウンドで、いつしか気分は50年代の西海岸へ...そこはエメラルド色の海。エメラルド色に輝く街。エメラルドシティに暮らす若者たちの織りなす、ドリーミーでブリージンなひとときをお届けします。
https://www.jintanaandemeralds.com/

◎OMSB プロフィール
Mr. "All Bad" Jordan a.k.a. OMSB
SIMI LABでMC/Producer/無職/特攻隊長(ブッコミ)として活動。
2012年10月26日、ソロアーティストとしてのファーストアルバム「Mr. "All Bad" Jordan」を発表。
2014年3月には、自身も所属するグループSIMI LABとしてのセカンドアルバム「Page 2 : Mind Over Matter」をリリース。
兼ねてからフリーダウンロード企画でBeat Tapeを多数発表し、2014年11月にはBLACKSMOKER RECORDSよりインストビート作品集「OMBS」も発表。
その他、KOHH, ZORN, Campanella, PRIMAL等、様々なアーティストへの楽曲提供・客演参加もしている。
https://www.summit2011.net/


トアン ホチュウエッキトウ - ele-king

 僕たちはからだとこころに悪い毎日を送っている。そうだとわかっていても、その毎日から逃れられないでいる。僕たちは毎日、犠牲を払っている。からだとこころが悲鳴を上げても気がつかない。著書『からだとこころの環境』で伊達トモヨシはそんなことを言いたいのだと思う。せめて自分に与えられたからだとこころの悲鳴ぐらいは自分自身で聞こえるぐらいになろうと、そのための漢方なのだろう。
 ゆにえアンビエントは、いや、アンビエントこそ、この東京でもっともやかましい街が必要としている。

 6月6日午後16時〜、原宿のVACANTで開催の「トアン ホチュウエッキトウ」は、その伊達トモヨシも出演するアンビエントのコンサート。
 音楽のライヴだけでなく演劇団体「マームとジプシー」のふたりや、舞踏をはじめ無数の表現媒体を経て現在ダンサーとして新境地に達しつつある朝吹真秀氏を迎え、融合的セッションを軸に、さらには食と香も取り入れ空間を彩っていく全感覚的なイヴェントだ。
 会場では靴を脱ぎ、寝転ぶもよしな自由な体制で鑑賞する形式で、食事ではあんこお菓子、日本食ごはん、日本酒やどぶろくのも用意される。ごろんろ寝転びながら、「からだとこころ」を解放しよう。

2015/06/06
Open/Start 16:00
Close/ 21:00

Vacant 2F
https://www.vacant.vc/

Ticket
Adv/: ¥3,500
Door/: ¥4,500

ドリンク代別途/全自由席/再入場可◎

会場では、靴を脱いでお上がりいただきます。

出演:
花代
夏の大△(大城真、川口貴大、矢代諭史)
青葉市子
MUI
Tomoki Takeuchi
朝吹真秀
藤田貴大・青柳いづみ(マームとジプシー)
Tomoyoshi Date

DJ : Satoshi Ogawa,Yoshitaka Shirakura
PA : zAk

Drink&Food:

あんびえん(最中)
こくらさんのひねもす食堂(おかずとごはん)
あぶさん(貝つまみと日本酒)
ぽんぽこ屋(どぶろく)

空調 : ono
照明 : 渡辺敬之
会場協力:御供秀一郎、うるしさん
イラスト:伊吹印刷

イベントページ : https://www.facebook.com/events/1649012321994600/
予約ページ : https://www.vacant.vc/d/207

Info/Reserve

Profile:

花代 / HANAYO
東京ベルリンを拠点に活躍するアーティスト。写真家、芸妓、ミュージシャン、モデルなど多彩な顔を持つ。自身の日常を幻想的な色彩で切り取る写真やコラージュ、またこうした要素に音楽や立体表現を加えたインスタレーションを発表する。パレ・ド・トーキョーなどの個展、展覧会多数。ボーカルとしてdaisy chainsaw、Panacea、Kai Althoff、Mayo Thompson、Jonathan Bepler、Terre Thaemlitz、秋田昌美、中原昌也となどとコラボレーションする。tony conrad と舞台音楽で共演したり、bernhard willhelmのショウでライブパフォーマンス、そしてJürgen Paapeとカバーしたjoe le taxiはSoulwaxの2ManyDjsに使われ大ヒットした。写真作品集に『ハナヨメ』『MAGMA』『berlin』、音楽アルバム『 Gift /献上』『wooden veil』などがある。ギャラリー小柳所属。
www.hanayo.com

夏の大△
大城真、川口貴大、矢代諭史の3人による展示/ライヴ・パフォーマンスを行うグループ。2010年大阪の梅香堂での展示「夏の大△(なつのだいさんかく)」を発端に、活動を始める。
www.decoy-releases.tumblr.com

大城真 / MAKOTO OHSHIRO
音を出すために自作した道具、または手を加えた既製品を使ってライブパフォーマンスを行う。またそれと平行して周期の干渉を利用したインスタレーション作品を発表している。近年は川口貴大、矢代諭史とのユニット”夏の大△”としても活動している。
主なイベント、展覧会に”夏の大△”(2010、大阪 梅香堂)、”Mono-beat cinema”(2010、東京 ICC)、”Cycles”(2013、東京 20202)、Multipletap(2014、ロンドン Cafe OTO)、Festival Bo:m(2014、ソウル Seoul Art Space Mullae)、"Strings"(2014、東京 space dike)等。

川口貴大 / TAKAHIRO KAWAGUCHI
主に音のなるオブジェクトやさまざまな光や風、身の回りにあるモノを自在に組み合わせることで、空間全体をコンポーズしてゆくようなライブパフォーマンスやインスタレーションの展示、音源作品の発表を行う。ソロの他の活動では、大城真、矢代聡とのトリオ“夏の大△”、アキビン吹奏楽団“アキビンオオケストラ”、スライドホイッスルアンサンブル“Active RecoveringMusic”が今でもアクティヴ。最近では今までのリリース作品をお金だけでなくモノや出来事とでも買うことが出来るようにするプロジェクトを行っていて、ポルトガルの購入者から郷土料理のレシピを手に入れたり、メキシコに住む購入者の母親の育てた多肉植物を輸入しようと試みている。あとはTEE PARTYでTシャツ作ったり(www.teeparty.jp/products/list.php?mode=search&artist_id=92)DMM.MAKEでコラム書いたり(www.media.dmm-make.com/maker/293/#)もしてます。
www.takahirokawaguchi.tumblr.com/

矢代諭史 / SATOSHI YASHIRO
2003年より自走するウーハーや自作の装置による展示や演奏を始める。同時期より東京墨田区の『八広HIGHTI』の運営などを行い始める。ドラムと動くウーハーのバンド『Motallica』などの活動も行っている。
最近の主な展示:
2010年 「夏の大△」(梅香堂 大阪)
2011年 「Extended Senses」(Gallery Loop 韓国)

青葉市子 / ICHIKO AOBA
音楽家。1990年生まれ。2010年アルバム『剃刀乙女』でデビュー。
これまでに4枚のソロアルバムを発表。2014年には舞台「小指の思い出」でkan sano、山本達久と共に劇伴・演奏を担当。12月にはマヒトゥ・ザ・ピーポーと結成したユニットNUUAMMの1stアルバム「NUUAMM」をリリース。2015年夏にはマームとジプシーの舞台「cocoon」に女優として参加予定。その他CM音楽、ナレーション、作詞家、エッセイ等さまざまな分野で活動中。
www.ichikoaoba.com

MUI
tomoyoshi date, hiroki ono, takeshi tsubakiからなるアンビエントバンド。数多の諸概念・主義主張を融解する中庸思想を共有しながら、所作と無為を心がけ活動中。
www.facebook.com/mui61mui

tomoki takeuchi
幼少より音楽に興味を持ち4歳からバイオリンを始める。バイオリンを中心としたライブパフォーマンスで様々なイベントに出演し国内外の音楽家と共演する。また、バイオリン奏者としても様々な音楽家とのコラボレーションを重ねる。2013年から音楽レーベル「邂逅 (kaico)」を主宰。
www.tomokitakeuchi.tumblr.com

朝吹真秀 / MASAHIDE ASABUKI
「思い返せば26才に発病した28年周期の躁鬱二型に振り回されていただけ」と語る朝吹氏は絵画、デザイン、彫刻、舞踏、舞台美術、音響、照明、フリークライミング、家具制作、パートドベール、とんぼ玉と多岐に渡る活動を経てきたが一環して続いたのは15才からのオートバイだけである。いま60才に60台めのバイクに乗り、舞踏家ではなくダンサーとして鬱から脱出しつつある。

青柳いづみ / IZUMI AOYAGI
女優。東京都出身。2007年マームとジプシーに参加。翌年、チェルフィッチュに『三月の5日間』ザルツブルグ公演から参加。以降両劇団を平行して活動。2013年今日マチ子(漫画家)の代表作『cocoon』、2014年川上未映子(小説家)の書き下ろしテキストでの一人芝居『まえのひ』に出演。近年は飴屋法水(演出家)や金氏徹平(現代美術家)とも共同で作品を発表。2015年6月から8月にかけて全6都市を巡る全国ツアー『cocoon』に出演予定。

藤田貴大 / TAKAHIRO FUJITA
演劇作家/マームとジプシー主宰。北海道伊達市出身。2007年マームとジプシー旗揚げ。2012年「かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと、しおふる世界。」で26歳の若さで第56回岸田國士戯曲賞受賞。同じシーンを高速でくり返すことで変移させていく「リフレイン」の手法を用いた抒情的な世界で作品ごとに注目を集め、2ヶ月に1本のペースで演劇作品の発表を続ける。自身のオリジナル作品と並行して、2012年より音楽家や歌人、ブックデザイナーなど様々なジャンルの作家と共作を発表。2013年5月「てんとてんを、むすぶせん。からなる、立体。そのなかに、つまっている、いくつもの。ことなった、世界。および、ひかりについて。」にて初の海外公演を成功させ、翌年ボスニア・イタリア5都市を巡るツアーを行う。2013年8月漫画家・今日マチ子の原作である「cocoon」の舞台化に成功。

Tomoyoshi Date
1977年ブラジル・サンパウロ生まれ。3歳の時に日本へ移住。 ロック、ジャズ、ポスト・ロックなどを経て90年代後半より電子音楽を開始。 ソロ作品に加え、Opitope、ILLUHA、Melodiaとして活動するほか、中村としまる、KenIkeda、坂本龍一、TaylorDeupreeとも共作を重ね、世界各国のレーベルから14枚のフルアルバムをリリース。 西洋医学・東洋医学を併用する医師でもあり、2014年10月にアンビエント・クリニック「つゆくさ医院」を開院 (https://tsuyukusa.tokyo)。随筆家としてelekingで「音と心と体のカルテ」連載中(https://www.ele-king.net/columns/regulars/otokokorokaradakarte/#004182)。漢方と食事と精神の指南書「からだとこころと環境」をeleking booksより発売。
www.tomoyoshidate.info

小川哲​ / SATOSHI OGAWA
イラストレーター。風景やモノを中心に、パターンワークやシンプルな形を使用したミニマルでリズミカルな作画で書籍や雑誌、CDジャケットを中心に活動。また音楽制作会社での勤務経験をもとに、ミュージックガイド「5X5ZINE」の制作/刊行を定期的におこなっている。
https://satoshiogawa.com/

YOSHITAKA SHIRAKURA
ノイズ・アヴァンギャルド、テクノとの混合、前衛的な”間”とビートの高揚感が、空間を特異に歪ませていく。 テクノとノイズを越境するパーティー”Conflux”を、代官山Saloonにて主催している。写真家としても活動し、様々なライブ、アーティストを撮影し、制作担当として映画『ドキュメント灰野敬二』にも関わる。
https://ysrn13.wix.com/yoshitaka-shirakura

Drink&Food:

あんびえん
餡子作りという限られた材料を元に独自の配合を研究し、日々理想の餡子を模索し続ける小豆研究家、池谷一樹によるケータリング餡子屋。一丁焼きたい焼き屋を目指し日々試行錯誤を繰り返している。今回は最中をまた同時にadzuki名義で活動する音楽家でもある。
https://adzuki-music.tumblr.com/

こくらさんのひねもす食堂
本業とは別に、生活の大切な一部として食に向かう。なんてことない料理でひねもす(一日中)おもてなしします。

あぶさん
高円寺の「あぶさん」、鴬谷の「うぐいす」、恵比寿の「あこや」と伝説を創りつづけてきた貝料理専門店より、この日限りの絶品貝つまみと日本酒を提供していただきます。

ぽんぽこ屋
手造りどぶろく屋。
無農薬自然農法のお米、神社の御神水から醸される、生きた微生物達の小宇宙は、全細胞が喜び踊る、奇跡の酒。まずは一杯どうぞ。


interview with Jim O'Rourke - ele-king


Jim O’Rourke
Simple Songs

Drag City / Pヴァイン

Rock

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別冊ele-king ジム・オルーク完全読本 ~all About Jim O'Rourke~
ele-king books

Tower HMV Amazon

 1999年の『ユリイカ』は、80年代末から90年代初頭、ハードコアな作風で頭角をあらわした彼のポップな側面を示したもので、実験性とポップさとの混淆は当時音響とも呼ばれ、往時を偲ぶよすがにいまはなっている。そこから16年、『ユリイカ』を継いだ『インシグニフィカンス』(2001年)から数えても干支がひとまわりしてあまりあるあいだ、ジム・オルークは自身の名義のポップ・アルバムを江湖に問うことはなかった。ブランクを感じさせないのは、彼はプロデュースやコラボレーション、あるいは企画ものの作品に精を出してきたからだろうし、おそらくそこには心境と環境の変化もあった。ひとついえるのは、『シンプル・ソングズ』ほど、「待望の」という冠を戴くアルバムは年内はもう望めないだろうということだ。そしてその形容は過大でも誇大でもないことはこのアルバムを手にとったみなさんはよくわかってらっしゃる。まだの方は、わるいことはいわない、PCのフタを閉じてレコ屋に走るがよろしい。ついでに本屋に立ち寄って『別冊ele-king ジム・オルーク完全読本』をレジにお持ちいただくのがよいのではないでしょうか。『シンプル・ソングズ』のあれやこれやはそこに書いてある。

 余談になるが、今回の別エレでつきあいの古い方々に多く発注したのは、彼らが信頼のおける書き手であるのはもちろん、かつて勤めていた媒体が復活すると耳にはさんだせいかもしれない、とさっき思った。対抗するつもりは毛の先ほどもなかったけれども、意識下では気分はもうぼくたちの好きな隣町の七日間戦争ほどのものがなかったとはいいきれない。つーか内ゲバか。と書いてまた思いだした、『完全読本』の巻頭インタヴューでジムさんは「Defeatism」つまり「敗北主義」なる単語を日本語でも英語でも思い出せなかった。話はそのまま流れたので、そのことばはどの文脈に乗せたものか、もはやわからないが、メジャーとマイナーという二項対立では断じてなかった。

 本稿は『完全読本』掲載のインタヴューより紙幅の都合で割愛した部分と、別日に収録したものをミックスしたものであり、『シンプル・ソングズ』のサブテキストのサブテキストの位置づけだが、ジム・オルークにはこのような夥しい聴取の来歴があることをみなさんにお伝えしたかった。まったくシンプルにはみえないが、すべては音楽の話であるという意味ではシンプルこのうえない。

当時は〈Staalplaat〉が勢いがあった時期で、毎日レーベルのオフィスに顔を出していたね。

ジムさんがヨーロッパによくいたのは何年から何年ですか?

ジム・オルーク(以下JO):88年からですね。そのときはまだ大学生だったので、学校が休みになったときにヨーロッパにいっていました。

アイルランドに行ったついでに大陸に足を伸ばしたということですか?

JO:アイルランドは高校生のときですね。大学のときはまっすぐアッヘンに行っていました。アッヘンを拠点にしていました。

アッヘンに行ったのは――

JO:クリストフ(・ヒーマン)さんがそこに住んでいたからです。彼のご両親はビルをもっていて、その1階は狭かったのでドイツの法律ではたぶん賃貸に適さなかった。それで倉庫というか、実際はクリストフさんのスタジオになっていたんですが、彼はあまりそこを使っていなくて、それで欧州滞在時の私の部屋になったんですね。あのときはライヴをするといっても、一ヶ月の間に2回、せいぜい3回くらいで、アムステルダムでライヴがある場合は当時アムステルダムに住んでいたジョン・ダンカンさんのところに2、3週間やっかいになる、そんな生活でした。アンドリュー・マッケンジーさんも近くに住んでいました。当時は〈Staalplaat〉が勢いがあった時期で、毎日レーベルのオフィスに顔を出していたね。

クリストフ・ヒーマンと出会ったきっかけはなんだったんですか?

JO:88年だったと思いますが、クリストフがオルガナムとスプリットの12インチを出すことになっていたんですね。オルナガムのデイヴ・ジャックマンはそのとき私の出したカセットを聴いていたらしく、ジャックマンがクリストフに「ジム・オルークといっしょにやったほうがいい」と手紙を書いたんですね。それでクリストフさんに誘われて、船に乗ってアッヘンに行ったんです。

デイヴィッド・ジャックマンがつなげたことになりますね。

JO:その大元はエディ・プレヴォーさんです。私は13歳のときにデレク・ベイリーと知り合って、15歳のときにエディさんとも面識ができました。私はエディ・プレヴォーとデイヴィッド・ジャックマンとスプリットLP(『Crux / Flayed』1987年)が大好きでしたから、エディさんにそういったら「じゃあデイヴィッドと会ったほうがいいよ」と。デイヴィッドさんに会ったら、オルガナムを手伝ってくさい、となり、デイヴィッドさんがクリストフさんに紹介して――といった感じですね。オルガナムには6、7年間参加していました。クレジットはあったりなかったりですが。

なぜクレジットがあったりなかったりするんですか?

JO:それがデイヴィッドさんのスタイルなんです。彼の音楽なのでクレジットは私は気にしない。でもときどき書いてありました。だから私もどのレコードに自分が参加したのが100%はわからないんですね。

憶えていない?

JO:録音したのは憶えていますが、音楽を聴いてもわからない(笑)。

オルガナムではジムさんはなにをやったんですか?

JO:ギターとベース。ですが演奏というよりミックスでした。最初にやったときは演奏だけだったんですが、そのとき録っていたスタジオのエンジニアのミックスをデイヴィッドさんは気に入らなかったらしく、私に試してみてくれといったんですね。それで私のほうを気に入ったから、それからお願いされるようになりました。94、95年くらいまではやっていたと思います。でもそれは仕事ではありません。チャンスがあればいつでも参加しました。

デイヴィッド・ジャックマンはどういうひとですか?

JO:いわゆる「英国人」です(笑)。60年代の共産主義ラディカルを体現したようなひとでした。キース・ロウと同じ世代ですから。

コーネリアス・カーデューもそうですね。

JO:そうです。キース・ロウさんはスクラッチ・オーケストラですから。でもじつはキースさんよりデイヴィッド・ジャックマンのほうがキンタマがあったね(笑)。これは簡単にはいえませんが、彼らの政治的なスタンスにかんしては、そういうひとたちは反対意見にたいして、自分たちが正しいと意固地になる傾向があると思うんです。ところがデイヴィッドさんは相手が共産主義者であるかそうでないか気にしない。かたいひとですが、かたいだけじゃない。

いまでも連絡することがありますか?

JO:ときどきありますが、彼は頻繁に連絡をとりあうタイプの方ではないです。私はあのとき、イギリスにいましたから連絡は簡単でしたが、いまは日本ですからほとんど連絡しません。彼はインターネット世代ではない。インターネットを使ったこともほとんどないでしょう。連絡はもっぱら手紙。電話もなかったかもしれない。私もいまはすこしそういった感じですが(笑)。

メディアがひとの聴き方をコントロールする時代ではなかったのですから。いまの日本のようにAKB一色じゃなかった。どうしてフランク・ザッパを知ったんですか、と訊かれることがありますが、フランク・ザッパはファッキン人気だった。

ジムさんはそういう世代から考え方の面で影響は受けましたか?

JO:もちろん受けました。意識してはいませんでしたが。というか、私はまだ10代でしたから、なにもわかりませんよ。私はアメリカ生まれでしたが、両親はアイルランド人でアメリカは関係なかったですから、あのひとたちのほうがかえってわかりやすかったんです。

ヒーマンさんなんかはエディさんやデイヴィッドさんより、近い世代ですよね?

JO:ヒーマンさんは私より年上ですが、私と会ったとき、私は18、19で彼は23、24。ちかい感じはありました。あのとき彼はまだH.N.A.S.をやっていましたね。

H.N.A.S.についてはどう思いました?

JO:『Im Schatten Der Möhre』は好きでした。クリストフさんの先生はスティーヴン・ステイプルトンなんですね。でも私はそのとき彼は好きではなかった。

でもジムさんはナース・ウィズ・ウーンドといっしょにやっていますよね?

JO:うぅ。でも会ったことはありません。一度だけ電話で話しました。いいひとだと思うけど、NWWは私は好きじゃない。

どういうところが?

JO:スティーヴン・ステイプルトンはすごくレコードを蒐集しているんですが、彼がつくるほとんどの音楽は現代音楽のコピーだと思う。たとえば、この曲はロバート・アシュリーの“シー・ワズ・ア・ヴィジター”とかね。クリストフさんはスティーヴン・ステイプルトンのお陰で現代音楽にめざめたところがある。私は逆でした。コピーするのは問題ないんですよ。でもなにかが足りないだね。現代音楽のカヴァー・バンドに聞こえる。当時私は大学でそういった音楽を勉強していましたから、なおさらコピー、チープなコピーに思えたんです。それでよくクリストフとケンカなった(笑)。それでNWWは好きじゃなかったんですが、ときどきほんとうに音楽が彼のものになることがあって、それはおもしろかった。

ジムさんは10代の頃から現代音楽には深く親しんでいたんですね。

JO:そうですが、現代音楽はけっしてアングラなものではありませんよ。ジョン・ケージは生きていましたし――

だからといってだれもが聴くわけではないですよね。

JO:それは関係ない。メディアがひとの聴き方をコントロールする時代ではなかったのですから。新聞で雑誌でそういうものを読むこともできました。いまの日本のようにAKB一色じゃなかった。どうしてフランク・ザッパを知ったんですか、と訊かれることがありますが、フランク・ザッパはファッキン人気だった。彼は有名人。普通のレコード屋にも彼のポスターが貼っていたんですよ。これは30年前の話ですが、いまから30年後には「どうしてあの時代、灰野敬二を聴いていたんですか?」ともしかしたら訊かれるかもしれませんが、灰野さんは現役でライヴもやっています。レコード屋にはいればレコードがある。ふつうのレコード屋にもジョン・ケージもフィリップ・グラスもヘンリー・カウの仕切りもあったんです。まったくヘンなものではなかった、だれもが見つけることができる音楽。
 そう訊かれるのが私のいちばんのフラストレーションでもあります。私とだれかが同じタイミングでレコード屋にはいれば、そのひとがヒット曲のレコードを買うように、私はオーネット・コールマンのレコードを買うことができた。私がえらいわけではありません。もしそのひとが左に曲がれば、同じようにオーネット・コールマンのレコードを買ったかもしれない。フィリップ・グラスもスティーヴ・ライヒもCBS、メジャー・レーベル・アーティストですよ。インディペンデント・レーベルの文化がまだない時代のことですね。独立レーベル、プライベート・プレスはありましたが。

私は最初のカセットには「Composed by Jim O’Rourke」と書きましたが、それ以来書かなくなったのは、最初のカセットではシュトックハウゼンとか、そういった作曲家の影響があったにしても、20歳のころ、あの世界とは関係しないと決めたからです。

ジムさんはそういったインディペンデント・レーベルができたことで音楽が区別されるようになったと思いますか?

JO:たとえば大学では、音楽を勉強して修士になり博士になる。大学に残りつづけて先生になり、生徒が自分の作品を演奏する。死ぬまでの目的が決まっている感じがしました。同時にハフラー・トリオやP16.D4のような音楽、RRRレコーズのような音楽とピエール・アンリやリュック・フェラーリのどこがちがうのか。そこから私は、自分をコンポーザーと定義するのが好きじゃなくなったんです。現代音楽の世界――それは音楽そのものではなくて、そのやり方です――にアレルギーを覚えはじめた。これは正しい言い方ではないと思いますが、ブルジョワジーの歴史をつづけることに荷担するのがイヤになったんです。彼らがそれに気づいているかどうかは関係ありません。ただそこには参加したくなった。それで、私は最初のカセットには「Composed by Jim O’Rourke」と書きましたが、それ以来書かなくなったのは、最初のカセットではシュトックハウゼンとか、そういった作曲家の影響があったにしても、20歳のころ、あの世界とは関係しないと決めたからです。私が電子音楽をやる場合でも、私が自分の曲をコンポジションと定義し、そういうひとに評価され、その世界で仕事するようになればその世界の住人になる。そこには参加したくないから意識的に「Composed by」のクレジットはいれないことにしました。これはほんとうに私の人生ですごく大事なことです。

心情的にイヤ?

JO:その世界の10%はいいものですが、のこりの90%はゴミです。そんな世界、ゴメンです。大事なのは作品です。私が人間として大事なのではない。あのゲームはやりたくない。

ジムさんが好きだった作曲家といえば当時どういったひとでした? フィリップ・グラスとか――

JO:グラスは75年までですね。だって私はそれまでずっとそんな音楽ばっかり聴いていたんですよ。チャールズ・アイヴズはもちろん好き。電子音楽はもっといっぱいいます。リュク・フェラーリだってそうですし、ローランド・ケインは電子音楽のなかでもいちばん好きで、オブセッションさえあります。彼の音楽だけは、どうしてそうなっているのか、まだわからない、秘密の音楽なんですね。ほとんど毎日勉強する、ちゃんと聴いていますよ。彼は電子音楽についてはもっとも影響力のあるひとだと思います。影響という言葉とはちがうかもしれない。彼の音楽はそうなっている理由がわかりませんから、具体的な影響とはいえないかもしれない。大学のころに聴いていた現代音楽の作曲家の作品はほとんど聴かなくなりました。

いま、たとえばトータル・セリエル、ミュジーク・コンクレート、偶然性の音楽、そういった現代音楽の分野でいまだ有効性があるものはどれだと思いますか?

JO:大学のころ、私はピエール・ブーレーズにすごいアレルギーがありました。ぜんぜん好きではなかった。それが過去5年の間に、偶然入口を見つけました。もちろん全部の作品が突然好きになったのではなくて、とくに“レポン”という作品はよく聴いていて、すこしわかるようになりました。
 トータル・セリエルの問題は音楽がスコアにはいっているということです。100%そうだとはいいませんよ。でもそれはすごい問題です。

ミュジーク・コンクレートのようなスコアで表せない音楽を、ジムさんは評価するということですか?

JO:そういう意味じゃない。セリエルのスコア、コンポジションの考え方は、八分音符から三連符になり、その逆行形になって――という考えを捨てない。とくにアカデミックなコンポーザーは。考え方が全部スコアにはいっている。そう考えると彼らの言語はほんとうに「細い」と思う。だから彼らは彼らの音楽を聴いたひとが「わからない」というと、それを聴いたひとのせいにするのです。でもわからない理由の半分は彼らの側にもあると思う。スコアにC(ド)の音を書く、しかしそれはただのCではない。そこには音色がありニュアンスがあります。彼らのスコアを音楽にするにも次の翻訳の段階が必要なんだと思う。どうしてそれをやらないか、私はわかりません。そういう音楽をやることがまちがっていると私はいいたいのではありません。ただそれをわからないのを聴いたひとのせいにするのは失礼です。

99.9%、ケージの音楽はフリーではありません。チャンスの音楽といいますが、ケージは彼の言葉をスコアに注ぎたくない。彼の立場は、音楽から自分の言葉や存在を消し去るということなんです。

ケージの偶然の音楽はどうです?

JO:ケージの音楽は偶然ではありません。それを語りはじめるとそれだけで本になります(笑)。ケージの音楽をやったことがないひとはたぶんわからないと思う。ケージの音楽はかなり難しい。問題は彼のスコアは表面的に理解するには苦労しません。でも簡単じゃないんです。

簡単じゃないというのは自由がないということですか?

JO:99.9%、ケージの音楽はフリーではありません。チャンスの音楽といいますが、ケージは彼の言葉をスコアに注ぎたくない。彼の立場は、音楽から自分の言葉や存在をどうやって消し去るかということなんです。それはチャンスではない。正しくとりくめばそれがわかるはずです。私は音楽家としてケージの作品を何度か演奏しましたが、いっしょに演奏したひとたちがまったくわかっていなくて、ムカついたこともありますし、逆に勉強しすぎて音楽がかたくなったこともあります(笑)。その意味でもケージの音楽は難しい。

勉強しすぎてもダメだし勉強しすぎてもダメ?

JO:しないのはいちばんダメで(笑)、でも勉強やりすぎてもね。両方地獄だね(笑)。でも私のこの考えが100%正しいといいたいのではない。

フルクサスとジョン・ケージは同じくくりに入れられることがありますが、同じだと思いますか?

JO:まったくちがいます。

フルクサスはどう思います?

JO:あんまり興味がない。ボンボンの遊び。若いときにそういった考えになるのはわからなくもないですよ、でも50代でも同じことをやっているのはちょっとどうかと思う。

ハプニングはどうですか?

JO:歴史的に、次の段階に向かうためにそういったことが必要だったのはよくわかりますよ。歴史に敬意を払うことは、いま現在、作品をどう聴くかということと無関係です。ハプニングのような作品は尊敬はしても、(私には)ほんとうに関係がないんです。それにフルクサスはアートの世界のものです。

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若い頃は意図的に録音する場所を選んでいたんですが、いまはそうしないことにしています。いまは時間がないこともありますが、偶然にいい音を発見したときに録ります。

フィールド・レコーディングはどうです? 私は『別冊ele-king』の作業中、『USE』をよく聴いていましたよ。デザイナーの佐々木暁さんに音源をもらったんですね。

JO:ホントに! あれは聴くものじゃないよ。「どうぞ、使ってください」という意味で、だから「Use」なんです(笑)。

(笑)流しているといいですけどね。

JO:私、聴いたことない(笑)。

Pヴァイン安藤氏:『Use』ってDATで出した作品ですよね?

そうそう。DATの長時間録音機能を使った4時間ちかい作品。

JO:私はもってない(笑)。『Use』はあれを出した〈Soleilmoon Recordings〉のひとがそういった作品をやりたかったんですね。それで「どうぞ、どうぞ」って。音源自体は『Scend』(1992年)で使ったものの残りですね。それをどんどんくっつけて、「はい、終わり」といって渡した。

『Scend』のマテリアルということですか?

JO:はい。

エディットしたのはジムさんですよね?

JO:編集というほどのものじゃない。

適当?

JO:はい(と声高らかに)。編集しなかった。あのときはポータブルのDATプレイヤーでいろんなところで録音していましたから、音源はいくらでもあったんです。

当時フィールド・レコーディングにハマッていたんですか?

JO:いまもやっていますよ。

どういうときにやるんですか?

JO:若い頃は意図的に録音する場所を選んでいたんですが、いまはそうしないことにしています。時間がないこともありますが、偶然にいい音を発見したときに録ります。若い頃は、そういった作品をつくりたくて、たとえば工場などですね、そういったところにわざわざ出かけていきました。いまは聴いたことのないような音を偶然見つけたときにレコーダーをまわします。

DATはまだおもちですか?

JO:もっていますけど、でもDATはほんとうにダメだね。音が悪い。とくにA-DAT。あれはヒドい。音よくないよ。レッド・クレイオラのレコーディングは全部A-DATだったんですよ。メイヨ(・トンプソン)さんはA-DATで作業するから。まだS-VHSのテープを使っているかはわからないけど。私が最初に参加したレッド・クレイオラの『ザ・レッド・クレイオラ』(1994年)はアルビニさんのスタジオで録りましたけど、『ヘイゼル』(96年)も『フィンガーペインティング』(99年)もA-DATだったね。

メイヨさんは音にこだわりがない?

JO:わけではないですけど、普通の意味でのいい音にこだわりがないということでしょう。彼にはほしい音色がわかっているんですけど、それはかならずしも正しい録音ではないということですね。

ジムさんはいっしょにやったとき、メイヨさんに「こういう音がほしい」といわれました?

JO:私はアルバムの何曲かをミックスしているんですが、私のミックスはあまり好きじゃなかったので、別の音源を使ったんですね。それで私がミックスした『フィンガーペインティング』を10年後に偶然聴いて気に入ったので『フィンガーポインティング』(2008年)として出し直した。でも逆に私があのミックスはメイヨさんの好きそうなミックスを試してみたものなので、ちょっと気に入らないところがあるんですね。

ジムさんがいま聴いて気に入らないものはほかにもありますか?

JO:いっぱいあるよ(笑)。

たとえばウイルコなんかは出世作だといわれていますよね。

JO:ウイルコは大丈夫。でも私は『ヤンキー・ホテル・ホックストロット』(2002年)より次の『ア・ゴースト・イズ・ボーン』(2004年)のほうが好き。『ヤンキー~』は途中から参加した作品ですが、『ゴースト』は最初から最後までかかわったレコードでしたから。

NYはなんというか……水が合わなかった(苦笑)。60年代か70年代だったらよかったんだけど、90年代はもうまったくちがっていました。ビジネスのディズニーランドになってしまった。いまはわからないけど。

話は戻りますが、ミニマル・ミュージックにはジムさんは多大な影響を受けていますよね?

JO:大学のころ、そういった音楽は勉強しましたが……いちばん影響を受けたのは高校生のころですね。グラス、ライヒ、ウィム・メルテン、マイケル・ナイマンも好きだった。当時はフィリップ・グラスの“Strung Out”のような、作者の考えが見える、聞こえる作品が好きでした。2+3+1+2+……のような構造ですね。私もじっさいそういった作品をつくって、カセットもありますけど、ちょっと恥ずかしいだね(笑)。

出したらいいじゃないですか?

JO:なんで(笑)!?

デジタル・リリースすればいいじゃないですか(笑)?

JO:イヤですよ。

演奏はジムさんがやっているんですか?

JO:私と、私ができない楽器は別のひとに頼みました。大学のときに、私はフィル・ニブロックはじめ、ヨーロッパのミニマル・ミュージックに傾倒していきました。なかでもマイケル・ナイマンは大好きだった。

マイケル・ナイマンは後に映画音楽で有名になりましたよね。

JO:あとのことはわかりません。私は『ピアノ・レッスン』(1992年)も知らない。『プロスペローの本』(1991年)までですね。さいきんまた追いかけるようになって、聴いていなかったCDを買いました。ギャヴィン・ブライアーズも同じ。84、85年まではリアルタイムでレコードを買っていましたが、次第に買わなくなったので聴き直したいと思ってナイマンのレコードを探したんですけど、びっくりしました。彼はこの25年でいっぱいレコードを出したんだね。でも私はむかしのほうが好きです。彼も後年“コンポーザー”になってしまった。グラス、ライヒ、ブライヤーズ、アダムズは過去25年間の作品は私はほとんど知りません。そのなかではグラスやライヒは25年前の時点ですでに私の興味を引くようなものではなくなってしまっていた。(ライヒが)『The Desert Music』を出したとき(1985年)、私はそれを買って、そういった音楽が好きな友だちと喜び勇んでいっしょに聴いたんですが、レコードが終わるころには無言になった(笑)。そのあとは『Different Trains』(1989年)ですから。もういい、と(と両手を振る仕草をする)。もちろん尊敬はしていますよ、ただ興味がないだけで。グラスは83年の『The Photographer』までですね。『Songs From Liquid Days』(86年)でやめました。

リアルタイムで聴いてそう思ったんですね。

JO:そうです。『Music In Twelve Parts』(74年)や『Einstein On The Beach』のもともとのヴァージョンは好きですよ。新録はよくないけどね。むかしのファーフィサオルガンには重さがあるんだね。

ヴィンテージとシミュレーションだとちがうでしょうね。

JO:彼らの音楽から重さが消えたらプラスチックみたいになってしまう。たぶん年をとると気になるポイントが変わるんですね。重要なのは、彼らは若いころ、演奏まで自分たちで行っていたんですね。それが“コンポーザー”になると役割は紙の上で終わり、演奏は知らないひとがやるわけです。ワーグナーの時代では作曲家はもともとそういった性格のものだった。彼らは自分たちのグループのために作曲することのできた時代のコンポーザーなんですね。その典型がグレン・ブランカで、彼の委嘱作品は自作自演には劣りますよ。音楽が手段に戻っている感じがあるんですね。これは非難ではありませんよ、作品が変わってしまうんです。

ジムさんはそこに参加したくなかった、と。

JO:そうそう。

ミニマル・ミュージックと厳密に定義できないかもしれませんが、シャルルマーニュ・パレスタインはどう思われますか?

JO:彼は音を使ってはいますが、作曲家というよりアーティストですね。人生そのものが彼の作品だと思います。

アーティストで音楽をやるひと、たとえばマイク・ケリーさんのようなひとたちはどう思いますか?

JO:ジェネレーションの問題があるんですね。尊敬していますが、ほんとうの意味で心底つながった感覚を得ることはなかなかむつかしい。彼らの前の世代に私は強く惹かれて、そのあとの世代も理解できるんですが、マイク・ケリーさんの世代、トニー・アウスラーさんもそうですね、すごく尊敬しますが、入口をいまにいたるまで見つけられないんです。ふたりともトニー・コンラッドの生徒なんですけどね。

ジムさんもそうですよね。

JO:そう(笑)。(いうなれば)兄弟子なんですよ。その葛藤がたぶん……ある。つまり尊敬の対象であっても興味のそれではないということなすね。たとえばリチャード・プリンスはわかるけど、興味を惹かないのと同じで。

『Sonic Nurse』のときはジムさんはソニック・ユースにまだいましたよね?

JO:いちばんがんばったアルバムです(笑)。

あのカヴァー・アートはリチャード・プリンスでしたね。

JO:あれを決めたのはキム(・ゴードン)さんですね。彼らはむかしからの友だちで、私も会いましたけどいいひとでしたよ。

ジムさんは、NYだとジョン・ゾーンについては言及するけど、ほかのミュージシャンについてあまり話しませんね。

JO:関係ないんですね。

そこには興味がない?

JO:いやいや、ジョンさんがなにをやっているかはいつも興味をもっていて、つねに聴きたいですよ。ただルーツではないという意味です。

アラン・リクトやマザケイン・コナーズは似たようなルーツをもっているということですか?

JO:アランさんはむかしからの友だちですね。NYはなんというか……水が合わなかった(苦笑)。60年代か70年代だったらよかったんだけど、90年代はもうまったくちがっていました。ビジネスのディズニーランドになってしまった。いまはわからないけど。でもあの時代は、前のインタヴューでもいいましたけど、私はNYの部屋にほとんど住んでいなかった。ツアーに出ているか、そうでないときはプロデュースの仕事で別の街にいました。

『シンプル・ソングズ』でも、ピアノとベースがちがうリズムを刻み、建築物のように組み上げる。ポップ・ソングはリズムの拍子はヴァーティカルにみれば一致しますよね。私はそれを楽器ごとに別々に動かして、最後に全部合うようにするんです。

話は戻りますが、ミニマル・ミュージックの影響はジムさんのなかにまだ残っていますか?

JO:あるでしょう。表面的なものではなくて、作曲における構造上の影響ですね。音を垂直的に考えない。それはミニマルやチャールズ・アイヴズのような作曲家からの影響ですね。

ポップ・ソングを書くときもそうですか?

JO:ええ。『シンプル・ソングズ』でも、ピアノとベースがちがうリズムを刻み、建築物のように組み上げる。ポップ・ソングはリズムの拍子はヴァーティカルにみれば一致しますよね。私はそれを楽器ごとに別々に動かして、最後に全部合うようにするんです。それが目立たないようにも工夫しますけど。目立っちゃうとフュージョンになっちゃうから(笑)。

それはあからさまなポリリズムということですか?

JO:ポリリズムはすごく大事です。だけどいかにもなポリリズムな感じはほしくない。むしろ「なにかが正しくない」といった感じになってほしいんです。不安な、どこに坐ったらいいのかわからない感じですね。それが目立つとテーマになってしまいますから。あえて目立たせることもありますけど、それは冗談みたいなものというか、プログレやフュージョンが好きなことにたいする罪の意識かもしれない(笑)。

たとえばキング・クリムゾンの“Fracture”にも途中ポリリズムのパートがありますよね。ああいったわかりやすい感じはあまり好きじゃない?

JO:“Fracture”は難しくないよ。それよりUKですよ。UKは仕方ない、私、UK大好きですから。聴くのは楽しいけど、でもちょっと恥ずかしいかもね(笑)。

ジェネシスとキング・クリムゾンの大きなちがいはなんですか?

JO:キング・クリムゾンにはナゾがあまりないですね。聴くとわかってしまって、聴き直す気があまりおこらない。ライヴ音源には失敗があるから味があっていいんですが。

ロバート・フリップは失敗がいいとは思っていないはずですよ。

JO:ちょっと潔癖症なんだね。これも非難ではありませんよ。興味の問題であってね。

音楽史において、もっともレコードを売ったバンドはビートルズ、ローリング・ストーンズ、そしてラッシュです。

シカゴ時代まわりにいたひと、たとえばトータスのメンバーにキング・クリムゾンが好きなひとはいなかったですか?

JO:バンディ(・K・ブラウン)さんは好きだったかもしれません。私はそうじゃないけど、インディ・ロックのひとたちにとってプログレはクールじゃないんだね。「ウェザー・リポートっぽい」と褒めたつもりでいったらすごくイヤな顔をされた憶えがありますよ。

『別冊ele-king』のインタヴューではシカゴに住んでいた当時、プログレ・フレイバーの音楽が流行っていたとおしゃっていましたね。当時ジムさんのまわりでもラッシュみたいなバンドは人気だったんですか?

JO:ものすごい人気でしたよ。いつでもラジオから流れていましたから。

ジムさんはラッシュをコピーしたことはないの?

JO:高校生のとき、バスケの試合でハイスクール・ジャズバンドがハーフタイムで演奏するんですね。私はそのバンドでギターを担当していて、そのとき“Yyz”をジャズバンド用にアレンジしたことがあります(笑)。

うけました?

JO:めちゃくちゃもりあがりました(笑)。日本ではラッシュはちょっとアングラですけど、アメリカでラッシュはすごく有名でしたよ。音楽史において、もっともレコードを売ったバンドはビートルズ、ローリング・ストーンズ、そしてラッシュです。

ウソー(笑)。

JO:ウソじゃないよ! ラッシュはいまでもライヴするとなるとスタジアムですよ。彼らのファンは死ぬまでファンですよ。テレビには映らない、新聞にも載らない、でもブラジルにもスタジアムを埋めるほどのファンがいる。じつはまだ観たことがないんですよ。それはすごく残念。もし彼らが韓国でライヴするなら、私は福岡から船で行きますよ。彼らは日本ではあまり人気がないから、ギャラと釣り合わなくてコンサートができないんですよ。

安藤:84年に一度来日していますね。

大きい会場ではムリですよね。

安藤:武道館でやったと思うけどね。

JO:海外の規模を考えると武道館が彼らにはちいさすぎるんですよ。AC/DCも同じですよね。AC/DCはさいたまスーパー・アリーナで観ましたけど。彼らのすべてのレコードを聴く気はありませんが、あの手の音楽では一番でしょうね。

モーターヘッドも同じようなものではないですか? フジロックに来ますけど。

JO:モーターヘッドはAC/DCにはおよびません。『Back In Black』(80年)はものすごい傑作ですよ。当時のツアーを私はシカゴで観ましたけど最高でした(と嘆息気味に)。

『スクール・オブ・ロック』もAC/DCですものね。

JO:そうだね。ほかのそういった音楽はあまり興味ないんですけどね。残念なことに彼らも日本ではあまり人気がないんだね。

さいきんは人気出てきましたけどね。おそらくワンパターンに聞こえるんでしょうね。

JO:ヴォーカルが?

曲調じゃないですか。

JO:同じじゃないよ。だったらスマップの曲のほうが全部同じですよ(笑)。


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