「AY」と一致するもの

Ambient Music for a New Year selected by Compuma - ele-king

わりと最近の新しめの作品を中心に選ばせていただきました。音と音楽と音像、そして漂いとりまく空間をお楽しみいただけましたら幸いです。ぬくぬく&ヒリーッとどうぞ。

(順不同)

MICHAEL CHAPMAN / Pachydrm

サーストン・ムーアも敬愛するブリティッシュ・フォークSSW孤高の才人MICHAEL CHAPMANのBLAST FIRST PETITEからの静かなる新作。オリジナル&電子音楽リミックス。本人のみによる24:05の爪弾きの円熟と熟練の間合いによるギター・ミニマル・アンビエント・メディテーション「Pachyderm」と同曲のRobert Antonyによるエレクトロニクスでサイケデリック・ドローンな瞑想のギター電子音楽リミックスが24:14にもわたって展開されている。知覚の扉。何もおこらない美しさ。素晴らしい。

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TENTOMUSIK / Am/Rec

すべて午前中に録音したからタイトルも「am/rec」という、ロボ宙さんとのセッションでもおなじみDAUのメンバーふたりによるAMトラベル・アンビエント・ミュージックの黄昏とゆらぎ、カモメのジョナサン。プレイボタンを押したその瞬間から摩訶不思議な佇まいの地平が広がる。時間が進むにつれ、なんだか不思議と気持ちが安らいでくる。これはやはり午前中の陽の光パワーなのか!?私事ではありますが、2012年初頭にサウンドクラウドでフリーでリリースさせていただいたミックス「SOMETHING IN THE AIR PT.2」(現在は無し)のオープニングで、勝手ながらこのアルバムの「船窓から」を使用させていただきました。あのミックスの物語はこの曲がはじまりでした。ありがとうございます。

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ELIANE RADIGUE / Vice Versa Etc...

チベット密教に傾倒した秀逸なるディープな瞑想ドローンの信頼の電子音楽家で知られるフランスの女流音楽家ELIANE RADIGUEの1970年の2台のテープレコーダーのフィードバックによって生み出されたふたつの宇宙。彼女の初期テープによる持続音ドローン傑作。音の処方箋。

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THOMAS KONER / Novaya Zemlya

静謐なる極北のエレクトロニクス・ドローン音響彫刻の圧倒的美学を体験せよ。
Porter Ricksでもおなじみ、サウンドアート大御所THOMAS KONERの深く、深く、吐息、そしてゆっくりとした呼吸と循環。ヒリーっと張り詰めた空気の中で、ため息がでるほどの美しいまどろみを体験してください。

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CHRIS WATSON / Outside The Circle Of Fire

元キャバレー・ヴォルテール、元ハフラー・トリオ、BBC音響技師にしてフィールドレコーディング作家ベテランであるクリス・ワトソン爺の1998年のセカンド・アルバムにしてジンバブエ、カメルーン、南太平洋、そしてコスタリカと世界を旅して動物、鳥、昆虫たちの生活を収音した探検フィールドレコーディング屈指の名盤。驚異の音。研究を重ねたゼンハイザーのサラウンドな高感度マイクに、アナログでのオープンリールにテープレコーダー、DATレコーダー、ミニディスク・レコーダーを通しての臨場感あふれる現地録音の真骨頂22ポイントのダイナミックで繊細&立体的な驚異の音をサウンドスケープを存分にお楽しみください。この圧倒的な音から伝わる世界、そして息吹を感じるしかありません。ナショナル・ジオグラフィックやアニマル・チャンネル的自然科学名盤。

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ROBERT TURMAN / Flux

穏やかなインドネシアのガムランを彷彿させる冬でもポカポカの桃源郷電子音楽アンビエント。知られざるROBERT TURMANによる1981年の作品。ブライアン・イーノのAMBIENTシリーズなどとも同時代に誕生していた珠玉のミニマル・アンビエント傑作。
この心地よさは至福。落ち着きます。カリンバやピアノ、そしてエレクトロニクスやテープを駆使した穏やかな東洋思想的なエキゾチズムの瞑想アンビエント世界。

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USTAD ABDUL KARIM KHAN / 1934-1935

伝説のインド古典音楽の絹の声、USTAD ABDUL KARIM KHANの1934年から1935年までの貴重で香しいSP音源。凛とした佇まいも見事にリイシュー。たおやかに。風がふきます。桃源郷。メディテーション。タンプーラ宇宙。

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DOMINIK EULBERG / Heimische Gefilde

ドイツTRAUMを代表するロマンティスト&アイデアマンDOMINIK EULBERG教授の2007年の珠玉のアルバム。メランコリックでドラマティック&エレクトロニカな美テックハウスと様々な鳥の鳴き声が共存した、DOMINIK EULBERGの鳥好きが興じて制作された、ナレーションと鳥のフィールドレコーディングに導かれ、自身の作品と鳥の紹介と鳴き声が交互に登場するという、未だかつてなかった、自然が奏でる音や音楽とエレクトロニクス音楽を並列で一緒に楽しもう。という試みのユニークなフィールドレコーディング&テクノ珍作にしてハートフルな名作。ラストは、鳥の鳴き声と自然音のみで制作した9:30にも及ぶキュートな楽曲も登場。

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OREN AMBARCHI / Audience Of One

オーストラリアのサウンド・アーチスト重要人物OREN AMBARCHIがギター、ハモンドオルガン、メロトロン、リズムボックスなんかを駆使し、サポートメンバーのヴァイオリン、ピアノ、チェロ、フレンチホーン、ヴィオラ等との生演奏で、至上&詩情のメランコリックで気品あるアンビエント・ドローン・エレクトロニクスを作り上げた。瞑想の中の日だまり的な美麗4部構成の秀作。黄昏の暖かさと心地よさそして壮大で荘厳なドローンに包まれる。

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LOSCIL / Sketches from New Brighton

静寂の中、深く暖かい美学が貫かれたエレクトロニクス・テクノ・ダブのドローン・アンビエントの名品。カナダ・バンクーバーから届けられた、LOSCILことScott Morganによるエレクトロニクスとローズ・ピアノ、ギターとのベーシック・チャンネルばりのミニマルで静かなる深い、テクノでダブなドローン・アンビエント・メディテーションの室内楽的調べ。環境との対話のスケッチ。クールながらもエレガントでクラシカルな雰囲気さえ漂う美しい深海のアンビエント美学が貫かれている。納得の音の仕上がりのマスタリングは12Kの才人Taylor Deupreeが担当。

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■コンピューマの最新ミックスCD『Magnetic』も絶賛発売中!
COMPUMA / Magnetic

『Something In The Air』が脅威のロングセラーとなったコンピューマ先生の最新ミックスCDが出ました! 今回は、彼の出自であるオールドスクール・エレクトロから最新の電子音楽へと展開するファンキーな音楽旅行です! 売れきれる前に聴け!

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Hidenori Sasaki(zoo tapes) - ele-king

 2011年からスタートした佐々木秀典によるAmbient、Drone、Noise、Industrialカセット・レーベル〈zoo tapes〉、Drone Chart。
 80年代から10年代まで拡散、発展するimprovised/drone/noise recommend、東京のシーンを中心に2012年入手可能な盤をご紹介。
 取り扱いshopはArt into Life、Meditations、S.O.L sound、Futarri CD shop、P.S.F. Records Modern Music、NEdS等。
 〈zoo tapes〉は2012年Festival Fukushima at Ikebukuro atelier bemstar を開催。(https://www.pj-fukushima.jp/festival/201208post-58.php
 同年より90年代のテクノの盤を紹介するトーク・ライヴを企画。
https://www.youtube.com/watch?v=iVpBRFAEmxQ

https://www.discogs.com/artist/Hidenori+Sasaki
https://www.youtube.com/user/hidenorisasaki1980
https://twitter.com/ssk_hidenori
https://www.facebook.com/zootapes
https://zootapes.tumblr.com/

Drone Chart


1
Various - Captured Ambient Cassette - Zoo Tapes
  droneの状況の紹介の前に、現在も続く東京音響noise、improvisedシーンを忘れてはならない。自身の活動もここの影響下からスタート、2007年都内でlive活動を行っていた頃、盆の窪というacoust free improvised trioと出会う。
 自分が参加していたセッションMetaphoricは当時まったくお客さんの反応を得られなかった。盆の窪もまた同じ。お客さんの大半は無反応、物事のはじまりは大抵このような状況なのだろう。
 2012年時点でそのことを記録に留めておきたく自身のソロ名義でSFDD、盆の窪から現在DUOになったセッションをカセットに収めた作品。
 B面収録はsonny+starcuts、Kyosuke Takayasu(bemstar record)、drone、free improvised、00年前後の音響noise、post classicalな要素を持った自身〈zoo tapes〉のオムニバス・カセット。free improvised シーンは現在、水道橋Futarri CD shop,l-e,等で体感できる。

2
Metaphoric - Confirmed Lucky Air CD - Kawagoe New Sound
  improvisedの影響下からスタートした活動のなかでMetaphoricというguitar duoのセッションに録音も含めて参加、2008年頃から録音作業中心。そのなかでUKのdroneシーンの存在を知る。Mirror、Andrew Chalk、Darren Tate、Colin Potter等、彼らの作った実験的なドローン・サウンドを多く聴いていた。自身のサウンド・イメージはfree improvisedからUK drone soundへ、Metaphoricの録音素材を編集して作り上げたambient/drone作品、1st editionのリリースは2009年。
 このアルバム1曲目の"Torimo"はremixが存在する。remixはCeler、Stephan Mathieu、Todd Carter(Tv Pow)、remixの対応にバックアップしてくれたNature Blissの重要度もここに記しておきたい。

3
Reizen - 2nd CD - Self-released
  自身の活動中に同じような思考を持ったアーティストは? とArt into Life サイトで知ったNerae,そのメンバーだったReizen(guitar)を紹介したい。2009~10年頃、当時都心の知人でAnderw Chalkと言って通じるもしくは注目しているのはNerae彼らだけだった。00年代日本人の作ったdrone作品で極めて重要なアーティストと言っても大袈裟ではないと思う。
 その後ソロになったReizenの2nd(self release)。静寂のなかの彼の素晴らしい演奏の説明は各ショップのコメントにお任せする。2012年現在は2nd editionとして入手可能、他ソロ名義では1st、3rdとリリース。
 東京は四谷、喫茶茶会記、江古田Flying tea potでのVeltz(VLZ produkt)との共同企画を中心にライブ等多くの活動を行っている。

4
Diesel Guitar - Stream Of Lights CD - F.M.N Sound Factory
  Reizenとのdrone推薦盤の話のなかで「日本が誇る知られざるギター・ドローニスト、Diesel Guitarを評価することだけは忘れないでほしい」彼の言葉である。Diesel Guitar、Reizenは自身の企画で招聘してライブを行っていた。P.S.F. Records Modern Musicにて2タイトル購入可能。

5
Hakobune - Recalling My Insubstantial Thoughts LP - Tobira Records
  京都のMeditationsで働いていた経歴を持つHakobune。2011年に彼が東京に出てきたことはとても重要、彼の作り出す音、存在は今後多くの若者への影響、指針となるだろう。更にはReizen+Hakobuneの二人が都内でライブ「音ほぐし」を主宰していることはとても重要(四谷、喫茶茶会記にて)。
 droneいやこの作品からは+ambientなサウンドが聴こえてくる。彼がvinylフォーマットで表現しようとしたもの、そのサウンドに身をゆだねよう。多作である彼の作品からvinylフォーマットでのサウンドを是非じっくり聴いていただきたい。Hakobuneの運営するlabel、〈Tobira Records〉からのリリース。

6
Various - Tokyo Flashback 8 CD - P.S.F. Records
  P.S.F. Recordsの重要性、このTokyo Flashback 8、そこにはReizen、Metaphoric他多くのサイケデリック感覚を持ったアーティストが参加している。
 しかし、ここで重要なのは多くのPSFに関連するアーティストの中Soldier Garageを1曲目に紹介したことのように思う。
 彼のギターはまるで「あのアーティスト」の音のようだ......と言われているがここでは伏せておきたい。
 Soldier Garageはその後〈P.S.F. Records〉からリリース。彼はジャケットのイラスト・デザインも手掛ける。

7
suzukiiiiiiiiii×youpy - sxy CD - Headz
  上記00年代improシーンを異端の立場で牽引していた鈴木康文+安永哲郎によるlap top duo VOIMAという存在も紹介しておきたい。なぜ異端と書いたか? それは2008年4月に六本木Super Delux行われたFtarri Festival出演の際、多くのimproviserがelectro acoustのスタイルのなか、彼らはlap top2台でのパフォーマンスだったからだ。当時いやいまでも同じだと思うのだがlap topのライブはパフォーマンスとして面白みに欠けるという指摘があるが、99年来日時に観たJim O'Rourkeのlap top、00年に観たCasey Riceのlap topはいまでも脳裏に焼き付いている。
 その鈴木氏が更にsuzukiiiii+youpy名義として2012年にリリースしたこの盤、全40曲!? からなる音響エレクトロノイズ。
 00年代free impro以降のサウンドを注意深く負わなくては現実を見失う。〈P-Vine〉から。
鈴木氏は六本木Super DeluxでSound Roomを主宰。安永哲郎氏も都内で多くの企画を行っている、安永哲郎事務室を主宰。

8
Takayuki Niwano - Surroundly CD - Kawagoe New Sound
  Metaphoricでguitarを担当、オリジナル・メンバーの庭野氏の最新作、Tower Recordの発行するfree magazine baunceでも取り上げられたが、ここでの庭野氏はギターにフォーカスを当てず、PC上での音作りに没頭したサウンドになっている。90年代から音作りを行っていたアーティストでなければ出せない音、こちらもノイズを出しているが不思議とテクノ、テクノ・ノイズ? テクノという感触が全編に渡って展開された作品。
 改めて彼の多岐にわたる活動、ギターの音色、フレーズすべて重要である。

9
Various - Utmarken 3xCassette - Utmarken
  ドローン後、北欧ノイズに遭遇し更にインダストリアルというキーワードに気がつく。日本で耳にするノイズとは別の側面を持つことに気がつく。個人的に今年発見した海外の盤を1点紹介したかった。やはりカセット・フォーマットは面白い。3本セットのケースなど現在東京では見たことがない。

10
Various - Tribute To MSBR LP - Urashima
  このトリビュート・アルバムを買うになった自分の立場に自覚的でなくてはならない。Japanoiseはまだまだ進化する。
 〈Urashima〉もまた北欧なのだ。2001年に青山CAYで観た「ノイズのはらわた」この企画で初めてノイズに触れたがそのショックをいまも引きずっている。

[music video] - ele-king

 今年はフォーマルな服装をキャップで崩すスタイリングが推されていた。タイラー・ザ・クリエイターの影響はあったのだろうか、さらにそこにスケボーのブームも合流してか、〈Supreme〉のキャップが東京の街中で散見された。
 もうひとつ、いやというほど見たのはからし色の洋服だ。先日、『ele-king vol.8』の年末対談のために上京していた木津毅氏、竹内正太郎氏とともに、裏原宿あたりでデートをしていたのだが、そこらじゅうの服屋でマスタード色がウィンドウ・ディスプレイに晒されていた。道行く人まで......、ほらあの人も、ね、あそこの人も、ほらほら、また、うわー......。


How to Dress Well  - & It Was U(Official Music Video)

 ほら、ハウ・トゥ・ドレス・ウェルも! なるほど。おめかしするにはマスタードだったのね。


Alexis Taylor - Nayim From The Halfway Line

 しかし、キャップとマスタードのスタイリングを2年以上前から実践していた人がいる(https://www.youtube.com/watch?v=wif8DAyXkVc)。ギーク界のファッション・リーダーことホット・チップのアレクシス・テイラーだ。
 そのアレクシスが12月3日、〈ドミノ〉からソロEP『ナイム・フローム・ザ・ハーフウェイ・ライン』を突如としてリリースした(デジタル配信は17日開始)。公式な事前予告なしだったが、クリスマスに向けたささやかなサプライズということなのだろうか。2008年にジョン・コクソンが主宰する〈トレッダー〉よりリリースした宅録アルバム『ラブド・アウト』以来のソロ作品となる。
 ジャケットのアートワークは、オリヴァー・ペインとのタッグで有名な現代アート作家ニック・レルフによるものだ。
 残念ながら18日現在筆者の手にはまだ届いていないので、入手しだいレヴューしたいと思う。前作は宅録の名盤『マッカートニーⅡ』を思わせるような弾き語り&シンセのチルな作品であったが、今回はミニマムでグルーヴィーなリフレインが意表をついてくる。映像とタイトルのとおり、フットボールのネタからもいくらかねじれた感性がのぞくのがさすが。


Hot Chip - Don't Deny Your Heart (Official)

 ホット・チップのアルバム『イン・アワー・ヘッズ』は、今年とても評判であったように思う。ファンも増えただろう。もっとも筆者からするとマッチョなまでに3分ポップス化しているのがいまだに好きになれないのだが、それにしても本当によくできた曲ばかり揃ったアルバムだった。そのなかでも特にきらびやかだったシングル曲“ドント・ディナイ・ユオ・ハート”の公式ヴィデオが発表された。
 初めはまったく笑えなかった。いまでも笑えない。「ファニーなヴィデオ」で話題を呼ぼうとセルアウトしているんだと感じた。もうファンでいることがいたたまれなくなった。まあしかし、すこし再考してみよう。
 ホット・チップのメンバーはゲイである――という噂がかつてあった。噂を盛り上げたのは“レディー・フォー・ザ・フロア”(2008)の印象的な一節=「きみは僕のナンバーワンの男(You're my number one guy)」だ。2年以上前、なにを思ったか初対面にも関わらず筆者は噂についてアレクシスに訊いてしまったが、彼は笑顔でこう答えてくれた。
 「『バットマン』の映画でジョーカーが手下にそのセリフをいう場面(https://www.youtube.com/watch?v=hLBmZW-d2A8)があって、そのグラマー(文法)が好きだったから使ったんだ。ゲイのニュアンスは意図していなかったよ。現に僕も女性と結婚して子供もいるしね。インターネットで僕らがゲイだというひとがいようと関係ない話さ。」
 それ以前にも彼らはゲイ雑誌からのインタヴュー英『ガーディアン』誌のインタヴューなどにおいても、ゲイから人気があることは認めつつも噂を否定している。
 とすれば、今回のPVは改めてゲイを自分たちと切り離し対象化しているとも思える......けども、いまさら?
 もうすこし考えてみる。
 2人の選手が喧嘩寸前のところ、唐突にダンスでバトルをするシーンがある(『スペースチャンネル5』というダンス・ゲームを想起させる意味不明な空間だ)。その後、2人は熱くキスを交わし、不穏だった会場は愛のあふれる平和な空間となる。これは、とくに本楽曲がディスコ音楽からの影響が顕著なように、ホット・チップ自身が愛するディスコ文化(音楽)がゲイのコミュニティによって発展してきたことを示唆しているのではないだろうか(https://www.qetic.jp/feature/battles/78938)。
 ......なんて考えてはみたものの、映像監督のピーター・セラフィノウィッツ(Peter Serafinowicz)はコメディアンだし、ホット・チップとの仕事では、おっさんの口からビーム吐かせたり(https://www.youtube.com/watch?v=MaCZN2N6Q_I)、UFOがぶっ壊れるだけだったり(https://www.youtube.com/watch?v=-OsD3g461fM)するわけで、いやほんと、くだらないだけでしょう!
 しかし、このくだらないだけってのがポイントなのかもしれない。「これほど同性愛ってものが政治的なトピックになった年もない」とは木津毅氏の言葉だが(紙『ele-king vol.8』p84参照)、そんな年にあえてこのくだらなさを打ち出したと。そういうことでいいですかね。だって「我々は何年間もこの瞬間を待ち望んでいました! これこそがフットボールです!」ってナレーション、フットボール好きにだってわけわからないでしょう。

mixCD"swim in"発売中
https://tmblr.co/ZnHH9xWlBSX7

2012/12/28(FRI) Swim in @GRASSROOTS
Haruka , Jyotaro , Tsukasa , Tomoharu

2012.12 CHART


1
SIGHA - SCENE COUPLE / BROOD - Hotflush

2
Anthony Parasole & Phil Moffa - Atlantic Ave - The Corner

3
XAMIGA - Kermit's Day Out - Rush Hour

4
Julius Steinhoff - So Glad - Smallville

5
Mikkel Metal - Fron - Semantica

6
SIGHA - Living With Ghosts - Hotflush

7
The Fantasy - Secret Mixes Fixes Vol. 14 - Secret Mixes Fixes

8
Black Dynamite - City To City EP - Tenderpark

9
Arttu - Tune In - Royal Oak

10
Dance - Still / Ha - Blank Mind

Chart JET SET 2012.12.17 - ele-king

Shop Chart


1

Burial - Truant Aka One / Two (Hyperdub)
ご存じFour Tetとのジャンル越境コラボ・アンセム"Nova"も記憶に新しい美麗ベース天才Burial。『Kindred Ep』のメガヒットと1st.&2nd.アルバムの再発を経て遂に待望の新作が登場です!!

2

Toro Y Moi - So Many Details (Carpark)
激注目サード・アルバム『Anything In Return』からの先行シングル!B-sideには、Ofwgktaクルーのラッパー、Hodgy Beatsによるリミックスを収録。

3

Makkotron a.k.a. ひよこ - Waiting Room (Smr)
Smrミックス・シリーズ第三弾は、Theo ParrishやCut Chemist、Dj Shadow、Force Of Natureなどのヴァイナル・ディガー達が敬愛する、元ひよこレコード店主、Makkotron a.k.a.ひよこ!

4

Roc Marciano - Reloaded (Decon)
ヒップホップ・フリークが待ちに待ったであろうRoc Marcianoのフルアルバム! 楽曲の半数以上はセルフ・プロデュースで、他にはQ-tip, Alchemist, Ray West, Ark Druidsが参加。

5

Herbert - Bodily Functions Remixes (Accidental)
ご存じ巨匠Herbertが'01年に放った生活音グルーヴ満載の歴史的傑作『Bodily Functions』収録曲を、説明不要の音響ミニマル/フリーキー・ミニマル天才たちがリミックスした話題の1枚。

6

Moon B - Untitled (Peoples Potential Unlimited)
以前カセット・テープのみで流通され、それを聴いたDam-funkも「リアル・ファンクだ」絶賛したという、全Ppuファン直撃のロウファイ・シンセ・ファンク・アルバム!!

7

Dj Nu-mark - Broken Sunlight (Hot Plate)
ヒップホップを中心に、ソウル~ブレイクビーツ~アフロ~ディスコと幅広いサウンドを披露してきた先行シングルから、俄かに期待の高まっていた最新アルバムが登場です! ゲートフォールド・ジャケット仕様。

8

Disclosure - Latch Feat Sam Smith (Pmr)
前作『Face Ep』がメガヒット、Joe Goddard率いるGreco Romanからデビューを飾った人気急上昇デュオDisclosureが、Jessie Wareらのリリースでお馴染みPmrから初登場リリース!!

9

K-def - Signature Sevens vol.1 (Rated R)(Slice Of Spice)
Lord Finesseの7"シリーズでお馴染Slice Of Spiceの次なるリリースはなんとK-Def3部作!記念すべき第1弾は、当時Marley Marlのスタジオとして有名な「House Of Hits」に所属したクルー・Rated Rを迎えたブーンバップな楽曲を、Datアーカイブからリストアし初お披露目!

10

Para One - When The Night Remixes (Because)
『Passion』の中でも際立っていたソウルフルな男性Vo.をフィーチャーしたアーバン・スロウ・ディスコが嬉しい12インチ・リリース。リミックスも粒揃いです。

DJ Kamikaz (Clockwise.Recordings) - ele-king

レーベル再始動から、まだ少しの時間しか経っておりませんが、沢山の素っ裸で、飾りっけの無い実直な海外~国内の表現者の方々、音楽以外の表現方法で深い所から人を感動させる人物とお話する機会を沢山頂きました。。皆様から感じ取れたものは、まさしく「愛」の一言です。一見、陳腐に感じる言葉ですが、薄っぺらさの無い、本当に深い意味での「前向きな」愛です。(それ以上はご想像にお任せいたします。。)音楽が絡んではいますが、映像もあり、本もありですが、音楽を通して音楽に関係したものからも愛を頂けたものを取り上げさせて頂きました。表現する人の作り出すものこそ、その人そのもの。human is musicとはまさしく言い得て妙だと感じました。今回のチャートにのせてあるリンク先へは、ちょいとお時間使ってチェックしてみてください!生活に愛を取り入れたい人にはもってこいですよ~。

Chart


1
Kenji Hirata - 2 makes 1
https://www.youtube.com/watch?v=ZuFVoRJWjns
https://www.jkdcollective.jp/index.html#Kenji_Hirata
嘘も駆け引きも飾りっ気も全くない真っ白な世界。素敵です。

2
Think Twice About This World - 普天間のスケートショップ
https://thinkworld.ocnk.net
お店の名前のまんまのお店。オーナー缶氏のつけた店名で気付かれた方は曲も聴いてみてください。是非ホームページを見てみてください。

3
olive oil - Far From Yesterday
鬼才olive君からレーベルに届いたサンプルのアルバム、聴かせて頂きました!とても暖かいバイブスと愛に溢れた作品です。
最近毒を持って毒を制す?アーティストが多い中、愛をもって全てを制す類希な作品だったと思います。フワフワです。

4
君にお届け - ミスター・マイク
https://www.youtube.com/user/szparasite?feature=watch
スケーター兼、映像クリエイター。能無しフィルム主宰。マイク君の作品は万物への愛に溢れたフラットな感じ。

5
三田格/野田努 - Techno Definitive 1963-2013
私も色々意見しながらこねくり回して作り上げたdj klockの「sensation」を取り上げて頂いております。
音楽とそれを作った人達への純粋な愛の本。

6
dj klock - sensation
制作した当時、私は電話一本で呼ばれました。「カミカズ、常磐線乗れる?何分で着く?手伝ってほしいんだけど。」ここからが始まりでした。世の中の全ての物事が僕らにとって「先生tion」だった、という作品です。

7
KARAFUTO - ENJOY SUPER LIGHTS
まさしく音楽へのまっすぐな愛です。

8
DJ KATO - If you want to listen to more my productions...
clockwise recordingsからの新人による新作音源です。1990年代のアブストラクトミュージックへの深い愛を素直に表現しているトラック。レーベルのサウンドクラウドにて、音源の公表をいたしますので乞うご期待!

9
moodymann - Forevernevermore
愛の一言。古いですが色あせない。

10
dj kamikaze - abstractions of sounds
皆を愛し、愛された作品。ありがとうございます。

https://www.facebook.com/clockwise.recordings
https://twitter.com/dj_kamikaz
https://soundcloud.com/clockwise-recordings
https://soundcloud.com/kazakami

Chart JET SET 2012.12.03 - ele-king

Chart


1

Slow Motion Replay Presents Dunk Shot Brothers - Love Me Tender Ep (Smr)
早くも、HikaruやMr.Melody、やけのはら等がプレイするなど、前作同様のヒットを予感させるエディット集が到着しました。様々なシチューエーションでばっちりハマるレコード・バック内のスタメン確定な1枚です。

2

Maxmillion Dunbar - Woo (Rvng Intl.)
Beautiful Swimmersの片割れにして、Future Times主宰者のAndrew Field

3

Greg Foat Group - Girl And Robot With Flowers (Jazzman)
これまでの作品は全て即完売で先行シングルも大ヒット。エレガントでサイケデリックでグルーヴィーな独自の世界を進化させた、待望のニュー・アルバムが遂にリリース!!

4

七尾旅人 - サーカスナイト (felicity)
2012年リリースの最新作『リトルメロディ』より名曲「サーカスナイト」がアナログ盤で登場!!名曲オリジナルVerに加えて、向井秀徳、Mabanua、Luvraw&btb、Grooveman Spotによるリミックスも収録!!

5

Will sessions - Xmas Break (Funk Night)
素晴らしく骨太な楽曲に加え、今回は赤と緑のラベルで完全クリスマス仕様です!!

6

Lusty Zanzibar - Empress Wu Hu Remixes (Glenview)
100枚限定で先行リリースされたVakula & Oeによるリミックスに加え、気鋭Volta Cabによるリミックス+オリジナル・トラックを追加収録した話題の一枚が到着。

7

Pepe California - Yureru - Dj Nozaki's Pure Pleasure Control Mix (10 Inches Of Pleasure)
Mick「Macho Brother」のカルト・ヒットも記憶に新しい"10 Inches Of Pleasure"から話題沸騰の新作第二弾が無事到着。2010年に自主レーベルからリリースされたPepe California最新アルバム『White Flag』収録曲をレーベル首謀Dj Nozakiがリミックス!!

8

Star Slinger - Ladies In The Back Feat Teki Latex (Pias)
フィジカル12"第1弾『Dumbin'』のメガヒットも記憶に新しいマンチェスターのStar Slinger待望のソロ第2弾には、シカゴのベース人気者Chrissy Murderbotによるジューク・リミックスも搭載です!!

9

Dntel / Herbert - My Orphaned Son - Die Vogel Remix (Pampa)
音響ハウス帝王Lawrenceのリリースでもお馴染み、天才Dj Koze率いる越境ミニマル・ハウス名門Pampaから、看板デュオDie Vogelと主宰による極上リミックスを搭載した特大傑作が登場です!!

10

Echocentrics Feat. Grant Phabao - Echocentrics Remixes (Ubiquity)
名門Ubiquityお抱えの人気バンドEchocentricsの1st.アルバム収録曲をGrant Phabaoがジャマイカン・リミックス!!

Gerry Read - ele-king

 『テルマエ・ロマエ』のヒットは発想がグローバルだったから......だそうである。インドネシアにはあと10年以内にセヴン・イレヴンが1000件はできるらしい。ブロック経済の行方を占うようにしてオランドーが提案したユーロ債はメルケルに一蹴され、市場=帝国に立ち向かう超民主主義をジャック・アタリは提唱するw。とにかくありとあらゆるものが国境を越えてノマド化するなか、なぜか「選挙権」だけがグローバル化しない。ある人が一国だけの経済に収まっていないのはもはや明白なのに、取引先の政権に対して何ひとつ影響力を行使できないというのは、まるで婦人参政権が与えられる以前の女性たちのようなものではないのかw。ジョージ・ブッシュが再選される際、ラルフ・ネーダーに投票するよう呼びかけたトム・ヨークに対して、モービーはイギリス人がアメリカの民主党票を割るような発言をするなとクレームをつけたことがある。つまり、国外から他の国の政治状況に影響を与えることが可能なランクとそうでないランクがこの世界には存在するということである。この不平等を是正し、グローバリズムを徹底させたいのなら、他国の政治状況に対しても投票が可能となる制度を構築するしかない。たとえば世界中のあらゆる人が外国への投票を一定票有し、それを外部要因としてパーセンテージを設定することで、一定の影響力とするわけである。日本との取引を進めたい中国の貿易業者が石原の対立候補に入れるとか、ジンバブエから安い労働力を輸入したい南アの企業はムガベを応援するとか(ちょっとブラック過ぎるか)。これぞグローバリズムではないだろうか。世界市場=帝国の完成ではないだろうか。ネタニヤフやベルルスコーニを失脚させたいと考える人たちが世界中に一定数いれば、圧制に対するストッパー要因にはなるだろうし、アメリカ軍もいちいちアラブ界隈に出かけていって面倒を引き起こす機会も減るだろう(つーか、シリアにも派兵しなかったアメリカはホントに病気かも)。あるいは、ブラジルのようにトービン税を導入した国だけ、こうした権利を認めるというのはどうだろう。攻め型と守り型の経済国家がジグソー・パズルのように入り組んだ世界が出来上がり、金田淳子が「人類皆BL」と書かれた旗を振るのである! ああ、ウゴ・チャベス! そうよ、ユーリヤ・ティモシェンコ! 投資マネーで突き刺して!

 冗談はさておき、BNJMNの快挙に続いて、ベース・ミュージックからハウスへと越境を果たしたジェリー・リードの1作目(これが言いたかっただけでした......)。昨年、ダーク・アークから「パターンズ」でデビューした弱冠19歳のリードは〈ランプ・レコーディングス〉が新たにスタートさせた〈4thウェイヴ〉から矢継ぎ早に5枚のシングルをリリースし、〈セカンド・ドロップ〉からの「ルームランド」にはディスタルによるリミックス盤も加えるなど、早くも新しいセンスのオン・パレード状態となっている。なかでは、どこからどう説明していいのかわからない"ウイ・アー"(スケベは見るべし→https://www.youtube.com/watch?v=TfV-Te608bA)を差してディスクショップ・ゼロの飯島さんはこともあろうに「粗さとしなやかさが同居する黒グルーヴ」と手短に片付けているけれど、ガラージにもミニマルにもダウンテンポにもダブステップにも聴こえるダンス・ミュージックのグローバリゼイション状態(なんだそれ)として聴かせ、日本からは消えうせた未来をハウス・ミュージックの前方にあっさりとつくり出していく。また。今年に入って(20歳になって)温故知新の総本山と化してきた〈デルシン〉からの"イエー・カム・ダウン"ではエイフェックス・ツイン"ヴェントリン"をハウスにアレンジしたような不思議なパーカッション・グルーヴが編み出され、最新シングルとなる「ライノ」ではジャム・シティを意識したようなインダストリアル・テイストも取り入れられていた。そして、そのどれも採録されていないファースト・アルバムにはさらに洗練された作風が並べられ、いままでになかったスウィング感があちこちから滲み出し("ギボン"や"クロール"を聴いてジャイルズ・ピータースンが放って置くとは思えない)、"ビー・プッシン(シー)"を筆頭にジュークをハーフで聴かせているような粘っこいグルーヴが腰にまとわりついて離れない。セクシーである。新井将敬に聴かせてやりたかった......(ウソ)。無法松の暴れ太鼓をアンチ‐Gがイタロ風にリミックスしたような「メイク・ア・ムーヴ」、スクリッティ・ポリッティをベース化したら......という想像がはたらく"ギヴ・マイセルフ・トゥー・ユー"、ムーディマンを思わせる"レッツ・メイク・イット・ディーパー"(実際、ピッチフォークはリードをムーディマンやフライング・ロータスと比較している)、デリック・メイをセオ・パリッシュでかち割ったような"ムーヴィング・フォワード"。どれをとってもいかにも新世代である。若い。新しい。ひゃっホー。

 Quench and anger on the other side of the graciousness of Hashimoto, a sense of loneliness rising from a gap of tranquility Kizu-kun, the day it was made to feel quite exhausted. (by 田中宗一郎) *ツイッターより英訳して無断転載

interview with Derrick May - ele-king

 久しぶりだった。女子高生が踊っているような、10代が主役の若者文化の渦中にいたのは。その翌日この原稿を書いている。それで僕は、彼女たちにデリック・メイを紹介するとしたら、どう説明すればいいのだろうか......と考えている。
 デトロイト・テクノとは、テクノにとっての、ロックにおけるブルースのようなモノと言って通じるのだろうか。立ち帰る場所であり、一種のルーツだと。君たちがもし将来テクノを好きになったとしたら、いちどは訪れる場所だと。デリック・メイはそのルーツにおいて、3本の指に数えられる重要人物で、言葉がないゆえにカヴァーということのあまりないテクノ・ミュージックにおいては珍しく複数の人にカヴァーされている、当時もっとも多くの人に幸せを感じさせた曲"ストリングス・オブ・ライフ"の作者だと。
 世界でもっとも影響力のあったイギリスの『NME』というロック・メディアが、全盛期にもっとも肩入れしていたDJという説明もできる(その当時のデリック・メイの傍若無人ぶりと反抗を知れば、彼もまたロックンロールのひとりだということがわかってもらえるだろう)。
 実話としてこれもある。ノッティングガムからロンドンにやって来たふたりの青年のうちのひとりがマンチェスターのライヴハウスでストーン・ローゼズを発見して、もうひとりは1988年にデトロイト・テクノの記事を書いたと。1988年のその記事と同時に発売されたデトロイト・テクノのコンピレーションが、国際舞台で初めて「テクノ」という言葉が使われたときなのだと。そして、翌年にはデペッシュ・モードがそのゲットーな街を斜めに走るグラショット・アヴェニュー沿いの、デリック・メイのレーベル(そして当時は彼の住居でもあった)〈トランスマット〉を訪れている。

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 『ビヨンド・ザ・ダンス──トランスマット4』は、デリック・メイと〈トランスマット〉にとって4枚目のレーベル・コンピレーションだ。デリック・メイの実質的な制作活動は、80年代で終わっている。自身の曲に関して言えば、90年代以降は未発表曲しか出していない。彼には完成間近だったアルバムがあったが、そのリリースは見送られ、結局、当時録音された曲はこの20年のあいだ、前触れなく、1曲ずつ、地味~に発表されている。『ビヨンド・ザ・ダンス』にも新しい"未発表"がある。パズルのワンピースだ。
 もちろん『ビヨンド・ザ・ダンス』は、未発表曲のために発売されるわけではない。CDにして2枚組、全23曲には、〈トランスマット〉の眩しい歴史が編集されている。  ブックレットには、懐かしい写真もたくさんある。カール・クレイグ、ロラン・ガルニエ、ケニー・ラーキン、ステイシー・プレンといったベテラン勢から、トニー・ドレイクやマイクロワールドといったマニアにはお馴染みの名曲、そして、地味~に発表されている〈トランスマット〉の新人までが並んでいる。なにせ10年ぶりのレーベル・コンピレーションなので、選曲にもパッケージングにも気持ちが込められている。当然、良いアルバムだ。
 僕にはこの機会に、突っ込んで訊いておきたい話があった。11月末、代官山のエアーのレストランでデリック・メイと待ち合わせた。

この男は、若くて、怒りに満ちていて、革命を起こしたくてうずうずしている。しかしこの男は、レコード・ビジネスに疲れてぐったりしている。DJをしながら世界を回って、女の子とセックスしてダンスして、たまに東京にも住んでいる。このふたりはまったくの別人だ。

まずアートワークがすごく良いね。ブックレットには〈トランスマット〉レーベルの歴史がわかるように、古い写真、関わった人たちの写真がコラージュされている。歴史を見せようという意図が伝わってくるよ。

デリック:歴史だけじゃなくて、これからのはじまりの〈トランスマット〉も出したかったんだよ。

今回の『ビヨンド・ザ・ダンス──トランスマット4』を出すに当たって、いくつか僕のなかで「おや」と思ったことがあって、そのひとつが、デリックが25年以上にもわたるレーベルの歴史を初めて振り返ったということなんですよね。

デリック:そうだね。

たしかに過去には、1992年の『レリックス』のような、80年代のベスト盤みたいなコンピレーションはありました。でも、あれは、あくまでリズム・イズ・リズム中心の内容でした。今回のように、カール・クレイグの"クラックダウン"(1990)からケニー・ラーキンの"ウォー・オブ・ザ・ワールド"(1992)、そしてロラン・ガルニエ(ルドヴィック・ナヴァールやシャズ)の"アシッド・エッフェル"(1993)とか、〈トランスマット〉というレーベルの歴史を綴っているのは、今回が初めてなんですよね。

デリック:ああ、そうだね。ただし、今回のコンセプトは忘れられているものを選んだんではない。いま聴き返されるべきものを選んだ。いまの時代でも古くなっていないもの。たとえばジョン・アーノルドの"スパークル"(2000)、この曲は当時も売れたけど、早すぎたんじゃないかと思っていた。いまこそ、あのドラム・パターンは聴かれるべきだってね。

最近はまた、シカゴ・ハウスやデトロイト・テクノへの回帰みたいなことが起きているので、良いタイミングではありますよね。世界的にダンス・ブームだし。

デリック:もちろん。逆に言えば、今回"ヌード・フォト"や"ストリングス・オブ・ライフ"のような曲を入れなかったのは、知られていない曲に光を当てたかったというのもある。これからの〈トランスマット〉をよくするものじゃないかと。俺は過去に生きているわけじゃない。「いま」を生きている。その視点で選んだ。そして、こうなった。

なるほど。もうひとつ......、まあ、個人的には最大の興味は、デリックの未発表曲が入っていたことなんですよね。

デリック:(日本語で)うっす!

はははは。

デリック:ああ、"ハンド・オーヴァー・ハンド"ね。

あれ、良かったよ。

デリック:(日本語で)ありがとございます。

俺は好きだね。

デリック:そりゃあ、良かった。本当に。入れないほうが良いんじゃないとも思った。ものすごく考えたよ。

古い曲だからね。

デリック:最初は2~3曲入れようかなと思った。でも、気が変わった。あまりにも多くの才能が〈トランスマット〉にあることを再発見したから、できる限り、たくさんの人のたくさんの曲を入れたいと思った。本当に良い才能が揃っているよ。彼らの曲への注目が削がれるようなことはしたくなかった。それで"ハンド・オーヴァー・ハンド"だけを残した。
 この曲は、もともとは15分の曲なんだよ。このアルバムのために8分にエディットしたけど、フル・ヴァージョンは12インチで発表するよ。

それは楽しみ。

デリック:どう思った?

デリックらしい、メランコリックで美しい曲だよね。あのー、1993年に『ヴァーチュアル・セックス』というコンピレーション盤が出たじゃない?

デリック:(日本語で)うっす!

あのコンピで、初めて"アイコン"を発表したわけだけど、あんな曲が未発表曲であるってことに当時はすごく驚いて。普通「未発表曲」というと、ボツにした曲だったりして、質は落ちるけどマニア向けの曲として価値があったりするものじゃないですか。でも、"アイコン"は、通常言われる未発表というレヴェルじゃなかったでしょ。で、あとからあの曲は幻のファースト・アルバムのために録音した曲のひとつだって知って納得したんだけど。

デリック:ああ、そうだよ。アルバムのために録音した曲は、他にも9曲ある。

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俺のコンセプトは、ドラム・マシンの限界に挑戦することだった。ドラム・マシンでどこまでできるのかを見せたかった。しかし"ハンド・オーヴァー・ハンド"ではドラム・マシンに集中するんではなく、メロディや構成で、もうひとつのチャプターを見せるという考えだった。

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実は今日、そのことについて訊きたかった。ようやく幻のファースト・アルバムについて訊くことができる(笑)。いままでも訊きたくても訊けなかったからね。1992年にデリックは『イノヴェイター』というベスト盤を〈ネットワーク〉から出している。しかし、本当は、『イノヴェイター』ではなく、あなたのファースト・アルバムが出るはずだった。

デリック:そう、トレヴァー・ホーンとミーティングをしていた。彼は"ハンド・オーヴァー・ハンド"に興味を持ってくれた。デイヴ・ガーン(デペッシュ・モード)もこの曲で歌っても良いと言ってくれた。ビョークも気に入ってくれた。俺の当時のエージェントは、この曲で俺をポップスターにしようと企んでいた。彼らは俺がデペッシュ・モードやビョークのようなポップの一部になることを望んだ。それで俺は、トレヴァー・ホーンとエージェントと喧嘩した。和解できずに終わってしまった。

1992年の『イノヴェイター』のアナログ盤には、"ザ・ビギニング"が入ってないんですよね。なんで、初めてのベスト盤に"ザ・ビギニング"が入っていないのかがずっと引っかかっていましてね。そこで推理したんだけど、"ザ・ビギニング"にはデリックにとっての次のコンセプトが詰まっていた。しかし、UKの音楽業界がそれを理解しなかったってことなのかなと。

デリック:そう、理解されなかった。"ザ・ビギニング"は、リズム・イズ・リズムの最初のアルバムの1曲目に収録されるはずだった。だから『イノヴェイター』には入れなかった。"ケオティック・ハーモニー"、"ザ・ビギニング"、"アイコン"、"ハンド・オーヴァー・ハンド"......それから......。

ロング・アゴー? 

デリック:いや、あれは違......、いや、そうそう、イエス、イエス、イエス! 俺は......、本当にUKの音楽業界が嫌いだ。本当に大嫌いだ。本当に、本当に、だいっきらいだ! "ハンド・オーヴァー・ハンド"は一発録りだったな。たった1回で録った。心を込めて作った。

こうして、時期がズレながらも、当時の曲が発表されて、デリックの幻のファースト・アルバムの正体がじょじょに露わになってきているというのも面白いね。相当にメランコリックなアルバムだったんだなと思いますが。

デリック:そうだよ。そういうことだ。まあ、パズルだな。

インナー・シティがヒットしていた頃なんで、UKの音楽業界がリズム・リズムにヒットを求めるのもわからなくはないんですが、そんなにも考えに大きなギャップがあったんですね。

デリック:80年代の話から話そうか。俺とホアン・アトキンスとケヴィン・サンダーソンの3人は、(バーミンガムの)〈クール・キャット〉レーベルのニール・ラシュトンとディストリビューション契約を結んだ。俺らのレコードのUKやヨーロッパでの流通は、すべて〈クール・キャット〉が拠点となってやっていた。やがてケヴィンはインナー・シティとして〈ヴァージン〉と契約したが、俺は依然として〈クール・キャット〉だった。〈クール・キャット〉は大手の〈ビッグ・ライフ〉と契約していたから、〈トランスマット〉の作品はすべて〈クール・キャット〉~〈ビッグ・ライフ〉経由で流通していた。最初に揉めたのは、〈トランスマット〉の作品が、結局、〈ビッグ・ライフ〉傘下でしか流通しなかったということにあった。

デリック・メイがやりたかった音楽性が理解されなかったとか、そういうのが原因ではなかったんだ?

デリック:それは大いにある。ニール・ラシュトンは俺の音楽性をディレクションしはじめて、どんどん意見を言うようになった。たとえば"アルセム(R-Theme)"、これがリズム・イズ・リズム名義で出なかったのは、〈クール・キャット〉が気に入らなかったからだ。なぜ俺が好きな曲を自分のレーベルから出せないんだろう、俺はそう思った。〈ビッグ・ライフ〉は......、ヤズ(Yazz)っていただろう? ポップ・シンガーの女の子で、ああいうのを出したがっていた大手メジャーだ。最初〈クール・キャット〉は、〈ビッグ・ライフ〉からリズム・イズ・リズムのアルバムを出すつもりでいた。それで最初に"ザ・ビギニング"の12インチ・シングルのUK盤がリリースされた。しかし、〈ビッグ・ライフ〉は"ザ・ビギニング"を嫌った。〈ビッグ・ライフ〉は、"ザ・ビギニング"は完成度が低いと言ってきたんだ。

それは怒るよね。

デリック:アルバムのタイトルは『ザ・ビギニング・オブ・ジ・エンド』だった。〈ビッグ・ライフ〉は〈クール・キャット〉に圧力をかけてきて、そして俺と〈クール・キャット〉の関係も悪くなってしまったんだよ。

あのドラム・マシンをよりパーカッシッヴのように扱うのが、"ザ・ビギニング"のコンセプトだったと思うけど、その後の"アイコン"、"スエーニョ・ラティーノ"もそうだったし。

デリック:その通りだよ。あのときの俺のコンセプトは、ドラム・マシンの限界に挑戦することだった。ドラム・マシンでどこまでできるのかを見せたかった。そのリリースを終えたあとに、そして"ハンド・オーヴァー・ハンド"ではドラム・マシンに集中するんではなく、メロディや構成で、もうひとつのチャプターを見せるという考えだった。

そのパーカッションのコンセプトはどこから来たんですか?

デリック:俺は当時3つのドラム・マシンを使っていた。909と808、それから727と626も使っていた。基本は909と808を同期させて、スウィング・パターンのループを少しずつ変化させながら、独特なうねりを出すことを考えていた。いまでこそ簡単にできることだけど、当時は複雑な構成だったと思うよ。ドラム・マシンによるバウンシーな感覚を表現したかったんだ。
 俺は高校時代から、ホアン・アトキンスと一緒に毎日のように909で遊んでいたんだよ。パーティに909を持って行って、パーティを盛り上げる楽器のひとつとして、909を使った。ジェフ・ミルズがまだ909の存在を知るずっと前の話だぜ(笑)。ジェフがDJで909を使ったりするのは、誰のアイデアから来ていると思うよ?

はははは。〈ミュージック・インスティテュート〉?

デリック:いや、だから高校生時代からやっていたから。ジェフにこんど会ったら訊いてくれよ。その909のアイデアについて。

高校時代から知り合いだったの?

デリック:18歳の頃から知っているよ。

ザ・ウィザード。ジェフはもう有名なDJだったでしょう。

デリック:有名だったよ。ジェフは俺よりもつねに有名だった。ジェフはランDMCのようなポップな選曲もしていたからね。

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3つのドラム・マシンを使っていた。909と808、727と626も使っていた。909と808を同期させて、スウィング・パターンのループを少しずつ変化させながら、独特なうねりを出すことを考えていた。いまでこそ簡単にできることだけど、当時は複雑な構成だったと思うよ。

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話を戻すけど、デリックの性格を考えると、〈ビッグ・ライフ〉からダメだしされたぐらいで動揺するとは思えないんだけど。なおさら燃えてくるほうじゃないですか。あんたは、そんなことで心が折れるようなヤワな人間じゃないでしょう!

デリック:娘にも同じことを言われたよ。「ネヴァー・ギヴ・アップ!」って。

はははは。

デリック:もうどうしようもなかったんだよ。1991年~1992年は、ニール・ラシュトンが俺のマネージャーで、〈トランスマット〉も彼に半分預けていたところがあった。だから彼と揉めて、〈トランスマット〉を誰かに売ることも考えた。一文無しになったし、追い詰められたよ。

悔しさもあったでしょうね。

デリック:自分のレーベルだけでやっていれば良かったんだけど、〈ビッグ・ライフ〉みたいな大手と組んでレコード・ビジネスの世界に足を踏みれて......、その頃は学びながらやっていこうと思っていたんだけれど、でも、それが失敗だったな。"ビヨンド・ザ・ダンス"を作ったときも〈ビッグ・ライフ〉は理解しなかったんだからね。
 俺も自分で反省しているよ。当時の俺はマネージャーに頼りすぎていたんだ。世間知らずだった。だから、ニール・ラシュトンから意見を言われると、まるで自分を否定されたような気持ちになった。自分が追い出されているような気分になってしまったんだよ。それで、とにかくニールがレーベル経営のこともほとんどやっていたから、彼と別れて、俺は路頭に迷うような感じになった。それでもなんとか、2年かけてレーベルを立て直すことができた。新しいアーティストを集めて、また一からやり直そうと思った。

その立て直した〈トランスマット〉から何故、リズム・イズ・リズムのアルバムを出さなかったんですか?

デリック:(ブックレットに載っている20代のデリックの写真を指さしながら)この男は、若くて、怒りに満ちていて、革命を起こしたくてうずうずしている。(もう1枚の写真、現在の自分の写真を指さしながら)この男は、もうレコード・ビジネスに疲れてぐったりしている。すべてにクソ疲れている。DJをしながら世界を回って、女の子とセックスしてダンスして、たまに東京にも住んでいる。このふたりはまったくの別人だよ。

いや~(笑)。しかし、ホアン・アトキンスだって新しい作品を出しているんだから、デリックだって、新しいシングルを出したいと思っているでしょ? それとも怒りにまかせてスタジオを破壊したとか?

デリック:まさか! そんなことやるわけないだろう。

リー・スクラッチ・ペリーみたいに(笑)。

デリック:止めてくれよ、俺はそんなことはしない。いまでちゃんとスタジオはあるよ。ちゃんと証拠の写真だってあるよ。今回もアルバムも自分のスタジオを使ったんだ。

そういえば、今年デトロイトのベル・アイランド(デトロイト川の中州にある公園)でやった「デイパック・フェスティヴァル」について教えてください。

デリック:ベリー・ナイス。ジュディという友人がやったんだ。おまえは来るべきだったよ。

子供のためにやったんですよね?

デリック:そう、腎臓のない子供たちのためのチャリティでやった。デイパックには、腎臓のない子供たちの薬が入っている。薬を持ち歩かなければ外に出れないからね。だからデイパックを背中に背負った子どもたちのためのチャリティとしてはじまったんだよ。

ああ、それで......、それであんなにもそうそうたるメンツが出ていたんですね。デリック、マイク、ホアン、カール、ケニー、ムーディーマン......。

デリック:もちろん、フェスティヴァルには障害のない子供たちも遊びに来るよ。

それでワークショップをやったり、子供たちにDJや機材の使い方を教えたりしていて。

デリック:そうだね。でも、もともとは募金のためのフェスティヴァルなんだ。だから、みんなで協力した。金儲けのためにやったんじゃない。子供たちのためにやったんだ。

小学生を相手にベテランのDJたちがやっているのが良いなと思いました。

デリック:まったくそうだよ。でも、その根本にはもっとシリアスな理由があるけどね。子供たちを相手にしているけど、あくまで腎臓のない子供たちのためにやったんだからね。まあ、俺の娘みたいな変な子ばかりがそこに集まって(笑)、日中は子供たちみんなが楽しそうだったな。でも、夜になると子供たちは帰ってしまうから、ちょっと訳がわからなくなった。でも、日中は良かったよ。

子供たちにテクノやハウスの作り方、機材の使い方を伝えたいと思いますか?

デリック:すごくあるよ。来年はワークショップを増やして、子供たちにもっとたくさんのことを教えたいと思っている。ただ俺は、良い先生じゃないからな。精神的なことなら教えられるけど、テクニックに関しては良い先生じゃない。気持ちのあり方に関しては教えられるだろうな。子供たちにエネルギーを注入することはできるよ。

ターンテーブルの使い方を教えてないと。

デリック:ふぅ~。この写真を見ろよ!(といって、自分の娘、ソレンがDJミキサーをいじっている写真を見せる)

はははは、いいね。

デリック:彼女は俺のDJを知らないのに、クロスフェーダーをこう操作してやがった。

はははは、父親似じゃない。

デリック:そうなんだよ、それって俺のDJスタイルだろ(笑)!

才能があるんだね。

デリック:かもしれないな。

ソレンちゃんに自分の音楽を聴かせたの?

デリック:いや、俺は聴かせてない。母親がいちど、車のなかで聴かせたことがあるらしいけど、あんまよく憶えてないみたいだ。

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サック・マイ・ディック・サック・マイ・ディック・サック・マイ・ディック・サック・マイ・ディック!!!! 音質は良くはないけど、ファンキーで、ダーティーで、速くて......ってヤツだろ。俺、ああいうの大嫌い。

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いつか感想を聞くのが楽しみだね。ところでデリック、シカゴのフットワークについてはどう思う?

デリック:知らない。

ジュークと呼ばれている音楽だよ。新世代のゲットー・ハウス。

デリック:知らないな-。

けっこうテンポが速い最新のダンス・バトルで、デトロイトで昔、ジッツと呼ばれていた音楽とも似ている。

デリック:ああ、ハウスというよりもエレクトロを速くした感じじゃない。(早口で)トゥクトゥクトゥクトゥク!!!! パーパパパーララパーパパパーララ!!!! トゥクトゥクトゥクトゥク!!!! (甲高い声で)プッシー・プッシー・プッシー・プッシー!!!! サック・マイ・ディック・サック・マイ・ディック・サック・マイ・ディック・サック・マイ・ディック!!!! 音質は良くはないけど、ファンキーで、ダーティーで、速くて......ってヤツだろ。俺、ああいうの大嫌い。

〈ダンス・マニア〉は好きだったじゃない。

デリック:好きだよ。〈ダンス・マニア〉はそこまで酷くなかっただろ。もっとハウス寄りだった。

それがもっと進化したんだって!

デリック:でも、野田が言っている意味もわかるよ。ただ、俺はもともとエレクトロがそこまで好きじゃなかった。エジプシャン・ラヴァーのような好きなエレクトロもあるよ。でもホアンほど好きじゃなかったな。

なるほどね。エレクトロが好きか嫌いかでそこが分かれるんだね。

デリック:あんま若い人の音楽知らないんだよね。いまでもよく付き合っている若い世代は、セオ・パリッシュとオマー・Sぐらい。

いまでも〈トランスマット〉はグラショット・アヴェニューにある?

デリック:ああ、そうだよ。

昔は、グラショット・アヴェニュー沿いの〈トランスマット〉の隣には〈KMS〉(ケヴィン・サンダーソンのレーベル)があって、ダニエル・ベルの〈セヴンス・シティ〉があったけど、いまはもう誰もいなくなったでしょ。なんでデリックだけがいまでもグラショット・アヴェニューに居続けるの?

デリック:コミュニティのためだよ。あの辺のコミュニティにとってものすごく重要だからだ。良い写真を見せてあげよう。(iPhoneから写真を探して見せる)

結婚式?

デリック:そう、誰かがそのあたりで結婚すると、必ずここで写真を撮るんだ。それが〈トランスマット〉がそこに居続ける理由だ。(注:オフィスのあるビルの通り沿いの壁に、デリック・メイは〈トランスマット〉に関わってきた絵描きたちに絵を描いてもらっている。たとえば壁にはアブドゥール・ハックなどの絵が描かれている。いつしか、その大きな壁画の前で近所の教会で式を挙げた新婚さんたちが記念を写真を撮るようになった)

ああ、なるほど-。

デリック:もう〈トランスマット〉のビルは歴史の一部になったんだよ。それだけで、そこに居続ける理由が充分にある。

デトロイト・テクノのヒッツヴィルUSA(モータウンの拠点)だね(笑)。

デリック:はははは。

観光名所だ(笑)。

デリック:それもある。観光客が、テクノの生まれた場所としてそこを訪れて、写真を撮るんだ。

へー、初めて〈トランスマット〉に行ったときには、地下の部屋をアブドゥール・ハックがアトリエにしていて、事務所にはニール・オリヴィエラ(デトロイト・エスカレーター・カンパニー)がいたね。そしてグローバル・コミュニケーションがかかっていたんですよね。

デリック:ニールはいま、すごい、ハリウッドで二番目に有名な弁護士として活躍している。

えー、ホント! 映画のために大学院に再入学するっていうメールはもらってたんだけど。

デリック:もともと頭の良い男だったからね。

ミスター・スポックと呼ばれていたほどだもんね(笑)。

デリック:そうだった(笑)。ちなみに『ビヨンド・ザ・ダンス──トランスマット4』ではニールもライナーを書いているんだよ。(......と言って、見本盤を見せる)

ホントだ。

デリック:デリック・オーテンシオ(ニールが辞めた後のレーベル・マネージャー)にも書いてもらっている。覚えているだろ?

もちろん。

デリック:それからジョン・マックレディ(デトロイト・テクノについてよく書いていたUKの音楽ジャーナリスト)にも頼んだ。

へー、ホントに、歴史なんだね。

デリック:そういう意味でも、音源だけではなく、パッケージも含めて、とても良いコンピレーションになったと思う。野田、でも歴史だけじゃないんだ。とくにChronophoneってヤツの曲をよく聴いてくれよ。こいつは、若き日のロラン・ガルニエに匹敵する才能だと思う。

わかったよ。それでは今日はありがとう。相変わらずデリックがクレイジーで嬉しかったよ(笑)。いつか幻のファースト・アルバム『ザ・ビギニング・オブ・ジ・エンド』を聴ける日を楽しみにしているよ。

Bushmind(Seminishukei) - ele-king

https://soundcloud.com/bushmind
https://www.facebook.com/bushmind
https://seminishukei.shop-pro.jp/
https://wdsounds.com/

Nipshit of 2012(順不同)


1
King 104 / Margarita

2
Lil Mercy & Mamimumemosu / 20mamimume12

3
Hoodies / Dogbite

4
Campanelra & Toshi Mamushi / K.B.P

5
D.U.O / Wish Wash

6
Bes & DJ One-Law / U Can't See Me

7
Owl Beats feat.Yuksta-Ill / Time Less

8
Rhyda feat.piz? / Yah Yah Yah

9
Tonosapiens feat.Rockasen / SquAll

10
Fla$hbackS / Gladiator
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