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Anti-G

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Presents Kentje'sz Beatsz

Planet Mu

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三田 格   Aug 12,2011 UP

 諸般の事情で2ケ月遅れの紹介です。梅雨との見境もなく急に暑くなりはじめた頃です。つーか、もう、2ケ月も暑いのか......。暑い......。暑い...。

 反重力という意味なのか(G=グラヴィティ?)、アムステルダムのアフリカ系プロデューサー、ケンリック・コナーによるデビュー・アルバムは、たしかに腰が浮いてしまうようなユーロ・ハウスとUKベースのキメラといえ、洗練されたゲットー・ミュージックのユニークさを伝えてくれる。音数が少なく、非常にシンプルな構成で、アシッドな感覚に訴える面も強い。これは面白い。

 デイヴ・クアムによる詳細なライナーノーツによると、80年代末にオランダのハーグでDJモールティエが回転数を間違えてダンスホールのレコードをプレイし、それをオーディエンスが熱狂的に支持したことが「バブリング」というシーンをスタートさせたという。90年代を通じて移民を中心に拡大したバブリングは特異なカリビアン・ミュージックとしてさまざまなテクを加えながらロンドンのジャングルと同時並行で発展を遂げ、00年代も後半になると、ダッチ・ハウスに人気の座を明け渡す。オランダの移民文化というと、マルチ-カルチャラリズムを拒否したノルウェイの虐殺事件同様、04年にゴッホの甥の孫に相当する映画監督がイスラム過激派に路上で刺殺される事件がオランダ政府による同化政策の失敗を象徴していると報じられていたように(フランスの暴動の予告をなしたともいわれた)、非常な軋轢のなかでその文化を発展させていたことが容易に想像でき、当時のオランダでアフリカ系とラテン系の10代によって発展させられたという事実が、その急進性を物語っているといえる。「インスピレイションがバブリングと出会う」とか「バブリングがトラブルを引き起こす」といったタイトルはそれだけで何をかいわんやである。

 サウンドの隅々から醸し出される歪みや緊張感、そして、独特のユーモアはニューオーリンズでジャズが誕生したときと同じだとはいわないけれど、近いムードを持っているところはある。バブリング・ハウスの担い手としてライナーノーツにはほかにも若いDJたちの名前が列挙され、どちらかといえば洗練されたサウンドに目を付けやすい〈プラネット・ミュー〉の嗜好を考えると、サウンドの背景から考えてもっとブルータルな音楽性をメインに打ち出しているプロデューサーもまだまだ後には控えていることだろう。リリースが進むことを期待したい。

 現在、18歳になったばかりだというコナーは、10代を通じて「バブリング」を全身に浴びて育ったことは間違いない。これにUSヒップホップはもちろん、レゲトンやハウスが縦横に絡み合っているさまはすぐにも聴き取れる。エンディングに向けてヒップホップの色が濃くなっていく以外は、どのサウンドに優劣があるでもなく、見事なハイブリッド・センスだと言わざるを得ない。全体にハイファイでまとめられ、チップチューンのようなファニーさが過激なほど、そのドライさを引き立てている。

 また、イタリアのハウスに深くコミットしたことがある人には、92年に〈ビート・クラブ〉からリリースされたダブル・FMを強く想起させる面があることも伝えておきたい。ダブル・FMの、とりわけ"イリュージョン"で聴くことのできたヒプノティックなトライバル・ドラムが"フリーク・イット・アウト"や"フル・アップ"からはダイレクトに蘇ってくる。ハットの入るタイミングがまったく同じではないかと、かつてのイタリアン・ハウスまで聴き直してしまう夏......であった。

三田 格