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DJ Diamond

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野田 努   Sep 12,2011 UP
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E王

 シカゴのダンス・コミュニティから生まれたジュークは、この1年でずいぶんと広がっている。ことUKでは、自分でもジュークをやりたくなってしまっている人が後を絶たないようだ。アイコニカは最近のリミックスでそれをやっていたし、レコード店で試聴しているとUKの新しいレーベルの音にジュークっぽさがさらに伝染しているんじゃないかと感じる。
 ジュークはダンスのために生まれた音楽だが、この新種のゲットー・ミュージックには、殺気だったミニマリズム、内に秘められた狂暴性のようなものがある。僕はデトロイトのフットワーク的な現場なら見たことがある。路上のダンス・バトルは日本やヨーロッパでも見たことがないので、実に物珍しく、「格好いいなー」と圧倒されたものだった。黒人ばかりでなく、白人も、少数だが女性も混じっていたので、音楽とダンスは激しいものの平和的にも見えた。しかし、かつてジッツと呼ばれたそれは、もともとはギャング同士のダンス・バトルから発展したもので、ジェフ・ミルズに訊いたところでは70年代からずっとあるものだという。デトロイトのコアなリスナーには有名な「Jits」(ゲットー・エレクトロのアンセム)は、それこそ声ネタの高速ループによるゲットー・エレクトロだが、思い切りが良いというよりも、作品という概念を超越したそのラフな作りは、かたやこの音楽の背景となるスラム街の猥雑な現実を暗示し、他方では白人文化には不可能なようなことをやってのけるブラック・ミュージックのファンクネスのすごみを強烈に主張する。

 DJダイアモンドは、〈プラネット・ミュー〉のコンピレーション『バングス &ワークス Vol. 1 』に参加しているひとりで、本作は、DJネイトDJロックに続いてレーベルがリリースする3人目のソロ・デビュー・アルバムである。そして『フライト・ミュージック』は、スティーヴ・ライヒとOFWGKTAのケツをブッ叩いているような音楽だ。DJロックが新時代のハード・ファンクだとしたら、こちらはさしずめサンプラーを用いたアヴァンギャルドだろう。とにかく、まあ、あまりにもいびつなのだ。街の景色が異次元に変形していくこのアートワークが『フライト・ミュージック』をよく表しているように思う。
 また、「これはハウス・ミュージックという靴に踏まれたガムだ」と評していた人がいたけれど、それほどこの音楽は、思わず「底辺(アンダーグラウンド)のなかの底辺(アンダーグラウンド)」を感じてしまうような強烈なものを放っている。乾いたパーカッションは単調だというのにテンションが高く、不穏なストリングスと極端に細かく刻まれた声は、不条理な現実の映し鏡のようにめまぐるしく展開する。恐怖の感情が押し寄せて、リスナーをそわそわさせるかもしれない。あまりにも落ち着きがなく、とてもじゃないけど、じっと聴いてはいられない。しかも恐ろしいほどヴェイカントである。
 「ヒップホップはいつの時代も伝統の束縛からもっとも素早く逃れていく」......ジュークは正確にはヒップホップとハウスの変異体だが、これはいまその限界に挑戦しているようだ。

野田 努