ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. August Greene - August Greene (review)
  2. Gonno & Masumura - In Circles (review)
  3. Brett Naucke - The Mansion (review)
  4. 078 KOBE 2018 ──神戸のフリーフェスにてURがライヴ出演 (news)
  5. Against All Logic - 2012-2017 (review)
  6. Gonno & Masumura ──ゴンノ&マスムラ、テクノとアフロビートで宇宙を目指す (news)
  7. IDM definitive 1958 - 2018 ──IDM/エレクトロニカの大カタログ刊行のお知らせ (news)
  8. interview with Kaoru Inoue 人はいかにして、このハードな人生を生きながらゆるさを保てるか? (interviews)
  9. SILENT POETS ──サイレント・ポエツ、奇跡的メンツの「スペシャル・ダブ・バンド・ライヴ・ショー」決定 (news)
  10. Tom Misch - Geography (review)
  11. Lolina - The Smoke (review)
  12. STRUGGLE FOR PRIDE ──伝説のアーバン・ハードコア・ノイズテラー、SFP新作/そして1stが追加曲ありで再発 (news)
  13. interview with Unknown Mortal Orchestra 暗闇の先のメロウネス (interviews)
  14. KANDYTOWN - ──キャンディタウンがついにメジャー・デビュー (news)
  15. interview with Phoenix - ──フェニックス、来日記念インタヴュー (interviews)
  16. R.I.P. Cecil Taylor すべての棺桶をこじ開けろ (news)
  17. Terekke - Improvisational Loops (review)
  18. Moodymann ──ムーディマンがニュー・アルバムをリリース (news)
  19. Columns ダニエル・エイヴリーの新作が仄めかすもの (columns)
  20. interview with Subarashika この素晴らしか世界 (interviews)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Various Artists- 116 & Rising

Album Reviews

Various Artists

Various Artists

116 & Rising

Hessle Audio

Amazon iTunes

野田 努   Jun 01,2011 UP
このエントリーをはてなブックマークに追加
E王

 レーベルのコンピレーション・アルバムには2種類ある。回顧録としてのそれと最新型の提示だ。デヴィッド・ケネディー、ベン・トーマス、ケヴィン・マックオーリーの3人によって、2007年にはじまったロンドンの〈ヘッスル・オーディオ〉にとって最初のコンピレーション・アルバム『116・アンド・ライジング』は、〈ホットフラッシュ・レコーディングス〉のそれと同様に、その両方を見せようとしている。また、〈ホットフラッシュ・レコーディングス〉のそれと同様に、このコンピーションはポスト・ダブステップにおける重要なランドマークでもある。

 まずリリース形態が興味深い。12インチ・ヴァイナル3枚組+CD2枚組というパッケージで、そう、お察しのように、3枚のヴァイナルの溝すべてには新曲か未発表が11トラック掘られている。レーベルの主宰者のひとりであるデヴィッド・ケネディーによるピアソン・サウンド(ラマダンマンとしても知られる)をはじめ、もうひとりのレーベルの主宰者、ケヴィン・マックオーリーによるパンジア、それからアントールド、ジェームス・ブレイク、アジソン・グルーヴ、ジョー、ペヴァリスト......いまもっとも旬な連中というか、錚々たるメンツが名を連ねている。そして、ヒットメイカーたちによる新しいトラックは、ピアソン・サウンドがそうであるように、リッチー・ホウティンが2ステップをやったかのような、面白いくらいにミニマリスティックに展開される。
 ヴァイナルでもCDでも最初のトラックとして選ばれたエルゲイトの"ミュージック(ボディ・ミックス)"は、まさに象徴的だ。このリズムが2ステップではなく4/4キックドラムによるものだったら、まったくプラスティックマンである。アントールドの"クール・ストーリー・ブロ"は、昨年から顕著な彼のアシッド・ハウスへの接近が聴ける。この曲もまたリズムが2ステップでなはなくファンキーなエレクトロであったら、まったくモデル500の"チェイス"だ。こう書いてしまうと味も素っ気もないかもしれないけれど、"ミュージック"も"クール・ストーリー・ブロ"もUKベース・ミュージックの現在のクラクラするような新鮮さを持っている。後者のスライドするベースの入り方も実に格好よく、最小限の音の構成でありながらそうしたディテールにしっかり凝っているところからも、ポスト・ダブステップがいまノリにノっている感じが見えてくる。
 それでも僕が1曲選ぶとしたら、ピアソン・サウンドの"スティフル"にする。このトラックは声ネタのファンキーなエディットと彼の2ステップにおけるミニマリズムの美学との見事なブレンドで、そしてとにかくヒプノティックなのだ。アジソン・グルーヴの"ファック・ザ・101"、ジョーの"トゥワイス"、ペヴァリストの"サン・ダンス"も面白い。"ファック・ザ・101"はチョップド・ヴォイスによるファンキー風のトラックで、"トゥワイス"はジョーらしいパーカッシヴなトラック、"サン・ダンス"はアブストラクトなダブステップで、それぞれ作者の個性がよく出ているし、同時にレーベルの色も共有されている。〈ヘッスル・オーディオ〉はいま上昇気流にいるのだ。

 2枚組のCDのうちの1枚は、レーベルの回顧録となっている。その12曲のなかにはアントールドの"テスト・シングナル"や"アイ・キャント・ストップ・ディス・フィーリング"、ジョーの"レヴェル・クロッシング"といったフロア・ヒットも含まれている。デビューしたばかりのジェームス・ブレイクらしいクセのあるアクセントを持った"バザード・アンド・ケストレル"、ラマダンマンのジャングル・トラック"ドント・チェンジ・フォー・ミー"、パンジアによるディープ・ハウス調の"ユー・アンド・アイ"といった聴き応え充分のトラックも収録されている。しかし......アントールドのもっともユニークな"アナコンダ"、それからラマダンマンのファンキーな"アイ・ベグ・ユー"......も収録されていない。だいたいジョーのもっともバカ受けした"クラップトラップ"もない。コンピレーション・アルバムですべてをまかなえると思うなよ、というメッセージだろう。

野田 努