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下津光史

BluesPsychedelicRock

下津光史

@青山 月見ル君想フ

Apr 17, 2013

文:野田 努  
写真:小原康広   Apr 30,2013 UP
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E王

 着いたのは8時過ぎ。案の定、下津光史は、缶ビールを持って、良い感じに酔っぱらっていた。彼をライヴのトリにしてはいけない。この恐るべき23歳は、踊ってばかりの国のライヴの最中でも、終盤になればビールを欲する。他人とは思えないし、そして、そんなことで彼を賞賛したいわけでもない。
 しかし、この、長身の金髪のど不良は、たとえ瓶ビールをラッパ飲みしながらステージに現れても、リズム感を失わず、ギターと歌でグルーヴを作り、目の覚めるような歌を歌うことができる。

 ありきたりの、芸のない表現だが、彼の音楽からは、忌野清志郎、山口冨士夫、ジェフ・バックリィが見えるだろう(本人は憂歌団を主張するが)。日本にジェイク・バグがいるのか? と問われれば、下津がいると僕は答える。ソロであろうとバンドであろうと、そのくらい、この不良のライヴ演奏からは、彼がいまのところ残している録音物以上のエネルギーを感じる。飲み屋で酔っぱらって、自由に振る舞いすぎて、怖いお兄さんに一発二発ぶん殴られても翌日にはケロリと歌っているようなタイプの男だ。インターネット・ロマン主義にありがちな去勢された感じがない......というか、彼にはインターネットがそもそもない(笑)。ゆえに、本当は、こんな若いどチンピラの歌など笑ってやりたいのだが、......いや、でも目指す理想は、笑ってばかり国だ。真夜中を笑い飛ばせ。

 下津は、今日の日本のU23(ヒップホップのLOWPASS、オーバーエイジ枠として哲丸、大阪のSEIHOなどなどが入る)のなかでも、もっともニヒリズムを抱えているように見受けられる。目をまんまるにして、腹の底から怒っているように見えるが、しかしこの青年の音楽は、決して絶望のド壺にハマることがない。『コブラの悩み』やタイマーズの頃の清志郎を彷彿させる......"踊ってはいけない"や"セシウム・ブルース"は、ありがちな、ひとりよがりの政治的主張を越えて、多少のおかしみをもって抵抗している。あるいは、「人生はただの罰ゲーム」と彼が歌うとき、しかし彼の声と歌が、人生は罰ゲームなんかではないと言っているように聴こえる。
 
 僕がどうして下津光史のライヴにいるのか説明しよう。昨年のある晩のこと。電車で哲丸と一緒に帰る途中に、「同世代でもっとも好きなバンドはなに?」と訊いたところ、間髪入れず、「踊ってばかりの国」と言われたので、さっそく僕は、当時下津が住んでいた、都内某所の取り壊し寸前のクソ古いビルの地下のスタジオに彼を訪ねたのだ。それがきっかけだった。真冬だというのに、寝具などどこにも見あたらない、衛生とはかけ離れた、汚く、冷たいスタジオのなかで、寝起きの彼を二度襲撃した。「寒くないの?」と訊いたら、「裏技があるんですよ。寒くなったら、ギターアンプの電源を入れるんですよ」と真顔で答えたのが下津だった。
  
 踊ってばかりの国は7月に再活動するそうで、アルバムは年内にはリリースされるらしい......。未来は明るいかもよ。


文:野田 努