「!K7」と一致するもの

The World of My Bloody Valentine
マイ・ブラッディ・ヴァレンタインの世界

極限にまで到達したロック・サウンドの軌跡──
マイ・ブラッディ・ヴァレンタインがなしえたこととは

インタヴュー
ディスクガイド
『Loveless』から広がる宇宙
ティーンエイジャーの自我の溶解
“愛無き” を愛することを学ぶ
etc

第二特集
New Generation of Indie Rock and Post Punk in the UK
UKインディー・ロック/ポスト・パンク新世代

The World of My Bloody Valentine issue

photos by Kenji Kubo
ケヴィン・シールズ、その人生を大いに語る(杉田元一+坂本麻里子)

■ディスクガイド
(イアン・F・マーティン、大藤桂、黒田隆憲、後藤護、ジェイムズ・ハッドフィールド、清水祐也、杉田元一、野田努、山口美波、与田太郎)
This Is Your Bloody Valentine
Ecstasy
Geek! / The New Record By My Bloody Valentine / Strawberry Wine / Sunny Sundae Smile
You Made Me Realise
Feed Me With Your Kiss
Isn't Anything
オフィシャル・インタヴュー(粉川しの)
ティーンエイジャーの自我の溶解(イアン・F・マーティン)
Glider
Glider Remix
Tremolo E.P.
Loveless
オフィシャル・インタヴュー(小野島大)
“愛無き” を愛することを学ぶ(ジェイムズ・ハッドフィールド)
Ecstasy And Wine
m b v
オフィシャル・インタヴュー(黒田隆憲)
EP's 1988-1991
オフィシャル・インタヴュー(黒田隆憲)
Experimental Audio Research
Patti Smith, Kevin Shields
Brian Eno With Kevin Shields
Hope Sandoval & The Warm Inventions
轟音の向こう側の素顔(黒田隆憲)
あの時代の不安定な生活のなかで(久保憲司)

■『ラヴレス』から広がる宇宙
ロック編(松村正人)
テクノ編(野田努)
アンビエント編(三田格)
実験音楽編(松山晋也)

第二特集「UKポストパンク新時代」
〈ラフ・トレード〉が語る、UKインディー・ロックの現在(野田努+坂本麻里子)
断片化された生活のための音楽(イアン・F・マーティン)
ディスクガイド(天野龍太郎、野田努、小山田米呂)
活況を見せるアイルランド・シーン(天野龍太郎)
新世代によるクラウトロック再解釈とドライな「歌」(天野龍太郎)
世界の中心は現場にあって、広がりはインターネットによってもたらされる(Casanova)

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訂正
このたび は弊社商品をご購入いただきまして誠にありがとうございます。
『別冊ele-king マイ・ブラッディ・ヴァレンタインの世界』において、
p185上段のBlack Midiのジャケット写真が、
中央部を拡大したまま(トリミング・ミスのまま)印刷されていました。
謹んで訂正いたしますとともに、
お客様および関係者の皆様にご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。

ISSUGI & DJ SHOE - ele-king

 なぜいま ISSUGI か──というのは紙エレ最新号に記したのでぜひそちらをお読みいただきたいが、その巻頭ロング・インタヴューで少しだけ仄めかされていたミックス・アルバムが、ついに7月28日にリリースされる。福岡の DJ SHOE とのコラボで、タイトルは『Both Banks』。
 NYのグワップ・サリヴァンや GRADIS NICE & DJ SCRATCH NICE との曲をはじめ、MONJU としての新曲や PUNPEE のリミックス、さらにはフリースタイルまで、さまざまな音源を堪能することができる嬉しい内容だ。これは、聴こう。間違いないから。

ISSUGIがDJ SHOEとのコラボで放つミックスアルバム『Both Banks』のリリースが決定!
GWOP SULLIVANやGRADIS NICE & DJ SCRATCH NICEらによるISSUGIやMONJUとしての新曲、さらにPUNPEE "Pride" feat. ISSUGI (16FLIP Remix)、Freestyleなど多数のエクスクルーシヴを収録!

◆DOGEAR RECORDSの中心的存在MONJU、そしてBudamunk、5lackと共にSICK TEAMのメンバーであり、近年はBES & ISSUGIとしてもアルバムをリリースするなどソロでの活動だけに留まらず仲間たちとともに様々な作品をリリースし続け、またビートメーカー/DJ名義である16FLIPとしての活動も各方面で高く評価されているラッパー、ISSUGIのミックスアルバム『Both Banks』のリリースが決定!
◆今回タッグを組むのは福岡を拠点に活動し、これまでのISSUGI作品にも参加しているDJ SHOE。今作はISSUGI自身の作品に加えMONJUやSICK TEAM名義での作品、さらには客演ワークスなどISSUGI関連の楽曲からもDJ SHOEがセレクト。
◆エクスクルーシブとしてISSUGIと幾度となくセッションしてきたNYのプロデューサーGWOP SULLIVANやISSUGIとは各々でジョイント・アルバムを発表し、数々の楽曲を世に送り出してきたNY在住のプロデューサーGRADIS NICE & DJ SCRATCH NICE、DOGEAR RECORDSの同胞でもあるCRAM、EL moncherie(弗猫建物)のプロデュースによるISSUGI名義の新録曲(弗猫建物のVANYとMASS-HOLEが客演)を筆頭にアルバムが待たれるMONJUとしての新曲(Prod by 16FLIP)、福岡の逸材 "DJ GQ" との楽曲、PUNPEE名義で2017年に発表された "Pride" feat. ISSUGI(Prod by Nottz)の16FLIP Remixを始めとするリミックス楽曲、"Red Bull RASEN Episode5" でのISSUGIヴァース(Prod by C.O.S.A.)、さらにFreestyleなどを収録。GWOP SULLIVANやBES、KOJOE、YUKSTA-ILL、ILLNANDES、OYG、FREEZ、ILLSUGI、Eujin KAWI(弗猫建物)によるシャウトアウトも収録。これが常にDJと共に動いてきた "ISSUGI" のHIPHOP MIXTAPE。

[作品情報]
アーティスト:ISSUGI & DJ SHOE
タイトル:Both Banks
レーベル:P-VINE, Inc. / Dogear Records
発売日: 2021年7月28日(水)
仕様:CD/デジタル
CD品番:PCD-94042
CD定価:2,640円(税抜2,400円)

[トラックリスト]
01. Both Banks - ISSUGI & DJ SHOE
 Prod by GWOP SULLIVAN
02. J.studio Freestyle - ISSUGI & DJ SHOE
 Prod by GRADIS NICE
03. Welcome 2 PurpleSide (16flip Remix) - BES & ISSUGI
 Remix by 16FLIP
04. Navy Nubak - ISSUGI & GRADIS NICE
 Prod by GRADIS NICE
05. ONE RIDDIM (16flip Remix) – ISSUGI
 Remix by 16FLIP
06. INCREDIBLE / INCREDIBLE (DJ SCRATCH NICE Remix) - MONJU
  Prod by 16FLIP | Remix by DJ SCRATCH NICE
07. Soul on Ice (DJ GQ Remix) – ISSUGI
 Remix by DJ GQ
08. Freestyle2 - ISSUGI & DJ SHOE
 Prod by GRADIS NICE
09. Woowee ft Vany, MASS-HOLE - ISSUGI & DJ SHOE
 Prod by EL moncherie
10. The Lord ft BES, ISSUGI & KOJOE – CRAM
 Prod by CRAM
11. Conqcity Freestyle (Top of the head) - ISSUGI x JJJ
 Prod by JJJ
12. Spitta ft Febb - ISSUGI & GRADIS NICE
 Prod by MASS-HOLE
13. Intersection - 16FLIP & DJ SCRATCH NICE
 Prod by 16FLIP & DJ SCRATCH NICE
14. RASEN Freestyle (ISSUGI verse) – ISSUGI
 Prod by C.O.S.A.
15. Callback - BES & ISSUGI
 Prod by DJ FRESH
16. Czn'Pass (Endrun Remix) ft ISSUGI / Czn'Pass ft ISSUGI - ILLNANDES & ENDRUN
 Prod by ENDRUN
17. This for ma.. - ISSUGI,仙人掌
 Prod by KOJOE
18. Special - SICK TEAM
 Prod by BUDAMUNK
19. Sheeps - BES & ISSUGI
 Prod by DJ SCRATCH NICE & GRADIS NICE
20. NL - ISSUGI & DJ SHOE
 Prod by GRADIS NICE & DJ SCRATCH NICE
21. D.OGs - ISSUGI & DJ SHOE
 Prod by CRAM
22. WARnin' Pt.2 - MONJU & KOJOE
 Prod by KOJOE & ShingoBeats
23. 首都高MIDNIGHT ft ISSUGI & MuKuRo (Blooky Jeeky Remix) – KOJOE
 Remix by Blooky Jeeky
24. Midnite Move ft 仙人掌 - ISSUGI & GRADIS NICE
 Prod by GRADIS NICE
25. 踊狂 (16flip Remix) - SICK TEAM
 Remix by 16FLIP
26. Pride (16flip Remix) ft ISSUGI – PUNPEE
 Remix by 16FLIP
27. ON FiELD (DJ SCRATCH NICE Remix) - ISSUGI
 Remix by DJ SCRATCH NICE
28. In The City – MONJU
 Prod by 16FLIP
29. Now or Never – ISSUGI
 Prod by DJ SCRATCH NICE

#14 taken from "Red Bull RASEN Episode5" © Red Bull Media House
#26 Licensed by SUMMIT, Inc. PUNPEE appears courtesy from SUMMIT, Inc.

[ISSUGI - PROFILE]

NORTH TOKYOの誇るラッパー/ビートメーカー/プロデューサー。MONJU、SICKTEAMのメンバー。
ISSUGIは今日も新たな扉を開き、景色を変えて行く。16FLIPは狼煙をあげ、光をプリズムのように輝かせて行く。地下から揺らめく光は彼らの日々の生活を鮮烈に浮かび上がらせる。AUTHENTIC CHAMPION SOUNDが揺らしに来る。常に全力で向き合い、ラップ、ビートメーク、DJ、スケートと日々を共にし、アンダーグラウンドからスタイルを突き上げる。今日も地図と歴史に新たな印とページを増やし続けてる。日本のHipHopの歴史上この男が居たのと居ないのでは、埋められない確かな違いがそこにうまれたはずだ。DOGEAR RECORDSをMONJUと共にREPRESENT。

Worked with:
仙人掌, Mr.PUG, 5lack, Budamunk, BES, SEEDA, KOJOE, JJJ, KID FRESINO, FEBB, C.O.S.A., MASS-HOLE, YUKSTA-ILL, DJ SCRATCH NICE, GRADIS NICE, CRAM, ILLSUGI, YOTARO, GQ, DJ SHOE, ENDRUN, ILLNANDES, 弗猫建物, Devin Morrison, Roc marciano, Evidence, Tek of Smif-n-wessun, Twiz the beat pro, Roddy rod, Gwop sullivan, DJ FRESH, Illa J, DJ DEZ, Khrysis, John robinson, Eloh kush, Al B smoov, Mr.Brady, Planet asia, Georgia Anne Muldrow & More Artist.

https://issugi.lnk.to/j2lNj9yz

[DJ SHOE - PROFILE]

1983 / HIP HOP /
八代発~大阪経由~福岡親不孝通りを拠点とするリアルDJ。持ち味であるヘッドバンキング、スクラッチ、2枚使い、独特の "間" はオーディエンスを巻き込み、首を縦に振るようになる。その腕と熱さ故にアーティスト・ヘッズからのプロップスは高く、現場での存在感もさることながら、近年ではISSUGIによるプロジェクト "7INC TREE" を始め、数々の楽曲にスクラッチで参加。2021年には「EL NINO MIX TAPE」のMIXを任せられ、自身名義では「DAY BY DAY (Remastered)」をリリース。向こう側に聴こえる鳴りを体現し続けている。毎月 第1火曜 G.M.M at STAND-BOPを主宰。今夜もFEELすれば、堅い握手と乾杯は必ず。

Stijn Hüwels + Tomoyoshi Date - ele-king

 漢方医でありアンビエント作家として知られる伊達伯欣がベルギーの音楽家/ギタリスト、スタン・フヴァールとの共作の第二弾となるアルバム『遠き火、遠き雲』をフランスのレーベル〈laaps〉からリリースした。前作『Hochu-Ekki-Tou』も極めて静的な作品だったが、今作もまたあの凛とした静寂は継承されている。アルバムには短歌の歌人、一ノ関忠仁による詩の朗読もある。それは原爆に関する詩ではあるが、現在においても力を持っている。なんでもこの朗読は、18年前に闘病中だった歌人と当時はまだ研修医だった伊達が病院で出会い、病室で録音したものだという。それが今回の1曲となり、アルバムのタイトルにもなった。ぜひ聴いてみてください。

Stijn Hüwels + Tomoyoshi Date
遠き火、遠き雲’ (A Distant Fire, A Distant Cloud)
Laaps
https://laaps-records.com/album/a-distant-fire-a-distant-cloud

Courtney Barnett - ele-king

 メルボルンのシンガー・ソングライター、コートニー・バーネットが3年ぶりのニュー・アルバム『Things Take Time, Take Time』をリリースする。現在先行シングルとして “Rae Street” が公開中。彼女らしいオルタナティヴ・サウンドは健在で、ヴァースでの日常の描写を経てからのコーラス、「たしかに時は金なり。でも金は友だちじゃない」にはグッとくる。ほかの曲も気になります。発売は11月12日とまだ少し先だが、楽しみにしていよう。

コートニー・バーネット、ニュー・アルバムを11/12に発売!
第一弾先行シングルとミュージック・ビデオを公開!

■第一弾先行シングル「レイ・ストリート」ミュージックビデオ
https://www.youtube.com/watch?v=NUXvlpS0TvE

[Pre-order + Listen]
https://smarturl.it/CBJP

オルタナティヴ・ロック界を代表するアーティスト、コートニー・バーネットは、3年ぶりの3枚目となるニュー・アルバム『シングス・テイク・タイム、テイク・タイム』(Things Take Time, Take Time)を11月12日に発売することを発表し、早速、第一弾先行シングル「レイ・ストリート」(Rae Street)をミュージック・ビデオと共に公開した。

作曲に2年以上をかけ、その後2020年の終わりから2021年の初めにシドニーとメルボルンでプロデューサー/ドラマーのステラ・モズガワ(Warpaint, Cate le Bon, Kurt Vile)と一緒に録音された『シングス・テイク・タイム、テイク・タイム』は、彼女にとってまたもやブレイクスルーとなる作品となった。これは、彼女が最もクリエイティブでリラックスできた、そしてこれぞまさしくハッピーなコートニー・バーネットと言える作品だ。彼女のプライベートな世界を垣間見ることができ、愛、再出発、癒し、自分自身の新たな発見等々、てらいなくそのようなテーマを扱っている楽曲が収録され、これまでで最も美しく、そして彼女自身にとって一番身近なアルバムとなった。

アルバムのオープニングを飾る第一弾先行シングル「レイ・ストリート」は、現代のスピード社会と対峙しながらも、小さなコミュニティの日常生活が繊細にスケッチされた、穏やかなミッドテンポのエッセイで、美しいトーンを奏でている。 特に以下のフレーズが印象的だ「time is money; and money is no man’s friend」(時は金なりだけど、お金は友達じゃない)。それは決して独りよがりで自己満足な台詞ではなく、コートニーの手による哀愁を帯びた歌詞は、激しく驚くほど生き生きとしている。穏やかに物事を見つめながら行動を起こすことで、日々の何気ない日常の中で失いがちな、人々がお互い触れ合えるような道を切り開いていく。そんな驚くべき叙情的な作品だ。

彼女にとって、人生のとりわけ楽しい時期に録音された、ディープでパーソナルな内容がコラージュのように散りばめられたこのサウンドは、彼女が聞くものに大きな影響力を及ぼす画期的な女性シンガーソングライターであること、その地位が間違いのないものであることを示している。そして彼女の実力が1人のミュージシャンとして、まさに今ピークを迎えようとしており、そして新たなフェーズに入ったことを示すものに仕上がっている。

[前作情報]
https://trafficjpn.com/news/cb/

■商品概要

アーティスト:コートニー・バーネット(Courtney Barnett)
タイトル:シングス・テイク・タイム、テイク・タイム(Things Take Time, Take Time)
発売日:2021年11月12日(金)
品番:TRCP-300 / JAN: 4571260591639
定価:2,400円(税抜)/ 解説・歌詞対訳付
ボーナス・トラック収録
Label: Marathon Artists

Tracklist
01. Rae Street
02. Sunfair Sundown
03. Here's The Thing
04. Before You Gotta Go
05. Turning Green
06. Take It Day By Day
07. If I Don't Hear From You Tonight
08. White A List Of Things To Look Forward To
09. Splendour
10. Oh The Night

+ボーナス・トラック

[Pre-order + Listen]
https://smarturl.it/CBJP

■プロフィール
オーストラリア出身のシンガーソンングライター。自身が設立した〈MilK! Records〉より発売したEP「How To Carve A Carrot Into A Rose」(2013年)は、ピッチフォークでベスト・ニュー・トラックを獲得するなど、左利きのギター・ヒロインから紡ぎ出されたリリカルな作品は世界的な注目を集め、デビュー・アルバム『サムタイムス・アイ・シット・アンド・シンク、サムタイムス・アイ・ジャスト・シット』を2015年3月にリリース。グラミー賞「最優秀新人賞」にノミネート、ブリット・アウォードにて「最優秀インターナショナル女性ソロ・アーティスト賞」を受賞する等、世界的大ブレイクを果たし、名実元にその年を代表する作品となった。2018年5月、全世界待望の2ndアルバム『テル・ミー・ハウ・ユー・リアリー・フィール』をリリース。2019年3月、2度目の単独来日公演を東名阪で開催。同年フジロックフェスティバル’19に出演。2020年2月、地元豪メルボルンでのライヴ盤『MTV アンプラグド(ライヴ・イン・メルボルン)』を発売。2021年11月、3rdアルバム『シングス・テイク・タイム、テイク・タイム』を発売。
https://courtneybarnett.com.au/
https://twitter.com/courtneymelba
https://www.instagram.com/courtneymelba/

Microcorps - ele-king

 聴覚表現というのは、実体のない“音”を見えた気にする幻覚効果もあって、ときに人は視覚的なサウンドなどと言ってみたりするのだが、これはたいてい視覚的イメージの想像を促すという意味で使っている。マイクロコープスのファースト・アルバムを聴いていると、魔獣のごとき迫力をもったエレクトロニック・ミュージックがクローネンバーグの映画さながら暴れ回っているように感じる。しかしながら緊急事態宣言下でオリンピックが開催されるというこの倒錯した現実のなかで暮らしていると、むしろ現実のほうがシュールすぎて、自分の想像力の矮小さが嘆かわしくも感じる。コロナ以降、世界は変わらず不安定なままで、喧々ゴウゴウと情報合戦も続いている。マイクロコープスの迫力ある不気味さは、いまの時代の奇妙な状態を反映しているとも言えるだろう。

 『XMIT』はマイクロコープスのファースト・アルバムだが、作者のアレクサンダー・タッカーは10年以上のキャリアを持つベテランで、〈スリル・ジョッキー〉などから何枚ものアルバムを出している多作の人だ。ただしそのほとんどがロック系に分類されているので、マイクロコープスは彼のテクノ・プロジェクトになるのだろう。テクノといってもこれは、クラフトワークではなくスロッビング・グリッスルのほうに近い。ロボティックでもなければファンキーでもないが、暗喩的で、特異で破壊的な魅力を秘めている。

 その世界は興味深いゲスト陣の名前からもうかがえる。いまやUKでもっともラディカルな電子音楽家のひとりのガゼル・ツイン、デレク・ジャーマン映画のサウンドトラックや〈Mute〉からの作品で知られるサイモン・フィッシャー・ターナー、そしてファクトリー・フロアやカーター、トゥッティ、ヴォイドのメンバーとして知られるニック・ヴォイド、ペーパー・ドールハウス名義でダーク・アンビエントを作っているアストラッド・スティーハウダー。これらゲストが参加した曲には各々の個性が注入され、格別に出来が良い。忍び寄る恐怖を絶妙に描いているガゼル・ツインが参加した“XEM”、異世界における妖美なダンスを展開するニック・ヴォイドとの“ILIN”はとくに印象的で、「H.R.ギーガーの絵画の聴覚表現」ないしは「世界に放棄されたダンスフロア」などという評価がされるのもむべなるかなだ。10年代に〈Blackest Ever Black〉がやっていたことをさらに拡張したというか。

 レーベルはヘルムことルーク・ヤンガー主宰の〈オルター〉、急進的なエレクトロニック作品やポスト・パンク作品のリリースによって評価を高めている。言うなればテクノとパンクのごった煮で、コロナ以降の世界ではより存在感を高めていきそうだ。

interview with 『映画:フィッシュマンズ』 - ele-king

 『映画:フィッシュマンズ』がいよいよ上映される。映画ではバンドの歴史が語られ、ところどころその内面への入口が用意され、そして佐藤伸治についてみんなが喋っている。3時間ちかくもある長編だが、その長さは感じない。編集が作り出すリズム感が音楽と噛み合っているのである種の心地よさがあるし、レアな映像も多かったように思う。また、物語の合間合間にはなにか重要なひと言が挟み込まれていたりする。要するに、画面から目が離せないのだ。
 フィッシュマンズは、佐藤伸治がいたときからそうだが、自分たちの作品を自己解説するバンドではなかった。したがって作品解釈には自由があるものの、いまだ謎めいてもいる。レゲエやロックステディだけをやっていたバンドではないし、なによりも世田谷三部作と呼ばれる問題の3枚を作ってしまったバンドだ。いったいあれは……あれは……佐藤伸治があれで言いたかったことは何だったのだろうか。だから膨大な取材によって作られたこの映画は、解釈に関してのヒントにもなるわけだが、まあしかし、まさかフィッシュマンズの映画が観れることになろうとは思いもよらなかったわけで、そのこと自体考えてみればすごいことです。しかも、現時点ですでに28都道府県36館での上映が決まっている。これはもう、快挙としか言いようがない。作ったほうも上映するほうも。
 それにしても、何故いまこの映画が生まれたのだろう。『映画:フィッシュマンズ』は何を意図して、どんな思いをもって作られたのだろう。映画をプロデュースした坂井利帆氏、監督を務めた手嶋悠貴氏が話してくれた。取材をしたのは3月30日。まだ春先で、上映館も都内ぐらいしか決まっていなかった。フィッシュマンズを求める声や熱気が全国からふつふつと湧きはじめる、まだ数ヶ月も前のことである。

ぼくが知りたいことは、もしかするとフィッシュマンズを聴く多くの人たち、これからフィッシュマンズに出会うたくさんの人たちが知りたいことじゃないかなと。リアルタイムで体感できなかった世代としては、どうやってあの途轍もない音楽が生まれたのかを知りたいという欲求があったんだと思います。

どのようにこのプロジェクトがはじまったのか、ことのはじまりから教えてください。

手嶋:2018年の夏頃に坂井さんと、一緒のプロジェクトをやっていたんです。そのときに「フィッシュマンズってご存じですか?」って訊かれて、「知ってますけど、どうしたんですか?」って答えたら、フィッシュマンズで映画をつくりたいんですけど……ってボソッと言われて。「ぜひやりましょう!」と伝えたんです。それがはじまりですね。

坂井さんが言いだしっぺだったんですか?

手嶋:そうですね。最初は冗談かなって思ったけど(笑)

おふたりはそれ以前からお仕事をされていたんですね。

坂井:はい。もう10年くらいです。私は主に日本で撮影した映像を国内や海外メディア向けに発信する映像制作をしていまして、以前勤めていた会社のプロジェクトで何度もご一緒していたので、監督のお人柄と映像制作の腕は存じあげてましたね。
 2018年の春くらいにフィッシュマンズの映画を作りたいと、本作の企画を思いつきました。口に出すと実現に近づいて夢って叶うんだよっていう話があるように、「私フィッシュマンズの映画を作りたいんだよね」って周りに言いはじめたのがこの頃です。そしたらたくさんのクリエイターの方が、みんなやりたいっておっしゃってくださるなかで、手嶋さんが「ぜひやりましょう」って言ってくださった。フィッシュマンズは私にとって宝物なので、宝物をさらけ出してお預けできる人柄と映像制作の力があるとても信頼できる方でしたし、実際に、映画を実現するための具体的なご提案をいろいろとしていただきました。クラウドファンディングも手嶋さんのご提案でした。そこからは毎日のようにお電話したり、いろいろ相談しています、いまだに(笑)。

3時間という長さを感じさせない出来というか。ぼくは2回観たんですけど、わりとあっという間の感覚で、それは監督さんの編集力のなせる業なんだろうなと思いました。

手嶋:ありがとうございます。僕ひとりの力ではないですけど(笑)。

坂井さんに訊くんですけど、なんで2018年にフィッシュマンズの映画を作ろうと思ったんですか?

坂井:(笑)。そうですよね。91年からフィッシュマンズのファンだったんです。デビュー当時から大好きだったんですよ。もちろん聴かない時期もありましたが、いろいろなときを経て客観的にフィッシュマンズを見たときに、佐藤さんが亡くなられてからも変化し続けている様子やライジング・サンで何万人の観客の前でクロージング・アクトを務めていたりとか、夢のような世界が2018年には広がっていて。

佐藤さんが亡くなって、最初のライヴをSHIBUYA-AXでやったときに公園通り沿いに若い子たちが「チケット譲って下さい」というプラカードを持っている光景を見て、フィッシュマンズってこんなに人気あったんだって(笑)。

坂井:そうなんですよ。クアトロがいっぱいにならないような時代を見ていたので、どんな社会現象が起きているんだろうっていう興味がまずありましたね。しかも、主にソングライティングをされていた佐藤さんが亡くなられて、フロントマンを失くして人気が出るってどういうこと? っていうところからフィッシュマンズのストーリーを感じたんです。
 タイミングとしては、自分のキャリアの過渡期とも重なっていて、映画会社に勤めた経験も経たことで映画という作品コンテンツを表現の場としてすごくビュアで魅力的に感じました。ずっと残っていくものなので。このような経緯で自主映画を作ってみたいと思ったときに、対象となるものは自分の揺るぎない情熱を傾けられるものじゃないといけないと人から言われて。それを自分にとってはなんだろう? と考えたときに、自分にはフィッシュマンズしかなかったんです。

2018年っていう時間は坂井さんのなかでのタイミングだったんですね。

坂井:はい。それを思って、茂木さんにご相談をしたときにちょうど2019年の闘魂2019のライヴを計画されていたんです。茂木さんも佐藤さんが亡くなられて20年の節目のライヴを撮影し、残しておきたいというお気持ちがあって。思いが重なったのが2018年の春だった。それから、茂木さんに手嶋さんを紹介したのが夏ですね。そして、どうすればいまの時代に自主映画を実現できるかを考え「クラウドファンディング」を通じてファンの方たちにお力添えをいただくことにしたのです。

手嶋さんはその話を受けてお返事されたということなんですけど、フィッシュマンズのことは?

手嶋:もちろん知ってました。けど、深くは知らなかったですね。ただ、不思議なバンドという印象を持っていました。フィッシュマンズの音楽は良く聴いていたけど、深く掘り下げるというところまではしていなかったですね。何か触れてはいけないような感覚がずっと無意識に働いていたので。

映画の話を引き受けようと思った理由は?

手嶋:直感です。でも坂井さんから映画の話を受けた後、2週間ぐらいその話題がなくて(笑)。坂井さんに「フィッシュマンズの件どうなりましたか?」って訊いたら、「本当にやってくれるんですか?」って言われて(笑)「本気ですよ」って言った記憶があります(笑)。僕のなかでは、何が起こるかわからないけど絶対やるべきだと。直感で確信していましたので。

そこからフィッシュマンズについてリサーチをはじめるわけですよね。どうでしたか? 手嶋さんのなかでフィッシュマンズというバンドは。もちろんそれは映画で表現していると言ったらそれまでなんですけど。

手嶋:2018年の7月に話をもらって、撮影がはじまるのは2019年の2月なんですけど、2018年の12月くらいまでは、ひたすらフィッシュマンズについて調べていました。自分で一冊の本を作っちゃうくらい。世に出てる書籍や残っている映像を片っぱしに集めて。もちろん、楽曲も毎日聴いて。でも、調べれば調べるほど、フィッシュマンズのことがわからなくなったんですね。しかも佐藤さん、取材とかで本当のこと言わないじゃないですか。いつも嘘をつくというか(笑)。譲さんに聞いて後で知ったんですけど、取材とかで本当のことを話そうとすると佐藤さんから止められたって(笑)、本当のこと言っても面白くないからと(笑)。
 フィッシュマンズの楽曲を聴くとそこに流れている空気や風景が何となく「わかる!」という感覚は、彼らの音楽を聴いたことのある人だと理解してくれると思うのですが、フィッシュマンズを映画で表現する立場としては、それだと何も掴みどころがなくて不安になるというか。本当は掴む必要もないんでしょうけど……、ただ、僕はどうしても知りたかった。あの途轍もない音楽と佐藤伸治の歌詞の世界はどうやって生まれたのかを。だから2018年の12月時点では、映画のタイトルを『フィッシュマンズのすべて』と勝手に付けました。
 ぼくが知りたいことは、もしかするとフィッシュマンズを聴く多くの人たち、これからフィッシュマンズに出会うたくさんの人たちが知りたいことじゃないかなと。リアルタイムで体感できなかった世代としては、どうやってあの途轍もない音楽が生まれたのかを知りたいという欲求があったんだと思います。
 だから、知れば知るほどわからなくなったフィッシュマンズを探しにいくような撮影でしたね。なのでインタヴューは時系列通りにおこないました。例えば茂木さんに明学での出会いからデビューまでの話を訊いたら、そこで出た言葉たちを次は譲さんに訊く。そして譲さんから出た言葉を茂木さんの言葉と合わせて、ハカセさん、小嶋さんにも訊く。もちろん、同じ質問も訊いていきます。そうすることで、各個人が持っている当時のさまざまな風景が見えてくるんです。そのようなやり方で繰り返し繰り返しおこなって、どんどん現在に向かっていくという感じ。インタヴューは1対1なのですが、編集するとあたかも彼らが会話しているような。そのような狙いで撮影をおこなっていました。気づくと撮影期間は1年もかかってしまいましたけど(笑)。

その取材時間が相当かかったんですね。1〜2回ではなくて、その都度その都度。

手嶋:茂木さんをはじめ他のメンバーの皆さん、出演者の方々も相当大変だったと思います(笑)。下手すると朝の10時くらいから夜の22時まで、ずっと、質問攻めにされるわけですから。

坂井:思い出の地とかに閉じ込められてね。

しかもその膨大な撮影から実際に使われるカットってものすごい限られているわけで……大変だったんでしょうね、編集も。

手嶋:ぼくひとりの力だとできなかったですね。

坂井:いまは3時間に収まってますが、その前までは5〜6時間あったんですよ。

手嶋:まずは撮影したインタヴューをすべて文字に起こしてもらったんです。それを構成の和田くんに時系列で並べて欲しいってお願いをしました。和田くんはすでに僕がやりたいことを理解してくれていましたので、かなり助かりました。そして和田くんが纏めてきた言葉たちを編集の大川さんがタイムラインに並べてくれました。それが7〜8時間ぐらいだった記憶があります(笑)。和田くんと大川さんが作業しているあいだ僕は膨大な過去映像をひたすら観て、入れるべき映像を探していました。

坂井:ここで佐藤さんがこういうMC喋ってるとかね。

手嶋:大まかに編集の下準備ができたところで、僕と大川さんで編集作業に入りました。たしか2020年の5月頃だったと思います。初めは7〜8時間あったものを5時間にして、3時間にして、また4時間に戻ってっていうのをひたすら、ふたりでやり続けましたね。ある程度、形になったと思ったら和田くんに確認してもらい、構成の話やアイデアを出し合っていく。そこからまた大川さんと作業して。それをひたすらずっと繰り返して、ようやくできたと思った後に、どうしても僕が入れたい言葉たちがあって、粘りに粘り最終的に編集が終わったのが今年の1月後半でした。

けっこうぎりぎりだったんですね。

手嶋:けっこうぎりぎりでした。ぎりぎりまでやってましたね。

坂井:ありえないぐらいの仕事量でしたよね。頼んだ私が申し訳なくなるぐらいの仕事量で。とにかく、本当に真摯に作品に向かい合ってくださいました。

手嶋:ぼく、2回も倒れているので。

え? 

手嶋:ひたすらフィッシュマンズと向かいあってたら、編集しながら頭がおかしくなってきたりして。どんなに向き合っても正しい答えなんてないじゃないですか。でも、クラウドファンディングでファンの方から頂いたチャンスでもありますし、茂木さんとも「これが最初で最後。嘘偽りなく、フィッシュマンズのすべてを話す」という約束をしていましたので、みなさんに対しても自分に対しても絶対に後悔させる形にはしたくないというか。
 そのなかで、プロデューサーの坂井さんから尺は2時間くらいで収めないと上映回数の問題も出てくるので、せめて2時間半尺でお願いしますと。これは当然のご意見なんですけど、2時間半にまとまるわけがないっていうのがぼくの思いで。勝手にいろいろ追い込まれていましたね。当時は(笑)。

坂井:そこは本当に難しい課題でした。とても大きな課題でしたね。

2時間でまとめられなかった理由はなんでしょう?

手嶋:撮影で茂木さん含めてみなさんからいただいた本当の言葉たちを2時間で収められる自信がぼくにはなかった。誤魔化して、ちょっとおもしろい感じにまとめた2時間の映画にしちゃうと絶対にフィッシュマンズを裏切ってしまう。勝手にぼくが責任を感じているだけかもしれないんですけど、誤魔化してはいけないという思いが強かったんだと思います。それで、2本立てにしてはどうだろうかとかいろいろ考えたりもしたんですけど(笑)、それもなんか違うかなと。で、坂井さんに「ごめん。もう2時間無理! なんとか3時間でいけないかな?」って相談をして。

なるほど。そぎ落として、編集して、そのぎりぎりが3時間になったと。

坂井:ぎりぎりまで200分(3時間20分)でしたもん。もう、頼むよって(笑)。ようやく3時間に収まったのは、昨年の12月くらいです。映画の興行を考えると3時間以上というのは非常に難しいということもあるのですが、それよりも元々、フィッシュマンズの映画を作るという話を茂木さんとしたときに、いまは海外でもフィッシュマンズが注目されているので、映像というコンテンツにして英語に翻訳をすることで、新しい人たちにフィッシュマンズを届けることができるのではないかと話していたのです。映画という映像作品にすることで、広げられることが絶対あると思っていたし。元々そういう思いを持ってはじめたプロジェクトだったので、尺が3時間以上になるという話をもらったときにはすごく悩みました。自分が海外の全然知らないバンドの3時間ドキュメンタリーを観るというのは、すごくハードルが上がってしまうので。
でも、手嶋さんも編集の大川さんも、真摯に映像素材と向き合って3時間の尺がないと伝えきれないとおっしゃっていたので。お二人がそこまで仰いているものを、決まった枠(尺)に当てはめようとすると、よい結果にならないことは明確でした。誠実に向きあっているからこそナレーションを入れて省略すようなことはいっさいしないというのは最初から監督がこだわっていましたし。だから、もう私は黙るしかないと(笑)。最後は納得しました。それでも3時間は切って欲しいうところは最後にお願いしましたけど。

ナレーションを使わなかったのでなんでなんですか?

手嶋:ぼくが単純に嫌いだから。作為的なものに感じてしまう。仕事ではよく使いますけど、ナレーションを使うとまとめるのがすごく早い。ただそうするとすごく作為的になって、コントロールしちゃう。コントロールしちゃうと、今回フィッシュマンズをはじめた最初のコンセプトから逸脱してしまうというか。主役は彼らなので。もちろん佐藤伸治という絶対的な存在がいるんですけど、そこに第三者の声を入れると完全にフィクションになってしまうのでそれは絶対にやりたくないなって頑なに決めてた。

坂井:ナレーション抜きで90分に収める、そしてすべてを語り尽くすっていのは物理的に無理ですよねって。

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調べれば調べるほど、フィッシュマンズのことがわからなくなったんですね。しかも佐藤さん、取材とかで本当のこと言わないじゃないですか。いつも嘘をつくというか(笑)。譲さんに聞いて後で知ったんですけど、取材とかで本当のことを話そうとすると佐藤さんから止められたって(笑)。

フィッシュマンズの描き方って時代背景もあるし、いろんな描き方があると思うんですけど、今回はバンドのインサイドストーリーに徹していますよね。それはまずは監督ご自身がバンドのことを知りたいと思ったというのがモチベーションだったということですが。

手嶋:そうですね。あとは10年後20年後にフィッシュマンズを知った人たちがフィッシュマンズのメンバーたちはどういう人たちだったんだろうか、あの途轍もない音楽はどうやって生まれたのだろうか、ってことをピュアな気持ちで掴めるヒントになればと。残すべき音楽ですし、ぼくら世代よりもまだ先の世代の方々にも聴いて欲しい音楽ですので。

例えばフィッシュマンズは90年代のバンドだし、90年代の東京の風景を出すという手もあったと思うんです。いろんな事件もあったし、そういうことをやらなかったのはなにか理由があってですか?

手嶋:最初から頭になかったですね。ぼく自身も90年代を生きてた人間ですけど。今回はフィッシュマンズという人たち、彼らの音楽を描くことだけに集中したかったんです。インタヴューを重ねながら気づいたのですが、みなさん佐藤さんのことを探していて。こちらから敢えて質問しなくても佐藤さんの話をしてくださるんですよね。僕も佐藤伸治をずっと探し続けてました。でも、それは言葉に出して大きく言えない空気というか、ムードというか。だから佐藤さんをみんなで見つける映画でもありつつ、同時に彼らがどのように音楽を作ってきたかっていうことを描けば、90年代の風景も自ずと見えてくるんじゃないかなと思いました。フィッシュマンズの音楽のようにこちらもストイックにやらないと。茂木さんにも「遠慮しないで、やりたいようにやっていいんだよ、フィッシュマンズはそんなに綺麗なバンドじゃないんだから、手嶋くんが思うようにやってくれたら」って背中を押されたのも心強かったですね。

なるほど。佐藤伸治がどんな人間だったのかが浮かび上がるような作品になっているのかなと思います。彼のニヒリスティックなところも垣間見れるとぼくは思ったし、よしもとよしとも君は青春映画として観ることもできるみたいなことを言ってましたけどね。

坂井:嬉しいですね!

手嶋:そういう見方もあるんですね。

バンドのひとつの青春。それはひとつの見方としてまっとうな見方ですよね。大学生のサークルのなかで生まれたバンドが世のなかに揉まれていってっていう成長物語じゃないですけど、そういう要素がありますよね。

坂井:それはすごく嬉しいです。観る人たちがいろいろと感じて欲しいですからね。こういうものっていうことをこちら側から発する作品であるべきではないと思っているので。

ぼく個人としては、『空中キャンプ』以前の映像を観れたのがすごく嬉しかったですね。観たことなかったから。

坂井:“MY LIFE”とかすごくないですか?

ところどころにああいう貴重な映像がありますね。ただもっとも驚いたのは、欣ちゃんが高校生じゃないかくらいに見た目が若かったっていうことですけどね(笑)。

坂井:本当に(笑)。

それに佐藤伸治のノートが出てくる場面も良かった。とくに、「わかりづらいことをわかりやすくする」という言葉がさりげなく出てくる。手嶋監督さんの意図としてはどういう風に物語を見せようと思われたんですか? 

手嶋:“ゆらめき IN THE AIR”を最後に使うことだけは決めていました。あとは、フィッシュマンズが結成から現在に至るまでどのように歩んできたのかという軸と、佐藤伸治はどういう人間だったのかという軸を融合させるかだけ考えていました。佐藤さんも言っていましたけど、「10年後20年後も聴ける音楽を俺はやっているつもりだ」って。実際に10年後20年後も聞ける音楽の力。それに目を背ける事なく映像で紡いでいけば、必然とフィッシュマンズの映画になるんじゃないかと。だから、作為的に何かやってやろうというよりは、とことんフィッシュマンズと向きあっていくことだけをやってきたという印象です。

もしぼくが作るとしたら『空中キャンプ』を特別視したろうから。『空中キャンプ』の曲をもっとかけて欲しいと思ってしまうくらいだから(笑)。

坂井:“BABY BLUE”とかはちょびっとだからね。あれじゃ物足りないわけですよね(笑)。

そう! あれはもっと聴きたかった(笑)。

坂井:“BABY BLUE”は名曲ですからね……。

あれはファンが一番好きな曲のひとつだから!

坂井:(笑)。スタッフみんながそれぞれに思い入れのある曲を持っているので、「“ずっと前”は入らないんですか?」とか、編集途中でスタッフに訊かれることもありました。それぞれみんなが思い入れがあるから。それを受け止める監督は大変だったと思います。

ファンの思い入れの強いバンドだから、それは大変ですよ。だけどぼくは“Long Season”のところで奥多摩にロケに行ったところは感動しまたよ。あのシーンはクライマックスとしてあまりにもよくできすぎてるというか。

坂井:雨降ってね(笑)。

しかも、橋が壊れてて雨降ってて。

手嶋:あれは本当に皆さんにご迷惑をおかけしたというか。

坂井:譲さんと奥多摩に行くっていう日の前日に台風あったんです。地元の役場の方に、濁流がすごいので撮影なんかできませんと言われてしまって。それで撮影を1ヶ月伸ばしたんです。満を持して望んだ再撮影で、さらにまた雨ですっていう。でもやるしかない。譲さんも嫌がってました。「ぼくここ苦手なんだよね」と言いながら。撮影前にも、一回中止になっているし、濁流を心配するくらいなら「もう、代々木でいいじゃない?」とか、ご提案をいただいたりしたのですが。監督が奥多摩にこだわったんです。監督の狙いです。

すごい(笑)。

手嶋:あれは自然とそういう流れになっただけですよ(笑)。単純に譲さんに重要なことを訊きたかったから、雨であろうが、あの場所に行って話をしてもらいたかった。まあ雨と寒さで無理させてしまう形になってしまいましたけど(笑)。でも、あの撮影が終わったあとに譲さんから「ここまでやってくれたから、ここまで喋れたし、1日〜2日で終わるようなものでもなく、しつこく何度も付き合ってくれたから、安心したよ、本当に感謝しかないよ」と言っていただけたのは、忘れられないですね。

あのシーンはグッときましたね。また、奥多摩のシーンの映像の色味がすごく綺麗でした。『Long Season』のジャケットそっくりというか。

手嶋:あの場所を見つけるのがすごく大変でした。(マネージャーだった)植田(亜希子)さんも憶えてなくて。植田さんに「ここです!」と言われて、グーグルマップで見たら違ったんです。だから自分で探して、撮影日の朝早くに撮影部を連れて、豪雨のなか、ぼくが見つけていた場所をロケハンしたんです。それでやっとあの場所(※ジャケットに写っている場所)を見つけて撮影出来た。後から分かったんですけど、『LONG SEASON』の撮影で奥多摩に2回行ってるんですよフィッシュマンズ。1回目はジャケットの撮影で、もう1回はヴィデオ撮影で。もう昔のことなのでみなさん記憶が曖昧になるのは仕方ないですよね。

坂井:でも、ジャケットにも写っている同じあの岩がいまもあったのはすごいですよね。

では最後に、もういちどあらためて訊きます。佐藤さんが亡くなってからさらにバンドの名前が大きくなった。これは映画を作らなければと思ったと。これは、もっと言うと、どういうことでしょうか? まだ知らない人たちに向けて、作らないといけないと思ったということ?

坂井:実際の佐藤さんのステージを観たことがない世代の人たちに知って欲しいという気持ちもありましたし、サブスクが浸透した現代で、海外に音が届いてる状況を客観的に見て、フィッシュマンズをより多くの方に発掘してもらうきっかけに、映画がなると思いました。

フィッシュマンズをまだ知らない人たちにも、こういうバンドだったんだよと教えてあげたいと?

坂井:映画を作る上で恐怖というか心配はありました。最初の頃に茂木さんと植田さんに映画のご相談をしたときに、もしかしたら、いままで作り上げてきたものを壊してしまうかもしれないけど良いですか? と確認をしました。いままでおふたりが作りあげて、人気が出てきたものを壊してしまう可能性があるかもしれないけどいいですか? と訊いたんです。そこで言われたのが、「いいんだよ。フィッシュマンズは元々売れないバンドだったんだから、壊すものなんて何もないよ、そこには」と。これですごく気持ちが軽くなった。そこから、「よしっ作ろう!」って覚悟を決めたんです。

なるほど。

坂井:フロントマンを失くしてもバンドを続けるのはよっぽどのことじゃないとやらないじゃないですか。それを茂木さんが実際にやられていて、さらにそれによってファンがすごく増えている。もちろんフェスが増えている等の背景もあるんですけど。それにしてもこの現象はいったい何なんだろう? きっとそこには何らかの理由があるだろうと。

不思議ですよね。ぼくもこの前の闘魂に行って思ったんですけど、客層が若いんですよ。

坂井:そう!

リアルタイム世代がもっといるのかと思ったら、若い子ばかりなんですよ。特殊ですよね。

坂井:わたしの記憶のなかのフィッシュマンズは知る人ぞ知るバンドというイメージのまま。ところが、先日この映画の試写会を開催した際に会場前に貼られたポスターを見て、20代くらいの、いまどきのおしゃれな女の子3人組が「あれぇ〜フィッシュマンズやってんだ〜」って話している現場を目撃しちゃったんです。とても驚いてしまって。

それはすごい(笑)。

坂井:すばらしいことだと思ったんですけど、そこにあらためて不思議なものを感じました。もちろん茂木さんの思いとか、植田さんやメンバーの方の頑張りは絶対的にあるんですけが、それだけじゃない何かがあるんです。フィッシュマンズの音楽には。そしてきっといまの世のなかにも必要とされているものなんです。なので、この音楽の背景にあるストーリーを伝えたいし、映画を通じて伝えられることがあるじゃないかなぁと映画の可能性を楽しみにしています。映画をきっかけにさらに音楽に興味を持っていただけたら嬉しいですし。もちろん海外の人にも届けたいし。とにかくこのまま色褪せていくべき音楽ではない。

けっきょく映画のタイトルを『映画:フィッシュマンズ』にしたのは変化球はいらないなっていうことですか?

手嶋:ぼくのわがままでそうさせてもらって。このタイトル以外、絶対にないという感じというか。茂木さんにもタイトルは「フィッシュマンズ」でいかせてもらいますってお伝えして、「わかった!」って(笑)。この映画は「フィッシュマンズ」です。

(3月30日、渋谷にて)

【あらすじ】
90年代の東京に、ただ純粋に音楽を追い求めた青年たちがいた。彼らの名前は、フィッシュマンズ。プライベートスタジオで制作された世田谷三部作、ライブ盤『98.12.28 男達の別れ』をはじめ、その作品は今も国内外で高く評価されている。

だが、その道のりは平坦ではなかった。セールスの不調。レコード会社移籍。相次ぐメンバー脱退。1999年、ボーカリスト佐藤伸治の突然の死……。

ひとり残された茂木欣一は、バンドを解散せずに佐藤の楽曲を鳴らし続ける道を選ぶ。その想いに仲間たちが共鳴し、活動再開。そして2019 年、佐藤が世を去ってから20年目の春、フィッシュマンズはある特別な覚悟を持ってステージへと向かう――。過去の映像と現在のライブ映像、佐藤が遺した言葉とメンバー・関係者の証言をつなぎ、デビュー30周年を迎えたフィッシュマンズの軌跡をたどる。

佐藤伸治 茂木欣一 小嶋謙介 柏原譲 HAKASE-SUN
HONZI 関口“dARTs”道生 木暮晋也 小宮山聖 ZAK
原田郁子(クラムボン) UA ハナレグミYO-KING(真心ブラザーズ) こだま和文

監督:手嶋悠貴 企画・製作:坂井利帆
配給:ACTV JAPAN/イハフィルムズ
2021/日本/カラー/16:9/5.1ch/172分     
©2021 THE FISHMANS MOVIE

<公式HP> https://fishmans-movie.com
<公式Twitter> https://twitter.com/FishmansMovie
<公式Facebook> https://www.facebook.com/fishmansmovie
<公式Instagram>https://www.instagram.com/fishmansmovie/

7月9日(金)より全国公開
以下、現在上映が決まっている都道府県/劇場です。

都道府県劇場名公開日
東京新宿バルト97月9日(金)公開
東京渋谷シネクイント7月9日(金)公開
東京アップリンク吉祥寺7月9日(金)公開
東京池袋シネマ・ロサ7月9日(金)公開
東京T・ジョイPRINCE品川7月9日(金)公開
神奈川横浜ブルク137月9日(金)公開
千葉T・ジョイ蘇我7月9日(金)公開
大阪梅田ブルク77月9日(金)公開
京都T・ジョイ京都7月9日(金)公開
京都アップリンク京都7月9日(金)公開
福岡T・ジョイ博多7月9日(金)公開
石川シネモンド 7月10日(土)公開
愛知センチュリーシネマ7月16日(金)公開
宮城チネ・ラヴィータ7月16日(金)公開
鹿児島鹿児島ミッテ107月16日(金)公開
大分 別府ブルーバード劇場 7月16日(金)公開
群馬 シネマテークたかさき 7月17日(土)公開
長野 上田映劇 7月17日(土)公開
富山 ほとり座 7月17日(土)公開
広島 サロンシネマ7月23日(金)公開
北海道サツゲキ 7月23日(金)公開
福島 フォーラム福島7月23日(金)公開
山形 フォーラム山形7月23日(金)公開
沖縄 桜坂劇場7月24日(土)公開
愛媛 シネマルナティック7月24日(土)公開
大分 日田シネマテーク・リベルテ 7月26日(月)公開
栃木 小山シネマロブレ7月30日(金)公開
熊本 Denkikan7月30日(金)公開
佐賀 シアターシエマ8月6日(金)公開
静岡 静岡シネ・ギャラリー 8月14日(土)のみ上映
新潟 シネ・ウインド8月14日(土)公開
栃木 宇都宮ヒカリ座8月20日(金)公開
長崎 長崎セントラル劇場8月27日(金)公開
東京 立川シネマシティ近日公開
岩手 盛岡ルミエール近日公開
宮崎 宮崎キネマ館近日公開

【配給に関するお問い合わせ】
イハフィルムズ contact@ihafilms.com

【宣伝に関するお問い合わせ】
とこしえ info@tokoshie.co.jp

Drum-On vol.1 - ele-king

ドラム/パーカッションを愛するすべての人へ

ドラムの機材や演奏のノウハウなど、YouTube をはじめネット上には数しれない多くの情報が存在しますが、一方でその内容は玉石混交。信憑性の疑わしいものも少なくありません。

そんな中で満を持して登場する本誌は、「リズム&ドラム・マガジン」(リットーミュージック)の元編集長、大久保徹氏の発起のもと、こちらもかつて同誌編集長を務め現在はドラマーとしても活動する小宮勝昭氏も協力・参加する形で制作。「最もプリミティブな楽器」であるドラム&パーカッションの無限の可能性と演奏する楽しさを伝える本格的プレイヤー向け雑誌です。

創刊号では巻頭のフォト&インタビュー特集「ドラムと音楽」にグラミー賞アーティストの小川慶太(スナーキー・パピー)、ブロードウェイ~自らの音楽を発信するカーター・マクリーン、〈ECM〉からのソロアルバムも話題の新鋭・福盛進也が登場。

ほか、現在大きな盛り上がりを見せるUKジャズのドラマー&パーカッショニストの紹介、一流ドラマーたちの知られざる「スネアの裏側」に迫る企画、ドラミング・メソッド “ルーディメンツ” の最新型解説、リンゴ・スターに学ぶ音楽的ドラム力の徹底分析(前編)、ドラム職人の匠の現場訪問、いまドラマー&パーカッショニストが聴くべきディスクガイドなどを掲載。

ドラマー&パーカッショニストをわくわくさせ、やる気にさせるアーティスト、機材、奏法・ノウハウが満載、新時代の本格的プレイヤー向けメディアです。

目次

■特集 ドラムと音楽
feat.
小川慶太 Keita Ogawa
[スナーキー・パピー、ボカンテ、カミラ・メザ&ザ・ネクター・オーケストラ、チャーリー・ハンター、セシル・マクロリン・サルヴァント、バンダ・マグダ、他]
カーター・マクリーン Carter McLean
福盛進也 Shinya Fukumori
……取材・文:小宮勝昭

■サウス・ロンドンを中心に巻き起こるグルーヴ革命――UKジャズのサウンド&リズム
feat. モーゼス・ボイド
……文:小川充、大久保徹

■NIPPON のドラムの匠 第一回
Negi Drums 根木浩太郎さん
……取材・文:小宮勝昭

■ドラマーのここに注目 スネアの裏! “音色・響きの要”、その秘密が知りたい
Ⅰ 裏の基礎……文:小宮勝昭
Ⅱ プロの裏を拝見!(アンケート)
阿部耕作、尾嶋優(Jimanica)、江口信夫、大坂昌彦、岡部洋一、神谷洵平、河村 “カースケ” 智康、北山ゆう子、白根佳尚、小関純匡、椎野恭一、高橋結子、本田珠也、沼澤尚、藤掛正隆、みどりん、平里修一、屋敷豪太、マシータ、山本達久、松下マサナオ、山本拓矢、芳垣安洋、三浦晃嗣
Ⅲ 裏の顔、スネア・ワイヤーを試す! カノウプス・スネア・ワイヤー8機種・徹底検証!……文:小宮勝昭

■もはや “音楽” なドラミング・メソッド ルーディメンツが知りたい!
……文:春日利之

■リンゴ・スターに学ぶ、音楽的ドラム力【前編】
ワン・アンド・オンリーな音色と奏法 グルーヴ&スウィングを検証
……文:小宮勝昭

■レコーディング・スタジオ探訪 GOK SOUND
……文:藤掛正隆

■東南アジアの果てにある “リズムの不思議” ミャンマー音楽の打楽器とリズム
……文:田中教順

■厳選・必聴の作品ガイド ドラマー&パーカッショニストが聴くべき音楽
現代の “ロック” を創るドラミング……選・文:大久保徹
60~70年代ドラマーたちに影響を及ぼした古(いにしえ)の録音……選・文:三浦晃嗣
ジャズ・ドラミングの変遷……選・文:大坂昌彦
現代を代表するゴスペル・チョッパーたち……選・文:柴田亮
ドラマー/パーカッショニストによる必聴のリーダー作……選・文:芳垣安洋
レコードで聴きたいソウル&ファンク……選・文:藤掛正隆
今も進化するブラジルのドラマー/パーカッショニスト……選・文:中原仁
キューバ音楽……選・文:Izpon
ダンス/エレクトロニカ……選・文:尾嶋優(Jimanica)
フリー・インプロヴィゼーション/実験音楽……選・文:細田成嗣

編集者略歴
◆大久保徹
2005年よりリズム&ドラム・マガジン編集部に在籍。2012年4月~2014年3月まで同誌編集長を務める。現在、音楽書を中心としたフリーの編集者/ライターとして活動。

◆小宮勝昭
大学卒業後つのだ☆ひろ氏に師事。1994年よりリズム&ドラム・マガジン編集部に、2001年1月~2012年3月まで同誌編集長を務める。現在は音楽家としても活動中。


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Moor Mother - ele-king

 フィラデルフィアのムーア・マザー、最近はサンズ・オブ・ケメット新作ザ・バグ新作への客演が話題だが、ここへきて本人のアルバムの登場だ。
 今回はなんと、〈Anti-〉からのリリース。現在新曲 “Obsidian” が公開されており、ここでムーア・マザーはなんと、ヒップホップに挑戦している。招かれているのは、いまもっとも注目すべきラッパーのピンク・シーフ。トラックもめちゃくちゃかっこいいです。そしてなんと(三度目)、MVはアリス&ジョン・コルトレーンの家の前で撮影──なるほど、それがメッセージだと。

 こちらは、もう少し前に公開されていた “Zami” のMVです。

 9月17日にリリース予定のアルバム『Black Encyclopedia of the Air』、これは今年の必聴作の匂いがぷんぷん。試聴はこちらから。

詩人、ミュージシャンの MOOR MOTHER がニュー・アルバム『BLACK ENCYCLOPEDIA OF THE AIR』を9月17日に〈ANTI-〉よりリリースすることを発表! PINK SIIFU をフィーチャーした新作アルバムからの先行曲 “OBSIDIAN” とアリス&ジョン・コルトレーンの家の前で撮影されたミュージック・ビデオを公開!

屠殺場の床板の間から花が咲くように、Moor Mother の音楽は、暴力的で耐え難い現在を超越する ──The Fader

フィラデルフィアを拠点に活動する詩人でありミュージシャンの Moor Mother こと Camae Ayewa は、ニュー・アルバム『Black Encylcopedia Of The Air』を9月17日にリリースすることを発表。記憶や刷り込み、未来についての13の魅惑的なトラックが、未だ手つかずの空間を漂い、束縛されず、未知の領域、広大な宇宙へと広がっていく。

新曲 “Obsidian” について、Moor Mother は、この曲は現代に存在する様々な危険性について歌っていると語っている。「暴力の身近さ、家庭内の暴力、コミュニティーにおける暴力について考えています」。ラッパーの Pink Siifu をフィーチャーしたこの曲の新しいビデオの視聴はこちら。

監督の Ari Marcopoulous は、「アリスとジョン・コルトレーンの家の前でビデオを撮影することにした。それ自体が物語っていると思う。望むならもっと詳しく説明してもいい。でも、そこには精神が宿っているんだ」とコメント。

パンデミックが始まった2020年3月に自宅で録音された『Black Encyclopedia Of The Air』は、Moor Mother とサウンドスケープ・アーティスト兼プロデューサーの Olof Melander の傑作となっている。Moor Mother の他のリリースと同様に、多数の楽器と声が重なり、奇妙で未知のものを作り上げている。

Moor Mother は先月、影響力のある黒人・クィア作家の Audre Lorde の著書にちなんで名付けられたトラック “Zami” を公開した。“Zami” のミュージック・ビデオはこちら

『Black Encyclopedia of the Air』

01. Temporal Control Of Light Echoes
02. Mangrove (feat. Elucid & Antonia Gabriela)
03. Race Function (Feat. Brother May)
04. Shekere (Feat. Lojii)
05. Vera Hall (Feat. Bfly)
06. Obsidian (Feat. Pink Siifu)
07. Iso Fonk
08. Rogue Waves
09. Made a Circle (Feat. Nappy Nina, Maassai, Antonia Gabriela & Orion Sun)
10. Tarot (Feat. Yatta)
11. Nighthawk Of Time (Feat. Black Quantum Futurism)
12. Zami
13. Clock Fight (Feat. Elaine Mitchner & Dudu Kouate)

国内総合窓口:Silent Trade GK
販売元:アライアンス

https://www.moormother.net/
Instagram | Facebook | Twitter

Jamie Branch - ele-king

 注目しておきたいジャズ・トランペッター/作曲家を紹介しよう。彼女の名はジェイミー・ブランチ。ロングアイランドのハンティントン出身で、音楽家としてはシカゴやボルティモアなどで活躍。昨年のロブ・マズレク作品にも参加している。
 2017年のデビュー作『Fly Or Die』で一気に名をあげ、数々のライヴをこなしてきた彼女による、初のライヴ盤が8月4日にリリースされる。ホットなのにクール、まさに「冷静と情熱のあいだ」といったプレイで……ぜひ一度聴いてみて。

jaimie branch
FLY or DIE LIVE

センセーショナルなサウンドに、海外各紙を賑わせるトランぺッター、ジェイミー・ブランチのライブ盤。 2017年の1st『FLY or DIE』と、2019年にリリースされた2nd『Fly Or Die II: Bird Dogs Of Paradise』の楽曲が多数収録された2枚組のヴォリューム。スタジオ録音では感じられない熱気と咆哮とも言えるボーカル、トランペットが心揺さぶるライブ音源を、16分に及ぶ未発表のボーナストラックを加え、日本限定盤ハイレゾMQA対応仕様の2CDでリリース!!

Official HP : https://www.ringstokyo.com/jaimiebranchfodl

ジェイミー・ブランチは、いま最も力強く、感情を揺さぶる音楽を作り出せるミュージシャンの一人だ。このライヴ・アルバムには、彼女の評価を一段と高めたヨーロッパ・ツアーから、スイス、チューリッヒのジャズクラブでの素晴らしい演奏とオーディエンスの熱気が記録されている。時々ヴォーカルも取る彼女が、トランペットで表現するダイナミズムと優しい囁きは、驚くほど美しい。そして、複雑なビートを易々と繰り出すドラマーのチャド・ テイラーらとのコンビネーションも最高だ。(原 雅明 rings プロデューサー)

アーティスト : Jaimie branch (ジェイミー・ブランチ)
タイトル : FLY or DIE LIVE (フライ・オア・ダイ・ライヴ)
発売日 : 2021/8/4
価格 : 3,200円+税
レーベル/品番 : rings / International Anthem / Plant Bass (RINC79)
フォーマット : MQACD (日本企画限定盤) 2CD

Tracklist :

DISC-1
01. birds of paradise
02. prayer for amerikkka pt. 1 & 2
03. lesterlude
04. twenty-three n me, jupiter redux
05. reflections on a broken sea
06. whales
07. theme 001
08. ...meanwhile
09. theme 002
10. sun tines

DISC-2
11. leaves of glass
12. the storm
13. waltzer
14. slip tider
15. simple silver surfer
16. bird dogs of paradise
17. nuevo roquero estéreo
18. love song
19. theme nothing
20. prayer for amerikkka pt. 2 - solo belfast edition (unreleased)(Bonus Track)

Susumu Yokota - ele-king

わたしが言う、一輪の花! と。すると、声が消えればその輪郭も消える忘却の外で、具体的な花々とは違う何かが、音楽として立ち昇る、観念そのものにして甘美な、あらゆる花束には不在の花が。
──マラルメ「詩の危機」渡辺守章訳

 あとになって「発見」された日本の環境音楽やシティ・ポップとは異なり、横田進は『Sakura』以降、海外ではずっとリアルタイムで評価されつづけてきた。死後もその気運が途絶えることはなく、2019年には『Acid Mt.Fuji』(1994)がアナログ化され、〈Leaf〉からは『Sakura』(1999)が再プレス、未発表音源集『Cloud Hidden』も〈Lo〉からリリースされている。同年〈Lo〉は、ほかの音楽家たちに横田の音楽を解釈させるメモリアル・イヴェントを開催してもいる。
 その影響はつくり手にも及んでいて、たとえば日本では食品まつりが横田進の作品から刺戟を受け、制作の参考にしているという(ただいまインタヴュー準備中)。とくに『Symbol』が大きかったそうだ。横田にとってちょうど30枚めのアルバムである。初出は2004年。
 どこかで耳にしたことのあるクラシック音楽の旋律がつぎつぎとあらわれては消え、通りすぎていく──さらっと聴き流すだけであればモダン・クラシカルの一種として消費できてしまうかもしれないが、しかしこのアルバムはいわゆるモダン・クラシカルの作品ではない。

 横田進は個人的には『Sakura』の印象が強いので、あの落ちついた音響をものした彼がこれほど騒がしいクラシック音楽のコラージュ作品を残していたことに驚く。ライナーノーツによれば、彼は本盤の制作中、意外なことにムーディマンの『Silence In The Secret Garden』(2003)と『Black Mahogani』(2004)を聴きこんでいたのだという。独自の切り口でソウルやファンクをサンプリングし、デトロイトのエレクトロニック・ミュージックに新たな局面をもたらしたケニー・ディクソン・ジュニア━━それとおなじことをクラシック音楽で実践しようとしたのがこの『Symbol』だ。
 それは時代的にも先を行く試みだった。テクノのアイディアでムソルグスキーとラヴェルをカット&ペーストし再構築してみせた、カール・クレイグ&モーリッツ・フォン・オズヴァルドによる『ReComposed』が2006年。横田はそれより2年早い。

 まずは3曲め “Traveler In The Wonderland” を聴いてみてほしい。ヴァイオリン初学者であればかならず弾くことになるだろうボッケリーニ「メヌエット」の冒頭を「えっ、そこで!?」と驚愕する箇所で切り落とし、残りは潔くごみ箱へとぽい。それだけでじゅうぶん大胆なのだけれど、横田はその残骸をサン=サーンス「サムソンとダリラ」の “バッカナール” とかけあわせ、さらに中盤から「動物の謝肉祭」の“水族館” をぶちこんでくる。これぞサンプリングの醍醐味だろう。
 とはいえ一見無節操に映る素材の切り貼りも、じつはビートを尊重すべく丁寧に処理されている。最良の証左は12曲め “Symbol Of Life, Love, And Aesthetics” で聴くことができる。同曲では中盤、ヘンデル「オンブラ・マイ・フ」にべつのヴァイオリンがつぎ木されているが(これなんだっけ?)、その音符の隙間には、リズムを調整するためにほんのかすかな余白が与えられているのだ。この間の打ち方には、正直鳥肌が立った。

 なぜ彼はこのようなアルバムをつくったのだろうか。横田はたんにサンプリングの教科書としてムーディマンを参照したのではない。編集長によれば彼は、ムーディマンのファンキーな部分や怒りにではなく、その音楽がときおり見せる、崇高とも言える美に惹きつけられていたのではないか、と。
 興味深いのは、ライナーノーツで横田が「象徴主義ということを意識して作った」「僕がやってきたことは象徴主義的だった」と明かしている点だ。

 象徴主義とはなにか。暴力的に単純化して言えば、異化効果である。「ハトは平和の象徴」がわかりやすいが、本作でいえば、アートワークに使用されたウォーターハウスのニンフは一般的に、性欲や誘惑を暗示するものと解釈されている。ある具体的なものを、それそのものとしてではなく、なにかをほのめかすものとして捉えることにより、通常では到達不可能な領域へ到達しようとする試み。ヴェルレーヌにもランボーにもマラルメにも共通しているのが、その暗示的な想像性だ。
 素材は神話上のものでなくとも構わない。たとえば、花。それを、現実に咲く花それ自体として表現するのではなく、「艹」「化」という視覚的情報や「ハ」「ナ」という音声効果のレヴェルで捉え返し、ほかの字や音と並べたり組み合わせたりすることで想像を刺戟、現実に咲く花とはべつの観念的なものを喚起する。そのようなプロセスを経て美に接近しようとする試みが象徴主義だ。だからこそそれは、個人の感情をぶちまけるロマン主義とも、「ありのまま」の世界を模倣しようとする自然主義/写実主義とも異なる、美へのオルタナティヴな到達手段たりえたのだった。

 横田が大量のクラシック音楽をサンプリングしたのも、異化効果を狙ってのことだろう。ドビュッシー、マーラー、ライヒ……と、素材自体に一貫性はない。それらをもとの文脈から引き剥がし、巧みにビートと共存させることによって横田は、新たな美を描こうとしているのだ。
 彼はライナーノーツのなかで「ぼくは美を求めていてそれを音楽で表現している」と語っている。気になって前後の作品を聴いてみたが、『Symbol』は明らかに異色だ。『Sakura』や『Love Or Die』(2007)のようなエレクトロニック・リスニング・ミュージックではないし、ダンスに寄った『Zero』(2000)や『Over Head』(2003)、ヴォーカリストを招いた『Wonder Waltz』(2006)ともまるでちがう。すなわち本作は、それらの手法では接近することのできない美を表現しようとした試行錯誤の記録であり、実験だったのだ。
 象徴主義は、その試みの純粋さゆえ、日常や世俗の常識から遠ざかる側面も持っていた(じっさい、ヴェルレーヌは破滅的な人生を送り、逆にランボーは早々に断筆し世俗化、商人にジョブチェンジしている)。そのような世俗からの離脱は、まさに横田の活動が体現しているものでもある。だから、クラシック音楽の断片と戯れる厭世的な本作が、コロナ以降の絶望的な時代、この見るに耐えない政治状況下でリイシューされたことは、とてもタイムリーだと言える。欲しいのはワクチンでもメダルでもない。美だ、と。

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