ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. オールド・オーク - THE OLD OAK
  2. interview with The Lemon Twigs ロック/ポップスの素晴らしき忘れ物 | ザ・レモン・ツイッグス、インタヴュー
  3. Xylitol - Blumenfantasie | キシリトール
  4. インディ・シーンに広がるヴァイラル・マーケティング
  5. interview with Dolphin Hyperspace ジャズの時代、イルカの実験 | 話題のドルフィン・ハイパースペース、本邦初インタヴュー
  6. Wendell Harrison with the Tribe Jazz Ensemble ──スピリチュアル・ジャズの巨匠、〈Tribe〉のウェンデル・ハリソンがファラオ・サンダースを演奏する注目盤
  7. ボカロが世界に与えた衝撃 一億回再生の意外な背景
  8. KENNY DOPE JAPAN TOUR 2026 ——ケニー・ドープ、9年ぶりの来日決定です
  9. Felix Kubin Japan Tour 2026 ——ドイツの音響ダダイスト、フェリックス・クビンが来日
  10. ambient room ──岡田拓郎Sextet、maya ongaku、BudaMunk、Satomimagaeが出演するイベント
  11. Columns 4月のジャズ Jazz in April 2026
  12. Cornelius ──コーネリアスが動き出した! 新シングル「夢寝見」がリリース
  13. R.I.P. Afrika Bambaataa 追悼:アフリカ・バンバータ
  14. Raja Kirik - Sengkala | ラジャ・キリック
  15. Whitney Johnson, Lia Kohl & Macie Stewart - Body Sound
  16. Loraine James ──ロレイン・ジェイムズがニュー・アルバムをリリース
  17. interview with Adrian Sherwood 愛とソウルと、そしてメロウなダブ・アルバム | エイドリアン・シャーウッド、インタヴュー
  18. Boards Of Canada ──ボーズ・オブ・カナダ、13年ぶりのアルバムがリリース
  19. 光と闇がそなわり最強に見えるレヴュー vol.1 NHK大河ドラマ『平清盛』 清盛の文法、清盛の美学(前編)
  20. Roedelius - Tape Archive Essence 1973-1978  | レデリウス

Home >  Reviews >  Album Reviews > Factory Floor- JPN

Factory Floor

Factory Floor

JPN

Pヴァイン

Amazon

Carter, Tutti, Void

Carter, Tutti, Void

Transverse

Mute

Amazon iTunes

野田 努   Jul 05,2012 UP

 ファクトリー・フロアがどうして不機嫌なのかは知らない。応援しているフットボール・チームの調子が良くないのだろう。とにかく機嫌が悪そうだ。連中が応用するのはジョルジオ・モロダー流の、くらくらするような16分音符のシーケンスだが、そのサウンドはいわば「I feel hate」、ひときわイラついている。「どこまで我慢強いんだ」と人間のマゾヒズムをあざ笑うかのように、ときにサディスティックで、残忍でもある。アンソニー・バージェスが描いた15歳の少年アレックスは喜ぶに違いない。
 名前も良い。ファクトリー・フロア......「デス・ファクトリー」とも似た胸くそ悪い響きがある。いま我々が生きている場所こそ強制収容所みたいなものであると言ったのは二木信でも――もうすぐ「水星」のレヴューを書いてくれるであろう磯部涼でもなく、自らのスタジオを「デス・ファクトリー」と命名したスロッビング・グリッスル(TG)だが、ロンドンで結成されたファクトリー・フロアもまた冷たい反復による一種のデス・ディスコを展開している。私的な夢を転覆する社会への復讐心を巧妙に刺激するかのようだ。

 とはいえ、これはパンクというよりもトランス・ミュージックである。ポスト・パンクにおけるインダストリアル・サウンド(TGやナース・ウィズ・ウーンド、キャバレ・ヴォルテール等々)が実際のところ"サイケデリック・ミュージック"の延長線上にあったように(60年代末にピンク・フロイドでトリップしている世代)、ファクトリー・フロアにもその気がある。2010年の『Untitled』に封入されたDVDの、1時間以上にわたって展開されるアブストラクト・ノイズを見れば一目瞭然だ。そうした観点で言えば、このバンドは、実はコーヘイ・マツナガのNHKyxとも決して遠くはないように思う。
 NHKyxとの大きな違いはダンスだ。ファクトリー・フロアは、レイヴ・カルチャーの現場が廃屋や工場であった時代を思い出させる。人気のない醜悪な場所を我々の桃源郷へと転換したところにあの文化の本質があったわけだが、ファクトリー・フロアはその頃の記憶をフラッシュバックさせる。敢えてみすぼらしい場所を見つけては、踊りながら、ポスト・パンクのインダストリアル・サウンドと初期のジェフ・ミルズのハード・ミニマルないしはドップラーエフェクトの病んだエレクトロとの溝を埋めている......そんな感じである。

 本作『JPN』は、2010年の『Untitled』をはじめ、アナログ盤でのみ作品をリリースしてきた彼らの主要シングルを編集した日本企画盤だが、これがけっこう売れているらしい。まあ、たしかにいまの日本にはない"音"である。
 『JPN』には〈DFA〉からの「Two Different Ways」のみが収録されていないが、この2年で発表してた曲やリミックス・ヴァージョンはほぼ網羅できる。〈DFA〉以外では、〈ミュート〉傘下の〈ブラスト・ファースト〉や〈オプティモ・ミュージック〉といったレーベル、スティーブン・モリス(ジョイ・ディヴィジョン/ニュー・オーダー)やクリス・カーター(TG/クリス&コージー)といったリミキサーの名前からも彼らへの期待度の高さやその音のにおいをうかがい知ることができるだろうが、むしろこの手の固有名詞を知らない若い世代にこそ聴いて欲しい1枚。本作には収録されてはいないけれど、まずはこれを聴いてみましょう。


 
 ファクトリー・フロアのオリジナル・アルバムは年内には聴けるという話だが、今年の3月、メンバーのひとり、紅一点のニッキ・コーク・ヴォイドがクリス&コージーといっしょに1枚のアルバムを発表している。この盤に関しては、正直に言えば、目の錯覚を利用したアートワークに「おっ」と思ってのジャケ買いである。アナログ盤にはCDも封入されているでのお買い得と言えばお買い得だ。
 『トランスヴァース』は、世代を越えた共作としても本国では注目されている。モロダー的というよりもメトロノームで、ファクトリー・フロアよりもさらにまたマシナリーで、クローネンバーグ的で、J.G.バラード的で、温かみなぞいっさいない。単調きわまりない音が続いている。こちらはライヴ映像のリンクを貼っておきましょうね。

野田 努