ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. 鷲巣功
  2. Cornelius - Refractions | コーネリアス
  3. This Is Lorelei - The Singer in My Band | ディス・イズ・ローレライ
  4. Columns P-VINE 50th Anniversary Interview Pヴァイン50周年対談
  5. Dusty - Dusty & Friends / Commodo - Deep Harbour ft. Alfa Mist / Untold - False Vacuum
  6. interview with Toshimaru Nakamura 世界を魅了する、類い稀なる電子音響 | ──中村としまる、待望の初期ベスト盤リリースと超ロング・インタヴュー
  7. 別冊ele-king パンク50周年記念号──それは何だったのか、何でありえるのか
  8. RYUICHI SAKAMOTO + SHIRO TAKATANI AMBIENT KYOTO - TOKYO -
  9. interview with Wendell Harrison 音楽の楽園=デトロイトから、ウェンデル・ハリソンがファラオ・サンダースとサン・ラーの思い出を語る
  10. Rough Trade ──50周年イベント開催を祝し、恵比寿KATAにポップアップが出現
  11. Kim Doeon - SLAPSTICK | キム・ドオン
  12. Columns Dennis Bovell デニス・ボーヴェルひさびさの新録は無類のカヴァー集
  13. ele-king vol.37 ボーズ・オブ・カナダ大研究/サイケ&ドリーミー特集
  14. YUKINO INAMINE + AKIO NAGASE ──琉球ダブ・ダンス・サウンドに注目
  15. Lambchop - Punching the Clown | ラムチョップ
  16. 未来マニア──エレクトロニック・ミュージック・ガイド
  17. AMBIENT KYOTO ──2027年春、レイ・ハラカミの展示が決定
  18. Smany ──エスメニーのアルバムが〈Virgin Babylon〉よりリリース
  19. Fishmans ——京都でフィッシュマンズ写真展とトークイベントのお知らせ
  20. Open Mike Eagle & Kenny Segal - DOOMED! | オープン・マイク・イーグル、ケニー・シーガル

Home >  Reviews >  Album Reviews > Factory Floor- Lying/A Wooden Box

Factory Floor

Factory Floor

Lying/A Wooden Box

Blast First Petit

Amazon iTunes

野田 努   Dec 28,2010 UP
E王

 2010年5月にリリースされた作品で、自分はこのアーティストを知らなかったけれど、2011年の1月にリリースされるシーフィールの15年振りの新しいアルバムのためにマーク・クリフォードに取材をしたところ、とにかく彼が若い世代のアーティストで積極的に好きなのはこのファクトリー・フロアしかいないと言っていたので、早速チェックした。そしてなるほど、たしかにインパクトのある素晴らしい音楽だった。シーフィールの新しいアルバムには、カンと、そしてドローンやノイズをやっていた頃のクラスターを感じることができるが、ファクトリー・フロアのこの10インチ+DVDのセットは、シーフィールのそうしたセンスにジョイ・ディヴィジョンとザ・フォールの容赦ない悪夢が加わった......と喩えることができるかもしれない。もっともシーフィールのノイズには陶酔的な響きがある。しかし、ファクトリー・フロアにあるのはニヒリスティックな響きである。

 DVD、4曲入りの10インチ、どちらからも強い気持ちを感じる。1時間にもおよびぶDVDはモノクロの抽象的な映像とノイズがシンクロしている。ビートもメロディもない。ノイズだけが生物のように唸りをあげている。"K"時代のクラスターに近いが、ガスやアブストラクトなミニマル・テクノを通過した質感がある。
 合計で40分近くある10インチのほうは、荒涼としたディストピア・ダンス・サウンドだ。暗がりのなかで冷酷なビートが反復する。インダストリアルなテクノ・サウンドのクリシェとも言える無機質な8分音符の繰り返しと沈んだ声は、時折ダークスターの『ノース』とも接近するが、デトロイトのドップラー・エフェクトのダーク・エレクトロやアンドリュー・ウェザオールのソロ作品ともディスコの裏側で手を結んでいるようだ。人間性を欠いたメトロノームのビートはもはや機械のように働くしかない人間を描いている。いくら神経がすり減ったとしても終わることのない労働......。逃げ出したくても逃げられない工場の床、その閉塞された感覚、リズムは金属の軋みによって生まれる。

 ファクトリー・フロアは以前はKAITOというロック・バンドで活動していたニッキ・コークの、ほとんどワンマン・プロジェクトである。2年前からこの名義でシングルを発表しているようだが、アンダーグラウンドな限定リリースが主で、まだ正式なアルバムはリリースされていない。そして、それが出たらセンセーションを起こすかもしれないと思わせるポテンシャルがある。ちなみに映像も音もデザインも、マスタリングもすべてニッキ・コークが手掛けている。

野田 努