ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Politics 黒船MMTが来航、開国を迫る。その時、日本の与野党は (columns)
  2. Ken Ishii ──ケンイシイが13年ぶりのニュー・アルバムをリリース、新曲を公開 (news)
  3. Politics オカシオ-コルテス、“MMT(現代貨幣理論)”を語る (columns)
  4. 子どもたちの階級闘争――ブロークン・ブリテンの無料託児所から - ブレイディみかこ (review)
  5. 編集後記 編集後記(2019年7月9日) (columns)
  6. Stereolab ──ステレオラブ再始動キャンペーン第二弾、代表作3枚が一挙リイシュー (news)
  7. TODD TERJE JAPAN TOUR 2019 ──ノルウェーのディスコ王、トッド・テリエが来日 (news)
  8. IO - Player's Ballad. (review)
  9. Kokoroko - Kokoroko / Various - Untitled (review)
  10. R.I.P. Philippe Zdar (news)
  11. interview with Jordan Rakei 人間性を忘れてはいけない (interviews)
  12. Koji Nakamura - Epitaph (review)
  13. Flying Lotus ──衝撃を与えた映画『KUSO』がまさかの再上映決定 (news)
  14. Charles Hayward - (Begin Anywhere) / Charles Hayward - Objects Of Desire (review)
  15. Politics オカシオ・コルテス現象について (columns)
  16. interview with Francesco Tristano 日本らしいものを作っても意味がない (interviews)
  17. Flying Lotus フライング・ロータス最新作『フラマグラ』の魅力とは? (interviews)
  18. Columns マキ・ザ・マジック追悼文 ――女神にKiss ケツにKiss どっちにしても墓場で笑う (columns)
  19. interview with Black Midi 自分自身を解体するアート (interviews)
  20. interview with IO KoolBoyの美学 (interviews)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Seefeel- Seefeel

Seefeel

Seefeel

Seefeel

Warp Records / ビート

Amazon iTunes

野田 努   Jan 05,2011 UP
このエントリーをはてなブックマークに追加
E王

 ミディアムテンポの8ビートとエレクトロニック・ノイズの"デッド・ギターズ"は、音の粒子の荒れたカンだ。see(見る)+feel(感じる)という、あの時代らしいネーミングを持ったバンドは、15年振りの4枚目のアルバムで貫禄を見せつけている。1993年、このバンドが登場したときは、「マイ・ブラッディ・ヴァレンタインとエイフェックス・ツインの溝を埋めるバンド」と謳われたものだったが、最新作の『シーフィール』は「ダブステップとクラウトロックの溝を埋めている」ようだ。2010年にシングルとして先行リリースされた"ファウルツ"は、ある意味では歌モノだが、『クラスターII』をバックにスペースメン3が歌っているような、倒錯したポップである。"リップ・ラン"は1994年ぐらいのシーフィールにもっとも近い。ドリーミーで、スペイシーで、ダビーだ。1990年代末にボアダムスに在籍していたイイダ・カズヒによる8ビートとシゲル・イシハの重たいベースが霊妙なメロディをともなって、霧のように広がるこの音楽に骨格を与えている......。
 
 シーフィールのカムバック作は過去のどのアルバムとも違うが、ファンにはドリーミーな『クイック』と無愛想な『サッカー』の中間だと説明することができるかもしれない。数年前に再発された彼らのデビュー・アルバム『クイック』は、〈トゥ・ピュア〉がもっとも勢いのあった時期にリリースされた、当時のロンドンのシューゲイザーからのアンビエントへの見事なアプローチだった。それはあの時代の幸せな空気が詰まったドリーム・ポップで、そしてアルバムのなかの1曲は翌年にエイフェックス・ツインによるリミックスが2ヴァージョン発表されている。1994年に〈ワープ〉と契約した彼らは、素晴らしい12インチ・シングル「ステアスルーEP」を発表している。収録された"スパングル"は〈ワープ〉のクラシックとして知られている曲で、その根強い人気たるやおよそ10年後にオウテカがリミックスをしているほどだ。
 とはいえ、1995年のセカンド・アルバム『サッカー』にはファースト・アルバムのような親しみやすさはなかった。そればかりか、初期のドリーミーな質感を積極的に排除しているようだった。セカンド・サマー・オブ・ラヴを丸めて捨てるように、ギタリストのマーク・クリフォードを中心とした第二期シーフィールは、1996年には〈リフレックス〉から『(Ch-Vox)』を発表するが、バンドはそれを最後に休止状態となり、そしてクリフォードはディスジェクタ名義のソロ作品『クリーン・ピト・アンド・リド』を〈ワープ〉から出すと、音楽の表舞台から姿を消す。
 
 フィードバック・ノイズをキング・タビーをミキシングしたような"メイキング"も最高だが、ジェームス・ブレイクやマウント・キンビーのようなポスト・ダブステップと共振する"エアレス"、エメラルズやOPNと共振する"Aug30"はなお素晴らしい。そして、アルバムの最後を飾る"スウェイ"の、ノイジーでありながらエレガントな展開は......このバンドの15年の沈黙が無駄ではなかったことを確信させる。第三期に突入したシーフィールは後ろを振り向かずに前に進んでいる。2011年の1月において間違いなく頂点に立つ1枚の登場である。
 
 ......というわけで、明けましておめでとうございます!

野田 努