ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Grischa Lichtenberger - Re: Phgrp (Reworking »Consequences« By Philipp Gropper's Philm) (review)
  2. interview with BBHF 歓びも、悲しみも痛みもぜんぶ (interviews)
  3. Nightmares On Wax ──ナイトメアズ・オン・ワックスが来日 (news)
  4. Neue Grafik Ensemble - Foulden Road (review)
  5. Local X9 World Hyperdub 15th ──15周年を迎える〈ハイパーダブ〉が来日ショウケースを開催 (news)
  6. マスターズ・アット・ワーク来日直前特別対談 時代を越える存在──DJ NORI と Dazzle Drums が語る MASTERS AT WORK (news)
  7. WXAXRXP Sessions ──〈Warp〉30周年を記念したシリーズ作品が発売、豪華面子が勢ぞろい (news)
  8. Madame Gandhi - Visions / Various Artists - Manara International Presents: The Ultimate Spice Mix (review)
  9. FTARRI FESTIVAL 2019 ──国内外の実験/即興音楽の現在が集結する最後の祭典が開催 (news)
  10. Hector Plimmer ──南ロンドンのメロウなビートメイカー、ヘクター・プリマーが新作をリリース (news)
  11. Daichi Yamamoto - Andless (review)
  12. Xinlisupreme ──シンリシュプリームが新曲をリリース (news)
  13. クライマックス - (review)
  14. Columns Stereolab ステレオラブはなぜ偉大だったのか (columns)
  15. Politics 消費税廃止は本当に可能なのか? (2) (columns)
  16. interview with KANDYTOWN 俺らのライフが止まることはないし、そのつもりで街を歩く (interviews)
  17. Columns Kim Gordon キム・ゴードン、キャリア史上初のソロ・アルバムを聴く (columns)
  18. Laraaji ──ララージがまさかの再来日、ブライアン・イーノとの名作を再現 (news)
  19. There are many many alternatives. 道なら腐るほどある 第7回 ゆるい合意で、がんがん拡大 ――身を委ねてはいけない諸々について (columns)
  20. The Art Ensemble of Chicago - We Are on the Edge: A 50th Anniversary Celebration (review)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Seefeel- Seefeel

Seefeel

Seefeel

Seefeel

Warp Records / ビート

Amazon iTunes

野田 努   Jan 05,2011 UP
このエントリーをはてなブックマークに追加
E王

 ミディアムテンポの8ビートとエレクトロニック・ノイズの"デッド・ギターズ"は、音の粒子の荒れたカンだ。see(見る)+feel(感じる)という、あの時代らしいネーミングを持ったバンドは、15年振りの4枚目のアルバムで貫禄を見せつけている。1993年、このバンドが登場したときは、「マイ・ブラッディ・ヴァレンタインとエイフェックス・ツインの溝を埋めるバンド」と謳われたものだったが、最新作の『シーフィール』は「ダブステップとクラウトロックの溝を埋めている」ようだ。2010年にシングルとして先行リリースされた"ファウルツ"は、ある意味では歌モノだが、『クラスターII』をバックにスペースメン3が歌っているような、倒錯したポップである。"リップ・ラン"は1994年ぐらいのシーフィールにもっとも近い。ドリーミーで、スペイシーで、ダビーだ。1990年代末にボアダムスに在籍していたイイダ・カズヒによる8ビートとシゲル・イシハの重たいベースが霊妙なメロディをともなって、霧のように広がるこの音楽に骨格を与えている......。
 
 シーフィールのカムバック作は過去のどのアルバムとも違うが、ファンにはドリーミーな『クイック』と無愛想な『サッカー』の中間だと説明することができるかもしれない。数年前に再発された彼らのデビュー・アルバム『クイック』は、〈トゥ・ピュア〉がもっとも勢いのあった時期にリリースされた、当時のロンドンのシューゲイザーからのアンビエントへの見事なアプローチだった。それはあの時代の幸せな空気が詰まったドリーム・ポップで、そしてアルバムのなかの1曲は翌年にエイフェックス・ツインによるリミックスが2ヴァージョン発表されている。1994年に〈ワープ〉と契約した彼らは、素晴らしい12インチ・シングル「ステアスルーEP」を発表している。収録された"スパングル"は〈ワープ〉のクラシックとして知られている曲で、その根強い人気たるやおよそ10年後にオウテカがリミックスをしているほどだ。
 とはいえ、1995年のセカンド・アルバム『サッカー』にはファースト・アルバムのような親しみやすさはなかった。そればかりか、初期のドリーミーな質感を積極的に排除しているようだった。セカンド・サマー・オブ・ラヴを丸めて捨てるように、ギタリストのマーク・クリフォードを中心とした第二期シーフィールは、1996年には〈リフレックス〉から『(Ch-Vox)』を発表するが、バンドはそれを最後に休止状態となり、そしてクリフォードはディスジェクタ名義のソロ作品『クリーン・ピト・アンド・リド』を〈ワープ〉から出すと、音楽の表舞台から姿を消す。
 
 フィードバック・ノイズをキング・タビーをミキシングしたような"メイキング"も最高だが、ジェームス・ブレイクやマウント・キンビーのようなポスト・ダブステップと共振する"エアレス"、エメラルズやOPNと共振する"Aug30"はなお素晴らしい。そして、アルバムの最後を飾る"スウェイ"の、ノイジーでありながらエレガントな展開は......このバンドの15年の沈黙が無駄ではなかったことを確信させる。第三期に突入したシーフィールは後ろを振り向かずに前に進んでいる。2011年の1月において間違いなく頂点に立つ1枚の登場である。
 
 ......というわけで、明けましておめでとうございます!

野田 努