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Leila

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野田 努   Feb 07,2012 UP
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 レイラがイギリス人のテクノ・リスナーにいかに愛されているかは、ここを読めばわかる。彼女の新作『ユー&アイ』を「とにかくやたら気むずかしい作品」だと酷評した『ガーディアン』の記者は気の毒なほど、けちょんけちょんな目に遭っている。「無意味な評をありがとう」「これぞ難聴のレヴュー」「2011年のベスト・アルバムの3位にジャスティスを挙げるようなヤツにレイラの魅力がわかるはずないだろ」(ま、そりゃそうだ)......同メディアが作品に対して厳しく言うことは今回に限ったことではないし、酷評は英国のお家芸とも言えるはずだが、これほどリスナーからの攻撃を食らうことは珍しい。レイラにはいまでも熱狂があることを察する(というか、レイラでここまで盛り上がれるというのがすごい)。

 ロンドン在住のアラブ系の女性、レイラはUKのテクノがもっとも華やかなだった時代にデビューしている。彼女のすぐ近くにはまずプラッドがいたし、そしてビョークとエイフェックス・ツインがいた。1997年のシングル「ドント・フォール・アスリープ」、翌年の「フィーリング」は渋谷のレコード店でもけっこうな話題となって、あっという間に売り切れた。時代はエレクトロニカ/IDM全盛へとまっしぐらだったし、トリップホップがいまよりも幅をきかせていた......というか、とにかくエイフェックス・ツインとビョークがもっとも勢いづいていた。その時代においてレイラはIDMとトリップホップを巧妙に掛け合わせた。『ライク・ウェザー』(1998年のクラシック)は、いまで言えばマウント・キンビーというか、R&BベースのIDMとしては最高の出来だ。
 
 『ユー&アイ』は彼女にとっての4枚目のアルバムで、8年ぶりのサード・アルバムとなった『Blood, Looms & Blooms』に引き続いて〈ワープ〉からの2枚目のリリース。過去のどのアルバムにおいても共演者(主にヴォーカリスト)を招いている彼女だが、今回は、〈インターナショナル・ディージェイ・ジゴロ〉からの作品で知られるベルリンのマウント・シムズ(Mt. Sims)ひとりのみが参加している。テリー・ホールやマルティナほか、派手なゲスト陣の前作とくらべると地味な印象を持つが、彼のダークウェイヴな雰囲気は、『ユー&アイ』という作品を特徴づけるのにひと役買っている。
 アルバムには"Colony Collapse Disorder(蜂群崩壊症候群)"という農薬や遺伝子組み換え農作物による深刻な環境破壊をテーマにした曲があるように、不吉で、暗闇がひしめいている。もとよりレイラの作品に暗闇はつねに偏在しているので、それ自体は目新しくもないかもしれない。が、『ユー&アイ』には、ドラムンベースを取り入れた"Welcome To Your Life"が象徴するようなアグレッシヴさも際だっている。昔のながらのレイラのリスナーは、彼女の気だるさとダウンテンポ、トリップホップの幻覚、それに適したアンニュイな感覚を好んでいたが、今作においては幻覚とアンニュイはウィッチネスに傾き、そして彼女の気だるさはささくれだった感覚へと変換されている。そういう意味では、見事に今日的な音にアップデートされていると言える。"(Disappointed Cloud) Anyway(失意の雲――どのみち)"~"Interlace(交錯)"~そして"Colony Collapse Disorder(蜂群崩壊症候群)"への展開はとくに圧倒的で、彼女がどうしてこのような方向性を選んだのかは知りたいところである。

 最後に、くだんの『ガーディアン』の読者からの反論をひとつ紹介しておこう。「アートとは喜びを与えるための日用品にはなりえません。"ポピュラー"なアーティストの勇敢と言われるいかなる作品よりもよほど彼女の作品のほうが勇気を与えてくれます。そもそも人間は複雑で、難しい生き物です。その複雑さを音楽で伝えようとする行為は間違っているのでしょうか? もっともあなたの文章で何よりも私ががっかりことは、あなたがユーモアを理解してないということです」

野田 努