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Factory Floor

Factory Floor

JPN

Pヴァイン

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Carter, Tutti, Void

Carter, Tutti, Void

Transverse

Mute

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野田 努   Jul 05,2012 UP

 ファクトリー・フロアがどうして不機嫌なのかは知らない。応援しているフットボール・チームの調子が良くないのだろう。とにかく機嫌が悪そうだ。連中が応用するのはジョルジオ・モロダー流の、くらくらするような16分音符のシーケンスだが、そのサウンドはいわば「I feel hate」、ひときわイラついている。「どこまで我慢強いんだ」と人間のマゾヒズムをあざ笑うかのように、ときにサディスティックで、残忍でもある。アンソニー・バージェスが描いた15歳の少年アレックスは喜ぶに違いない。
 名前も良い。ファクトリー・フロア......「デス・ファクトリー」とも似た胸くそ悪い響きがある。いま我々が生きている場所こそ強制収容所みたいなものであると言ったのは二木信でも――もうすぐ「水星」のレヴューを書いてくれるであろう磯部涼でもなく、自らのスタジオを「デス・ファクトリー」と命名したスロッビング・グリッスル(TG)だが、ロンドンで結成されたファクトリー・フロアもまた冷たい反復による一種のデス・ディスコを展開している。私的な夢を転覆する社会への復讐心を巧妙に刺激するかのようだ。

 とはいえ、これはパンクというよりもトランス・ミュージックである。ポスト・パンクにおけるインダストリアル・サウンド(TGやナース・ウィズ・ウーンド、キャバレ・ヴォルテール等々)が実際のところ"サイケデリック・ミュージック"の延長線上にあったように(60年代末にピンク・フロイドでトリップしている世代)、ファクトリー・フロアにもその気がある。2010年の『Untitled』に封入されたDVDの、1時間以上にわたって展開されるアブストラクト・ノイズを見れば一目瞭然だ。そうした観点で言えば、このバンドは、実はコーヘイ・マツナガのNHKyxとも決して遠くはないように思う。
 NHKyxとの大きな違いはダンスだ。ファクトリー・フロアは、レイヴ・カルチャーの現場が廃屋や工場であった時代を思い出させる。人気のない醜悪な場所を我々の桃源郷へと転換したところにあの文化の本質があったわけだが、ファクトリー・フロアはその頃の記憶をフラッシュバックさせる。敢えてみすぼらしい場所を見つけては、踊りながら、ポスト・パンクのインダストリアル・サウンドと初期のジェフ・ミルズのハード・ミニマルないしはドップラーエフェクトの病んだエレクトロとの溝を埋めている......そんな感じである。

 本作『JPN』は、2010年の『Untitled』をはじめ、アナログ盤でのみ作品をリリースしてきた彼らの主要シングルを編集した日本企画盤だが、これがけっこう売れているらしい。まあ、たしかにいまの日本にはない"音"である。
 『JPN』には〈DFA〉からの「Two Different Ways」のみが収録されていないが、この2年で発表してた曲やリミックス・ヴァージョンはほぼ網羅できる。〈DFA〉以外では、〈ミュート〉傘下の〈ブラスト・ファースト〉や〈オプティモ・ミュージック〉といったレーベル、スティーブン・モリス(ジョイ・ディヴィジョン/ニュー・オーダー)やクリス・カーター(TG/クリス&コージー)といったリミキサーの名前からも彼らへの期待度の高さやその音のにおいをうかがい知ることができるだろうが、むしろこの手の固有名詞を知らない若い世代にこそ聴いて欲しい1枚。本作には収録されてはいないけれど、まずはこれを聴いてみましょう。


 
 ファクトリー・フロアのオリジナル・アルバムは年内には聴けるという話だが、今年の3月、メンバーのひとり、紅一点のニッキ・コーク・ヴォイドがクリス&コージーといっしょに1枚のアルバムを発表している。この盤に関しては、正直に言えば、目の錯覚を利用したアートワークに「おっ」と思ってのジャケ買いである。アナログ盤にはCDも封入されているでのお買い得と言えばお買い得だ。
 『トランスヴァース』は、世代を越えた共作としても本国では注目されている。モロダー的というよりもメトロノームで、ファクトリー・フロアよりもさらにまたマシナリーで、クローネンバーグ的で、J.G.バラード的で、温かみなぞいっさいない。単調きわまりない音が続いている。こちらはライヴ映像のリンクを貼っておきましょうね。

野田 努