「K Á R Y Y N」と一致するもの

world's end girlfriend - ele-king

 2年前のあの日のことをおぼえているだろうか。前年にひさびさのアルバム『Resistance & The Blessing』が発表され、満を持しての開催となったスペシャル・ライヴ「抵抗と祝福の夜」。world's end girlfriendによるこの特別な一夜が、2026年もとりおこなわれることとなった。6月13日(土)、会場は前回同様EXシアター六本木。強烈な音と光の体験があなたの人生を塗り替える──。なお収益の一部は、生活困窮者を支援しているNPO法人、抱樸に寄付されるとのことです。

world's end girlfriendワンマンライブ
「抵抗と祝福の夜 2026」が
6月13日(土)EXシアター六本木で開催決定。

本公演は全席指定。
拍手、歓声、私語、立見禁止。
MC、アンコール、終演後物販無し。

「抵抗と祝福の夜 2026」はworld's end girlfriendが理想とする
ライブコンサートの形式で行われ、
これまでの集大成となる強烈なライブ公演になります。

本公演は強烈な爆音と強い光を伴います。
耳栓の持参など耳と目は各自で保護ください。

スマホによる撮影は許可されますが、
ライブ全編や1曲全編を撮影するのはご遠慮ください。
周りへの思いやりと想像力を持って行動ください。

また、本公演のライブ・チケット売上の20%、
ライブ音源、ライブ映像データ売上の80%が寄付されます。
寄付先は
NPO法人抱樸 https://www.houboku.net/
を予定してます。寄付完了後にSNSで報告します。

公演名:world's end girlfriend『抵抗と祝福の夜 2026』

日程:2026年6月13日(土)
開場 18:00 開演 19:00

会場:EXシアター六本木
https://www.ex-theater.com/access/

チケット販売ページ:
https://virginbabylonrecords.bandcamp.com/album/special-ticket-2026

特別チケット:
SS席 45ドル
S席 40ドル
A席 38ドル
B席 31ドル
*座席は座席表画像の各枠より抽選にて選ばれます。
*チケットは5月中旬に送付予定。

LIVE AUDIO DATA:
world's end girlfriend『抵抗と祝福の夜 2026』
[2026/06/13ライブ音源データ](11月より発送開始予定)
価格39ドル

LIVE VIDEO DATA:
world's end girlfriend『抵抗と祝福の夜 2026』
[2026/06/13ライブ映像データ](11月より発送開始予定)
価格49ドル

Artwork by Yu Anthony Yamada

P-VINE × FRICTION - ele-king

 フリクションの公式グッズが、Pヴァイン設立50周年を記念した特別企画として登場することになった。フリクションの複数のアートワークを落とし込んだ4種類のTシャツと、『軋轢』のジャケをあしらったアクリルスタンドの計5アイテム。限定品とのことなので、お早めに。

P-VINE 50TH ANNIVERSARY
FRICTION MERCHANDISE CAMPAIGN

日本のパンク/ニューウェイヴ・シーンを切り裂いた先駆者、FRICTION。その公式グッズが、Pヴァイン設立50周年を記念したスペシャル企画として、ついに登場。

日本の音楽史に確かな足跡を残してきたFRICTION。強烈なエネルギーを放つサウンド、前衛的なアートワーク、そして今なお色褪せない衝撃を、そのままウェアに落とし込みました。
P-VINEによる本キャンペーンでは、第三弾までTシャツを中心に関連グッズを連続リリース。複数のアートワークによる多彩なデザインは、どれも強烈で、どれも文句なしにかっこいい仕上がり。
単なる復刻ではなく、バンドのレガシーを現在進行形で更新する周年記念コレクションとして展開します。

・FRICTION T-SHIRTS 101 S~XXL 4,800円

・FRICTION T-SHIRTS 102 S~XXL 4,800円

・FRICTION T-SHIRTS 103 S~XXL 4,800円

・FRICTION T-SHIRTS 104 S~XXL 4,800円

・FRICTION ACRYLIC STAND 01 1,600円

2月25日(水)正午より受注開始。
店頭販売および発送は4月1日(水)を予定しています。
※全国一部のレコード店でも取り扱い予定です。

※Tシャツには、特典として 150mm × 30mm のオリジナルステッカー が付属いたします。
カラーはデザインごとに異なり、
101・102 には赤、103・104 には黒のステッカーが付きます。
あらかじめご確認のうえ、お買い求めください。

※限定品につき無くなり次第終了となりますのでご了承ください。

https://anywherestore.p-vine.jp/collections/friction-merchandise

FRICTION - ele-king

 日本のパンク/ポスト・パンクの開拓者、フリクションの初期2枚の7インチが復刻されることになった。1枚は、記念すべきデビュー7インチ「Crazy Dream」(1979)。もう1枚は『軋轢』と同時リリースされた「I Can Tell」(1980)。さらにこの復刻に合わせ、『79ライヴ』もCDでリイシューされる。ほか、長らく品切れとなっていたタイトルも一挙に追加生産されるとのことなのでチェックしておきたい。

 なお現在制作中の『別冊ele-king J-PUNK/NEW WAVE - 革命の記憶』は3月31日発売。お楽しみに。

日本のロック/パンク史を語る上で絶対に欠かすことのできない最重要バンド、フリクションの2枚の7インチ・レコードを完全復刻!長らく品切れとなっていた『79ライヴ』をはじめ、関連CDの再発&追加生産も決定!

フリクションが1979年にリリースした記念すべきデビュー・7インチ・EPと、傑作ファースト・アルバム『軋轢』(1980年)からのシングルとして同作と同時にリリースされた7インチ・シングルを完全復刻!

併せて、2005年にCD+DVDの形で再発された、レック自ら「奇跡の演奏」という『79ライヴ』(1980年)をCDのみの形でリイシュー!
さらに、長らく品切れとなっていたフリクション関連CDの追加生産が決定!
また、映画の公開に伴い、3月にJ-PUNK/NEW WAVEキャンペーンを実施予定!詳細は後日発表!

《リリース情報》

PASS NO PAST
アーティスト:フリクション
ARTIST: FRICTION
タイトル:Crazy Dream
Title: Crazy Dream
商品番号:SSAP-023
フォーマット:7インチ・EP
価格:定価:¥3,300(税抜¥3,000)
発売日:2026年3月25日(水)
初回生産限定盤

収録曲
A) Crazy Dream
B1) Big-S
B2) Kagayaki

日本のロック史に燦然と輝く名盤『軋轢』(80年)に先立つこと8ヶ月、79年8月にリリースされたフリクションの記念すべきデビュー・EPをオリジナルどおりのジャケット仕様で完全復刻!ファースト・アルバム『軋轢』であらためて取り上げる「Crazy Dream」と「Big-S」の2曲にくわえて、のちに『レプリカント・ウォーク』(88年)で正式に録音することになる「Kagayaki」の3曲を収録。ポスト・パンクの香りも漂う『軋轢』版よりも速いテンポで演奏される「Crazy Dream」と「Big-S」の2曲の疾走感がすばらしい。レック(b/vo)、チコ・ヒゲ(ds)、ツネマツ・マサトシ(g)のすさまじくテンションの高い演奏に圧倒される。『軋轢』未収録の「Kagayaki」のソリッドさも尋常ではない。このEPこそがフリクションという向きも多い無双の3曲。レックの希望により、オリジナル盤とは異なる赤黒ジャケットで再発。

PASS NO PAST
アーティスト:フリクション
ARTIST: FRICTION
タイトル:I Can Tell
Title: I Can Tell
商品番号:SSAP-024
フォーマット:7インチ・シングル
価格:定価:¥2,970(税抜¥2,700)
発売日:2026年3月25日(水)
初回生産限定盤

収録曲
A) I Can Tell
B) Pistol

日本のロック史に燦然と輝くフリクションの傑作ファースト・アルバム『軋轢』(1980年)からのシングル・カットとして同作と同時にリリースされた、ピストル人間ジャケットも最高にクールな7インチ・シングルをオリジナルどおりに復刻!チコ・ヒゲのソリッドなドラムに導かれて、グルーヴィにうねるレックのベースと切れ味鋭いツネマツ・マサトシのギターがクールに絡み合う「I Can Tell」。洗練されていながらもフリーキーなそのサウンドは、ニューヨークでノー・ウェイヴ・シーンを体験したレックとヒゲの二人がいたからこそ生み出しえたものだ。『軋轢』未収のカップリング曲「Pistol」は、荒々しくスピード感あふれる当時のフリクションのライヴでの姿をとらえたカセット・テープ一発録りによる破壊力あふれる一曲。

PASS NO PAST
アーティスト:フリクション
ARTIST: FRICTION
タイトル:79ライヴ
Title: 79 Live
SSAP-025
フォーマット:CD
価格:定価:¥2,750(税抜¥2,500)
発売日:2026年3月25日(水)

『軋轢』の4ヶ月前、あの3人は疾走していた
ジャパニーズ・パンク史に燦然と輝く傑作1stアルバム『軋轢』をリリースする4ヶ月前の1979年12月、京都・磔磔におけるフリクションのライヴ・パフォーマンスを捉えた『79ライヴ』。フリクションのベスト・パフォーマンスとして語られてきたこのライヴは、80年に私家盤10インチLPという形で発表された、ごくわずかのマニアのみが体験し得たもの。2005年に新たに発見されたテープを使用してCD+DVDの形で再発された、レック自ら「奇跡の演奏」というこの伝説のライヴをCDのみの形でリイシュー。『軋轢』リリースの数ヶ月前、頂点を迎えつつあったフリクションのおそろしくテンションの高い演奏が圧倒的だ。とくにレックのヴォーカルは、全編を通してすさまじいばかりの迫力。『軋轢』に未収録の「Pistol」「Kagayaki」を収録。フリクションを語る上で外すことのできない作品のひとつ。

《追加生産タイトル》

PASS NO PAST
アーティスト:フリクション
ARTIST: FRICTION
タイトル:軋轢
Title: Friction
商品番号:SSAP-003
フォーマット:CD
価格:定価:¥2,200(税抜¥2,000)

PASS NO PAST
アーティスト:フリクション
ARTIST: FRICTION
タイトル:ライヴ・イン・ローマ
Title: Live at "Ex Mattatoio" in Roma
商品番号:SSAP-010
フォーマット:CD
価格:定価:¥2,420(税抜¥2,200)

PASS NO PAST
アーティスト:フリクション
ARTIST: FRICTION
タイトル:マニアックス
Title: Maniacs
商品番号:SSAP-013/4
フォーマット:2CD
価格:定価:¥3,366(税抜¥3,333)

PASS NO PAST
アーティスト:フリクション
ARTIST: FRICTION
タイトル:ライヴ PASS TOUR '80
Title: Live - Pass Tour '80
商品番号:SSAP-016
フォーマット:CD
価格:定価:¥2,530(税抜¥2,300)

アーティスト:フリクション
ARTIST: FRICTION
タイトル:2013―ライヴ・フリクション
Title: 2013 - Live Friction
商品番号:PCD-18629/30
フォーマット:2CD
価格:定価:¥3,520(税抜¥3,200)

アーティスト:3/3
ARTIST: 3/3
タイトル:3/3
Title: 3/3
商品番号:PCD-18516/7
フォーマット:2CD
価格:定価:¥3,457(税抜¥3,143)

Amanda Whiting - ele-king

 ここ数年来、ハープが重要な役割を果たすジャズ作品が増えていると感じる。アメリカでは自身の作品やさまざまなアーティストへの客演で知られるブランディ・ヤンガーの活躍が目につく。イギリスに目を向けると、ギリシャ出身でロンドンを拠点に活動するハープ奏者のマリー・クリスティーナ・ハーパーを擁するハーパー・トリオが近年の注目アーティストだ。そして、マンチェスターのマシュー・ハルソールはハープ奏者を大きくフィーチャーする作品を作ってきており、そのなかからレイチェル・グラッドウィン、マディ・ハーバート、アリス・ロバーツといった演奏家が登場してきた。アマンダ・ホワイティングもマシューのグループで演奏してきたひとりで、マシューとも関係の深いチップ・ウィッカムの作品でもたびたび共演している。

 ウェールズ出身のアマンダは6歳のときにハープに触れ、最初はクラシックを学び、その後ジャズや作曲技法も学んできた。2007年より自主制作でソロ・アルバムを作ってきて、そして2020年にクラブ・ジャズ系レーベルの〈ジャズマン〉から『Little Sunflower』をリリースする。フレディ・ハバードの名作をカヴァーしたこのアルバムによって彼女は注目を集め、マシュー・ハルソール、チップ・ウィッカム、グレッグ・フォートなどと共演するほか、ミスター・スクラフジャザノヴァ、ヒーリオセントリックス、レベッカ・ヴァスマン、DJヨーダなどクラブ系アーティストにもフィーチャーされるようになる。彼女のハープ演奏の特徴として、非常にメロディアスでソウルフルな要素が強いことが挙げられる。その点はブランディ・ヤンガーとも共通するもので、1950年代から1980年代に活躍した女性ハープ奏者の草分けであるドロシー・アシュビーの影響を色濃く受けている。ドロシーの作品では〈カデット〉時代の『Afro-Harping』(1968年)、『Dorothy's Harp』(1969年)、『The Rubáiyát Of Dorothy Ashby』(1970年)の3作品が特に有名で、これらはアーマッド・ジャマル、ラムゼイ・ルイス、マリーナ・ショウなどを手掛け、自らもソウルフル・ストリングスという楽団を率いたリチャード・エヴァンスがプロデュースしている。当時のリチャード・エヴァンスがプロデュースしたジャズ作品はソウル、ファンク、ロック、ラテン、ボサノヴァなどを融合したミクスチャーなもので、ドロシー・アシュビーの3作に関してもアフロ・キューバンやエキゾティック・サウンドから、ソフト・サイケの要素も世取り入れた前衛的で独特の世界観を持ち、後年にレア・グルーヴ的な再評価を経て、現代のアーティストに多大な影響を与えている。クラブ・ジャズやクラブ系アーティストの共演が多いのも、そうしたドロシー・アシュビーの影響が見られるだろう。

 〈ジャズマン〉からは『After Dark』(2021年)、『Lost In Abstraction』(2022年)と続けてアルバムをリリースし、その後は〈ファースト・ワード〉に移籍して『Beyond The Midnight Sun』(2023年)をリリースする。〈ファースト・ワード〉はクラブ・サウンド系のレーベルで、クラブ・ジャズやファンク、ソウル、ヒップホップなどのリリースもあるが、『Beyond The Midnight Sun』はDJ/プロデューサーのドン・レイジャー(ダークホース・ファミリー)との共作だった。そして、2024年にリリースした『The Liminality Of Her』は、『After Dark』と『Lost In Abstraction』にも参加したチップ・ウィッカムのほか、女流DJ/シンガー/プロデューサーのピーチが参加する。2024年はほかにクリスマス・アルバムをリリースしたが、年が明けて2025年に『Can You See Me Now?』というEPをリリースし、それと『The Liminality Of Her』をまとめたのが日本編集版の本アルバムとなる。『Can You See Me Now?』はスクリムシャー名義で2000年代後半から活動するDJ/プロデューサーのアダム・スクリムシャーがキーボードやトラックメイクで関わり、クアンティックとのコラボで知られるアリス・ラッセルもゲスト・ヴォーカル参加する。

 『Can You See Me Now?』は基本的にはハープ、ベース、ドラムスという編成で、スクリムシャーのピアノやキーボード、シンセ、パーカッションなどが出過ぎることなくサポートする。ホーン類が一切入らないので非常にシンプルであり、その分ハープの奏でるメロディが際立つ印象だ。オープニング曲の “Contented” は幽玄のようなコーラスが薄く被さる美しい作品で、1960~1970年代のムード音楽やライブラリーなどの分野で活躍したハープ奏者のデヴィッド・スネルやジョニー・トイペンらの流れを汲む。アリス・ラッセルが歌う “What Is It We Need?” も荘厳で、ハープ演奏はクラシックや教会音楽などでの技法を用いている。“Intent” はクラブ・ジャズ的なビートの強い作品で、スクリムシャーらしい作品と言える。DJ/プロデューサーとも多くの仕事をしてきたアマンダの個性が生かされた楽曲だ。“It Could Be” も同様のビート感覚を持つ楽曲で、ここでも中性的なコーラスとハープが絶妙のコンビネーションを見せる。

 『The Liminality Of Her』は “Waiting To Go” でチップ・ウィッカムがフルートを吹く場面があるものの、あとはハープ、ベース、ドラムス、パーカッションのみというこれまたシンプルな編成。ピーチをフィーチャーした “Intertwined” と “Rite Of Passage” は美しいメロディと繊細なムードに包まれ、モーダル・ジャズとソウル・ミュージックが最良の地点で結びつく。“Liminal” はアフロ・キューバンとジャズ・ファンクが融合したようなリズムで、ドロシー・アシュビーの〈カデット〉時代を彷彿とさせる。“Nomad” は琴のような音色を奏でるハープが印象的で、「遊牧民」というタイトルどおりのエキゾティシズムに溢れている。“No Turning Back” はクラブ・ジャズ的な作品で、アフロ・キューバン調の転がるパーカッションに乗った軽快な演奏を披露する。そして、コルトレーンの演奏で有名な “My Favorite Things” を取り上げているが、この曲はさまざまなアーティストが取り上げてきたモーダル・ジャズの定番のような曲で、ハープでは日本の林忠男が1977年のアルバム『見果てぬ夢』で取り上げていた。このアルバムは超レア・アルバムとして和ジャズ再評価のなかで発掘されたアルバムだが、ふとそれを思い起こさせる演奏だ。

2月のジャズ - ele-king

Tigran Hamasyan
Manifeste

Naïve

自身の出目であるアルメニアの民謡から教会音楽やクラシック、ロックやヘヴィ・メタル、プログレ、ダブステップやビート・ミュージックなどエレクトリック・ミュージックの影響を受け、独自の活動を続けているティグラン・ハマシアン。2020年に発表した『The Call Within』は、20世紀初頭にオスマン帝国との民族紛争を逃れてアメリカに渡ったアルメニア移民についての楽曲があるように、アルメニアン・ディアスポラとしてのティグランの在り方を示す作品でもあった。その後はアメリカのジャズ・スタンダード集である『StandArt』(2022年)、アルメニアの国鳥である火の鳥を題材にアルメニアの民話に基づいた『Bird Of A Thousand Voices』(2024年)と、異なる色合いのアルバムをリリースしている。これらのレコーディング時期は大体2019年から2021年にかけてのもので、『The Call Within』については2019年の録音だったが、最新作の『Manifeste』は2023年から2025年にかけ、アルメニアの首都であるエレバンから、アテネ、モスクワ、ロサンゼルスと世界各地でおこなわれたレコーディングをまとめたものとなる。

 参加メンバーはマーク・カラペティアン(ベース)、エヴァン・マリネン(ベース)、ネイト・ウッド(ドラムス)、アーサー・ナーテク(ドラムス)といったこれまでも共演してきたメンバーはじめ、アルティョム・マヌキアン(チェロ、ベース)、アルマン・ムナツァカニャン(ドラムス)、ダニエル・メルコニャン(トランペット)などアルメニア人のミュージシャン、クリスティーナ・ヴォスカニャン指揮によるエレバン国立室内合唱団など。“Prelude for All Seekers”はクラシック的なピアノ演奏が精密なテクスチャーを導くなか、ビート感覚に溢れたリズム・セクションと交わるテクノ・ミーツ・ジャズというような作品。後半に向けてアグレッシヴに進むなか、エンディングに美しいピアノ・ソロが訪れる構成も秀逸である。“Ultradance”はダブステップにインスパイアされたダイナミックなビートを持つナンバーで、ビートの谷間に訪れる静穏なピアノ・フレーズとの対比が素晴らしい。アルメニア語で“悩みや悲しみを取り除いてくれる人やもの”という意味を持つ“Dardahan”は、シンセを通して変調されたヴォイスを交えたアルメニア特有のメロディを持つ。“One Body, One Blood”はエレバン国立室内合唱団による幽玄のようなコーラスをフィーチャーし、中世の教会音楽のような荘厳な世界とクリック・テクノのようなトラックが融合する。戦時下で生きる子どもたちに捧げられた“War Time Poem”には、プログレのような強烈なサウンドとレクイエムのように静かな悲しさを湛えた世界が交錯する。今作もティグランのアイデンティティが強く反映された独自の作品集となっている。


Momoko Gill
Momoko

Strut

 モモコ・ギルは日系英国人のドラマー/ヴォーカリストで、即興演奏から作曲/プロデュースもおこなうマルチ・アーティストである。オックスフォードで生まれ、京都、横浜、アメリカのサンタバーバラへと移り住みながら育ち、独学で学んだドラムをはじめキーボードなども操り、現在はロンドンを拠点に音楽活動をおこなう。ロンドンのジャズやインプロヴィゼイション・シーンからオルタナティヴ・シーンと縦横無尽に活動し、アラバスター・デプルーム、コビー・セイティルザなど幅広いアーティストと共演してきた。エレクトロニック・ミュージックの分野ではマシュー・ハーバートコラボ作『Clay』(2025年)が知られるところで、またラッパーの、ナディーム・ディン・ガビージと一緒にアン・エイリアン・コールド・ハーモニーというプロジェクトもおこなっている。そんなモモコ・ギルが満を持してソロ・アルバム『Momoko』をリリースした。

 セルフ・プロデュースとなる『Momoko』は、ロンドンのトータル・リフレシュメント・センターでレコーディングをおこない、マシュー・ハーバートがミックスを担当する。ドラム、キーボードはじめ楽器演奏などは基本的にモモコひとりによる多重録音がおこなわれ、彼女自身のヴォーカルのほかにシャバカ・ハッチングス、ソウェト・キンチ、アラバスター・デプルーム、コビー・セイ、マリーシア・オスーらが名を連ねた50名にも及ぶコーラス隊がフォローする。“No Others”は軽やかにシャッフルするリズムに乗って、モモコの伸びやかなヴォーカルが浮遊感に包まれたムードを作り出す。アルバムのなかでもっともジャズの要素が強い作品だ。“When Palestine Is Free”はコーラス隊とホーン・アンサンブル(クレジットはないが、おそらくシャバカ・ハッチングス、ソウェト・キンチ、アラバスター・デプルームらが演奏していると思われる)をフィーチャーした重厚な作品で、モモコのドラムはマーチング・ソングとブロークンビーツを混ぜたようなリズムを作り出す。そして、フィールド・レコーディングや環境音も取り入れた作曲がおこなわれている点は、コラボレーターでもあるマシュー・ハーバートの影響があるのかもしれない。


Amir Bresler
See What Happens

Raw Tapes

 イスラエルのジャズ・シーンで新世代ミュージシャンとして注目を集めるキーボード奏者/マルチ・ミュージシャン/プロデューサーのリジョイサーことユヴァル・ハヴキン。彼はいろいろなグループやプロジェクトをやっているが、そのなかのひとつである4人組グループのアピフェラや、ヒップホップとジャズのミクチャー・バンドのL.B.T.、ユヴァル周辺のミュージシャンが集まったタイム・グローヴでドラマーを務めるのがアミール・ブレスラーである。ほかにも世界的なベーシストのアヴィシャイ・コーエンのグループ、ピアニストのオメル・クレインのトリオ、サックス奏者のアミット・フリードマンのグループ、トランペット奏者のセフィ・ジスリング、キーボード奏者のノモックと組んだアフロ・ジャズ・バンドのリキッド・サルーン、フォーク・ロック・バンドのフォリー・トゥリーなどで活動するなど、現在のイスラエルを代表するミュージシャンのひとりである。ジャズ、ファンク、ロック、サイケ、プログレ、フォーク、オルタナ、R&Bなどいろいろな音楽に通じたヴァーサタイルなミュージシャンで、これまでソロ作品も『House Of Arches』(2022年)、『Tide & Time』(2024年)などを発表。これらの作品はリジョイサー、ノモック、ニタイ・ハーシュコビッツなど、日頃から一緒に演奏をしてきた仲間たちが参加しており、ジャズ、アフロ、ファンク、サイケなどが融合した内容となっている。

 最新アルバムの『See What Happens』は過去12年間に渡るレコーディング音源やセッションなどをまとめたものである。アミール・ブレスラーはドラム以外にギター、ベース、キーボード、パーカッションなどを演奏するマルチ・ミュージシャンぶりを発揮し、プログラミングなどトラック・メイクもおこなう。共演者にはリジョイサー、ノモック、セフィ・ジスリング、ニタイ・ハーシュコビッツ、ジェニー・ペンキン、ケレン・ダン、イツァーク・ヴァントーラなどイスラエル・シーンの仲間たちが名を連ねる。今回も彼のさまざまな音楽性が融合した内容だが、おすすめはケレン・ダンをフィーチャーした“See What Happens”と“Who Will Hold Your Hand”。ケレンはリジョイサー、ベノ・ヘンドラーとのバターリング・トリオで活躍し、L.B.T.のメンバーでもあるマルチ・ミュージシャン/シンガーであるが、今回はヴォーカリストとしてこの2曲に参加している。原初的でエキゾティックなグルーヴに包まれた“See What Happens”、変拍子による不思議なグルーヴを持つジャズ・ファンク“Who Will Hold Your Hand”と、フェアリーな魅力を持つケレン・ダンの歌声が生かされている。リジョイサーをフィーチャーした“Lesoto”など、アンビエントなフィーリングを持つ作品も印象的。


Joabe Reis
Drive Slow - A Última das Fantasias

Batuki

 ジョアベ・ヘイスはブラジルの新進トロンボーン奏者/作曲家で、ジャズ、ファンク、MPB、サンバ、ヒップホップなどを吸収してきた。1970年代から活動するベテランのキーボード奏者/作曲家のネルソン・アイレス率いるビッグ・バンドで演奏をしてきたほか、エルメート・パスコアール、エヂ・モッタなどブラジルのアーティストから、アメリカのロビン・ユーバンクス、マーシャル・ギルケス、メイシー・グレイなどとも共演してきた。自身のソロ作品としては2024年にファースト・アルバムとなる『028』をリリース。オリジナル曲のほかにジャヴァン、ジルベルト・ジル、アジムスとフローラ・プリムの楽曲をカヴァーしていて、そのアジムス/フローラ・プリムの“Partido Alto”ではイエロージャケッツなどの活動で有名なアメリカのサックス奏者のボブ・ミンツァーと共演している。

 新作の『Drive Slow - A Última das Fantasias』は、ダニエル・ピニェイロ(ドラムス)、デデ・シルヴァ(ドラムス)、アジェノール・デ・ロレンツィ(キーボード)、ジョシュア・ロペス(テナー・サックス)、シドマー・ヴィエイラ(トランペット)、マルチェロ・デ・ラマーレ(ギター)といった『028』でも演奏していた面々に加え、新進ピアニストとして注目を集めるエドゥアルド・ファリアスやベーシストのフレデリコ・エリオドロらがバックを固める。ほかにゲストでラッパーのズディジーラとシンガーのエオラ・オランダ、アメリカからトランペット奏者のシオ・クローカーも参加する。“Simbiose (Nefertiti)”は人力ブロークンビーツのようなビートでソリッドに展開するジャズ・ファンク。全体にエズラ・コレクティヴなどUKジャズに近い雰囲気を持ち、エドゥアルド・ファリアスのピアノもジョー・アーモン・ジョーンズあたりを彷彿とさせる。ジョアベ・ヘイスのトロンボーンをはじめとしたホーンの掛け合いもスリリングだ。“Baile Real”はサンバにブギーやファンクをミックスしたブラジルらしい楽曲で、かつてのバンダ・ブラック・リオあたりを思い起こさせる。

ambient room - ele-king

 2023年より開催されているBias & Relax主催のイベント〈ambient room〉が今年も開催されることになった。
 5月9日(土)代官山UNITにて開催される今回は、岡田拓郎が6人編成のバンドセットにて出演するほか、メディテーション・ライヴが予定されているmaya ongaku、2025年にはアルバム『taba』を送り出したSatomimagae、そしてビートメイカーのBudaMunkがラインナップに加わっている。じつに豪華な一夜、お見逃しなく。

"ambient room"
Curated by BIAS & RELAX adv.
Line Up
Takuro Okada Sextet / maya ongaku / BudaMunk / Satomimagae

2026年5月9日(土)
東京|代官山UNIT
時間:OPEN 17:00 / START 18:00
チケット:前売り ¥5,000 / 当日 ¥5,500(税込/スタンディング)

一般発売:3月7日(土)10:00〜

主催/企画/制作:BIAS & RELAX adv.

DJRUM - SUSTAIN-RELEASE x PACIFIC MODE - ele-king

 日中は新宿SPACEで雑食極まりない80分のDJセット。グルーヴを保ちつつ古今東西のレフトフィールドな作品を行き来する、という直近のムードを形にできた。明日への不安が強まったときの現場は気合が入る。出演を終え、渋谷のWOMBを目指す。今夜は〈SUSTAIN-RELEASE x PACIFIC MODE〉へ。

 説明不要かもしれないが、オーロラ・ハラル率いるUS最高峰のレイヴ・パーティと、日本人DJのHealthy氏による東京とNYを繋ぐパーティ・シリーズのコラボレーション。今回は、なんとプリオリ(Priori)のライヴセットとドラム(DjRUM、jは発音しないらしい)のDJセットを同時に招聘するという豪華な座組。真裏ではMIDNIGHT EASTにてObjekt×CCLの来日公演も開催中で、円安極まる世相はあれど東京のクラブ熱の高まりを感じる。WOMBに並ぶのもかなり久々のことだし、列を形成しているのがインバウンドだけというわけでもなく、少しはいい兆しもあるのかも。

 フロアにようやく入ると、4FオープナーのHue Rayが最後の曲をかけLil Mofo氏にパスを回すところだった。Hue RayというDJはE.O.UやVìs、Ryogoといった京都のクラブ・シーンと深い関わりを持つ新鋭で、現在は東京を拠点に活動。最近〈PACIFIC MODE〉に加入したようで、卓越したセンスをさらに開花させている。この4Fラウンジの構成が素晴らしく、Hue Ray / Lil Mofo / YELLOWHURU (FLATTOP)という、東京のアンダーグラウンド/ローカルに根ざした三者がロング・セットで空間に艶を与える内容。コラボレーション開催の意義深さを感じた。

 ふらっと訪れたわりに、とにかくさまざまな人に出会う。どちらかといえばプロパーなテクノの場であるにもかかわらず、日本のハイパーポップ・シーンに近しい若手や、K/A/T/O MASSACREを通じて知り合ったような人たちに。僕の主催する〈第四の道〉で長く一緒にやってきているDJ/プロデューサーのillequalTelematic Visionsとも合流。余談だが、〈Basic Channel〉に小学生の頃から親しんでいた2006年生まれのTelematic Visionsは、2月頭にようやく二十歳を迎え、こうしたパーティに堂々と入れるようになったばかり。乾杯できる日を5年以上待っていたぶん、ここで一緒に遊べるのは不思議な気持ち。

 それにしても、ここ数年で身の回りのモードが随分と変化していった。プロパーなクラブ・シーンにいる人たちからすれば、僕らのようなDJはあいかわらずよくわからないことをやっている傍流の存在に見えているのかもしれないけれど、いや、変わってきてますよ。少なくとも、少し前なら「プリオリ始まってる!」とメインフロアに駆け出していくような若者は、周りにはほとんどいなかったわけで。

 そんなプリオリのライヴ・セットを後半にかけて鑑賞。秩序と抑制を感じさせる深みのあるダブ・テクノ~ミニマル主体のサウンドに、ごくわずかな違和感を混入させていく重厚感あふれる内容だった。質実剛健、それでいてたおやかな姿勢は、作品とも同じ一貫性を感じさせる。

 その後、ドラムによる2時間のDJセットがスタート。昨年発表されたIDMとポスト・クラシカルが調和する名盤『Under Tangled Silence』の雰囲気を期待していた自分としては、ライヴを観てみたかったなあ、と発表時には思っていたものの、このDJセットが本当に圧巻だった。敷地内を徘徊する遊び方のほうが好きな自分は、2時間フルでメイン・フロアに釘付けにされること自体が久々で、あまり酒も飲まず最前列に押しかけ、熱狂しつつその手腕に舌を巻くばかりだった。

 「テクノ/ハウスの歴史とマナー」に沿ったこのパーティに奇襲をかけるように、まずはジャングルとIDMの嵐でフロアを圧倒。出音の迫力もすさまじい。そこからフェイントをかけるようにヤーマンなダブ、レフトフィールド・ベース、ポスト・ダブステップ、ゲットー・テック的エレクトロや怪しげなブート盤、マイクロ・ハウス、アシッド・テクノ、ブレイクコアなどを行ったり来たり。音像もBPMも目まぐるしく変動し続けるのに、謎の安定感が紙一重でグルーヴを支える。こうした綱渡り的なマルチ・ジャンルDJがいかに大変かは、雑食で目移りしやすい性分が選曲に直結している身として痛感していて、だからこそ目の前で展開されている営みがいかにとてつもないかがわかる。わかるからこそ、わからない。どうしてこんなDJができるんだろう、しかもあの作品を作れる人が……と、開いた口が塞がらない。

 ヴァイナル3台とは思えないほどビートマッチの精度・スピードも早く、リズムがブレそうになった途端にROLLエフェクトでデッキの役割をサンプラーに変換するなど、技術面だけを切り取っても一流そのもの。しかしながら、ドラムのDJセットの真価は選曲と展開のつくり方にあることが今回ハッキリとわかった。セレクターとして、もしかすると『Under Tangled Silence』の世界観よりも強い記名性を備えているのではないか。

 気づけば30分、60分、90分、と時間が溶ける。終盤、トラップのようにフットワークを一瞬聴かせる采配に、隣のillequalが見たことのない表情をしていた。最後のほうにマライア・キャリーの謎のエディットがかかり、その後R&Bなのか、トリップホップか、メロウな方面に着地。あれはいったいどういうレコードなんだろう? まだまだ全然音楽のことを知らないな……と最後まで打ちのめされっぱなしだった。テクノを求めるクラバーはマルチ・ジャンル極まる内容に引いていたかもしれないけれど、UKクラブ・カルチャーの懐の深さや多国籍的なセレクトに本当に感動した。すばらしいギグだった──人生最良とすら言えるほどの。

 ちなみに、ドラムのあとにはオーロラ・ハラルのロング・セットも控えていたのだけれど……彼のDJセットのあまりの内容に憔悴し、ふらふらと4Fラウンジへ移動。YELLOWHURU氏の陶酔感あふれる選曲に耳を傾けながらとりとめのない話に終始、映画館を出たあとに立ち寄る喫茶店のような過ごしかたでピークタイム後を棒に振ってしまった。ただ、ドラムによるフロアへのサジェストを引き継ぐことなく、ヌルっと四つ打ちにシフトして切り替わる流れには、目に見えない断絶を感じてしまい乗り切れず。プロパーなテクノの美学に100%乗り切れない自分の雑食さ、邪道さ、傍流趣味を改めて強く再確認。しかし誇らしい。「まあ、自分が好きなのはこれなんでね」という気持ちがコンプレックスや負い目なく自然と湧き上がるような、自由闊達な彼のDJセットに本当に勇気づけられた。がんばろう。

 夜明け前、Hue Rayたちに挨拶をしてWOMBを出ると、眼前には雪化粧の円山町が広がっていた。嘘みたいな静けさ。翌日の衆院選の暗澹たる結果を直視する前に、綺麗な景色を目に焼き付けて帰れたことがせめてもの救いか。忘れられない一夜となりました。

xiexie - ele-king

 xiexieを知らない人に紹介するのなら、まずアジアにおけるインディ・ロック・シーンの豊かな土壌について触れないわけにはいかない。

 台湾の落日飛車(Sunset Rollercoaster)、EVERFOR、打倒三明治(sandwich fail)などをはじめとして、東〜東南アジアの国と地域にはドリーム・ポップ、インディ・ポップ、AOR、チル、メロウ、浮遊感といった言葉で説明されるバンドが点在している。ここ10余年で顕在化した、非常に広い範囲に緩く共有されたひとつのシーンといえる。支配的というほどのシェアではないにせよ、アジアにはこうした音楽性のバンドを好意的に受け入れるマーケットが確かに存在しているのだ。

 2024年、台湾の野外フェスに出演したxiexieは、ネームヴァリューでも奇をてらったパフォーマンスでもなく、ただただ鳴らしている音楽のよさだけで存在を証明してみせた。
 ステージ間を移動中の観客たちが、立ち寄る予定のなかったステージの方角から漏れ聴こえるxiexieの演奏に足を止める。ひとりまたひとりと惹き寄せられ、xiexieは最終的に超満員の観客から喝采を浴びた。ロック・バンドのマジックを信じている人なら誰もが夢見る光景を実現させてしまったバンド、それがxiexieだ。

 その要因として、xiexieの淡く揺蕩うようなサウンドが、先述したいわゆる“ドリーミー”な音楽性を希求する土壌に“刺さった”ことが挙げられる。それは間違いないのだが、あくまで結果的に似たものを解釈しうるだけであって、彼らのオリジンはドリーム・ポップとは別のところにある。

 バンドの発起人である飛田興一は、xiexie結成当初のリファレンスとしてビッグ・シーフやリアル・エステートをはじめとした2010年代のUSインディを挙げている。
 それを踏まえてxiexieの音楽を聴けばぐっとピントが合うはずだ。ドリーム・ポップやAORからの影響よりも、まさしくビッグ・シーフやリアル・エステート由来のフォーキーなフレージングが土台に感じられるだろう。
 今回のリリースでもそうした部分は通底して感じられる。特に『ocean』のリフには当時のUSインディを想起させるノスタルジーや少しばかりの妖しさが匂い立つ。

 また、USインディ的な土台を包み込むようにかかった強めのリヴァーブがリファレンス2バンドとのわかりやすい相違点と言え、またこれこそが結果論として“ドリーミー”という見方に繋がったと推測できる。
 ただ、xiexieは“ドリーミー”をやろうとしてやっているわけではないのだ。どちらかといえばxiexieのリヴァーブは“サイケデリア”と形容すべき系譜のものでは、と思うところもある。
 今作でも1曲目の“sleeping in my car”から一貫してリヴァーブが前面に出ている。特にヴォーカルとギターへのかけ具合がちょうど同程度に感じられ、ひとかたまりの音像として向かってくる印象。リヴァーブは霧のようとかスモーキーとか喩えられることが多いが、今作の場合はしっかりと角が立つクリームのような厚みとふくよかさが感じられる。そうした音作りは、『zzz』というタイトル、ならびに「無意識をめぐるひとつの旅」という今作のテーマにぴったりだ。ボリュームのある羽毛布団に包まれて微睡むような充足感を想起させる。

 もうひとつ、xiexieの音楽性を形作る要素として見逃せない点がある。メンバーそれぞれがジャズ、ファンク、ボサノヴァ、アシッド・ジャズなど、横ノリの音楽を経てxiexieに参加している、その経歴だ。つまり“踊らせようと思えば踊らせられる”人たちなのだということ。
 飛田曰く自分にできるブラック・ミュージックはxiexieの前のバンドでやり尽くしたとのことだが、xiexieにもそうした“踊れる”フィーリングは着実に滲み出ている。
 今作で言えば“sleeping in my car”ではシェイカー(あるいはタンバリンか)、“ocean”のハンドパーカッションなど、横に揺れるリズムが強調されるトラックが印象的。
 発見だったのが、いわゆる“ダンス・ミュージック”ほどキレのいいリズムを聴かせるものではなく、ファジーに揺れる音像で自然と体を揺すらせるくらいの今作のような音楽のほうが、踊り慣れていないオーディエンスの多いこの国では結果的により“踊れる”のではないか、ということ。この点は、本人たちがかつてインタヴューで語った“USインディ的な音楽性は十分にオーヴァーグラウンドで通用するはずだ”という信念にも通ずる。xiexieの音楽はアジアの国と地域で支持されるにふさわしい価値を確かに持っているが、日本国内でこそより多くの大衆に評価される可能性を秘めている。

 ここ6〜7年の話だろうか、日本ではまだファンダムを確立しきっていなかったり、メジャーで活動した時期を経てインディーズに出戻ったり、なにせ現状あまり大きな箱で公演を打っていないバンドが、中国に招かれるとおよそShibuya WWW〜Zeppクラスの箱を回るツアーをソールドアウトにして帰ってくる、といった現象が起こっていた。過去形になったのはつい最近だ。高市首相の発言に端を発する日中間の緊張状態によって、こうした中国ツアーの動きはとんと鳴りを潜めてしまった。
 バンドにとって今後の活動を経験値の面でも金銭面でも下支えする貴重な機会が、社会情勢次第で突如として立ち消えてしまう。特に日本国外のアジアの国と地域で支持されているxiexieはこうした影響を大きく受ける可能性がある。そうした時節柄もあって、淡く揺蕩う『zzz』の音像を浴びながら、同じく淡く揺蕩う不確かな存在である現代のインディーズ音楽、またロック・バンドという文化そのものについて思いを馳せずにはいられなかった。音楽は、アートは、ぼうっとしているとある日突然もう二度と味わえなくなる。淡く揺蕩うものを味わうオーディエンスのひとりとして、その不確かさに誠実に向き合っていたいと思う。

Stones Taro - ele-king

 京都拠点のDJ/プロデューサー、Stones Taroが4曲入りの新作EP『Foglore#1』をセルフ・リリース。「Foglore」シリーズはLomaxと運営する自主レーベル〈NC4K〉とは別のプロジェクトとして始動したもので、「霧(Fog)」を想起させるサウンド・デザインと、「伝承・民話(Folklore)」のような時間軸を感じさせないアレンジを特徴とするそうだ。

 ダブ・テクノ、ダブステップ、ディープ・ハウスなど多様なダンス・ミュージックに精通するStones Taroは、DJとしても世界各国でたしかな評価を得ている。そんな彼が、現代的なプロダクションと古くから存在する音楽のような普遍性の両立を改めて志向する、という点も気になるところ。購入・視聴はBandcampにて。

Artist: Stones Taro
Title: Foglore#1
Label: Self-Released
Format: Digital / 12 inch
Release Date: 2026.2.20
Buy / Stream : https://stonestaro.bandcamp.com/album/foglore-1

Tracklist:

Stones Taro - Illegalized Dub
Stones Taro - New Mineral
Stones Taro - Obscured Breath
Stones Taro - Twist Thumb


Stones Taro Profile

京都在住のDJ/プロデューサー。

イギリスのScuffed Recordingsから EPを発表以降、Shall Not Fade、Hardline SoundsそしてFuture Classicなど世界各国の主要レーベルから次々と楽曲をリリース。ハウス、UKガラージ、ダブ、ブレイクビーツそしてジャングルの要素が絡み合うユニークな楽曲は世界中のDJ/リスナーを熱狂させている。

2024年からはイギリスRinse FMのマンスリーレジデントに就任。日本在住ながらUKダンスミュージックシーンの重要プロデューサー/DJとして扱われる稀有な存在である。

Star Festival、Rainbow Disco Club、FFKTそしてFuji Rockなどの国内主要フェスをはじめ、オランダ最高峰フェスティバルの一つDraaimolenや、幅広い層からの定評があるイギリスのWe Out Hereへも出演。ワールドツアーとしてアジア、ヨーロッパ、オーストラリアの各地を巡り、DJとしてもワールドワイドに高い評価を受けている。

京都在住のDJ/プロデューサーであるLomaxと、2017年より京都拠点のダンスミュージックレーベル「NC4K」の運営を開始。継続的なリリースとパーティ開催を重ね、国内外を繋ぐ重要レーベルとして注目を集める。

キングギドラ - ele-king

 Kダブシャイン、Zeebra、DJ OASISによる日本語ラップ界の伝説的グループ・キングギドラによるデビュー・アルバムの特別盤『空からの力:30周年記念エディション』のインストゥルメンタル・ヴァージョンが、LP盤で4月25日に発売決定。2枚組・完全限定プレスの特別仕様となる。30周年記念盤にはトム・コインの手によりアップデートされたリマスタリング・ヴァージョンとなっており、そのインスト盤はファン垂涎の内容といえるだろう。

 また、『空からの力』発表の翌年となる1996年にリリースされたEP『影』も、30周年を祝して初のアナログ化が決定。『空からの力:30周年記念エディション - Instrumental Versions』との同時発売となる。お見逃しなく。

Artist: キングギドラ
Title: 空からの力:30周年記念エディション - Instrumental Versions
Label: P-VINE, Inc.
Format: LP (2枚組仕様/完全限定プレス)
Release Date: 2026.4.25
Number:PLP-8327/8
Price: ¥6,600
Pre-Order: https://anywherestore.p-vine.jp/products/plp-8327-8

<Tracklist>

SIDE A
1. 未確認飛行物体接近中 (急接近 Mix) (Instrumental)
2. 見まわそう (Instrumental)
3. 大掃除 (Instrumental)
4. コードナンバー 0117 (Instrumental)

SIDE B
1. フリースタイル・ダンジョン (Instrumental)
2. 空からの力 Part.2 (Instrumental)
3. 星の死阻止 (Instrumental)

SIDE C
1. スタア誕生 (Instrumental)
2. 行方不明 (Instrumental)
3. 真実の弾丸 (Instrumental)

SIDE D
1. 空からの力 (Mind Funk Remix) (Instrumental)
2. 行方不明 (DJ Kensei's Smooth Mix) (Instrumental)
3. 真実の弾丸 (Flute Mix) (Instrumental)

Artist: キングギドラ
Title:
Label: P-VINE, Inc.
Format: LP (帯付き仕様/完全限定プレス)
Release Date: 2026.4.25
Number: PLP-8326
Price: ¥4,950
Pre-Order: https://anywherestore.p-vine.jp/products/PLP-8326

<Tracklist>

SIDE A
1. 行方不明 (DJ Kensei's Smooth Mix)
2. 重要参考人が見た犯行現場
3. 真実の弾丸 (Flute Mix)

SIDE B
1. 地獄絵図 (AOZの視点)
2. 空からの力 (Mind Funk Remix)

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