プレフューズ73の最初の12インチ(透明ヴァイナルだった)、これには本当に度肝を抜かれたものだった。当時の彼はほぼ無名だったが、しかし、その1枚はまったく衝撃的で、彼は瞬く間に時代の寵児となった。
ソフトウェアを使うからこそ可能なエディット、10年後にはお決まりになった声ネタのチョップ、それら新しい技術(IDM的アプローチ)をヒップホップのフォーマットに応用したシングル「Estrocaro EP」は、アブストラクトと呼ばれたジャンルを更新した。これは誇張でなく言うが、時代を切り拓いた作品だった。たとえるなら、DJシャドウとフライング・ロータスの溝を埋めたのがプレフューズ73だった。
プレフューズ73は、それから、〈ワープ〉レーベルを中心に多くのアルバムを発表している。作者のスコット・ヘレンには、サヴァス&サヴァラスやピアノ・オーヴァーロードなどの他名義での作品もあるが、プレフューズ73が彼のメイン・プロジェクトだ。
今週の4月22日(木曜日)、プレフューズ73年の4年ぶりの最新作が日本先行発売される。CD2枚組。彼の静と動はより複雑にアップグレードされているが、相変わらずの優美なメロディが流れてくる。
エイフェックス・ツイン、スクエアプッシャーと続いて、そしてここに来てプレフューズ73の登場と、IDMのベテラン連中は完全に息を吹き返したな。やれやれ。
Rivington Não Rio + Forsyth Gardens and Every Color of Darkness
AWDR/LR2 / RUSH PRODUCTION
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1976年生まれ。いくつかの職種を経て、20代半ばで出版業界入り。編集者、ライターとしてポップカルチャーを中心に、原稿執筆や雑誌、単行本編集を行う。編集近刊に坂口恭平『幻年時代』(幻冬舎)、『MY BEST FRIENDS どついたるねん写真集』(SPACE SHOWER BOOKs)など。著書に『メモリースティック ポップカルチャーと社会をつなぐやり方』(DU BOOKS)、共著に磯部涼との『遊びつかれた朝に――10年代インディ・ミュージックをめぐる対話』(ele-king books/Pヴァイン)などがある。
78年生まれ。90年末より音楽ライターとして活動を開始。主に日本のマイナー音楽と社会の関わりについてのテキストを執筆し、04年に単著『ヒーローはいつだって君をがっかりさせる』(太田出版)、11年に『音楽が終わって、人生が始まる』(アスペクト)を刊行。その他、編著に風営法とクラブの問題を扱った『踊ってはいけない国、日本』とその続編『踊ってはいけない国で、踊り続けるために』(共に河出書房新社)、歌詞がテーマのインタヴュー集『新しい音楽とことば――13人の音楽家が語る作詞術と歌詞論』(SPACE SHOWER BOOKS)、共著に九龍ジョーとの『遊びつかれた朝に――10年代インディ・ミュージックをめぐる対話』(ele-king books/Pヴァイン)等がある。