「Nothing」と一致するもの


《ゴースト・ティーン》2013年 インクジェット・プリント

 東京都写真美術館で12月13日から始まった、日本の公立美術館では初となる個展『亡霊たち』のオープニングに出席したアピチャッポン・ウィーラセタクンはすぐさまオランダに飛んで Prince Claus Awards の授賞式に出席し、また日本に戻って数日の滞在中にも同館でのシンポジウムやイメージフォーラム(渋谷)で開催中の特集上映におけるQ&A…と多忙を極める中、そのスケジュールの合間を縫ってインタビューに応じてもらうことができた。

 今回の個展(2017年1月29日まで開催)は日本初公開作品も含むビデオ・インスタレーション及び写真などから構成されている。「カンヌで賞を獲った映画監督」ではなく、現代美術作家としてのアピチャッポンの活動に触れられる貴重な機会であり、また同館1階ホールで同時開催されている「アピチャッポン本人が選ぶ短編集」(全25作品4プログラム、2017年1月5日まで)では長編作品に比べて国内上映が極度に少ない短編作品をまとめて観る事ができる。

 本インタビューはLGBTコミュニティサイト「2CHOPO」にて連載中の溝口彰子氏の企画による habakari-cinema+records(今泉浩一+岩佐浩樹)との共同取材であり、実現に際しては東京都写真美術館の皆様に多大なご尽力を頂いた。領域を横断しつつ展開される彼の表現活動に相応しく話題は多岐に渡ったが、今回自分が一番聞いてみたかったのは作品における音について彼が何を重視しているのか、ということだった。アピチャッポン映画における、特にあの取り立てて事件性があるわけでもないのにこちらの聴覚を異常に鋭敏な状態にさせ続ける環境音の「心地よさと異様さ」はどこから来るのか、という問いからインタビューを始めた。

アピチャッポン・ウィーラセタクン Apichatpong Weerasethakul
 1970年タイ・バンコクに生まれ、タイ東北部イサーン地方、コーンケンで育つ。コーンケン大学で建築を学んだ後、シカゴ美術館付属シカゴ美術学校で映画制作修士を取得。1993年に短編映画、ショート・ヴィデオの制作を開始し、2000年に初の長編映画を制作。1999年に 「キック・ザ・マシーン・フィルム (Kick the Machine Films)」を設立。既存の映画システムに属さず、実験的でインディペンデントな映画制作を行っている。長編映画 ブンミおじさんの森』で2010年カンヌ国際映画祭最高賞 (パルムドール)受賞。映画監督として活躍する一方、1998年以降、現代美術作家として映像インスタレーションを中心に旺盛な活動を行っている。2009年の大規模な映像インスタレーション「プリミティブ」は、ドイツ・ミュンヘンのハウス・デア・クンストにはじまり、数多くの美術館を巡回。
 2012年にチャイシリと協働でドクメンタ13に出展、2013年に参加したシャルジャ・ビエンナーレではチャイシリとの協働作品が金賞を受賞。同年に福岡アジア文化賞を受賞している。2015年は初のパフォーマンス作品《Fever Room》を韓国・光州のアジアン・アート・シアターで発表し、各都市で公演が続いている。2016年にチェンマイに開館したMIIAM現代美術館で、タイ初となる大規模個展を開催した。チェンマイ在住。


「自分にとって重要なのは、撮影したその瞬間のアンビエンスとしてそこに存在した音が録れていることです。」

・あなたの映画からは「最終的に音はこうしたい」という意思や判断が感じられます。録音係や整音担当の方はもちろん居ると思うのですが、撮影時及び編集に際して、どのように「音」の処理に関わるようにしていますか?例えば信頼できる技術者と一緒に「ここはもうちょっとこうして」と現場で試行錯誤されたりするのでしょうか。

アピチャッポン・ウィーラセタクン(以下AW):私自身は録音やミキシングについて技術的な事を判っている訳ではありません。映像を編集するやり方は知っていますが、音に関しては自分が欲しい成果を得る方法を知らないので、技術者と密にコミュニケーションを取ることが重要になります。長らく(10年くらい)ずっと同じ人達と共に作業してきたので、例えば録音担当であれば「あ、いま聴こえてるこの音はきっと監督が欲しいって言うだろうから録っておこう」と録音しておいてくれたり、ミキシング担当だったら編集中に「監督はこの周波数帯は嫌いだから別なものにしよう」といった感じでやってくれます。それは長年の付き合いの中で培ったものです。

・映画に限らず、作品に音を付ける時に意識している事があれば教えてください。

AW:自分にとって重要なのは、撮影したその瞬間のアンビエンスとしてそこに存在した音が録れていることです。例えば、今このインタビューで皆さんと話をしているこの部屋に明日また同時刻に同じように座ったとしても、そこにある音はまた違うはずだ、といった事を確信しているからです。

・『世紀の光』(2006)や『メコンホテル』(2012)など、映画の中でアコースティックギターを演奏する人が(BGMやドラマの背景としてではなく)割ときっちり場面にフィーチャーされているのが印象的なのですが、それは自覚的にされていることなのでしょうか。

AW:ええと、意識はしていませんでした。私自身はピアノを弾きますが、では何故ギターなのか、と言われると自分でもよく判りません(ただかなり初期の作品から使ってるかも知れませんね。)『メコンホテル』で出てくるギタリストは高校時代に出会った友人で、かなり後になって再会した時に地元でミュージシャン兼ギター教師をしている事を知り、出演してもらったんです。

『世紀の光』予告編


「観ることの興奮を共有しリンクすること、自分の作品にはそういう特徴があると思います。」

・あなたの映画、特に短編作品を観ていると、自分も映画を作りたくなります。自分が(まだ影も形もない自分の映画の)撮影や編集している様子などの感覚が、何故かリアルに感じられて触発されるのですが、これはあなたが「観ること」と「創ること」をひとつながりに捉えているからなのではないか?と思います。作家/観客と言うものは明確に区分できるものではなく、一人の人間の中で共存するものなのではないでしょうか。

AW:それは本当に光栄です(笑)。と言うのは、観ることの興奮を共有しリンク出来ること、それがまさに達成されているように思うからです。短編であれ長編であれ、私が発表した作品にはカメラの背後に居る人間の気配を感じる、という映画制作のメカニズムを示すと同時に「自分自身もまた観客であると感じること」という特徴があると思います。そこには必ず何かがあるはずで、自分でも上手くは説明できませんし、常に意図的にやっている訳でもないのですが、それが届いているのかな、と思います。

・展覧会に合わせて写真美術館で上映されている自選短編集の中で上映された『FOOTPRINTS』(2014)を観て、これは長編『光りの墓』の撮影風景をメイキング的に撮ったものなのかな?と思ったのですが、長編を撮っている時の「あ、これは短編も同時に作れるかも」といった思い付きによるものですか?

AW:あれは『光りの墓』のメイキング場面ではなくて別作品なんです。ロケーションは同じなのですが、『光りの墓』の数ヶ月前に撮ったものです。サッカー・ワールドカップから資金が来たので作ったのですけれど、私自身はスポーツが好きじゃないので(笑)一つの映画の中で兵士が寝ていて/ギターを弾いている人が居て/女性たちが歩いている、といった要素が同時進行しているのを自分なりの「ゲーム(試合)」としてこの短編を作りました。ワールドカップ側も気に入ってくれた…と、思います(笑)。

・自選短編映画集の全てのプログラムで最初に配されている『The Anthem(国歌)』(2006)や『世紀の光』、『光りの墓』などに見られるような、それまでずっと一点をじっと見つめていた視点がいきなりダイナミックな「運動」に放り込まれる、という構造に爽快感を感じるのですが、そうすることによって「パーソナル/パブリック」な対比を際立たせたい、という意図があるのでしょうか。

AW:様々な違いが共存することの美しさに対する敬意、ということです。屋外と屋内、親密な状況とパブリックな光景、静的/動的、などは映画言語でのスタイルにおいても大きく異なった語り口になります。そのコントラストの美しさ…とは言え、これは出来あがった後になって体系的に分析してみれば、いうことであって、シナリオを書いたり作ったりしている最中は自分の中で自然に湧き上がってくるものに従っています。


「これはどこで上映出来るだろうか、などと考え出したら映画が作れなくなってしまう。」

・日本でも、声を上げることが困難なマイノリティーの存在が幽霊(ゴースト)化されてしまう状況が昔からあります。あなたもそうした「声」を拾い上げて聴くこと、記録して残すことを意識的にしているのだと思いますが、その成果である作品を一番伝えたいはずのタイでの上映が一筋縄ではいかない状況についてどう考えていますか。

AW:もちろん、翻訳字幕越しの観客よりもタイ人の方がきっとより微妙なニュアンスを理解できるでしょうし、タイで上映できたらとてもいいとは思います。検閲の問題や、マーケット規模の小ささなどからなかなか難しいのですが…。ただ無責任なようですけれども、正直なところ作品を作るところまでが自分の仕事であって、それがどこで上映されても別にいいと思っています。自分にとって映画制作はあくまで自分のための作業でかつパーソナルな経験であり、イメージと自分との関係や、フレーミングを学ぶことです。何よりこれはどこで上映出来るだろうか、などと考え出したら映画が作れなくなってしまう。

(そして検閲の話題から日本における表現の自主規制の話題がひとしきり続き、次の質問に移ろうとした時、アピチャッポンはふとこんな事を言った。)

自分がとても興味を引かれるのは、「メディアがいかに社会を形作るのか」という事で、私が聞いたのは日本ではあまり暴力について報道されないということでしたがーー例えばヤクザの抗争事件とかですね。タイではそういった暴力についての報道がかなりの分量(一面に写真入りとか)でなされます。そうした事の積み重ねがその国のアイデンティティーを形成するのではないかと言うこと、日本について言えば、暴力についてはあまり報道しないことによって人々が「ここは安全だ」と安心する、それがこの国の治安を良くすることに貢献しているように思えます。報道が人々を暴力的に挑発せず、長い時間を掛けて人々の振る舞いを方向づけているのではないでしょうか。ただ、それにしては日本映画の中にはものすごく暴力的なものがある印象がありますけれども。

・次回作の計画があれば教えてください。

AW:直近の計画としては短編映画やインスタレーションがありますが、次回の長編映画はタイではなく、南米で撮ろうと思っています。理由としてはタイで撮るのが段々難しく危険になっていること、南米は変革のただ中にあるように思われて自分にとって刺激的であること、自分にとって何かの境界線を超えることが必要な時期だと思っていること、などですがまだ具体的にどこで誰と…といった段階ではありません。が、次回作で自分の映画に対する見方が変わるといいな、とも思っています。まだ脚本も書き始めてませんし、今はアイディアを溜めているところです。取り敢えず話が来ているプロデューサーに会うため来年、コロンビアに行くことになっています。恐らくこの先4年くらいを掛けるプロジェクトになるでしょうか。その時はおそらく現地の(プロの俳優ではない)人も使うと思います。


《ナブア森の犬と宇宙船、2008年》2013年 発色現像方式印画  東京都写真美術館蔵

「坂本龍一、デヴィッド・ボウイとかプリンス…全部エイティーズですね。」

・最近聴いて好きだった曲やアルバムはありますか。古くても新しくても構いません。

AW:今はもう自発的に新しい音楽を追うということを全然していないので、思い付くのは5年前とか10年前とかのものになります。新しい音楽は専ら友人知人に教えてもらって、という感じで、気に入ったものに出会って自分の映画に使うこともありますし、過去には日本や韓国のアーティストの曲を使ったこともあります。80年代はもっと旺盛に聴いていました。例えば坂本龍一、デヴィッド・ボウイとかプリンス…全部エイティーズの音楽ですね。

自分にとって音楽はとても大切なものなので何か作業をしながら聴くということが出来なくて、ながら聴きするのはジョギングの時くらいでしょうか。音楽はそれ自体をひたすら聴くべきだ、と言うか。ええと具体的に何か、ということだと…ああバーナード・ハーマンがヒッチコック作品のために作った音楽群は大好きです。とりわけ『マーニー』(1964)のサントラはとても美しいと思います。


【後記】
 スポーツは嫌いです、と言いつつ「ジョギングするアピチャッポン」という想像するのが微妙に困難な姿も垣間見せてくれたインタビューになりましたが、もちろん相手は現代最高レヴェルの運動能力を持った表現者であって、こちらは3人掛かりで何とか撃ち返せた感もあり、ともあれ彼のあくまで静かなのに不思議とよく通る声や、柔和な話し方や表情の中に潜んでいるはずの鋭利な牙を確信するには充分なものでした。

 アピチャッポンを語る際にしばしば「記憶」というキーワードが使われはするのですが結局のところ、作品を通じて一貫して彼がこちらに見せているのは「記憶の手掛かりとしての映像や音」であって、当然ながら彼の記憶そのものではありません。今回話を聞いて感じ取れたのは「その時その場所にあった筈のもの ≒ 撮影した時そこにあった音」をできるだけ正確に現在に留めたいという欲望または執着であり、それは本人が語るように「ごく個人的な」作品でありつつ、表現する際の手段の秀逸さが、その活動領域を今もなお世界に向かって押し拡げているのだろうと思います。

 最後の、雑談的に投げた「好きな音楽は」という紋切り型な質問に対する回答も、このインタビュー中においては「80年代はティーンズでした(以上終わり)」といった定型文でしかないのですが、坂本龍一とデヴィッド・ボウイ、という名前に反応した日本のゲイ・インディペンデント映像作家:今泉浩一が、過去に『戦場のメリークリスマス』を「自分が一番好きなLGBT映画」として挙げたこともあるこのオープンリー・ゲイの映像作家に切り込んでいくさまを含む、本稿とほぼ違う内容でありかつ相互補完的なもう一つのインタビュー記事は「2CHOPO」で読むことができます。

 このインタビューの内容に即して今回の写真美術館における展示作品を一つ挙げるとすれば、『サクダ(ルソー)』と題されたビデオ作品があります。同時に撮られた/録られた「映像と音」が作品として他者に提示される時、果たしてそれは誰のものなのか、という示唆に富んだ作品です。また、展覧会より早く終了してしまう短編作品上映プログラムは本当に貴重な機会なので、関心を持たれた方はどうかお見逃しなく。

『アピチャッポン・ウィーラセタクン 亡霊たち』展
2016.12.13(火)~ 2017.1.29(日)
東京都写真美術館 地下1階展示室
〒153-0062 東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-2572.html

上映「アピチャッポン本人が選ぶ短編集」
2016.12.13(火)~ 2017.1.5(木)
東京都写真美術館 1階ホール
https://topmuseum.jp/contents/exhibition/movie-2703.html

Khidja - ele-king

 アラビックでダビーなハウスを鳴らすルーマニアはブカレストのデュオ、カディージャ(Khidja)が来年1月21日に来日する。
 2014年にリリースされた12インチ「Mustafa & Abdul」で、ジ・アスフォデルスでアンディ・ウェザオールの相棒をつとめるティモシー・J・フェアプレイをリミキサーに迎えていたかれらは、同年、ウェザオール自身の主宰するフェスティヴァルにも出演を果たしている。その後もウェザオールは自身のDJセットでカディージャの手がけたリミックス音源をかけ続けており、これはもう寵愛を受けていると言ってもいいのではないだろうか。いわゆる民族音楽とハウスを融合させたかれらのサウンドは、今秋興味深いアルバムを発表したアシッド・アラブにも通じるところがあるし、この動き、これからどんどん加速していくものと思われる。
 いまのうちにチェックしておいて損はないですよー!



ハウスやテクノ・シーンまでも巻き込む新たな音楽ムーヴメント、モダン・エスニックを牽引する Khidja が国内屈指の Nu Disco Party、Huit Etoiles で初来日!

デビュー間もなく Andrew Weatherall に寵愛され、Red Axes からフル・サポートを受けるのも納得できる頭ひとつ飛び抜けたプロダクションとライヴ・セット! いま最も期待を集めているルーマニアの新鋭デュオ Khidja(カディージャ)が初来日!

近年、いわゆる Nu Disco シーンにおいて新たなるムーヴメントが起こっている。レーベル〈Disco Halal〉や、昨今破竹の勢いで活躍するデュオ Red Axes や Moscoman などはモダン・エスニックと呼ばれ、現在ハウスやテクノまでをも巻き込み時代の中心になりつつある。

そのなかでも彼らに並び称されている驚くべきユニットが Khidja である。彼らのサウンドは中東のエレクトロニック・ミュージックとオーガニック・サウンドを融合させ、シンセサイザーと伝統楽器やグランジーなギターを調和させ、クラウトロックを彷彿させる。

前例のないハイブリッドな進化を遂げ、過去の要素がすべて、電子音とドラムで強化されたら、何が起こるか。できあがるサウンドは、過去に積み上げてきた中東の雰囲気を残しつつ、ハウス、テクノ、ニューウェーヴ、インダストリアルなどに近い、新しいエリアを探求し続けている。

時代から時代へ、ジャンルからジャンルへと、時間を超えて形を変え続ける至極の音楽体験をぜひお見逃しなく!!

Khidja : https://soundcloud.com/poor-relatives

【イベント概要】
" Huit Etoiles Vol.12 ft Khidja "

DATE : 1/21 (SAT)
OPEN : 23:00
DOOR : ¥3,500 / FB discount : ¥3,000

=ROOM1=
Khidja
Sugiurumn
Que Sakamoto
Mustache X
Jun Nishioka

=ROOM2=
Tamaru & Sotaro
EMK & Butch
Ryota O.P.P
PALM BABYS
Bless Hacker
Ayana JJ

※ VENTでは、20歳未満の方や、写真付身分証明書をお持ちでない方のご入場はお断りさせて頂いております。ご来場の際は、必ず写真付身分証明書をお持ち下さいますよう、よろしくお願いいたします。なお、サンダル類でのご入場はお断りさせていただきます。予めご了承下さい。
※ Must be 20 or over with Photo ID to enter. Also, sandals are not accepted in any case. Thank you for your cooperation.

VENT : https://vent-tokyo.net/schedule/huit-etoiles-vol-12-ft-khidja/
Facebookイベント・ページ : https://www.facebook.com/events/1613826875585829/

 

【INFO】
URL : https://vent-tokyo.net/
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Danny Brown - ele-king

 ナイン・インチ・ネイルズのことかしらと思って蓋を開けてみると、実際にサンプリングされていたのはグル・グルだった。1曲目の“Downward Spiral”からそういう調子なのである。デトロイト出身でありながらグライムやトーキング・ヘッズへの愛を語るこの風変わりなMCは、一体何を考えているのだろう。シングルとして先行リリースされた“When It Rain”には荒んだデトロイトの情景が描かれているし、DJアサルトの名前も登場する。かつてはJ・ディラの未発表音源に様々なアーティストが手を加えた『Rebirth Of Detroit』(2012年)や、エミネムのレーベルのコンピレイション『Shady XV』(2014年)にも参加していたし、デトロイトの生まれであるというアイデンティティ自体は保守し続けているのだろう。しかしやはりこれまでダニー・ブラウンが世に放ってきた音楽は、通常「デトロイト」という単語から連想されるサウンドとはだいぶ異なっている。



 『Hot Soup』(2008年)に具わっていた「古き良き」ブラックネスは、『XXX』(2011年)以降どんどん削ぎ落とされていく。そのプロセスの終着点のひとつが2013年の前作『Old』だったのだとすれば(ラスティの起用は大正解だった)、本作は「その後」を模索するダニー・ブラウンの「エキシビション」だと言えるだろう。このアルバムでは前作と異なりサンプリングが多用されているが、それも彼の音楽的趣味の異質さを「展示」するためだと思われるし、かつてタッグを組んだブラック・ミルクの手がける“Really Doe”やエヴィアン・クライストの手がける“Pneumonia”といったダークなトラックからは、現在の彼の苦闘や葛藤を聴き取ることができる。



 他方で“Ain't It Funny”や“Golddust”、“Dance In The Water”なんかはもはやロックと言い切ってしまった方がいいような吹っ切れたトラックで、ほとんどやけくそのように聴こえる。これらのトラックを「ハイ」だと捉えるならば、先述のダークなトラックたち、あるいは“Lost”や“White Lines”といった不気味な夢を紡ぐトラック群は「ロウ」だと考えることができよう。そのふたつの極の同居こそがこのアルバムの肝なのだと思う。それらは、まさにドラッグによって引き起こされるふたつの結果だ。実際、リリックの内容は前作に引き続きドラッグに関するものばかり。ダニー・ブラウンは若い頃ディーラー業を営んでいたそうだが、では彼はこのアルバムで自身のサグさを自慢したいのだろうか?
 たしかに、本作で展開されるロック~ポストパンク風のトラックや、ドラッグ体験をひけらかすかのようなリリックについて、「白人に媚を売っている」という判断をくだすことも可能だろう。でも、本当にそうなのだろうか? むしろ本作は、「みんなドラッグについてラップしてる俺が好きなんだろ? だからその通りにやってやったよ」というメタ的な態度の表明なのではないか。アルバムのタイトルはJ・G・バラードを借用したジョイ・ディヴィジョンの同名曲から採られているが、そういう自己の見せ方まで含めて丸ごと「残虐行為展覧会」ということなのではないか。さらに言ってしまえば、〈Warp〉との電撃契約やリリースの前倒しまで含め、何もかもが演出なのではないか。
 なるほど、たしかにルックスにせよトラックのチョイスにせよフロウにせよ(ケンドリック・ラマーやBリアルの参加も話題になったが、しかしゲストよりもやはり本人のラップに耳がいってしまう)、ダニー・ブラウンが一風変わったMCであることは間違いない。そういう意味で彼は、近年のUSインディ・ヒップホップの隆盛の一端を担いながら、そのなかで異端であることを引き受け続けているようにも見える。しかし、練りに練られたこのアルバムからは「狂人」や「変人」といったイメージはそれほど呼び起こされない。じつはダニー・ブラウンは、喧伝されているそのペルソナとは裏腹に、ピュアで知的な音楽的チャレンジャーなのではないだろうか。

 と、ダークでドープなアルバムの後には、リラックスして聴ける1枚をご紹介。



 初めてOLIVE OILの名を意識したのはいつだったろう。たぶんB.I.G JOEの『LOST DOPE』(2006年)だったと思うが、エイフェックス・ツインやスクエアプッシャーが好きだったというOLIVE OILにはどうしても親近感のようなものを抱いてしまう。彼の最新作は、Popy Oil x Killer Bongによるコラージュ・アート・ブック『BLACK BOOK remix』の初回限定版に付属したサウンドトラックCDである。
 コラージュ作品のサウンドトラック、と聞くと現代アートのような何やらハードルの高い音響作品を思い浮かべてしまうかもしれないが、このCDに収められているのは非常に聴きやすい短めのトラックたちだ。『カウボーイビバップ』や『サムライチャンプルー』といった渡辺信一郎のアニメを観ているときの感覚に近いと言えばいいのか、実際には存在するはずのないあんな場面やこんな風景の断片が次々と頭の中を横切っていく。
 “UPDATERs”や“NOO$”などは、00年代前半のプレフューズ73あるいは往年の〈Stones Throw〉や〈Ninja Tune〉の諸作から最良の部分のみを抽出して引っ張ってきた、と言えなくもない。決して強く自己主張するわけではないがしっかりとトラックを支えるハットの横を、IDMを経由した細やかな音響と、美しいメロディの数々が通り過ぎてゆく。この心地よさは、ちょうど年末年始にぴったりだろう。ギャングスタやトラップに疲れてしまったあなたの耳に、最大限の快適さをもたらすこと請け合いである。

アート・リンゼイは底しれない!

ブラジル音楽の官能、ノーウェイヴの雑音、アヴァン・ポップの華麗なる試み
──その偉大なる全貌をたどる、必読の1冊!

ソロ・アルバムとしては2004年の『ソルト(Salt)』以来13年ぶりとなる
新作『ケアフル・マダム(Cuidado Madame)』を発表するアート・リンゼイ。

坂本龍一やオノ セイゲン、三宅純といった日本人ミュージシャンとの親交も厚く、
官能的なブラジル音楽とパンク以降のNYノイズとを繋げることができる、
唯一無二のアーティスト。それがアート・リンゼイです。

『別冊ele-king』第5号は、そんなアートの幼少期から現在までを
あますところなく語ったロング・インタヴューを皮切りに、
その表現の核をかたちづくったアートや文学、
現在の活動拠点を置くリオでのサンバ・プロジェクトなどを詳述する、
日本はおろか世界にも類をみないアート・リンゼイを総覧する試みです。
カエターノ・ヴェローゾとの特別対談も必読!

2017年はアート・リンゼイ再評価の年です。

目次

【LONG INTERVIEW】
●アート・リンゼイ、新作『ケアフル・マダム』とヒストリーを語る
Part 1:ニューヨーク前史から90 年代へ(松村正人/高橋龍)
Part 2:ソロ活動期(中原仁)
Part 3:付言と断片もしくは解題(松村正人/高橋龍)

【CROSS REVIEW】
●『ケアフル・マダム』クロスレヴュー(高見一樹、吉本秀純、松林弘樹)

【INTERVIEW】
●メルヴィン・ギブス「音の干渉主義者の名参謀」
●イクエ・モリ「いつでも、自分にすごく近い音楽をやってきた」
●菊地成孔「ジョイフルなのにエレガント」
●今福龍太「ブラジルから広がるアメリカの地平」
●オノ セイゲン「誰も聴いたことのない音楽をつくるとなったとき
 最初にコラボしたのがアートだった」
●三宅純「彼の魅力は自己矛盾を抱え込みそれを隠さないところです」

【COMMENT】
●大友良英:アート・リンゼイのギターを語る
●ドローイング、コラージュ、テキスト:やくしまるえつこ

【DIALOGUE】
●中原昌也×湯浅学「ノーウェイヴ放談」

【CRITIQUE, COLUMN, ESSAY】
●畠中実「初期アート・リンゼイにおける特異性」
●吉田ヨウヘイ「フェイクジャズは、その後本当のジャズになった」
●佐々木敦「歌えるか歌えないのか、弾けないのか弾かないのか、
 そんなことはどっちでもいいじゃないか」
●吉田雅史「イニシャルAL の裂け目たち」
●恩田晃「都市の変調」
●ケペル木村「アートをアートたらしめるもの」
●江利川侑介「ブラジルの混淆」
●ケペル木村「ディスクガイド アート・リンゼイから聞こえるブラジル音楽」
●松山晋也「表層の官能」

【SPECIAL】
●アート・リンゼイ「トロピカリスタたち」
●特別対談:
 アート・リンゼイ×カエターノ・ヴェローゾ(松村正人/宮ヶ迫ナンシー理沙)

【DISCOGRAPHY】
●アート・リンゼイ セレクテッド・ディスク・ガイド

ele-king vol.19 - ele-king

特集:2016ベスト・アルバム30枚
音楽は時代の占い棒である!
さて、2016年のベスト・アルバムは何でしょう?

このクレイジーな時代=2016年には、
じつに称賛されたアルバム=『レモネード』や『untitled unmastered.』があり、
若々しくそしてエネルギッシュなテクノ作品『スポート』があり、
ハイブリッドを開拓する『ミラーズ』があり、
そのコンセプトにおいて話題となった作品=『ホープレスネス』があり、
素晴らしい悪意=『ベイビーファーザー』があり、
野心的なコンセプト作品=『ザ・シップ』があり、
ゲットーとオタクを往復するダンス=『オープン・ユア・アイズ』があり、
ヴェーパーウェイヴの政治的発展型=『Disruptive Muzak』があり、
そして思いがけないビッグ・アルバム=『ブラックスター』がありました。

2016年は、混迷する世界に抗うように音楽が輝いた年でもあります。
情況が悪くなればなるほど音楽は輝くというのは本当だったようで……
2016年ベスト・アルバム特集号です。

目次

【巻頭】
●ブライアン・イーノ(Brian Eno)、2万5千字インタヴュー(三田格+坂本麻里子)

【特集1】2016年ベスト・アルバム30
●2016年間ベスト・アルバム30枚(木津毅、小林拓音、高橋勇人、野田努、三田格、米澤慎太朗)
●コラム:US Hip Hop(吉田雅史)/Club Music(高橋勇人)/Experimental(細田成嗣)/Electronic(デンシノオト)
●座談会:2016年をめぐる冒険(木津毅、小林拓音、野田努、三田格、米澤慎太朗)
●ラフトレードNYの2016年(沢井陽子+George Flanagan)
●ロンドンの名物レコード店が選ぶ2016年のベスト(高橋勇人)
●日本語ラップ・ブームとは何だったのか?(磯部涼、泉智、二木信、山田文大)
●映画ベスト10(木津毅、水越真紀、三田格)

【特集2】What’s Going On――いま何が起きているのか/私たちにできること
●対談:栗原康×白石嘉治「通販に政治を持ち込むな!」
●緊急アンケート(雨宮処凛、陣野俊史、山本太郎、ほか)
●コラム:水越真紀「たくさんの『正しさ』たち」
●インタヴュー:五野井郁夫「ボブ・ディランの『時代は変わる』のように」

【インタヴュー】
●七尾旅人「時代を撃ち抜く」
●坂本慎太郎「今年は世界的にもいいことがなんもなかったですね」
●ヤイエル(yahyel)「宇宙人の野望」
●デトロイト新世代対談:カイル・ホール(Kyle Hall)×ジェイ・ダニエル(Jay Daniel)

【連載】
●アナキズム・イン・ザ・UK 外伝 第10回「ポリコレ棒とモリッシー」ブレイディみかこ
●ハテナ・フランセ 第6回「クリスマスの殺気」山田蓉子
●乱暴詩集 第4回「ママの暴力が社会を変えるとき──映画『未来を花束にして』」水越真紀
●音楽と政治 第8回「ヒップホップの非政治性」磯部涼

【Special】
●パンク40周年と英国ロック・ジャーナリズム(坂本麻里子)
●2016年の女性漫画の性との向き合い方──鳥飼茜を題材に(木津毅×三田格)

Chino Amobi - ele-king

 テキサスならではともいえるインダストリアル・グライムが鳴り響いていた。レイビット(Rabit)はそのように変貌を遂げていた。ちょうど2年前、「サン・ドラゴン(Sun Dragon)」が素晴らしかったと、本サイトでそのように書いて大いに期待していたにもかかわらず、レイビットが順調にアルバムまで辿り着いてみると、そこにはタイトルでキリスト教との関係を示唆する『コミュニオン(Communion)』(15)が完成していた。「骨を覆う肉体」「肉体に囚われて」。曲調も重苦しかった。予想外の重量感だった。直前のシングルが「バプティズム」というタイトルで、ケンドリック・ラマーやチャンス・ザ・ラッパーと時期も重なる。僕にとってそれは「何かの間違い」でしかなかった。
 
 ここにリー・バノンとチーノ・アモービが絡んでくる。デーデキント切断(dedekind cut)という数学理論を新たなユニット名としたリー・バノンにも「天使との会話」という曲名があり、まさかとは思うけれど、曲調はやはり重苦しい。チーノ・アモービのレーベル〈ノン〉からのリリースとなった『サクセッサー($uccessor)』もジャケット・デザインはコイルそのままで、〈ノン〉というレーベルはデザインだけを見ているとデス・イン・ジュンやコントロールド・ブリーディングが束になって帰ってきたような錯覚を覚えるほど。こうなるとニューエイジというより、いまのアメリカはもはや黙示録的な異様を呈しているとしか思えない。

 チーノ・アモービの表現は、しかし、アルカへのアンサーといった趣を含んでいる。グライムやチルウェイヴを入り口としていたレイビットやリー・バノンがクリシェに陥ったように感じられるのとは違い、いまのところもっともまとまった音源といえる『エアポート・ミュージック・フォー・ブラック・フォーク』はインダストリアルを宗教ではなくファッションに向かわせ、ポップ・ミュージックとしてのベクトルを忍ばせている。あからさまにOPNやクリッピングを思わせる部分もあり、ちょっとした飛躍でネクストにもなりかねないというか。


 “ア・メッセージ・トゥ・ブラック・マン”にはじまり、これまでにレイビットとの“イスラミック・ヨーロッパ”や“フィリピアンズ”、あるいはトランプズ・アメリカにフィーチャリングされたりと政治的トピックも満載で、ここでは黒人のために空港の音楽を用意したと。空港で足止めを食わされた経験がある人にはこれが何を意味するかはすぐにわかるだろう。ついでにもう1曲。“ニュー・ヨーク・ウィル・ノット・セイヴ・ユー“。


 これは、そして、かなり変わり果てた姿ではあるものの、現在のアメリカで「ブラックであること」を強調したブラック・ミュージックであることは間違いない。ヒップスターR&B(ソランジュとか)やバブルガム・トラップ(リル・ヨッティとか)にはないもの。それは弱さであるとか、現実を前にしてたじろいでしまう迷い。ポジティヴになり切るにはまだ疑問が多過ぎて、音として整理することは不可能。チーノ・モービもそうだし、そのことがそのまま音に出てしまうミュージシャンとして、もうひとりムーア・マザーことキャメイ・アイワ(Camae Ayewa)の名前も挙げようか。活動家としても有名な女性らしく、これまでにかなりな数のEPをリリースし、ようやくファースト・フルを完成。19世紀まで遡ってアフロディアスポラであることをテーマとしたポエトリー・リーディングはサン・ラーと『ノー・ニューヨーク』がローリー・アンダーソンの上で出会ったような混沌と共に解き放たれる。


 この熱量の高さ。そして、優しさと情緒錯乱の同居。ヴァリエイションの豊かさもハンパないし。

 宇川直宏も敬意をあらわにする田名網敬一氏といえば、篠原有司男氏や横尾忠則氏らと並んで、60年代のポップ・アートに強烈な一撃を与えた巨匠のひとりとして知られるが、しかし、80歳を迎えた現在もなお、そのクリエイティヴィティが膨張し続ける精力的なアーティストであり、氏の名声はかねてより、欧米においても通じている。
 去る11月、ele-king booksから氏の未発表コラージュ作品集『Dream Fragment(夢のかけら)』と『Fragrance of Kogiku(小菊の香り)』が刊行された。田名網敬一氏のエロティックでアナーキーな宇宙を知らない読者はこの機会にぜひ触れて欲しい。これは、先日紹介したPopy Oil x Killer-Bong『BLACK BOOK remix』の大いなる先達と言える。
 2冊に収められているコラージュ群は、2012年に世田谷にある自身の倉庫から発掘された。分厚い紙の束の中から出てきたのは300枚近いコラージュ作品であったという。一体なんのために作ったのかわからないが、古新聞の日付から1960年代後半から70年代初期のものらしい。当時の田名網氏は、エディトリアルを中心としたデザインワークで忙殺され、締め切りに追いまくられる日々を過ごしていた。そんなさなか、NYに移住していた盟友である篠原有司男氏の誘いで渡米。ポップアート、実験映像、アンダーグラウンド・コミックなどと出合い、あらたな創作意欲が沸点に達したときの記録。
 以降、半世紀ぶりに対面したコラージュ作品を、点検、修復、新たな素材を貼り込む作業を経て、本書は誕生したという。

 ページをめくると、戦前の映画雑誌や、1960年代のアメコミ、ポルノ雑誌が切り刻まれ、貼り合わされ、曼荼羅のように展開していく。とりわけ目を引くのは、「ディックトレイシー」などのアメコミ誌や、どぎついポルノ雑誌の切り抜きと、第二次世界大戦で戦死した叔父が戦前に集めていたという、映画雑誌や絵葉書、戦争雑誌の切り抜きが等価に扱われ、アメリカと日本の大衆文化のイメージがミックスされているところだ。田名網氏本人の言葉によると、「切り抜かれたどんなちっぽけな写真にも、歴史的背景や、その写真が内包する固有の意味が存在する。そして、まったく異なる歴史を背負った写真と対比することで、想像外の異世界が出現する。コラージュする醍醐味は、ひとつの画面で間断なく繰り返される無数の対立や戦いや調和なのだが、ときとして無残な荒廃のまま放置することで、より説得力のある画面が出現する場合もある」(『Dream Fragment(夢のかけら)』より)
 ちなみにこれらのコラージュ作品の多くは、MOMA、ウォーカー・アート・センター、シカゴ美術館など、著名な美術館へ収蔵されることが決まっている。


田名網敬一
『Dream Fragment(夢のかけら)』
P-VINE/ele-king books
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『Fragrance of Kogiku(小菊の香り)~KEIICHI TANAAMI POP COLLAGES』
P-VINE/ele-king books
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Carpainter - ele-king

最近DJでかける好きな曲を雑多に集めました。

Patten - ele-king

 パテンよ、お前もか――
 6月に出たミックステープ『RE-EDITS vol 2』の時点で予想しておくべきだったのかもしれない。コクトー・ツインズ、ティム・ヘッカー、リアーナ、ボーズ・オブ・カナダ、デス・グリップス、サイプレス・ヒル、ジュリアナ・バーウィック……この並びだけでパテンの音楽的嗜好の幅広さを垣間見ることができるが、何しろその冒頭はJ・スタッシュとアンディ・ミロナキスとKOHHによる“HIROI SEKAI”のリワークだったのである。近年のポップ・ミュージックの傾向のひとつとしてトラップのグローバルな広がりを挙げることができるけれど、UKではそれがダブステップと結びつくなど、もはや世界中がトラップに侵食されていると言っても過言ではない。その流れに乗るか乗らないか――トラップはいま踏み絵のようなものになっているのではないか。
 本作から新たなメンバーが加わって、パテンはDとAのふたり組になった。そのことも関係しているのだろうか。ファースト・アルバムの『GLAQJO XAACSSO』(2011年)や〈Warp〉への移籍とともにリリースされた『ESTOILE NAIANT』(2014年)で、00年代のインディ・ミュージックの文脈を継承しながら、OPNが切り拓いたアンビエントとコラージュの荒野へと勇猛に乗り込んでいったパテンだが、通算3作目となるこの『Ψ』でかれらは大きく路線を変更している。もはやそのサウンドを「OPN以降のアンビエント」という言葉で表現することはできない。これまでのパテンを特徴づけていたロウファイな質感は放棄され、アートワークもコラージュ作品ではなくなっている。驚くべきことに、『Ψ』から聴こえてくるのはトラップであり、グライムであり、インダストリアルなのである。



 グライムとトラップが同居した冒頭の“Locq”に、これまたグライミーなダンス・チューンの“Sonne”。もうこの2曲だけで、パテンがこれまでとは全く異なる方位を向いていることがわかる。3曲目の“Dialler”に入ったところで、その趣向が単なる導入ではなく、このアルバム全体のトーンであることがわかるだろう。終盤の“Cache”もまたグライミーな高音が面白い動きを見せている。ここにきてパテンはベース・ミュージックを更新することに目覚めたのだろうか? いや、と言うよりも、ある意味で孤高の存在だったパテンですらそれに対応しなければならないほど、いまベース・ミュージックのシーンが騒がしいということなのだ ろう。



 とはいえあのパテンである。かれらが単なるグライムやトラップの焼き直しに満足できるわけがない。箸休めのような“Pixação”や有無を言わせず音塊の快楽を突きつける“Yyang”など、本作にはIDMやテクノの要素も多く織り込まれており、そこはさすがのパテン、コラージュ精神はいまだ健在と言うべきか。それに本作にはもうひとつひねりが加えられている。“Used 2 b”にしろ“Blade”にしろ“Epsilon”にしろ、基調となっているのはたしかにインダストリアルなグライムやトラップなのだけれど、トラックの少し後方で囁かれるAのヴォーカルが、そこにニューウェイヴ的な風情を付け足しているのである。パテンは安易にラッパーを引き入れるような真似はしない。代わりに装填されたAのヴォーカルこそが、本作を単なるグライムやトラップの継ぎ接ぎから遠ざけている。これはかれらがふたり組になったことの幸福な結果だろう。「ナウ、フォーエヴァー」という言葉の繰り返しが耳に残る“The Opaque”なんかは、まさに彼女の声の持つ不思議な響きが、つんのめるビートと美しいメロディを際立たせている。



 このパテンのアルバムは、一方でトラップが世界中を侵食し、他方でスケプタがマーキュリー・プライズを受賞した2016年という年を、メタ的な視点で俯瞰した作品だと言うことができる。ビヨンセがジャック・ホワイトやジェイムス・ブレイクを召喚したりフランク・オーシャンがエリオット・スミスやギャング・オブ・フォーをサンプリングしたりと、今年のメジャーなブラック・ポップは他ジャンルとの混淆を推し進める動きを見せていたが、エクスペリメンタルな電子音楽の大地に根を張るパテンもまたアンダーグラウンドで同じことを試みようとしているのかもしれない。そういう意味で本作は極めて2016年的な1枚であり、つねに「いま」を追い求めるリスナーにとって非常に刺戟的なアルバムとなっている。

interview with Ash Koosha - ele-king


Ash Koosha(アッシュ・クーシャ)
I AKA I

Ninja Tune/ビート

ElectronicExperimentalIDM

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 2009年のイラン映画、『ペルシャ猫を誰も知らない』にはテヘランのユース・カルチャーを取り巻く状況が描かれている。彼の地においてはロックもテクノも取り締まられているので、文字通りのアンダーグラウンドな活動しかない。ゆえに情熱は燃え上がる。彼らにとってロックやテクノは、選んで消費するものではなく、ただ純粋に“必要”なものだ。
 アッシュ・クーシャは映画の主役で、役柄としてはインディ・バンドのリーダー。しかし現実の彼は、エレクトロニック・ミュージシャンとして2枚のアルバム──それも実験的で、そして魅力的な──をリリースしている。1枚は2015年に〈Olde English Spelling Bee〉からの、2枚目は2016年の春に〈ニンジャ・チューン〉からリリースである。

 9月18日、個人的には退院してから1週間後の取材だった。小林にいたっては初めての取材。病み上がりの老体(■)と新米相手(▲)に、青年はじつに親切に対応してくれた。記事のアップがこんなに遅くって、本当に申し訳ない。



『ペルシャ猫を誰も知らない』で描かれたイランについては、日本やアメリカ、ヨーロッパの人が知らなかった、想像もしていなかったと思う。みんなはたぶんイランは戦争状態だとか革命が起きている最中だとか、そういうイメージだったと思うけど。でも実際はそういうみんなが思っていることとは違うことがそこにはあった。僕たちにとってこの映画はその現実をみんなに知ってもらうことでもあった。

あなたの音楽には伝統的なペルシャ文化も内包されているのでしょうけれど、ある種の無国籍性が前景化されているように思います。そして、インターネットの普及によって広がっていく今日のデジタル音楽のシーンにより強くリンクしていますよね。あなたがどこで生まれようが、あなたの作品そのものが魅力的であることは変わりませんが、ぼくたちはあなたのプロセスとあなたのアイデンティティの問題にも関心があります。つまり、テヘランで育ったあなたにとって、エレクトロニック・ミュージックとはどんな意味を持ち、どんな可能性を見せてくれるものだったのかを教えてください。

アシュ:子供のころからいろいろなジャンルに興味を持っていて、学校ではとくにロック、ジャズ、クラシック音楽を習った。また若いときからコンピュータに慣れ親しんでてcomander 64を使って良く作曲をしていたんだ。だから好きな音楽をこのComander 64に入れていろいろ実験したりしていたね。ひとつのジャンルに絞らずにいろんな音楽を取り入れたいと思ってるんだ。
 それにイラン音楽については僕の音楽のなかにあるひとつの要素だとは思ってる。自然に出てくるものだしね。僕は音のコラージュのような音楽を作りたいと思ってるんだ。作曲したりサンプリングしたり技法はいろいろあるけれど、結局はコラージュのような音楽を作りたいからいろいろなことをやってみているわけだしね。エレクトロニック・ミュージックは僕にとっては人間とマシンの対話のようなものだと思ってるよ。

映画『ペルシャ猫を誰も知らない』を観ましたが、とても興味深かったです。ぼくたちは、テヘランにアンダーグラウンド・ミュージック・シーンがあること、そして、イランで音楽活動をすることが政治的に困難であることを知りませんでした。あなたがあの映画でいちばん気に入っているところはどんなところでしょうか?

アシュ:あの映画はここ30年のなかでとても革命的な映画だったといえると思う。たぶん映画で描かれたイランについては、日本やアメリカ、ヨーロッパの人が知らなかった、想像もしていなかったと思う。みんなはたぶんイランは戦争状態だとか革命が起きている最中だとか、そういうイメージだったと思うけど。でも実際はそういうみんなが思っていることとは違うことがそこにはあった。僕たちにとってこの映画はその現実をみんなに知ってもらうことでもあった。
 でも8~9年が過ぎた今日、いまだにこの質問を受けることにとても興味深さを感じるんだ。実際にそこで起こっている出来事ではあるけど、観ている人にはちょと非現実的に思われているのかもしれないよね。だからこの映画は常識を破って新しいことを世界に知らせている大事な映画だと思っているよ。

本当にそう思いますよ。イランに限らず、ぼくはまだ知らないことが多いし、また、映画や音楽の良いところは、ニュースとは別の真実を教えてくれるじゃないですか。

アシュ:そうだね、まだまだ伝わってないことも伝えなくてはいけないこともたくさんあると思うんだ。アーティストだからこそ発信できることもたくさんあるしね。いま別の国に住んでいて思うのは、他国のアーティストは自分たちの政治的な意見を自分たちの作品に込めて発表するものだけれど、逆にイランのアーティストはそう言った政治的なことを作品に盛り込むことができない情況で暮らしている。だからこそ僕たちは、まったくその意図は無しに作品を作っているんだけれど、不思議なことに必ず発表するとイランの政治と絡めたことを質問される。それってとても不思議だなって思うよ。

純粋にあなたの作品を聴こうとしているんですけれど、音楽はメディアでもあるので、それと同時にあなたのバックボーンに対する興味も隠せないんですよね。

アシュ:まさにその通りだよ。どんなに関係ないことをしたとしても必ず政治的なことに結び付いてみんなが考えてしまう、それって逃れられないことだなって思うんだ。でもクリエイターとして気をつけようと思っているのは、やはりそういうことがあるからこそ政治的なことに普段からあまり関わらないようにしているっていうのはあるかもね。それって僕にしてみたら僕のエリア外のことだからわからないことだしね。自分が人に影響を与えられる立場だと自分ではそんなつもりじゃなくても相手の受け取り方で自分が相手に影響を与えてしまって導いてしまう可能性もあるからね。だからプロとしての仕事に専念していくようにその辺は気をつけているよ。イランの状況は4~5年でまた情勢が変わったりするから、できるだけ僕は自分のやるべきことに専念しているんだ。

ちなみに、いつロンドンに移住したんですか? そして自分の活動の拠点として、なぜあんな物価の高いロンドンを選んだのですか? エレクトロニック・ミュージックのアーティストの多くは、ベルリンに住んでいるじゃないですか?

アシュ:実はロンドンを選んで移住したってわけじゃないんだよ。たまたま2008年のその頃ライヴでUKをツアーしていて、マンチェスターの後にロンドンでライヴがあったんだ。で、ロンドンに滞在していたんだけど、ちょうどそのときイランで選挙があって情勢が悪化して戻ることができなくなってしまったんだ。それでそのままロンドンに留まることを決めたんだ。でも僕は結果的にとても良かったと思ってるんだ。ここではエレクトロミュージック・シーンがとても盛んだしね。

BREXITについてはどう思っていますか?

アシュ:もし本当にすべてがその通りになったら、ものすごい大ごとだと思うよ。でも正直なところみんなが外から見て騒いでいる内容と、実際イギリス国内で起こっている内容にズレがあるような気がするんだ。たぶん結果的には言われているほどの悪いことは起こらないとは思うんだけど、万が一起こったとしてらミュージシャンにとってはとてつもなく大変なことになるね。楽器ひとつ運ぶにも相当な税が掛けられるしね……

他国のアーティストは自分たちの政治的な意見を自分たちの作品に込めて発表するものだけれど、逆にイランのアーティストはそう言った政治的なことを作品に盛り込むことができない情況で暮らしている。だからこそ僕たちは、まったくその意図は無しに作品を作っているんだけれど、不思議なことに必ず発表するとイランの政治と絡めたことを質問される。それってとても不思議だなって思うよ。

最初のアルバムをニューヨークの〈Olde English Spelling Bee〉から作品を出す経緯について教えてください。あなたがデモを送ったのですか?

アシュ:僕からアプローチしたわけじゃなく、僕がネットに上げた音源を聴いたレーベルのToddという担当者からコンタクトがあったんだ。元々は無料配布でリリースしようとしていたんだけど、彼がそれを聴いて、もっとちゃんとした形でリリースしようと勧めてくれたんだ。正直言ってアルバム自体がちょっと難解でわかりづらいのかもと思ったこともあって、だったら無料配布でいいかなって思ってたんだけど、彼にはもっとどういうふうにリリースするかというプランがあって、とても熱心に説明してくれたんだ。結果的に彼のおかげでいい形でリリースできたと思うよ。

今年〈ニンジャ・チューン〉からリリースしたセカンド・アルバムですが、アルバム・タイトルの『I AKA I』という言葉がとても面白く思いました。このタイトルの意味について教えてください。

アシュ:タイトルの意味はそのままで「自分は結局自分である」という意味なんだけど、ある意味デジタル・ヴァージョンの僕であるという意味合いを込めてつけたタイトルなんだ。ここ数年でデジタルにますます傾倒しているんだけど、近い将来にはまた違った形のデジタルによって各自のアイデンティティが確立されるんじゃないかと思っている。レコーディング中にこのデジタルとの向き合い方をずっと考えていたんだけど、でもこのレコーディングを通してわかったのは結局僕は僕でしかないことだった。もしかしたら次の100年で何かが変わるかもしれないけど、いまは結局人間は人間でしかないという結論に至ったんだ。音楽については機械に作業はさせても決断は僕がするというやり方だったから、ある意味オーガニックな人間と機械のコラボレーションだったと思うよ。

機会との対話というと、アルバムの1曲目の“OTE”には「声」が印象的に使われていますね。

アシュ:僕が持ってるレコーダーがこの(机にあったヴォイスレコーダー)サイズより1回り大きいレコーダーを持ってて、それにそのときの喜びや怒りの感情の声を録音するところからはじめたんだ。その後にその録音した音を元に作業していく感じだね。例えばさ、ロボットが集まってロボットだけの社会を作ったとするじゃない? いつも友だちと議論になるポイントなんだけど、僕はこれこそが間違ったことだと思ってるんだ。AIというのは人間にコントロールされるべきものであって、意思を持ってはいけないものだと思ってる。OTE(オーティーイー)というロボットと頭のなかで会話したことを曲としてまとめたんだ。それとこの曲をアルバムの頭に入れたのは、遠い未来のことかもしれないけど、起こりうることでもあると思ったから、まずはアルバムとして伝えたいことを明確に伝えるためにこの曲を1曲目に持ってきたというのがあるね。

〈ニンジャ・チューン〉から出ていますが、ダンス・ミュージックからのアプローチという感じでもないですよね。現代音楽からの影響はあります? ミュージック・コンクレートとか?

アシュ:そうだね、ミュージック・コンクレートに似ているというのはあっていると思うよ。僕は作曲家であって、ダンス・ミュージックを作る人ではないし、音を作る人だ。これからもダンス・ミュージックを作るつもりはないよ。

2曲目なんかはゲーム・ミュージックからの影響を感じるんですけど。

アシュ:たしかに8bitのゲーム・サウンドに聴こえるかもね。僕は小さいころから任天堂やセガのゲームが好きだし、コマンダー64のゲームでもたくさん遊んでたしね。ただ、ゲーム音楽を取り入れているというよりは80年代90年代の音を取り入れている感覚はあるかもしれないね。その音に新しいビート、LAビートだったりヒップホップだったりを乗せて新しい音を生みだしている感じかな。僕は映画も音楽もちょっと前の感じのものが好きなんだ。そこに「心地よさ」があると信じているからね。テクノロジー化が進んで、人びとは最先端を追い求めるけど、それはあくまで機能性であって使い心地を考えているわけじゃないでしょ。

シンパシーを覚えるミュージシャンがいたら名前を挙げて下さい。なるべく新しい人で。

アシュ:新しいアーティスト……とくにないかな。OPNはでもつねに凄いと思ってるんだ。彼はアルバムを作るのに大変な労力を惜しまないし、僕たちのようなアーティストが音楽をやりやすいようにしてくれた感じがとてもあるね

エレクトロニック・ミュージックを作るにあたって、何かきっかけになったような人はいますか?

アシュ:僕にとってきっかけになったのは、エレクトロニック・ミュージックじゃなく、クラシックなんだよね。ワーグナー、ショパン、ヴィヴァルディなんかから影響されているね。子供の頃はエイフェックス・ツインをよく聴いていたけどね。

アルカについてはどう思われます?

アシュ:まあ、OPNと似てるよね、レイヤーの使い方とかね。

この先、あなたはどんな風になっていくんでしょうね。

アシュ:僕は音楽を作り続けるつもりはなくて、最終的にAIが僕の代わりに音楽を作ってくれるのが理想だよ。最終的には音楽ってジャンルレスになるような気がするんだよね。僕も特定のジャンルにとして作ってないしね。Spotifyがそのいい例だと思う。自分の聴いてるトラックから他のオススメを提案してきて、誰なのかわからないけどとりあえず聴いてみたりするじゃない? そういう感じで、別にパンクが好きだからパンクだけを聴くとかそういう時代でもなくなると思うんだよね。ただ音楽の作り方に関しては、クラシックだけは変わらない気がする。そこが作曲のコアな部分だと思うしね。もし今後僕が作った音楽が20%でも何かのジャンルと似てるとなれば、もうその音楽は全部消すね。

そういえば、また映画に出演されるんですよね?

アシュ:いま映画を作ってるんだ。去年最初の映画を作ったんだけど、また次の映画を作る計画はあるんだ。

どんな映画になるんですか?

アシュ:すでに脚本を書いていて、AIと人間の関係性やAIのモラル、未来の経済やベーシックインカムについてなど、ちょっと先に世のなかについて提唱していくような内容の映画を考えているんだ。

最後の質問ですが、音楽が成しえる最高のことってなんだと思いますか?

アシュ:まず、テクノロジーによってすべてが生み出されるわけではないと思う。音楽は、感情や可能性を示してくれるものでもあると思うし、それは決してテクノロジーだけでは生み出せない、みんなの生活に訴えかける何か、それが最良のことになりうるんだろうね。

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