「!K7」と一致するもの

 やはりいま音楽も小説もジャズなのでしょうね。ちまたですっかり評判の、戦時下ドイツを舞台にジャズに夢中な不良少年たちを描いた佐藤亜紀の『スウィングしなけりゃ意味がない』。物語中に流れるジャズを実際に聴きながら、大谷能生が佐藤亜紀を迎えてトークします。8月19日(土)、SCHOOL。予約制なので、早めにヨロシク~。

https://scool.jp/event/20170819

Double Clapperz - ele-king

 ど迫力のベースとドラミングがあなたを襲う……東京のグライム・シーンのプロデューサー、Double Clapperzが2枚目となるLP『Get Mad』をリリースする。タイトル・トラックはUKのプロデューサー、Boylanとロンドンで制作したトラック。すでにRinse FMでMumdanceにプレイされるなど注目を集めている。また、ジャケットはUKのアーティスト Joshua Hughes-Gamesによるもの。
 

Double ClapperzのBandcamp等から予約開始中
予約 - https://doubleclapperz.bandcamp.com/merch/get-mad
視聴 - https://soundcloud.com/doubleclapperz/getmad-ep

 また、リリースを記念したリリースパーティの開催も決定している。

 8/14(月) 19:00- @CIRCUSTOKYO
 Double Clapperz - 『GET MAD』リリース・パーティ
 DJ:GUNHEAD、Hara、EGL、Sakana+ SPECIAL GUESTS



Double Clapperz - Get Mad [LP]
[IWR 002]
RELEASE DATE : 1st of October 2017
Pre-Order from 7th August

12inch - 400 copies
Normal Black Vinyl

A1. Get Mad
A2. Get Mad VIP
B1. Obscure

Download Code Bundled

Jlin - ele-king

 アフリカ大陸を想起させる土着的なパーカッションの音を多用し、シャーマニックな声が響き渡る。まるでエレクトリックな音も巧みに操る部族が密林の奥地でおこなう儀式の音楽のようだ。『Dark Energy』、2015年にリリースされた、それまでのジューク/フットワークとは一線を画す突然変異的フットワーク・アルバムのタイトルである。米国中西部インディアナ州ゲイリー出身のジェイリン(Jlin)ことJerrilynn Pattonは、このアルバムでキャリアをスタートさせた。そしていまから1年ほど前に昼間の製鉄工場での仕事を辞め、より制作に時間を割ける環境を得て、2年ぶりとなる2ndアルバム『Black Origami』をリリース。『Dark Energy』からいかに進化したのかを解き明かしたいと思います。

 A1、アルバムタイトル曲”Black Origami”。彼女の場合、基本的にBPM80/160を3の倍数で割ったフレーズ、リズムがベースとなっていて、非常に細かく速く刻まれ、音の定位も細かく変化を加えられていて、とにかく複雑。この曲の場合、様々な音色のパーカッションが様々な音程とリズムを同時に刻むため、パーカッションだけでほとんどメロディを奏でているような感じで、そこに彼女の声とシンプルな上音やフレーズが乗るのですが、そのアンサンブルの妙が本当に素晴らしく、上音はひとつか、被ってもふたつくらいのもので、無駄が一切無く、必要最低限の要素だけで構築されているような感じです。
 冒頭からエレクトリックな音色のシンコペーションフレーズではじまり、ベースラインが刻まれ、キックが入り、パーカッションが複雑なリズムを刻み始めます。笛や銅鑼の音も入っています。そしてとにかくリズム楽器の音色、音程の多彩さに圧倒されます。ソリッドにそぎ落とされながらも複雑という、非常に高度なトラックメイキングだと思います。本当にオリジナルだなと感嘆。
 2015年5月か6月頃にC3の“Nandi”が出来て、これはいままでに作ったものとは違うと感じ、いま思うとこれが“Black Origami”制作のスタートだったとFADERのインタヴューに答えていたジェイリン。このアルバムタイトルトラックは2番目に完成、これもいままでとは違うサウンドだと感じたという。何をJlinは見つけたのか。それは音のまばらな配置だと彼女は言います。“Dark Energy”でも似たような音使いはしている。でもパーカッションはより多彩に、より高速に、より複雑に、転がるような流麗さで刻まれ、音の粒立ちがよりはっきりし、音と音の間の空白が際立つようになった。以前より速く複雑になっているにも関わらず。おそらくこれが彼女が「これでもっと深いところにいける」と感じた要因ではないかと僕は思います。空白。無。そこには底無しの深淵が口を開く可能性が秘められているからでしょう。それをこのアルバムでは追求していったのだと思います。

 タイトルトラックの“Black Origami”が出来て何かを掴んだ頃、彼女は“Dark Energy”が大好きだと言うダンサーAvril Stormy Ungerと出会います。彼女が踊っているヴィデオを見て、「Oh my god,これだ」と感じたと。Jlinのトラックに合わせて踊る彼女の動きはその音楽のリズムと音にぴったり合っていて、彼女は以降Jlinの良き制作パートナーとなり、今年も多くの共同パフォーマンスの予定が控えていて、ジェイリンはオーガナイザーとしても忙しく動いているようです。

https://www.native-instruments.com/en/specials/jlin/

 Jlinの音楽にインスパイアされて踊る彼女に、今度は逆にJlinがインスパイアされて、A2“Enigma”、B3“Hatshepsut”、C2“Carbon 7(161)”の3曲が完成したという、とてもクリエイティヴな循環が生まれています。“Enigma”は多彩なパーカッション、シンバルにベルなどの打楽器と彼女の声だけでほぼ曲が出来上がっていて、そこに時折ビリンバウの音が入るだけ。打楽器と声でメロディとリズムを奏で、そこに唯一付け足す要素としてビリンバウの音を選ぶこと、そして極限まで削ぎ落とされたビリンバウをどの音程でどこで鳴らすか。そこに彼女の考え抜かれた楽曲構成の妙が感じられます。

 “Hatshepsut”もほぼ打楽器だけで構成されています。この曲では彼女の声の代わりに『Dark Energy』の頃から彼女が好んでよく使う、唸りを上げるように弧を描くACIDYな電子音が打楽器に絡み付き、要所要所で吹奏楽器であるホイッスルが吹き鳴らされ、後半の展開部分ではそこにギロの音色が加わります。ちなみにHatshepsutとは古代エジプトの女王、ファラオの名前で、戦争を嫌い平和外交によってエジプトを繁栄させたと言われています。また旧約聖書の出エジプト記でモーセをナイル川で拾って育てたのは彼女だという説もあるそうです。Jlinは彼女に敬意を表したかったと。

 “Carbon 7(161)”がAvrilにインスパイアされて最初に作った曲で、比較的ゆったりとしたフロウを感じさせるトラックです。BPMは同じですが。Avrilがゆったりと踊っている時の動きにインスパイアされたのでしょう。全体的に低い音が使われていて重心が低く、低音の持続音が多用されています。下降していくベースラインはドラムンベースを想起させてくれます。

 A3”Kyanite”は「House of Flying Daggers」という映画のあるシーンにインスパイアされたということで、実際に見てみました。youtubeで検索すると出てきます。The Echo Game Sceneというやつです。チャン・ツィイーが盲目の女性役で、ずらっと円形に並ぶ太鼓に囲まれています。彼女の前に、テーブルに座っている男がいて、そこから石を投げて、当たった太鼓を音だけを頼りにそれと同じものを身につけている長いスカーフで叩くというシーンです。この荒唐無稽なシーンからしっかりと制作に繋げることが出来るジェイリンの真摯な姿勢に心を打たれました。ぜひ見てみて下さい。チャン・ツィイーの動きからこの曲にたくさん入っているカラカラ鳴るカウベルの音を想起したとのことです。

 Jlinは件のインタヴューでこのアルバムのなかからとくに好きな曲を3つ挙げています。それはB1“Holy Child”、D1“1%”、ラストトラックの“Challenge(To Be Continued)”で、そのなかでもとくに好きなのが“Holy Child”だと。なぜならこの曲はラシャドに捧げた曲だからだそうです。同時にこの曲はこれまででもっとも挑戦的なトラックであり、ベースラインがシンコペーションしまくりで、ペースもリズムも唐突に変化する、ラシャドの“I Don’t Give A Fuck”に近い世界観だと思います。ジェイリン自身の幽玄な世界へといざなうような声が、あの世とこの世を繋ぐかのように響きます。そしてこの曲ではかの“the disintegration loops”で有名なWilliam Basinskiがコラボレーターとしてクレジットされています。おそらく機材関係のサポートをしてくれたようで、この冥界的ムードの現出にも貢献しているのかも知れません。

 B2“Nyakinyua Rise”は先行12”のB面にも収録されていて、versionは同じようです。途中から野太い男性の声が合いの手を入れたり、チャーチャッチャー、チャーチャッチャーと叫びまくっていてかっこいい。リズムセクションも重心は低いけれど軽やかさも有ってコントラストが効いている。打楽器とベースラインと声だけで構成されています。

 C1“Calcination”はすごく短いのですが、RabitのレーベルHalcyon Veilから“Death Is The Goddess”をリリースし、〈Planet Mu 〉20周年のコンピでも“Ankou Celeste”でジェイリンと共演していたFawkesがふたたびその声を響かせています。彼女の声もまた浮遊感の有る霊的な雰囲気を纏っていて、折り重なる声とシンプルでゆったりとしたパーカッションによって儀式的ムードを充満させたかと思うと、あっという間に終わってしまいます。もっと長く聴いていたい曲。

 これはPlanet Mu 20周年コンピに収録されている共作曲です。


 C3“Nandi”。この曲にこれまで作ったどの曲にもないサウンドを感じ、結果的にアルバム“Black Origami”のなかでいちばん最初にできたという曲。パーカッションと声とベースだけで構成されていて、パーカッションの細かく割り振られた音の定位と、隙間を活かした構成。これほどまばらな音の配置はいままでにやったことがなく、この手法を使えばもっと深いところまで行けるとJlinは進化の糸口を掴みます。
 いま『Dark Energy』を念入りに聴き直してみると、たしかにこのアルバムほど細かく音の位置を変化させてはおらず、声や上音フレーズなどはよく左右にパンさせていますが、パーカッションは多少の変化は加えられているものの、大体中央に定位しています。恥ずかしながらChartに寸評を書いたときにはそこまで理解できていませんでした。“Infrared(Bagua)”ではこのアルバムほど複雑でも速くもありませんが、この手法の萌芽が感じられます。

 D1“1%”はHolly Herndonとの共作で、アルバムの中でも異色な音色なのはHollyのカラーが出ているのでしょう。一番エレクトリックな印象。リズムの組み方はジェイリン色が強いけれど、普段の乾いた生々しいパーカッションの音はエレクトリックな音に置き換わっている。Hollyは私と同じでとても細部にまで気を配るアーティストだとジェイリンは言っています。僕も大好き。

 D2“Never Created,Never Destroyed”。Dope Saint Judeをゲストに迎え、トラップとミュータント・フットワークを配合させた異色作。引きずるようなベースラインがかっこいい。ラスト手前に新しい試みを収録して、最後の曲“Challenge(To Be Continued)”と題されているのがなんとも頼もしい。

 D3”Challenge(To Be Continued)”。勇ましい曲で、挑戦は続くと宣言しています。一層多彩なパーカッション群が華やかに打ち鳴らされ、ホイッスルが高らかに響き、ジャケットにもなっている象までもが鳴き声をあげ、さながらカーニバルのようです。そして駆け抜けるかのように一瞬で終わってしまいます。Challengeという言葉の余韻を残して。

 シンプルな1枚の何も書かれていない紙。そこからどれだけの可能性を引き出せるか。それが折り紙というアートフォーム。このアルバムの複雑ながらシンプルな音使いで畳み掛けるように流れていくリズムは、シンプルな一枚の紙を複雑に細かく折りたたむことを、音によって表現しているかのようです。

 パーカッションのサンプルの種類は非常に多彩になり、それを緻密に使いこなし、細かく複雑に音を配置することによって、左右だけでなく奥行きまでをも感じさせる事を可能にしたジェイリン。広がりのある音の配置によって、そこに空間があるかのように感じることができます。パーカッション以外の音は厳密に選択し、無駄を削ぎ落とし、空間を残す。シンプルにすることで、逆に力強さを引き出すことに成功しています。

 この時点ですでにかなり踏み込んだ領域に到達していると思われるが、しかし彼女はどんどん次へと向かっていくでしょう。次はどんな風に進化して帰ってくるのか。それを心待ちにしながら、自分も頑張らないとと尻を叩く日々です。Challenge!!!!!

三匹の子ぶたのその先

 「三匹の子ぶた」は誰もが一度は話を聞いたり、本で読んだりしたことのある有名な昔話である。どうやらイギリスの話らしい。一人目の子ぶたはワラで、二人目の子ぶたは木材で家を作るが、彼らを狙うオオカミにどちらも吹き飛ばされてしまう。しかし、最後の子ぶたが作ったレンガの家にはオオカミもなすすべがない。オオカミは煙突からの侵入を試みるのだが、煙突の下で沸かしておいた熱湯で茹でられ、反撃を食らう。──そんな話のプロットはおそらく誰もが覚えているだろう。
 私はこの昔話が特に好きだったわけでもないのだが、二年前にこのお話の発祥の地であるイギリスで、とある「三匹の子ぶた」絵本を見てから、妙にこの話が気になるようになった。この話のポイントはなぜ三匹の子ぶた、すなわち、三人の未成年者が自らで家を建てねばならなくなるのかというところにある。我々が普段目にするバージョンではそのポイントはぼかしてある。だが、どうやら古い民間伝承に忠実に描かれたらしいその絵本では、その理由が最初のページでハッキリと描かれていた。
 三人は「もうお前たちを育てていくことはできない」と言う母親から、家を出て行くよう告げられるのである。彼らは捨て子ではない。彼らは自分たちの親を知っている。彼らは親が蒸発してしまったわけでもない。いかなる理由からかは明確ではないが、家を出て行って自分たちで何とか生きていくようにと、親に告げられるのである。
 捨て子には捨て子のつらさがある。親が蒸発した子には親が蒸発した子のつらさがある。そして「もうあなたを育てることができない」と言われた子には、そのように言われた子のつらさがある。
 蒸発せずにハッキリとそのように口にする親には、自分が置かれている状況に目を向けようという気持ちが感じられる。その場からいなくなってすべてを忘れようとするのではなくて、少なくとも自分で問題に対処しようとしているからである。しかし、親に面と向かってそのように告げられる子の気持ちはいかなるものであろうか。
 おそらく三匹の子ぶたたちにとって、最もつらく、そして、実際に描かれることはないけれども最も劇的であっただろうと想像されるのは、家を出てから一人一人で新しく家を作ろうとするまでの間の時間である。簡単ですぐに手に入るワラに飛びつく一人目の兄弟。そのことの愚かさに気付くだけの知力はもっていたけれどもどこかで「この程度でいいだろう」と判断してしまった二人目の兄弟。そして、時間も費用もかかるが確実な家を建てられるレンガを求めるべきだと判断できるだけの知力を持ちつつも、最後には、自分たちを食い物にしようとした連中と全く同じことをしてしまう三人目の兄弟。
 特に三人目の兄弟の運命は心を打つ。オオカミを鍋の熱湯で煮て食べる彼の所行は、不幸は復讐を望む心を生み出し、復讐を望む心はその不幸をくり返すばかりで何も新しいものをもたらさないという暗い真理を告げているようである。三人目の兄弟は利口だったのかもしれないが、利口であったが故に、彼らにこのような不幸を課してきた社会の論理に過剰に適応してしまったのだ。彼は復讐を試みることで、自らが復讐したかった社会そのものになってしまった。

 書評原稿であるというのに昔話を熱心に論じてしまったのは、ブレイディみかこ著『子どもたちの階級闘争』を読みながら、この話をどうしても思い出さずにはいられなかったからである。
 著者と同書について簡単に紹介しよう。氏はイギリスのブライトン在住保育士であると同時に、ブログやネット記事で大人気のライター・コラムニストでもある。2004年からネットで文章を発表し始め、2005年には最初の著書を出版しているのだから、相当な実力の持ち主であると言わねばならない。最初の著書『花の命はノー・フューチャー』は最近、Delux Editionと銘打って文庫化された(ちくま文庫、2017年)。
 ブレイディ氏はその後も旺盛な執筆活動を続けてきた。「底辺託児所」での経験を通じてブロークン・ブリテンを紹介した『アナキズム・イン・ザ・UK──壊れた英国とパンク保育士奮闘記』(Pヴァイン、2013年)。イギリス「左翼セレブ」伝『ザ・レフト──UK左翼セレブ列伝』(Pヴァイン、2014年)。テロとグローバリズムと格差に揺れる2010年代中盤の欧州を描いた『ヨーロッパ・コーリング──地べたからのポリティカル・レポート』(岩波書店、2016年)。日本のデモクラシーと格差の現実を取材した『THIS IS JAPAN──英国保育士が見た日本』(太田出版、2016年)。熱烈な音楽ファンであり且つ政治通である氏の面目躍如の著作と言うべき『いまモリッシーを聴くということ』(Pヴァイン、2017年)。
 いずれも話題作となったが、特に2016年に出版された二冊は氏の名前を広く世に知らしめることとなり、そのことを氏が望んでいるかどうかはともかくとして、その名前は「論客」のリストに掲載されることとなった(経済学界の高齢の重鎮が氏の著作の素晴らしさに驚愕し、出版社まで電話をかけてきたという逸話も私は耳にしている)。
 氏の文章は、正確で広範囲におよぶ政治・社会についての知識(日本と違って新聞がおもしろいからかもしれないが、氏はとにかくイギリスの新聞をよく読んでいる)、保育士として常に「地べた」を見つめようとする気概(氏は『子どもたちの…』の序文で「わたしは保育士である」と何度もくり返す。氏は「論客」などというものになろうとしているのではない)、そしてヒューモアとシリアスが混じり合った文体(「あなたたちはダメなのよ、屑なのよ、どうしようもないのよ、と私は思うのよ。の、その先にあるもの。についてあのとき私はずっと考えていた」(『子どもたちの…』283頁)──他の誰にこんな文を書くことができるだろう!)、これらの要素の絶妙なミックスとしてある。
 私自身も海外生活が長かったのでよく知っていることだが、インターネットとグローバリゼーションの時代になっても、実際には海外の政治・社会の情報はほとんど伝わってこない。政治・社会というのはその地に住む者がその地の雰囲気を通じて感じ取っていることと切り離せない。だからその雰囲気を伝えることができる書き手に恵まれなければ、ある土地に住む者が別の土地の政治・社会を十全に理解することはできない。そして学者という名の専門家が常に優れた書き手であるわけではないのだから(というか、そうでない場合がほとんどであるから)、ある国の政治・社会を研究する専門家がどれだけいたところで、その国の政治・社会が、別の国に住む者たちに十分に伝えられるわけではない。だからイギリスの政治に関心をもっていた私は、ブレイディ氏の登場を心から喜んだ。 
 本書『子どもたちの階級闘争──ブロークン・ブリテンの無料託児所から』は或る意味で『アナキズム・イン・ザ・UK』の続編である。『アナキズム…』は氏が無料の「底辺託児所」を去るところで終わる。氏はそこを去って民間の保育所に就職したのである。ところが、その保育所はある事件をきっかけに潰れてしまう。『子どもたちの…』は氏がかつて働いていた「底辺託児所」に戻ってくるところから始まる。託児所を離れていたのはほんの4年間のことであった。ところが託児所は様変わりしていた。その4年間は、保守党政権の進める緊縮財政が様々な公的セクターを直撃した4年間であったからである。もはやそれは「底辺託児所」ではなかった。氏はそれを「緊縮託児所」と呼ぶ。ところが、何ということであろうか、この託児所も閉鎖されてしまう。託児所は貧困世帯に食料を無料で提供するフードバンクにされてしまうのである。
 『子どもたちの…』の前半は託児所の閉鎖で幕を閉じる。そして、まるで、今はなき託児所に思いを馳せ、「底辺託児所」が「緊縮託児所」に変わっていく間に失われたものは何であったのか、その答えを探し求めるかのように、同書の後半では「底辺託児所」時代のことが語られる。つまり、氏が民間の保育園に就職する前、「底辺託児所」時代に書いた文章が後半に掲載されているのである。『子どもたちの…』は時間を遡る形で編集されている。時間を遡りながら、読者は、何が失われたのかを氏とともに考えることになる。
 『子どもたちの…』はその編集形態そのものが大きなメッセージになっていることに注意しなければならない。同書の本体をなすのは、前半部に収録されることとなった雑誌『みすず』での連載であるが、これは単に連載をまとめた本ではない。この本の形そのものが氏のメッセージになっている。

 いくつもの話が心に突き刺さる。だが、私自身、子を持つ親として、本当に読んでいてつらかったのは、子を手放さねばならない親たちの話である。親として不適格であると判断されるとソーシャルワーカーによって親が自分の子どもを取り上げられるというのはイギリスではよくあることだという。この政策の是非はともかく、ここには子どもの福祉を最優先にするという思想が反映されているわけだが、底辺託児所に来る親たちはアルコール依存など様々な問題を抱えており、したがって、何とかして子を取り上げられないよう、ソーシャルワーカーと戦わねばならない──というのが底辺託児所時代の当たり前の光景であった。
 ところが今は違う。
 緊縮託児所の親たちは子どもを手放そうとしている。
 「決して親たちが薄情になったとかいうことじゃない」。氏は友人の言葉を紹介する。「親が、もう踏ん張れなくなってる」(『子どもたちの…』38頁)。緊縮財政のもとで社会への投資が削減され、底辺家庭は徹底的に追い詰められている。
 子どもたちの姿も心に突き刺さる。そうして追い詰められた家庭の子どもであるマヤは「声を出さずに泣く子ども」だ(『子どもたちの…』39頁)。氏は託児所で、声を出さずに泣く子どもたちに出会う。泣きたい気持ちをそのまま表現することも許されずに過ごしてきた子どもたちである。
 もちろん、同書は暗い話だけに貫かれているわけではない。母親はヘロイン中毒で、父親はDVで刑務所を出入りし、祖母も盗品を売りさばいて金儲けしていたストリートギャングの元締めであったというロザリーは、幼い頃、この託児所に預けられていて、託児所の人びとを様々に困らせていた子どもの一人だった。しかし、今ではブライトン大学で小学校幼稚部教諭になるために学んでおり、しかも、成績があまりにも優秀であるため、彼女の実習先である底辺託児所に自治体から奨励金が下りたほどだったという。「こういうところで育ったらこうなる」というのは偏見に過ぎない。ロザリーの存在は人に「希望」という言葉を思いつかせる。
 しかし私はあまり「希望」という言葉を使いたくないし、使う気になれない。「希望」というのは、本当はこれから起こることが分からなくて怖いから、現状に目をつぶってつぶやく言葉なのだというようなことを私が研究しているスピノザという哲学者が言っている。本当にそうだと思う。実際、ロザリーが戻ってこられた託児所は、無機質なスチール棚が立ち並び、ビニール袋に入った食料や缶詰が整然と並べられているフードバンクに変わってしまった(『子どもたちの…』283-284頁)。
 子どもを手放さねばならない親の話を読んで、私は「三匹の子ぶた」を思い出した。三人の未成年者は、内二人が食い物にされ、最後に残った一人は彼らを食い物にした社会に復讐して終わった。残酷な話だ。そしてこの話は残酷であり、且つ、2017年の時点でリアルな話である。ならば我々は「希望」などという甘ったるい言葉でごまかしてそこから目を背けるのではなく、「三匹の子ぶた」のその先を考えなければならない。
 氏はこの本の最後、「あなたたちはダメなのよ、屑なのよ、どうしようもないのよ、と私は思うのよ。の、その先にあるもの。についてあのとき私はずっと考えていた。思えばわたしはずっとそれを言葉にしようとしていたのかもしれない」と書き、その答えは「愛」ではなくて「尊厳」だったと言っている(『子どもたち…』284頁)。底辺託児所にあったアナキズム、あのアナキズムは尊厳そのものだった、と。
 欧米ではしばしば尊厳は薔薇の花にたとえられる、とも氏は記している。いま失われたもの、そして、この現状のその先で再び咲かせなければならないもの、それは尊厳の薔薇だ。ブレイディみかこ氏の文章を通じて、我々は再び、尊厳という古くて新しい言葉に出会う。そして、どうすれば薔薇の花を再び咲かせることができるのか、考え始めるのである。

 いまもなお、政治発言とか伝記映画とか、なんだかんだと話題を霧散し続けているロックスター、モリッシーを描いた『いまモリッシーを聴くということ』の刊行を記念して、8月26日、福岡にてブレイディみかこさんのトークショーが開催されます。ブレイディさんの地元ですね。会場はカフェ&ギャラリー・キューブリック。
 ザ・ スミスのライブを体験した数少ない日本人のひとりであるブックスキューブリック店主大井さんが聞き手となり、ザ・スミス/モリッシーを熱く語り合います。行ける方はぜひ! このうだるような真夏の最後をモリッシーで決めましょー。

『いまモリッシーを聴くということ』発売記念
ブレイディみかこさんトークショー

日時:2017年8月26日(土)19:00スタート(18:30開場)
会場:カフェ&ギャラリー・キューブリック
(ブックスキューブリック箱崎店2F・福岡市東区箱崎1-5-14
JR箱崎駅西口から博多駅方面に徒歩1分)
出演:ブレイディみかこ
聞き手:大井実(ブックスキューブリック)
参加費:2000円(ドリンク付・要予約)
*終演後に懇親会有(1ドリンクとカフェキューブリックのキーマカレー付・参加費1000円・要予約)

予約先:①メールでお申し込み
hakozaki@bookskubrick.jpまで、件名を「8/26トーク予約」として
[1.お名前、2.参加人数、3.ご連絡先電話番号 4.懇親会参加有無]
をご記入の上お申込みください。
当店からの予約確認メールをもってお申し込み完了といたします。
※返信がない場合はお電話にてお問合せください。

②peatixというサービスからも簡単に予約が可能です。
こちらの「チケットを申込む」ボタンからお申込ください。
参加費は当日受付でお支払いくださいますようお願いいたします。

https://bookskubrick.jp/event/8-26

REFUGEE MARKET / WISDOM - ele-king

 かねてから「ミュージシャンズミュージシャン」的に玄人受けしてきたラッパー、仙人掌の待望のソロ・アルバム『VOICE』(https://www.ele-king.net/review/album/005576/)のリリースを経て、そのレーベル〈WDsounds〉と仙人掌の所属するクルー、 DOWN NORTH CAMPおよびDOGEAR RECORDSは、この数ヶ月合同で「BACK 2 MAC TOUR」なる全国ツアーをやってきたそうだが、8月5日恵比寿リキッドルームにて、ついにそのファイナル・ショウが開催される。
 17時会場の18時開演。以下の詳細を見ていただければわかるように、こんなに格好いいヤツらが揃うなんて滅多にないです。絶対に行こう。


Bjørn Torske - ele-king

 90年代初頭からなんらかの名義で作品を出し続けているビョーン・トシュケがノルウェーのエレクトロニック・ミュージックのパイオニアであることは事実であるが、彼はただ“早かった”だけではない。DJソトフェットからトッド・テリエ、プリンス・トーマス、リンドストローム、あるいはインディ・ロック寄りのロイクソップにまで影響を与えている。ダンスの深い地下まで掘っている人たちに人気のレーベル〈Sex Tags Mania〉からも作品を出し続けている。ぼくはトシュケの作品のなかではサード・アルバムに当たる『Feil Knapp』(2007)が最高に好きなのだけれど、それは控え目ながら優雅な彼の幅広い音楽性/そのユニークな折衷主義が楽しめるからであり、また、北欧系独特のオプティミズムを感じられるからだ(同作は、FACT MAGのゼロ年代のベスト100枚にも選ばれている)。
 その名作の前に、彼はソロ名義では2枚のアルバムを出していて、今回はそのうちの1枚、2001年にリリースされたセカンド・アルバム『トロベル』のリイシュー/リマスター盤を紹介しよう。再発した〈Smalltown Supersound〉からはつい先日プリンス・トーマスとの初のコラボレーション・アルバムがリリースされたばかりなのだが(トシュケにはこの共作というスタイルの作品が多数ある)、ここは再発盤のほうを紹介しよう。というのも、これがまた古くなっていないどころか、いまも新鮮で楽しいからだ。〈Sex Tags Mania〉のファンもトシュケを再発見するだろう。

 2001年というと、90年代的なダンスの熱狂がいったん落ち着いた/ピークが終わった直後でもあるので、本作はダンス・ミュージックを基調にはしているが、家聴き(ラウンジ)用に作られたものだろうか。2曲目の“Bobla”という曲は、ほとんどジ・アップセッターズの『Blackboard Jungle Dub』を彷彿させるユニークなダブで、モンド・レゲエとでも言えそうな“Møhlenpris”も面白い。3曲目の“Hard Trafikk”などはいまウケているハーヴィー・サザーランド系の生演奏の入ったディスコ・ファンクで、透明感のある上物とベースのうねりが見事な“Trøbbel På Taket”やロイクソップとの共作“Westside Hotel”、メロディアスで軽快なスティーリー・ダン調の“Don't Push Me”もまったく魅力的。まあ、マシュー・ハーバート的な、茶目っ気ある、奇抜なサンプリングをループさせた1曲目の“Knekkebrød”からして素晴らしい。
 この作品がいまも新鮮というのは、彼こそが北欧的折衷主義(AORからモンドまで何でもアリ)のディスコ・ダブの型を作ったというか、さもなければ周期的なこともあるのかもしれない。この頃からたいした変化がないということでもあるのだろうし、いまシーンは落ち着いている/なんらかのピークが終わった後である、ということなのかもしれないが、なんにせよ没頭できる音楽がここにある。思い詰める音楽ではなく、軽くて微笑みのある、楽しい瞬間を増幅させてくれる音楽をお探しなら、この作品はお薦めである。ダンス・ファンのみならずいろんな人がアプローチできる音楽という点で、本作のオリジナル盤をリリースした〈テレ〉が、インディ系のレーベルという話もうなずける。

Hampshire And Foat - ele-king

 〈アテネ・オブ・ザ・ノース〉はギリシャではなく、スコットランドのエディンバラを拠点とするレコード・レーベルである。レーベル設立者のユアン・フライヤーがレア・グルーヴやディープ・ファンク方面のDJなので、〈アテネ・オブ・ザ・ノース〉も主に1960~1970年代のマイナーなソウルやファンクのリイシューを行ない、リリース・フォーマットも7インチが多い(フライヤーはほかにも〈ソウル・スペクトラム〉や〈ソウル7〉など、やはり7インチ中心のレア・グルーヴ系レーベルをやっている)。アルバムではミルトン・ライト、ペニー・グッドウィンなど、やはりマニア垂涎のレア盤をリイシューしており、最近はロウ・ソウル・エキスプレスの未発表作品集を何と初アナログ化させたばかりだ。こうした中、ハンプシャー・アンド・フォートというアーティストの『ギャラクシーズ・ライク・グレインズ・オブ・サンド』は、〈アテネ・オブ・ザ・ノース〉にとって異色のリリースと言えるだろう。レーベルとしておそらく初めての現行アーティストによる作品で、またサウンドもいままでのレーベル・カラーとはかなり異なるものだ。

 このユニットはウォーレン・ハンプシャーとグレッグ・フォートによるコラボレーションで、おそらく恒久的なものではなく、本作のみのために組まれたものだろう。ウォーレン・ハンプシャーはマルチ・インスト奏者で、ワイト島出身のインディ・ロック・バンド、ザ・ビーズのメンバーである。1960年代のサイケやガレージ・ロックから、レゲエやジャズなど幅広い音楽性をミックスさせ、マーキュリー・アワードにもノミネートされたことがあるバンドだ。一方、グレッグ・フォートはザ・グレッグ・フォート・グループのリーダー及び鍵盤奏者で、〈ジャズマン〉から英国らしいディープなジャズ・アルバムを5枚発表していることで知られる。このふたりがどのような経緯で出会い、コラボレーションするに至ったのか詳しいことはわからないが、ユアン・フライヤーのアイデアで一種のライブラリーというか架空のサントラのようなアルバムを作り出した。ふたりのサポートにはザ・グレッグ・フォート・グループのメンバーが名を連ねるほか、英国ジャズ界の重鎮であるスタン・トレイシーの息子で、彼のバンドでも演奏したドラマーのクラーク・トレイシーから、エディンバラ交響楽団のメンバーも参加している。

 基本的にビートは薄目で、アンビエントやチルアウト・テイストのアルバムとなっており、“ザ・ソーラー・ウィンズ(アンド・カデンツァ)”でのグレッグ・フォートのエレピ・ソロとか、極めてシネマティックな光景が浮かんでくる作品集である。サウンドの軸となるのはジャズだが、ブルースやビ・バップから発展してきたアメリカのメインストリーム・ジャズとは、また異なるものだ。クラシックやモダン・クラシカル、現代音楽やミニマル・ミュージックと交わっており、極めてヨーロッパらしいジャズのあり方と言えるだろう。こうした作曲やアレンジ能力は重厚で深遠な“ハウ・ザ・ナイツ・キャン・フライ”あたりに顕著で、マイク・ウェストブルックやニール・アードレイなど、英国ジャズのパイオニアたちの才能を今に引き継いでいる部分も感じさせる。そして、ブリティッシュ・トラッドやケルティック・フォークからの影響を感じさせるのが英国特有で、そこがエディンバラを舞台にした本プロジェクトの真髄ではないだろうか。宇宙的なタイトルの表題曲はじめ、“ララバイ”や“オール・ウォッシュト・アップ”がその典型で、アコースティックでフォークロアなモチーフの楽器演奏が、むしろ宇宙や自然の神秘性を密やかに物語る。フォーキーなテイストとモーダル・ジャズが見事に溶け合った“エンド・ソング”は、エレピやトランペットのソロに雄大なオーケストラ・サウンドも交え、アルバムのハイライトとなる素晴らしい作品である。

 なお、録音はすべてアナログ・テープにより、エディンバラのスタジオで録音後、スウェーデンのスタジオでミックス・ダウン、フィンランドのスタジオでマスタリングとカッティングを行なったとのことで、ハンプシャーとフォート、フライヤーの音に対する拘りが溢れたものとなっている。いまの時代、ここまで音にお金や時間、労力をかけるのはとても贅沢なことで、それを満喫するにはやはりアナログ盤を購入するのが一番だろう(一応、カセット、CD、デジタルでのリリースもあり)。あと、ジャケットは1960年代に活躍したマイケル・ガーリック・クインテットの『オクトーヴァー・ウーマン』をモチーフにし、〈アテネ・オブ・ザ・ノース〉のレーベル・ロゴも今回はその発売元の〈アーゴ〉を真似ている。そんな細部にまで遊び心と、ブリティッシュ・ジャズへの敬愛が溢れた作品である。

Oneohtrix Point Never × Ryuichi Sakamoto - ele-king

 これは事件です。最新作『Good Time Original Motion Picture Soundtrack』のリリースを控えるOPNが、なんと坂本龍一のリミックスを手がけました。原曲は坂本の最新作『async』に収録されている“Andata”です。2015年にLIQUID ROOMで開催されたOPNの来日公演ではカールステン・ニコライが前座を務めていましたが、いやはや、ついに坂本龍一とも繋がってしまいましたか。そのこと自体ビッグ・ニュースではありますが、いや、これまたこのリミックスが良いんですよ。どういうふうに料理するのかとどきどきしながら再生ボタンを押すと……2分を過ぎたあたりで鳥肌が立ちました。OPN、おそるべし。なお、このリミックスは後日リリース予定の坂本龍一の作品(リミックス・アルバムでしょうか?)に収録される予定で、そこにはOPNの他にもコーネリアスアルカ、ヨハン・ヨハンソン、モーション・グラフィックス、エレクトリック・ユースなどが参加しているとのこと。

ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーが坂本龍一をリミックス
- Ryuichi Sakamoto - Andata (Oneohtrix Point Never Rework) -

前衛的な実験音楽から現代音楽、そしてアートや映画の世界にまで、年々活躍の場を広げ、日本でも今年公開予定の映画『グッド・タイム』のサウンドトラックで、本年度のカンヌ・サウンドトラック賞も受賞したワンオートリックス・ポイント・ネヴァー(Oneohtrix Point Never)ことダニエル・ロパティン(Daniel Lopatin)が、坂本龍一の最新アルバム『async』収録曲「andata」のリミックス・ワークを公開した。

Ryuichi Sakamoto - Andata (Oneohtrix Point Never Rework)
https://soundcloud.com/milanrecords/ryuichi-sakamoto-andata-oneohtrix-point-never-remix/

本楽曲は、『async』に続く坂本龍一の最新作に収録され、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーの他、コーネリアス、アルカ、ヨハン・ヨハンソン、モーション・グラフィックス、エレクトリック・ユースなどの参加が明かされている。

ますます注目を集めるワンオートリックス・ポイント・ネヴァー最新作『Good Time Original Motion Picture Soundtrack』は8月11日(金)世界同時リリース! 国内盤には、ボーナストラック“The Beatdown”が追加収録され、解説書が封入される。iTunesでアルバムを予約すると、公開中の“Leaving The Park”と“The Pure and the Damned (feat. Iggy Pop)”の2曲がいちはやくダウンロードできる。


label: Warp Records / Beat Records
artist: Oneohtrix Point Never
title: Good Time Original Motion Picture Soundtrack

cat no.: BRC-558
release date: 2017/08/11 FRI ON SALE
国内盤CD: ボーナストラック追加収録/解説書封入
定価: ¥2,200+税

【ご購入はこちら】
beatkart: https://shop.beatink.com/shopdetail/000000002171
amazon: https://amzn.asia/6kMFQnV
iTunes Store: https://apple.co/2rMT8JI

【商品詳細はこちら】
https://www.beatink.com/Labels/Warp-Records/Oneohtrix-Point-Never/BRC-558

8年ほど前、ぼくらは音楽に、あるいはワンオートリックス・ポイント・ネヴァーその人に興味を持っ た。ぼくはいつもダンの音楽(特に初期の頃の)を、まだ作ってもいない映画のサウンドトラックとして想像していた。『Good Time』でのコラボレーションから、それを取り巻く対話を通じて、ぼくらは深い友情と、もちろんこの色鮮やかでこの世のものとは思えないようなスコアを手に入れた。制作の前にダンとはコンセプトのことでよく話し合った。それがカンヌで花開くことになるとは……まるでハイレゾ・ファンタジーだね。 ― ジョシュア・サフディ

ぼくはワクワクしながら、ミッドタウンにある兄弟のオフィスを訪ねた。そこには彼らが好きなものが何でもあって、まるで聖地みたいだった。巨大な『AKIRA』のポスターと『King of New York』が並んでたよ。ふたりはぼくに、特殊な映画に取り掛かるつもりだと言った。ぼくから見たサフディ兄弟は、非常に特異なことに取り組みながらも、伝統を尊重する監督だ。ジム・ジャームッシュやクエンティン・タランティーノ、レオス・カラックスといった監督を思い浮かべても、彼らは映画の歴史を愛するがゆえに映画制作そのものから遠ざかりがちだが、いずれにせよあの独特の個性を失うことはない。ぼくらに共通しているのは、傷ついてボロボロになったものに対する愛着と敬意だ。たぶんぼくらは今現在の歴 史を守りたいという衝動を感じていると思う。昔の、ではなく。ぼくら自身の言葉でだ。 ― ダニエル・ロパティン


映画『グッド・タイム』
2017年公開予定
第70回カンヌ国際映画祭 コンペティション部門選出作品

Good Time | Official Trailer HD | A24
https://youtu.be/AVyGCxHZ_Ko

東京国際映画祭グランプリ&監督賞のW受賞を『神様なんかくそくらえ』で成し遂げたジョシュア&ベニー・サフディ兄弟による最新作。

コニー(パティンソン)は、心に病いを抱える弟(ベニー・サフディ監督兼任)のため、家を買い安全に生活させてやりたいと考えていた。そこで銀行強盗をふたりで行うが、途中で弟が捕まり投獄されてしまう。弟は獄中でいじめられ、暴れて病院送りになる。それを聞いたコニーは病院へ忍び込み、弟を取り返そうとするが……。

出演:ロバート・パティンソン(『トワイライト』『ディーン、君がいた瞬間』)、ベニー・サフディ(監督兼任)、ジェニファー・ジェイソン・リー(『ヘイト・フルエイト』)、バーカッド・アブティ(『キャプテン・フィリップス』)
監督:ジョシュア&ベニー・サフディ兄弟(『神様なんかくそくらえ』)

2017/アメリカ/カラー/英語/100分
(C) 2017 Hercules Film Investments, SARL

配給ファインフィルムズ

NORIKIYO - ele-king

 これは自分がいかに不良だったのかを述べる本ではない。そういう箇所がないわけではないが、アジアン・カンフー・ジェネレーションの後藤正文氏がツアー前の忙しいなか、本書のゲラを読んで、帯コメントとしていみじくも書いてくれたように、これは「反骨と愛」の本だ。
 ぼくが仕事させてもらって感じたことのひとつは、NORIKIYOのある種の“無垢さ”、ないしは“一本気”なところだ。換言すればそれは庶民的な小粋さのことである。無粋なことはしない、大きなモノには媚びない。NORIKIYOの言葉には、庶民的があるゆえの反権力、反エリート、負けん気がある(それがポリティカルに表出することもある)。反骨心に溢れていて、あるいは社会の裏側まで知っているかのような風情もある。
 が、しかし、愛も滲み出てしまう。NORIKIYOの言葉を特徴付けているもうひとつのことは、ギャングスタかっけーと思わせるムキとは正反対の、ロックの理想主義の精神が注がれていることだ。“゙ジョン・レノンに会いたい”という曲はそうしたNORIKIYOらしさの典型だが、本書には他にも清志郎をはじめとするロック・ミュージシャンたちの名前が何回も出てくる。『路傍に添える』を読んでいると、昨今のファッショナブルなインディ・ロックが失ったモノを神奈川県相模原を拠点にするこのラッパーは執拗に追い求めている/むしろ継承しているように思えてくる。(ぼくが思うに彼の言葉には、庶民性、無頼性、社会性という点において、泉谷しげるを彷彿させるところがある)
 
 8月7日、ele-king booksからNORIKIYOの詩集にして回想録『路傍に添える』が刊行される(※7月30日「Bouquet Tour Final」のライヴ会場、恵比寿リキッドルームでは限定先行発売予定です)。
 国際的に活動するグライム・プロデューサー、米澤慎太朗の音楽にのめり込むきっかけが高校時代に聴いたNORIKIYOだったと最近知ってビックリしたのだけれど、本書にはNORIKIYOの有名な『EXIT』から最新作『Bouquet』までの、あるいは語り下ろしによる、彼の言葉という言葉が印刷されている。アイルランドの詩人トーマス・ムーアによれば詩人とは魂の揺さぶりを記述する人であるというが、自由を失った片足を持つ、ひとりの人間の人生への情熱──正直で、魂を揺さぶる熱い1冊をどうぞ。


NORIKIYO
『路傍に添える』

ZAKAIAmazon
Disk UnionTower
HMV

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