「ANS」と一致するもの

Campanella - ele-king

誰が光で 誰が影で 誰がサグで 誰がオタクで 誰も知らねえ
俺は光で 俺は影で 俺はファックで 俺はカスだ 全部当たりまえ
誰がバビロン 誰がファッション 誰がボスで 誰がルールだ 誰が決めたね
俺がラッパーで俺が詩人で俺が俺であるがゆえの俺のプレイ
“OUTRO” 

 「アンダートウUNDERTOW」という言葉があって、ジャンルを問わないアンダーグラウンド・ミュージックを聴いていてよく思い出す。表面の波に逆らって最深部を力強く流れる底流。KOHHが宇多田ヒカルとコラボレーションし、バトル・ブームの熱気に後押しされた若い世代のトラップが勢いよくポップ・フィールドへと流れこみつつあるいま、日本のヒップホップ・シーンにおけるアンダートウはどこにあるだろう? 2017年1月14日、深夜の渋谷WWWで開催されたCAMPANELLA『PEASTA』のリリース・パーティに足を運んで確信した。現在の日本でもっとも強力なアンダートウのひとつは、NEO TOKAIにある。

 NEO TOKAI。名古屋を中心とする近隣エリアを指すそのスラングを初めて耳にしたのはたしか2、3年前で、やがてそれがHIRAGENのあの『CASTE』を輩出したTYRANTクルーを源流のひとつにしていることを知った。冷却装置がぶっ壊れたように沸騰するその熱をパッケージしたコンピレーション『WHO WANNA RAP』とその破壊的再構築『WHO WANNA RAP 2』。そしてC.O.S.A.が自主流通のみでリリースした傑作『CHIRYU YONKERS』の衝撃……。西日本に大雪が降った1月の真夜中、WWWでのパーティはJET CITY PEOPLEの鷹の目のDJで始まり、Fla$hBackSのJJJとKID FRESINOの東京組がばっちりとオーディエンスをあっためた後には、FREE BABYRONIAとRAMZAのビート・ライヴが会場を襲い、NERO IMAI、呂布カルマ、C.O.S.A.というスタイルは違えどどれもヘヴィ級のMCたちがその夜の主役、CAMPANELLAの登場を準備していた。もちろんその日のアクトに限らず、現在流通している音源や飛び交う噂だけでも、東海地方にうごめく凶暴でソリッドなうごめきを黙殺するのは不可能になりつつある。

 そして名古屋といえばなにより、2004年に急逝したTOKONA-Xという大き過ぎる存在なくしては語れない。しかしその喪失はすでに、彼の姿を熱っぽく見つめていた若い世代によって埋められつつあるようだ。ATOSONEとDJ BLOCKCHECK主催の不定期開催のパーティ<METHOD MOTEL>は名古屋を中心に東海各県の猛者を集めてぶつかり合わせる地下闘技場としてこのシーンの母胎となった。エクスペリメンタルでレフト・フィールド……だがそれだけじゃなく、叩き上げならではのタフな精神性がある。NEO TOKAIはすでに独自の音楽性と毅然としたアティテュードによって東京や大阪に牙をむく、オルタナティヴ・ヒップホップの音楽的爆心地となっている。

 しかし『PEASTA』はNEO TOKAIというよりももっと濃密な、三人の人間のトライアングルから生まれている。C.O.S.A.のシャウトアウトにも登場する名古屋郊外のベッドタウン、小牧市桃花台。そのニュータウンで生まれ育ったCAMPANELLAはまだ十代半ばで、今回すべてのトラックを手がけたビート・メイカーRAMZAとFREE BABYRONIAの二人と出会った。フライング・ロータスに導かれたINDOPEPSYCHICSの子どもたち。そんな言葉さえ浮かぶインタヴューの通り、アンビエント~ノイズ~エレクトロニカのフィールドでも注目を集める二人の仕事は、既存のヒップホップの枠をはみ出し、だが結局はヒップホップと呼ぶしかない異形の音像でそのアートフォームを更新している。

 宮沢賢治『銀河鉄道の夜』からアーティスト・ネームを拝借したというCAMPANELLAは2014年のミックステープ『DETOX』では、タイラー・ザ・クリエイターの“ヨンカーズ”とともに、レディオヘッドの“ナショナル・アンセム”もビート・ジャックしていた。強烈な個性のラッパーがひしめくNEO TOKAIにあって、CAMPANELLAが武器にするのはときにナンセンスなユーモアとリリシズム、そしてフリーキーなフロウだ。刺繍作家RISA OGAWAの赤い刺繍糸が印象的な今作のアートワークにはオズの魔法使いやアルチュール・ランボーのコラージュが並び、楽曲にはチリの革命詩人パブロ・ネルーダやイスラムのスーフィズム由来の詩がまぎれこみ、ミュージック・ヴィデオでは花飾りで顔を隠したコンテンポラリー・ダンサーが踊る。

 狂騒のパーティを繰り返したその先、退廃を拒絶し、怠惰を遠ざけるストイックなストリート・マナーは、ポスト・Jディラ的なビート・ミュージックの音楽的実験性と融合し、トラップ以降の享楽主義とはひと味違う、洗練されたアートの花を咲かせている。このフレッシュさは、USヒップホップの最新トレンドの日本的翻訳ではなく、世界中に拡散するヒップホップそれ自体の実験性が、極東の地方都市の歴史の中で独自に進化し、溢れだした結果だ。

                   *

 アルバムの幕開け、タイトル・トラック“PEASTA”。丁寧に音響処理されたブレイク・ビート、綿密に計算されたタイミングでインしてくるピアノ、ベース、ヴォーカリーズ的にたゆたう女の歌声。チリチリとしたノイズが鼓膜の内側の空気の圧まで調整するような繊細さと緊張感を漂わせる。仲間とハニー、すれ違うビッチズ。ドラッグでヨレるヒマはねえ、というルードなストイシズムと、リリックはため息混じり、ビートは日々の意味、と言い切る詩情。次いで“THE HAVIT”は低音を抜かれたドラム・パターンとループする効果音、腹を震わせるベースで軽快に疾走する。クラブは太陽で音楽は月、というリリカルなパンチラインとともに、ノー・ギミック、完全に言いたいことを言う宣言。

 「A Little Wind Cleans the Eyes…」。13世紀のイスラム神秘主義者、ジャラール・ウッディーン・ルーミーの詩「ライク・ディス」の一節を英女優ティルダ・スウィントンが囁く声で始まる“INDIGO”。「グラスに注いだビアみたいな日々」…それを「うたかたの日々 Mood Indigo」とするなら、ここにあるのは衝動まかせに快楽を追いかける青春を飲み干した後の、葛藤と内省の日々のスケッチだ。美しい恋人と愛する音楽、それ以外のものはすべて消え去っていい。そう言い切れる若い勢いを失って、不規則なブレイク・ビートの上を千鳥足で行ったり来たりする言葉。デューク・エリントンの往年の曲によればインディゴはブルーよりも深い憂鬱を意味する。焦燥と苛立ちから自己を解放するまでの自問自答のモノローグ。

 双璧をなす“BIRDS”は、もともとFREE BABYRONIAのビート・テープ『KOMAKI』に収録されていた同タイトルのインストゥルメンタルを再構築し、ラップをくわえたもの。「わたしになりたい」という回帰願望と「あなたになりたい」という変身願望が、アシッド・トリップ的な鳥の目の幻視を通じて結合される。イントロとアウトロ、そしてピアノのブレイクとともに混線するテレグラフは、タイトルの由来であるパブロ・ネルーダの英詩を伝えるゲリラ・レディオ。去年ついに倒れたフィデル・カストロとチェ・ゲバラは、1956年たった12人でシエラ・マエストラに上陸して始まったキューバ革命の途上、夜になると野営地で兵士たちにネルーダの詩を朗読して聴かせたそうだ。
 
 物騒なのは中盤の2曲。前曲からの鳥のさえずりをディープなベースラインとゆったりとしたブレイク・ビートがかき消す“KILLEME”。幻聴かと思うほどかすかに鳴らされるアコースティック・ギター。ドローン的な音像にのせて引き伸ばされ、それでも棘々しく尖る攻撃的な言葉。次は間髪入れずに威嚇射撃のような強烈なスネアが鼓膜を突き刺す“SHOOT-IN”。逃げ遅れた/あえて逃げ出さなかった人間に突きつけられるC.O.S.A.の16小節。ダセえDJ、ダセえMC、セルアウターをまとめてなぎ倒すタフな殺気と、愛やクルーという言葉の裏に貼りつく寂しさと孤独。「みんな違ってみんないい」とお互いの多様性を認め合って仲良くやれればいいのだけれど、このゲームのルールは「白黒以外必要ねえ」。フックで挑発するのはバンダナを顔に巻いたNERO IMAI。オラついた相棒二人のストレートさに煽られても、CAMPANELLAのラップはフリーキーさとナンセンスさを失わない。このあたりは外野がはやし立てる話じゃないから聴きたければ自分の耳で。

 寝静まったベッドタウンで意識を夜間飛行させる“BLACK SUEDE”以降は、“RELAX, BREAK”の言葉通り、アンビエント的なチル感やナーサリー・ライムを織り交ぜながらぐっとピースフルなムードに変化していく。今じゃUSも日本もビーフの勃発やリスペクトの表明はSNS経由で、便利な反面ずいぶん軽くもなったそのやりとりに「写真にいいね押していい気分に浸ると/なぜか遠くなった気がしたストリート」と正直な逡巡を告白する“NINE STORIES”。ぐにゃりと曲げられたギターの音色がブルース・シンガーのように歌う九番目の雲……そんな幸福な一夜の感覚を永遠に引き延ばすような“YUME NO NAKA”。肌寒い夜にコンビニの前で開ける缶ビールとくゆらすウィード。記憶を飛ばすほどの多幸感は暖かなグルーヴのハンド・クラップによるエンディングに着地する。

 スタンド・アローンでラストに待ち受ける圧巻の“OUTRO”は、ずいぶん前に“COLD DRAFT”というタイトルで配信されていた曲をそっけなく改名したもの。冒頭、きらめき陶然と遊んでいたエレピが、最初のキックの音を合図に意志を持って走り出す。フリークアウトする生のベースとRAMZAのマシンの腕が操るドラムによるコズミック・ファンク。仲間と女、背中を押してくれる歓声、それでもけして他人には触れられない影。吐き捨てるライムの怒りと焦燥の矛先はほかでもない自分自身に向けられ、ラッパーであり詩人であるひとりの青年のメンタルの肖像を彫刻する。たんにエモーショナルというのでもない。アルバムで最初にレコーディングされたというこの曲がすべての葛藤と成熟の出発点だ。

                     *

 DJ クラッシュとDJ シャドウが1990年代に世界中にバラまいたビート・ミュージックとしてのヒップホップ、いわゆるアブストラクト・ヒップホップは、それ自体コンペティティヴ(競争的)な独自のバトル・フィールドを構成した。フリースタイルに端を発した去年のラップ・ブーム以降、バトルと言えばMCバトルのみが想起されるような風潮もあるかもしれないが、ヒップホップでコンペティションに晒されるのはラップだけじゃない、ビートもだ。そしてその熾烈なバトルはもちろんラップとビートの間にも勃発する。トラックに対して、インストゥルメンタルとしても通用する、というのはよく言われる褒め言葉だが、もっといえば、突出したビートは生半可なラップを拒絶する。鍛錬と引き換えに獲得した互いの自由と自由がぶつかり合い、挨拶がわりに口にするだけなら簡単な「リスペクト」という言葉の真の対価を要求する。

 ラップとビートの衝突から生まれる先鋭的な音楽的オリジナリティにくわえて印象的なのが、アートワークや楽曲に臆面もなく散りばめられた古今東西の文化的なコラージュ。ドラッグや喧嘩をやっていれば不良で読書やアートにハマっていればオタクで……なにもかもテレビ向けのキャラクター的なストーリーに落としこんでしまう向きにとってはどうか知らないが、無菌室で育ちでもしない限り、人間は薬物や暴力とも文化や知識とも、自分なりの基準で向き合いながらその人格をつくる。誰に媚びる必要も何を恥じる必要もない。トリップの経験だろうが詩だろうが映画だろうが、自分の血肉になったインスピレーションをすべて遠慮なくつむいで創られたこのアートは、どうにも魅力的だ。傷だらけの拳に光るリングや花束に忍ばされたナイフのように、喧嘩腰の啖呵にリリシズムがきらめき、美しい詩に血の味が混じる。

 「これは音楽、輩の手なら届かない」、「言葉で負けた際に出る手」というCAMPANELLAのラップを聴いて思い出したのは、「誰か殴るわけじゃなく歌詞を書く」というC.O.S.A.のいつかのリリックだった。それはアンセムを一緒に歌うとか、コラボするとか、そんなものよりもっと深いレベルでNEO TOKAIの人間たちが共振していることを教えてくれる。知らざあ言って聞かせやしょう、と居並ぶ男たちのケツを蹴り上げていたTOKONA-Xの豪放なメンタルは、彼が知ることのなかった青春の終わりを生き延びた後輩たちによって、強く、しなやかに受け継がれた。若くして倒れた巨大な背中を見ていたキッズたちが成長し、やがてその年齢を追い越したのだ。

                *

 現在の東海のこの熱は2010年代なかば、「アンダーグラウンド」という言葉を再定義するだろう。2000年代のハスリング・ラップの本格的な台頭以降あいまいになってしまったことだが、本来アンダーグラウンドとは知名度のあるなしとも、アウトロー的な犯罪性とも本質的には関係がない。ストリートのトラブルで負った傷を地上波でふてぶてしく晒すMC漢のスキャンダラスな態度を見ればわかるように、言ってしまえばギャングスタ・ラップとコマーシャルなショウビズとの相性は必ずしも悪くない。

 清貧主義やギャングスタ・メンタリティの根底にあるアンダーグラウンド・ヒップホップの精神性とはなによりも、インディペンデントであることだ。いまじゃ珍しいものではなくなったアーティストによる独自のレーベル運営という意味で日本のシーンにアンダーグラウンドの種をまいたTHA BLUE HERBのBOSS THE MCのかつての言葉を借りれば、それは「レコード会社の奴隷にならず自ら皿を作り/テレビやラジオに利用されずに利用し/自分だけのアイディアで金を作り/責任を持ち/各地にいる同じ志の仲間達と/イカレた音楽をデカイ音でならす」という独立不遜の哲学だ。

 知っての通り、北と東海とのあいだには因縁がある。今でも語りぐさになるほどのインパクトを持ったTHA BLUE HERBに対するTOKONA-Xのディス“EQUIS. EX. X”、あのトラックを提供したのはINDOPEPSYCHICSのD.O.I.だった。それにSLUM RCのコンピレーションに新たな生命を与えたBUSHMINDやDJ HIGHSCHOOL、MASS-HOLE、アルケミストのビート遺伝子が繋げたC.O.S.A.とKID FRESINOの昨夏の『SOMEWHERE』、そしてあの日のWWWのパーティに集結したNEO TOKAIの面々を迎えた東京のアーティストたち……。M.O.S.A.D.に衝撃を受けたかつてのCAMPANELLA少年は、東京のラッパーのCDをすべて売っぱらったらしい。しょうがない。これは生まれや育ちが違う、ともすればそれだけで拳を交える理由になる物騒なカルチャーだ。しかしそもそも名古屋のレジェンドであるTOKONA-Xその人は、少年期に横浜から東海へと流れてきた異人だった。ウータン・クラン由来の筆で描かれたNEO TOKAIの地図は、すでに地理的な環境の制約をはみ出し、都市と都市を越えた力強いユニティを産み出してもいる。

 実際、このアルバムはとても小さなコミュニティから生まれたレフト・フィールドなたたずまいながら、不思議なほど風通しがいい。「PEASTA」というタイトルは、桃花台にあるショッピング・モールの名だそうで、PEACHにFESTAをかけて作られたというなんとも言えないその造語のセンスは、たぶんいまの日本のニュータウン的な地方都市で育った人間にとってはどこか懐かしいものなはずだ。文化資本など一見まるで見当たらない場所に生まれ育ったキッズたちが、自分や仲間の目と耳、腕だけを頼りに創りあげたアウトサイダー・アート。郊外の子ども部屋やモールのたまり場に響く無邪気な笑い声が聴こえてくるようで、リリースからしばらく経ったいまでも何度も聴き返してしまう。

             *

 ここ最近熱っぽく口にされる日本のヒップホップの夜明け……やっと朝がきたのだとすればここ10年ほどは夜だったということだろう。だがその長い夜の時代、ひときわ光の射さない地方都市で鍛えられた言葉と音、そして耳は、あらゆる熱狂に浮つきはしない。去年はさんピンCAMPから20年ということで、その黄金時代の思い出が口々に語られたけれど、あの日凄まじいステージングを見せたという弱冠17歳のTOKONA-XとDJ刃頭の姿はその後の映像作品からは完全にカットされている。同じくさんピン以降の東京に敵対心むき出しで登場したTHA BLUE HERBにせよ、日本の地方都市には熱に沸く中央に冷水を浴びせ、強烈なオルタナティヴを突きつける伝統的なマナーがある。

 「オルタナティヴ・ヒップホップなんてものは存在しない。なぜならヒップホップの唯一のオルタナティヴとして知られているのは完全な沈黙だけなのだから(There’s no such thing as Alternative Hip hop Because the only known Alternative to Hip hop is dead silence)」。スワヒリ語で「鳥のように自由」という意味の名を持つミシェル・ンデゲオチェロのファースト・アルバムのインナースリーヴにはそんな書き出しで始まる檄文が刻まれている。「オルタナティヴ」という言葉が切実に求められるのは必ず、ある文化がメイン・ストリームに溢れだし、バブルのように巨大化するときだ。しかし、ヒップホップはオルタナティヴの存在を認めず、対抗的なエネルギーをあくまでその内部に抱えこむ……それじゃヒップホップって?

 バイセクシャルであり、コンシャスなアクティヴィストであり、そして異彩のグルーヴを生み出すベーシスト/コンポーザー/シンガー/ラッパーであるンデゲオチェロの痛烈な檄文は、オルタナティヴ・ヒップホップの存在否定というよりも、むしろ本来オルタナティヴという名で呼ばれるものこそが真にヒップホップの名に値するのだ、と言わんばかりに、次のように締めくくられる。つまりヒップホップとは、「デジタルにグラインドされ、テクノ・モルヒネを生み出すジェームズ・ブラウンの骨盤」……「最高にぶっ飛んでいるときの感覚喪失に対する唯一の解毒剤」……なによりそれは「ドープ認識学/ドープノロジー(DOPE-KNOW-LOGY)」である、と。

 なるほど。たとえ誰もが動画やサイトのヴュー数、視聴率とセールスばかりに目を奪われていたとしても、ヒップホップ・サイエンスの審美眼はいつだってシンプルきわまりない。それは誰が一等ドープかを知るための科学(DOPE-KNOW-LOGY)だ。あらゆるライムとビートはオルタナティヴという冠に満足せず、あくまで文化の正統な後継者の地位を要求する。オルタナティヴ・ヒップホップが存在するとすれば、それは商品ラベルに書きこまれるジャンル名なんかじゃなく、現状の秩序を転覆(Revolve)しようとする、そのエネルギーのことだ。

 CAMPANELLAはつい先日JJJプロデュースでEGO WRAPPINの中納良恵とのジョイント曲“PELNOD”をリリースし、シーンの重鎮YUKSTA-ILLは待望のフル・アルバム『NEO TOKAI ON THE LINE』をドロップ、さらにはMC KHAZZの新譜も予告されている。2017年もNEO TOKAIからの轟音は止みそうにない。ここには確かに、馴れ合いも、ましてや沈黙も拒否する言葉と音がある。なにがドープか知っている人間は、東海の地殻変動からけして目を離せないはずだ。

Ron Morelli & Will Bankhead - ele-king

 Skate ThingとToby Feltwellがディレクターを務めるブランド〈C.E〉が半年ぶりにクラブ・イベントを開催します! 日時は3 月10 日(金)、場所は渋谷Contact。今回のイベントはブルックリンのレーベル〈L.I.E.S.〉とUKのレーベル〈The Trilogy Tapes〉との共同開催となっており、〈L.I.E.S.〉のオウナーであるRon Morelliが初来日を果たします。〈The Trilogy Tapes〉を主宰するWill Bankheadも参加。さらにスウェーデンからはSamo DJを、上海からはTzusingを迎えるというのだから、これは熱い夜になること間違いなし! 一足先に春の息吹を感じ取っちゃいましょう。

Shackleton & Vengeance Tenfold - ele-king

 すでにいくつかの名作と呼ぶべき仕事を残しているシャクルトン。これまでのその歩みを踏まえた上で彼はいま、いったいどんな試みを呈示してくるのか――次に進もうとするアーティストにとって、それまでの自身の履歴が枷として機能する場合があることは想像に難くない。前作から半年という短いスパンで届けられたシャクルトンの新作は、これまでも彼の作品に参加してきたスポークンワード・アーティスト、ヴェンジェンス・テンフォルドとの共同名義で発表された。はたしてシャクルトンはいま、自身の輝かしい履歴とどう向き合っているのだろう?
 彼は00年代半ば、〈Skull Disco〉時代に最初のピークを迎えている。ダブステップ全盛の頃に頭角を現し、実際にそのシーンにもコミットしていたシャクルトンだが、しかしその音楽はダブステップという枠組みを大きく逸脱するものであった。その間口の広さは例えば、ダークなサウンドとは裏腹にコミカルな雰囲気を醸し出していた一連のアートワークからも窺える。おそらくシャクルトン自身はことさらダブステップを志向していたわけではなく、彼の野心的な試みがたまたま当時ダブステップというフォーマットと親和性が高かったというだけなのだろう。だからこそ“Blood On My Hands”はリカルド・ヴィラロボスという「他者」を呼び込むことに成功したのである。
 そのヴィラロボスによるリミックスを契機に、彼の特異なベース・ミュージックはベルリン・ミニマルと邂逅することになる。シャクルトンは2009年に〈Perlon〉から『Three EPs』をリリースしているが、ハルモニア&イーノのぶっ飛んだリミックスもこの年で、これが彼の2度目のピークにあたる。その後、〈Honest Jon's〉から出たピンチとの共作で少し異なる方向性を模索したシャクルトンだが、続いて彼は「これでシャクルトンも落ち着くのか」と思い込んでいたリスナーの度肝を抜く『Music For The Quiet Hour / The Drawbar Organ EPs』(2012年)を発表する。アフロ・パーカッションだけでなく鍵盤打楽器やオルガン・サウンドを取り入れたこの大作で彼は、アフリカ音楽とミニマル・ミュージック(ヴィラロボス的なそれというよりは、テリー・ライリーやスティーヴ・ライヒ的なそれ)のエッセンスを吸収した独自のスタイルを築き上げた。これが彼の3度目のピークで、そのスタイルを踏まえつつそこに大々的に「声」という要素を付加してみせたのが、オペラ歌手を招いて制作された前作『Devotional Songs』だと言えるだろう。そして、そのような尖鋭的な試みの最新の成果として世に放たれたのが、本作『Sferic Ghost Transmits』である。
 冒頭の“Before The Dam Broke”からかましてくれる。カリンバとガムランのコンビネイションに誘惑され、美しいコーラスとテンフォルドの音声案内に導かれながらおそるおそる霧の立ち込める森の中へと分け入ったリスナーは、唐突に不思議なリズムのパーカッションと遭遇し、この音響空間が此岸からかけ離れた世界であることを察知する。ここは現実なのか?――「Pray for the real world」という意味深なフレーズ(もしかしたら2016年というエポックのことが念頭に置かれているのかもしれない)が反復される頃には時すでに遅く、リスナーはもう元いた場所に引き返すことができなくなっている。
 分節された音声やら素朴なオルガンやらガムランやらがトライバルなパーカッションをバックにせわしなく通り過ぎてゆく“Dive Into The Grave”や、もはやカリンバなのかガムランなのか区別がつかないくらいに高音が錯綜する“Five Demiurgic Options”もすさまじい。ライヒ的ミニマリズムとコーラスのかけ合いから始まり、キャッチーなベースのループを経てパーカッシヴなフェイズへと突入、最終的にはアブストラクトなムードで幕を下ろす大作“Sferic Ghost Transmits / Fear The Crown”も圧巻としか言いようがない。
 トライバルなパーカッション、蛇行するベースライン、鍵盤打楽器によるライヒ的ミニマリズム、その間隙に挿入されるスポークン・ワードやコーラス、オルガン――各々のエレメントそれ自体はすでにこれまでのシャクルトンの作品で採用されていたアイデアではあるが、このアルバムではそれらすべての要素が想像しうる最高の形態で有機的に共存させられている。
 シャクルトンはいま、自身の履歴との闘争に勝利した。これほど壮烈な作品を新たに自身の履歴に刻んでしまった彼は、これからいったいどのような道を突き進んでいくのだろう? いまからもう次作を聴くのが恐ろしくなってきている。

Shobaleader One - ele-king

 べつにゴリラズに刺戟されたわけではない、のだろう。2010年代以降のスクエアプッシャーの作品のなかでいちばんおもしろいアルバムは、「架空のバンド」をコンセプトにした『d'Demonstrator』(2010年)である。その前の年には6弦ベース1本による即興ライヴのアルバムをリリースしていたので、ふむふむその次はバンドか、新しい方向を模索しているなーと当時はわくわくしたものだが、いざリリースしてみたらあまり反応がよくなかったのか、それともすぐに飽きてしまったのか、いずれにせよその後「ショバリーダー・ワン」という名前を耳にすることはなかった……昨年までは。
 近年はロボットのプロデューサーを務めたり独自のソフトウェアを開発したり、国民投票の後にはブレグジットに抗議する新曲を公開したりしていたスクエアプッシャーだけれど、そんな彼がふたたび「ショバリーダー・ワン」という名前を掲げて帰ってきた。

 はい。往年のファンならもうおわかりだろう。「Big Loada」の1曲目である。垂涎とはまさにこのことで、公開されたトラックリストを眺めていると、他にもズラリと往年の名曲たちが並んでいることに驚く。スクエアプッシャー率いるバンドによるスクエアプッシャーのカヴァー集、という感じなのだろうか。
 期待のアルバムは3月8日に日本先行でリリースされる。それにあわせて、4月には来日公演も開催される。正直に言って、楽しみでしかたがない。

STROBE NAZARD / SQUAREPUSHER / COMPANY LASER / ARG NUTION

スクエアプッシャー率いる超絶技巧バンド、ショバリーダー・ワン
デビュー・アルバム『Elektrac』の日本先行リリース&来日ツアーを発表!
数量限定Tシャツ付セットの販売も決定!

昨年末にワールドツアーが発表され、アルバムの存在をほのめかすトレーラー映像とともに、本格始動が明らかになったショバリーダー・ワン。驚くなかれ、その正体こそ、スクエアプッシャー率いる超絶技巧バンドである。SQUAREPUSHER(ベース)、ARG NUTION(ギター)、STROBE NAZARD(キーボード)、COMPANY LASER(ドラム)の覆面の凄腕4人で構成された彼らのデビュー・アルバム『Elektrac』は、スクエアプッシャーの数々の名曲たちに生演奏の迫力を加えた驚きの内容。今回の発表に合わせ、ファン垂涎の名曲「Journey To Reedham」の音源が公開された。

Shobaleader One - Journey To Reedham
YouTube: https://www.youtube.com/watch?v=IXtQDsf4gJA
Apple Music: https://apple.co/2k2f9PG
Spotify: https://spoti.fi/2jzvZc0

Shobaleader One - SHBLDR Album Teaser
https://youtu.be/m-cSYexUKRI

本作『Elektrac』は、3月8日(水)に日本先行でリリースされ、国内盤2枚組CD(ブックレット付の特殊パッケージ)には、オリジナルのシースルー・ステッカーが封入される。またスペシャル・フォーマットとして数量限定のTシャツ付セットの販売も決定!


セットTシャツ


CD+Tシャツ・セット


オリジナル・シースルー・ステッカー

------------------------

完売必至の来日ツアー決定!!

さらに、そんな彼らの超絶テクを堪能できる来日ツアーも決定! スクエアプッシャーの初期作品を中心に、ジャズ~フュージョン~ドラムンベース~エレクトロニカを横断する超刺激的なライブは、スクエアプッシャー・ファンならずとも必見! サポートアクトには、昨年のプライマル・スクリームの来日公演でも、メンバー直々の指名でオープニングアクトの大役を果たすなど、世界中のロック~アンダーグラウンド・ヒーロー達に愛される、オルタナ・ガールズ・バンド、にせんねんもんだいが決定。来週1月25日(水)より、Beatink on-line shop “beatkart”にて、全公演のチケット先行販売開始!

SUPPORT ACT
にせんねんもんだい

東京公演
4/12 (WED) 渋谷 O-EAST
OPEN 18:30 / START 19:30
前売TICKET ¥6,000 (税込・1ドリンク別途)
主催: シブヤテレビジョン
INFO: BEATINK 03-5768-1277 [ www.beatink.com ]

● BEATINK WEB SHOP "beatkart":1/25(水)~ [ shop.beatink.com ]
● イープラス最速先行(抽選):1/19(木)21:00 ~ 1/24(火)23:59
● チケットぴあ先行:1/25(水)11:00~1/30(月)11:00
● イープラス・プレオーダー(先着):1/28(土)12:00~2/1(水)18:00"

名古屋公演
4/13 (THU) 名古屋 CLUB QUATTRO
OPEN 18:30 / START 19:30
前売TICKET ¥6,000 (税込・1ドリンク別途) ※未就学児童入場不可
INFO: 名古屋クラブクアトロ 052-264-8211 [ https://www.club-quattro.com/ ]

● BEATINK WEB SHOP "beatkart":1/25 (水)~ [ shop.beatink.com ]
● QUATTRO WEB先行:1/28 (土) 12:00~1/30 (月) 18:00 [ https://www.club-quattro.com ]
● 各PG先行:1/28 (土) 12:00~1/30 (月) 18:00

大阪公演
4/14 (FRI) 梅田 CLUB QUATTRO
OPEN 18:30 / START 19:30
前売TICKET ¥6,000 (税込・1ドリンク別途) ※未就学児童入場不可
INFO: SMASH WEST 06-6535-5569 [ https://smash-jpn.com ] [ https://smash-mobile.com ]

● イープラス最速先行受付:1/20 (金) 12:00~1/25 (水) 23:59 [ https://eplus.jp/shobaleader-one/ ]
● QUATTRO WEB先行:1/21~1/23
● イープラス・プレオーダー:1/28~2/1

------------------------

スクエアプッシャー率いる超絶技巧バンド、ショバリーダー・ワンのデビュー・アルバム『Elektrac』は、3月8日(水)に日本先行リリース! 国内盤2枚組CD(ブックレット付の特殊パッケージ)には、オリジナルのシースルー・ステッカーと解説書が封入される。iTunesでアルバムを予約すると、公開された「Journey To Reedham」がいちはやくダウンロードできる。

label: Warp Records / Beat Records
artist: Shobaleader One ― ショバリーダー・ワン
title: Elektrac ― エレクトラック

cat no.: BRC-540
release date: 2017/03/8 WED ON SALE(日本先行発売)
初回生産特殊パッケージ
国内盤2CD:オリジナル・シースルー・ステッカー/解説書 封入
定価:¥2,500+税

【ご予約はこちら】
CD
beatkart: https://shop.beatink.com/shopdetail/000000002134
amazon: https://amzn.asia/e5z41Uv
T-SHIRTS SET
beatkart: https://shop.beatink.com/shopdetail/000000002135
amazon
Sサイズ:https://amzn.asia/bbgvNip
Mサイズ:https://amzn.asia/j4w010R
Lサイズ:https://amzn.asia/37Gwzdt
XLサイズ:https://amzn.asia/6K2McNr

iTunes Store: https://apple.co/2jzwuDa

商品詳細はこちら:
https://www.beatink.com/Labels/Warp-Records/Squarepusher/BRC-540

Tracklisting
Disc 1
01 The Swifty
02 Coopers World
03 Don't Go Plastic
04 Iambic 5 Poetry
05 Squarepusher Theme
Disc 2
01 E8 Boogie
02 Deep Fried Pizza
03 Megazine
04 Delta-V
05 Anstromm Feck 4
06 Journey To Reedham

Derrick May - ele-king

 明けましておめでとうございます。今年もele-kingをよろしくお願いいたします。
 さて、さっそくですがデリック・メイが新年早々、来日ツアーをおこないます。札幌、東京、熊本、福岡、大阪、名古屋の6都市をめぐります。これは嬉しいお年玉ですね。昨年フランチェスコ・トリスターノのアルバムに参加し、なんと20年ぶりにスタジオに入ったというデリック・メイ。そんな彼はいま、どんなDJを披露してくれるのでしょう? 2017年はデリック・メイのDJからはじめましょう!

2017/1/7(土)
HI TEK SOUL JAPAN TOUR 2017
10PM | ¥3500 w/f ¥3000 GH S members ¥2500 Under 23 ¥2000 Before 11PM ¥2000
------------------------------------
Studio:
Derrick May (Transmat | from Detroit)
HIROSHI WATANABE aka KAITO (Transmat | Kompakt) -Live
DJ Shibata (TAN-SHIN-ON | The Oath)

Contact:
Alex from Tokyo (Tokyo Black Star | world famous)
Naoki Shirakawa
TERA (CHANNEL | Low Tech Circus)
------------------------------------

DERRICK MAY (Transmat | from Detroit)
1980年代後半、デトロイトから世界へ向けて放たれた「Strings Of Life」は、新しい時代の幕開けを告げる名曲であった。自身のレーベル〈Transmat〉からRhythim Is Rhythim名義で「Nudo Photo」、「The Beginning」、「Icon」、「Beyond The Dance」等今でも色褪せない輝きを放つ数々の傑作を発表し、Juan Atkins、Kevin Saundersonと共にデトロイト・テクノのオリジネーターとして世界中のダンス・ミュージック・シーンに多大な影響を与える。
シカゴ・ハウスの伝説のDJ Ron HardyやGodfather Of House Frankie Knucklesに多大な影響を受け、Music Instituteで確立されたその斬新なDJプレイは唯一無二。時代に流されることなく普遍的輝きを放ち、テクノ・ファンのみならず全てのダンス・ミュージック・ファンから絶大なる支持を得ている。
そして2010年、レコード店に衝撃的ニュースが流れる。何と実に13年ぶりとなる待望のミックスCDをリリースしたのだ。『MIXED BY DERRICK MAY × AIR』と題されたミックスCDは1月に発表され国内外で大反響を巻き起こした。スタジオ・ライブ一発録りで制作されたそのミックスには、彼のDJの全てが凝縮されていると言って良い。そこには“熱く煮えたぎるソウル”“多彩な展開で魅せるストーリー”“華麗なミックス・テクニック”等、天才DJにしか作り得ない独特の世界がある。自分の信じている音楽やファンへの情熱全てを注ぎ込んだかのような圧倒的パワーがそこには存在する。聴くものを別次元の世界へと誘ってしまう程だ。世界中を旅していて日本でのプレイが最も好きだと語るDerrick May、彼は本当に心から日本のファンの方達を大切にしているのだ。2011年には奇跡的に『MIXED BY DERRICK MAY X AIR VOL.2』を発表。また、2013年には自身のレーベルである〈Transmat〉のコンピレーションCD『TRANSMAT 4-BEYOND THE DANCE』を発表し更なる注目を集めている。

Derrick May @ Kappa Futur Festival 2014 // Day 2

================================
Contact
https://www.contacttokyo.com
東京都渋谷区道玄坂2-10-12 新大宗ビル4号館地下2階
Tel: 03-6427-8107
You must be 20 and over with ID.

※Contactは会員制となっております。ご来場の皆様に登録をお願いしております。
================================
================================
★☆★☆ Derrick May - HI TEK SOUL JAPAN TOUR 2017 - ☆★☆★
1/6(金) 札幌 PRECIOUS HALL
1/7(土) 東京 CONTACT
1/8(日) 熊本 NAVARO
1/9(月) 福岡 KEITH FLACK
1/13(金) 大阪 CIRCUS
1/14(土) 名古屋 JB’S
================================

Carpainter - ele-king

最近DJでかける好きな曲を雑多に集めました。

OG from Militant B - ele-king

パラダイス銀河3000

with Derrick May & Francesco Tristano - ele-king

 この取材は、10月7日におこなわれている。つまり、大統領選のおよそ1カ月前。なんで、そのときにこの記事をアップしなかったんだよ〜と言うのはもっともな意見である。
 いや、アップしたかった。本当に! しかし訳あってアップできなかったのであるが、なにはともあれ、ぼくはトランプが勝利したとき、というか投票結果で最後にミシガン州が残っていたとき、デリック・メイの憂いを思い出していた。彼は、アメリカに広がるエクストリームな感情について知っていたのである。以下のインタヴューは、名目上は、〈トランスマット〉からリリースされたフランチェスコ・トリスターノの新作『サーフェイス・テンション』の取材で、本作によってデリック・メイは20年ぶりにスタジオに入ったらしい。20年前と言えば1996年だが、それってなんの作品だったんだろう、あ、訊くのを忘れた。
 忘れたというより、このときはそれ以上にデリックに訊かねばならないことが多く、そして、読んでいただければわかるように、ひじょうにショッキングが事実を彼は述べている。トランプのことじゃない。ダンス・カルチャーも、いまとなっては娯楽産業であるから、リバタリアンが身近にいても驚くほどのことではないのかもしれない。しかしよりによって……。(僕がここで何を言いたいか、各自探索すれば面白い事実を知るだろう)


Francesco Tristano
Surface Tension

Transmat/U/M/A/A Inc.

HouseTechno

Amazon

 気を取り直そう。ファランチェスコ・トリスターノの『サーフェス・テンション』がリリースされた。坂本龍一の“戦場のメリー・クリスマス”のフレーズからはじまるこのアルバムは、デリック・メイが参加しているのでぼくは聴いたわけだが、聴いて良かったと思った。オリジナル収録曲の8曲あるうちの4曲に参加し、ボーナストラックの1曲ではライヴ演奏に参加したときの模様が披露されている。栄えある〈トランスマット〉レーベルの30周年イヤーの最後を飾るのは、このコラボレーションなのだ。

うん、プリンスも死んだし……悪い年だな……悪い年だ。

デリック、いったいアメリカで何が起きているんだよ!?

デリック:うん、プリンスも死んだし……悪い年だな……悪い年だ。

日本でニュースを見ていても、ブラック・ピープルのコミュニティにただならぬことが起きているのがわかるよ。

デリック:それは、おまえが繫がっているからね。俺が311のとき日本に来たときみたいなものだ。(放射能が漏れているから)みんな「来るな」と言ったけど、俺は、来た。ヒロも20年の仲間だし、おまえも、ヨウコも……日本にいる俺の女たち全員も(笑)。来るしかなかった。

それほど酷いと。しかし、いまのアメリカを覆っている暗さは、さらにまた、より政治的なことだけど。

デリック:うん、とくにドナルド・トランプが大統領選挙に参加してるから。アメリカで国内戦争になってもおかしくないと思うよ、マジで。本当にヤバい時代だ。デトロイトもだいぶ変わった。デトロイト市が倒産したとかみんな貧乏だとか、そういうニュースとかドキュメンタリーのせいで、デトロイトに"悪い要素"の人たちを引きよせたと思う。金持ちで悪い人たち。わかるだろ。(いわゆるニュー・リッチと呼ばれる)あいつらが全部買い上げた。みんなを家から追い出して。だからいまデトロイトに来たら、全然違うよ。

デトロイトが再開発の対象になるなんて、よほどの……、たとえばメジャーなポップ・ミュージックを聴いても、ビヨンセやケンドリック・ラマーとかね……政治色が強まっている。かたや“Black Lives Matter" というムーヴメントもあるし……

デリック:(遮るように)ちょっと、待った待った。おまえが何を訊きたいのかもうわかるよ。ムーヴメント・フェスティヴァルをやってる奴らとか、そういう考え方から完全にかけ離れてるしね。全然わかってないよ。ウルトラ共和党、コンサヴァーティヴ、右翼のやつら。

え、Movementって……あのフェスティヴァルの?

デリック:そう、オーガナイザーたち。俺は(ネーミング・ライツを)売ったからね。俺が売ったやつ、トランプのサポーターだよ。

ホント?

デリック:Yes....

Unbelievable.

デリック:Unbelievable…

しかし、デトロイトみたいな、白人ではない人たちが多い街でなぜトランプみたいな人が支持されるのか……まったくよくわからないんだけど。

デリック:なぜだかわかるか? 俺は思う……トランプを理解しないと……自分から何か大事なものが取られたと思って怒ってる人たちに、彼はアピールしてるから……

Black Lives Matterに関してはどういうふうに思っているのよ?

デリック:俺は、それほど多くは知らないんだ。俺が知っていることは、そうだな、いまより必要なのは、よりもっと、さらにもっと、all peopleに大事なものじゃないのかな、black peopleだけじゃなく。

そうか。

デリック:いまは話さなきゃならないことがたくさんあるな。

重要なことだね。

デリック:俺にとって“Black Lives"とは、俺の娘、俺の母、俺の家族だ。

まさか、ブラック・パンサーやあの時代のようなことが起きるなんて、信じられなかった。ちょっと本当に……

デリック:ああ、なんて恐ろしい時代だろう。たとえば中東の人たちは、これが彼らにも影響する問題だと理解してないんじゃないかと思うよ。(実際はそうじゃないけど)何か大切なものを取られていると思い込んでるたくさんのアメリカの白人の怒りを理解してないんだよね。

この話、別の機会にしよう。あまり時間がないし、今日は、フランチェスコ・トリスターノの新作の話をしなくちゃね。良いアルバムだし、そう、1曲目と2曲目が本当にすごい……すばらしい。しかも2曲目のリズムを聴いたときに、デリック・メイの腕がまださびてないとわかって嬉しかったです。

デリック:どの曲のこと?

2曲目の"The Mentor"ね。

デリック:まぁ……ちょっと待ってくれよ。美味しいワインに、チル、いい場所で、夜遅くに、ストレスもなく、焦ることもなく、オーディエンスもいない……そして最高のプロデューサーが居るわけだ!

といってますが、フランチェスコさん、どうでしょう?

フランチェスコ:ほぼバルセロナの自分のスタジオで……それと一部デトロイトで。“サカモト”のピアノはパリで。一部のリズム・シーケンスはローマで。“Esotheric Thing”の鳥はモーリシャス島で。

いろんなところでじゃあ……

フランチェスコ:フィールド・レコーディングだ。

デリック:坂本(龍一)さんに“サカモト”を聴いて欲しいな。

“サカモト”、いい曲だよね、インプロヴィゼーションなっていくところが格好いいんだよね。デリックは参加してるの?

デリック:いやいや、他の曲だね。サカモトの曲は完全にフランチェスコだ。

フランチェスコ:じつはアルバムに入れる予定じゃなかったんだけど、デリックに曲を聞かせながら喋ってたら、「これ聴こうとしてるんだからちょっと静かにっ!」って怒られて。で、「これ〈トランスマット〉にもらえない?」と言われて。そもそもDeccaのコンピレーション用だったので、サブライセンスもする必要があったけど、最終的にはアルバムに入れたし、みんな知ってる曲だからポールポジション(トラック1)にするしかなかったね。

デリックからたくさん学んだし、デトロイトという町からも。マジで……みんな俺を受け入れてくれた気がした。──フランチェスコ

大好きだよ、おまえ! ──デリック

「養子」にしてくれたような……俺はただの白人ユーロ・トラッシュ野郎なのに(笑)。 ──フランチェスコ

でもおまえは白人じゃないよ(笑)。 ──デリック

デリックはフランチェスコのどんなところを評価しているんですか?

デリック:そりゃおまえ、何度も言うけど彼のプロ意識だ。クラシックの人生とエレクトロニック・ミュージックの人生のちょうど間をたどれること。クラシックのミュージシャンでは珍しいよ。

フランチェスコはよくぞ、デリックをスタジオに閉じ込めて録音させましたね。いったいどんな手を使ったんですか?

フランチェスコ:なんていうかその……『不思議の国のアリス』だよ、デリックを巻き込む方法は。キャンディーとかをシンセサイザーに入れ替えて、デリックが現れる前に全部機材を接続しておいて、しかも彼が気づかないようすでに録音も初めておいて……そうやってやるんだよ(笑)。

デリック:ハッハッハ……俺をハメやがったな、このクソ野郎め!

フランチェスコ:「まだ録音するなよ!」と言われても「大丈夫、気にしないで!」と言いながら、でも既に録音してるという(笑)。

デリック:おまえ、あのとき俺を騙したのか! 騙したんだな!?

え、デリックはこれがリリースされるということを知らないで一緒にセッションしていたってわけ?

デリック:イヤイヤイヤイヤ、彼が言ってるのは……俺が最初に少し練習しようとしてたことを知ってて……俺はまだ録音しはじめてないと思ってたのに……でも録音してたんだ。俺もそれは結局わかったし、彼も教えてくれたからその時点ではサプライズじゃなかったけど。

フランチェスコ:でも、君は……

デリック:うん、ちょっと(録音のために)遊んでた……常に。

さっき言った2曲目("The Mentor")なんかは、クレジットを見なくてもデリック・メイだってわかるんだけど、初期のビートを思い出したな。あれどうやって作ったの? 機材は?

デリック:これはフランチェスコを評価しないと。だって……スタジオの写真はあるか? 

フランチェスコ:"The Mentor"のリズム・シーケンスには、生ドラムのサンプルを使った。もちろん少しプロデュースされてるけど、キックと一部のハイハット以外は生のドラムサウンドだ。で……やっぱり、デリックがいつも言うように、全部ミックス次第なんだよね。レベルの割合と音楽がどう噛み合うか。音楽といえば……メロディとかベースとか。その音楽の大切な部分をどうするかわからなくなってしまうから、やはりリズムはあまり出すぎないようにしないと。

デリック:非常に良いコラボレーションだったよ。彼は俺の考えをよく理解してくれ、それを評価してくれながらも、自分の視点、自分の考え方もうまく表現した。これはみんなに理解してほしい……これは「おまえ(フランチェスコ)のプロジェクト」だということ。それに俺はインバイトされたんだということを。

フランチェスコ:でも、僕もあなたのレーベルにインバイトされたんですよ。それをお返しできるのは光栄ですよ

デリック:いや、これはおまえのプロジェクトだよ!

フランチェスコ:いや……

デリック:おまえのプロジェクト!

フランチェスコは〈トランスマット〉のことをどう思っているの? またデリック・メイというDJについてもコメントして欲しいですね。

デリック:いい質問だな。

フランチェスコ:(笑)

デリック:ほら、おまえの質問が彼にプレッシャー与えてるぜ(笑)。

フランチェスコ:〈トランスマット〉といえば、僕にとって伝説のレーベルだし、デトロイトのサウンドを生み出した唯一のレーベルだと思う。もちろんメトロプレックスとかそのあとプラネットEとかもあるけど……でもやっぱり〈トランスマット〉なんだよ。しかも僕がアナログを買いはじめた当時、デトロイト・テクノにしか興味がなかった。たくさん持ってるよ……〈トランスマット〉のバックカタログをぜんぶ試聴した……たくさん持ってるんだ。
 それから、デリックはナンバーワンのDJだけど、この作品ではDJしていない。僕は彼を快適な場所から引っ張り出したかったんだ。とくにライヴに関しては。彼にDJしてもらいながら僕がその上からプレイすることもできたけど、それはやりたくなかった。デリックに何か違うことをして欲しかった。彼はもうずっとDJしてるし、誰よりもそれは上手……これからはライヴに挑戦するタイミングだ(笑)!

デリック:進化していくのもね。

もう、飽きてきたろうから最後の質問にするね。この作品にはメッセージがありますか?

フランチェスコ:まず、このアルバムは別々として考えるのではなく、全部連動した、流れ的な作品として考えて欲しいんだ。それからタイトルのSurface Tension(表面張力)とは、生化学、地質学における現象だ。液体の表面にある分子を引き寄せる力のこと。だから水の上を歩ける虫もいるよね。海とか、水じゃなくても、音も……その表面は非常にタイトで綺麗に磨かれたものだ。もちろん好きに解釈してもらっても構わないけど。だがその下には巨大な海がある。それがデリックが別の場所でも話していた、デトロイトの歴史、音楽の歴史、シンセの歴史であり、それが全部「海」でその上に存在する表面張力が僕たちを引き寄せてコラボさせてくれた。僕はこの考えがとても気に入っているんだ。それで僕が〈トランスマット〉からアルバムをリリースすることになるとは……ていうか、トランズマットからフルアルバムをリリースしたことはあるのかな?

デリック:うん、アリル・ブリカとか、『The Art of Vengeance』、Microworld……でもこれは全部日本独自規格で、シスコとやったものだけど。

フランチェスコ:だから、〈トランスマット〉で出すアルバムは特別だよ

デリック:数少ないよ。そこは気をつけてる。

フランチェスコ:本当に少数だよね。僕にはすごく大事。

デリック:俺たちにも大事だよ

フランチェスコ:本当に光栄だよ。しかも イノヴェーターに参加してもらうなんて……ある意味オマージュでもあるね。で、僕がそれのお返しをしたというか。

デリック:Wow、ありがとう。

フランチェスコ:デリックからたくさん学んだし、デトロイトという町からも。マジで……みんな俺を受け入れてくれた気がした。

デリック:大好きだよ、おまえ!

フランチェスコ:「養子」にしてくれたような……俺はただの白人ユーロ・トラッシュ野郎なのに(笑)。

デリック:でもおまえは白人じゃないよ(笑)。

フランチェスコ:でも、僕はデトロイトを感じる。だから〈トランスマット〉は……でかい存在だ。

デリック:ひとつだけ言いたいんだけど、今回のことはまた自分でも音楽作りにチャレンジしたいという気持ちのインスピレーション、モチベーションにもなったよ。それはフランチェスコのおかげだ。俺のオーケストラのコンセプト、それからフランチェスコとオーケストラの仕事をしたから、今回彼の作品にスタジオ参加することにもつながった。そしてそれを僕は受けた。
 俺は音楽をリリースするけど、1989年のデリック・メイにはなりたくない……前の自分になろうとしてるんじゃない。音楽的にどこか別のところに行きたいし、自分にチャレンジするのが大事だ。だから彼とこのプロジェクトに参加することにしたんだ。

フランチェスコ:光栄です。喜んで。

デリック:そう! (俺の)スイッチをオンにした!

フランチェスコ:残念ながら、みんな最近集中力がないからね。でもそう考えちゃダメだし、フェードアウトはしてはならない。

OK、ありがとう。


FRANCESCO TRISTANO P:ANORIG Feat. DERRICK MAY Live in Berlin

Thomas Brinkmann - ele-king

 先日リリースされたアルバム『A 1000 Keys』はもうお聴きになりましたか? どうでしたか? 凄かったでしょう? ピアノという楽器をあんな風にミニマル~テクノの文脈に落とし込むことのできるアーティストを、僕は他に知りません。
 もはやベテランと言ってもいいトーマス・ブリンクマンですが、この冬、代官山のUNITにてライヴをおこないます。なんと5年ぶりの来日です。しかも、エクスペリメンタルなセットとフロア・オリエンテッドなセットの両方を披露してくれるそうです。となれば見逃すわけにはいかないでしょう。詳細は以下を。

Ishan Sound & Rider Shafiqu - ele-king

 尖ったサウンドの伝統を持つブリストルで現在もっとも尖っているポッセ、ヤング・エコーのメンバーでもあるIshan Sound(アイシャン・サウンド)とRider Shafique(ライダー・シャフィーク)の2人が来日する。
 アイシャン・サウンドは、〈Peng! Sound〉や〈Hotline Recordings〉、〈Tectonic〉などからもリリースする、現在20代半ばのプロデューサー。マーラやザ・バグなどからもイヴェントに招かれ、またリリースされる曲はレゲエ系サウンドシステムでも好評を得ている。ルーツへの興味を示しつつ、ダブステップ~グライム~トラップ~ダンスホールを折衷する、まさに新世代感覚。
 もうひとりのライダー・シャフィークは、もっか注目もMC。ヒップホップ~ジャングル~ダブステップなど多くのDJやプロデューサーに招かれ、そのラップを披露している。Kahn、Sam Binga、Epoch、Gantz、Submotion Orchestraなどなどの作品に参加している。
 最近Young Echoはレーベルを立ち上げたが、その第1弾は、El KidとJabuがトラックを提供した、ライダー・シャフィークのスポークン・ワード作品(https://bs0jukebox.tumblr.com/post/152601400294/i-dentity-rider-shafique-official-video
 詩の邦訳: https://dsz-instagram.tumblr.com/tagged/ye001

 とにかく、ブリストルのアンダーグラウンド・ミュージックの気鋭の2人の来日、ぜひ生で体験してほしい。11月22日から、東京、名古屋、京都、福岡、金沢、宇都宮をまわります。

■Ishan Sound & Rider Shafique Japan Tour Nov/Dec 2016

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96