「ANS」と一致するもの

Soichi Terada - ele-king

 ようやく、寺田創一のワークが世界中で評価される時代がやってきたようです。
 ここ6ヶ月で、寺田の旧作が3枚リリースされた。2014年末、イタリアのFabio Monesiによる“Do It Again”のリミックスを収録した「The Far East Transcripts」が〈Hhatri〉からリリースされると、今年に入って、Manabu Nagayamaとの共作「Low Tension」がUKの〈Utopian〉からリリースされました。私は、かねてから“Low Tension”を高く評価していたので、やっと再発されて、ものすごく嬉しい。
 そして、今回目玉となるのが、オランダの〈Rush Hour〉からリリースされた「Sounds from the far east」というコンピレーションです。

 寺田は日本人なのに、上記のプロジェクトはすべて海外からリリースされています。

 Far East Recording (FER)のアンダーグラウンド性は相当高いので、知らない方が多いのは仕方がないでしょう。
 FERは、1988年、寺田によって創始されました。アナログからCDへのシフトのピークタイムだったので、比較的にプレス代が低くなっていました。自分の曲をDJにプレイしてもらいたかったが、当時アナログレコードで落とさないとDJがプレイできなかったため、寺田はレーベル活動を始めたそうです。しかし、ディストリビューション先がなかった。当時のレコードショップは個人取引もやっていなかった。なので、自分のレコードを販売できなかった。
 そこで寺田は、その一部をいろいろなDJに直接あげたり、店にこっそりおいたり(いわゆる万置き)していました。
 いま現在、FERのレコードが非常にレアで、高価になっている原因のひとつです。

 本コンピに揃っている曲は、FERの初期音源(1988年から1995年まで)になります。寺田のプロダクションスタイルのひとつの大きいな特徴は、ベースの使い方です。あのころの彼の曲を聞くと、「寺田プロダクションだ!」と、ベースから判明できます。ベースが必ず曲の主要エレメントになっているのです。彼は、ドラムキックと同じように、ビートを刻んでくるスレーミングなベースを使います。“Low Tension”や“Hohai Beats”が良い例です。
 寺田は完全にサンプリングの子供です。彼がプロダクションに入ったきっかけもそうでした。友だちからLED ZEPPELINのレコードをもらい、それが気に入ったからサンプリングして、初めてリミックス作りました。今回のコンピにおいても、“Purple Haze”では、ジミ・ヘンドリックスをサンプルしています。“Saturday love Sunday”ではCherelle & Alexander O’Nealをサンプルしています。、Shinichiro Yokotaの横田“Shake yours”はI.C Love Affairの89年リミックスをサンプルします。
 とはいえ、サンプルの仕方も独特です。カットした分をほぼエディットせず、そのまま自分の曲に使います。あくまでその曲が好きだから、トリビュートする気持ちでそうしています。
 寺田はすごく素直でやさしい人です。自作について語ると、そのサンプルで使った曲への愛が伝わります。ピュアな気持ちがそうさせるのでしょう。
 そして、寺田のスタイルの大きいな特徴は、やはりディープとムーディーな雰囲気づくりです。パッと聞いて「あ! 90sハウスだね!」と思わせるキーズの使い方(“CPM”や“Voices from Beyond”)。Downtempoに近いビートを使った“Binary Rondo”も、パッドのカットでムーディーで懐かしい気持ちを体験させてくれます。

 結論を言いますね。このコンピを見逃したら大間違いです。寺田は日本のアンダーグラウンド・ハウス・シーンを創始した数の少ない人のひとりです。いまでもOMODAKAという名義の下で、まだアンダーグラウンドシーンで活動しています。ジニアス・プロデューサーであり、島田なみの“Sunshower”リミックスは、NYCのParadise GarageとLarry Levanにも影響を与えました。収録曲はすべてオリジナルではアナログ・レコードはとして存在していますが、人生で一度見たら奇跡だと思えるほどレアな盤です。
 今回のコンピは、寺田がプロデュースした、素晴らしい曲をVinylで手に入れる最高のチャンスだと思ったほうがいいでしょう。

Chicklette - ele-king

 2011年春、某クソバンドでクソな活動をしていた僕はLAにていくつかのクソなショウをこなし、オースティンまで13時間のドライヴで〈SXSW(サウス・バイ・サウス・ウエスト)〉へ向かった。僕以外の同乗者全員が運転できない過酷な状況の下、車内から見える、ただ永遠と広大な荒れ地と砂漠がつづく光景は、まさしくループするようで猛烈な眠気を誘い、時折道中に転がる大型野生動物の屍骸をよけて死にかけつつ疲労困憊の限界を超えて到着した先で無銭で同乗していたハイウルフが交換条件として提示していた宿先が確保できていなかったことはいまだに忘れることができない。

 ……といったことは以前に紙版『ele-king』のほうにも書いていて、何をくどくど同じことをほざいているかというと、そんな最悪な思い出もいまにつながる妙な縁を自分に残しているからである。はたしてそれが自分の現在を良いものにしているどうかは別として。

 DJ ドックディックとのユニット、ドッグ・レザーをはじめたばかりのソーン・レザー、現スカル・カタログ(SKULL KATALOG)のグリフィンを誘って、初めて対面したのもこのときであったし、エンジェルス・イン・アメリカ(Angels in America)のエスラに出会った(ナンパした)のもこのときであった。

 チックレット(Chicklette)は現在NY在住のエスラによるソロ・プロジェクトである。エンジェルス・イン・アメリカではシンガーを務め、DJデュオ、バンビ&チェブス(BAMBI & C.H.E.B.S.)としてモントリオールからボルチモア、ファー・ロカウェイを股にかけリジデントのパーティを主催する。ザリー・アドラーによる秀逸なアート・ピースとしても定評のあるカセット・レーベル、〈ゴーティー・テープス(Goaty Tapes)〉よりリリースされた初音源である前作『ロンリエスト・ビッチ(Loneliest Bitch)』(──そう、僕はいつだって誇り高きアバズレに人生を振り回されているのだ)は、USヘンテコ・ミュージック愛好家の間で話題を呼んだ。

スカル・カタログやDJドッグディックらとともに多くの時間をボルチモアのスクワット生活で過ごした、エンジェルス・イン・アメリカのクラストパンク・フォークとでも形容すべきサウンドが、この小汚い連中に多大なリスペクトを送りつづけるドラキュラ・ルイス(Dracura Lewis)ことシモーネ・トラブッチによる〈ハンデビス・レコーズ〉からのリリースとなったのは必然であったと言えよう。〈ハンデビス〉よりカセット音源『VH1 DRUNK』をリリースしたエンジェルスは同レーベルによるサポートの下、ヨーロッパ・ツアーも敢行したようだ。

 このたび、ハンデビスより満を持して発表されるチックレットのカセット音源がこのアンフェイスフル(UNFAITHFUL)である。シモーネによる毎度最高なCMはこちら。

 このアンフェイスフル、正直カセット音源であることがもったいない。

 ファルマコン(※リンクおねがいしますhttps://www.ele-king.net/review/album/004087/)と同等、いや、それ以上の女子的な闇と病巣を宿していながらも非常にバカバカしく、キッチュかつポップに聴かせてしまうセンスにはまさしく戦慄をおぼえる。エンジェルスでは、ある種拷問的に聴者に襲いかかっていた彼女の狂気は、このような形にまとめあげられるべきであったのかもしれない。ハンマービート、EBM、フォークソングと、ヴァリエーション豊かなトラック群にさらりと乗る底抜けに病んだリリック、それはまさしく1ドルショップに並ぶ、毒々しい蛍光色で輝く有害物質が桁外れに含まれた幼児玩具のようでもある。

 また、エンジェルスの相方であるマークもプロヴィデンスを拠点にフェアウェル・マイ・コンキュバイン(Farewell My Concubine)として活動する。こちらも『チックレット』に劣らない最高のポップ・センスとヘロイン・ライクな心地よすぎるダウナー・トリップ。ぜひともチェックしていただきたい。

Sunil Sharpe - ele-king

 初期にはゼロ年代のドローン/パワー・アンビエント・ムーヴメント以降の良質なローファイ・クラウトロックやエクスペリメンタル系のリリースを手掛けている印象の強かったアイルランド発のインディペンデント・レーベル〈トレンスマット(Trensmat)〉が近年は良質な電子音楽をリリースしている。「ドローン、ノイズ、オシレーション、そしてグルーヴをお届けします」というレーベルのステートメントにあるように、彼らには純粋な意味での電子音楽に対する美意識を強く感じさせるし、多くのレーベルが繋ぐことができなかった過去10年間のアンダーグラウンドの流れを見事に包括している希有な存在ではなかろうか。

 アイルランドはダブリンを拠点に活動するスニル・シャープ(Sunil Sharpe)は90’sリヴァイヴァル・ハードテクノに終わらない現代的な感覚をトラックへ昇華させているし、それが彼のサウンドの比較対象であるようなベテラン勢たちが近年みせてくれる、ノワールなイメージ、リヴァーヴに劣化音質といった判で押したようなスタイルとは決定的に異なっているのも好印象である。

 スニル・シャープが同郷のディフェクト(DeFeKT)と結成したライヴ・エレクトロニクス・デュオ、ティンフォイル(Tinfoil)もまた素晴らしい。〈ブラックネックス(Blacknecks)〉傘下である同名レーベルからこれまで2枚の12インチをリリースしているが、どちらも息を呑む、セッションならではの緊張感をテクノに落とし込んだ良盤である。

直球なアシッド・ラインに乗る、ハードを用いて探求されたであろう個々の音作りも見事で、近くに寄ってテクスチャーを感じても、遠くからグルーヴに身を任せても楽しめるレコードとなっている。なぜアルミ箔なのか? そのあたりもガッツリとコンセプトがありそうではあるが不明である。そういえばDJソイビーンズ(DJ SOYBEANS)の音源のジャケもアルミ箔なんだけど流行ってるのか? 噛んだ感じがいまのテクノっぽいとかで?

スワンズ/Swans - ele-king

 私は島崎藤村『破戒』の丑松のように机に手をついて告白したい気持ちに駆られている。
 わかっていなかったのだ。
 「新生スワンズ」なる文句を書きつけたのも一度や二度ではなかった。私自身、そのことばを納得して書いていたつもりだったし、あろうことか前回の二十数年ぶりの再来日公演を観てまでそんなことをいっていた気もするが、マイケル・ジラがスワンズのめざす音がどんなものか、今回のライヴを観るまでたぶん腑におちていなかった。情報はときに目を曇らせる。曇るといえば、ジラは前回のインタヴューで新作『To Be Kind』を「音の雲」に喩えていた。時々刻々変化する音の態様をジラは雲と呼び、私はその意味を忖度しながらも、まるで土手に寝転んだ父親が息子に空を指して、「ほらご覧、あの雲スワンズみたいだね」というように、ある種の形状を指してスワンズだと、つまり変化よりは不動性が主眼だった。ノーウェイヴ、インダストリアルないしはオルタナティヴの大立て者たるかつてのスワンズの陰々滅々たる音像の残像にひっぱられていたわけだが、それさえ本来は反復のもたらす変化をさしていたというのに。不思議である。もっとも当時といまでは反復の質はちがう。鈍重さはそのままに、ジャンクからロックへ鈍重の原料が変わった。ロックのコンボ・スタイルにペダル・スチール、ハンマー・ダルシマーやヴァイオリンといった各種小物を加えた編成の合奏からは濁りは濾過され音響はクリーンになりその分音量は倍加した、しかし耳を聾する音の壁ではない。舞台上のオレンジ・アンプの壁からPAを経由してO-EAST場内をみたす音はそれはそれはたいそうでかく、バースペースでグラスを傾けて小粋な会話を楽しむどころではなかった。しかしながら音の壁というより粗い目に織りあげた膜を幾重にも重ねたようにブ厚いそれの通気性は高い。この感じは前回公演にはなかった。いや私が気づかなかっただけなのかもしれない。前回と会場がちがったからハタと膝を打った。収容人数もちがえば(前回は400人の限定だった)天上も高い分、音の粗密がわかりやすい。もちろんエンジニアの腕にもよるのだろう。スワンズが『To Be Kind』以降、数枚のライヴ盤を出しているのはジラはスワンズのライヴ音響にひとつの完成をみた、と考えたのは『To Be Kind』所収の「A Little God In My Hands」のようなリズム隊とギター群がユニゾンしない曲のときで、ベースとドラムの刻む硬質のリフにつづき、ジラが悩ましげにワンコーラス歌い終えるとギター、ペダル・スチール、パーカッションがいっせいに雪崩れこむ。音は膨れあがり、場内を埋めつくしたお客さんの間を浸していくのだけれども、耳の焦点を変えながら音の階層を降りていくと、轟音の底でさきほどのリフレインが定期的に脈打つのがわかる。音が迫り来る。しかしほとんど解放的である。まったく自由である。しかしこれはフリージャズやフリーミュージックといったときの音楽の自由ではない。かつてケージがブランカの音楽に嗅ぎとった(といわれる)ファシズムの匂い、それを構造への意思と読み換えれば、ロックの形式を崩さないスワンズはブランカの側に立つ(歴史的にも音楽的にも)がしかし、一拍ごと一音ごとにたちあがる音はその前の音とまったくちがい新しい。ケージをアナーキーとみなすとき、そこに不確定の動態の謂いをこめているのだとしたらブランカのそれもまた静的な動態であり、逆に記号化し流通するアナーキーにこそダイナミズムは宿らない。ケージやベイリーは注意深くそれを回避し、ジラは彼らと同じ場所へ逆方向からにじりよる。建築の美を「凍った音楽」になぞらえることは音楽の反復不可能性の美を捨象しているがゆえに音楽は構造のみに収斂するものではない。

 むくつけき野郎どもが六人、舞台中央でうごめくさまは存分に威容だった。「荒野の六人」というよりペキンパー的な視角的要素ともあいまって、ノイズの配分はむかしよりすくないのにますます野卑に音はなってくる。むろんむかしのほうがもっとノイジーだった。アーバンでもあった、というと異論はあるだろうが、『Swans Are Dead』(1998年)で一度死ぬ前のスワンズが都市の喧噪を体現していたように、いまの彼らの体現するものを米国の広大な非都市部、もっといえばそれは自然だといってみるとそれは新生スワンズをスピリチュアルだといっているようにみえるかもしれないがそうではない。なにせジラは以前のインタヴューで新生スワンズの宗教性について訊ねた私の質問を言下に否定した――が、2010年以降の『My Father Will Guide Me Up A Rope To The Sky』や『The Seer』それに〈Young God〉なるレーベル名にいたるまで宗教性は微塵もないとでもいうのだろうか。もちろんインタヴューですべてをさらけださなければならない法はないし、それはとてもナイーヴなことだ。ジラは誤解を招くのをおそれたのかもしれないが、百歩譲ってそこには宗教的ニュアンスはないとしてもそれはあたかもコーマック・マッカーシーが『越境』でカラマーゾフの大審問官を借り受け、メキシコの辺境の教会に隠遁した人物に語らせたような不在のなにかに対する否定/神学ではあっただろう。そう考えると舞台の上の六人はペキンパーより『ブラッド・メリディアン』のインディアンの頭皮狩り隊のほうが似つかわしい。そしてマッカーシーが国境の南を失われたアメリカというより架空の無法地帯とみなしつづけたように、ジラはアメリカーナにルーツではなくアナーキーをみていた。それはノスタルジーとは無縁の世界であり、彼はデベンドラ・バンハートやアクロン/ファミリーの背後にすでにその光景をみていたのかもしれない。と思い、舞台中央のジラに目を向けると、ギターをさげたまま彼は両手をあげ、音を操るように手首をくねらせる。奄美で六調と呼ばれ沖縄ではカチャーシーというフリースタイル・ダンスの手の動きとよく似た動きである。それによくみるとジラは私の島の実家の裏に住むオバさんにどことなく似ている。ジラの身ぶりにしたがい音は巨大化する。そしてさらにうねりを増す。もし私に息子がいようものなら、渋谷円山町に突如湧きあがった目にはみえない音の雲を指してこういっていたことだろう。
 「ほらご覧、あれがスワンズだよ」(了)

The Best 5 Reissue 2014 - ele-king

01 Lewis Baloue / Romantic Times / Light In The Attic


Amazon

 アメリカでは近年、プライヴェート・プレス(いわゆる私家版)の発掘が進んでいる。文字通り、商業的な流通には乗せず、「仲間内に配って終わり」みたいなやつで、アンビエント・ミュージックだとそれらをまとめた『アイム・ア・センター』が決定的だったりする。そのようなプライヴェート・プレスには、当然、どんなものがあるのか想像もつかなかったりするわけで、昨年、最も話題を集めたのがルイス『ラムール』の再発だった。同作はカナダの大富豪が恋人のために1983年に吹き込んだアシッド・フォークというかなんというかで、これが2013年にEベイでいきなり20万円近くで落札され、それを受けてフリー・デザインやベティ・デイヴィスの再発を手掛けてきたシアトルの〈ライト・イン・ジ・アティック〉が正式に再発。簡単にいえば、あまりの音痴に世界は笑いの渦に巻き込まれた。そして、それで終わりかと思ったら、ルイスには2作目があり、『ロマンティック・タイム』(85)はシンセ-ポップにサウンドも様変わり。またしても切々と歌いかけるトーンには笑いが止まらなかった。後半でちょっと歌が上手くなる曲があって、その時だけ少し白けるものの、全体として見れば、世界を少しばかり平和な気分にしてくれたことは確かでしょう。この騒ぎのさなか、ルイス本人もイタリアの避暑地にいるところを発見され、再発されたレコードを手渡されたらしいのだけど、本人からは「で?」という返事が返ってきただけだったとか。(オリジナルは83年)

02 Tom Dissevelt / Fantasy In Orbit / Sonitron


Amazon

 実は『テクノ・ディフィニティヴ』のオープニングにしたかったオランダのパイオニア的シンセサイザー奏者(2年前にはキッド・バルタンとのジョイント・アルバム『ソングス・オブ・ザ・セカンド・ムーン』しか再発されていなかった)。『セカンド・ムーン』がまさにそうだけど、随所にエイフェックス・ツインを思わせる面があり、裏を返していえば、エイフェックス・ツインにはこの種の音楽がまだ黎明期に表現していた「驚き」を表現する素朴さが備わっているとも言える。ミュージック・コンクレートにありがちな生硬さもなく、時期的にまだニュー・エイジのようなスピリチュアリズムに陥るわけでもなく、単純にスペース・エイジの電子版をつくりあげている。インドネシアに演奏旅行に行き、現地で出会った歌姫と結婚し、シュトックハウゼンに興味を持って電子音楽に乗り換え…という彼の人生を映画化して欲しいかも。(オリジナルは63年)。

03 / Psychedelic Sanza 1982 - 1984 / Born Bad Records(Beans)


Amazon

 2011年に編集盤『アフリカン・エレクトロニック・ミュージック 1975-1982』が話題を呼んだカメルーンのギタリストによるサンザ(親指ピアノ)の演奏を集めた『アフリカ・サンザ』(82)と『アクワアバ:ミュージック・フォー・サンザ』(84)をパックした2枚組。サンザだけでメディテイティヴな空間を創出したり、ベースを加えてダンサブルな曲調を展開したり。同じカメルーンのマヌ・ディバンゴがエレクトロに走った時期だけにその差が際立つというか、ローカルに徹したことで現在に再生する余地があったという感覚はそれだけで示唆的。「サイデリック」というより「アトモスフェリック」ではないかと。

04 Berto Pisano, Jacques Chaumont / Kill ! / The Omni Recording Corporation


Amazon

 イタリア映画のOST盤。どんな映画かぜんぜんわかりませんけど(ジーン・セバーグの遺作らしい)、初期のカーティス・メイフィールドに憂いを含ませたようなスパイ音楽と甘く切ないストリングスのヴァリエイションがたまらない(菊池俊輔作曲『非情のライセンス』っぽいという か)。最後でいきなりドロス・トロイが歌い出す。(オリジナルは72年)。

05 The Topics / Wanted Live! By A Million Girls / Jazzman(P-Vine)


Amazon

 国内盤のライナーノーツを読むと、同じモダン・ソウルで同じ時期に同じ名前のグループが存在し、そちらの方が有名らしい。そこまで詳しくはないので、単純にこれだけを聴くと、それこそシティ・ポップスの元ネタみたいなサウンドがぎっしり。マインドデザイン(Mndsgn)が去年、アップしたミックスを聴くと、D/P/Iにジェリー・ペイパー(新)やシャラマー(旧)に混じって佐藤博や間宮貴子の曲もミックスされていて、70年代をどう聴くかということではもう同じなんだなーということがよくわかる。(オリジナルは78年)。

*次点でペレス・プラドーと名前が同じ弟によるイタリアン・ファンクの『ラヴ・チャイルド』(73)かな。レシデンツの5枚組とかウイリアム・オニバーの9枚組は面白そうだけど、さすがに外しました。

SWANS - ele-king

 いよいよ来週の火曜日(東京)と水曜日(大阪)、USオルタナティヴ・シーンの巨星、スワンズの来日ライヴがあります。2年前にも素晴らしいステージを披露し、昨年〈ミュート〉からリリースした13枚目のスタジオ・アルバム『To Be Kind』でも、彼らの底力をこれでもかと見せつけました。彼らのライヴには、「何百万ものロック・バンドが忘れたものがあり、最高のレイヴ、最高のサウンドシステムの経験に等しい」とは、ある米音楽メディアの評。
 最高の体験は、いよいよ来週です。

 以下、主宰者から熱いメッセージです。

 1982年、Michael Gira(ギター/ヴォーカル)を中心に結成、70年代末から80年代初頭の混沌としたニューヨークのアンダーグラウンド・シーンを象徴するバンドとして、SONIC YOUTHと共にオルタナティヴ・シーンに君臨した。ジャンク・ロックと称された初期作品『Filth』『Cop』、当時隆盛したノー・ウェイヴ・シーンと激しく共振しながら、その余りにヘヴィーなサウンドと破壊的なライヴ・パフォーマンスも相まって瞬く間に注目を集めた。Jarboe参加後の聖と俗、静謐と混沌の入り交じったような中期作品『Greed』『Holy Money』『Children of God』辺りから、唯一無二の絶対的な世界観とサウンドを獲得していく。ビル・ラズウェルのプロデュースによるメジャー・リリース作品『The Burning World』で見せた限りなくダークな歌へのアプローチは、自らのレーベルYoung God Records設立後の後期作品『White Light from the Mouth of Infinity』『Love of Life』でのサイケデリックかつドローンなサウンドへと継承されていった。Michael Gira以外のメンバーは、Norman Westberg(ギター)とJarboe(キーボード/ヴォーカル)以外は1997年に解散するまで流動的であった。
 2010年、「SWANS ARE NOT DEAD」の宣言と共に楽曲をアップ、Norman Westberg, Christoph Hahn, Phil Puleo, Thor Harris, Chris Pravdicaといった新旧のメンバーを召集、復活第一弾アルバム『My Father Will Guide Me Up a Rope to the Sky』を同年9月にリリース、精力的なツアーを行った。2012年8月復活後第二作目『The Seer』を発表。数多の媒体のレヴューでは最高の賛辞を持って軒並み高得点を獲得した。2013年2月には約22年振りの来日公演を敢行、ヴォリュームのリミット無しの2時間を超える強靭なパフォーマンスは新旧のファンの度肝を抜いた。そして、前作を遥かに凌駕する怪物アルバム『To Be Kind』を引っ提げて2年振り3回目の来日公演決定!現在最も体験するべき価値のある最高のライヴ・パフォーマンス、現在進行形の伝説を五感を総動員して自ら確認して下さい! 
 最新作『To Be Kind』は年末のアルバム・ベストに数多く選ばれている。

【東京】
開催日時:2015年1月27日(火) Open 18:00 Start 19:00
会場:SHIBUYA TSUTAYA O-EAST
前売券:¥6,000(1ドリンク別)
お問い合わせ:TEL03-3444-6751 (SMASH)
https://smash-jpn.com/live/?id=2195

【大阪】
開催日時:2015年1月28日(水) Open 18:00 Start 19:00
会場:UMEDA CLUB QUATTRO
前売券:¥6,000(1ドリンク別)
お問い合わせ:TEL06-6535-5569(SMASH WEST)
https://smash-jpn.com/live/?id=2195

【年間ベスト・アルバム】
# 18 - A.V. Club
# 23 - Clash
# 14 - CMJ, Cokemachineglow
# 28 - Consequence of Sound
# 12 - Crack Magazine
# 10 - Drowned in Sound
# 20 - MAGNET
# 42 - MOJO
# 14 - musicOMH, Newsweek
# 22 - NME
# 7 - No Ripcord
# 19 - Pazz & Jop
# 6 - Pitchfork
# 5 - PopMatters
# 8 - Pretty Much Amazing
# 36 - Rough Trade
# 17 - SPIN
# 25 - Sputnikmusic
# 13 - Stereogum, The Line of Best Fit
# 3 - The Quietus
# 11 - The Skinny
# 3 - The Wire
# 30 - Tiny Mix Tapes
# 18 - Uncut
# 22 - Under the Radar
# 28 - Wondering Sound


こだま和文 - ele-king

 最近何が驚いたかって、ぜんぜんダブのイメージのないパンダ・ベアがキング・タビーからの影響を取り入れたらしい新作を発表するかと思えば、Back To Chillのレーベルを始動させたゴス・トラッドがいまだからこそダブのベースの凄みを強調しようとする。UKでは、エイドリアン・シャーウッドとピンチは世代を超えたダブ・アルバムを作って、リリースしたばかり。そして日本のダブの先駆者、こだま和文が還暦を迎える。1月29日には、その一大イベントが開かれる。ここしばらく「ダブ」というキーワードは表だってこなかったけど、これは、ダブの季節の到来、本当にあるかも。

  以下、リキッドルームからの熱いメッセージです。

還暦のエコーこだまする宴へ

 30年以上にわたるエコーの連なりをこの国の音楽シーンに響き渡らせ続けてきた男、こだま和文。還暦を迎える、現在もそれは継続した響きの連なりを 持っている。ミュート・ビート、世界初のライヴ・ダブ・バンドとして東京の音をひとつ、1980年代に前進させた。これを発端にして、そして“レゲエ” や“ダブ”という言葉を外しても、彼がいなければ、果たしてこの国のアンダーグラウンドからポップ・ミュージックにいたるまで、それらがいまと同じ形に なっていったかというのを考えるばかりである。ソロ・アーティストとしても数々の名作を残し、1990年代以降から現在にいたるまでの中心的プロジェク ト“DUB STATION”での、ある種、ヒップホップやベルリンのリズム&サウンドやミニマル・ダブへの回答のような、そのスタイルは唯一無二の存在感を放ってい る。そして、フィッシュマンズのファーストなど、プロデュース作においても、やはりその動きはこの国の音楽シーンに消せない刻印をくっきりと残している。 新作が待たれるばかりだが、ライヴや客演での活動は、いまだ活発だ。

 先ごろ、ミュート・ビート以前の、これまで謎の多かった、その若き半生を綴った近著『いつの日かダブトランペッターと呼ばれるようになった』が刊行されたばかりだが、こだま和文がこのたび還暦を迎える。

 この日、これまで共演や客演などでそのリスペクトを示してきたEGO-WRAPPIN’、bonobos、ORESKABANDなど、その遺伝子を 持つアーティストたち、そして後期ミュート・ビートのメンバーでありこだま和文の朋友、故江戸アケミ率いるじゃがたらでもキーボードを務め、先ごろ円熟の ソロアルバム『遠近(おちこち)に』をリリースしたばかりのキーボーディスト、エマーソン北村も出演。

この宴、祝う。

▼EGO-WRAPPIN’
1996年 中納良恵(Vo、作詞作曲)と森雅樹(G、作曲)によって大阪で結成。2000年に発表された「色彩のブルース」や2002年発表の「くちばしにチェ リー」は、多様なジャンルを消化し、エゴ独自の世界観を築きあげた名曲として異例のロングヒットとなる。以後、作品ごとに魅せる斬新な音楽性において、常 に日本の音楽シーンにて注目を集めている。2014年5月には、オダギリジョー主演テレビ東京系ドラマ24「リバースエッジ 大川端探偵社」の主題歌・劇中歌、エンディングテーマの3曲を収録した、New Single「BRIGHT TIME」をリリース。
https://www.egowrappin.com

▼bonobos
2001年結成、2003年『もうじき冬が来る』でメジャー・デビュー。レゲェ/ダブ、ドラムンベース、エレクトロニカ、サンバにカリプソと、様々なリズ ムを呑み込みながらフォークへ向かう、天下無双のハイブリッド未来音楽集団。ROCK IN JAPAN、FUJI ROCK FES、RISING SUN ROCK FESなど、毎年数多くの野外フェスに出演し、ライヴ・バンドとしても確固たる地位を築いている。他アーティストへの楽曲提供、演奏サポートなど、それぞれ のソロ活動も精力的に行われ、2010年にはvo.蔡、dr.辻ともにソロアルバムも制作/発表。2014年3月5日には6thアルバム『HYPER FOLK』をリリース。さらに8月20日には初のライヴ・アルバム『HYPER FOLK JAMBOREE TOKYO.1/2』をライヴ会場限定販売にてリリース。
https://www.bonobos.jp

▼ORESKABAND
2003年に大阪・堺にて結成し、ライブを中心に活動するガールズ・ブラスロックバンド。3Rhythms&3Hornsの楽器構成。The Specials から絶大な影響を受けており、結成当初からスカバンドとして活動してきたが、活動を続けていくにつれて、2トーンをより精神的なものとして捉え、音楽のス タイルやジャンルをさまざまな方向に広げ、より自分たちらしい音楽を追求するようになる。2008年に全米46都市ツアーを行ってから、精力的に海外と日 本での活動を続けている。
https://www.oreskaband.com

▼エマーソン北村
ミュージシャン。オルガン・シンセを中心とする鍵盤演奏及び作編曲を行なう。ニューウエーブのバンドで音楽活動を始め、「ワールドミュージック」全盛 の’80年代末、JAGATARAとMUTE BEATに参加。’90年代前半にはライブハウス「代々木チョコレートシティ」及びそのレーベル「NUTMEG」においてあらゆる個性的な音楽、特に初期 のHip Hopやレゲエの制作に関わる。その後忌野清志郎&2・3′sを皮切りにフリーのキーボードプレイヤーとして活動。ロック畑からオルタナティブな 分野まで、音数は少ないが的確な演奏と音楽を広く深く理解する力によって、インディー/メジャーを問わない数多くのアーティスト・バンドをサポートしてき た。また、レゲエの創成期からジャマイカで活躍したミュージシャン、ジャッキー・ミットゥーの音楽を出発点としてリズムボックスと古いキーボードによるイ ンストゥルメンタル音楽を作っており、「エマソロ」と呼ばれる一人ライヴを全国各地や海外で展開している。2014年7月、オリジナル曲を中心としたソロ アルバム『遠近(おちこち)に』を、自身のレーベルからリリース。
https://www.emersonkitamura.com

▼松竹谷 清
1957年、北海道・札幌市生まれ。80年代から90年代初頭 に掛けて”TOMATOS”のリーダーとして活躍。メンバー には、じゃがたらのNABE CHANG(Bass)、EBBY(Guitar)や ミュート・ ビートの松永孝義(Bass)、今井秀行(Drums)ら が在籍。TOMATOSは、80年代にじゃがたら、ミュート・ ビート、S-KENと共にTokyo Soy Souceというライブ・イ ベントを企画、 シリーズ化して、それまでの日本のロック とはまた違った新たな音楽シーンを作った。彼らの活動が ベースにあった上で、後にリトルテンポやフィッシュマン ズが生まれた といっても過言ではない。又88年には、ス カの創始者ローランド・アルフォンの初来日公演 “Roland Alphonso meets Mute Beat”でサポート・ギタリストとし て参加、 後世に語り継がれる感動のライブとなった。その 後、ローランド・アルフォンとは2枚のアルバム 『ROLAND ALPHON SO meets GOOD BAITES with ピアニ カ前田 at WACKIES NEW JERSEY』、『Summer Place』を 一緒に作り、リリースした。
近年は、”吾妻光良&The Swinging Boppers”、“西内徹バ ンド”、“松永孝義”のアルバム等に参加。その天真爛漫 な存在感、ブラック・ミュージックの粋なエッセンスを日 本語に 置き換えた唄は、キャリアと共により味わい深さを増している。

▼こだま和文
1981年、ライヴでダブを演奏する日本初のダブ・バンド「MUTE BEAT」結成。通算7枚のアルバムを発表。1990年からソロ活動を始める。ファースト・ソロアルバム『QUIET REGGAE』から2003年発表の『A SILENT PRAYER』まで、映画音楽やベスト盤を含め通算8枚のアルバムを発表。2005年にはKODAMA AND THE DUB STATION BANDとして 『IN THE STUDIO』、2006年には『MORE』を発表している。プロデューサーとしての活動では、FISHMANSの1stアルバム『チャッピー・ドント・ クライ』等で知られる。また、DJ KRUSH、UA、EGO-WRAPPIN’、LEE PERRY、RICO RODRIGUES等、国内外のアーティストとの共演、共作曲も多い。現在、ターン・テーブルDJをバックにした、ヒップホップ・サウンドシステム型のラ イブを中心に活動してしている。また水彩画、版画など、絵を描くアーティストでもある。著述家としても『スティル エコー』(1993)、『ノート・その日その日』(1996)、「空をあおいで」(2010)『いつの日かダブトランペッターと呼ばれるようになった』(2014)がある。
https://echoinfo.exblog.jp

主催:上村勝彦
企画:上村勝彦
協力:LIQUIDROOM

2015.01.29
OPEN / START 18:00 / 19:00
ADV / DOOR ¥3,500(税込・ドリンクチャージ別)

LINE UP
EGO-WRAPPIN'、bonobos、ORESKABAND、エマーソン北村、松竹谷 清、こだま和文
*エマーソン北村の一人ライヴ「エマソロ」は開場時に行われます。

TICKET
チケットぴあ [250-653] ローソンチケット [74120] e+ LIQUIDROOM 12/13 ON SALE

INFO
LIQUIDROOM 03(5464)0800


Extreme Precautions - ele-king

 昨今のそれっぽい黒テクノをなぎ払う……なんじゃこりゃあ的レコード。先日、とある先輩から「YOUたちもこーゆーのやればいいじゃない」とコレをご教授いただいた。

 フレンチ暗黒テクノ・レーベル、〈イン・パラディズム(in paradisum)〉から看板アーティスト、モンドコップ(Mondkopf)の別名義、エクストリーム・プリコーションズ(Extreme Precautions)のファーストLPがお披露目。針を落とした瞬間、聴者に襲いかかる超シンフォニックな展開と鬼ショボ・打ち込みブラストビートに爆笑必至だ。
 〈ブラッケスト・エヴァー・ブラック〉の台頭以降、メタルからの影響を公言するテクノ・アーティストは急増、ブルズム(Burzum)Tシャツを着用したヒップなテクノDJが昨今のクラブのトレンド! ……という状況は生粋の中2病ヘドバンガーを自認する僕としちゃファックなんですよ。そもそもヨーロッパでは90年代レイヴ・カルチャーに傾倒していたメタル・ヘッズは多く、本家のメタルバンド名義に隠れてこっそりとトランスやゴアのDJとして多くのメタル・ヘッズが活動していたとかいないとか……とくにその傾向が強かったのがフランスとノルウェイであり……そんなものに改めてフォーカスを当てることなんて今後あり得ないだろうと思っていた矢先にこのレコードである。ロウ・ジャックといい、彼といい、いまフレンチ・イナタイ電子音楽がキテる。あれ、そもそも最近再逮捕/釈放されたヴァルグもフランスにヤサを構えている影響もあるのかも。

 カシオトーン的簡易アルペジエーター感全開のメタル旋律によるリード・シンセ、ショボ過ぎる質素なモジュレーション、打ち込みフル・ブラストビート、全編似たり寄ったりのショート・チューンで最後までぶっちぎる潔さ。ブルズムの『フィロソフェム(Filosofem)』以降確立された打ち込みワンマン・ブラックメタルという精神不衛生きわまりないジャンルを完全に形骸化、ブラックメタルへのテクノ的パロディとも捉えられる本作品はモンドコップが同レーベルより昨年リリースしたヘヴィ・ドローン色全開のアルバム『ハーデス(Hadès)』(こっちもかなりメタルなんだけれども。そもそも冥界の王、ハーデスって……)完成後にテクノEPを制作しようとしたところ、ブルータル・トゥルースやナパーム・デス、アサックやピッグ・デストロイヤーを聴き過ぎていたらこんなんを作ってしまったそうな。

 ブラックメタルにおける劣化音質の美意識を電子音楽側で完全に体現しているという点はとても現代的だ。だってこれ、雑じゃなきゃ絶対かっこよくならないし。これこそテクノ・メガネ男子ヘドバン・ミュージック。

Neil Young - ele-king

 年末チャートと選挙結果は似ている。同じものを求める大勢の人たちと細かい趣味に分かれた小数の人たち。ファレル・ウイリアムスやイギー・アゼリアのような大多数を作り出すのも資本主義なら細かい趣味に分かれた人たちを作り出すのも資本主義。毎年、野党の分散状況を眺めているような気がしていたので、紙版『ele-king』でも個人チャートはやめました。自分は他人とはちがう光線を出したい人たちが個人発信でやればいいかなと。ちなみに「他人とはちがう光線を出す」ことはいいことだと思います。読んでもらう相手を間違わなければ。

 年末チャートにも選挙にも関心がない人をアナキストとは呼ばないと思うし(アナキストというのは選挙制度の無効を訴えるために、選挙になると必死になって「NO VOTE」を呼びかける運動家であって、選挙になると無関心をアピールする人ではないと思うし)、じつのところ資本主義と無縁のポップ・ミュージックもあまりおもしろいものではないと思う。「15本限定のカセット・テープ」がおもしろいような気がするのは、それが資本主義の世界だからで、「流されていない」とか、少しでも抵抗しているようなことを言いたいがための稚拙なアイディアを共有できるような気がするからで、逆に言えば資本主義だからこそ成立する会話のようなものでしかないと思う。そういうものを何本も聴いたり、なんだかよくわからないネット音源を聴いたり。それでいいんじゃないかな。「♪レリゴー」を歌っている子どもの横で「♪とりむしけもの~」と歌っている子がいれば、「この子は将来大物だ」とか思って笑っている感じ。本気でそう思っているわけがない(関係ないけど、「アナ雪」の作曲陣は3人で、そのひとりはチリー・ゴンザレスの弟なのね)。

 ニール・ヤングの新作は「♪レリゴー」でも「♪とりむしけもの~」でもなかった。「売れてる」をアピールしている音楽にも「売れてない」をアピールしている音楽にも聴こえなかったということである(本人は歌詞でフラッキングに反対=つまり資本主義には眉を顰めているけれど)。弾き語りヴァージョンをCD1、同じ曲をオーケストラやビッグ・バンドによってアレンジしたものがCD2で、通常盤は後者のみ。それはバカラック・マナーの優雅なオーケストレイションで幕を開け、チルウェイヴでもヴェイパーウェイヴでもないのに現代的な叙情性を兼ね備え、過去に連れ去ろうとするようなものではなかった。いや、バート・バカラックが夢見心地な曲を量産した時代ではなく、僕はほんの少しだけど、1982年に引き戻された。ペイル・ファウンテインズがバカラックをリヴァイヴァルさせた“サンキュー”を思い出したからである。

 「ネオアコ・ディフィニティヴ」でも書いた通り、演奏はけっして上手くないけれど、デビュー当初のペイル・ファウンテインズやアズテク・キャメラは透き通るような瑞々しさにあふれ、グラムやパンクで汚れきった世界観を清浄化するような作用があった。一瞬でもそのような時代があるとないとでは、その後の世界の受け止め方も変わるものである。80年代も中期になると、メジャーではヒップホップ、マイナーではポスト・インダストリアルがあっという間にダーティな空気を運んでくることになり、ペイル・ファウンテインズもファースト・アルバム『パシフィック・ストリート』がリリースされる頃にはもっと苦渋に満ちた感触を強めてしまう。時代からズレまくっていたとしても“サンキュー”のようなバカラック調で占められたアルバムが聴きたかったというのが本音ではあるけれど、彼ら自身が“サンキュー”の路線を信じられなかったのだから仕方がない。

 その時の気持ちの半分でも満たしてくれたのが、このタイミングで、しかも、ニール・ヤングになるとは思わなかった。“サンキュー”ほど朗らかではないし、もっと地味で落ち着いているし、ファレル・ウイリアムスだって「ハッピー」でミラクルズを思い出させてくれたじゃないかとは思うんだけど、どうしてもあれはスモーキー・ロビンスンのパクリに聴こえてしまう。ニール・ヤングにはなぜかそれがない。


neil young / tumbleweed

pAradice (LifeForce/LibraryRecords) - ele-king

2014お気に入りになった良音スポット5つと2015には行きたい噂の良音スポット

DJ schedule 2014-2015

12/26 「LOVE IS THE MASSAGE大忘年会」@天狗食堂 三軒茶屋
27 「LIBRARY忘年会 CURRY DISCO」@カレー屋ミラン 東高円寺
30 「UP!」@heavy sick zero 中野
31 「year2014 countdown party feat.circle」@32016 渋谷

1/3 「New Year 3rd」@AOYAMA HACHI 青山
10 「TRANSIT」@cobra 江古田
11 「スナックニューパラダイス」@MORE 下北沢
12 「ミストサウナ」@天狗食堂
17 「tamariuzu」@SHeLTeR 八王子 w/小林 径、MOROI

mix定期的に更新中
https://m.soundcloud.com/dj-paradice

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96