「Nothing」と一致するもの

[Urban] feat. SIMI LAB - ele-king

 噂のシミラボがついにDOMMUNEに生出演します!! 3月15日(火曜日)です。
 ちなみに7時からは、急遽、XL レコーディングスの社長、リチャード・ラッセルさんとジェイミーXX(ザ・XX)の公開インタヴューをやることになりました! ギル・スコット・ヘロンの『アイアム・ヒア』、そしてそのリミックス盤『ウィ・アー・ニュー・ヒア』について訊きます。どうぞお見逃しのないよう!
 また、当日はシミラボのライヴのほか、女性ラップ・グループのデレラのライヴも決定しました。トークショーではムードマンも参加、都合が合えば、DJ CONOMARKもかけつけてくれることになりました!

 そこで今回は格好いいPVを2本、紹介しましょう。
 まずは、2009年にYouTubeにPVがアップされ、SIMI LABの名を世間に知らしめることになったヒット曲"WALKMAN"、もう1本は、Earth No Mad From SIMI LAB名義による3月25日に発売予定のアルバム『Mud Day』から"Don't Touch Me feat. QN"。
 また、QNによるアルバムのインスト集『Mud Day Instrumentals』も同時発売しますよ!(アナログ盤も発売予定とのことです!)
 ......それにしてもこのENMの写真、良いですね。古い日本家屋の四畳半とヒップホップとのハイブリッディな感覚がたまらないです......。
 とりあえず、3月15日のDOMMUNE、乞うご期待!ですよ

WALK MAN feat. SIMI LAB

Don't Touch Me feat. QN

Various Artists - ele-king

 以前、三田格がロスカのことを「ありゃ、ケヴィン・サンダーソンだ」と言っていたけれど、UKファンキーとはなんぞやといろいろと考えていくと、とどのつまりハイブリッドなハウス・ミュージックであるという当たり前の結論に達した。だから「UKハウス・ミュージックの現在」という風に思えば、人に伝えやすい。それはアフロとソカ、あるいはダンスホールといった、この10年のトレンドがブレンドされたハウスであると。当初はパリのDJグレゴリーがルーツだと言われていたが、いまとなってはその源流はマスターズ・アット・ワークにまで遡っているのもなるほどなーという感じである。
 あるいはまた、昔からデリック・メイがセットの中盤あたりでほぼ毎回かけているトライバル・ハウスの路線ともかなり重なる。......が、UKファンキーがハウス・ミュージックだとしても、これはディスコから派生したものではない。これは、UKガラージ/グライムから派生したハウス・ミュージックなのだ。
 で、風の噂では、今年はロスカが来日するかもしれないと聞いて、それはちょっと無理してでも行きたいなーと思っていたところ、昨年末にリリースされたこのUKファンキーのコンピレーションはずっと売れ続けていると下北沢ZEROの飯島直樹さんも言ってるし、いまからでも遅くはないので紹介しようと思った次第である。

 UKガラージ/グライムにおけるアフロ・ディアスポラのダンスへの情熱がこの音楽を発展させた。コード9は、2006年~2007年あたりからリズムの変化に気がついていたというが、USヒップホップとジャングルのあいだでスパークしていたUKガラージ/グライムがハウスのテンポに接近したとき、アフロビートやソカのリズムが表出したというわけだ。実際、UKファンキーとは、(ひと昔まえのタームで言えば)UKブラックの現在のことでもある。
 イースト・ロンドンの貧民街のグライム一派、ナスティ・クルーがその初期における大きな影響だと言われている。そのクルーを代表する、ゴッドファーザー・オブ・ファンキーと呼ばれるDJマーカス・ナスティこそ、ガラの悪いガラージを上品なハウス・ミュージックとブレンドした張本人である。
 ファンキーのオリジネイター連中はすべてガラージ/グライムのシーンから来ている。ドネイオーとロスカはガラージのMCで、ジーニアスはワイリーといっしょにやっていたDJだ。ゼロ年代にわりとグライムを聴いていた人は、あのハードコアな感覚が、よりアフロ色を強めながらハウスと接続したと思えばよい。むせかえるように豪快なアフロビート、ものすごく大雑把なソカのビート、すなわちディアスポリックなアフロカリビアン・ビートこそがこの音楽の魅力であり、ハウス世代のダンサーや若いダブステッパー、デトロイト・テクノのリスナー、もしくは大阪のレゲエ・ダンサーがある日突然ファンキーで踊っていたとしてもなんら不思議ではない。実に寛容なダンス・ミュージックだ。

  本作『リディム・ボックス』はUKファンキーを知りたいという人には最適なコンピレーションである。エクスクルーシヴなトラックはないが、有名どころはほとんど押さえてある。

Chart by UNION 2011.02.28 - ele-king

Shop Chart


1

V.A.(THEO PARRISH, KAI ALCE, LOOSEFINGERS)

V.A.(THEO PARRISH, KAI ALCE, LOOSEFINGERS) Assorted Elements E.P. NDATL MUZIK / US / »COMMENT GET MUSIC
DEMFのアフターパーティ会場のみで200枚だけ限定販売された、今や幻の7インチ『NDATL Special Edition 45』から約半年、一部トラックリストを差し替え再びあのメンツが集ったオールドスクールなシカゴ・デトロイトなコンピレーションEP!!!

2

RAHAAN

RAHAAN Rahaan Edits Vol.1 & Bonus Mix SPACEMACHINE / UK / »COMMENT GET MUSIC
Sadar Baharと並びシカゴのアンダーグラウンドのヴァイヴを世界へ届けるディスコDJ! 伝説のDJ Ron Hardyの精神やスタイルを引き継ぐDJ Rahaan初のアルバムがUKの新レーベルSpace Machine Recordingsより遂にリリース!

3

ARIL BRIKHA

ARIL BRIKHA Deeparture In Time - Revisited ART OF VENGEANCE / JPN / »COMMENT GET MUSIC
DERRICK MAY主宰のTRANSMATからリリースされたARIL BRIKHAの大名盤「DEEPARTURE IN TIME」が2枚組となって待望の再発!!初期衝動に満ちたエモーショナルなメロディーが躍動する、まさにARIL BRIKHAの原点を垣間見れる好内容。再発を待ち侘びていたファンにはたまらない究極のプレゼントと言える2枚組。

4

MORITZ VON OSWALD TRIO

MORITZ VON OSWALD TRIO Horizontal Structures HONEST JONS / UK / »COMMENT GET MUSIC
MORITZ VON OSWALD(BASIC CHANNEL)、MAX LODERBAUER (NSI/SUN ELECTRIC) AND SASU RIPATTI (VLADISLAV DELAY/LUOMO)によるスーパーグループ、MORITZ VON OSWALD TRIOのセカンド・アルバムが遂にリリース!! ブルージーなギターや緊張感溢れるメタルパーカッション、繊細なエレクトロニクスが自由度の高い演奏を繰り広げるダイナミズムに満ちた傑作の誕生です!

5

OMAR S

OMAR S Here's Your Trance, Now Dance FXHE RECORDS / US / »COMMENT GET MUSIC
長期欠番となっていた「AOS-009」としてアナウンスされた入魂のワンサイデッド!心地よいポイントを的確に刻むボトムをベースに、プリミティヴかつ浮遊感を備えたシンセリフとLate 80'sを彷彿とさせるアナログなキーの音色がバランスよく重ね合わせられたオールドスクール・ハウス。シンプルかつドープ、この手のトラックにおいてのポテンシャルの高さはやはり圧倒的!

6

RAHAAN

RAHAAN On & On STILOVE4MUSIC / US / »COMMENT GET MUSIC
シカゴハウスのオリジネーターの一人Jesse Saundersもかつてリミックスを手がけ、古くからシカゴアンダーグラウンドでプレイされ続けてきた究極のレア・ブートレグ「On & On」がDJ Rahaanによってエディット化!!Playback「Space Invaders」のベースライン、Lipps Inc「Funky Town」のSE、さらにDonna Summer「Bad Girls」の ヴォイスブレイクを絶妙にマッシュアップというあまりにもインパクトの強いトラックで、鳴らせばフロアはシカゴのたちまちマッドなヴァイヴス!!!

7

RICK WILHITE

RICK WILHITE Analog Aquarium MUSIC 4 YOUR LEGS / JPN / »COMMENT GET MUSIC
Theo Parrish、Moodymannと並ぶデトロイト・ハウス最強のユニット3 Chairs「第3の男」Rick Wilhiteがキャリア15年を経て放つ待望の1stアルバム。ディスコ、ジャズやアフロなど様々なサウンド・マテリアルを抽出し呪術的なビートに重ね合わせることによって溢れ出る濃厚な黒さ、デトロイトハウス特有の音の歪みや荒さとライヴミックスの中で偶発的に鳴らされるイコライジングが独特でプリミティヴな高揚感を生み出す傑作!

8

EDDIE C

EDDIE C Do It Yourself ENDLESS FLIGHT / JPN / »COMMENT GET MUSIC
ビートダウン~バレアリック系の良質な作品を量産、ポストMARK E, DJ COLE MEDINAとなる存在に間違いないカナダからの刺客EDDIE Cがまもなくリリースするアルバムから、待望のシングルカット!ヴォイスサンプルと巧みなエフェクトで、ジワジワとピークまで誘導するかのようなヴァイヴが最高なトラック。

9

JAMES BLAKE

JAMES BLAKE James Blake (LP) ATLAS/A&M / UK / »COMMENT GET MUSIC
誰もがアルバムを待ち望んでいた2010年代エレクトロニック・シーンの主役・JAMES BLAKE、待望のデビュー・アルバムがここに登場! 先行10"カットされた"Limit to Your Love"以外は全て新曲、ダブステップから派生したサイケデリック・ミュージックの極点が遂にその全貌を現す!

10

MARCO CAROLA

MARCO CAROLA Play It Loud! MINUS / JPN / »COMMENT GET MUSIC
RICHIE HAWTIN率いるMINUSからイタリアンTOP DJ/アーティスト・MARCO CAROLAのアルバムが登場!実に9年ぶりとなる本作「PLAY IT LOUD!」はDJ出身というキャリアに強い拘りを持つ彼らしく、全トラックがフロアユースなミニマルで構成されている。思わず身体が揺れてしまう現場感覚に溢れたトラックのオンパレード!!

Ginji - ele-king

面白盤10選


1
Argo - Zeme L (USSR - Melody 1985)

2
Arthur Brown & Craig Leon - The Complete Tapes Of Atoya (Netherlands -
Plexus Holland 1984)

3
Bramlaan - Aloft In A Baloon (Netherlands - 7 Horses 1981)

4
Delay Tactics - Any Questions? (US - Multiphase 1984)

5
Eternal Wind - Wasalu (US - Flying Fish 1988)

6
Goldbroiler & Ehrlichmann - Kino (Germany - TIS 1986)

7
Jiri Stivin - Status Quo Vadis - The Heralding (Czechoslovakia -
Supraphon 1990)

8
Robert Bearns & Ron Dexter - The Heralding (US - Awakening Productions 1984)

9
Human Chain - Cashin' In! (UK - Editions EG 1988)

10
Slawomir Kulpowicz - Sndhana (Poland - Polskie Nagrania Muza 1989)

DJ Monolith - ele-king

最近のベスト。


1
K' Alexi Shelby - I Can Go/Vol. 1 - detelefunk

2
V.A. - Philpot Records 50 - Philpot

3
Robag Wruhme - Proviant - Circus Company

4
DJ Duke - Techdisco EP Vol.3 - Power Music

5
Terry Hunter - Madness EP - House Music Records

6
Mike Dearborn - Back To the Future - House Music Records

7
Leron Carson - Red Lightblub Theory - Sound Signature

8
Grimpse - Runner Remix EP - Crosstownrebels

9
Delphic - Doubt - White

10
Dahlback & Krome - The Real Jazz - DK Records

Motion Sickness Of Time Travel - ele-king

 西洋文明と出会ったことで「不機嫌」であることがデフォルトになったとされる日本では、それが当たり前ではないかという感覚を持ちやすいような気がするけれど、そのような「気分」を哲学の対象としたのは西欧ではハイデッガーが最初だったそうで、どうしても自我同一性にこだわる西欧にとっては、気分によって左右される「振り幅」は意外と厄介なテーマなのかもしれない。最近だとダニー・ボイル監督『127時間』でジェームズ・フランコ演じるアーロン・ラルストンがウォークマンでフィッシュを聴きながらブルージョン・キャニオンを踏破する映画のシーンや同じくデヴィッド・O・ラッセル監督『ザ・ファイター』でマーク・ウォールバーク演じるミッキーがボクシングの試合で連戦連勝を果たす際にエアロスミス"バック・イン・ザ・サドル"が流れる場面などは、そのようなサウンドトラックがなくても成り立つし、あっても別に邪魔ではないといった程度の存在感であり、大袈裟にいえばサブリミナルに気分が微調整されているということになるのだろうけれど、キム・ジウン監督『悪魔を見た』でチェ・ミンシク演じるシリアル・キラーが女性の死体を解体し終わった後に訥々とギターを弾く部分はストーリー的には何を表わしているでもなく、しかし、ある種の予定調和を裏切り、ものの見事に映画を観る「気分」を変えてしまうシーンではあった。ナチスがクラシックに聞き惚れるシーンなどはもう見飽きてしまったし、似たようなことは「いまどきのヤクザは軍歌など聴きませんよ」という『凶気の桜』にも反語的に思わざるを得なかったことで、音楽というのはどうしてもその様式性に吸収されやすく、独立して存在することはほとんど不可能に近いと思っていたことが、やや揺さぶられた瞬間だったともいえる(作品自体は、等しく貧困階級を描いてもリー・ダニエルズ監督『プレシャス』にはこれでもかとアメリカの社会(=近代性)が関与してくるのに対して、あの恐るべきヤン・イクチュン監督『息もできない』では韓国社会の不在と、その代わりに家族(=伝統社会)がすべての吸収板になっているという息苦しさが張り付いていたことと同じことが結末に漂う「気分」を決定的に左右していて、シリアル・キラーものだというのにいまだに韓国映画に没入できない自分を発見するものではありましたけれど。ついでにいうと、深川栄洋監督『白夜行』にも貧困がクローズ・アップされるシーンがあって、社会と家族のどっちに頼っていいのかわからないという日本独自の中途半端なあり方にはもっとも絶望的な「気分」にさせられたり)。

 ディジタリスからふたりの女性による「気分」の安定しない2枚。

 セラーやトローパ・マカナといった夫婦ユニットを追って(?)、同じく夫のグラント・エヴァンスとクワイエット・イーヴニングスとして『イージー・リスニング・サークルズ』などのカセットをリリースしていたレイチェル・エヴァンスが初のソロ作をリリース。モーンフルなイントロダクションから、ある種の悲しげなムードを否定せずにユーフォリックな佇まいを確保していくプロセスが特徴といえるアンビエンス・ドローン。一貫してフラジャイルな感性が追求され、そのせいか、「気分」によってこのアルバムは聴こえ方が変わりやすく、何度聴いても印象が一定しない。メランコリーと甘美は相反する要素ではないけれど、ネガティヴな気持ちの時は美しさが際立ち、バリバリの時は気持ちよさに埋没するばかり(コクトー・ツインズをドローン状に溶解させたら、こうなるか?)。透き通るようなイメージを畳み掛ける「オート・サジェスチョン」から後半に入って「テレパシー」でゆるいビートを刻み始めるまでの流れはとてもいい。ドローンにビートを持ち込んだ例のなかでは(ドローンという音楽性自体に重きを置いているという意味では)技ありかも。

 6年前にタイプから『センチメンタリスト』でデビューしたメリッサ・アガテ(エイゲイト?)によるセカンド・アルバムはさらに繊細で、レイチェル・エヴァンスのように高音部を際立たせるような役割としての下部構造もなく、どこか世界の果てへ消え入るような儚いアンビエント・ドローンやエレクトロニカ/ポスト・ロック的サウンドが展開されている。ファウンテン・サイドではエレクトロニクス、マウンテン・サイドではアコースティック楽器がメインをなし、本人がそうかどうかはともかく、どの曲も「ようやく生きている」人の鼓動を伝えてくれるようで、誰にも会いたくない時にはコレだなーと思ったり。どうして生まれてきちゃったのかなーとか、そういう感じ。

 そういえば『127時間』はサヴァイヴァルではなく、その結果に対して明確な開放感を与えるでもなく(水のなか=開放感と取る人もいたけれど)、ひきこもりの映画として観ると奇妙な倒錯感を覚える作品ではあった。LSDとCIAの関係を反戦映画として見事に捏造したグラント・ヘスロヴ監督『ヤギと男と男と壁と』の原作(ジョン・ロンスン著『実録・アメリカ超能力部隊』文春文庫)を読むとアグレイブ刑務所にもアマゾンの配達はあったそうだから、電子機器や映像アーカイヴといったものに囲まれたアーロン・ラルストンのライフ・スタイルは条件が整えば遭難には値しなくなる可能性だってなくはない。あるいはそのように感じさせる側面がダニー・ボイルの演出にはあったと思う。それにしてもボイルという人は『トレインスポッティング』から一貫してドラッグに対する感性がゼロに近い(せっかくのシチュエイションなんだし、ミニマリズムであそこまでやったのは大したことなんだから、幻覚描写にもそれなりのセンスが求められてしかるべき)。つい頭のなかで割り算をしてしまうし、タイトルも別なものにしたほうがよかった。

 今週末はどこのクラブに行けば良いのか迷っている人たち、「新しいダンス・ミュージックで踊りたい」と思っている人たちにはこのパーティを推薦しよう。ロンドンの〈ナイト・スラッグス〉(UKガラージ経由のさらなるダンス・ミュージックへの冒険)レーベルから作品を出しているキングダムが来日する!



2011.3.4 FRI
MISHKA TOKYO 1st ANNIVERSARY PARTY with KINGDOM (Night Slugs)
at module

OPEN: 23:00
ENTRANCE FEE: 2500yen-1d(with flyer) / 3000yen-1d(door)
先着100名様にMISHKA特製ステッカーをプレゼント!!

[B2F]
Kingdom (Fools Gold / Night Slugs / from New York)
DJ KYOKO (Roc Trax)
POL x NARG (Laguna Bass / Numbers)
Eccy x BROKEN HAZE (Slye / Raid System)
FYS aka BINGO (Height)

[MC]
Mr. Tikini (Spexsavers)

[B1F]
Dj Ken-ske
Yanatake
Dj Toyo
Shinya
JE$$ROTULL
NOTE

Hosted by Greg Rivera & Mikhail Bortnik (Mishka NYC)

MISHKA TOKYOの1周年記念パーティ開催! Mikhail Bortnik とGregory Rivera、2人のデザイナーが2003年にブルックリンでスタートさせ現在、人気上昇中のストリート系ファッションブランドである"MISHKA"。ニューヨークでの人気も非常に高く、日本でもその人気と価値を確かなものとしているMISHKAの東京店がこの春で1周年を迎えます。ダブステップ以降のベースミュージックを軸に貪欲に音楽性を拡張し続けるレーベル〈Night Slugs〉 〈Fools Gold〉からのリリースが高い評価を得ているKINGDOMが、1周年を祝うべくMISHKAと同郷ブルックリンより来日! DJ KYOKO、ECCY、POL STYLEなどアンダーグラウンドな音楽を積極的にサポートするMISHKAらしい布陣でお届けします。

■KINGDOM (Night Slugs / Fools Gold)
ニューヨークはブルックリンをベースに活躍するプロデューサー/DJ。2006年のファーストミックステープのリリースで話題を集め、Diploや BBCのAnnie MacなどのDJに取り上げられる。L-Vis&Bok Bokの[NIGHT SLUGS]、A-Trakの[FOOLS GOLD]からリリースされたデビューEP「Mind Reader」は、最近のアメリカ発の作品の中でも最も注目すべき作品と言える。また、彼のトレードマークでもある、R&Bボーカルをサンプリングしたプロダクション・スタイルは、"ブルックリンとUKガラージ・サウンドの融合" とも評され、そのヘビーなベース、熟練したダンスサウンドは、"The Fader" や "XLR8R" などの雑誌、ブログ界のトレンドセッター "Pitchfork" や"Discobelle" などからも高い評価を得ている。
https://kkingdomm.com

Helixir - ele-king

 ダブステップが、若い世代におけるテクノ・ダンス・ミュージックであることを示す1枚。これは、ザ・バグとは別人のケヴィン・マーティン(混同しないように!)によるデビュー・アルバムで、リリースは昨年の暮れだが、この3月に来日するので紹介する。

 レーベルの〈セヴン〉はパリのダブステップ・レーベルで、昨年リリースしたFによる『エナジー・ディストーション』がフランスで最初のダブステップ・アルバムとして話題になった。今年に入ってからは日本人プロデューサーのENAのシングルも切っている。ヘリクシアは、Fと並ぶ〈セヴン〉レーベルの看板プロデューサーで、すでに4枚のシングルをリリースしている。田中哲司くんがSound Patrolで紹介しているように、「聴けば聴くほど深みにハマッていく。細切れのスペーシーなシンセが揺れている。リズム自体はさほど存在感はない。キックが軽く鳴り響く程度。規則的にリヴァーブをかけたパーカッションがこだまする」、「スキューバやラマダンマン、Fなどのミニマル・ダブステップとは感覚が異なる」、「シャックルトンが彼の音楽性を賞賛しているように、シンプルなのだが奥深い」という言葉がそのまま当てはまるアルバムである。本当に「聴けば聴くほど深みにハマッていく」タイプの音楽だ。
 シャックルトンを薄味にした感じ......というとネガティヴに思う人がいるかもしれないけれど、そうじゃない。前向きに言うところの薄味の良さが、AFXとカジモトとリッチー・ホウティンに触発されたこのフレンチ・ダブステッパーの音楽にはある。アンビエント・テイストと言ってもいい。押しつけがましいベースやドラミングがないことを、その長所としている音楽である。そういう意味では僕は......たとえばスウェーデンのレーベル〈スヴェック〉のテクノを思い出した。そう、ヘリクシアにしてもFにしても、ある種そよ風のようなさわやかな感覚があるのだ。
 そしてヘリクシアに関しては、もともとジャズ・バンドのメンバーだっただけあって(彼はドラム、ギター、ベースを演奏する)、魅惑的なメロディとハーモニーを作ることができる。そして......シャックルトンめいたパーカッションも、ダブの応用もこってりすることなく、とてもスムースで、ときにメロウで、あるいはスモーキーで、とにかく聴いていて心地よいのだ。うまくいけば3月23日にDOMMUNEに出演してくれそうなので、ぜひ注目していただきたい。

 話は変わるけど、今年はUKファンキーがよーやく日本にも本格的に上陸しそうで、それも楽しみである。また、〈ナイト・スラッグス〉のような若くて勢いのあるレーベルが素晴らしいダンス・トラックを発表してくれそうだし、ワクワクするね、メタル君!

I'll Be Your Mirror - ele-king

 ここで彼のイ二シャルを書いたらわかる人にはわかってしまうので、Xとしておこう。Xとは、昼の1時に渋谷のモヤイ像前で待ち合わせた。僕は待ち合わせの時間と締め切りはかなり守るほうなので、1時ちょい前に着いた。僕の隣ではお父さんが自分の子供にモヤイ像の説明をしている。「これね、イースター島というところにあるんだけど、これがいったい何の目的のために作られたのかまだわからいんだよ。ナスカの地上絵を知っている?」
 お父さんは宇宙人について喋りたくてうずうずしている。こっちはそれを全否定したくてうずうずしてくる......と、そのときXはやって来た。酒臭い息をはきかけながら、「いやー、すいません」と言うので「いや、ぜんぜん大丈夫だよ」と言うと、「ちょっと友だち紹介していいですか」と言うので、あ、いっしょに行くのかなと思ったら、Xが前日の夜からずっといっしょに呑んでいた友だちだった。「いやね、俺は5時ぐらいに抜け出したんですよ。いちど家に帰って着替えようと思ったから。そうしたらもう、電話がガンガンにかかってきて」
 暖かい日差しが照りつける日曜日の渋谷を歩きながら、Xは説明した。ということは、ふたりの友だちはいままで呑んでいたのか......。「おたがい内臓を大切にしよう」と僕は言った。
 「Xの内臓はすごいな。俺はもうそんなに呑めない。40過ぎたあたりから量が呑めなくなったんだ」と47歳の僕は43歳のXに言った。日曜日の渋谷駅にはいろいろな人がいる。酒臭い40代がいても不思議ではないだろう。しかしいまから「I'll Be Your Mirror」に行く酒臭い40代はおそらくXだけだろう。

 新木場に着くとXは駅構内のコンビニを見つけて、「煙草を買ってきますよ。ついでに酒を買って飲みながら行きませんか」と言った。そしてXは350のビールを2缶持って出てきて、1缶を僕に渡すと、今度は煙草のケースを空け1本を取り出して、近くにいた人に火を借りて火を付けて、煙を思い切り吸い込んで吐いた。僕は40前に煙草を止めて以来すっかり嫌煙家になってしまったが、さすがに「俺の前で吸うな」とは言えない。「Xはロックンローラーだなー」となかば皮肉を込めて言うと、Xは陽気に「イエー!」と奇声をあげるのだった。

 「I'll Be Your Mirror」はいまやオルタナ・ロックの、純粋な音楽主義的イヴェントとして世界的に有名な「All Tomorrow's Parties」の日本での最初の試みである。出演者は、ゴッドスピード・ユー・ブラック・エンペラー!、ボアダムス、灰野敬二、ボリス、メルト・バナナ、エンヴィ、ファック・ボタンズなどなど。チケットは即ソールドアウトになったという。GYBE!がそこまで人気があるとは思えないので、これはイヴェントそのものへの期待の表れだと解釈すべきだろう。それはXの真っ黒な肺と違って、健康的な態度だ。
 そして我々は、最初のボアダムスがはじまるまで、少なくともビールを二杯、ウォッカトニックを二杯飲んだ。Xは「100円多く払うから、ウォッカを多く入れてくれ」と、カウンターのお兄さんにしつこく懇願した。「もっとウォッカ入れようよ、パンクになろうぜ!」とわけのわからないことを罪のない従業員に話しかける40代がいま僕の目の前にいることは、充分にオルタナティヴだ。
 会場内はまだみんな入ったばかりということもあってか、やや緊張している様子だった。友だちの家に初めて遊びに来たばかりのように、気持ちがまだうまくイヴェントに入れ込めていない。もちろんXは別だが......。つまりボアダムスは、いつもならもっと踊り狂ってるオーディエンスがそこにいるものだが、どちらか言えば多くの人が「観ている」感じだった。続くボリスもそんな様子だったが......僕はボリスを初めて聴けたのが嬉しかった。驚いたのは灰野敬二のライヴだった。別のステージでやっていた灰野敬二のライヴは、入場規制がかかるほどの満員だった。入れないオーディエンスはあの轟音を会場の外で聴いていた。インディ・ロックとなかなか接点を持つ機会がなかったということかもしれないけれど、その光景は日本のアンダーグラウンド・シーンのゴッドファーザーへの関心の高さを示していたし、灰野さんのライヴ終了後のガッツポーズも実に格好良かったなぁ。
 というか、灰野敬二に続いたエンヴィも、そしてまたメルト・バナナのライヴも大盛況だった。メジャー・レーベルと契約しているバンドがひとつもいないなかで、チケットが売り切れて、そして千人ぐらいのインディ・ロック・キッズが灰野敬二のノイズを浴びて声を挙げている姿は、いつの間にか行方不明になってしまったXと比べるまでもなく未来を感じさせるものだ。僕の知り合いには、結局日本のバンドばかりを聴いてしまったという人もいて、ああ、その気持ちわかるなーと僕も思った。夜暗くなって、メルト・バナナの演奏がはじまる頃には、GYBE!が最後に控えていることなど忘れてしまっていた......。

 会場内では簡単なパンフレットが配られていた。ページをめくると、最初に「ルール」が記されている。「ATPはロクデナシゼロの方針で運営しています。ロクデナシにならないように注意してください。マジにロクデナシになるなってことです」とある。ロクデナシ(英語でアスホール)かぁ......ひとり強烈なのがいたなぁ......帰りの新木場の駅のホームでそれを読みながら、最初からルールを破ってしまったかもなぁと思ったのである。結局Xはファック・ボタンズのライヴ中に消えていって......そしてひとり泥酔のぬかるみのなかを彷徨っていたという話だ。ごめんX、いくら電話しても出ないから帰るよ、日本には本当に素晴らしい音楽がたくさんあるよな。お互い内臓を大切にしよう。

私はあなたの鏡になろう
あなたがちゃんと家に帰れるように灯りになろう
"I'll Be Your Mirror"

PJ Harvey - ele-king

これは「好きになるべきレコード」か?文:野田 努


PJ Harvey
Let England Shake

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 家のレコード棚には2種類のレコード(CD)がある。ひとつは「好きなレコード」。そしてもうひとつは、「好きになるべきレコード」だ、そう、レスター・バングスやカート・コバーンが薦めるような、たとえばサン・ラ、ファウスト、キャプテン・ビーフハートのような連中のレコードである。PJハーヴェイのレコードは、その2種類に重なっている――昔、『ガーディアン』の記者は彼女のことをこのように表現していた。PJハーヴェイがUKでいまだ特別なリスペクトと愛情を集めているのは、彼女が2000年に発表した『ストーリーズ・フロム・ザ・シティ、ストーリーズ・フロム・ザ・シー』への評価からもうかがい知ることができる。UKのどのメディアからもゼロ年代を代表するアルバムに選ばれたこの作品の評価は、「彼女の作品のなかでもっとも前向き」という点に集約される。端的に言えば、PJハーヴェイが高揚すればみんなも嬉しいのだ。そして『レット・イングランド・シェイク』は、『ストーリーズ・フロム・ザ・シティ、ストーリーズ・フロム・ザ・シー』以来のずばぬけた評価を得ている「好きになるべきレコード」というわけだ。

 『レット・イングランド・シェイク』は、音楽的にも魅力的な作品だ。これは寒々しいブルース・ロックやダーティなノイズ・ロックではない。英国風のフォーク・サウンドを取り入れつつ、エディ・コクランとザ・バッド・シーズに会釈しながら20世紀初頭のミュージック・ホールに戻ってくるような......ニック・ケイヴ的なアコースティックなサウンドで、実際アルバムではミック・ヘーヴェイ(ザ・バースデイ・パーティ~ザ・クライム&ザ・シティ・ソリュージョン~ザ・バッド・シーズなど)がピアノやオルガンを担当して、ベースを弾いて、ハーモニカを吹いている。そして、彼女らしいコード・ストロークがあるいっぽうで、鼓笛隊のリズムがあり、ラッパが鳴っている。苦痛に満ちた声の代わりに誰もがアプローチしやすい親しみのあるメロディがあり、美しいハーモニーがある。アルバムの主題を知らなくても充分に繰り返し聴かれるであろう、つまり「好きなレコード」になりうる作品である。
 が、やはり興味深いのは今回の主題だ。『レット・イングランド・シェイク(英国を揺さぶれ)』は、主に第一次大戦のイギリスを題材にしている。そして、それまで内面ばかりを歌ってきた女性シンガーが、8枚目にして初めて外の世界を歌ったときの題材が第一次大戦というのは気になる話である(いま思えば前作『ホワイト・チョーク』はその題名通り、本作への予兆とも言える)。
 ちなみにUKにおける第一次大戦とは......ヴィクトリアニズムからモダニズムへの架け橋となったイングランドにおけるターニング・ポイント、イングランドの近代国家のはじまり......で、考えてみればフランツ・フェルディナンド暗殺が第一次大戦開戦のきっかけなっているので、僕は不勉強でまだよく知らないけれど、UKにおいてその意味は大きい。帝国主義という観点において。
 日本盤のライナーノーツによれば「政治をちゃんと理解していない以上、あまり話してはいけないと思う」という旨の本人の発言があるけれど、『ガーディアン』によれば彼女は、2年半かけて戦争の研究している。報告書を読み、ドキュメンタリーを見て、生存者と話したという。その努力を聞いただけでも僕は胸が打たれる。そして彼女は「歴史は繰り返すということを示したくなった」と打ち明けている。アルバムの最後から2番目の曲のみが、唯一、イラク戦争に関する曲である。

 もうひとつ僕が興味を抱くのは、彼女の母国への愛についてである。セックス・ピストルズの"ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン"の背後からは愛国心がうかがえるという議論がUKではあったように、好きだからこそ否定するというニュアンスはUKの音楽からはたまに滲み出る。王室や政府は嫌いだけれどUKは好き、というわけだ。マニックスはウェールズを実直に愛し、USのロックでは星条旗がたびたび登場するが、それはもちろん国粋主義ではなく民主主義への忠誠心である。ブラジル音楽ではそれがさらに顕著だ。カエターノ・ヴェローゾのような反抗者もみんなみんなブラジル万歳だから。が、しかし、さすがにクラウトロックはドイツ最高とは言えないぞ(それを考えると『クラウトロックサンプラー』『ジャップロックサンプラー』に対する新たな興味も湧いてくる)。
 とにかく彼女はイングランド思いである。が、PJハーヴェイがアルバムで描写しているイングランドは、残酷で、絶望的で、悲しみに満ちた、気が滅入るイングランドである。「私は生き、そして死ぬ、このイングランドで」と彼女は歌う。そしてこう続ける。「残るのは悲しみ/口に残るのは苦い味」

 さて、『レット・イングランド・シェイク』は「好きなレコード」であり、「好きになるべきレコード」だろうか。むしろサン・ラ、ファウスト、キャプテン・ビーフハートのほうが「好きなレコード」となっている今日において、彼女の真摯な態度は「好きになるべきレコード」というジャン分けを粉々にしているようじゃないか。

文:野田 努

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母性的な粘り強さをもった愛文:橋元優歩


PJ Harvey
Let England Shake

ユニバーサル インターナショナル

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 美しい声をひしゃげて歌う彼女のブルーズには、抜き差しならない彼女の心の現実がつねに痛々しく表現されていた。そんな彼女が41歳を迎えてリリースする8作目のフル・アルバム『レット・イングランド・シェイク』は、英国が歴史上経験してきた戦争を、それを強いられた側の視点から描く作品である。国内盤の帯にも引かれているように、「今回は、私の視点はとにかく外側へと向いている」......まさに新境地だ。
 ポップ・ミュージックが政治的な問題を扱うということは冒険だ。マスな影響力を持つ者として、発信する内容に責任を求められる。また、単純に間違いを犯す可能性も膨らむ。作品外での賛否の議論を生みかねないリスクを含んだ表現は、彼女のキャリアの中では珍しいはずである。勇気の必要なリリースだ。
 が、私にはこれはやはり彼女の物語であるように思える。いち日本人からすればちょっと驚くような愛国心が下燃えにのぞいているが、愛国とは国旗にではなく国土へ寄せる愛だ。全編を通して戦争の残酷さとパトリオティズムがリリカルに描かれている。そして「私たちの土地は戦車と行軍によって耕されてるのよ」("ザ・グロリアス・ランド")――多くの血が流れ染み込んでいった国土と歴史とをマクロに慨嘆し、「手を伸ばしているのよ/この国の汚泥のなかから/(中略)/怯むことのない、尽きることのない愛をあなたに/イングランドこそ/私がこだわるすべて」("イングランド")――まさに一大叙事詩だ。
 イングランドの土は、彼女の両足につながり、親しいものたちにつながり、彼女自身を育んだ文化につながっている。異臭を放ち、酔っぱらいが殴り合う裏路地、年中じめじめとした霧深い街、安っぽく光るテムズ川の流れ("ザ・ラスト・リヴィング・ローズ")。それらひとつひとつを愛おしむ気持ちが作品全体を通して感じられる。ポーリーがシェイクしたいのはそうしたものの総体としての英国なのだろう。そして、ひいては自らの再生のように思える。

 8曲目の"イン・ザ・ダーク・プレイシズ"まで、PJハーヴェイらしい無理に喉をきしませるようなヴォーカル・スタイルやブルージーなファズ・ギターはほとんど聴こえてこない。かわりに10代の少女のような透明な声に驚き、聴き入ってしまう。内面の吐露ではなく物語の叙述という形をとることで、ヴォーカルばかりでなく楽曲自体にもナラティヴな表情がついている。ここはジョン・パリッシュやミック・ハーヴェイ、そしてフラッドという優れた制作陣の力も大きい。小ホールのような奥行きを感じさせるクリアな録音、とくに"ザ・グロリアス・ランド"や"ザ・ワーズ・ザット・メイクス・マーダー"、"オン・バトルシップ・ヒル"などクリーン・トーンのギターにかかるリヴァーブがロマンチックで、戦闘へと駆り立てる不可解な力や鬨の声といったものを思わせる。

 "イングランド"を聴きながら、オニの昨年のアルバムを思い出した。これは、スペーシーな残響感をともなってアコースティック・ギターが爪弾かれ、トラディショナルな楽器の音やフィドル、祝詞のような唄が幻影のように重なり、あとはただポーリーの歌うたいとしてのシンプルな力を最大限に引き出す曲だ。オニの『サンウェーヴ・ハート』も、彼女の裸足のヴォーカルに静かな迫力をみなぎらせた作品だった。詞もそうだが、日本の風土や風を思わせ、それがオニという母性や母体と渾然一体となっていく。ポーリーの場合は母というモチーフこそないが、国家という父権的な想像力ではなく、英国が朽ちようとも見守りつづけ、いつかもういちど芽吹くのを待つという母性的な粘り強さをもった愛が感じられる。イングランドという言葉が、長く引き伸ばして何度も繰り返される。
 イングランドに生きて死ぬとポーリーは歌う。郷土や祖国への思慕や愛情にとくに理由など必要ないかもしれないが、アナクロニスティックにも思われるこの強い愛情には、上述のように祖国の土と自らの身体とを同一化するような視線がはさまれているのではないかと私には感じられる。それは母体であり自分だ。国を土になぞらえ、種子や果実を子孫に見立てていることにも表れている("ザ・グロリアス・ランド")。それが軍靴によって踏まれ汚されてきたことを想像し、彼女は胸を痛めている。
 「揺り起こす」ということが具体的にどのような状態を指すのか明示されていないが、人びとの精神的な向上や成熟、そして「無関心」("レット・イングランド・シェイク")の克服といったことを指すのだろう。そしてそれはもちろん、彼女自身の古くからのテーマである。自分自身に接続するイングランド、そしてイングランドに接続する自分自身の再生と前進。"グロリアス・ランド"の「グロリアス」には皮肉と希望の両方のニュアンスがこめられているが、彼女が目指すのは、あの『ドライ』の頃から常に前進だ。その点では、じつに凛として胸を打つ説得力を持っている。

文:橋元優歩

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