「ボリス」と一致するもの

Chart by BEAMS 2010.12.08 - ele-king

Shop Chart


1

Kuniyuki Takahashi

Kuniyuki Takahashi Dancing In The Naked City Mule Musiq »COMMENT GET MUSIC
BEAMS RECORDSではもはや説明不要の存在、クニユキ・タカハシ4枚目のアルバムが遂にリリース!今作はデビュー作以来初となるダンス・フロアにフォーカスしたアルバムとのことで、収録曲のほとんどがフロア即戦力なディープかつプリミティブなハウス・トラック。アフロ、ミニマル、パーカッシブ、ダビーと、スタイルは多用なれど、その全てにクニユキ氏ならではの美学が凝縮された、アップリフティングでグルーヴィーな楽曲揃い!クニユキ氏自身が撮り下ろした写真を収録した16ページの豪華ブックレットも見ドコロです!もちろん大推薦盤!

2

黒木千波留

黒木千波留 過ぎ去りし日の... Rambling »COMMENT GET MUSIC
実力派ピアニスト、黒木千波留による瑞々しいシネマティック・ピアノ・サウンド。カフェオーナー兼ブラジル音楽愛好家として知られる堀内隆志氏が彼のピアノに惚れ込んだ事から実現した本作は、堀内氏が若き日に心酔していたヨーロッパ映画の音楽を中心に構成されたコンセプチュアル・ピアノ・アルバム。トリュフォーの「大人は判ってくれない」のテーマ曲(2)やアルバムタイトルにもなったフランス映画「すぎ去りし日の...」の挿入歌に吉田慶子のサウダージなヴォーカルを乗せた(7)、そして映画「DIVA」から何時の時代も愛される名曲(9)等を清らかなトーンで聴かせてくれます。いつ何時でも心を浄化してくれる様な、そんな魅力を秘めた1枚です。

3

Nick Rosen

Nick Rosen Into The Sky Poter »COMMENT GET MUSIC
Build An Arkファン必聴のスピリチュアル・ジャズ作品!Build An Arkのベーシストを務めるニック・ローセンが、Build An ArkはもちろんJ Dillaトリビュート作品などでもカルロス・ニーニョと共に素晴らしい作品を残すMiguel Atwood-Fergusonプロデュースの元にアルバムをリリース!これが、Build An Ark同様にピアノ、ハープ、ストリングスを交えた大所帯にてピースフル&ハートウォーミングなスピリチュアル・ジャズを奏でた素晴らしい内容!心安らぐ1枚です!

4

San Soda

San Soda Immers & Daarentegen Wph »COMMENT GET MUSIC
ラリー・ハード~ビートダウン系を匂わせる良質ダンス・アルバム!ここ最近にわかに世界各地のDJ達のチャートを賑わせているクリエイター、San Sodaのデビューアルバムが、ベルギーのアンダーグラウンド・レーベル、We Play Houseから登場。セオ・パリッシュやムーディーマン、はたまたハービー・ハンコックやスティービーらに影響を受けたと言うそのスタイルは、シンセのコードワークとシンプルなビートが見事な調和で鳴り響く、極上の渋知ハウス!We Play House主宰のRed DによるミックスCD付!

5

Zoot Sims

Zoot Sims Zoot Sims On Ducretet Thomson Atelier Sawano »COMMENT GET MUSIC
オリジナルのレコードは極稀少プレスな為、マニア達が血眼になって探し求めたという、アメリカ出身のテナー・サックス名手、ズート・シムズの最高傑作!ビッグ・バンド~ビバップ期のJazzシーンで活躍した彼が、相棒であるトランペット奏者ジョン・アーレイと共に56年の訪仏の際に現地のミュージシャンと録音した異色のコラボレート作。コール・ポーターのスタンダード曲(3)やクインシー・ジョーンズのバラード(4)といった楽曲をはじめ、全編通じてまろやかなテナーをムーディーに聴かせてくれる、珠玉の1枚!音質も最高です。

6

Jeb Loy Nichols

Jeb Loy Nichols Strange Faith & Practice Modesty Music »COMMENT GET MUSIC
ゆっくりと聴きたい極上のアコースティック・ジャズアルバム!エイドリアン・シャーウッドのプロデュースでOn-Uよりリリースされたアルバムでもオーガニックな楽曲を披露していたシンガー・ソングライター、ジェブ・ロイ・ニコルス。クラブジャズ以降のジャズ界にて高クオリティの作品を連発しているノスタルジア77のベン・ラムディンがプロデュースした本作は、元来の温かい作風に、チェロ、ヴィオラなどのストリングスが加わり、ソウルとジャズ、フォークが美しく交じり合って一層味わい深い作品に。末永く聴ける名盤の誕生です。

7

V.A.

V.A. Next Stop... Soweto Volumes 1-3 Limited Edition Box Set Strut »COMMENT GET MUSIC
アフリカン・レア・グルーヴの決定版!60~80年代の南アフリカ産の貴重な音源を発掘してきた本シリーズ、なんとこれまでリリースされた3作品を1パッケージに纏めたボックス・セットがリミテッドでリリース!一際リズミカルなアフリカン・ミュージック~ジャイブを収めたVol.1、R&B、FUNK&PSYCHにフォーカスしたVol.2、そして南アフリカ産の驚くほどモダンなジャズを選りすぐったVol.3(2枚組)と、いずれも永久保存版と言える素晴らしい内容。全4枚でこのグッド・プライス、お見逃しなく!

8

中島ノブユキ

中島ノブユキ Melancolia Spiral Records »COMMENT GET MUSIC
中島ノブユキ氏渾身の3rdアルバム、遂にリリースです!BEAMS RECORDSでは1stアルバムから全作永久定番入りなピアニスト、中島ノブユキの新作は、これまで同様クラシックとジャズの狭間をたゆたいながらも、音楽の世界を巡る旅へと誘うような幽玄な雰囲気を宿した、その名のとおりメランコリーな作品。いつまでも、そしてどこまでも、こんな音楽を聴き続けたいと想わせる、素晴らしい1枚です。

9

Teebs

Teebs Ardour Brainfeeder »COMMENT GET MUSIC
フライング・ロータスのレーベルからリリースの逸材!ライフワークだったスケートを怪我で断念した後、アート、音楽の世界に足を踏み入れたというティーブス渾身のデビュー・アルバムは、ボーズ・オブ・カナダのフォロワーとも言うべきエレクトロニカ×ブレイクビーツ!フライング・ロータス直系のエッジーなビートと音空間を舞うキラキラとした電子音は、まるで雪山に舞う粉雪、あるいは爽やかな春風の様に有機的な美しさを感じられる事でしょう!

10

Boris Gardiner

Boris Gardiner Every Nigger Is A Star P-Vine »COMMENT GET MUSIC
JAZZMANからジャマイカン・ファンクのお宝音源がリリース!アップセッターズのベーシストとしても知られるシンガーソングライター、ボリス・ガーディナーが74年に残した幻のサウンドトラックが奇跡のCD化。同タイトルの映画が興行的に大失敗に終ってしまった為、全く注目される事のなかった作品ですが(笑)、内容は実にハイクオリティ。皮肉にもBig Youthのカヴァーがヒットしてしまったものの、それに劣らないソウルフルな主題歌(1)、ジャマイカ流の緩いファンク(6)等、レアグルーヴ・ファンの心も鷲づかみにしそうなお宝音源集です!

Boris Gardiner - ele-king

 ボリス・ガーディナーといえば......、かの『スーパー・エイプ』でぶっといベースを鳴らしている男で、要するにあの時代(70年代後半)のジ・アップセッターズのベーシストである。コンゴスの歴史的な『ハート・オブ・コンゴス』もそうだし、ブラック・アーク時代の最後の傑作『ロースト・フィッシュ、コリー・ウィード&コーン・ブレッド』もそう。それ以前は、ジャッキー・ミットゥー率いるソウル・ディメンジョンにも参加しているし、ジ・アグロヴェイターズにも参加したこともあった......という話だ。ベーシストとしてのそうした勇ましい経歴とともに、ガーディナーにはラウンジ・ミュージッシャンのとしての側面がある。ジュニア・マーヴィンの"ポリスとこそ泥"であれほど攻撃的なベースを弾いたかと思えば、腰をくねらせながら甘ったるいソウルを演奏するのだ。
 初期の代表曲の"ハピネス・イズ・ア・ウォーム・プシン"を収録した1970年の『ア・ソウル・イクスペリエンス・イズ・ハプニング』、ガーディナーのエレピが冴えるグルーヴィーな1973年の『イズ・ホワッツ・ハプニング』、ハンマーを打ち砕くジャケットの写真とは裏腹にメロウなレゲエが展開される1975年の『スレッジハンマー』......90年代以降に再発されたこれらのアルバムはDJやレアグルーヴのファンのあいだで好評となったおかげで、いまではボリス・ガーディナーといえば、ヴィンテージなメロウ・グルーヴを代表するひとりとして知られている。もちろん僕もヴィンテージなメロウ・グルーヴの流れでそれらのアルバムを聴いたひとりである。なにせここに挙げた3枚すべてが何度も繰り返し聴いてしまうほどに温かく、そして上機嫌なのだ。
 
 この度〈ジャズマン〉から再発されるのは、1973年に映画のサウンドトラックとして制作された『エヴリ・ニガ・イズ・ア・スター』で、中古でも滅多に見かけない幻の代物である。ジャケットのイラストは同時代のアメリカの黒人文化からの影響で、ブラックスプロイテーションそのものとなっている。映画自体はジャマイカの自主制作映画として企画され、ビッグ・ユースが主演したラスタファリズムのドキュメンタリー調の映画だったというが、そうしたジャマイカ人による自主制作という画期的な試みにも関わらず、興行的にはまったくの失敗作となった。ジャマイカの映画史上もっとも短い上映期間を記録したばかりか、返金を要求する客によって暴動まで起きたという。いずれにしても、それだけ映画が悪評を高めれば、人びとが好んで音楽にアプローチするはずがない。『エヴリ・ニガ・イズ・ア・スター』は映画とともに葬り去られ、のちのクラブ・カルチャーにおけるガーディナーの再発見がなければ、この素晴らしい音楽は歴史の闇のなかに佇んでいたままだったのかもしれない。
 
 アルバム・タイトルをはじめ"ラフ&タフ・イン・ザ・ゲットー"や"ファンキー・ニガー"、"ゲットー・ファンク"といったシリアスで挑発的な曲名からは、音楽の主題が同時代の『ハーダー・ゼイ・カム』(1971年)と同じようにゲットー・リアリズムを背景にしていることがわかる。が、『ハーダー・ゼイ・カム』と違ってガーディナーの音楽にはマーヴィン・ゲイや『スーパー・フライ』からの影響が滲み出ている。欧米諸国でレゲエが注目を集めはじめた当時のジャマイカ音楽シーンにおいては、ソウル/ファンク色があまりにも目立つ。アルバムがリアルタイムで埋もれてしまったもうひとつの理由はそれだろう。いま聴くとUSソウル/ファンクとの混合具合が面白いというのに、つくづく音楽の価値とは時代によって相対的である。
 
 ほとんどの曲をガーディナー自身が歌っている。彼の魅力たっぷりのソウル・ヴォーカルが聴ける"エヴリ・ニガ・イズ・ア・スター"や"ホーム・アゲイン"は言うまでもなく、ジャッキー・バーナードが歌う甘いバラード"ユー・ジャスト・ガット・トゥー・ビー・イン・ラヴ"も胸がいっぱいになる。グルーヴィーな"ゲットー・ファンク"、緊張感みなぎる"ファンキー・ニガー"、そしてアーリー・レゲエ・スタイルの"デッドリー・シティング"の格好良さと来たら......。
 
 ボリス・ガーディナーは、1980年代以降は、シングル「アイ・ウォント・トゥ・ウェイク・アップ・ウィズ・ユー」でUKのナショナル・チャートの1位になり、ポップのメジャー・フィールドでの成功も収めている。

DJ NOBU @ Berghain - ele-king


浅沼さんから送られてきたベルリンののどかな風景。

 「ノブ君を〈ベルグハイン〉にブッキングするまで帰って来ないから!」、ベルリンに引越す直前、ノブ君にそう言った。別にノブ君に頼まれたわけでも何でもなかったが、私は勝手にそれをひとつの目標としていた。〈ベルグハイン〉に初めて行ったときにから、「ここでDJノブが聴きたい」と思っていたし、私が知っている日本のDJでは、ノブ君以上にここにハマる人は他にいないと思った。

 私がベルリンに引越した最大の理由は〈ベルグハイン〉である、と言っても過言ではない。そんなことを言うとどんだけ頭のおかしい女かと思われるだろうが、それほど衝撃的なクラブだった。そのクラブに毎週通いたいからというわけではなく、こんなクラブが存在し得る街、こんなクラブを作り上げることができる人たちがいる街は魅力的な場所に違いないと思ったのだ。

 ひと言でいうと「完璧」なクラブ。理想のクラブかと問われれば、私の理想とは少し違う。音楽的な好みなども加味すると、個人的な理想はもっと別のところにあるように思う。ただ、実在しているクラブとしては「完璧」であり、完成された、ひとつの究極であることは間違いがない。

 客がフロアでセックスしているとか、「ダークルーム」ではもっとすごいことが繰り広げられているとか、そういうスキャンダラスな側面は正直、私にとってはどうでもいい。クラブの「怪しげ」な雰囲気を演出している要素でしかない。ただしそれは、このクラブ内独自の圧倒的な解放感、「各々が好きなように、好きなやり方で楽しめばいい」というアナーキーさの表れであり、それがこの場所の特別なところだ。

 自由奔放な雰囲気と、プロフェッショナリズムに徹した超ストイックな設備とスタッフと音楽。それがここまで高い次元で共存している場所は世界中見渡しても絶対に他にない。あり得ないと思う。

 ベルリンのクラブは、いまだにレジデントDJを大事にしているところが多い。それぞれのクラブには何人か「ハコ番」のDJがいて、彼らがそのクラブの雰囲気を代弁し、守っている。〈ベルグハイン〉はとくにそこにこだわっているクラブだ。マルセル・デットマン、ベン・クロックが現在もっとも高い人気を誇るツートップと言えるが、他にもレン・ファキ、アンドレ・ガルッツィ、DJピート、マルセル・フェングラー、ノーマン・ノッジ、シェッド、フィーデル、ボリス、アンディ・バウメカーといった面々のいずれかが、土曜日(日曜日)は必ずプレイし、パーティの運命を決める。

 〈ベルグハイン〉は基本的に、土曜~日曜にかけてはつねにハード・テクノが流れている(金曜日にはたまに少し趣向の違うパーティが開かれる。ダブステップのSub:stanceなど)。そこから大きくブレることはない。毎週豪華なゲストDJ/アーティストがブッキングされているが、ここで力を発揮する人と、クラブの個性の強さに負けてしまう人がいる。初めて行ったときにプレイしていたルーク・スレーターなどは、レジデント並みに場に馴染み、客をコントロールしていた。クリス・リービングも他では(私は)聴く気はしないが、ここでは輝く。逆にフランソワ・Kは彼のスタイルの持ち味が映えなかったし、デリック・メイも(私はプレイを聴いていないが)まったく合わなかったと自分で言っていた。というか、まったく彼の好みではなかったようだ。

 ......以上の話は全部ノブ君には事前に伝えていた。思っていたよりもずっと早く実現してしまったノブ君の〈ベルグハイン〉出演。私と、ノブ君を呼ぼうと言ってくれたマルセル・デットマンだけが、「ノブ君なら間違いない」と確信していたが、当然ベルグハイン関係者を含むベルリンの人は誰もDJ NOBUなんて名前すら聞いたこともなければ、彼がどんなスタイルのプレイをするのか、どの程度スキルがあるのか、どれだけ経験を積んでいるのか、全く知らなかった。それでもマルセルの「呼ぼう!」の一言でブッキングは決定。「マルセルが太鼓判を押すなら心配ない」、「リリースがあるかどうか、有名かどうかは全く関係がない。プレイがいいかどうか、ただそれだけ」と、当たり前のようにブッキング担当者は言った。

 この話もノブ君に伝えた。そう、プレイがすべて、本番がすべてだと。最高の舞台であると同時に、絶対に失敗できないチャンス。私は意識的にプレッシャーをかけまくった(笑)。本人には迷惑な話だが、私はノブ君がプレッシャーに強く、窮地に追い込まれたときに馬鹿力を発揮すると信じていたから! 〈ベルグハイン〉は、いちどのチャンスを掴まなければ、二度と呼ばれないと。ノブ君が日本人で初めてあそこでDJするんだから、日本のヤバさをベルリンの連中に見せつけてやってくれと。

 逆に「ハウスはかけないほうがいいか」、「こういう曲はかけてもいいか」等々、ノブ君からの相談にも乗った。なんせノブ君は〈ベルグハイン〉を見たこともなければ、フロアで踊ったこともない。ただ去年千葉の〈フューチャー・テラー〉で聴いたマルセルのプレイと、〈Ostgut-Ton〉や〈MDR〉のレコードの音から、来る日の夜をイメージしていたのだ。だから私はできる限り言葉であの独特のノリと雰囲気を説明した。(説明し切れないけども。)

[[SplitPage]]

マルセルも「グレート!」を連発。ブース目の前に陣取ってるうるさ方の常連さんらもみんな笑顔。「後ろのほうまですごい盛り上がってるよ!」とノブ君に伝 えると、ガッツポーズ! 完全に「オン」になった! 

 アイスランドの火山灰騒動でノブ君のフライトがキャンセルになり、いちどは今回は諦めて何ヶ月後かに仕切り直した方がいいんじゃないかという話も出たほど、直前は大混乱となった。でも結局、ノブ君が少し自腹を切ってでも、航空券を買い直して今回のパーティに出たいというので、慌ててパーティ前日である金曜日に到着する便を手配することになった。本来はローディーも兼ねたふたりの友人と一緒に来るはずだったが、彼らのフライトもキャンセルになったのでノブ君ひとりで来ることになり、重量制限があるので3時間のプレイぎりぎりのレコードしか持って来れなくなってしまった。だから直前、ものすごく慎重に選曲をしてきたようだ。行ったこともないクラブで、他はシェッド、マルセル・デットマン、ベン・クロックというレジデントのみのパーティ。ノブ君は普段から、どんなパーティでもすごくその場所やお客さんのノリ、自分の出番や役割を考えて綿密に選曲をしていることを私は知っている。だから今回などは、本当にいろいろ考えと想像と妄想をめぐらせたに違いない。

 正直、私も不安がなかったわけではない。ノブ君の実力は誰よりも評価しているけど、「あそこ」でそれが発揮できるのかどうか、そしてそれがベルリンの客に伝わるのかどうか。日本全国いろんなパーティを経験したノブ君でも、ベルリンの客を相手にやった経験はない。日本でやっていることをそのままやっても、客が違うので伝わらないかもしれない。でも、逆にベルリンのノリを意識しすぎてノブ君の個性や持ち味が出せなかったら意味がない。そのバランスをどう取ればいいのか、私もわからなかった。ノブ君には、「あとは現場でお客さんの反応を見て判断して」としか言えなかった。

 パーティ当日の夜のノブ君は、いままで見たことがないほど緊張していた。呼ばれた出演者との夕食会も両脇にマルセルとベン、向かいに〈Ostgut-Ton〉のレーベル・マネージャーであり当日〈パノラマ・バー〉のほうでプレイすることになっていたニック・ホップナー、その隣にはレジデントDJでありブッキング・マネージャーであるアンディ・バウメカー、シェッドを含む〈ハードワックス〉のスタッフ、そんな彼らと個人的に仲がいいライアン・エリオット、〈Ostgut〉のブッキング・スタッフ、とイカツイ面子がずらりと揃っていて、私ですら緊張した(笑)。ノブ君の出演時間である3時よりもだいぶ早めに、1時頃には会場に入った。夕方じっくりサウンドチェックもしたが、やはり営業時間の雰囲気、音の鳴りはその場に行ってみないとわからない。

 トップバッターだったシェッドがプレイしていたが、フロアはがらがらだった。普段から客足は遅い方だが、それにしても人が少なかった。火山灰騒動で多くの格安航空便がキャンセルになり、観光客が少なかったからだと思われる。これほど人が少ないのは予想外。シェッドも淡々とウォームアップをしている感じ。ノブ君は緊張顔でソワソワ。ところが交代30分前くらいになって、シェッドがピッチもボリュームも上げ出して、いっきに客も踊りはじめた。そして急激にテンションを上げ切ったところでノブ君に交代。それでもガチガチに顔がこわばっているノブ君(あんな顔見たことない!)に、「いつものノブ君らしくやれば、絶対大丈夫だから!」と最後に言った。心なしか、お客さんもこの無名の日本人DJがどうくるのか、好奇心をもってこちらを見ているようだった。いつの間にかマルセルやその友だちの常連さんたちがブースの前に集合していた。

 ノブ君のプレイがはじまった。最初の30分は、恐る恐るという感じが伝わって来た。でも〈ベルグハイン〉の客にはなじみ深い〈Ostgut-Ton〉のレコードをノブ君のセンスでプレイし、お客さんも少し安心したようだった。明らかにフロアに人が増え、みんなが踊っていた。最初の30分が問題なく過ぎたので、ブースから出てフロアを偵察しに行った。バッチリ。後ろのほうのお立ち台上のマッチョのゲイたちもがっつり踊っている! この人たちを踊らせたら、〈ベルグハイン〉のフロアは制したも同然。ブース内のマルセルも踊りまくっている! 「みんな踊ってるよ!!」とノブ君に言いにいくと、少し緊張が解けたような笑顔になった。開始1時間で、このクラブの要領とお客さんのノリは掴んだようだった。さすが。

 〈ベルグハイン〉のノリは掴んだようだったけど、まだノブ君らしさは発揮されていなかった。まだ硬かった。いつもの伸び伸びとした感じがない。せっかく日本から来てるのに、「他の〈ベルグハイン〉のDJたち」と同じことをやっても仕方がない。〈ベルグハイン〉の世界観を理解しながら、そのなかでどれだけ自分らしく遊べるかどうか。そう考えるとやはりDJにとって難しいハコだと思う。しかし4時を過ぎた頃から、フロアは満員、がっつりと客がついてきている手応え。マルセルも「グレート!」を連発。ブース目の前に陣取ってるうるさ方の常連さんらもみんな笑顔。「後ろのほうまですごい盛り上がってるよ!」とノブ君に伝えると、ガッツポーズ! 完全に「オン」になった! そこで1回、「やったね」の硬い握手をしたのを覚えている。そこからは、いつものノブ君。とくに最後の1時間は本当に楽しそうにプレイしていたし、それがフロアにも伝わって最高潮の盛り上がりを見せた。一緒に夕食を食べた面々も、納得の表情。この夜の主賓であるマルセルがめちゃくちゃ楽しそうに踊っていたことが、何よりの証拠だった。

 後半はあっという間に過ぎて、気づけばもう6時。マルセルと交代の時間だ。交代前に、この日にリリースされた『Dettmann』アルバムの3枚組LPをマルセルが持って来てノブ君に渡した。そしてノブ君最後の1曲が終わるといちど音を止めて、お客さんに紹介するようにノブ君に拍手を送った。あっという間に、私のひとつの「夢」だった"DJ NOBU @ Berghain"は終わっていた。ぶっちゃけ、終わる頃には相当酔っぱらっていた(笑)。だから、その後のことはあまり覚えていない。後は遊んだだけ。ノブ君もめいっぱい遊んでいた。何人かが私のところに、「NOBUがすごく楽しそうにフロアで踊ってるよ!」と言いに来たほどだ。プレイを終えて初めて、ノブ君は〈ベルグハイン〉の客の感覚をフロアで味わっていた。最強のレジデント、マルセル・デットマンとベン・クロックのプレイを彼らのホームグラウンドで体験していた。

 さすがに昼くらいで帰るだろうと思っていたのだが、結局午後3時過ぎ、〈ベルグハイン〉の音が止まるまでいてしまった。上階の〈パノラマ・バー〉は、まだまだそこから夜中まで続くのだが、〈ベルグハイン〉を味わい尽くしたところでこの日は満足。ほとんど〈パノラマ・バー〉をチェックしにも行かなかったが、どうやら〈ベルグハイン〉のほうに客が集中していたようだ。昼くらいまでいた私の友人は、「NOBUのときがお客さんの入りも盛り上がりもピークだった」と言っていた。私はそれ以降の記憶があやふやなのでどうだったか判断できないが、ノブ君が「〈ベルグハイン〉のためのDJ NOBUセット」を絶妙なバランスでプレイし、それが読み通りの反応を得たことはたしかだと思う。ノブ君のセットの終盤、私は酔っぱらいながら「this is one of the happiest moments of my life!」といろんな人に言いまくっていたことも記憶している。本当に鼻が高かったから!

 ありがとう、ノブ君。
 そして、またやりましょう!

浅沼優子

DJ Nobu Current Chart

  • Juju & Jordash / Deep Blue Meanies / Dekmantel
  • Mirko Loko / Tahktok (Villalobos Hilery's Chant Remix - Edit) / Cadenza
  • Claro Intelecto / Back In The Day / Modern Love
  • Marcel Dettmann / Dettmann / Ostgut Ton
  • Mike Parker / GPH14 / Geophone
  • Dasha Rush / Sonic State / Sonic Groove
  • James Kumo / Kumomusic Vol.1 / Delsin
  • Crue-L Ground ohcestra / Endbeginning(NOBU'S DUB) / Crue-L
  • Peter Van Hoesen / Entropic Minus Six / Time To Express
  • ??? / Desperation / Do Not Resist Beat!

[Techno] #1 by Metal - ele-king

 ここ1年にかけて、ダブステップの影響もあってだろうか、従来の〈ベーシックチャンネル〉や〈ディープスペース〉などのレーベル以外にもヴァリエーション豊かでダビーな音響のテクノ/ハウスが続々とりリースされている。とはいえ、テクノとダブステップが実際に共振しているかと言えば、微妙なところだ。テクノのリスナーはまだそれほどダブステップを聴いていない。ただし、お互いに意識していることは確実なのだ。面白い動きはいろいろ起こっている。最近のダブステップをかけて、逆説的にテクノのクオリティの高さも再認識した。

1 Lee Jones / Yoyo Ep | Cityfox(CHE)

ミニマルのテック・ハウス化の中で〈サーカス・カンパニー〉に代表されるジャズや現代音楽をモチーフにした音楽性の高いトラックが多数見受けられるようになりました。その中で、スイスのクラブが設立した新レーベル〈シティ・フォックス〉より〈プレイハウス〉の中心的なアーティストで、マイマイのメンバーとして知られるリー・ジョーンズによる奥深いミニマル・ハウス音響的なところではジャジーな感覚を取り入れている。

2 Tolga Fidan / So Long Paris | Vakant(GER)

ルチアーノとともにミニマルのグルーヴの発展に貢献してきたトルガ・ファイデンによるニュー・シングル。従来よりも低音は強調され、サックスをメロディーとしてではなく"飛び"のアクセントとして用いる。より立体的なトラックへと変化している。

3 Matthias Meyer / Wareika / Infinity / Smiles | Liebe Detail(GER)

〈フリーレンジ〉とともに新世代のテック・ハウスを牽引する〈リエベ・ディテイル〉よりマティアス・メイヤーとワレイカによるスプリット。両面ともにクオリティが高く、2009年のアンセムと言っても過言ではない。ジャジーでエスニックなテック・ハウスにプログレッシヴ・ロック的な要素が加わり、高音あるいは中低域の持続音が不思議なトランス感を生み出している。ダブというよりはサイケデリック。ヴィラロボスとジョー・クラウゼルが共演したらこんな感じになるんじゃないか。

4 Conforce / CCCP EP | Modelisme(FAR)

そしてオランダよりの新鋭ボリス・バニックのダブ・プロジェクト、コンフォースがルーク・ヘスなどもリリースするフランスの〈モデリズム〉から。〈エコ・スペース〉や〈ベーシック・チャンネル〉タイプのミニマル・ダブでありながら、最近のミニマル・ハウスを通過している柔軟なグルーヴが素晴らしい。

5 Rui Da Silva & Craig Richards / Be There | Motivbank(GER)

ポルトガルのルイ・ダ・シルヴァとファブリックの看板DJ、クレイグ・リチャーズによる共作。ジェイ・トリップワイヤーなどにも通じる大箱に栄えるプログレッシヴなダブ・ハウス。最近では珍しい質感と言える。アシッド・ベースの使い方がクールなトビアスによるリミックスも収録している。

6 Marcel Dettmann / Prosumer & Tama Sumo / Phantasma Vol.3 | Diamonds And Pearls Music(GER)

今年も大活躍のベルグハイン勢によるスプリット。シンプルなアシッドハウスに、繊細な持続音が絡む、デットマンによるダビーミニマルと、シカゴハウスを上手く今のグルーヴに当てはめたタマ・スモとプロシューマーによるベースの効いたテックハウス。

7 Valma / Radiated Future | Blueprint Records(UK)

デットマンを中心としたハード・ミニマル回帰の中で再び注目を集めるジェームス・ラスキンによるレーベル〈ブループリント〉からヴァルメイによる新作。覚醒的なシンセをアクセントに、ストイックに展開していくハード・ミニマルとなっている。質感は昔のままながら、グルーヴやエディットに新しさを感じる。

8 Monolake / Atlas ーT++ Remix- | Monolake(GER)

エレクトロニカのフィールドからダブを追求するベテランのモノレイクのトラックで、メンバーのトーステン・プロフロックによるT++名義でのリミックス・ヴァージョン。ノイジーでカオティックで、ピッチの早いダブステップと言える。正直に言って、レゲエやグライムからの流れのダブステップは聴くに堪えないものが多い。が、モノレイクのそれは、そのなかで本当にクオリティが高い音響を見せつけている。あるいはまた、これこそがテクノとダブステップの理想的な融合のカタチのひとつだと言える。

9 Harmonia & Eno / Tracks and Traces Remixes | Amazing Sounds(GER)

E王これは衝撃的な1枚。ハルモニアとブライアン・イーノによる名作をシャックルトンとアップルブリムがリミックス。テクノでもダブステップでもない。摩訶不思議なアンビエントだと言えるし、ジ・オーブの『ポム・フリッツ』を連想させる。ダブステップ周辺のアーティストでは僕にとってはシャックルトンが抜きん出て面白い。分からないから面白いのであう。

10 The Sight Below / Murmur - EP | Ghostly International(US)

これはシアトル出身のアーティスト、サイト・ビロウによる深海系のダビー・ミニマル。リミキサーにはフィンランドからバイオスフィア。ドローニッシュで凍りつくようなハードコア・アンビエントである。

  1 2 3 4 5 6