「Oneohtrix Point Never」と一致するもの

目印はtofubeatsのいい顔 - ele-king

 さあ! 新刊本日発売です!!
 昨日DOMMUNEで「ele-king TV」を観てくださった方は、宇川直宏氏も太鼓判を押す今号の中身をチラ見していただけたはず。
 Vol.11は、「ディストピア世界で笑おう」をテーマに、インターネットを活躍の舞台とし、音楽~アート~ファッションにまたがって広がりを見せている様々なインディ・ムーヴメントを探索する号です。目印はtofubeatsの「いい顔の表紙」だッ!
 ぜひぜひ書店、レコ店、Amazonでお探しください!
 大好評につきAmazon品切れ中! こちらのページよりお買い求めいただけます!

特集 ディストピア世界で笑おう
ユートピアの対義語であるこの言葉を肯定的にとらえ、テクノロジーを逆手にとった、インターネット・パンクともいえるまだ誰も語っていない最新動向を探ります!

成功は最高の復讐――
Jポップを変える! 表紙&巻頭インタヴューはJポップ・シーン未来の革命児tofubeats(トーフビーツ)ロングインタヴュー!

第一特集 ディストピア世界で笑おう

対談、コラム、徹底ディスクガイド、ブックガイド !!
☆宇川直宏×tomad
☆飯田一史×海猫沢めろん
☆ディストピア・ディスクガイド 40
☆ウルトラ・デーモン
☆特別インタヴュー Oneohtrix Point Never

第二特集 ポップ↔アート↔ミュージック

インタヴュー
☆オノ・ヨーコ
☆卯城竜太(Chim↑Pom)
☆蓮沼執太

巻頭フォトギャラリー
☆塩田正幸

特別対談
☆保坂和志×湯浅学

第三特集
アナザー・ワールド・トリップ!
新世代ワールド・ミュージックを概観&濃縮レヴュー

大好評連載中!

☆ブレイディみかこ 
「アナーキー・イン・ザ・UK 外伝」
第二回 ロイヤル・ベビーとハックニー・ベビー

☆金田淳子 
「光と闇がそなわり最強に見えるレヴューV2 ~どうやってベストセラーだって証拠だよ!~」
第二回 70年後の君へ 『進撃の巨人 Before the fall』

☆人気の連載陣
西村ツチカ、磯部涼、山本精一、二木信、tomad


11月はすぐそこ! - ele-king

 踊りたい人間と、ちゃんと音楽を聴きたい人間とをともに満足させてくれるエレクトロニック・ミュージックのお祭り〈エレクトラグライド〉が、今年も開催される。昨日、出演アーティスト情報の第一弾が発表となった。ジェイムス・ブレイク、チック・チック・チック、エイドリアン・シャーウッド&ピンチ、ファクトリー・フロア、マシーンドラム。ベテランから新人枠までいずれ劣らぬ存在感を放っており、この後二弾、三弾とつづく情報解禁がさらに楽しみになる。
 そこで勝手にele-king的第二弾大予測を開始する!
 まずはソフィア・コッポラ監督の新作映画にも抜擢され、〈ワープ〉からの新譜も控えてステージをひとつ上げた感あるOPN(Oneohtrixpointnever)。来い! そしてパフォーマンス・スタイルにおいても随一のインパクトを誇り、イクエ・モリとのコラボなどを経ていまやヨーコ・オノからも呼び声がかかるという宅録女子、ジュリアナ・バーウィック。来い! ドローン・フォークからインダストリアルなダンス・ミュージックへ鮮やかに突き抜け、もはやブレイク寸前の超知性派ノイズ・アイドル、ピート・スワンソンも来い! フェリックス・Kやセイント・ペプシなんかもいると楽しいな! 〈ビートインク〉はきっとやってくれるでしょう......昨年同様、外れたらスミマセン!!
 胸を高鳴らせて続報を待とう。

国内最大級のエレクトロニック~ダンス・ミュージック・フェス〈エレクトラグライド〉、今年も開催決定!

electraglide
2013/11/29(FRI)
幕張メッセ

FEATURING:
JAMES BLAKE
!!!
SHERWOOD & PINCH
FACTORY FLOOR
MACHINEDRUM
PLUS MUCH, MUCH MORE ...

日本最大級かつ最も刺激的でクリエイティヴなエレクトロニック~ダンス・ミュージック・フェス〈エレクトラグライド〉!
オービタル、フライング・ロータス、アモン・トビンなどを擁し大盛況のうちに幕を閉じた昨年に続き今年も開催決定!
まずは第一弾ラインナップ(5組)を発表! そして今週末8月24日(土)より主催者先行発売がお得な早割価格¥7,800で開始!

James Blake

2011年1stアルバムで衝撃的デビューを飾り、初来日公演はすべてソールドアウト、2012年のフジロックではWHITEステージのヘッドライナーとして圧巻のライヴを披露、そして今年、2ndアルバム『オーヴァーグロウン』発売後に開催された来日公演でも、追加公演を含む東京2公演を完売! 久しぶりにシーンに登場したニュー・ヒーロー、ジェイムス・ブレイクが、エレグラに登場!

!!!

アルバム『スリラー』リリース後行われた緊急来日公演(完売!)で、噂通りの最狂ライヴでフロアを絶頂へ導いた!!!(チック・チック・チック)

Sherwood & Pinch 

もはやUKベース・ミュージック・シーンの伝説的存在であり、最近もエイジアン・ダブ・ファウンデイションの最新作をプロデュースするなど未だ活発な活動を続けるOn-U Sound総帥エイドリアン・シャーウッドと、ベース・ミュージック新世代の最重要人物ピンチによるドリーム・タッグ=シャーウッド&ピンチ!

Factory Floor

すこぶる高い評価を得た一昨年のフジロックでのライヴも忘れがたい、そして間もなく最新アルバムも発売されるファクトリー・フロア!

Machinedrum

エレクトロニック~ダンス・シーンにおいて絶大かつ強固な信頼を集め、間もなくアルバムが〈ニンジャチューン〉より発売されるマシーンドラム!


今後、続々追加ラインナップを発表していきます!
次回発表も乞うご期待!


■日時
2013/11/29(Fri)

■場所
幕張メッセ

■Open/Start
20:00

■Ticket
主催者先行早割:7,800yen(8/24~9/2)
前売:8,800yen
当日:9,800yen
※18歳未満の入場は不可、入場の際IDの提示をお願い致します。

前売TICKET詳細
◆主催者先行(先着):https://l-tike.com/electraglideticket/
[8/24(SAT)12:00~9/2(MON) 23:00]
先行早割価格 7,800YEN

◆一般発売:9月7日(土)から
前売 8,800YEN
チケットぴあ 0570-02-9999[https://t.pia.jp/] (Pコード:209-961) 初日特電:0570-02-4480
ローソンチケット 0570-084-003 (Lコード:72626) 初日特電:0570-084-637
イープラス [https://eplus.jp]

ビートインク [www.beatink.com] ※先行発売:9月3日より

GANBAN 03-3477-5710 (店頭販売のみ)

※お買い求めいただいたチケットは返品できません。

企画制作:BEATINK / SMASH / DOOBIE
後援:SHIBUYA TELEVISION
INFO:
BEATINK 03-5768-1277 beatink.com
SMASH 03-3444-6751 smash-jpn.com smash-mobile.com
HOT STUFF PROMOTION 03-5720-9999 doobie-web.com

www.electraglide.info

interview with Co La - ele-king


Co La
Moody Coup

Software / melting bot

Amazon iTunes

 対面インタヴューならば食い下がったのだが、あいにくのメール・インタヴューだ。コ・ラは自らの音楽についてこう解題した――「慌ただしいレストランでウェイターがグラスを落としたときと同じ印象や効果を音楽にしたくて」。今作の彼の音を見事に説明するイメージである。と同時に、これはたとえばジャム・シティやキングダムといったアーティストにもまったくよく当てはまるフィーリングだと思う。金属的で、神経の緊張を断続的に強いてくるようなサウンド・コラージュ。なぜわざわざそんなストレスフルな音に執着するのか、そして、インダストリアルという言葉に新しい表情を与えるようなそうした音が、複数のアーティストから同時に生まれてきているのはどうしてなのか、そのあたりを訊くことができたらよかった。なにせ、まだ名前のないムーヴメントなのだ。

 とくにジャム・シティやキングダムを擁する〈フェイド・トゥ・マインド〉は、こうした音像に視覚イメージを与えて意味づけ、ダンス・ミュージック・シーンに鮮やかなインパクトを生みつつある(ジャケでもロゴでも、レーベルとして一貫したスタイルを感じるだろう)。本作をリリースする〈ソフトウェア〉も、エッジイで批評性に富んだエレクトロニック・ミュージックを送り出すことに関してはもはや名門の域だ。主宰フォード&ロパーティンのレトロ・フューチャリスティックで硬質なサイバー趣味には、前者と同じようにツンケンした、金属っぽいサウンド・デザインが埋め込まれている。そして、以下、コ・ラ自身の口からも前者へのシンパシーが語られるように、毛色の異なる両者が、インダストリアル・ノイズの今日性を模索するようにして邂逅する様子には、どうしたってシーンの「次」を感じざるをえない。

 前作『デイドリーム・リピーター』が「家具の音楽」なら、今作でコ・ラはそれを置くべき場所を作った。ガラスを引っ掻くパンダ・ベア、というのがコ・ラことマシュー・パピッチの新作『ムーディー・クープ』の印象である。パンダ・ベアのまどろみと多幸感の島で、なぜかわざわざガラスを割りまくって引っ掻いている、それをなぜかと問い返すなかにいまのモードのひとつのかたちが見えてくるだろう。

 前作のタイトルは『デイドリーム・リピーター』だが、パンダ・ベアやアニマル・コレクティヴにはじまる2000年代のサイケデリックの成果が、2010年をまたぐ頃にドリーム・ポップの複合的な盛り上がりへと帰結し、シーンの内向化を促したとするならば、今作でのパピッチはその源流を角のあるもので傷つけながら、自分の居やすい空間へと改変しようとしているように見える。けっしてそこに穴を開けて風通しをよくし、外に出ようと促すのではない。あくまでベッドルーマーとしてデイドリーム・リピートする前提で、でも、気が散って落ち着かないようなドリーム空間があってもいいだろうというのが『ムーディー・クープ』ではないだろうか。ディストピアがユートピアの一種なのか、ユートピアがディストピアの一種なのかがわからなくなるような世界が立ち上がってくる。彼のような変種の存在は、この10年のUSのサイケデリック・ミュージックがいかに多様性持つものであるかをよく物語る。

 「耳障りでストレスフル」とは書いたが、あくまで品のあるダンス・アルバムだ。エキゾチックな表情やジャジーなフレーズも多数サンプリングしながら、聴く音としても洒落た仕上げを施している。前作から大きな飛躍を遂げ、かなり個性的な作品になったと思う。『ムーディーな一撃』......このタイトルのクールな矜持が、そのまま本作の魅力である。

ドライヤーや車の衝突音の方がサックスのソロよりも惹かれる。音楽がリズムで構築されるとき、日常にある偶然の音が入ってくる、それが未来の音楽を示していると僕は考えているんだ。

『デイドリーム・リピーター』について、コンセプトとしては「家具の音楽」(サティ)に通じるものだという説明をしておられましたが、実際に家具にするにはノイジーな仕掛けに満ちていると思います。今作はとくにそう感じました。あなたのめまぐるしいサンプリングやコラージュが持つ哲学について教えてください。

パピッチ:ジョン・ケージのような感覚かな。そういった音には常に興味があって、とくにいわゆる音楽じゃないものだね。ドライヤーや車の衝突音の方がサックスのソロよりも惹かれる。音楽がリズムで構築されるとき、日常にある偶然の音が入ってくる、それが未来の音楽を示していると僕は考えているんだ。背景や壁紙でなく、開いた窓のスクリーンような......空気ではない、「音」をフィルターしているつもりだよ。

金属的で鋭角的、あたりのキツめなプロダクションには、たとえばジャム・シティ(Jam City)などに共通するところがあると感じます。こうした音づくりはとくに今作から顕著になったものだと思いますが、どんなことを意識されていたのでしょう?

パピッチ:慌ただしいレストランでウェイターがグラスを落としたときと同じ印象や効果を音楽にしたくて、そのフィーリングを引き延ばして動的に表現にしたらそうなったんだ。

〈ナイト・スラッグス(Night Slugs)〉などのレーベルと交流があったりはしますか? 彼らもあなたも現代におけるインダストリアル・ミュージックのひとつのフロンティアと呼べるように思います。

パピッチ:全然ないけど好きだよ。DJをやるときはいつもKingdom(Fade To Mind)みたいな感じになるね。

ただテクニカルというわけではなく、硬質なマテリアルから多彩な感情表現を引き出しているのも素晴らしいと思います。あなたの音楽にとってエモーションはどのくらい重要なものでしょう?

パピッチ:新しい音楽を作るときはとくに重要だね。コンセプトやフィーリングでなく、そのときに聴いて影響を受けた音楽に近いところからスタートする。聴いている音楽からループをざっくり探して、くっつけて、エモーショナルなポイントを見つけ、そういった音そのものから得たアイデアを、曲作りのパワーにしているんだ。

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坂本九の歌に関しては、じつはそれが日本の歌だとまったく知らなくて、4 P.M(For Positive Music)のやつをいちばんよく聴いていたんだ。

同時代で好きだったり気になっているアーティストはいますか?

パピッチ:ニッキー・ミナージュ。

"スキヤキ・トゥ・ダイ・フォー(Sukiyaki To Die For)"には坂本九の"スキヤキ(上を向いて歩こう)"を思わせるフレーズが登場しますが、"スキヤキ"から感じられる日本人像と実際いま目の当たりにする日本人とのあいだに相違を感じますか?

パピッチ:坂本九の歌に関しては、歴史も世界的な人気もあって、いくつものカヴァーやヴァージョンが存在しているよね。そういったことに興味があるよ。じつはそれが日本の歌だとまったく知らなくて、4 P.M(For Positive Music)のやつをいちばんよく聴いていたんだ。基本的にはR&Bヴァージョンなんだけど、バーバーショップ(Barbershop)のハーモニーもあるし。2年くらい前のある日、家でケニー・ボール(Kenny Ball)のヴァージョンを聴いていてね。ビッグ・バンドのインストなんだけど。そしたらいっしょにいたダスティン・ウォン(Dustin Wong)が曲の歴史を教えてくれたんだ。彼はもちろんオリジナルをよく知っていた。その時点では重要なサンプルだったし、自身がクリエイトしようとする複雑な物語を作るという点で、的確な参考資料のように感じていた。

ボルチモアであなたが働いていたというギャラリーや、現在のボルチモアのアート・音楽シーンについて教えてください。

パピッチ:ボルチモアには知的で前衛的な、いいオーディエンスがいる。ここでのパーティーはシュールだと感じるよ。ボルチモアにはいわゆる音楽の「マーケット」はなく、経済的にも乏しい。そのおかげもあって、音楽を前進させるような空気があるんだ。そしてルールがまったくない。

フランク・ザッパやデヴィッド・バーンを輩出した土地でもありますが、そもそも実験的なムードや気質があるのでしょうか?

パピッチ:人によってはボルチモアをそう捉えているけど、実際はわからないな。もうここに住んで10年、年が経つにつれて好きになっていくね。ここにいる人はおもしろいよ。建築もユニークだし。貧乏な都市だけどそういった空気感が好きであれば最高の場所だと思う。

少し前ですと、ボルチモアというと〈スメル(smell)〉周辺の動きが気になりましたし、エイヴ・ヴィゴダ(Abe Vigoda)、ミカ・ミコ(Mika Miko)、ダン・ディーコン(Dan Deacon)、ジャパンサー(Japanther)などエクスペリメンタルでアーティなギター・バンドに存在感があったと思います。エクスタティック・サンシャイン(Ecstatic Sunshine)もそうした素晴らしいユニットのひとつだと思っていますが、ムーヴメントとしては一旦終息した感じなのでしょうか? それとも後続も出てきていますか?

パピッチ:その時代は3~4年前に終息したよ。破壊ではなく拡散した終わり方だったと思う。自分たちが出していた音楽はそのときその場所で鳴らされるものでしかなかったから。ウェアハウスなスタイルのパーティーで、PAもないしステージもない。規模は小さいけどダイレクトに反響のある音楽だった。そういったバンドにはもうあまり興味がないから、いまどうなっているかはなんとも言えないな。

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このレコードは夜だね。暗闇のなかから現れた歌だ。都会の雑音が好きで、それを重ねてなんともいえない音楽にする。


Co La
Moody Coup

Software / melting bot

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〈カー・パーク(Carpark)〉から〈NNA〉〈ソフトウェア(Software)〉という流れは、この10年の音楽の特徴のひとつを象徴するものだと思います。インディ・ロックとエレクトロニックな表現はさらに緊密に結びついていっていますし、ドリーミーなサイケデリアが通底していると感じます。あなた自身のなかで、エクスタティック・サンシャインとコ・ラとはどのような関係をもっているのでしょうか?

パピッチ:一年間くらい音楽を作らない時期があって、ちょっとずつギターから離れ、アンプやエフェクト、自分が持ってたほとんどの機材を売ったことがあったんだ。そのときに音楽をもっと聴くようになったよ。違ったレンズでね。エクスタティック・サンシャインに関しては、よりテクスチャーを追求して、最終的にはアブストラクトな方向へ向かったと思う。その休止期間の後に、新しい耳とともにまた一からという最初の地点に戻れたんだ。それがコ・ラだね。

〈NNA〉や〈ソフトウェア〉のことをどう思いますか?

パピッチ:どちらのチームもいっしょに活動できて本当に最高だよ。トビー(NNAテープスのA&R)、マット(ソフトウェアのディレクター)、ダニエル(ワンオートリックスポイントネヴァーOneohtrix Point Never)、ジョエル(Joel Ford aka Airbird)は素晴らしいキュレーターでありアーティストだし、彼らの文脈の一部になれたことを光栄に思っている。

先鋭的なテープ作品のリリースが増えているのはなぜだと思いますか? またあなたがそのフォームを選択する理由を教えてください。

パピッチ:こっちだととても簡単なフォーマットだと思うね。すぐにリリースできるフィジカルなフォーマットだし、古いタイプの多くの車にはまだカセット・プレイヤーがあるから簡単に聴けるんだ。

ダブやアンビエントに惹かれるのはなぜでしょう?

パピッチ:Tetrahydrocannabinol (THC)。

『Moody Coup』はどのような環境で聴かれてほしい(聴かれるのが理想)ですか?

パピッチ:このレコードは夜だね。暗闇のなかから現れた歌だ。都会の雑音が好きで、それを重ねてなんともいえない音楽にする。ヘリコプター、バス、都会の鳥、湿気のある環境、暗闇、そして人工的な光の輝き。

いま音楽以外で関心のあることについて教えてください。

パピッチ:味、花、光、霧、文字、政治にとても興味がある。

パンダ・ベアは好きですか?

パピッチ:はい。

Co Laの新章 - ele-king


Co La
Moody Coup

Software / melting bot

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 〈ソフトウェア〉からのリリースとなったセカンド・アルバム『ムーディ・クープ』で格段に磨かれた感のあるボルチモアのプロデューサー、コ・ラ。〈NNAテープス〉、〈ソフトウェア〉といったアンダーグラウンドのポジティヴな熱量がこもったレーベルを拠点に、ジャム・シティやキングダムを擁する〈フェイド・トゥ・マインド〉などへも音楽的な橋をかけ、大きな飛躍を見せようとしている。今回の初来日では、「元ポニーテイル」という紹介がもはや不要となりつつあるギタリスト、ダスティン・ウォンとのコラボレーションが予定されていたりと、東京・大阪のそれぞれの夜を、次のシーンを築く個性的なアーティストたちがサポートする様も楽しみである。


昨年の〈100% SILK〉のジャパン・ツアーにつづく10年代のサマー・オブ・ダブ! 近未来のエキゾチカを描くUSアンダーグランドの鬼才Co Laが初来日!!

ニュー・エキゾチカ、 アヴァン・ラグジュアリー、 ファーニチャー・ミュージックと称された〈NNA Tapes〉からの怪作『Daydream Repeater』、最新作『Moody Coup』は近代エレクトロニック・ミュージックの旗手 Oneohtrix Point Never主宰、NYCブルックリンの新鋭レーベル〈Software〉よりリリース、トロピカルに土着的であり、モダンに都会的であり、シンセティックに未来的である、10年代エキゾチカの奥地へと突き進み、前人未到のダブの領域へと踏み込んだボルチモアの鬼才、Co La。未だかつてない温かくも冷たい至高のサイケデリア、インディ・ダンス、ディスコ、ダブ、アンビエント、ドローン、テクノ、インダストリアル、ハウス、ジューク、ベース、ビートなど、様々なジャンル、モード、文脈が入り乱れるネット/10年代以降の感性を結実させた新しい辺境の夏が始まる。

https://bondaid.jp

■C o L a J a p a n T o u r 2 0 1 3

■東京公演

BONDAID #1 8.2 (FRI) @ SECO Bar Shibuya Tokyo

Live: Co La, Dustin Wong, Co La x Dustin Wong - Ecstatic Sunshine -,
Sapphire Slows, Dream Pusher,

Dj: Cold Name, Mayu, sali, asyl cahier, SlyAngle

日程:2013年8月2日(金)
会場:SECO Bar Shibuya Tokyo
時間:OPEN 21:00 / START 21:00
料金:ADV & W/F 2500 yen | DOOR 3000 yen

詳細: https://bondaid.jp/post/52069137191/bondaid-1

主催:BONDAID
お問合わせ bbondaidd (at) gmail (dot) com

■大阪公演

OZ 8.4 (SUN) @ Club Circus Osaka

Live: Co La, metome, Eadonmm,
Dj: Keita Kawakami, Seiho, OZ crew

日程:2013年8月4日(日)
会場:Club Circus
時間:TBA
料金:ADV 2000 yen | DOOR 2500 yen

主催:OZ
お問合わせ https://oz-party.tumblr.com

詳細: https://bondaid.jp/post/52068939200/oz


Oneohtrix Point Never - ele-king

 『Returnal』の最初の2曲を聴いて欲しい。とくに1曲目の、嵐のようなノイズ──ノイズなどと書くとマニアが好むところのノイズだと思われそうだが、オウテカからマイブラまでを含む広義のノイズだとお考えいただきたい──は圧巻で、メドレーとなっている2曲目の重たいドローンへの展開は、テクノと呼ばれる音楽に興奮したことのある感性であるならば打ちのめされるだろう。
 2010年、〈エディションズ・メゴ〉は、エメラルズの『Does It Look Like I'm Here?』とともにワンオートリックス・ポイント・ネヴァー、通称OPNの『Returnal』をリリースした。この2枚のアルバムが、当時のUSアンダーグラウンド・シーンの素晴らしい豊かさを世界に知らしめたのである。快楽原則の支配から逃れられないクラブを拠点としたエレクトロニック・ミュージックから生まれようのない音楽である。そもそも、ノイズ、アンビエント、ドローンなどという、言葉だけ見るといかにもマニアックで地味な音楽が、これほど魅惑的に響くとは、僕には思いも寄らなかった。〈ワープ〉もアプローチが遅い! 
 だいたい、ジェシー・ルインズには最初に謝っておくが、僕の嫌いな......、いや、嫌いじゃない、だいっ嫌いな(とあまり繰り返すと、それは好きだという意味だと言われるのでもう言わない)ソフィア・コプラが映画で起用するようになったこの年、OPNの新譜が〈ワープ〉から出る。『R Plus Seven』は、アンビエント色を強めた前作『Replica』の延長線上にある作風で、ピアノの音色が印象的な、豪快な『Returnal』と比較して控えめだが深い作品となっている。ノイズはないが、OPN流サティ解釈と言うと大げさだが、いままで見せなかった美しい旋律がある。早い話、いままででもっとも幅広く聴かれそうな内容だ。待望の新作は9月21日に発売。

続・すべてを聴き逃さないように - ele-king

 エメラルズ解散は惜しまれるものの、それぞれに豊かな才能を持つ3人だ、惜しみつつワクワクもする。最後のアルバムは、聴きようによってはマークのギターをふたりがどう料理するかという作品でもあった。ジョン・エリオットは「ジョンと僕はたくさんの様々なアプローチを取りました。マークのギターの音色にもこだわり、異なるアンプやマイクに通したりしてたくさんの時間をかけました。」と語っていた。マークがほとんど自身のソロ作品と変わらない演奏を、のびのびと繰り広げていることのカラクリがわかるようで微笑ましい。同時に彼のギターがバンドによっていかに大切にされていたのかが理解できるエピソードだ。先にひとり抜けるかたちになってしまったマークの、脱退後初となる来日情報をお伝えしよう。サポートにはケン・シーノ(ポニーテイル)。完全にひとりで、じっくりと、驚くべきグルーヴを立ち上げた前回に対し(且つラストはナゾのディスコ展開に!)、今回はいったいどんなステージになるのか......楽しみです!


■Mark McGuire (ex. Emeralds) Japan Tour 2013
special guest: Ken Seeno (ex. Ponytail)

インディ・シーンからエクスペリメンタル・ミュージック・シーンにおいて、リスナーからミュージシャンまでその動向を緊張感をもって意識される存在がマーク・マグワイアである。エメラルズからの脱退後(その後バンドは解散)初となる来日公演、誰もがその動向に注目していただけに貴重なライヴになること必至! 今回はあのダスティン・ウォンが在籍したボルティモアの実験的アート・バンド、ポニーテイルのギターリスト、ケン・シーノがサポート・アクトとして同行します。お見逃しの無いように!

関連リンク:
Mark McGuire: https://soundcloud.com/mark-mcguire https://mcguiremusic.blogspot.jp/
Ken Seeno: https://soundcloud.com/kenseeno

■5.8 wed 名古屋 TOKUZO
出演: Mark McGuire (ex. Emeralds), Ken Seeno (ex. Ponytail), Maher Shalal Hash Baz
開場 18:30 開演 19:30
¥3,000 (Advance), ¥3,500 (Door) 共に別途ドリンク代
ぴあ (P: 198-357)
メールでのチケット予約→ info@tokuzo.com or tkbcdef@gmail.com
Information: 052-733-3709 (TOKUZO)
https://www.tokuzo.com/
https://www.thisisnotmagazine.com/

■5.9 thu 大阪 CONPASS
出演: Mark McGuire (ex. Emeralds), Ken Seeno (ex. Ponytail) and MORE!!
開場 18:30 開演 19:30
¥3,000 (Advance), ¥3,500 (Door) 共に別途ドリンク代
Information: 06-6243-1666 (CONPASS)
https://conpass.jp/

■5.10 fri 東京 UNIT
出演: Mark McGuire (ex. Emeralds), Dustin Wong, Ken Seeno (ex. Ponytail)
開場 18:30 開演 19:30
¥3,500 (Advance), ¥4,000 (Door) 共に別途ドリンク代
Information: 03-5459-8630 (UNIT)
https://www.unit-tokyo.com/

■5.11 sat 新潟 正福寺(新潟市中央区西堀通7番町1548)
出演: Mark McGuire (ex. Emeralds), Ken Seeno (ex. Ponytail), le
開場 18:00 開演 18:30
¥2,500 (メール予約), ¥3,000 (Door), ¥2,000 (新潟県外), FREE (学生)
メールでのチケット予約→ info@experimentalrooms.com
*新潟県外・学生の方は入場時に身分証明証をご提示下さい。
Information: https://www.experimentalrooms.com/

■5.16 thu 広島 ヲルガン座
出演: Mark McGuire (ex. Emeralds) その他 *Ken Seenoは出演致しません。
開場 19:00 開演 20:00
¥3,000 (メール予約), ¥3,500 (Door) 共に1オーダー
メールでのチケット予約→ organzainfo@gmail.com
Information: 082-295-1553 (ヲルガン座)

■5.17 fri 高松 ノイズ喫茶iL
出演: Mark McGuire (ex. Emeralds) その他 *Ken Seenoは出演致しません。
開場・開演 20:00
¥3,000 + 1ドリンクオーダー
Information: 087-805-7215 (ノイズ喫茶iL)

■5.18 sat 京都 THE STAR FESTIVAL 2013
出演: Mark McGuire (ex. Emeralds) その他 *Ken Seenoは出演致しません。
開場 13:00 開演 14:00
¥5,000 (Advance), ¥6,000 (Door)
Information: 06-6541-6377 (THE STAR FESTIVAL)
https://www.thestarfestival.com/


Mark McGuire
1986年12月31日生まれ。米クリーブランド出身。マニュエル・ゲッチング等からの影響が色濃いミニマリズムと幾重にもレイヤーが重ねられた現代のギター・アンビエントを融合させたサウンドで、テン年代のエクスペリメンタル・ シーンにおいて最も注目を集めるアーティストのひとり。彼がギタリストとして在籍したバンドEmeraldsのアルバム『Does It Look Like I'm Here?』(2010年)が世界中で高い評価を受けたのをきっかけに、マークのソロ作品『Living With Yourself』(2010年)、『Get Lost』(2011年)も賞賛され、ソロ・アーティストとしての人気を確立。LindstromやDucktailsのリミックスも手掛けている。2012年末にEmeraldsを脱退。また過去にはEmeraldsの他にReal EstateのEtienne Pierre Duguay, Daniel Lopatin (Oneohtrix Point Never), Trouble Books等と多数のサイド・プロジェクトを行い、現在では入手困難なカセットテープやCDRを含む数え切れないほど膨大な量の作品をリリースしている。

Ken Seeno (ex. Ponytail)
ボルティモアで結成されたエクスペリメンタル・アート・バンドPonytailの元ギターリスト。Ponytail解散後、3枚のソロ作品『Open Window』『Invisible Surfer on an Invisible Wave』『Ken Seeno - Jeremy Sigler LIVE』を発表。シンセサイザーをベースとする彼の音楽はニュー・エイジとも称されている。現在はロサンゼルスに住んでいる。


Sapphire Slows First US Tour Diary! - ele-king

昨年末ロサンジェルスの〈ノット・ノット・ファン〉から12インチ・シングルでインターナショナル・デビューを果たした東京在住のサファイア・スロウズ。彼女がele-king読者のために去る3月のツアー日記を書いてくれました。現在のUSインディの感じがそれとなく伝わると思います。それはどうぞ!!!


Sapphire Slows
True Breath

Not Not Fun

Amazon iTunes

 こんにちは。Sapphire Slowsです。

 今年の3月に初めてのUSツアーで、ロサンゼルスとサンフランシスコとテキサスのSXSWに二週間かけて行ってきたんですが、そのとき書いていた日記を読んでもらうことになりました。(恥ずかしいけど!)

 最初にアメリカに行くと決めたのは去年の10月くらいで、〈Not Not Fun〉のブリットからSXSWに誘われたのがきっかけです。アメリカでツアーするなんて最初は想像もできなかったけど、レーベルの人たちやアーティストのみんなに会いたい! という気持ちが強くて、何はともあれ行ってみることにしました。少し時間が経ってしまったけど、いろんなことがあって最高だったので、とにかく、この日記を読んで向こうのシーンについて少しでも知ってもらえればなぁと思います。


ようやく対面した〈100%Silk〉のアマンダは、会うまではものすごくぶっ飛んでるんじゃないかと思ってたけど、実際に会ってみると小さくて華奢で、ものすごくかわいらしかった。

3/5
ロサンゼルス初日

 朝8時、LAに到着。LAでは車がないと不便すぎるので、すぐに空港の近くでレンタカーを借りて、アメリカで使える携帯電話も購入。とりあえず〈Not Not Fun〉のアマンダとブリット、その他にも会う予定にしてたアーティストたちに連絡をいれて、ハリウッド近くのステイ先にチェックイン。ランチを食べたあとは、LAで絶対行こうと思ってたWELTENBUERGERへ。ここはアマンダおすすめの服屋さんで、ヨーロッパやいろんな国のデザイナーの服やアクセサリーをおいてるセレクトショップ。二階建ての小さなお店だけど、本当にセンスがよくてとってもいい感じ。店内には〈100%Silk〉のレコードも置いてある。私はそこでピアスと黒いドレスを買って、そのあともショッピングや視察のために街中をブラブラ。

 夜はDUNESのライヴへ。他にも何組かやってたけどDUNESが一番よかったな。ギター/ヴォーカルはショートヘアの小さくて可愛い女の人、ベースは普通の男の人。そしてドラムの女の人の叩き方がエモーショナルで超よかった。そのあとは近くのビアバーで飲んで帰った。1日目は当たり前だけど見るものすべてがただおもしろくて新鮮でアメリカにきたなーという気分を始終満喫。ただの観光客。


DUNESのライヴ

3/6
ロサンゼルス2日目。 NNF & 〈100%Silk〉 Night @ Little Temple

 この日がアメリカで最初のライヴの日。というか正真正銘初めてのライヴ。ああとうとうきてしまったこの日がという感じで朝から緊張しまくりだったけど、夜まで時間があったのでPuro InstinctのPiperに会いにいった。Piperがたまに働いてるらしいヴィンテージのインテリアショップへ。彼女は女の子らしい感じだけどなんていうか強そうで、でもすごく優しくて、そしてとてもよくしゃべる。最近のPuroの話をいろいろしてくれた。いろんな人と共同作業しながら新しい音源を作っていて、次の音源は打ち込みっぽいこととか、もっと実験的な部分もあるのだとか。楽しみ!

 夜になって、「〈100%Silk〉 Night」の会場、Santa MonicaにあるLittle Templeへ。着いたらまだ誰もいなくて、どきどきしながら待っているとメガネで背の高い男の人がやってきて、「君、Sapphire Slows?」と話しかけてきた。誰だろうと思ったらLeechのブライアンだった。「僕も今日プレイするんだ、よろしくね!」「あ、よ、よろしく!」そのうちにみんなぞくぞくとやってきて会場に入る。行くまで知らなかったけど一階がライヴフロアで二階は〈dublab〉のオフィスと放送スタジオになっていた。すぐに〈dublab〉のDJでもあるSuzanne KraftのDiegoとSFV AcidのZaneがレコードをまわしはじめて、PAの用意ができるまでみんなでシャンパンをあけてわいわい。遊びにきてくれたPiperもすでにアガっている。なんだか素敵な部室みたい! そしてようやく対面した〈100%Silk〉のアマンダは、会うまではものすごくぶっ飛んでるんじゃないかと思ってたけど、実際に会ってみると小さくて華奢で、ものすごくかわいらしかった。「ハローキヌコ! やっと会えて本当に嬉しいわ!」私は皆に会えた感動でアワアワしつつ、「こ、これは夢じゃないぞ!」と自分を落ち着かせるのに必死......。


dublabのスタジオで。左からPuro InstinctのPiper, Austin, Suzanne KraftのDiego.

 この日、最初のアクトはソロアーティストのLeech。LeechといえばMiracles ClubのHoneyたちがやってる〈Ecstasy Records〉界隈の人だと思っていたけど、〈100%Silk〉ともしっかり繋がりがあったみたい。私の好みド直球の音で、最初からやられた。次のPharaohsは意外にフィジカルで、数台のアナログシンセやサックスなどを使って本格的に演奏していた。グルービー!転換の間はSuzanne KraftとSFV Acidが始終いい感じのDJをしてる。そしてやってきたLA Vampires、やばい! Amandaのダンスは神懸かっていて、音は最近のOcto Octaとのコラボレーションの影響もあるのか、過去のレコードと違ってかなりビートもしっかりした、ハイファイな感じ。

 私がライヴをしているあいだも、お客さんはあったかくて皆盛り上がってくれた。私はここに来るまでインターネットでしかフィードバックがなかったから、正直自分の音楽がちゃんと受け入れられるのか不安だったけど、たくさん反応があってなんだかすごくほっとした。ほっとしすぎて泣きそうになりながら二階で機材を片付けていると、SFV AcidのZaneがライヴよかったよと話しかけてくれた。そして色々話しているうちに「LAにいるあいだ暇があったらうちで一緒にレコーディングしよう!」という流れに。ワーイ。

 それからPeaking Lightsの後半半分くらいを見た。彼らはライヴに巨大なカセットデッキを使っていて、この日はいきなりテープが再生できなくなったり機材のトラブルも多かった。でもそれも含めアナログっぽさならではの良さがあってとても素敵だった。パーティが終わり、最高だった2日目も終了。


LA Vampires @ Little Temple

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家のなかは本とカセットとレコードだらけで、(Night Peopleのカセットが全部ある!)私が想像してた通り、というかそれ以上のセンスでまさに完璧な理想の家。全部の配置が、おしゃれなインテリアみたい! 

3/7
ロサンゼルス3日目。

 お昼過ぎにRoy St.のNNF Houseに遊びに行く。アマンダは出かけていて、ブリットが迎えてくれた。それからすぐLA Vampiresのニックも来てくれた。ブリットたちは去年の11月くらいに引っ越したばかりで、新しい家は本当に超かっこいい! 外の壁は全部紫っぽく塗ってあって、絵が描いてあったり、変な形の植物がいっぱいあったり。庭にはハンモック、納屋みたいな小さな離れはスタジオルームになってる。スタジオにはCasioのSK-1とかSK-5とか、おなじみの古いチープな楽器がいっぱい。家のなかは本とカセットとレコードだらけで、(Night Peopleのカセットが全部ある!)私が想像してた通り、というかそれ以上のセンスでまさに完璧な理想の家。全部の配置が、おしゃれなインテリアみたい! 家具も、アマンダの趣味の作りかけのジグゾーパズルも、ちょっとした置物も。将来こんなふうに生活したいよね......と誰に同意を求めるわけでもなく納得。かっこいいことしてるかっこいい人たちがかっこいい家に住んでてよかった。音と、人と、環境が、まったくズレてない。彼らのセンスを信じてて良かった。


Not Not Fun Houseの居間にてブリットと。


Not Not Fun Houseにて。壁にはカセットテープ。

 BrittとNickといろいろおしゃべりしたあと、お腹すいていたのでNNF Houseを後にし、Eagle Rockあたりにある、Brittに教えてもらったタイレストランへ。うまー。それからハリウッドの近くに戻り、Amoeba Musicっていう死ぬほどデカイ、あらゆるジャンルが置いてあるレコード屋さんに行った。90年前後のハウスのレコードを中心に掘ったけど、何時間あっても見きれない。そして古いレコードはほとんどが1枚2ドルで、クリアランスは99セント。安すぎるー。


レコードをディグる。

 夜は昨夜の約束通り、SFV AcidのZaneの家へ。待ち合わせ場所でZaneは絵を描きながら待ってた。彼はスケッチブックを持ち歩いていて、いつでもどこでも絵を描いてる。部屋にもそこら中に絵があって、どれもめちゃくちゃかっこよかった。彼にとって絵は音楽と同じくらいかそれ以上に大切なものなんだろうと思う。不思議で、ちょっと(だいぶ?)変で、でもちゃんと自分の考え方やこだわりを持ってて、そして何より本当は繊細なんだってことが、話してても作品を見ててもわかった。Zaneの家は地下がスタジオになっていたので、アナログシンセやTR-707、TR-909、TB-303などを使ってジャム! 声をサンプリングさせて、と言われて適当に歌ったりしてすごく楽しかった。



SFV Acidの自宅スタジオでセッション!

 そうしてるうちに誰かが家に帰ってきて、誰だろう? と思ったらなんと4ADのINC.のDanielとAndrewが来てた。ここが繋がってるとは思ってなかったのでびっくり。2階に住んでるらしい。ふたりは双子なので顔もそっくりで見分けがつかないくらいなんだけど、Danielが一瞬二階に上がって降りてくると「いま剃った!」とスキンヘッドになっていた。おかげで見分けがつくようになったよありがとう......。

 そのあとはしばらくみんなでダラダラ。INC.たちがご飯を作ってくれたので、お礼に煙草が好きらしいAndrewに日本のマルボロをあげたらすごく喜んでた。それから、僕も何かあげなきゃ、と渡されたのが大量のINC.のロゴ入りコンドーム。なんじゃこりゃ、と思ってよく見ると小さく<inc-safesex.com>のURLが。一体なんのサイトだろうとドキドキしながら、結局帰国してからアクセスしてみたんだけど......。それにしてもゴム作るってすごいセンス。余計好きになった! そんな感じで盛り上がっていると、Andrewが明日よかったら僕たちのスタジオにくる?と言ってくれて、次の日遊びに行くことに。

 そのあとはみんなでDown Townのクラブへ遊びに行った。そこは本当にLAでも最先端の若者たちが集まってるっていう感じで、みんなエッジーで本当におしゃれ、というか、垢抜けていてセクシーだった。この夜、私は楽しさと疲れで飲んでいるうちに緊張の糸が切れたのか、あまりに幸せすぎていきなり泣き出してしまった。みんなびっくりしてどうしたの!? と心配して慰めてくれたんだけど、こんなに素晴らしいアーティストたちがたくさんいて、みんな友だちで、っていうのはそのときの私には東京じゃ考えられないことで、心底うらやましかった。ずっとひとりで引きこもって音楽を作っていたし本当はすごく寂しかったっていうのもあると思う。だからアメリカにきて、あまりにもたくさんの素晴らしい人たちに出会えたことが夢みたいで、号泣しながら、日本に戻りたくない! と思った。

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彼はスケッチブックを持ち歩いていて、いつでもどこでも絵を描いてる。部屋にもそこら中に絵があって、どれもめちゃくちゃかっこよかった。彼にとって絵は音楽と同じくらいかそれ以上に大切なものなんだろうと思う。

3/8
ロサンゼルス4日目。Korallreven/Giraffage @ Echoplex

 この日はLAでふたつめのライヴ。その前にINC.のスタジオに遊びに行かせてもらった。家の地下にあったスタジオとは別の、かなりちゃんとしたINC.専用のプライヴェートスタジオ。わかんないけど、4ADに与えられてるのかなぁ?スタジオは広い倉庫みたいなところで、中は真っ白に塗ってあってとてもきれい。天井からは白い透けた布みたいなのがたくさんぶら下げられていて、彼らの美へのこだわりを感じた。メインの空間にはiMacと、生ピアノ、シンセ、ミキサー、数本のギターとベース、ドラムセットがあって、それとは別にクッションで防音してある小さな歌入れ用の部屋がある。(スタジオの写真は彼らのサイトで見れるよ! でもつい最近レコーディングが終わって引き払っちゃったみたい。)

 ふたりは今新しいアルバムの最後の作業中で、そのなかの何曲かを聴かせてもらった。INC.のアルバムなんてもう聴かなくても最高なのはわかってるけど、やっぱり最高だった。それからふたりは曲を作りはじめた。AndrewがMPCでドラムを打ち込んで、Danielはピアノをひいてる。ふたりはもともと、他のアーティストのライヴのサポートをするスタジオミュージシャン? のようなことをしていたらしく、とても演奏がうまい。私はふたりの生演奏をききながらぼーっとして、このまま死んでもいいなって感じだった。そのくらい素晴らしい空間で、素晴らしい音楽で、ふたりが美しくてかっこよすぎたから! そんな感じでしばらく音を聴かせてもらったり、いろいろしてるうちにライヴのリハに行かなくちゃいけない時間になった。名残惜しかったけど、AndrewとDanielに自分のレコードを渡して、お礼を言って、お別れ。


INC.のスタジオにて。左奥がAndrew、一番右にいるのがDaniel.左手前がリハーサル前に迎えにきてくれたPiperで、右奥に立ってるのはPiperの友だちのJosh.

 この日のライヴはKorallrevenやGiraffageと。同じくUSツアー中のKorallrevenは意外ながら〈Not Not Fun〉が好きらしく、私が彼らのオープニングをつとめさせてもらうことに。場所はEcho ParkというLAのインディーシーンの中心にある、Echoplexという結構大きめの箱だった。私はこの日のライヴ中、実はあまり体調がよくなくて、ダウナーで頭がフラフラになってたんだけど、友だちを連れて見にきてくれてたPiperやBritt, Nick, Zaneたちはみんな暖かく見守ってくれた。


Sapphire Slows LIVE @ Echoplex

 ライヴのあと、私が明日LAを経つから、ということでPiperたちがホテルの屋上のバーみたいなところに連れて行ってくれた。オープンルーフで開放的な中、音楽がガンガン鳴っていて、ダウンタウンが見下ろせる景色のいいところ。夜景がすごくきれいで。きっと彼らなりに、普段行かないような特別な場所に連れて行ってくれたんだと思う。Piperはずっとおしゃべりしてたし、PuroのバンドメンバーのAustinはずっとハイテンションで踊ってる。Zaneはここでもずっと絵を描いてた。みんな同い年くらいで友だちみたいに接してくれたからすごく楽しかったな。LAのシーンでは結構若い人が多かった。Puro Instinctも、SFV Acidも、Suzanne Kraftも、INC.も、みんな20代前半。みんなと離れるのは本当に寂しかったけど、またアメリカに来たら遊ぼうね! 日本にも来てね! と言ってバイバイ。


ホテルの屋上のバーで、Austin, Josh, Piper, 私, Zane。(左から)

3/9
サンフランシスコ初日。Donuts @ Public Works w/Magic Touch & Beautiful Swimmers

 ロサンゼルスからサンフランシスコへ移動の日。朝早く出発。フライトは一時間くらいで、すぐサンフランシスコに到着。空港まではMagic Touch/Mi AmiのDamonが迎えにきてくれた。Damonはツアーのことも助けてくれていたし、アメリカに行くずっと前から連絡を取り合って一緒に曲を作ったりもしていたので、やっと会えたって感じで嬉しい! サンフランシスコでは一緒に作った曲をプレイできるのも楽しみだった。

 この日の夜はDonutsというDamonの友だちのKat(DJ Pickpocket)がオーガナイズしてるパーティでライヴ。とりあえずDamonの家に荷物をおかせてもらったあと、タコスを食べに行った。サンフランシスコではほぼ毎日タコスだったような......そのあとBeautiful SwimmersのAndrewとAriと合流して、アイスクリームを食べたり、公園みたいなところで犬と遊んだりビールのみながら夕方までまったりと過ごす。サンフランシスコにいる間はずっとMagic Touch、Beautiful Swimmers、Katと一緒に遊んでた。

 17時くらいに一旦サウンドチェックへ。会場はPublic Worksという、壁いっぱいに派手な絵が描いてあって素敵なところ。この日のライヴはMagic Touchと私だけだったので、サウンドチェックとセッティングを終えてDamonの家に戻ると、オーガナイザーのKatと、テンション高めのAndre(Bobby Browser)が来てた。Andreは大量のパエリアとサラダを作ってくれて、すごくおいしかった! みんなで腹ごしらえをしたあと、疲れていた私はパーティのオープンまでちょっとだけ寝て、ライヴのため再びPublic Worksへ。ライヴはこのとき3回目だったけど、まだ緊張で頭がぼーっとしてる感じがあって、なかなか慣れない......。

 ライヴのあとは外でAndreと話して、その会話がすごく印象的だった。機材についてきかれたから、Macと、中古のMidiコントローラーと、ジャンクのキーボードと500円のリズムマシンしか使ってないの、というとびっくりしてた。Andre いわく、「音楽を作るっていうこととDJをするのは全然ちがうし、DJをやろうとする人は多いけど作ろうとする人はあんまりいない。お金と機材がないと作れないと思ってる人が多いし、持ってる奴らに限ってみんな『僕はJunoもMoogも808も、あれもこれもたくさん持ってるんだぜ!』って機材ばかり自慢する。じゃあ君の音楽はどうなの? ときくと『それはちょっと......』って、肝心の音楽は作ってなかったりしてね。でも君は少ない機材でもちゃんと自分らしい音楽を作ってるし、もしもっとお金と機材があったらもっとすごいことができるってことじゃん!」私はそんなふうに考えたことがなかったからすごく嬉しかったけど、なんだか照れくさくなってなんて言えばいいのかわからなかった。それでまた「でも、日本にはこんなに素敵なミュージシャン仲間たくさんいないからうらやましいよ」って言ってしまったんだけど、Andreが「僕はOaklandに住んでるけど同じ趣味の仲間たちとミーティングするときは10人もいなくて、多くて7、8人くらいかなぁ? OaklandはHIPHOPのシーンが盛んだからあんまり仲間がいないんだ」と言ってるのを聞いて、どこにいても同じなのかもしれないなぁと思った。

 私の次にはMagic Touchがライヴをして、そのときにDamonと一緒に作った曲もプレイした。初めてで慣れないけど、一緒にライヴをするのはすごく楽しかった。Beautiful SwimmersのDJもかなり最高で、みんなで踊りまくった。思っていたよりディスコっぽくなくて結構ハードな4つ打ちばかりだったのは、最近の彼らの趣味かも。

 同じPublic Worksでは別の階にある大きいフロアで同時に違うイヴェントをやってて、(スタッフのChrisいわく、Burning Manみたいなイヴェント)そっちにも少しだけ遊びに行った。変なコスプレをしたり、変な帽子をかぶったり、頭に角をつけてる人たちがたくさんいて、異常に盛り上がっていた。どのへんがBurning Manだったのかは謎だけど、たぶんあのコスプレみたいな人たちのことを言ってたんだろう......。

 そのあと疲れてきた私はうっかり、階段のところでうたた寝をしてしまった(ほんとに一瞬)。知らなかったけど、アメリカではクラブで寝るのはタブーらしく? いきなりガードマンのいかつい黒人さんたちが3人くらいやって来て引きずり出されてめちゃ怒られた(まじで怖かったー!)。みんな私が疲れてるのを知っててかばってくれたけど、最初なんで怒られてるのかわからず、え? 何も悪いことしてないよ! 状態でした。寝るだけであんなに怒られるとは......。そう、場所によるとは思うけど、アメリカと日本のクラブで違うなぁと思ったところはいくつかあって、「絶対に寝てはいけない(経験済み)」「お酒は2時までしか飲めない」「イヴェント自体もだいたい朝4時までには終わる」「室内は絶対禁煙」っていう感じだったな。

 イヴェントが終わったあとみんなで歩いて帰って、朝7時頃に違うパーティでBeautiful SwimmersのDJがあったけど私は起きられなくてそのまま寝ちゃった。みんなが帰ってきたのは朝9時くらい!

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こんなに素晴らしいアーティストたちがたくさんいて、みんな友だちで、っていうのはそのときの私には東京じゃ考えられないことで、心底うらやましかった。ずっとひとりで引きこもって音楽を作っていたし本当はすごく寂しかったっていうのもあると思う。

3/10
サンフランシスコ2日目。

 みんな帰りが遅かったので、昼すぎまで寝てる。昼ごはんはタコス。とはいえもう夕方だったけど。そのあとはみんなでドライヴ。「どっか行きたいとこある?」と言われて、ほんとは服とかも見たかったんだけど、Magic TouchとBeautiful Swimmersに女の子の買い物付き合わせるのもなぁ、と思って大人しくレコード屋に行きたいと言う。ということで、サンフランシスコで一番有名な通りらしいHaight Streetを通って(通っただけ)、Amoeba Musicサンフランシスコ店へ。LAよりは少し小さいけど、やはりデカイ。みんな大量にお買い上げ。でも私はもうこれ以上買えない......LAでも結構買っちゃったし、重すぎてひとりで運べなくなるから。機材もあるし仕方ないけど悲しいなぁと思っていると、KatとDamonがおすすめのレコードを1枚ずつ選んでプレゼントしてくれた。こういうのは宝物!

 夜は日本料理屋 へ。精進料理(のつもり)のレストラン。みんなたぶん私のために連れて行ってくれたんだけど、揚げ出し豆腐以外はまずかった!でもみんなで精進料理っていうシチュエーションがおもしろしすぎて十分楽しかった。夜はDamonと近くのクラブに遊びに行ったけど、疲れていたのであまり長居せずに帰った。

 みんな本当にレコードおたくで、とくにAndrewは昨日もこの日もめちゃくちゃ買ってた。そして家に帰ると「今日買ったレコード自慢大会」がはじまるのが恒例。なんかそういうのがいいんだよね。やっぱりみんな大好きなんだなと思って。あと、最近はなぜかコクトー・ツインズのCDがお気に入りみたいで、家でもハウスのレコードかけてみんなで盛り上がったあとは必ずコクトーツインズで落ち着いた。

3/11
サンフランシスコ3日目。

 起きてみんなで歩いて出かけて、昼ごはんはまたまたタコス。いいけど! 私はビーフサンドイッチみたいなのを選んだ。そのあとはぶらぶらしながらコーヒを飲んだり、アイスを食べたり、本屋やレコード屋にいってのんびり過ごした。街の小さなレコード屋で、〈Triangle〉からリリースしてるWater Bordersっていうバンドのレコードを買った。彼らはサンフランシスコに住んでて、Public Worksにも来てくれてたけどすごくかっこいい。

 その後は車に乗って、サンフランシスコで有名なGolden Bridgeっていう大きな橋を渡って、Muir Woodsという国立公園に行った。平均樹齢500歳以上のカリフォルニア・レッドウッドの原生林で、気持ちよく森林浴。そのあとグニャグニャした崖の道を走って、サンセットを見るために海へ行く。サンフランシスコの海岸はすごく広かった。車のなかでは大音量で音楽をかけてみんなテンションあがってハイになって、
 めちゃくちゃ綺麗なサンセットを見ながら幸せすぎてこのまま死んでもいいなぁと思った(二度目、いやほんとは三度目くらい)。


サンフランシスコの海岸で。Damon(左)とAndrew(右)と記念撮影!

 夜はみんなでIndian Pizzaを食べに行った。ピザの上にカレーがのってるような食べ物で、アメリカで一番おいしかったかも。サンフランシスコではほとんどダラダラ遊んで過ごしただけだったけど、住むならここがいいなと思えるくらい居心地のいい街で、やっぱり離れるのは嫌だった。でも明日はもうテキサスに移動する日。荷造りをして早く寝た。

3/12
SXSW初日

 朝早くにサンフランシスコを出発。空港へ。飛行機に乗ってすぐロサンゼルスやサンフランシスコでのことを思い出していると、ホームシックならぬカリフォルニアシックになって、なぜかひとりで号泣してしまった。飛行機のなかでだいぶ怪しかったと思う。ロサンゼルスもサンフランシスコも両方だけど、カリフォルニアは最高だった。本音を言うと、疲れもピークだったテキサスでの最初の数日よりもずっとずっと楽しかったし、すぐにでもまた行きたいと思った。泣き止んで気持ちが落ちついた頃にはソルトレイクに着いて、乗り換えてテキサスのオースティンについたのは夕方頃。

 オースティンにいる間は広い家に住んでる若い夫婦のエクストラルームを借りてステイした。家について挨拶したあと、バスや電車でSXSWのメイン会場のほうへの行き方を教えてもらって、夫婦に連れられてタコスを食べに行った(また!)。でもさすがに、本拠地テキサスのタコスは格別にうまい。フィッシュタコスっていう魚のタコス。ステイ先のエクストラルームは部屋もバスルームもすごく綺麗でずっと快適だった。この日はライヴを見たりすることもなく終了。

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みんな本当にレコードおたくで、とくにAndrewは昨日もこの日もめちゃくちゃ買ってた。そして家に帰ると「今日買ったレコード自慢大会」がはじまるのが恒例。なんかそういうのがいいんだよね。やっぱりみんな大好きなんだなと思って。

3/13
SXSW2日目。ここからは適当なライヴ・レヴューがメインかも!

 昼間は中心のストリートからちょっと歩いたところにある小規模な野外ステージでXray EyebellsやBig Dealを見る。芝生でビール飲んでごろごろしながら見たBig Dealはよかったな。アメリカ、テキサスで聴くUKの感じが新鮮で。男女2人組のメランコリックで優しい空気感。

 夕方からはこのあと何度も行くことになる会場Mohawkで『Pitchfork』のパーティへ。ここ、中心部にある結構メインでいい会場なんだけどいかんせん人が多くて入るのも大変。 Shlohmo,、Star Slinger、Sun Araw、Trustを見る。Shlohmoは若手のイケメンビートメーカーということでわくわくしてたけど込みすぎててほとんど顔見えなかった。音はもちろんいいよ! Trustは〈Sacred Bones〉からの「Candy Walls 」が大好きで本当に楽しみだったんだけど、最前列のファンたちがなんというかダサくて、テンションさがってしまった......逆にStar Slingerは頑張って真ん前まで見に行くと、気付けば周りに熱狂的なデブとオタクとオッサンしかいなくて妙に納得、より大好きになった。

 夜も更けてきて、そのあとは会場忘れたけど別のとこでSurviveとBodytronixを見た。どっちも最高。Surviveは見た目怖い人たちがヴィンテージのドーンとしたアナログシンセを横に4台並べてプレイ。最前列のファンもやばげな人たちが踊り狂ってていい感じ。Bodytronixはオースティンの2人組のアーティストで、見るまでは知らなかったのだけれど、そこにいた同じくオースティン在住のPure XのボーカルNateに「オースティンで一番かっこいいから見たほうがいいよ!」と激押しされ見てみると最高にかっこよかった。SFV Acidをもっとハードにした感じの音で、どツボでした。


Survive @ SXSW

3/14
SXSW3日目。

 昼間はまたMohawkへ。大好きなBlood Orangeを見る。ひとりでトラックを流しつつ、ギターソロを弾きまくりながら歌うスタイル。ステージから降りて激しくパフォーマンスをしているとき、記者会見並みにみんな写真を撮りまくっていてなんだかなぁという気分に。私は自分のライヴ中にパシャパシャ携帯で写真をとられるのが嫌いでそういうの見てるといつも嫌になる。Pure XのNateもライヴ中に写真撮られるの本当は嫌いなんだって言ってたなぁ。まぁその話はいいとして......人混みに疲れてしまった私はしばらくダウンして、夜になり同じストリートにあるBarbarellaでD'eonを見た。そのあと一度抜けて違うクラブに行き、Italians Do It Betterのドン、Mike SimonettiのDJで飲みながら踊る。どこに行ってもそうだったんだけど、私が行ったところには日本人が全くいなくて踊っても何してても浮いてた。そのあとBarbarellaに戻って見たPure XとBlondesは最高だった。Pure Xのサイケデリックでノイズな夢の中、ボーカルNateの唐突なシャウトは心のかなり奥の方にガツンときたし、NYからのBlondesはあの音で全部ハードウェアで演奏してるっていうのが超かっこいい。ああいうダンス的な音楽はもはやラップトップやMidiを使ってやるほうが多いと思うから。

3/15
SXSW4日目。

 またまたMohawkへ。もうドアマンに顔を覚えられている。ほんとはFriendsが見たかったんだけど、混みすぎてて並んでるうちに終わっちゃった(涙)ので、SBTRKTとCloud Nothingsを見た。SBTRKTは「?」だったけど、Cloud Nothingsはグランジな感じで演奏もよくてかっこよかった。そのあとメインストリートとは逆のサイドにある会場まで行って、Dirty Beachesを見る。なんというか本当にアジアの星だね、彼は。カナダだけど。見た目に関してだけ言うと、アジア人ってそれだけで普通は欧米人よりダサくなってしまうような気がするけど彼は違う。最高にエッジーでかっこいい。彼になら殴られてもいい! いや、殴られたい! そしてそこには同じくカナダのJeff Barbaraもいて、話していると彼らが仲良しなことが判明。Dirty BeachesとJeff Barbara、音は全然違うけど、なんかいいね。スタジオをシェアしたり、LAでのSFV AcidとINC.みたいにルームシェアしてたりとかそういうの。東京はどうだろう?なんて思ったり。音が違っても心が通じてる、そんな感じの仲間がたくさんいればいいね。

 夜はRed 7という会場で〈Mexican Summer〉ショーケース。〈Mexican Summer〉rはもちろん大好きだから本当は全部見たかったんだけど、この日は本当に疲れていて、最初のPart Timeだけ見て帰ってしまった。Light Asylumも、Oneohtrix Point Neverも、The Fresh & Onlysも、Kindnessも、死ぬほど見たかった! けど、ここまでの旅の疲れと、なんともいえない孤独感と、SXSWの人混みとクレイジーな祭り状態にしんどさがMAX限界状態だったのです。ちなみにPart Timeはめちゃくちゃダサかった(良い意味で)。

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私は自分のライヴが終わったあと、トリのPeaking Lightsを見ながら、明日には日本に帰るのかと思うと悲しくなりすぎて、またホロリ。何度目? 本当に帰りたくなくて。

3/16
SXSW5日目。NNF House Show@Hounds of Love Gallery

 あまりに疲れたのでこの日はライヴは見に行かず、自分のライヴのために体力温存&準備しながらまったり。

 夜。SXSWで最初のライヴはNNFファミリーの身内感あふれるハウス・パーティ。Hounds of Love GalleryはギャラリーではなくNNFのヴィデオなどを作っている映像作家Melissaのギャラリーっぽい自宅。そこによく集まってるらしいMelissaとそのアートスクール仲間たちはみんな映像を作ったり絵を描いたりしてる子で、年も私と同じくらいだったので話しやすかった。この日のうちにCuticleのBrendan、Samantha GlassのBeau、Willieと仲良くなり、彼らと最後の2日間遊び続けることに。

 ライヴはオースチンの漢(おとこ)、Xander Harrisからスタート。VJで怪しげな映像を流しつつ、途中から脱いでいた。彼の人柄は野性的なのか律儀なのかよくわかんない感じでおもしろかった。その次はCuticle! 話してると普通なんだけど、ライヴしてるときはなんともいえない色気があってぞくぞく! Cuticleは似たような音のアーティストたちのなかでもなんとなく奇妙さと個性があって好き。アイオワに住んでるからカリフォルニアのSILKアーティストたちとは場所的にも離れているけど、離れたところでひとりマイペースにやってるとこも共感できるのかな。Samantha Glassはゆったりとした、ディープでサイケでギターの音が溶ける心地のいいサウンド。私はこの日トリで、そこそこ飲んでいたし音響などの環境も悪かったけれど、とくに問題なくプレイできた。床でやったけどね。この日のライヴはMelissaのVimeoで見ることができるので興味ある人はこちらからどうぞ。(https://vimeo.com/40269662


ライヴ中はセクシーなCuticle @ Hounds of Love Gallery

 ハウス・パーティが終わったあとはCuticleとSamantha Glassと違うパーティに遊びに行って、そこでSleep Overをみた。他のメンバーと別れひとりになったSleep Over、心無しかライヴも悲しく哀愁が漂っている。そして変な弦楽器を悲しげに弾いている。嫌いじゃない......。そのあとはお腹がすいたのでみんなでスーパーにいって、ご飯を買ってかえった。

3/17
SXSW6日目。最終日そして最後のライヴ。Impose Magazine Presents The Austin Imposition III @ Long Branch

 前日からもはやお祭り騒ぎのSXSWに疲れ果て、他のアーティストのライヴを見に行くことを放棄している私。この日、昼間はCuticleのBrendan、Samantha Glassのふたりとその友だちの女の子たち6人くらいで車に乗って郊外へ遊びに行った。なんとかSpringっていう池なのか川なのかよくわからないところで泳いだり飛び込んだりして(飛び込んではしゃぎまくってたのは主に男たち)、遊んだあとはSXSWに戻って会場入り。アメリカで最後のライヴだ......。Cuticle、Xander Harris、Peaking Lightsとは二度目の共演。この日初めて見たキラキラで怪しさMAXの女子ふたり組Prince Ramaのパフォーマンスはすごかった。ライヴっていうか、儀式。ダンスが最高で、取り巻きファン的な男の人たちもかなり熱狂的だった。Tearistも力強いというか強烈なインパクトがあって、ヴォーカルの女の人の髪が扇風機的なものでずっとTM Revolution並になびいていた。私は自分のライヴが終わったあと、トリのPeaking Lightsを見ながら、明日には日本に帰るのかと思うと悲しくなりすぎて、またホロリ。何度目? 本当に帰りたくなくて。でもみんなに背中を押されつつなんとか帰って、無理矢理荷造り......。

3/18
帰路

 早朝に出発、したにも関わらず飛行機が5時間くらい遅れてやってきて、デトロイトで乗り換えできなくなってしまった。よくあることらしいんだけど、想定外のホテル一泊。ここで帰るのが遅れても嬉しくないよ。結局丸一日半ほど遅れて日本に帰国。ただいま。

あとがき

 日記、めちゃくちゃ長くなっちゃった。読んでくれてありがとうございました。行くまでは大変だったけど、楽しすぎて何度も日本に帰りたくないと思った。でも向こうのアーティスト同士のつながりやシーンを見ていて、東京でもこれからやっていけることがたくさんあるんじゃないかなと思ったし、離れた場所にたくさんの仲間がいることがわかって、どこにいても何をしてても、ちゃんとつながっていけるんだなぁと実感。それが一番の収穫かな? とにかく行ってよかった。またいつでも行けるようにこれからも音楽作っていこうと思います。

オワリ

 

※この続きは......というか、彼女のインタヴューは、紙版『ele-king vol.6』にてご覧ください!


Chart by Newtone Records 2012.01.24 - ele-king

Shop Chart


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CHRIS WATSON

CHRIS WATSON El Tren Fantasma-The Signal Man's Mix- TOUCH (UK) / 2012/01/18 »COMMENT GET MUSIC
リズムやビートこそ無いものの、イマジナリー広がる、まるでTRANS EUROPE EXPRESS的な魅惑の鉄道音フィールドレコーディング12インチ・アナログ盤。クリス・ワトソン爺によるメキシコが舞台のロードムーヴィー的ロマンも広がる幽霊鉄道列車サウンドスケープ。元キャバレー・ボルテール、元ハフラー・トリオ、BBCの音響技師であり、フィールドレコーディング作家の第一人者である信頼のクリス・ワトソンの2011年のソロ新作「El Tren Fantasma」からのまさかの12inchアナログ盤がカット。相変わらずのテーマ&セッティングの妙。さすがです。太平洋から大西洋、海岸から海岸へとゴースト・トレインでの国を横断。歴史を感じながらの音の旅。今作もサラウンドな高感度マイクによるダイナミックで繊細で立体的な音像もスバラシスギル。ミュージック・コンクレートの創始者ピエース・シェフェールにインスパイアされて制作された作品というのも納得の圧倒的な迫力の芸術的環境音。Andrew Weatherall絶賛も納得。ソウルまでも感じさせてくれる鉄道音。Ride the rhythm of the rails on board.

2

CHRIS WATSON

CHRIS WATSON El Tren Fantasma TOUCH (UK) / 2012/01/18 »COMMENT GET MUSIC
これはCD。世界の車窓から。クリス・ワトソン爺によるメキシコLos MochisからVeracruzへとわたる幽霊鉄道列車の旅。ロード・ムーヴィー的ロマンを馳せるサウンドスケープ。フィールドレコーディングの逸品。元キャバレー・ボルテール、元ハフラー・トリオ、BBCの音響技師であり、フィールドレコーディング作家の第一人者である信頼のクリス・ワトソンの2011年のソロ新作です。相変わらずのテーマ&セッティングの妙。さすがです。太平洋から大西洋、海岸から海岸へとゴースト・トレインでの国を横断。歴史を感じながらの音の旅。今作もサラウンドな高感度マイクによるダイナミックで繊細で立体的な音像もスバラシスギル。ミュージック・コンクレートの創始者ピエース・シェフェールにインスパイアされて制作された作品というのも納得の芸術的環境音。10トラック65分。Andrew Weatherallも絶賛も納得。ソウルまでも感じさせてくれる。Ride the rhythm of the rails on board.

3

MARK McGUIRE

MARK McGUIRE Solo Acoustic Volume Two VIN DU SELECT QUALITITE (US) / 2012/01/18 »COMMENT GET MUSIC
2009年にアナログのみ少数のリリースだったMARK McGUIREの、オハイオの自宅で録音されたアコースティックなソロ・ギター・バラードな作品集「VDSQ-Solo Acoustic Vol.2」が待望のリプレス。全5トラック。草原を駆け抜けるかのようなフォーキーで爽やかな作品から、ECM的な静謐な世界観から、さらには瞑想的でもある郷愁のアコースティックなギターの味わいをじっくりとお楽しみできます。特に12分間のアコースティック版E2-E4的な「Burning Leaves」のナチュラルなトリップ感覚にはおもわずとけそうになってしまいますのでご注意をくださいませ。

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ONEOHTRIX POINT NEVER

ONEOHTRIX POINT NEVER Replica SOFTWARE (US) / 2012/01/18 »COMMENT GET MUSIC
傑作。新しい音楽が登場しました。またまた進化したOneohtrix Point Never新作。重量感溢れるホワイト・ヴァイナルのアナログ盤。 Daniel LopatinことOneohtrix Point Neverの新作。ドローン、ミニマルなどエクスペリメンタルでエレクトロニクス・ミュージックながらクラブ・ミュージックを通過したドラマチックかつストーリーテリングな圧倒的センスで光り輝いている。エレクトロニクスとサンプリングのうっとりする音楽が奏でられている。今年の重要作のひとつであり、新時代のメディテーション・ニューエイジのひとつ。そしてサイケデリック。自身のSoftwareからのリリース。アナログ盤は高音質の重量盤で、1000枚限定ナンバリング入り。ホワイト・ヴァイナル。MP3データ・ダウンロードコード・カード付き。

5

HARMONIOUS THELONIOUS

HARMONIOUS THELONIOUS Drums Of Steel EP ASAFA (GER) / 2012/01/18 »COMMENT GET MUSIC
クリック・ハウス以降のシーンで活躍したANTONELLI ELECTRやRHYTHM MAKER名義で知られるSTEFAN SCHWANDERのプロジェクト HARMONIOUS THELONIOUSの新作。アフリカのリズムとライヒらのミニマル・ミュージックに影響を受けているそうで、アフリカの民族楽器の音色を使っただけのアフリカ風のテクノではなく、打ち込みながらポリリズムを取り込んでいて不思議なリズム感覚。

6

SATWA

SATWA Lula E Lailson MR BONGO (UK) / 2012/01/16 »COMMENT GET MUSIC
南米サイケの秘宝!弦楽器が描く、ブラジル70sのカルトな名盤がアナログでリマスター再発。先立って再発されているLULA CORTES & ZE RAMALHO「Perbiru」, MARCONI MOTAROのアルバムと並ぶLULA CORTES関連重要作。LULA CORTESによるシタール、 12弦ギターの Lailsonの二人による夢のような音世界。サイケデリックな桃源郷!

7

MARSHALL MCLUHAN

MARSHALL MCLUHAN The Medium Is The Massage FIVE DAY WEEKEND (US) / 2012/1/6 »COMMENT GET MUSIC
マクラーハンの名著「メディアはメッセージである」を、マクラーハン自身が朗読、JOHN SIMONが音楽を担当しテープ・コラージュ、SOUND FXを駆使して作り上げた、ポップ・カルチャーにおける実験エディット・ミュージックの金字塔として愛され続けてきた名作!EDANやMR.CHOPをリリースしてきたFIVE DAY WEEKENDから再発。実験音楽フィールドで行われていたテープ編集の手法を導入しステレオフォニック・サウンドのトリック、サイケデリックな効果を実験したサウンドは今聴いてもめちゃフレッシュ!DJ SPOOKY(PAUL D. MILLER)とMICHAEL VASQUEZが主要ライナーノーツを手掛け、DJ FOOD,ジェロ・ビアフラ, STEINSKI、MC5の初代マネージャーにして詩人JOHN SINCLAIR、ウッディ・アレン,MATMOS等々が今回の再発にあたってコメントを寄せています。

8

PEAKING LIGHTS

PEAKING LIGHTS Remixes WEIRD WORLD (UK) / 2011/12/21 »COMMENT GET MUSIC
Newtoneでもいまだロングセラーを続けるPEAKING LIGHTS「936」からのリミックス12inchついに入荷しました!収録されている4曲全てがアルバムに収録されている楽曲のリミックスで、オリジナルの持つロウファイダブサウンドをそれぞれに解体&構築!全然古臭くなっていないADRIAN SHERWOODに、シンセディスコとチープなリズムマシンがクールなDAM-FUNK!そして白眉はなななんとクラウドラップ台頭MAIN ATTRAKTIONZリミックス!一瞬参加に目を疑うまさかまさかのトビ!ブチアガってる我々を見て「ヨーヨー、こっちに来て一緒にKUSHどうだ?」な最新アンダーグラウンドコネクションに痺れざるを得ません。この事実は相当素敵だ。

9

JUJU & JORDASH / MORPHOSIS

JUJU & JORDASH / MORPHOSIS Dekmantel Anniversary Series: Part 1 DEKMANTEL (HOL) / 2012/1/18 »COMMENT GET MUSIC
アムステルダムのクラブParadisoで行われているテクノ~アンダーグラウンド・ハウス、エレクトリック・ミュージックの重要パーティーDekmantel主宰のレーベル5周年記念のコンピレーションのシングルカット第1弾。SIDE-Aはレーベルの主要アーチスト、JUJU & JORDASH。B-SIDEはMORPHOSIS。両者ともに中東出身。JUJU & JORDASHの「Afircan Flower (Cosmic Dub)」は、コズミックなトーンのヴィブラフォンやシンセが織り成す美しい世界。極上です。MORPHOSISのオルガンの音色の鍵盤をフィーチャーしたストイックなテクノも注目。

10

DESTO, CLOUDS & JIMI TENOR feat.CHA CHA

DESTO, CLOUDS & JIMI TENOR feat.CHA CHA The Bird ・Eightfold Path 502 (UK) / 2012/01/18 »COMMENT GET MUSIC
さすがJIMI TENOR。チーム参戦での新作登場です。テーマは中国。オリエンタルでエキゾチック&ミステリアス。北欧フィンランドと中国が繋がる秀逸で変態なミステリアスなエキゾチック・ソウルSIDE-A「The Bird」そして上海で録音されたという中国伝統楽器が摩訶不思議に妖しく淫美に導入された、DUBSTEP、BASS以降の新感覚のDEEP HOUSEであるSIDE-B「Eightfold Path」が切れ味鋭くシャープなリズムと圧倒的なオリエンタルな存在感で迫り絡みます。さすが。。。RwinaやRampからのリリースで知られるDESTOと、そしてDeep MediでおなじみCLOUDSとのトリオでのチーム参戦とはいえ、これは強力です。

interview with Anchorsong - ele-king


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 アンカーソングを名乗る吉田雅昭は、ロンドンで暮らしながら音楽を活動をしている日本人青年だ。本サイトでもたまにUKの音楽事情をレポートしてくれている
 同じコスモポリタンの都市でも、ベルリンやニューヨークと違って、ロンドンは日本人が音楽活動しやすい場所ではない。世界でもっともポップ文化を産業としている国でありながら、いろいろあそこは大変だ。アンカーソングは彼の地で4年も地道に活動している。
 この度、アンカーソングはロンドンのレーベル〈トゥルー・ソーツ〉(クァンティックで有名)を契約を交わし、インターナショナル・デビューを果たした。その作品『チャプターズ』が、彼にとっての初めてのアルバムでもある。
 『チャプターズ』は彼の叙情詩だ。トレードマークであるビートの"生演奏"をもとに、ダンサブルな曲からアンビエント調のものまでと起伏に富んだ展開をみせている。高速で飛ばすミニマル・テクノ、ファンキーなダブステップ楽団、深夜の孤独なIDM、メランコリックなダウンテンポ、壮麗なエレクトロニック・ジャズ......などなど。いままでアンカーソングといえば迫力ある生打ち込みのビートでリスナーの目と耳を集めていたものだが、『チャプターズ』ではメロディも光っている。"ビフォア・ジ・アップル・フォールズ"のように官能的なストリングスの音を活かしたメロウな曲も耳に残る。"デイブレイク"のようなグルーヴィーな曲からも平和的な微笑みが見えてくる。
 ばつぐんにキラーな曲がひとつ入っている。それは"プラム・レイン"という曲だ。IDMテクスチャーと彼のスローなビート、そしてジャズのコードと美しいメロディが重なる曲で、しとしとと降る綺麗な雨を想わせる。最高の状態のアズ・ワンの曲とも似ている。
 ロンドンにいるアンカーソングに話を訊いてみよう。

この国には日本のようなはっきりとした四季の移り変わりがない分、"風情"っていう感覚が希薄なんです。メロディやプロダクションも含めて、そういう日本人特有の繊細なニュアンスがこの曲には含まれているんです。

いま、どんな感じで過ごしてますか? ギグはどのくらいの頻度でやっているのでしょう?

吉田:アルバムが海外でリリースされたばかりで、その反響を楽しんでいるところです。海外ではデビュー作ということもあり、僕のことを最近知ったという人が多くて、日本でデビューEPをリリースしたときのフレッシュな気分を感じています。ギグは平均だと月に2、3本ですが、来年2月からはツアーに出る予定です。今はその準備を進めつつ、新曲を書き溜めているところですね。

2011年の吉田くんにとっての最高の思い出を教えてください。

吉田:やっぱりフル・アルバムをワールド・ワイドにリリースできたことですね。活動をはじめた頃から数えると7年近くかかったんですが、自分が本当に作りたいと思っていたものを形に出来たと思うし、それを自分の名刺代わりの1枚として世に送り出すことができたことに、たしかな手応えを感じたので。

今回がインターナショナルなデビュー・アルバムとなるわけですが、吉田くんのなかではやっぱある程度の達成感がありますか? ある意味ではこれをひとつの目標に渡英したわけですよね?

吉田:そうですね。僕は音楽にのめり込み始めた10代の頃から基本的に洋楽ばかり聴いていたので、そういう海外のアーティスト達と同じ土俵で勝負したいという思いが、東京で活動を開始した頃からずっとありました。渡英を決めた時に自分の中でデッドラインを定めて、それまでにワールドワイドに作品をリリースすることが出来なかったら、日本に戻って来ようと決めていたので、何とか達成できて良かったですね。

当然、東北の震災と福島原発事故はロンドンで知ったわけですが......。

吉田:地震のあとしばらくはやっぱり落ち込んでいたし、自分が海外で生活しているということに対してそれまで感じたことのなかったような疑問を抱いたりもしましたが、それが作品の制作に影響を及ぼしたということはないと思います。あの時点で作品がすでにほぼ完成していたというのもありますが、僕はあまり自分の個人的な感情や心情を作品に投影するタイプではないので。とは言え、ある程度は無意識のレベルで作品に現れてしまうものなのかも知れませんけど。

今回〈トゥルー・ソーツ〉と契約するにいっった経緯を教えてください。

吉田:いちばんのきっかけはボノボのサポートを数回に渡って務めたことだと思います。彼はデビュー作を〈トゥルー・ソーツ〉からリリースしていて、いまも親交が深いようなので。それがきっかけで名前を知ってもらって、未発表の曲を聴かせて欲しいと言われて、その時点でほぼ完成していたアルバムをまるごと送ったんです。結果的に内容に手を加えることなく、そのままの形でリリースしてもらえることになったんです。

〈トゥルー・ソーツ〉の音を特徴づけるのは、ソウル・ミュージックやジャズ、ラテンといった音楽からの影響ですが、それまでのアンカー・ソングの音楽性とは開きがあるようにも思いました。自分ではそのあたりどう考えていましたか?

吉田:曲を送った時点では、正直気に入ってもらえるかどうかというのは半信半疑でしたね。レーベルのコンセプトに沿った曲もあるとは思っていたけど、ちょっと違うものも含まれていたので。

実際、音楽性はそれまでとは明確な変化がありましたね。なによりも多様になったし、〈トゥルー・ソーツ〉的な音になっていますが、これは吉田くんがある程度レーベルの方向性に合わせた感じですか? 4曲目の"ダークラム"にしても"プラム・レイン"にしても、コードはジャズからの影響だと思うし、それとも吉田くん自身のなかにジャズやソウルの要素を取り入れた洗練という方向性があったのでしょうか?

吉田:先にも述べた通り、彼らと契約した時点でアルバムはほぼ完成していたので、意図的に彼らのカラーに合う曲作りをしたということはないんです。でもレーベル側がとくに気に入ってくれたのはやっぱり"ダークラム"や"プラム・レイン"といった、ジャズのテイストがある曲でしたね。今回の作品のコンセプトのひとつは「ミニマルであること」なんですが、短いサイクルでのループを組み立てる際に、ポップス的なコード進行を使うとどうしても冗長なものになってしまいがちなので、それに対する打開策のひとつとして、ジャズっぽいそれを導入したというのはありますね。

"プラム・レイン"が本当に美しい曲で、聴いていると綺麗な雨の風景が見えるようです。いま、日本で雨というと原発事故の影響で恐怖があるのですが、"プラム・レイン"は汚染されてない、魅力的な雨を感じます。IDMのテクスチャーと、吉田くんのシンプルなビート、そして素晴らしいメロディがありますね。この曲についてのコメントをください。

吉田:"プラム・レイン"というタイトルは、"梅雨"をもじったものなんです。もちろん実際にはそんな言葉はなくて、駄洒落みたいなものなんですけど。ロンドンで雨模様の日が続く季節に書いた曲で、それが何となく日本の梅雨時の風景を思い起こさせるなって。この国には日本のようなはっきりとした四季の移り変わりがない分、"風情"っていう感覚が希薄なんです。メロディやプロダクションも含めて、そういう日本人特有の繊細なニュアンスがこの曲には含まれているんです。

日本が恋しくなったことはあると思いますが、今回のアルバムにそういう思慕のようなものは出ていると思いますか?

吉田:とくにないと思いますね。この国に来て4年経ちましたけど、いまはまだ日本のことを恋しく思う気持ちよりも、この国のことをもっと知りたいという思いの方が強いですからね。

あるいは、ロンドンで活動しながら吉田くんのなかでも変化があったと思うのですが、どのような影響や、考えの変化があったのかなど、そのあたり、詳しく教えてください。

吉田:もっとも大きな変化は「ライヴ・アクトとしての自分」っていうルーツに立ち戻ったことだと思います。それまでロンドンのアンダーグラウンド・シーンの刺激を吸収して、音楽性の幅を広げることばかり考えていたんですが、ライヴを重ねるうちに、自分が伸ばすべきところはやっぱりそこにあると思うようになったんですよね。レコード契約をとるまでには時間がかかったけど、現場での手応えは常に感じていたので。今回のミニマルというテーマも、僕の基本のセットアップだけでステージで再現できることっていう、ある意味自らに課した制限の中から生まれたものでもあるんです。

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僕自身はよくクラブにも遊びに行くし、見えにくいところでそういうシーンからの影響も反映させてはいるんです。たとえば今回の作品で言うと、ベースラインにサブベース的な、通常のベースよりも主張の少ない音を多用しています。


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ele-kingでのレポートをいつも楽しみにしているのですが、たとえばボノボと一緒にやった話などは、今回のアルバムの音楽性にも通じますよね。彼のようなサウンドは、吉田くんにとっては同士のような感じなんでしょうか? とくに今作におけるストリングス系の音などは、彼らと似たものを感じます。

吉田:昔から好きなアーティストではあったし、競演できて嬉しかったのはたしかですが、自分ではそれほど音楽的に接点を見出しているわけでもないんです。彼の音楽はとてもオーガニックだけど、僕はもう少し棘のある方向性を目指しているので。とは言え、ファン層はやっぱりちょっと被っているみたいですけどね。

ボーナス・トラックの"アムレット"は壮大なメロディが印象的な美しい曲ですね。ボーナストラックにこれを選んだ理由を教えてください。

吉田:個人的にも好きな曲ではあるんですけど、この曲は先に述べた「ミニマル」っていうコンセプトにそぐわなかったんです。でも何かしらの形でリリースしたかったので、ボーナス・トラックという形で収録できて良かったと思っています。

ダブステップのようなハードなダンスの現場というよりも、より大人びたオーディエンスに向けている音楽だなと思ったのですが、そこは意識しましたか? ミュージックホールのような場所でやっていることがけっこう書かれていますし。

吉田:長く楽しめる作品にするということは意識しているので、そういった印象を与えるのかもしれないけど、僕自身はよくクラブにも遊びに行くし、見えにくいところでそういうシーンからの影響も反映させてはいるんです。たとえば今回の作品で言うと、ベースラインにサブベース的な、通常のベースよりも主張の少ない音を多用しています。あとはリッチなダイナミクスを持つ音と、いかにも打ち込みっぽい無機的な音を同居させることなんかもそうですね。"プラム・レイン"なんかがいい例ですが、あの曲はリンスFMのOnemanとか、現場で活躍するDJからもサポートしてもらって、それがとても嬉しかったですね。

一時期グリッチが流行ったことがありましたが、ああいう音を汚すことをまったく取り入れない理由は何でしょうか?

吉田:単純に必要性を感じないからですね。自分ではたまにグリッチーなものも聴いていますが、僕の音楽には必要のない要素かなと。たぶんそれはやっぱりライブを意識した曲作りという部分から来ているんだと思います。ああいう音はやっぱりただ「再生する」ものであって、「演奏する」ものではないと思うんです。

なるほど。ポップということをどのように考えていますか? たとえばクラッシュさんのような人がマグネティック・マンのようなことをやったら、消費されて終わっていたと思うんですよね。アンダーグラウンドだからこそ消費されないで生き延びているといったアーティストはUKにはたくさんいると思います。

吉田:僕はポップなものもけっこう聴いているほうだと思うし、メインストリームの音楽にもそれなりに気を配っているので、とくにネガティヴな印象を持ってはいないですね。やっぱりわかりやすいことというのは、多くのリスナーにとって魅力的な要素だと思うので。とは言え、やっぱりそういうアーティストの息が短いということは事実だと思うし、だからこそクラッシュさんのようなブレない人は長くキャリアを続けられるんだと思います。そういう意味でも、ジェームス・ブレイクが今後どんなルートを辿っていくのかということは、個人的にもとても気になりますね。僕は彼のポップな面もハードコアな側面も両方とも好きなので。

『チャプターズ』というアルバムには、どんなメッセージが込められているのでしょうか?

吉田:各楽曲にこれといったメッセージがあるわけではありませんが、『チャプターズ』とうタイトルは、各楽曲がそれぞれが異なるストーリーを展開しながらも、全体として大きなひとつの流れを作り上げている、そういうニュアンスを含んでいるんです。作品を最初から最後まで通して聴いたときに、短い旅を終えたような印象を持ってもらえるような、そういう自然な流れのある作品にすることを強く意識しました。

ゴス・トラッドのように、日本にいながら国際的な評価を得ているミュージシャンはこのネット社会では、今後も増えていくでしょう。たとえば最近では東京の〈コズ・ミー・ペイン〉というレーベルのジェシー・ルインという若いアーティストは、東京にいながら『ガーディアン』で紹介されています。こうしたデジタル・メディアが距離を縮めた現在においても、ロンドンを拠点とする理由は何でしょうか?

吉田:トクマルシューゴさんなんかもそうですよね。先日彼のロンドン公演に遊びに行って来たんですが、ソールドアウトだったし、とても盛り上がっていました。僕がロンドンに拠点を置く理由は、単純に僕がいち音楽ファンとして、この街のシーンに魅力感じているからですね。やっぱり現場でしか養われない感覚というのは確かにあると思うので。先にも述べた通り、僕は見えにくいながらも、そういう同時代性を感じさせる要素を自分の音楽にも反映させるようにしているので。

ところでUKの暴動についてはどのように思っていますか? いろいろな意見がありますが、吉田くんの意見も聞かせてください。

吉田:報道によってはイギリスの景気の悪さや、保守政権による政策にやり場の無い不満を感じている市民が団結した結果だとされているみたいですが、実際に大きな被害が出たのは貧困層が密集しているいち部の地域だけだし、あれがイギリス国民の大多数の意思によるものではないと思います。ただ騒ぎたい人びとがいて、ひと握りの人たちがそれに便乗したということだと思います。とはいえ、もちろんそういう事態を招いてしまうような風潮がいまのイギリスに漂ってしまっているのは事実だと思います。

ビョークの『バイオフィリア』は吉田くん的にはどうでしたか?

吉田:個人的には期待していたほどの作品ではなかったですね。マルチメディアを駆使するなど、作品のコンセプトには彼女のアーティストとしての野心が反映されているのかもしれないけど、実際のアルバムに収録されている楽曲郡には、かつてのような輝きを感じることが出来なかったので。

最後に2012年の豊富をどうぞ。

吉田:やっぱりたくさんライヴをしたいですね。2月からはヨーロッパとUKを回るツアーに出ます。4月には日本に行く予定で、4月21日、22日にスタジオコーストで開催される〈ソナー・サウンド・トーキョー〉に出演することが決定していて、いまからとても楽しみです。

じゃあ、そのときに会えるのを楽しみにしています。最後に吉田くんにとっての2011年のトップ10アルバムを教えてください。


Top 10 Albums of 2011 by Anchorsong
1. Feist "Metals"
2. Lykke Li" "Wounded Rhymes"
3. James Blake "James Blake"
4. Sandro Perri "Impossibole Spaces"
5. Gang Gang Dance "Eye Contact"
6. Oneohtrix Point Never "Replica"
7. Jay-Z & Knaye West "Watch the Throne"
8. Little Dragon "Ritual Union"
9. Zomby "Dedication"
10. Jens Lekman "An Argument With Myself"

Mike Paradinas - ele-king

Mike Paradinas Top 30 2011
マイク・パラディナス「2011年トップ30」


1
Kuedo - Severant (Planet Mu)

2
DJ Diamond - Flight Muzik (Planet Mu)

3
Machinedrum - Room(s) (Planet Mu)

4
Hype Williams - One Nation (Hippos In Tanks)

5
James Ferraro - Farside Virtual (Hippos In Tanks)

6
Various - Bangs & Works Vol.2 (Planet Mu)

7
Burial - Street Halo (Hyperdub)

8
Ekoplekz - Fountain Square EP (Mordant Music)

9
Anti-G - Kentje'sz Beatsz (planet Mu)

10
The Miracles Club - Light Of Love (Cutters)

11
Ital - Culture Clubs (Lovers Rock)

12
Xeno & Oaklander - Sets & Lights (Wierd Records)

13
Oneohtrix Point Never - Replica (Mexican Summer)

14
Rustie - Glass Swords (Warp)

15
Cooly G & Simbad - Landscapes (Hyperdub)

16
Protect-U - World Music (Future Times)

17
Maria Minerva - Cabaret Cixous (Not Not Fun)

18
Hudson Mohawke - Satin Panthers (Warp)

19
Slugabed - Moonbeam Rider (Ninja)

20
Clams Casino - Rainforest (Tri Angle)

21
Various - Gene Hunt Presents Chicago Dance Tracks (Rush Hour)

22
FaltyDL - You Stand Uncertain (Planet Mu)

23
Floating Points - Faruxz (Eglo)

24
Blawan - Getting ME Down (Unknown)

25
Darq E Freaker - Cherryade (Oil Gang)

26
Zomby - Dedication (4AD)

27
Ayshay - Warn-U (Tri Angle)

28
Roly Porter - Aftertime (Subtext)

29
Teengirl Fantasy - Cheaters (Hivern)

30
Krampfhaft - Makin' Magic EP (Rwina)
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