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interview with Martyn

interview with Martyn

デトロイト、シカゴ、ベース・ミュージックの三位一体

――マーティン、ロング・インタヴュー

野田 努    Sep 13,2011 UP

Martyn
Ghost People

Brainfeeder/ビート

Amazon iTunes

 広いダンス・ミュージックの大海原において、ダブステップがまだ孤立していた時代に、何人かの視野の広いDJはテクノとダブステップのクロオーヴァーというファンタジーを現実のものとした。そのひとりにオランダ人のマルテイン・ダイケルス、音楽の世界ではマーティンの名前で知られるDJ/プロデューサーがいる。彼のデビュー・アルバム『グレイト・レングス』(2009年)は、ジャンルの混合を試みていた初期の成果として知られるが、その音楽を特徴づけるのはデトロイト・テクノの叙情性で、なおかつダンスフロアにおける機能性の高さだった。裏打ちを強調したガレージ風のドラム・プログラミングをしてもマーティンのビートの録音はクリアで、ブリアルやコード9よりもテクノのトラックに近い。そして、それがある種の心地よさになっている。デトロイト的な物悲しいコードが重なっても、リズムのドライヴ感が重さを引きずらない。
 『ゴースト・ピープル』は惜しみない絶賛を浴びた前作から2年ぶりのセカンド・アルバムとなる。どんなアルバムになったのか、多くのダンス・ミュージック・リスナーは気になっているだろう。以下のインタヴューで彼が語っているように、よりハウスやテクノとの繋がりが強調されている。しかし重たいベースラインには、ベース・ミュージックのこの10年の特性が活きている。

デトロイト・テクノやシカゴ・ハウスからは、いちばん最初に影響を受けたと言ってもいいくらいさ。そういった音楽は、クラブに行きはじめた本当に最初の頃に出会った音楽だからね。

今年の1月にリリースされた『Fabric 50』も印象的だったのですが、『ゴースト・ピープル』もあなたのダンス・ミュージックへの情熱が凝縮されていると思いました。『グレイト・レングス』の頃よりもさらにダンスに向かっているようです。

マーティン:そうだね。ファースト・アルバムでは自分が作れるだけのいろいろなジャンルやスタイルを見せようとしたけど、アルバムをリリースしたあとにたくさんDJをしたり、ライヴしたりしてダンス・ミュージックの経験を積んだから、今回のアルバムにはそれが反映されてる。ギグをたくさんこなしたっていうのはやっぱ大きいかもね。それがあったから、ダンス・ミュージックの影響がとくに強くでてるんだと思う。セカンド・アルバムのほうが、ファーストよりもハウスやテクノとの繋がりが深いよ。

しかし......なぜ『ゴースト・ピープル』などというタイトルにしたのですか? あなたの盟友2562は『フィーヴァー』でしたよね。ある意味、とてもストレートにダンスへの感情を表した言葉だと思ったのですが、それに対して『ゴースト・ピープル』とは......いったいどんな意味があるんでしょう?

マーティン:このタイトルにはいろんな意味があるんだ。まずそのうちのひとつは、ここ2〜3年フェスやギグで世界を旅して世界中のさまざまなシーンのDJを見てきて、ずっと変な感じがしてたんだ。俺には、彼らが空っぽに見えた。音楽をあまり気に掛けてないっていうか、ハートがないんだよね。ファッションとしてDJをやってるような感じ。そういう人たちを、俺は"ゴースト・ピープル"って呼んでるんだ。彼らは音楽じゃなく、高級ホテルの話やフライトの文句しか話さない。だから俺にとってのゴースト・ピープルは彼らを意味するんだ。

その他は何を意味してるんですか?

マーティン:まず、メインはさっき言ったDJたち。で、もうひとつは、こないだ日系アメリカ人のドキュメンタリー『ミリキタニの猫(The Cats of Mirikitani)』を見たんだけど、そのドキュメンタリーのなかで、第二次世界大戦時に強制収容所にいたある男性が、当時収容所でなくなった人びとをゴースト・ピープルって呼んでたんだ。彼は、亡くなった人びとの精霊を感じるんだ。そのドキュメンタリーも素晴らしかったから、ゴースト・ピープルって言葉はそれにも繋がってるよ。

じゃあ、音楽がよりハードなテクノになっているのとはあまり関係ないですか?

マーティン:俺はそれは考えなかったけど、違うとも言えないよ。解釈はその人次第だからね。今回はトラックから取ったけど、そうじゃないときはあまりタイトルをどこからとったかはあまり言いたくないんだ。受け取る人のイマジネーションを大切にしたいから。でも、よりハードって部分は同感だよ。今回は、サウンドのひとつの面を発掘したかったんだ。前回はいろいろなサウンドにトライしたけど、セカンドでは、ある決まったサウンドをどこまで引き伸ばせるかに挑戦したかったんだよね。

冒頭でのスペースエイプのリーディングは何について喋っているのですか?

マーティン:それはスペースエイプに訊かないとわからないな(笑)......ってのは冗談で(笑)、あれは詩なんだよ。彼に完成間近のアルバムを聴いてもらって、アルバムに何か言葉をくれないかと頼んだら、彼はこのアルバムが持つテクノロジーと感情のコンビネーションっていう部分をいちばん気に入ったらしく、「Love and Machines」っていうタイトルの詩を書いてくれたんだ。俺の音楽は感情的に聴こえるけど、機械で作られてるっていう内容を語ってるんだよ。

フライング・ロータスとは以前からリミックスなどを通して関わりがあたっとはいえ、〈ブレインフィーダー〉からアルバムをリリースするにいたった経緯を教えてください。

マーティン:ファースト・アルバムは自分のレーベルの〈3024〉から出して、それはそれですごくハッピーだったんだけど、同時にすごく大変でもあった......。音楽も全部自分で作って、それが終わったらレーベル・マネージャーになって......って感じで、やらなきゃならないことがたくさんありすぎてね......。それを振り返ったとき、今回はプロモーションやディストリビューション、アートワークなんかはそれぞれプロに任せようと思ったんだ。そうすれば、音楽を作ることに専念できるから。それをフライング・ロータスと話してたら、彼が自分のレーベルからリリースしたいならもちろんそれでいいし、もしそうじゃなかったら、〈ブレインフィーダー〉からリリースしたらどうかと提案してきたんだ。それがきっかけで、〈ブレインフィーダー〉からリリースすることにしたんだよ。そうして良かったと思ってる。みんなプロフェッショナルだし、日本とも繋がってるしね。たくさんの素晴らしい人びとに囲まれて仕事するのは最高だよ。〈ブレインフィーダー〉からリリースしたおかげで、インタヴューもできればライヴにも集中できる。自分のことをする時間がちゃんと確保できるんだ。

あなたのレーベル、〈3024〉はまだありますよね? 次回も〈ブレインフィーダー〉からリリースしたいですか?

マーティン:いまはまだわからないね(笑)。〈3024〉はもちろんまだ存在してるよ。たとえ自分の作品をそこからリリースしないにしても、俺は他のミュージシャンの音楽をリリースするのも好きだから。自分が素晴らしいを思う自分以外の人たちの音楽をリリースして、プロモーションして世に送り出すのが楽しいんだ。レーベルを持ってるとそれができるからね。それって最高だよ。

野田 努(2011年9月13日)

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