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Home >  Interviews > interview with ERA - 「LIFEの中の4小節」に込められたERAのソウル

Interviews

interview with ERA

interview with ERA

「LIFEの中の4小節」に込められたERAのソウル

──ERA(エラ)、インタヴュー

取材・文:巻紗葉   撮影:CENJU   Sep 15,2015 UP

 僕は2013年に『街のものがたり』というインタヴュー集をまとめた。僕はこの本でステレオタイプではないラッパー像を提示したかった。ラッパーといえば、不良で、社会から隔絶されて、虐げられて……。ではなくて、自分の身近にいる普通の青年が歌うラップを紹介したかったのだ。不良のラップも大好きだけど、市井の青年たちの感性から生まれた言葉は、僕にとって説得力がある。なぜなら僕自身が何者でもない、街の景色の一部のような人間だからだ。


Era - Life is Movie
HOW LOW

Hip Hop

Tower HMV Amazon

 その『街のものがたり』にも登場してもらったERAが、今年7月に約3年ぶりのアルバム『LIFE IS MOVIE』をリリースした。これまでのERAのイメージといえば、都市を「しゃらり」と疾走する、軽やかでスタイリッシュな姿だった。しかし本作の彼は泥臭い。「決まった仕事もdropして / lifeをうまく積み上げられない / 何度も見たはずなのに / そっから先が上手くやれない」と彼は歌う。このラインはERAの暮らしの中から自然と出てきた言葉だという。僕はこのラインに2015年の「街のものがたり」を感じた。

 なぜ『LIFE IS MOVIE』という作品を世に送り出したのか、それを訊きに僕は久しぶりに彼に会いに行った。

■ERA / エラ
2011年にアルバム『3Words My World』でデビュー。ラディカルなトラックとリリカルな歌詞が話題となり、さまざまなシーンで絶賛された。2012年からは自身のレーベル〈How Low〉を主宰。同年セカンド・アルバム『JEWELS』をリリースし、さまざまな客演参加等を経て、2015年、3枚めとなる『LIFE IS MOVIE』を発表した。

今までとは違うことを

今回のアルバムは自宅で制作されたんですか?

ERA:そうです。

2012年に発表された前作『JEWELS』から約3年ですね。

ERA:同じ年の12月にIDEALというユニットの作品を出したんで、本当はその後にソロでアルバムを出したかったんです。あのときは、自分のレーベル〈HOWLOW〉を立ち上げたり、tofubeatsさんに“夢の中まで”という曲でフィーチャリンしてもらったり、すごくいい流れがあって。だからそこに合わせてアルバムを完成させたかったんですけどね。

制作が滞った理由は?

ERA:トラックが思うように集まらなくて。あとやる気はあったんですけど、僕自身のマインドが本格的に制作する感じじゃなかったんだと思います。

どういうことでしょう?

ERA:自分のレーベルからアルバムを出すのがけっこう大変だったんです。やることが多くて。アルバムをレコーディングしながら、リリースの仕方を考えなきゃいけなかったりとか。最終的にWDsoundsに宣伝を手伝ってもらったんですが、それが決まったときは正直かなり気が楽になりました。アルバムの制作もようやく本腰を入れられるようになったというか。やっぱりひとりではあれもこれもできないです。そもそもジャケットからして、夏に出すアルバムぽくないですよね。

あはは。でも今作はリリース時期こそ夏ですが、“サマーアルバム”という感じではないですよね。

ERA:そうですね。

『JEWELS』はとてもダークなアルバムでしたが、今回は一転して明るい作品ですね。希望に満ちてるというか。

ERA:『JEWELS』ってそんなに暗いアルバムだったかなあ? 僕としてはそんなイメージはないんだけど、すごくいろんな人から言われるんでそうなんだろうな(笑)。

ERAさんは「リリックにはいろんな意味が込められてる」とインタヴューとかで発言をされていたので、“Planet Life”の「もし拳銃があれば」とか、そういうインパクトの強いラインを聴くとリスナーはどうしても勘ぐってしまうんですよ(笑)。

ERA:『JEWELS』はすごくストイックに制作した作品なんです。そのせいで、あの頃の自分はいろんなことに対してナーバスになっていました。“Planet Life”の「もし拳銃があれば」というフレーズは、そういう中から生まれた言葉で本当に深い意味はないんですよ。

今回の制作はあまりナーバスにならなかったんですね。

ERA:はい。あと、このアルバムではちがうことをやりたかったんですよ。『3Words My World』と『JEWELS』に関しては、自分の言葉が一辺倒だと思うところがあって。表現の幅みたいなものを見せたかったんです。「ひとつの事柄を歌っていても言葉にはいろんな意味を持たせる」っていうのも今回はあまりありません。

「LIFEの中の4小節 / 実際それで全部だから」と歌っていますしね。

ERA:はい。『LIFE IS MOVIE』は『3Words My World』『JEWELS』の延長線上にあるけど微妙にちがうことを歌ってます。この微妙にちがうというのがすごく重要なんです。たくさんある引き出しの中から、いままでとはちがう部分を見せてる感じですね。


ソウル感のあるリリック

なるほど。たしかに、いままでの作品では“I’m Talkin’”の「back againしたってことは少しは変われたってことさ」みたいなフレーズは出てきませんよね。

ERA:「自分のリアルな生活感を歌いたい」という思いがアルバムを作りはじめの頃からぼんやりとあって。“I’m Talking”とかは、まさに僕のリアルな部分が出てる曲。ソウル感っていうか。

“ソウル感”とは?

ERA:経済的困窮の中から生まれるハングリーさみたいなものです。USヒップホップのリリックにはよくあるけど、日本でこの“ソウル感”を出せる人はあまりいないと思う。今回のアルバムは、それを見せることでオリジナリティが出せたかなと、うっすら感じています。とはいえ、自分もアメリカの人たちほど困窮しているわけじゃないけど(笑)。

その意味では“I’m Talkin’”には生々しいほどのソウル感が出ています。

ERA:自分はパートタイム的な仕事をやってるんですけど、まあ続かなくて。辞めて次の仕事を探しては、その職場の上司とぶつかったり。そんなことの繰り返しで、本当にうまくいかないなあって感じでしたね。

あの歌詞はすごく2015年の日本を感じさせるものだと思います。すごく貧しいわけではないけど、未来を感じさせてくれない感じというか。そんな状況で「lifeをうまく積み上げられない」と焦ったりしませんか?

ERA:焦りよりかは、「自分はなんでうまくいかないんだろう」って思いのほうが強かったですね。

失意、みたいな。

ERA:そうですね。

先ほど「ちがうことをやりたかった」と話していましたが、今回のようなリリックを書くことにしたのはなぜですか? ちがう表現はほかにたくさんありますよね?

ERA:今回みたいなことを歌うと思うことが、自分をより良くすることなのかなって。

どういうことでしょうか?

ERA:作品を作りながら自分が自分に救われてたようなところがあって。アルバム作りっていうのは、歌詞を声に出して歌うことで少しずつ進んでいくわけですが、その過程を経るごとに自分が少し復活するような感覚があったんですよ。

もしかして“I'm talkin'”の「病んだ俺にはmedicineが必要」というのは、そうやって作品を作ることだったんですか?

ERA:そうです。


自分が聴いて気分が上がるような作品

先日テレビで映画監督の細田守さんのドキュメンタリーをやっていて、そこで彼は「映画を作るとか観るとかっていうことは、“世界に希望を持ってますよ”ってことを表明するような行為でさ、(現実は)そうでないにも関わらずね。そのときの自分は幸せじゃないかもしんないけども“人生は幸せなものかもしんない”ってことを大声で言ってるようなもんなんだよ。それは幸せじゃない人だからこそ、それを作ったり言ったりする権利があるってことだよ」と話されていたんです。

ERA:自分がこのアルバムを作っていたとき、暗い音楽は聴いてませんでしたね。入り込みすぎちゃって聴けないというか。むしろ明るい音楽を聴いて力づけられてましたね。そういう感覚が当時の自分にフィットしてたんです。そこは意識してたかもしれません。あんまり暗い感じというよりは、自分が聴いて気分が上がるような、そういう作品にしたいという気持ちがありました。

『LIFE IS MOVIE』というタイトルはどのように決まったんですか?

ERA:アルバム制作の半ばから終わりにかけてくらいなんで、けっこう遅いです。今回の作品で、いちばん最初にできた曲が“Left, Right”なんですけど、その段階ではアルバムの全貌はまだぜんぜん見えてなくて。具体的に何かのきっかけで決まったというよりは、制作の中で徐々に固まっていったような感覚かな。

タイトル・トラックの“Life Is Movie”ができあがったのも後半ですか?

ERA:はい。“Daylight”とかも最後のほうです。アルバムのタイトルが決まってからは、そこに寄せて歌詞を書いたり、曲順を決めたりしました。

1曲めのタイトルがいきなり“Endroll Creator”なのですごく驚きました。映画なのに、最初からエンドロールの話かよって(笑)。

ERA:たしかにそうですね(笑)。じつはこれ、もらったトラックに付けられてた仮タイトルをそのまま使いました。響きもカッコイイし。けっこうそういうの多いんですよね。

トラックの仮タイトルにインスパイアされてリリックを書きはじめるラッパーの人、多いみたいですね。

ERA:うん。この曲はまさにそのパターンです。

今回は客演にDown North Campの面々が参加していますね。

ERA:フィーチャリングのラッパーについては、Down North Campとかそういうところはとくに意識してなくて、自分がカッコいいと思う人たちに声をかけました。

今回はERAさんが所属するグループ・D.U.O.のOIさんが参加していませんね。

ERA:そうですね。スキットとかで参加してもらおうと思ったんですけど、うまくハマる曲がなかったんですよね。いっしょにやりたかったんですけど。


映画の最後

曲順はどのように決めましたか?

ERA:かなり考えましたね。最初はぜんぜんちがう曲順で“Life Is Movie”が最後の曲だったりもしたんです。じつはこのアルバムには、ゆるいストーリーが設定されてて。あの曲のサビで歌っている「クラッシュする交差点~」というのは、ストーリーのラスト・シーンなんです。主人公が車に轢かれて死んじゃう。

なんで主人公は死んでしまったんですか?

ERA:事故っす(笑)。

いや、そういうことじゃなくて(笑)。

ERA:映画の最後ってそういう感じじゃないですか。

突然起こった理不尽な悲劇、みたいな。でもそれのほうが逆にリアリテイがあるかも。

ERA:まあストーリーはザックリとした感じなんですけどね(笑)。

ちなみに“Life Is Movie”の最後のライン「Peaceすぎたら~」はどういう意味なんですか?

ERA:これはストーリーとは別個で自分自身のことですね。2014年の夏に“Soda Flavor”という、今回のアルバムにも入れた曲を配信でリリースしたんですが、この頃はパーティ感を出そうとしてたんですよ。でもそこにこだわりすぎると、曲が弱くなっちゃうというか、自分に嘘をつきすぎてる感じがしたんですよ。

自分のキャラに合わないことを無理してやっても仕方がない、と。

ERA:そういうことです。

ラストの“Daylight”はすごく明るい曲ですね。

ERA:ストーリーとしては“Life Is Movie”がラストなんですが、アルバムとしては“Daylight”で終わるのがすごく美しい感じがしたので、この並びにしました。たまにエンドロールの後に5分くらいおまけが付いている映画があるじゃないですか? この曲はそんな感じですね。

では、仮にERAさんが映画が撮るとしたら、どんな作品がいいですか?

ERA:高校生くらいのやつが学校に通いながらラップするような青春ものがいいですね。そういうのは昔からやってみたいと思ってます。たぶんやれないと思うけど(笑)。

なるほど。それを聞くとやはりERAさんの中には一貫した美意識があるように感じられます。『3Words My World』や『JEWELS』で表現された街の描写は映画のワン・シーンみたいでした。ラリー・クラークの“Kids”みたいな。

ERA:ああー、そんな感じかもしれない。

では最後に好きな映画は?

ERA:いろいろありますけど、普通に『2001年宇宙の旅』とかですかね。あと自分がラップはじめるモチベーションが高まったという意味では『ハッスル&フロウ』は外せないです。あの映画、主人公たちのやる気がハンパないんですよ(笑)。あのハングリーさはすごく上がりましたね。

取材・文:巻紗葉(2015年9月15日)

Profile

巻紗葉 a.k.a. KEY巻紗葉 a.k.a. KEY
常にビビりながら、イリーガルな活動を続ける挙動不審な人間。誰も知らない知られちゃいけない。彼が懐に忍ばせている日記には全ての真実が記されているとかいないとか。

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