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Home >  News > Brian Eno - ──ブライアン・イーノが新年のメッセージを公開

Brian Eno

Brian Eno

──ブライアン・イーノが新年のメッセージを公開

©Shamil Tanna 2016   Jan 06,2017 UP

 1月1日に新作『Reflection』をリリースしたばかりのブライアン・イーノ。CDやヴァイナルや配信のみならずアプリとしてもリリースされた同作は、彼が長年追い求めてきたジェネレイティヴ(=自動生成的)な試みの、現時点での最高のプレゼンテイションである。
 彼はその『Reflection』の発売日と同じ1月1日に、新年に向けたメッセージをフェイスブックにポストしているが、このたびその日本語訳が公開された。社会の状況やリベラルのあり方について真摯に語りかけるその内容は、『ele-king vol.19』に掲載されたロング・インタヴューの続編とでも呼ぶべきもので、これを読むと2017年は少しくらいは良い年になるのではないかという気がしてくる。
 日本語訳は以下からどうぞ。

2016/2017年

私の友人達の多くの間では、2016年は酷い1年であり、想像したくもない何かへと向かう長期的衰退の始まりだったということで、ほぼ意見が一致しているようだ。

2016年は、確かに荒れた1年だった。だがそれは、長い衰退の“始まり”ではなく、“終わり”なのではなかろうか。あるいは少なくとも、終わりの始まりではないだろうか……。というのも、我々はこれまでの40年間、ずっと退潮にあり、緩やかな非文明化が進行していたにもかかわらず、現在まではっきりそうとは気づいていなかっただけなのではないかと思うからだ。緩やかに温度の上がっていく鍋の水に入れられた“茹でガエルの法則”が、私の頭をよぎる。

この衰退に伴うのが、安定した雇用から不安定な雇用への移行、労働組合の消滅及び労働者の権利の縮小、ゼロ時間契約労働、地方自治体の解体、公共医療サービスの破綻、無意味な試験結果や成績表に支配される資金不足の教育制度、移民に責任を被せるレッテル貼りの容認化、安直なナショナリズム、そしてソーシャル・メディアやインターネットによって可能になった偏見の集中だ。

非文明化に向けたこの一連の変化は、社会的寛容を嘲笑い、一種の正当な利己主義を擁護していたあるイデオロギーから生じた(サッチャー元首相曰く「貧困に陥るのは人格に欠陥があるから」。アイン・ランド曰く「利他主義は有害である」)。抑制なき個人主義を重要視することには、二つの作用があった。一つが莫大な富の創出。もう一つがその富の、より少数の者への集中化だ。現在、全世界の上位62人の富豪が所有する資産が、下位50%の人々の全資産の合計を上回っている。こういった富はいずれ全て“トリクルダウン”(=滴り落ち)し、残りの人々全てを経済的に潤すことになるだろうという、サッチャー・レーガン体制の幻想は実現していない。実際には、その逆の現象が起きているのだ。大多数の人の実質賃金は、少なくとも20年間にわたって減少していると同時に、将来の見通しは――そしてその子供達世代の将来性は――ますます不透明になってきている。人々が憤り、旧態依然とした政府に背を向け、他所に解決策を求めるようになっているのも不思議ではない。誰であれ最も金を持っている者に政府が最大の配慮をしている一方で、現在我々が 目の当たりにしている甚大な富の不平等が、民主主義の理念を水泡に帰さしめているのだ。ジョージ・モンビオットが「ペンは剣より強いかもしれないが、財布はペンよりも更に強い」と言った通りである。

昨年、人々はこのことに気づき始めた。多くの人々が、憤り、手近にあるドナルド・トランプ的な対象を掴み、それで支配者層の頭を殴りつけた。だがそれは、最も派手に人目を引く、メディア的に美味しい覚醒でしかなかった。その一方で、地味ではあるが、同じくらい強力な目覚めもあった。民主主義の意味とは何か、社会の意味とは何か、そしてそれらを再び機能させるためにはどうすればよいか、人々が考え直しているということ。人々は真剣に知恵を絞っており、そして最も重要なことに、声に出しながら共に考えている。2016年、私達は集団的な幻滅を経験し、幻想から覚め、ようやく鍋から飛び出す時が来たことを悟ったのだと思う。

これは何か大きな、重要なことの始まりだ。それには積極的な取り組みが必要となるだろう。つまり、ただツイートしたり、「いいね」を押したり、スワイプ操作をするだけではなく、思慮深く創造的な、社会的・政治的行動もとるということ。それには、私達がこれまで当然視してきた幾つかのこと、例えば報道における一応の真実等を、無料で手に入れることはもはや期待できないということも伴う。信頼性の高い報道や良質の分析を求めるなら、その対価を支払わなければならない。つまり、料金だ。企業ではなく個人の側、被支配層の側の観点から話を伝えようと悪戦苦闘している出版物やウェブサイトに、経済的な支援を直接行うということである。同様に、子供達に幸福になってほしい、創造力を養ってほしいと願うなら、イデオロギーや収益至上主義者に教育を委ねるのではなく、自ら責任を持つ必要がある。社会的寛容を求めるなら、しかるべき税金を納め、租税回避地を撲滅しなくてはならない。そして思慮に富んだ政治家を求めるなら、カリスマ性のある政治家だけを支持するのをやめるべきなのだ。

不平等は社会を徐々に蝕み、蔑視や、反感、嫉妬、疑念、虐め、傲慢、そして冷淡さを生み出す。まともな未来を求めるなら、それを押し退けなくてはならないし、私達はそれに着手し始めていると思う。 やるべきことは山程あり、可能性も山程ある。2017年は驚くべき1年となるはずだ。

ブライアン

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ブライアン・イーノ最新作『REFLECTION』は、CD、アナログ、デジタル配信、iOS、Apple TV対応アプリのフォーマットで、2017年1月1日(日)に世界同時リリース。国内盤CDは、高音質UHQCD(Ultimate High Quality CD)仕様で、セルフライナーノーツと解説書が封入され、初回生産盤は特殊パッケージとなる。

Labels: Warp Records / Beat Records
artist: BRIAN ENO
title: Reflection

ブライアン・イーノ『リフレクション』

release date: 2017/01/01 SUN ON SALE
国内盤CD: ¥2,400+tax
BRC-538 初回生産特殊パッケージ / UHQCD仕様