Home > Interviews > interview with GORO GOLO - 音が鳴れば、肉は揺れる
自分自体が「自由に振る舞ってほしい」っていうことの象徴。「好きにしてください」と(笑)。プチャヘンザもないですし、フィンガー・ポインティングもない。
■GORO GOLOは一貫してダンス・ミュージックだと思うんですよね。スガナミさんもライヴのあいだすごく踊ってる。そして観客を煽り立てる。「踊らせる」ことにすごくこだわっていると思うのですが、なぜそれほど「踊り」にこだわるんですか?
スガナミ:本能的なものでやってるんだけど。形容としては「ダンス」とかっていう言葉でもなくて。最近よく「音が肉にぶつかって、肉が揺れているだけ」と言っているんだけどね(笑)。
■それはライヴからすごく感じますね。
スガナミ:お客さんに対しては「楽しんでほしい」っていう気持ちで向かってやっています。自分自体が「自由に振る舞ってほしい」っていうことの象徴。「好きにしてください」と(笑)。プチャヘンザもないですし、フィンガー・ポインティングもない。
■たしかに、煽り立てていても「自由に振る舞ってほしい」というのは強く感じますね。
スガナミ:それを自分でやってみせて「こんな感じで、どうでしょう?」みたいな(笑)。
■よくスガナミさんはジェームス・ブラウンみたいだと言われるじゃないですか。でもスガナミさんのダンスって、それとはまた全然ちがう(笑)。
スガナミ:全然ちがう(爆笑)。天野くんよく気づいてくれた(笑)。
■言葉が悪いですけど、どこか不器用というか、踊れてないというか(笑)。
スガナミ:そうそうそう(笑)。全然踊れていないから。顔の黒さもあると思うんだけど(笑)、JBって言われることが多くて。でも、JBの映像って俺ほとんど観たことないんだよね。
■そうなんですね。
スガナミ:うん。ノーザン・ソウルとかさ、ソウルのダンスってあるじゃん? そういう形を俺は知らないから、「肉が揺れているだけ」なんだよね。たとえば音楽が鳴ってそれにただ反応すれば、みんな絶対に変なはずなんだよ。ちょっと人目を意識するというか、「こんな感じでしょ……?」みたいに踊る人もいるけど、「そういうんじゃねえから!」みたいな(笑)。あっはっはっは! ただ鳴ったものに対して純粋に反応してみたらどうなるかと。そこと勝負、って考えてみたんだけど。
「肉が揺れているだけ」なんだよね。たとえば音楽が鳴ってそれにただ反応すれば、みんな絶対に変なはずなんだよ。ちょっと人目を意識するというか、「こんな感じでしょ……?」みたいに踊る人もいるけど、「そういうんじゃねえから!」みたいな(笑)
■先ほどもおっしゃっていましたけど、GORO GOLOとスガナミさんのアティチュードにはやっぱり「楽しませる」というのがあると思うんですね。ライヴもショーのようで、継ぎ目なくどんどん曲がつながっていって、ドラマティックな感じだと思うんです。ライヴは構成を意識してやっているんですか?
スガナミ:そうですね。意識はすごく、してる。観ている人の集中力ってさ、たぶんそんなに続かないって思うんですよ。僕自身もそうだし。でもそこで、30分だったらいかに30分を楽しんでもらうかというときに、構成はすごく大事だと思っていて。余分なところは余分なままで残しておいていいんだけど、そこもちゃんとシュールな感じに仕上げるというか(笑)。だから全体を通してそれこそ継ぎ目なく面白いっていうのは意識してますね。自分たちがピエロ、道化みたいな感じ? 大道芸というか。お客さんや聴いている人よりも、自分たちが下にいるっていう感覚はすごくあって。「ピエロでやっているんで、よかったら観ていってください!」みたいな(笑)。
実際は黒人になりたいなんて思っていなくて。日本人――日本人というか自分たちがチャンプルーした音楽をどれだけ作れるかだと思っていて。「日本人である」というか「自分である」っていうことだと思うんだけど。
■スガナミさんがやってらっしゃる〈ステゴロ〉(日本初のバンド版Back to Backトーナメント。2組のバンドが間髪入れずに演奏し合い、観客がその勝敗を決める)の発端になったA PAGE OF PUNKのツトムさんとの対話で、スガナミさんは「ピエロであることがパンクだ」ということをおっしゃいましたよね。
スガナミ:セックス・ピストルズもそうだったと思うし。あれはもっと鋭利なピエロだと思うんだけど(笑)。俺らはもっとパーティーというか、「楽しんでほしいな」っていうところで、ピエロ。
■GORO GOLOの音楽においてはスガナミさんの言葉がすごく重要だと思っています。でもスガナミさんの言葉って、直接的というよりは一本ズラして、ワンクッション置いて歌うという面がありますよね。たとえば“GOD SAVE THE DAINCING QUEEN”は風営法についての曲なんですけど、直接的にはそうは聞こえない。スガナミさんの言葉でそのクッションになっているのが諧謔性やユーモアだと思うんです。“MONKEY SHOW”がとくにそうだと感じるんですが、この曲については他のインタヴューで「黄色い肌で何を鳴らそう」っていう曲だとおっしゃっています。それについて詳しく教えていただけますか?
スガナミ:JBみたいだって言われるのもそうだし、取り入れている音楽性には黒人のフィーリングもあるので勘違いされがちなんだけど、実際は黒人になりたいなんて思っていなくて。日本人――日本人というか自分たちがチャンプルーした音楽をどれだけ作れるかだと思っていて。「日本人である」というか「自分である」っていうことだと思うんだけど。「どれだけ自分であれるか」というところがすごく重要だと思っています。“MONKEY SHOW”も、その「黄色い肌で何を鳴らそう」というところにつながるんだけど。あと“MONKEY SHOW”に関して言えば、自分たちが道化だという、「これはお猿さんのショーです アイアイアイアイ」と言っているその虚無感がありますね。ハードルをくぐっている感じ、その刹那みたいなものを落とし込んでいる。ダンス・バンドゆえの切なさみたいな(笑)。楽しんでもらってなんぼなんだけど、そこにはすごく空虚なところがあって、でもそこもすごく重要。
■“Blues Re:”はそういう歌詞でしたよね。
スガナミ:そうだね。おどけてなんぼ、でもおどけてるとこにちゃんと切なさがあるというのがやっぱりソウルやブルースだと思うし。
■なるほど。先ほど言った“GOD SAVE THE DAINCING QUEEN”は風営法に関係していますが、スガナミさんがじゅんじゅんに提供された“2014年のガールズカラー”という曲は、直接的ではないものの新大久保の反韓デモとかヘイトスピーチを受けての曲ですよね。そういう時事的なものに対する瞬発力というのがいまのGORO GOLOにはあります。
スガナミ:それはA PAGE OF PUNKのツトムさんとかと仲良くなりはじめたというのも大きいです。関心事についてのポップ・ミュージック、もしくはダンス・ミュージックとしての機能の仕方にどれだけ肉薄できるかということも考えていて。音楽が隠れ蓑になるじゃないですか。必ずしも全員に伝わらなくてもいいとは思っていて、だから自分たちはこういう音楽性なんだと思うんです。でもいまの時代、メッセージがないとすごく強度の弱い音楽になってしまうと思います。だからそこに関しては、歌詞は本当に気にしてやっていますね。
最近気づいたんだけど、本気でやればやるほど人ってすごく笑うんだよね。っていうことは、人間はすごく滑稽だということなんだけど。
■なるほど。あとユーモアに関して言えば、スガナミさんは松本人志がすごくお好きですよね。僕は全然通っていないところなんですが……。
スガナミ:好きだねー。すごく好きですね。とくに好きなのが『一人ごっつ』(1996~1997年)。フジテレビでやっていた『ごっつええ感じ』(1991~1997年)が終わって、深夜枠で『一人ごっつ』をはじめたんだけど、その頃の松ちゃんの尖り方がヤバくて。他にも『働くおっさん人形』(2002~2003年)、『WORLD DOWNTOWN』(2004年)、『考えるヒト』(2004~2005年)とか、斬新な番組がすごく多くて、いちばん尖っていた時期だと思う。いまだに『ガキ使(ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!)』だけ毎週観てる番組なんだけど(笑)。松ちゃんの独自性、ブラックなユーモアのセンス、飛躍や解放の仕方がすごく好きで。ユーモアという面では、松ちゃんには本当に影響受けていますね。僕にはなんにも及ぶ部分はないんですけど。松ちゃんはコントでキャラクターが乗っかっちゃう。自分のなかにもう生まれちゃっているというか、コント中にそのキャラクターになっちゃってるっていうか。それを松ちゃんは「憑依」って言うんだけど。キャシィ塚本っていう……。
■知ってます(笑)。
スガナミ:知ってる? あれとかもそうなんだけど。俺のなかでもライヴのときって憑依してる感覚はあるんだけど(笑)。あと『一人ごっつ』でいうと、番組のワン・コーナーで、松ちゃんがただひたすら踊りながら商品の値段を言っていくやつがすげー面白くて。その踊りがとにかく面白いの! ノープランで挑んでる感じがすごく面白い。その動きを見ていて、「あっ、これやっぱ、ノープランでやってるからいいんだなあ」と思って。だから、ライヴ中は自分を解放するわけじゃないけど、面白くさせるために動いているところはあるね。でもそれとまた別の視点として、「笑わせよう」と思ってやらない、というのを大事にしてて。最近気づいたんだけど、本気でやればやるほど人ってすごく笑うんだよね。っていうことは、人間はすごく滑稽だということなんだけど。自分は本気でやっているから、「なんでそんなに笑うんでしょう?」って思ってるんだけど(笑)。あはははは! 本気でやればやるほどいいなって思う。夢中でやると、人はすごく楽しんでくれる。
■ライヴ中も汗だくですもんね。バンド・メンバーも全員が一丸となっているというか。それに関して言えば、みなさんライヴ中はドレスアップしていますよね。ここ最近のロックってずっとドレスダウンしていると思うんですが、あえてGORO GOLOがドレスアップしているのは、パンクの様式やブラック・ミュージックに対する敬意なのかなと。
スガナミ:昔はモッズとかの文化が好きでめかしこんでた部分もあったんだけど。いま、なんでみんなでスーツを揃えてやっているのかなあって考えたときに――観にきてくれるお客さんって、学生の方もいらっしゃると思うんだけど、社会人の方は土日でも平日でも仕事をしてからスーツを脱いで来るわけじゃないですか? その代わりに俺らがスーツを着てやるというのがあって。「いまは俺たちが代わりに営業中なんで、自由に楽しんでほしい」というのがあるんだよね。その上でのスーツというか。モッズとかってもっとピシっとしてるんだけど、いまのスーツはちょっとデカめで良いんだよね。あれ、ノー・ベルトなんだけど。オレンジ色でさ、あまり見ないよね、ああいうの(笑)。
■そうですね。
スガナミ:だからカッコつけたいというよりは楽しんでほしいっていう部分が大きいですね、やっぱり。
取材:天野龍太郎(2014年1月08日)