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interview with Jim-E Stack

interview with Jim-E Stack

ハウスはこうして刷新される

──ジムイー・スタック、インタヴュー

木津 毅    通訳:原口美穂   Jul 23,2014 UP

俺のフラストレーションは、クラブのために音楽を作ってる感があったことだった。DJがプレイしやすいようなイントロとか、ダンスフロアのための音楽。でも、俺はジャズ・バンドの経験もあるし、パンク・バンドでもプレイしてたし、アフリカン・ミュージックやエイフェックス・ツインなんかも聴いてた。

■〈フェイド・トゥ・マインド〉のキングダムに強いインスピレーションを受けたそうですが、彼の音楽のどんなところが新鮮だったのでしょうか?

ジムイー:彼のDJプレイを最初に見に行ったとき、俺はまだエレクトロニック・ミュージックのリスナーとしてかなりの新人だったんだ。ディプロとかスウィッチ、シンデンとかを聴いてた。でもキングダムは……彼はそういうミュージシャンたちとは少し変わってたんだ。そこがインスピレーションだった。
 彼からめちゃくちゃインスピレーションを受けたかと聞かれると、それは正直わからない。でもとにかく、彼のDJセットを見たときにすごくびっくりしたんだ。新しい世界が開けた気がした。UKガレージ、グライム、ヤング・マニー、90年代のハウスとかのミックスだったんだけど、俺にとってはそれがクールだった。エレクトロニック・ミュージックのシーンでは、いったいいくつのジャンルが入り交じってるんだろうっていう驚きがあった。ハウスだけじゃなくて、R&Bやヒップホップ、グライムにもなりうるんだなっていうことがわかった。もちろんハウスでもあるし、とにかくすべてのミクスチャーがエレクトロニック・ミュージックなんだな、と。彼自身が俺に多大な影響を与えたかといえばそうじゃない。でも、彼のDJセットを見た経験っていうのが俺の最初のダンス・ミュージックの経験で、目を見開いたってこと。エレクトロニック・ミュージックってクールなんだ! と実感した(笑)。

■ングズングズのリミックスであなたは話題になりましたが、彼らのような〈フェイド・トゥ・マインド〉周辺のアーティストやシーンにはいまもシンパシーを抱いていますか?

ジムイー:どうだろう。親密ってわけじゃないんだよね。たまに会うって感じ。ングズングズとか、トータル・フリーダムとか、キングダムとか……その3人がメインかな。でもシンパシーとかはわからない。評価しているのは、彼らの音楽の「ほかとズレてる」ところ。彼らとか〈ナイト・スラッグス〉とか。〈フェイド・トゥ・マインド〉がはじまる前からだけど、自分がはじめてハマったそういう「ズレた」音楽を演奏するアーティストたちが好きなんだ。音楽的にシンパシーを抱いてるかとか、何か共通するものがあるかとかはあまり重要じゃない。彼らはもっとクラブ寄りで、俺のはクラブから離れてるしね。でも彼らのやっていることは評価してるし、最初は本当に衝撃的だった。すごくハマったし。ングズングズはとくに。彼の最初のEPとかね。

■〈ウィディドイット〉コレクティヴ(LA拠点のプロデューサー集団)とは親交があるそうですが、シュローモやライアン・ヘムズワースといったトラック・メイカーとあなた自身の共通点はあると思いますか?

ジムイー:シュローモには、自分のアルバムを書きはじめたときにすごくインスパイアされた。
 ニューヨークに引っ越してきたばかりのときは、アルバム用の音楽のプランやネタは何もなかった。すごく大変だったんだ。いろいろやってみないといけなかったから。でも、彼はすでにファースト・アルバムをリリースしていて、一歩先を行っていた。だから彼は、自分よりも経験のあるプロデューサーだった。彼は俺の哲学を変えた存在。「最初の音源を作るときはファンがいるわけでもないし、シーンにも属していないし、DJのことも気にしなくていいし、何も期待がかかっていない。だから自由なんだ。自分のしたいことをやれ」と言ってくれたのが彼。自分自身に正直な音楽を作れと言ってくれた。だから俺はそれを実行した。いまではそれは俺の哲学になってる。彼は、音楽制作に関する俺の考え方を変えてくれた人物なんだ。ライアンは特徴的なヴァイブを持ってるよね。でも音楽的に何か通じるものがあるかどうかはわからない。でも、聴く音楽は同じものが多いと思う。友だちでもあるし、彼のことは好きだよ。

■拠点を西海岸からニューヨークに移した大きな理由は何だったんでしょう?

ジムイー:西海岸とニューヨークの間にニューオリンズがあるんだけど、サンフランシスコで高校を卒業してからすぐ、大学進学のためにニューオリンズに引っ越したんだ。そこで音楽プログラムを専攻してた。でも、技術とかプロダクション、エンジニアよりも演奏がしたくなって。ニューオリンズを自分のホームだと思えたことがなかったんだよね。あとは、音楽を勉強するっていうのがイヤだったんだ。自分で好きなようにいろいろやるほうがよかった。そっちのほうが自由だし。クラスを受講するのはあまり刺激的ではなくて。で、結局学校が嫌いになっちゃって(苦笑)、ニューヨークに運良く友だちや家族がいたし、そのあと何していいかもわからなかったから引っ越したんだ。

通訳:学校を退学したんですか?

ジムイー:退学っていうか転校だね。4年間のプログラムのうちの2年をニューオリンズで勉強して、ニューヨークのハンターカレッジに転校したんだ。いまは学校にパートタイムで行きながら活動してるよ。いまだにいろいろ模索中(笑)。

■リリース元の〈イノヴェイティヴ・レジャー〉はライをヒットさせたりと最近話題が多いレーベルですが、あなたがサインした最大の理由は?

ジムイー:アルバムを書いたあと何人かに聴いてもらって、ひとからひとに渡って、そのなかで何人か興味を持ってくれたんだ。でも、〈イノヴェイティヴ・レジャー〉はいつも俺と組むことに興味を持ってくれていた。彼らと話したとき、彼らは俺のアルバムにたくさんソウルが詰まっていることに気づいてくれていたんだ。彼らが本心で言ったのかわからないけど、俺にとってはソウルが詰まってるっていうのは大切な意見だった。他にもたくさんスペシャルな意見はあったけど、俺にとってソウルっていう部分は個人的に一番の意見だった。だから、俺を理解してくれてるなと思ったんだよね。
 レーベルのアーティストはあまり知らなかったけど……ノサッジ・シングくらいしか。それよりも、彼らが俺の音楽を評価してくれたってことにぐっときて、そこからレーベルを知るようになったんだ。しかも彼らはアーティストを大切にするレーベル。ビジネスの仕方もうまいけど、アーティストを気にかけて、アーティストがハッピーかどうかを考えてくれるんだ。それは俺にとってすごく大切なこと。あと、彼らは結構年配なのにかなりの幅広い音楽ファンで、俺が興味を持ってるような音楽もすべて知ってるんだ。彼らはジャズも聴くし、DJプレミアやアフリカン・ミュージックも聴く。だから共通点もあるんだ。エレクトロニック・ミュージックだけを聴くとかだったら難しかったかもしれないけど。俺は、自分の音楽をエレクトロニック・ミュージックにしたいんじゃなくて音楽にしたいから。より広がりのある音楽を作ろうとしてるんだ。

■では、アルバム『テル・ミー・アイ・ビロング』について訊かせてください。デビュー作離れした、じつに完成度の高いアルバムであると同時に、とてもフレッシュな作品だと感じました。非常にさまざまな要素があなたの音楽では共存しているように思います。いわゆるベース・ミュージックやテクノ、ハウス、アンビエント、ヒップホップにジャズ。はじめからこのような多くのジャンルをまたぐ作品をイメージしていたのでしょうか?

ジムイー::答えはイエスでもありノーでもある。アルバムには10曲くらいしか入ってないけど、25~30曲くらい書いた。で、そこからより良いものを選んで削ぎ取っていった。最初にシュローモに会ったときに、好きなものを作れって話をしてくれたって言ったよね? 当時、俺はレコード契約もなかったし、導いてくれるひともいなかった。それが逆によかった。自由だったから、ただ自然と頭に浮かんでくるものを曲にして、ダーっと30曲書いた。ヒップホップだったり、ボルチモア・クラブっぽいものだったり、ハウスだったり。いろいろと違うものをとにかく作ってみたんだ。自分がしっくりくるものを。
 でも、もちろんアルバムにするときはそこから意識して曲を選ぶ必要があった。そのときに意識したのは……アルバムをリリースする前の俺のフラストレーションは、クラブのために音楽を作ってる感があったことだった。個人的にはあまり自由を感じることが出来てなかったんだ。特定のものを作らないといけなかったからね。DJがプレイしやすいようなイントロとか、ダンスフロアのための音楽。でも、俺はジャズ・バンドの経験もあるし、パンク・バンドでもプレイしてたし、アフリカン・ミュージックやエイフェックス・ツインなんかも聴いてたから、ひとつの種類の音楽を作るっていうことに対してあまり良い気分がしなかった。だから、アルバムでは自分のもっと広い音楽テイストと愛を表現したくて、そういう音楽をまとめたんだ。

■しかしなかでも、ハウス・ミュージックの要素が前に出ているように思います。あなたにとっての良いハウスとはどういったものでしょう? 

ジムイー:良いハウスには、すごく自由なヴァイブがある。ただただ聴いていて気持ちいいだけ。頭だけじゃなくて身体を動かしたくなるような良いヴァイブがある。脈がうずくような。だから、俺にとっての良いハウスは、ハードだけど落ち着いたヴァイブやグルーヴがあるもの。音楽のなかで迷いこんでしまうような。そういうのは大好きだね。歩いているときにステップを踏んでしまいそうな、フィーリングやヴァイブがビートの周りに漂ってる。アップリフティングなハウスか、ディープなハウスかは関係ない。その周りにどんなヴァイブが漂っているかが重要なんだ。

通訳:好きなハウス・ミュージックのアーティストはいますか?

ジムイー:誰だろうな……何聴いてるかちょっとチェックさせて……いま俺がハマってるのはヘッド・ハイ。知ってるかな? 彼の作品には昔のハウスのグルーヴがたくさん入ってる。ガレージっぽいグルーヴとか、トッド・テリーなどと似たグルーヴを持ってて、それを2014年の感覚とミックスしてるんだ。彼は最近のお気に入りだね。ヘッド・ハイの作品には本当にハードなグルーヴがある。俺、そういうのが好きなんだ。
 昔ので言えばロビンS。彼女がパーフェクトなハウス・アンセムへの愛を見せてくれたといっても過言じゃない。すごく感情的で、フィーリングが溢れてる。90年代のハウスって世界中の音楽のなかでも好きなものが多いんだよね。バウンスやヴァイブがあって、さっきも言ったみたいに迷い込めるような。あとはラズロ・ダンスホール。彼らも似たことをやってるから。

取材:木津毅(2014年7月23日)

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Profile

木津 毅木津 毅/Tsuyoshi Kizu
ライター。1984年大阪生まれ。2011年web版ele-kingで執筆活動を始め、以降、各メディアに音楽、映画、ゲイ・カルチャーを中心に寄稿している。著書に『ニュー・ダッド あたらしい時代のあたらしいおっさん』(筑摩書房)、編書に田亀源五郎『ゲイ・カルチャーの未来へ』(ele-king books)がある。

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