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interview with The Drums

interview with The Drums

生きていることにゾッとする

──ザ・ドラムス、インタヴュー

橋元優歩   
通訳:Lena-Grace Suda(Tugboat Records Inc) 
写真:Yuki Maeda(Tugboat Records Inc)  
Dec 26,2014 UP

僕は生きていることにゾッとする(笑)。 (ジェイコブ・グラハム)

でも死ぬのはもっと恐いよね? (ジョナサン・ピアース)

あなたたちが出てきたときは、まさにニューヨークへのフロリダからのミニマムでマキシマムな一撃だというふうに感じたんですけど、今作はそのトゥー・ミニッツ・ポップな印象を崩すようなアルバムであったと思います。ポスト・パンク調になっていますし、すごくサイケデリックな雰囲気を描き出していると思います。このようにフォームが崩れていったことに対してはどのように思っていますか?

ジェイコブ:どう思っているんだろうね(笑)。最初のEPや2枚のアルバムは厳密な形式に基づいて作ったんだけど、同時に自分たちがやっていることの領域を広げることにも挑戦していた。その領域を拡張するために実験的になりたかったんだ。僕たちのサウンドは世間一般に言う「実験的」には当てはまらないだろうけどね。
“マジック・マウンテン”みたいな曲は前みたいなポップ・テイストでしょ? 2、3分のポップ・ソングが単に4分ちょっとのポップ・ソングになっただけだって言われても否定できないね(笑)。でもスタジオでのレコードの作り方は前よりも多様になったかな。ライヴでも音楽的なアイディアを試しているよ。

“マジック・マウンテン”のMVには魔剣が出てきますが、あれは自分たちを守るものという直接的な比喩だと思いますし、それを振り回して山を進んでいく姿にとても胸がつまったんですけど、あの剣のイメージはどなたのアイディアなんですか? あと、生きることとは、やはり恐ろしいことなのでしょうか?

ジェイコブ:僕は生きていることにゾッとする(笑)。

ジョナサン:でも死ぬのはもっと恐いよね?

ジィコブ:そうなんだよね。種類がちがう恐怖かもしれないけど(笑)。剣はどっちのアイディアだっけ? あのヴィデオのイメージは僕らのアイディアが組み合わさってできたものなんだ。

ジョナサン:剣は防御の象徴でもあるし、悪と戦う手段にもなり得るでしょ? アグレッシヴな気持ちを表現したかったから剣を選んだ。自分たちと同じような境遇のひとに向けたメッセージがこの曲には込められている。つらい子ども時代を送って世間に嫌気が指しているふたりがいっしょに戦うっていうのがこの曲のテーマで、ある意味では僕たちがこの曲のリスナーを守るっていうテーマがある。


あの頃はとても誠実に現実逃避しようとしてた。(ジョナサン)

あなたたちが作っていたヴィンテージな曲は現在の否定、つまり過去のみが美しいと言っているかのように感じました。先ほどは今作について「昔よりもやっていることの領域が広がっただけ」とおっしゃっていましたが、サイケデリックが強まり、ポップの黄金率を破ったことによって、生きるための強い意志が備わったような感じがするんです。

ジョナサン:『エンサイクロペディア』はまさしく現在、この瞬間についての作品だよ。今作は以前の作品より強いリアリティを持っていると思う。前は夢を見ようとしていたのかもしれないね。作品を作ることによって現実から逃げ出して過去に飛び込みたかった。現在や未来なんて完全に度外視だったな。
 でも今作の製作中はすでに起こったことに対して敏感になるんじゃなくて、「自分たちは何なのか? バンドとは何なのか?」という問いに正直になろうとしたんだよ。ホモ・セクシュアリティとか、人権運動とかもテーマにしたから、政治的な要素もあると思う。この段階にたどり着くまでにけっこう時間がかかったのは、それなりに変化を経験したからかな。1枚めを出したときは誠実さにかけていたというか……、いや、ちがうな。あの頃はとても誠実に現実逃避しようとしてた(笑)。それと作品にドリーミーで映画的なテイストを持たせようとしていたな。新しいアルバムはいままででいちばん映画的に響くかもしれないけど、それと同時に歌詞や内容にはリアリティが詰まっているんだよ。

取材:橋元優歩(2014年12月26日)

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