Home > Interviews > interview with おとぎ話 - 何故ロックンロール?
タイ・セガールとか好きですね。もう死んじゃったんですけどジェイ・リータードとか、ああいうのが好きなんですよね。音源出しまくったりとか、見境がない感じっちゅうか、なんかもうバカっていうか、そういうのが。
おとぎ話 CULTURE CLUB felicity |
■で、なぜロックなんですか? 「ロックンロール・イズ・デッド」ってわざわざ言っているということは、本当はロックンロールに生きていてほしいということだと思うし。
有馬:何なんですかね? ロックンロールがスーパー・ヒーローになって欲しいというのはあるんですよね。まぁ、わかりやすい例だと『ドラゴンボール』の悟空とか(笑)。
■お父さんからロックンロールはどのように教わったんですか?
有馬:オヤジにワイト島の映像を見せてもらって、「これがロックだろ?」みたいな。
■マイルス・デイヴィスとかが出ていて最後に暴動が起きるやつだよね? 全然おとぎ話と違うじゃん(笑)!
有馬:それでフリーとかをみて、「やべぇ、超ロック」って思って。でもそれがロックだとすると、自分がそこから思い描いてきたロック像ってまたかけ離れているから。
■わかった! ロックが、お父さんから聞いたおとぎ話っていう意味なのでは……?
有馬:ハハハハ(笑)。笑っちゃいますけどそれはあるかもしれないですね。
■しかし、ワイト島がどうしてファンタジーなのか……あの映像は、ウッドストック的なもの、ああいうラヴ&ピース的なものの終焉を描いているから。マイルス・デイヴィスとか、みんな演奏がラヴリーな感じじゃなくて、もっとこうなんか……
有馬:殺伐としていますよね(笑)。でもそれが幻想としてあったのかも。「ロックンロール・イズ・デッド」とか言っちゃうのは、基本的には負けの美学みたいなものが根付いているというか。哀愁を帯びたものがすごく好きなんですよね。
■有馬くんの世代は、わりと若いうちから大人になれって言われてきた世代じゃない?
有馬:完全にそうですね。でも、俺はずっと子どもでしたよ。
■大変だよねぇ。しかし世の中はそうでも、有馬君のお父さんはちがうよね? お父さんは子どもでいろって自分の子どもに教えているわけだからね。
有馬:ホントそうですね。大学に行けば何をやってもいいって言われましたから。「俺が中卒だから」っていう理由だったんですけど(笑)。
■ハハハハ!
有馬:「俺が中卒で苦労したから、お前は大学へ行け」と。だから、大学には行ったんですけど、そこからだいぶ子どもになりましたね。
■理解のある家庭だったんだね。不良になる理由がなかったでしょ?
有馬:たしかになかったですね。だけど不良には憧れていましたね。でも、その憧れている不良の対象というのがとんねるずっぽさだったりとか。
■世の中の不良とは違うよね。
有馬:電気グルーヴがツアーのタイトルに「野糞探し」って付けたりしていて、意味わかんねぇみたいな。ああいうものが自分のなかの不良形成のもとになった気がしますね。
■電気グルーヴはいつ聴いたの?
有馬:小中ですね。中学のときに“シャングリラ”って感じじゃないですか? ああいう大人がふざけている感じが気持ちよかったですね。
■高校時代は何を聴いていたの?
有馬:ブリット・ポップが流行っていたじゃないですか? めちゃくちゃ好きになってそういうのを一通り聴きました。で、そのとき本当にハマったのはヨ・ラ・テンゴとかフレイミング・リップスでした。
■サイケデリックだね。
有馬:そっちの方に行っちゃうんですよ。これは面白いからこれからもずっと聴いていくだろうなって感じました。
■いまにしてみたら絶対にブリット・ポップでしょ?
有馬:そうですね(笑)。でもブリット・ポップで好きだったのもパルプだったりとか。あとブラーも好きだった。
■でも、パルプみたいに屈折した感じはないでしょ?
有馬:そうなんですよね(笑)。そのへんで言うと、俺はすごく『少年ジャンプ』的な考え方ですね。この先自分から出てくるものが楽しみなんです。アルバムつくっていたこの2年間に環境的にも変化があって、同棲していたんですけど、それも終っちゃったので。
■ふられたの?
有馬:まぁいろいろとありましたね(笑)。6年間同棲していたんですけど、結婚になかなか踏み込めなくて、最終的に別れることになっちゃって。いまはひとり暮らしになったんですけど。
■じゃあ、その彼女に対する思いがこのアルバムには詰まっているわけだ。
有馬:詰まってますね(笑)。エンケンさんも「ラヴ・ソングは良い」と言ってますからね。
■遠藤賢司とおとぎ話はなかなか結びつかないなー。
有馬:共演もしています(笑)! 自分ルールみたいなものがあるんですが、ライトななかに、たまにドキッとするような感じの言葉が散りばめられている(だけど)といいなと。そういうのが一番下にあって、どっかひとを遠目に見たいというのがあるんです。
■ステージ衣装はどういうところから来ているんですか?
有馬:わかりやすいかなと思っただけなんですよね(笑)。見た目が本当はわかりやすいから、そのまま出続ければよかったんですけど。ちなみに今年からは普段着でやろうかなと思っているんですよ。
俺たちは明治学院大学出身で、(同じ学校出身の)ミッシェル・ガン・エレファントも服を買っていた並木っていうお店で1回くらいスーツを作ってみようってなって(笑)。で、〈ローズ〉から出したアルバムのテーマ・カラーが黄色だったので、黄色いスーツを作っちゃえと。
■あのスーツの形は一昔前の、言い方が悪いけど、キャバクラのショーとかで着られていそうなやつだよね(笑)。
有馬:手品師みたいな感じになれば良いねみたいなことは言っていましたよ。
■モッズ・スーツに金を出すんじゃなくて、あえて手品師のスーツに(笑)。
有馬:「そんなんやるやついないでしょ?」っておとぎ話は常に言っているかもしれないですね(笑)。うちのドラムとかは「有馬はバコーンってわかりやすいストレートな曲を書くから、逆にこんなんやってるやついないだろって感じを他のことでやれば?」って言っています。
■自分のなかで理想的なロック・バンドってどんなバンド?
有馬:あーでも、『ホワイト・アルバム』を出したときのビートルズとかは……
■メンバーの仲が悪いじゃん。バンドとしては解散状態だよ?
有馬:あれで仲が良かったら最高なんじゃないかなって思うことがあります(笑)。
■やっぱり60年代のバンドなんだね。
有馬:そうですね、そっちにいっちゃいますね。
■“ハロー・グッバイ”もカヴァーしていたし。
有馬:でも結局このアルバムを作っているときも「これがビートルズの『リヴォルヴァー』だったら」って考えたりしました。勝手に自分のなかで『カルチャー・クラブ』は「リヴォルヴァー期」とかって思ってました(笑)。
■同名曲ではサブ・カルチャーについて歌っていますけど、これにはどのような意味が込められていますか?
有馬:ひとつだけ言うと、ツイッターとかみんなやってるけど……お店とかで「サブカルはこれです」とか「サブカル好きはこういう音楽が好き」って雑多にカテゴライズされていて、サブカルが決まり切ったものとして流通しちゃっているというか。
たとえば、昔読んでた雑誌の『バースト』だってサブカルを感じるてたんです。自分にとって、触れちゃいけないところに飛び込んでいって、自分のなかでいろいろ培っていくのがサブカルみたいな。サブカルって言葉自体も神聖な感じがしたんですよ。日常生活で簡単に情報が入ってくるのが嫌で自分が選択したものがサブカルだと思っていたので。
■なるほどね。
有馬:たまに最近サブカル好きが話しているのを聞いていると、気持ち悪くてウザいなって。サブカルってものがすごく型にはまっているというか。まぁでも、この曲は笑いながら作ってましたけどね。
■アイロニーとして、“カルチャー・クラブ”だったんですね。
有馬:「サブ・カルチャー」って言葉を曲のフックになるところで入れたから、「じゃあ“カルチャー・クラブ”でいいか! 「カーマは気まぐれ、カメレオン」だもんね」とか言って(笑)。そうしたら櫻木さんから「アルバムのタイトルは『カルチャー・クラブ』が最高です!」って言われて、「えー!」ってびっくりしましたけどね。
■櫻木さんもたまに判断を誤ることがありますからね。
有馬:ハハハハ(笑)!
※バタン!(勢いよくドアが開く音)(なんと、ここで櫻木さん登場)
有馬:おお、すごいタイミングで!
■いまの会話聞いてたの? すごいタイミングだよ(笑)。
有馬:びっくりした(笑)!
櫻木:清水エスパルス!
有馬:野田さんからフックのあるひと言があったので(笑)。
櫻木:まだこれ取材中ですか?
■思い切りそうです(笑)。
有馬:ちょっと面白かったですね!
取材:野田努(2015年1月29日)