「swi」と一致するもの

special talk : BES × senninshou - ele-king


BES - THE KISS OF LIFE
ILL LOUNGE

Hip Hop

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仙人掌 - VOICE
Pヴァイン

Hip Hop

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 BESと仙人掌というふたりのラッパーがいなければ、少なくとも2000年代中盤以降の東京の街から生まれるラップ・ミュージックはまた別の形になっていただろう。ふたりは恐縮して否定するかもしれないが、これは大袈裟な煽りではなく、厳然たる事実である。BESと仙人掌はそれぞれ独自のラップ・スタイルを発明して多くのフォロワーも生んだ。どういうことか?

 作品や彼らのキャリアや表現について個人的な論や説明を展開する誘惑にも駆られるが、ここでは多くを語るまい。ひとつだけ端的に言わせてもらえれば、余計な飾りつけなしの、1本のマイクとヴォイスとリズムのみでラップの表現を深化させたのがBESと仙人掌だった。ここにその両者の対談が実現した。ふたりを愛するヘッズはもちろん、彼らをまだよく知らない『ele-king』読者の音楽フリークにもぜひ読んでほしい。そして、仙人掌が2016年に発表した一般流通として初となるオリジナル・ソロ・アルバム『VOICE』、BESが3月に出したサード・アルバム『THE KISS OF LIFE』を聴いてみてほしい。『THE KISS OF LIFE』のプロデューサー、I-DeAにも同席してもらった。ふたりのラッパーの物語は、今年20周年をむかえた池袋のクラブ〈bed〉からはじまる。


ラップをあえてレゲエ風にしようとかではなくて、ヒップホップとレゲエが俺のフロウのなかで自然といっしょになっていった。そういう俺の感覚と合致していたのが仙人掌だった。 (BES)

BES from Swanky Swipe feat. 仙人掌, SHAKU“Check Me Out Yo!! Listen!!”

ふたりの最初の出会いをおぼえてますか?

BES:〈bed〉ですね。仙人掌は昔からラップが上手くて、初めてライヴを観てすげぇ食らったのをおぼえてる。それで気づいたらウチに来て遊んだりするようになってた。メシア(the フライ)がまだDOWN NORTH CAMP(以下、DNC)にいたときで、CENJU(DNC)もTAMUくん(DNC)もいた。

仙人掌:最初に遊んだのはその4人だったかもしれないっすね。SORAくん(DNC)もちょっといたと思う。そのとき俺は〈bed〉でライヴしてて、気づいたらタカさん(BES)が「そうとう酔っぱらってらっしゃいますね」みたいな感じでいきなり肩組まれて、「お前、とにかくウチ来い」って。俺、まだ高校生だった。

BES:ははははは。17とか?

仙人掌:そうっすね。タカさんの自由ヶ丘の家にいそいそと遊びに行って、それからホント全部教えてもらいましたね。

BES:教えてもらいましたよ、俺も。ENYCEの読み方とかね。俺が「エニシー」って読んでたら、仙人掌に「いや、違います。エニーチェです」って言われてさ。

仙人掌:ははははは。〈bed〉で〈ELEVATION〉(2001年にスタート、2012年にファイナルを迎えた)っていう長く続いたパーティがあったんですけど、そのパーティの第4月曜日にSWANKY SWIPEと俺らが出てたんですよね。当時はまだSWANKYじゃなくて、SPICY SWIPEって名前でやってましたっけ?

BES:そうそうそう。

仙人掌:SWANKY SWIPEに名前が変わったころになると、〈bed〉の人たちはみんな「ヤバいラッパーはBESでしょ!」みたいな感じだった。DJのサイドMCでバリバリカマしているタカさんをフロアで観てましたね。

BES:〈ELEVATION〉がはじまる前に〈bed〉で〈URBAN CHAMPION〉(1999年スタート、現在まで続く)っていうパーティがあったんですよ。そこで“煽りMC”って言うんですか? それをやりまくって盛り上げまくってた。そこにPorsche(SWANKY SWIPEのDJ)もDJ MOTAI(〈URBAN CHAMPION〉のオーガナイザー)もいた。あとIKDくん(NOISE2 SOUND SYSTEM)もいたね。

仙人掌:Gatchaくん(〈bed〉でおこなわれているパーティ〈the River〉のオーガナイザー)もいましたね。〈bed〉がとにかくヤバいラップの見本市だった。そのなかでSWANKYは俺にとって特別だった。SWANKYが新曲をやると、当たり前にフロアのいちばん前に行っていた。突発的に出演者同士がライヴでヴァースに混ざったり、次のライヴでサイドMCやりあったり普通にありましたね。

BESさんの曲のなかでいま思いつく印象的な曲はありますか?

仙人掌:1曲にしぼるのはなかなか難しいですね。ただ、『Bunks Marmalade』(SWANKY SWIPEのファースト・アルバム。2006年)の前にもたくさん曲があって、“Check Me Out Yo!! Listen!!”でも当時の曲のフックを引用させてもらったりしてますね。ライヴもいちばん観ていたし、当時の印象が強いんですよね。タカさんもEISHINくん(SWANKY SWIPEのビートメイカー/ラッパー)もステージでふらふらで壮絶でしたね。

BES:ははははは。

2006年にSEEDA & DJ ISSOの『CONCRETE GREEN.1(改)』がリリースされて、あのコンピ・シリーズが本格的に動き始めますね。そういうなかで、BESと仙人掌というラッパーはそれまでの日本語ラップとは異なるラップのスタイルを打ち出していったと思うんです。自分たちのスタイルをどのような意識で作り上げていきましたか?

仙人掌:『CONCRETE GREEN』は俺らにとっては“第2段階”って感じなんです。その前があるんです。いちばん最初にタカさんの家でラップの話をしているときに、タカさんが強調していたのは「とにかくノれるラップ、フロウなんだよ」ってことです。「いかに“フロウを崩せるか”なんだ」って。それで、ブーキャン(ブート・キャンプ・クリック)とかいろんなダンスホール・レゲエとかを見て、聴いて、学んでいった感じですね。

BES:昔、レゲエの現場に行ったね。バスタ(・ライムス)もメソッドマンもレッドマンもフージーズもみんなレゲエを使うじゃないですか。俺もレゲエが大好きだったからヒップホップとレゲエのふたつを押さえときゃ間違いないと考えてた。だから、ラップをあえてレゲエ風にしようとかではなくて、ヒップホップとレゲエが俺のフロウのなかで自然といっしょになっていった。そういう俺の感覚と合致していたのが仙人掌だった。あと、SIMONだね。「こういうことするヤツいた! 見つけた!」って。

仙人掌:SIMONは俺と同い年で、18、19のころに出会ってるはずですね。SIMONも当時からずば抜けてヤバかった。

BES:USの流行にただ流されるんじゃなくて、自分の好きなことをやっていたよね。〈SON〉(〈SON OF NINJA〉という〈ニンジャ・チューン〉傘下のレーベル)っていうアンダーグラウンド・レーベルがあって、そういうレコードを〈ギネス・レコード〉とかで買ったりもしていたね。

仙人掌:〈ギネス・レコード〉で日本人のブレイクビーツを2枚買いしたりもしてましたよね。

BES:知らないレコードでも試聴して「かっけー! これ2枚買いだ!」って買ってDJにライヴで2枚使いしてもらってたね。

仙人掌:「このビートはヤバイ!」って反応したときのタカさんの体の動きはすぐわかった。SWANKY SWIPEはライヴで使ってるビートも他と違ってた。俺らの周りでネプチューンズやカニエ、ジャスト・ブレイズなんかにいちばん最初に反応してたのもタカさんだった。ユニークなビートに対しての嗅覚がありましたね。ブーキャンとかの裏ノリを維持しつつ新しいビートのフォーマットにハメていくフロウを作り出していったラッパーは、俺の知る限りでは間違いなくタカさんですね。EISHINくんの存在もデカかったですよね。

BES:超デカかった。EISHINは俺よりもアンテナを広げてるヤツで、のちにヒップホップ以外も大好きになっていって、ソウルを聴きながらチルしてゆっくりする時間を設けたりするようなヤツだった(笑)。ネプチューンズがプロデュースしたバスタの曲が流行ったときにEISHINとふたりでトライトンでビートを作ったりもしたね。

仙人掌:EISHINくん、J・ゾーンが超好きでしたよね。何かと言うと、「J・ゾーン、聴いたか?」って言っていた記憶がある。そういうセンスがすごく面白かった。

BES:グレイヴディガズのアルバムに入ってる、(体を捻らせながら)こんなんなっちゃうようなリズムのビートが超好きで、そういうのをDJでかけたりしてたよね。

仙人掌:俺、EISHINくんとタカさんとの会話でいまでもおぼえていることがあるんですよ。Shing02が『400』(2002年)を出したときに、EISHINくんが「Shing02のラップはキレてる。上手いよね」みたいなことを語っていたんですよ。そういう、変わったリズムへの嗅覚のあるEISHINくんのShing02の聴き方とかも新鮮だった。ラップやリズムの捉え方が圧倒的に独特だった。

BES:俺ら、韻の数とか数えてたしね。例えば「あいう」の母音の単語でヴァースをはじめたら、ヴァースの最後も「あいう」の母音の単語をもってくるとかね。そういう作業もしていたから当時はラップを作るのに超時間がかかった。

SEEDA feat. 仙人掌“山手通り”

SEEDAくんやタカさんやSCARSのラッパーの人たちの何が圧倒的にすごいかって、スピードなんですよ。何が正しい、何が間違っているではなくて、その瞬間をラップでパッケージするスピードなんです。 (仙人掌)

ふたりが共作した曲はいくつもありますが、いちばん最初はどの曲でしたか?

仙人掌:盛岡のDJ R.I.Pさんとの曲ですね。

BES:あれ? 何だっけなぁ。俺、超ド忘れしてるぞ(笑)。

仙人掌:未発表曲だけど、俺も盛岡の人たちもみんな持ってますね。IKDくんの家で録りましたね。

BES:今度聴かせて。俺が当時の仙人掌でおぼえてるのはファボラスの曲のトラックに乗せてラップしてて超かっこよかったことだね。

仙人掌:ああ、ありましたね。それはたしか、〈ELEVATION〉の6周年か7周年のときに作ったエクスクルーシヴ音源ですね。あのときはエクスクルーシヴをかましまくってましたよね。やっとラップを録ることをおぼえたぐらいじゃないですか。

BES:そうそうそう。いまはRECの仕方もリリックの書き方も当時とは変わっちゃってるけど、あのときが基礎になっているね。『CONCRETE GREEN』ぐらいからちょっとスタイルや描写の仕方も変わって、スキル的にも上手くなっていった。

仙人掌:『CONCRETE GREEN』からタカさんもラッパーとして加速していったと思う。レコーディングの仕事も増えていきましたね。〈bed〉の人たちだけじゃなくて、メジャーでやっているようなアーティストからも「BESとSWANKYがヤベえぞ」という雰囲気が出てきた。そこで俺はちょっとさびしい気持ちになるというね(笑)。

BES:ははははは。俺も行く先々でDNCの宣伝をして歩いてたんだよね。「仙人掌っていうヤバいラッパーがいる」ってさ。

仙人掌:SEEDAくんを紹介してもらったのもタカさんの家でしたね。元々SEEDAくんはTAMUくんを昔から知っていて(SEEDA、TAMU、EGUOでMANEWVAというグループを組んでいた)、俺が会ったのはそのときが初めてだった。

BES:SEEDAと仙人掌はその後“山手通り”(SEEDAのメジャー・デビュー作『街風』収録。2007年)を作ったりしたよね。

仙人掌:そうですね。タカさんにはいろんな人を紹介してもらった。

BES:あのカナダ人に会ったことおぼえてる?

仙人掌:え? え? ああぁぁぁー、わかります! うわー!(笑)

BES:俺とSEEDAといっしょに会いに行ったでしょ。

仙人掌:あの双子のラッパーの! 彼に「ラップ持ってないか?」って訊いたら、「ラップ? いまやってやろうか?」って答えてきて、「違ぇ、違ぇ、そのラップじゃなくてサランラップだよ!」って(笑)。

BES:そんなこともあったね(笑)。

仙人掌:タカさんがマックスで危ないときにもいっしょにいたりもしましたしね。3、4日寝てないのも普通だったり、テーブルにアサヒのビールの空の缶がブーーーワーーーッと積んであって、灰皿もブーーワーーーッて山盛のタバコだったり。

BES:鼻地獄だったみたいっすよ。

仙人掌:ははははは。そういうダークな時期もありましたね。タカさんとラップしたり遊んでいるうちに謎の状況に巻き込まれていっしょにタクシーに乗って向かうと、「俺がいるべきじゃない場所にいるかもしれないぞ。ヤベえ……」ってこともありましたね(笑)。そういう意味でもホントにいろんな貴重な経験させてもらいましたよ。タカさんはそういう時期を経て、『REBUILD』(2008年)をリリースしていったんですよね。

BES:『REBUILD』を出したあともまた俺はいろいろ食らっちゃったけどね(笑)。

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俺はタカさんやSEEDAくんにヒップホップ観を変えられたし、俺がラッパーに本気で怒られたのってタカさんとSEEDAくんぐらいなんですよ。だから俺はこのふたりを認めさせたいと思ってラップしていますよ、いまも。 (仙人掌)

SEEDA feat. BES, 仙人掌“FACT”

『CONCRETE GREEN』と言えばいわゆる「ハスリング・ラップ」をシーンに認知させて、定着させたコンピでもありましたね。一方で、BACHLOGICがプロデュースした、BES、仙人掌、SEEDAの共作曲“FACT”(『CONCRETE GREEN.3』収録。2006年)も重要な曲ですよね。

BES:そのころの俺はもうファックドアップでしたね。金があるときとないときが激し過ぎて山あり谷ありで大変だった。子どももできて育てなくちゃならなかったですしね。“FACT”を作ってるときはまさにそういう時期ですね。あの曲は現実を目の前にして困惑する自分も出ている。

仙人掌:あの曲をI-DeAさんの家で録ってるときにちょうど子どもが産まれそうな時期でしたね。「(録音中に)嫁が産気づいちゃったらすみません」みたいなことをSEEDAくんに話してたのをおぼえてます。

BES:“FACT”は思い浮かぶリリックをそのまま書くっていうテーマがあった。『REBUILD』に入ってる仙人掌との“Get On The Mic”は、俺が「そろそろコレじゃダメだ。マイクとラップで生きていこう」という気持ちで作った曲でもありましたね。

仙人掌:だから実際、ハスリング・ラップがどうこうでもないと思うんですよ。SEEDAくんやタカさんやSCARSのラッパーの人たちの何が圧倒的にすごいかって、スピードなんですよ。何が正しい、何が間違っているではなくて、その瞬間をラップでパッケージするスピードなんです。リリックの言葉遣いに迷っていたり、そのころになるともう韻の数を数えてやっていたら……

BES:追っつかないよね。

仙人掌:そう、ぜんぜん追っつかないじゃないですか。そういうスピードが『CONCRETE GREEN』1枚1枚の、あのヴォリュームにもなってると思う。とにかくラップをビートに乗せて、ヤバい表現があって、それが作品なんだっていうラップとヒップホップの捉え方なんですよ。ホントにずーっとフリースタイルしてましたからね。それで作品も作っていく。そういう物事の捉え方とアウトプットとスピードが俺には衝撃的だった。

BES:しかも世に出す作品としてのクオリティが問われはじめるときだよね。

仙人掌:ホントにそうですね。俺はタカさんやSEEDAくんにヒップホップ観を変えられたし、俺がラッパーに本気で怒られたのってタカさんとSEEDAくんぐらいなんですよ。だから俺はこのふたりを認めさせたいと思ってラップしていますよ、いまも。もちろんこれからも。

BES:もう最初に会ったときにすでに認めてるけどね。

“FACT”はI-DeAさんの自宅スタジオで録音したということですけど、当時のことをおぼえてますか?

I-DeA:俺が中目黒に住んでいたときの部屋に2時間おきとかにラッパーが来て録ってました。『CONCRETE GREEN』の1、2、3あたりのSCARS関連の録音は全部俺ですよ。アカペラをインストに乗せて、エディットして、別バージョンを作ったりしていた。でも、ぜんぜん金が入ってこなかった(笑)。「遊びましょうよ」って連絡があって『ウイニングイレブン』をやって、俺が負けたらタダでRECしてましたから(笑)。そうやってRECしていって気づいたら『CONCRETE GREEN』が出てた。『SEEDA'S 27 SEEDS』(2005年)なんかもまさにそうですね。

ラッパーたちの録音の仕方とか、曲で印象に残っていることってありますか?

I-DeA:DNCやSD JUNKSTA周りのラッパーと一気に知り合って、彼らが入れ代わり立ち代わり俺の自宅スタジオに来てひたすら録音していったから、その記憶しかないんですよね。あと、ビートがかかるとみんなでずーっとフリースタイルしている光景は鮮明におぼえてる。俺はラップしないから、「うぜぇなあ」とか思いながら見てましたけど(笑)。でも、いま10年ぐらい経ってあらためて思うのは、お世辞抜きに『CONCRETE GREEN』に入ってるラッパーたちのクオリティやスキルが高かったことですね。関係も近くて当時はそのことにあんまり気づいてなかったけど、レベルが高かったんだなって。

ちょっと前に田我流くんに『別冊カドカワ DIRECT』という雑誌の日本のラップ特集で取材させてもらったんですよ。仙人掌くんも同席してもらって。そこで田我流くんが、『CONCRETE GREEN』はひとつの「ムーヴメント」だったと言っていて、「いまの俺らがあるのは、『CONCRETE GREEN』の勢いがあったから。いままであのジェットコースターの勢いに乗ってやってきたと言っても過言じゃない」って強調してたのがすごく印象的でした。

BES:俺もそうっすね。それに乗っかった感じですよね。当時はずっとみんなと遊んでいたんですけど、生活が変わればサイクルも合わないし遊ぶ時間もなくなる。だから、いま会うのは〈bed〉ですよね。そういえば、当時、SCARS全員が俺らの下でワチャワチャ遊んでた高校生の卒業式のアフター・パーティみたいな会に呼ばれて行ったことがありましたね。親御さんもいて、「これでどうやっていつも通りライヴしろっていうの?」って雰囲気だった。案の定ライヴ後にシーンとなりますよね。親御さんが「いったい、これは何なの?」みたいな顔してたな(笑)。

一同:だははははっ。

辞書も引かなくなりましたね。わざわざ外人のあいだで流行ってるスラングを使う気にもならないし、それでも気になったら人に訊けばいいじゃないですか。それよりも自分が普段しゃべっている言葉でラップを作るほうがいいと考えましたね。 (BES)

JUSWANNA feat. BES & 仙人掌“Entrance”

BESさんは、「勘繰り」や「バッド・トリップ」の複雑な精神状態をラップの表現に落とし込んで、それを他に類を見ないひとつのスタイルにまでしましたよね。

BES:それをやると絡まれるから誰もやらないんですよ(笑)。“かんぐり大作戦”を作って実際に3、4人に絡まれてますしね。

仙人掌:ヤバい(笑)。

BES:まあ、ハスってると勘繰りがたぶんすごいっす。みんなそうだと思います。

勘繰りって物事の裏の裏まで読んでしまうことだと思うんですけど、本人が意図しないものも含めて、そのことによってラップの中にダブル・ミーニング、トリプル・ミーニングといくつもの意味が発生していってそれが独特のドープさになったのかなと思うんです。BESさんと同じ経験をしていなくても、聴く側はそのラップからいろんな想像力を喚起させられる余地を作るというか。

仙人掌:たしかに。それはまさにそうかもしれないですね。

しかも、スラングはあったりしますけど、特別に難しい言葉や単語をそこまで使わないですよね。

BES:そうですね。国語辞典を引いたりしていたのは初期だけですね。パトワ語の辞典も引いてましたね。でも、辞書も引かなくなりましたね。わざわざ外人のあいだで流行ってるスラングを使う気にもならないし、それでも気になったら人に訊けばいいじゃないですか。それよりも自分が普段しゃべっている言葉でラップを作るほうがいいと考えましたね。

仙人掌:タカさんの表現はアメコミっぽい部分もあると思うんですよ。俺とメシアくんとタカさんで作った“Entrance”(JUSWANNA『BLACK BOX』収録。2009年)もそうですよね。現実をただありのままに描写しているんじゃなくて、自分たちが何かと格闘しているというある設定を頭のなかに描いてラップしたりしている。それで、あの曲の最後に「火のついたマイク飛ばす」って表現が出てくる。

ああ、なるほど。

仙人掌:やっぱり人と違う言語感覚がありますよね。例えば、金色(キンイロ)をあえて金色(コンジキ)って発音することで言葉のハネやリズムを良くするとか、そういう感覚を当たり前につかんでるんですよね。仮にダサいラッパーが言葉として良い表現だからっていう理由だけでタカさんと同じ言葉を使ったとしても(言葉が)死ぬと思うんですよ。ただの言葉じゃなくて、倒置だったり、比喩だったり、リズムだったり、そういうのをすべて含めたタカさん独自の言語感覚があるし、ラップなんですよね。俺が最初観たときからそういうセンスや感覚がずば抜けていたんです。

BES:ありがとうございます(笑)。仙人掌も昔から生々しいラップをするし、自分の周りのことを歌っているのが聴いてすぐわかる。こっちもいままでそういう仙人掌のラップにずっとヤられてきたんで。俺がどんなに頭がおかしくなっても普通に付き合ってくれますしね。

仙人掌:ははは。それはホントに勘弁してくれって思いますけどね(笑)。

仮にダサいラッパーが言葉として良い表現だからっていう理由だけでタカさんと同じ言葉を使ったとしても(言葉が)死ぬと思うんですよ。ただの言葉じゃなくて、倒置だったり、比喩だったり、リズムだったり、そういうのをすべて含めたタカさん独自の言語感覚があるし、ラップなんですよね。 (仙人掌)

仙人掌も昔から生々しいラップをするし、自分の周りのことを歌っているのが聴いてすぐわかる。こっちもいままでそういう仙人掌のラップにずっとヤられてきたんで。俺がどんなに頭がおかしくなっても普通に付き合ってくれますしね。 (BES)

仙人掌 feat. ISSUGI & YUKSTA-ILL“STATE OF MIND”

それぞれの最新作を聴いてお互いどんな感想を持ちましたか?

BES:仙人掌は選ぶトラックがやっぱりオシャレだなっていうのはありますよね。

仙人掌:タカさんの選ぶビートは俺にはつねに驚きがありますね。『THE KISS OF LIFE』もかなりヴァリエーションがあるっすよね。

BES:そうだね。作り始めたときは振れ幅があってまとまりのないアルバムにしようと思って。最終的には起承転結のついたアルバムとしてまとまっているけれど、まずはそこまで意識しないで曲作りをしようと思った。次に作る曲のことを考えながらいま作ってる曲をやらないようにした。まず、目の前にある曲に対して思ったことを書いて、完成したら次の曲を録る。そうやって作ったね。(I-DeAを見ながら)先生もそれを手伝ってくれましたね。昔からレコーディングのときに的確なアドバイスをいただいているんで。

仙人掌:B.T.REOくんのビートの曲(“ピキペキガリガリ”)、おもしろいっすよね。ディストーションがかかったようなミックスにしてますね。あれは自分のアイディアですか?

BES:あれは先生のアイディアでしたね。

I-DeA:あれはBESくんのアイディアじゃなかったでしたっけ? BESくんがそういう感じにしたいって言ってたと思う。

BES:もう忙し過ぎておぼえてないっすね(笑)。

一同:ははははは。

MVもアップされている“Check Me Out Yo!! Listen!!”のRECはどうでしたか?

仙人掌:ビートが決まるのもRECも早かったですよね。ふたりでMalikのビートを聴いて「これだ!」って決めて、スタジオ行く前に駅前のマックで1時間ぐらいでリリックも書いた。即行作らないと緊張するんですよ。これまでタカさんと曲を作るとき俺のほうが待たせたこととか多いから。俺も無意識に力が入っちゃうんですよ。でも、俺、タカさんとやるときはラップ、キレてると思うっすね。

BES:たしかにキレキレですね。この曲のアナログも出しますよ。

仙人掌:だから、タカさんとやるときは「このフロウで食らわしてやろう」みたいな気持ちっすね。

SHAKUもかっこいいですよね。

BES:かっこいいっすよね。JOMOさん(〈bed〉のマネージャー/ヒューマンビートボクサー/DJ)に「最近〈bed〉でいい若いラッパーいます?」って訊いたときに名前が挙がったのがSHAKUだったんですよ。自主でCDも出しててかっこいいんですよ。今日、持って来れば良かったな。

仙人掌:このアルバムもそうだし、『REBUILD』も『Bunks Marmalade』も何がヤバいって、ほとんどのメンツが〈bed〉で完結してるんですよ。そうやってフッドを上げることはヒップホップのなかでいちばんかっこいい行為だと思うんですよね。それは何にも代えがたい行為でもあるし、そういうタカさんを尊敬してますね、俺は。

BES:ラッパーとしてのノウハウをおぼえていろんな勉強をして、お世話になってきた場所が〈bed〉だからね。すべてのきっかけとなったのが、俺はあそこだから。俺のホームなんですよ。だから、リリパは〈bed〉でやるって決めてる。今日もこれから〈MONSTER BOX〉でライヴがあるしね。

仙人掌:今日あらためて、普通に、冷静に、タカさんとこうやって話せるの、自分的にヤバかったです。ありがとうございました。

仙人掌“Be Sure”

Shobaleader One - ele-king

 スクエアプッシャー率いる超絶技巧バンド、ショバリーダー・ワン。3月8日にアルバム『Elektrac』をリリースしたばかりのかれらが、昨日3月23日、ボイラー・ルームにてライヴをおこないました。そのときの映像が YouTube に公開されています。いやー、バカテクですね。来日公演が楽しみです。下記よりチェック。

超 必 見!
スクエアプッシャー率いる超絶技巧バンド、
ショバリーダー・ワンが
3月23日23時にBOILER ROOMに登場!
衝撃のパフォーマンスを披露!
待望の来日ツアーはいよいよ3週間後!

ライヴ・バンドのコンセプトを根底から改革すべく、スクエアプッシャーが招集した、凄腕ミュージシャンたち:STROBE NAZARD(キーボード)、COMPANY LASER(ドラム)、ARG NUTION(ギター)擁するショバリーダー・ワンが3月23日23時にBOILER ROOMに登場! 衝撃のパフォーマンスを披露します!

Shobaleader One @ Boiler Room
https://blrrm.tv/squarepusher

東京公演が即日完売で大きな注目を集めるジャパン・ツアーはいよいよ3週間後! 大阪公演も完売ペース! 東京公演のチケットをゲットできなかったファンは名古屋へGO!

スクエアプッシャー率いる超絶技巧バンド、ショバリーダー・ワン待望のデビュー・アルバム『Elektrac』は、3月8日日本先行リリース! 国内盤2枚組CD(ブックレット付の特殊パッケージ)には、オリジナルのシースルー・ステッカーが封入される。またスペシャル・フォーマットとして数量限定のTシャツ付セットも販売中。

label: Warp Records / Beat Records
artist: Shobaleader One ― ショバリーダー・ワン
title: Elektrac ― エレクトラック
cat no.: BRC-540
release date: 2017/03/8 WED ON SALE(日本先行発売)
初回生産特殊パッケージ
国内盤2CD(¥2,500+税):オリジナル・シースルー・ステッカー/解説書 封入
国内盤2CD+Tシャツセット(¥6,000+税)

CAT BOYS - ele-king

 先日、平凡社から刊行された著書『新 荒唐無稽音楽事典』もあらためて話題になっている音楽家/文筆家の高木荘太。最近まだ目立ってますな。カセット・ストアデイでもひときわ人気を博したのが、高木壮太率いる「CATBOYS」だった。3月24日にはそのセカンド・アルバムがリリースされる。現代の音楽キーワードをシニカルに解説した『新 荒唐無稽音楽事典』の刊行と「CATBOYS」セカンドのリリースを祝して、ここに茨城県の植田氏から届いたライヴレポも掲載しましょう。

 CAT BOYSはラウンジを這い出たのか!  浦元海成(Dr,Vo)、高木壮太(Key,Vo)、NO RIO(Bs,Vo)からなる“午前3時のラウンジ・ファンク・トリオ”CAT BOYSの新作『BEST OF CAT BOYS vol.2』(以下『vol.2』)を一聴して、そう思った。青山の老舗クラブ蜂のハウス・バンドでありながら、思い出野郎Aチーム主催の「SOUL PICNIC」や吉祥寺のローカル・バンドM.O.J.Oのリリース・パーティに出演しキッズも交ざるライヴハウスのフロアを沸かせ、ファースト・アルバム『BEST OF CAT BOYS vol.1』(以下『vol.1』)発表後の3枚の7インチ・シングルでは手練のクラブDJたちにもその名を知らしめた。だから、と結論づけるのはいささか乱暴だけれど、『vol.2』には『vol.1』になかった楽曲の幅があり、密室のラウンジだけでは生まれ得ない緩急がある。そう、この音盤には、彼らのライヴをそのまま再現したような一夜のドラマが刻まれているのだ。ライヴ・レポートを書くように、以下にこのアルバムのレヴューを試みたい。
 

 ごあいさつとばかりにイントロから鍵盤が唸る“Fanfare”で夜の幕が開く。そのままミーターズ・スタイルのファンク・チューン“Switch Back”へと繋ぐ展開は完璧な導入だと言っていい。ここまでですでに身体は温まった。Sly&The Family Stoneの“Somebody's Watching you”をさらりと挿み、浦元による自作曲“Strawberry 2 U”でねっとりと揺らされる。まとわりつくようなグルーヴ、メンバーによる軽妙なコーラスもどこか怪しい味付けだ。そして迎える“Last Tango in Paris”。軽業師、高木壮太ここにあり! と思わず合いの手を入れたくなるこのセンス、白眉のカバーであるのは間違いない。『ラストタンゴ・イン・パリ』劇中の性描写を再現するような、なまめかしい鍵盤の調べは見事の一言。さて、この熱演でライヴは中入り。いまのうちにカラカラになった喉をビールで潤しておこう。
 気を取り直して後半戦。人が散り散りになったフロアに呼びかけるように、Booker T.&the MG's“Melting Pot”、Chic“Everybody Dance”とファンク&ディスコ・クラシックを畳み掛ける。グッとフロアの熱を上げたところで披露するのが、“Take Me To the Mardi Gras”。「ねえ、マルディグラに連れてってよ!/そこでは、みんなが歌い演奏してるの/ダンスも素敵なんだって」と呼びかける、ポール・サイモンによるニューオリンズ讃歌でリズムを変える。いきなりのギア・チェンジに戸惑う聴衆を気づかうように、ゆるやかに熱を保つこの選曲はハウス・バンドしての役割を担ってきたCAT BOYSの懐の深さを顕著に示しているように思う。つづく“Stay Cool”はこの夜いちばんのメロウ・チューンだ。ここまで来ると心はホカホカ、短い映画を見終えたような心持ちである。だけれど、まだ夜は終わらない。幻のバンドManzelのカバー“Space Funk”で、彼らはもう一度フロアの熱を上げていく。じっくりと愛撫をするように聴衆の身体を温めるレゲエ調のアレンジが絶妙だ。さあもう一回! もう一回だけ愛し合おうじゃないか。
 もっともっと! と欲しがる相手がいるならば、遠慮はいらない。当然最後はこの曲、文句なしのパーティ・チューン“Funka de Janeiro”――ただしここではリアレンジされ、より都会的に洗練された“Arabella”として演奏される。原曲の野蛮さを流麗なグルーヴに置き換えた創造的な再構成だ。アンコールは大貫妙子“都会”のカヴァーで涼やかに。まるでボーナス・トラックのような演奏になぜだか少しだけセンチメンタルな気分になる。あれだけ熱くなったのに、あんなに激しく踊ったのに。どうしたって夜は終わるのだ。分かっているのに虚しくなる。頼む。朝よ、来ないでくれ。このままずっと酔いつづけていたいんだ……。

 このレヴューを依頼され、『vol.2』を聴き込むほどに浮かぶのはなぜか性的なイメージばかりだった(まったくもって稚拙ですが!)。CAT BOYSはきっとその夜いちばんの女を落とすための演奏をしているんだろう。だから彼らはまた密室に帰る。彼らに、陽の光はまぶしすぎる。酔いの抜けない身体をずりずりとひきずって午前3時のラウンジに這い戻り、懲りない面々の乱痴気騒ぎのアシストをする。そういうバンドであってほしい。2017年にリリース予定の『BEST OF CAT BOYS vol.3』ではどんな夜が描かれるのか、いまから楽しみに待っていよう。


植田浩平(茨城県のつくば市でPEOPLE BOOKSTOREを営んでいます。
https://people-maga-zine.blogspot.jp/


"BEST OF CAT BOYS VOL.2 DIGEST SAMPLER MOVIE"
https://youtu.be/KdVk6FRGQnA"FRGQnA

"MASTERED HISSNOISE"
https://www.msnoise.info/

"新 荒唐無稽音楽事典"
https://www.heibonsha.co.jp/book/b272188.html

Shobaleader One - ele-king

 本日3月8日、スクエアプッシャー率いる覆面バンド、ショバリーダー・ワンのアルバム『Elektrac』が日本先行でリリースされました。それにあわせて、ショート映像「Scream Elektrac 1」が公開されています。

 そしてこのタイミングで、かれらからele-king編集部宛てに新たなインタヴューが届けられました。前々回前回に続いて3度目でございます。どうやら編集部はいまショバリーダー・ワンに付け狙われているようです。相変わらず興味深い内容のインタヴューになっています。以下よりご覧ください。


SHOBALEADER ONE
STROBE NAZARD / SQUAREPUSHER / COMPANY LASER / ARG NUTION

東京公演即日完売の来日ツアーも話題!
スクエアプッシャー率いる超絶技巧バンド、ショバリーダー・ワン
待望のデビュー・アルバム『Elektrac』がついに本日リリース!
ショート映像「Scream Elektrac 1」が公開!
iTunesではジャンル別チャート初登場洋楽1位を記録!

Shobaleader One - Scream Elektrac 1

ライヴ・バンドのコンセプトを根底から改革すべく、スクエアプッシャーが招集した、凄腕ミュージシャンたち:STROBE NAZARD(キーボード)、COMPANY LASER(ドラム)、ARG NUTION(ギター)。結成された超絶技巧バンド、ショバリーダー・ワンは、スクエアプッシャーの初期作品を中心に、ジャズ~フュージョン~ドラムンベース~エレクトロニカを横断する超刺激的なライヴを世界中で展開する。昨年公開された“Squarepusher Theme”と“Coopers World”のライヴ映像が話題を呼び、アルバム発表時にも公開されたファン垂涎の名曲“Journey To Reedham”が公開されるや、同時に発表された来日ツアーには、規定枚数を大幅に超える予約が殺到!

Shobaleader One performing “Squarepusher Theme”

Shobaleader One performing “Coopers World”

Shobaleader One - Journey To Reedham (Live Edit)

東京公演が即日完売となるなど、大きな注目を集めるジャパン・ツアーを来月に控える中、すべてのファンが熱望し、ファンならずとも想像を超える演奏力に度肝を抜かれるであろう衝撃作の全貌が明らかに!

タイトなキメを多用しながら饒舌なソロがつばぜりあいを繰り広げる展開は、エレクトロニック時代のマイルス・デイヴィスやウェザー・リポートの影はもちろん、ジョン・マクラフリンのソロやジミ・ヘンドリクスのエクスペリエンスなども脳裏をよぎる。
- Music Magazine

破天荒な打ち込みを再現するばかばかしいまでの志の高さと技術
- CD Journal

2016年末に公開されるやいなや瞬く間にバズったそのライヴ動画を見てうかつな輩は「ベースの人、うまい」などと頓珍漢なコメントを寄せたのだった。うまいに決まってるだろ。弾いてるのスクエアプッシャーだぞ。
- WIRED Japan

Shobaleader One - Elektrac
01 The Swifty
- from Feed Me Weird Things
02 Coopers World
- from Hard Normal Daddy
03 Don’t Go Plastic
- from Music Is Rotted One Note
04 Iambic 5 Poetry
- from Budakhan Mindphone
05 Squarepusher Theme
- from Feed Me Weird Things
06 E8 Boogie
- from Hard Normal Daddy
07 Deep Fried Pizza
- from Feed Me Weird Things
08 Megazine
- from Shobaleader One: d’Demonstrator
09 Delta-V
- from Just a Souvenir
10 Anstromm Feck 4
- from Do You Know Squarepusher
11 Journey To Reedham
- from Big Loada

スクエアプッシャー率いる超絶技巧バンド、ショバリーダー・ワン待望のデビュー・アルバム『Elektrac』は、本日いよいよ日本先行リリース! 国内盤2枚組CD(ブックレット付の特殊パッケージ)には、オリジナルのシースルー・ステッカーが封入される。またスペシャル・フォーマットとして数量限定のTシャツ付セットも販売中。

label: Warp Records / Beat Records
artist: Shobaleader One ― ショバリーダー・ワン
title: Elektrac ― エレクトラック

cat no.: BRC-540
release date: 2017/03/8 WED ON SALE(日本先行発売)
初回生産特殊パッケージ
国内盤2CD(¥2,500+税):オリジナル・シースルー・ステッカー/解説書 封入
国内盤2CD+Tシャツセット(¥6,000+税)

Dirty Projectors - ele-king

(細田成嗣)

 ダーティ・プロジェクターズによるセルフタイトルを冠した堂々たる最新作について、ひとまずはその表面から受け取ることのできるものを言語化してみることから始めてみよう。本作はこのグループの7枚めのアルバムであるとともに前作からメンバーがガラリと変わり、というかリーダーのデイヴ・ロングストレスしか残っておらず、改めてこのグループが通常の固定メンバーを従えたロック・バンドとは異なった、あくまでロングストレスの変名プロジェクトとも言うべきものであるということを印象付ける作品だった。アルバムの内容を眺めてみると収録された9つの楽曲は多様多彩であり、それぞれの楽曲ごとに参加メンバーも異なりコンセプトも異なるというヴァラエティーの豊かさがある。ビッグバンド・ジャズを彷彿させるホーン・セクションがあるかと思えば弦楽四重奏が加わった楽曲はまるで室内楽風でもクラシカルでもなく、あるいはバーナード・ハーマンの映画音楽を素材にした楽曲ではジョエル・マクニーリーの指揮によるロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団の演奏の録音をサンプリング・コラージュし、かと思えば唯一の女声ヴォーカルであるドーン・アンジェリク・リチャードの歌が響き渡る。とっ散らかった印象を与えかねないそれら楽曲群が1枚のアルバムに収められることができたのは他でもない、彼のつまりロングストレスの歌声が全編を通して流れているからである。その声がおそらくは紐帯となっている。だがしかし、おそろしいのはその紐帯としての彼の声を彼は切り刻み変調し重ね合わせて録音し、自在に姿かたちを変幻しながらあらゆる角度から声の肌理の様相をあらわにしていることである。思えばダーティ・プロジェクターズの前作と前々作の特徴は3人の女声コーラスの見事なハーモニーがロングストレスの歌声と絡み合うアヴァン・ポップなロック・ミュージックであるところにもあったのだったが、そのフォーマットを根城にして新たな音楽に挑んでいくのではなく、やはりダーティ・プロジェクターズはロングストレスのプロジェクトなのであって、むしろそこからそうしたコーラス・ワークを手中に入れ、彼女らが不在の今作においても彼が彼自身の力量によってそれを披露したのだということなのだろう。そして今作において見過ごすことができないのはダーティ・プロジェクターズにおけるロングストレスのそうした前進と変化だけではなく、いや、ある意味ではそれに含まれもするのだが、彼とほぼ同世代で活躍する作曲家/電子音楽家であり元バトルスのメンバーでもあるタイヨンダイ・ブラクストンが参加していることである。

 一昨年リリースされたパーカッションと電子音のための作品『HIVE1』も話題を呼び、そのエレクトロ・アコースティック打楽器アンサンブルのアルバムは明らかにエドガー・ヴァレーズを参照点のひとつとしているとともにヴァレーズの遺産をいま一歩前に進め、それによって彼のもうひとつ前の作品『Central Market』において同様に参照され継承発展させられたイーゴリ・ストラヴィンスキーと併せてタイヨンダイ・ブラクストンの音楽的嗜好と背景の一端をある程度の幅を持って見ることができるようになったのだった。その彼が本作において参加しているのは5曲、全体のおよそ6割に参加しているのは単なるゲストというよりも半ば共作と言ってしまってもよいものだろう。モジュラー・シンセサイザーを用いた演奏やポスト・プロダクションを施す彼の手腕がロングストレスともっとも共振しているように聴こえるのはやはり“Keep Your Name”であり、それがもっとも不協和を奏でているような歪さを感じさせるがためにかえってふたりの類似と差異があらわれるところがおもしろく、また、別の共振のしかたを聴かせているとも言えるのは“Ascent Through Clouds”だろう。前者ではロングストレスの変調された低音のヴォーカルが印象的に響くところから幕を開け、彼が失恋の哀しみを歌い上げるそばでブラクストンによる変調された高音ヴォイス――あのバトルスがおそらくもっとも多くのリスナーの耳に焼き付けただろう“Atlas”で聴かせたそれ――が被さってきて、二声のエレクトロ・ヴォイスの対比的な絡み合いは見事としか言いようがない。しかし後者ではまるでぶつ切りにされたふたつの楽曲が強引に接ぎ木されたかのような構成をとっており、前半にロングストレスのヴォコーダーをかました歌声と爪弾かれるギターによるフォーキーな演奏、後半には打ち込みのビートにエレクトロニクス・ノイズとともに乗せられたブラクストンによる変調された高音ヴォイスのミニマルに反復する演奏がやってくる。そして後半にはさらにロングストレスの多重録音された歌声によるコール&レスポンスが差し挟まれていて、そこで生々流転する世界の循環について歌われたあとに続く打ち込みビートは興奮の閾値を超えるようにしてリズミカルにグルーヴする、それもまた圧巻なのである。そうした共同作業の成功の陰にあるのが、単に快楽主義的であるだけでなく、グリッチ・オペラや記憶のみを用いたアルバム・カヴァーなどといったアメリカ実験音楽の流れを汲むコンセプチュアルな作品制作に取り組んでいたロングストレスの音楽美学と、同様にアヴァンギャルドの遺産とエクスペリメンタルの可能性に浸りながら現代の音楽を創造するブラクストンのそれとのあいだに共有できるものがあったからなのかどうかは定かではないが、少なくともUSインディー・ロックなる矮小なジャンルには全くとどまることのないそうした志向をうちに秘めたふたりの音楽家の交わりのもとに生まれた最上の音楽のひとつがここにはあるのだということは言えるだろう。

細田成嗣

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(小林拓音)

 時代は変わった。昨秋リリースされたソランジュの『A Seat At The Table』は、インディ・キッズという迷い子たちを最新鋭のソウル/R&Bの領野へ誘導する決定的な分岐器となった。その領野から収穫された最高の果実のひとつが先日リリースされたサンファのアルバムであり、そしてもうひとつの果実がこのダーティ・プロジェクターズのアルバムである。
 サンファと同じように、デヴィッド・ロングストレスもまた『A Seat At The Table』でいくつかのトラックを手がけている。その経験が大きな転機となったのだろう。ダーティ・プロジェクターズにとって初のセルフタイトルとなったこのアルバムは、全編を通してR&Bへの強い意志に貫かれている。これまでの作品にもその要素は垣間見られたが、おそらく彼はいまはっきりと気がついたのだ。創造的な表現を試みる上で、ロックというフォーマットはもはや弊害にしかならないということに。
 失恋ソングの意匠を借りた冒頭の“Keep Your Name”は、一瞬ナオミ・クラインの名前に引っ張られて「これは商品や消費についての歌である」と解釈したくなるけれど、「バンドはブランド」というくだりを経るともうロックの失墜を憂う歎息にしか聞こえなくなる。「i wasn’t there for you(おまえのためにそこにいたんじゃない)」というブリッジの一節にはインディ・ロックに対するデヴィッドの複雑な思いが表れているし、その心情は「手遅れさ/巻き戻すことはできないんだ」という“Death Spiral”のヴァースからも聴き取ることができる。たしかに、ロックにできることなどもう何もないのだろう。バンドという形態に残されている可能性も皆無に等しい。「そんなことはない」とデヴィッドはこれまで、バンドに憧れるティーンエイジャーさながら自らに言い聞かせてきたのではないだろうか。だがついに彼はその慰めが現実逃避でしかないことを悟ったのだ。ソランジュが呪いを解いてくれたのである。

 とはいえデヴィッド・ロングストレスというタレントの創造性が、単なるR&Bという枠組みに収まり切るものでないことも容易に想像がつく。これまでダーティ・プロジェクターズが、ロックという沈没寸前の舟艇にしがみつきながらも特異なバンドたりえていたのは、彼の実験精神によるところが大きい。グリズリー・ベアのクリス・テイラーがプロデュースを手がけた『Rise Above』(2007年)には、「原曲を聴き返さずにカヴァーする」という大胆なコンセプトとアフリカ音楽の流用があった。その後かれらの評価を決定づけた『Bitte Orca』(2009年)や『Swing Lo Magellan』(2012年)には、リズムの探索や打楽器の音響的効果の開拓、それにかれらの代名詞とも言えるコーラスの妙技があった。その実験精神は姿を変え、このアルバムにもしっかりと受け継がれている。そのエクスペリメンタリズムの片棒を担ぐのがデヴィッドの旧友、タイヨンダイ・ブラクストンである。

 加工されたデヴィッドのヴォーカルが美しいメロディを紡ぎ出す“Ascent Through Clouds”は、中盤でぱたりと沈黙を迎えモジュラー・シンセを招き入れるが、この官能的なシンセ使いはまさしくタイヨンダイが『Oranged Out E.P』で試みていたものだ。“Keep Your Name”におけるサンプルの使い方もじつにタイヨンダイらしい。野太いシンセを命綱に快楽指数の高いパーカッションが冒険を繰り広げる“Death Spiral”でも、ブラック・ミュージックにおける伝統的なホーン・アンサンブルを解体しようとしているかのような“Up In Hudson”でも、そして『A Seat At The Table』のセッションの合間にデヴィッドとソランジュによって書かれ、ヴォーカルにドーン・リチャードを迎えたキラー・チューン“Cool Your Heart”でも、タイヨンダイの持ち味が遺憾なく発揮されている。その強烈な毒素はタイヨンダイが参加していないトラックにまで影響を及ぼしており、たとえば“Work Together”における音声のエディットと配置のしかたは、デヴィッドが電子音楽家としてタイヨンダイと肩を並べる域にまで達しつつあることを告げている。

 時代は変わった。いまやR&Bこそがエクスペリメンタリズムを展開するのに最もふさわしい土壌なのである。ダーティ・プロジェクターズのこのアルバムは、まさにそのような状況の変化を告げ知らせている。ためらう必要はないので言ってしまおう。本作はダーティ・プロジェクターズのキャリア史上、最も優れたアルバムである。

小林拓音

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(野田努)

 音楽はなぜ実験を必要とするのか──サティは旧来の音楽の硬直さに疑問を抱いた、シュトックハウゼンはロマン主義を否定しなければならなかった、ミニマル・ミュージックは陶酔を忘れた現代音楽に抗した。フランク・オーシャンをみればわかるように、R&Bとはポップ・ミュージックの最新型であり、音楽ビジネス・モデルの最新型であり、同時に広大な実験場である。かつてロックが大衆的実験場であったように。
 しかし『ダーティ・プロジェクターズ』における実験は、時代の要請というよりは個人的追求心の結実なのだろう。ブライアン・ウィルソンの『スマイル』のように、コーネリアスの『ファンタズマ』のように。
 『ダーティ・プロジェクターズ』を特徴付けているひとつは、細かいエディットとその繊細な音響加工とミキシングの妙技にある。『Blonde』の1曲目で歌っていたのは元メンバーで、デイヴィッド・ロングストレスの元彼女だったアンバー・コフマンだが、彼女はかつてメジャー・レイザーのご機嫌なレゲエで歌ったり、ちゃらいブロステップ系のルスコで歌ったりと、芸術的にはまるで一貫性がない。そして残されたロングストレスだが、タイヨンダイの強力なサポートを得たとはいえ、ひとりであるがゆえの想像力を拡張させ、かくもユニークなポップ・アルバムを完成させたというわけだ。
 “Death Spiral”や“Little Bubble”のような、いくつかの印象的な曲を聴くと、音楽的にみれば本作を『Blonde』や『ア・シート・アット・ザ・テーブル』と並べたくなるかもしれないが、クラウトロックめいた音響加工やミキシングの妙味を混入することの面白さでいえば、コーネリアスあるいはアーサー・ラッセルの“レッツ・ゴー・スウィミング”のような曲とリンクする。言うまでもなくダーティ・プロジェクターズとは、かつて脚光を浴びた(良くも悪くも素人臭い音響実験に特徴を持つ)ブルックリン系と括られており、10年前のリスナーはアニマル・コレクティヴのファンと重なっていたほど、フォーキーでローファイなインディ・ロックをやっていたバンドである。もちろんロックとは旧来は、このように他のスタイルをどんどん吸収しながら変化する音楽でもあった。
 本作の“Up In Hudson”や“Ascent Through Clouds”といった曲にはドゥーワップ的要素もみられる。だが、それらもレトロであることは許されず、いちいち音響加工されている。過剰に感じられるかどうかのすれのすれのレヴェルで音はいじくられ、タイヨンダイの力を借りていない曲のひとつ、“Work Together”における声のエディットやサンプリング・ビートの鳴り方は、コーネリアスどころか『ボディリー・ファンクションズ』の頃のハーバートさえ思い出させる。アシッド・フォーク調の“Ascent Through Clouds”は、それこそ60年代末のビーチ・ボーイズを現代にアップデートしているかのようで、ソランジュが作詞作曲に参加し、ドーン・リチャードが歌う“Cool Your Heart”は、カリブ海のリディムが咀嚼され、本作においてもっとも色気を持った親しみやすい曲となっている。つまり『ダーティ・プロジェクターズ』は、魅力たっぷりのスリルと冒険心を持ったモダン・ポップ・アルバムなのだ。
 音楽はなぜ実験を必要とするのか──我々のなかに前進したいという欲望があり、それを封じ込めることはできないからだ。このアルバムにノスタルジーは、ない。

野田努

Kid Cudi - ele-king

「と、ここまで書いて深沢七郎の『東京のプリンスたち』を読みかえして笑ってしまう。この小説に登場する五〇年代末の、面倒臭いことはほとんど何も考えずプレスリーのリズムでからっぽの頭の中をいっぱいにして、細いズボンをはき、体を小刻みに揺っていた高校生たちも、今は六十四、五歳だ。今も何も考えずに生きているだろうか」 金井美恵子『目白雑録2』2006

 Cudi is back!!!
 アメリカ・アマゾンではこんなタイトルで始まるレヴューが新作『Passion, Pain & Demon Slayin'』に付いていましたがキッド・カディは今までどこかへ行っていたわけでもなく、2009年にカニエ・ウェストの〈GOOD Music〉からデビュー作『Man on the Moon: The End of Day』を出して以降、スタジオ・アルバムだけで6枚もあってとくに寡作な人でもない。ないですが、キッド・カディと言えば2008年のデビュー・シングル「Day 'n' Nite」に尽きるかも、という辺りからして少なくとも日本では、最初に打ち上げた大玉花火の残像みたいな扱いかも知れない。

 自分が最初にカディを聴いたのは2013年発表の3作目『indicud』で、そこから遡って耳にした“Day 'n' Nite”よりも同アルバム収録の“Enter Galactic (Love Connection Part I)”や“Up Up & Away”の方がずっと好もしい印象だったのはいまでも同じですが、カニエ・ウェストの“All of the lights”(2010)を始めとした幾多の客演曲も含め、この人は過去作品を一通り聴いてみても嵌まると凄いんだけどダメな時は超残念、といった余りの玉石混淆ぶりが面白く、かつ評価を定めづらいところではある。

 さてこの、歌詞データベース・サイト「Genius」が制作したこの動画は『Passion, Pain & Demon Slayin'』からカディがハミングしているパートだけを集めた、新作及び作家紹介としてはこれに尽きるダイジェストだ。ハミングに限らず、とりわけ彼が旋律を下降していく時に発生する低いノイズの禍々しく官能的な豊穣さは、ちょっと他に思い当たらない類いの感触がする。ただし自分のノドを楽器と見做して日々鍛錬、といったストイックさは微塵も感じられないので行き当たりばったりのだらしない感じが満載だが、例えばちょっと前に大喧嘩してたらしいドレイクの入念に計算された(スタイルとしての)だらしなさとキッド・カディの「だらしなさ」は似て全く非なるものであって、公式音源でさえも音程が妙に外れたままの曲が結構ある辺りからして、この人のだらしなさ加減はミキシングやポスト・プロダクションではどうにもならない天然の――要は獣が唸っているかのようなのだ。
 アルバム冒頭の“Frequency”からして唸っている。暗すぎてカディの姿がよく見えないPV(ほとんど珍獣観察番組である)は自分で監督しているのでその辺りの獣性には自覚があるように思えるが、2曲目の“Swim in the Light”と来ると、聴くほどにこれはひょっとするとフランク・オーシャンの“Swim Good”を遥か遠くに踏まえ、FOが剥き出しにしてみせた傷に5年くらい経って貼られた絆創膏のなのではないかと思えてくる。

 例えばこんな一節があったりする:
 “You could try and numb the pain, but it'll never go away”
 君がその痛みを宥めようとしても、消え去りはしない

 最後の「go away」をまた「ゴウオウオウオウオウオウオウオウウェイ」とぐざぐざに唸るのではありますが、カニエ・ウェストという(現時点ではひとまず「調子の悪い方の人グループ」に入れざるを得ない)人を縦軸に取れば、この2人はある種の好対照でもあり、キッド・カディの新作を聴きながら自分の頭の中で「次」に浮かんでくるのはフランク・オーシャンの『nostalgia, ULTRA.』(2011)だったりする──こんなのはもうFOが5年前にやったことだよ、と批判したいのではない。ある作品からまた別の作品へとバトンが受け渡される為に必要な時間はどれだけ長くてもあり得る、ということである。ラストに置かれたアッパラパーなパーティー・チューンが象徴するように、例えご本人は何も考えてない、としてもである。


Kid Cudi “Surfin' (ft. Pharrell Williams)”

Swindle - ele-king

 2月末にはJリーグが開幕する。ele-king編集部に昔いた橋元優歩、辞めてからサッカーにハマってるんですよね。どんな啓示が彼女の運命を変えたのかは知らないけれど、とにかくあの女はあるときある時間から湘南ベルマーレのサポになった。そりゃあ、チョウ監督はリーグにおいて有能な監督のひとりだが、うーん、人生わからないものです。まあいい、Jリーグ・ファンがひとりでも増えるのはいいことだし、いまは開幕へのワクワク感でいっぱいのとき。清水エスパルスは、主力の怪我さえなければ、ネガティヴな予想を覆してそこそこやるんじゃないだろうか……などとぼくも勝手に妄想している(とくに白崎選手の華麗さがJ1で見れるのは嬉しい)。
 もちろん一般的な見解では、清水は下に見られているチームである。近年の成績を顧みれば低い評価も甘受するしかないのだけれど、それでも清水は熱心なサポーターが熱く応援する魅力あるチームであり、その魅力のひとつにはサンバのリズムがある。たとえば浦和レッズの応援はヨーロッパ的だが、清水のそれはブラジルの影響下にあり、サポーターにはサンバのリズムが染みついている。スウィンドルのアルバムはサンバのリズムからはじまる。

 清水エスパルスが行き詰まったように、ダブステップも行き詰まるのは、ハウスやテクノだって何回も行き詰まっているように当たり前のことであり、しかしその窮地をどのように脱してどのような方向性にいくのかを追っていくのは興味深い。スケプタやワイリーなど、グライムが加速的な勢いで再燃しているUKにおいて、ダブステップは過去のものと見なされているのかもしれないけれど、マーラやスウィンドルのように他文化に開かれていく方向性はいまも継続されているし、この方向性はいまも刺激的だ。マーラの昨年の『Mirrors』に関しては、ele-king界隈ではみごとに評価が割れたが、それは期待の裏返しでもあり、たとえばエキノックスのダンスホールをわがモノとしたデムダイク・ステアの新作に関しては、ほぼ満場一致で肯定である(レヴューがあがっていないだけ)。
 スウィンドルの明るさは、デムダイク・ステアの陰鬱さとは対極とも言える。スウィンドルは、2012年、〈Deep Medi Musik〉からの12インチ「Do The Jazz」で度肝を抜いた男である。高橋勇人がライナーで書いているように、コンクリートの壁を貫通してしまうようなベースとシンセのユニゾン、ラテン・パーカッションの組み合わせの妙は、この若者を一躍シーンの最前列に押し上げた。その1曲で、ダブステップとワールドをつなぐ回路をうながした彼は、2013年にアルバム『Long Live The Jazz』を発表、2015年には本人いわく「平和と愛と音楽の使者」として『Peace, Love & Music』をリリースしている。
 前作からおよそ1年を経てリリースされる『Trilogy In Funk』は、2016年から2017年のあいだに発表してきた3作の12インチをコンパイルしたもので、大きくはブラジル、ロンドン、そしてロサンジェルスでのセッションに分かれている。
 ロサンジェルス編は、USファンクへのアプローチという新境地を見せているが、ディスコ・テイストも加味され、温かいアナログな感覚も注入されている。社会学的見地でいえば、現代のUKのキッズは、戦後おそらく最大級のレベルでUSブラックばかりを聴いていて(だからザ・xxは、インタヴューにおいて海外に出てあらためてUKロックの伝統の偉大さに気がついたと語っている)、そのことはスウィンドルのロサンジェルス編の背景とも無縁ではないかと思われる。もちろんここにあるのはスウィンドルの自己解釈に基づくファンクだ。コピーではない。
 それでもやはりぼくは、ブラジル編と並んでロンドン編が気に入っている。ブラジル編の明るさと感傷には、ロサンジェルス編と同様に彼の成熟がうかがえるわけだが、緊張感のあるロンドン編すなわちグライム・サウンドのエネルギーは、大人びたそのふたつのセッションの真ん中にあり、特別な存在感を示している。そのなかの1曲には、DダブルEのような、本当にシーンの黎明期(90年代のジャングルの時代)からいるMCがいまもフィーチャーされている。
 ハイブリッドな路線か、我らが内部における質を高めるのか、あるいはUSを積極的に取り入れるのか。いくつかの選択肢があり、現状をそのまま出してしまった格好となったアルバムではあるが、スウィンドルは彼のおおらかさで整合性というオブセッションを払いのけている。

Thundercat - ele-king

 新年早々、魅力たっぷりのアルバムが続いている。まずはザ・エックス・エックス、アンダーグラウンドではデムダイク・ステア、ブルックリン実験派としての意地を見せるダーティ・プロジェクターズ、いまの英国でもっともエネルギッシュな音楽=グライムの大物ワイリーの新譜、なにも変わらないことがむしろ変わることであるとでも言わんばかりの我らがスリーフォード・モッズ、そして、おそろしいほどドリーミーなソウルを展開するサンダーキャットの新作……そのふわふわで甘々のブラック・ソウル・ファンタジー……もちろん、いま絶好調と言っていいレーベルのひとつ、〈ブレインフィーダー〉からのリリースである。

再び迎えたブラック・ミュージック隆盛の立役者、サンダーキャット
待望の最新アルバム『Drunk』のリリース&来日ツアーを発表!
20曲以上収録の大作に、超豪華アーティストが勢揃い!

ケンドリック・ラマー|ファレル|フライング・ロータス|マイケル・マクドナルド|
ケニー・ロギンス|ウィズ・カリファ|カマシ・ワシントン
80年代を代表する黄金コンビ、マイケル・マクドナルドとケニー・ロギンス参加の新曲「Show You The Way」公開!

ここ数年のブラック・ミュージックの盛り上がりにおいて、誰もが認める立役者のひとり、サンダーキャットが、待望の最新アルバム『Drunk』のリリースを発表! 20曲以上を収録したこの大作には、ケンドリック・ラマー、ファレル・ウィリアムス、フライング・ロータス、マイケル・マクドナルド、ケニー・ロギンス、ウィズ・カリファ、カマシ・ワシントンら、シーンきっての人気者であるサンダーキャットでしか考えられない、超豪華アーティストが勢揃いしている。脇を固めるミュージシャン/プロデューサーにも、自身のプロジェクトKNOWERなどでも知られるプロデューサーのルイス・コール、人力ビートのパイオニアとも言われるレジェンド・ドラマーのディアントニ・パークス、そしてサンダーキャットとともにケンドリック・ラマー『To Pimp A Butterfly』に大きく貢献したSOUNWAVEらが名を連ねる。

今回の発表に合わせ、80年代を代表する名曲、ドゥービー・ブラザーズの「What A Fool Believes」を生んだマイケル・マクドナルドとケニー・ロギンスが参加した新曲「Show You The Way」が公開され、『Pitchfork』にて「Best New Track」に選出されている。このコラボレーションは、ケニー・ロギンスの息子がサンダーキャットのファンだったことから実現。ケニー・ロギンスの声がけで、同じく娘がサンダーキャットの大ファンだったというマイケル・マクドナルドまで参加することになったという逸話も、彼のキャラクターと非凡な音楽的才能を証明している。

きっかけは、俺がラジオ番組に出演してインタビューされたことだった。そのインタビューの中で「もし誰かと、どこかの島に取り残されるんだったら、誰がいいですか?」という質問をされたんだ。俺は瞬時に「ケニー・ロギンスとマイケル・マクドナルド」と返答した。そのときは冗談のように聞こえたかもしれないけど、ソングライティングの上で彼らに多大な影響を受けてるんだ。自分をもっと掘り下げることを彼らから学んだ。ラジオでその発言をしたあとに、俺のバンドのピアノ奏者のデニスが、ケニー・ロギンスと何度か演奏したことがあったから、「ケニーに連絡してみようか?」と言ってくれたんだ。信じられなかったね。そこから、ケニーの息子さんとメールをするようになって、いつの間にかケニーもメールに参加するようになったんだ(笑)。ケニーは一緒に音楽を作ることに興味を持ってくれた。俺はケニー・ロギンスとしゃべってるだけでビビッてたよ(笑)。彼は俺の音楽についてほとんど何も知らなかったけど、「僕の子供が君の音楽のファンなんだ。僕の子供が君のファンじゃなかったら、僕はここにいないよ」と彼が言ったんだ(笑)。実現しただけで俺はうれしかったね。彼と初めて会ってレコーディングして、彼が曲を聴き返してたら、彼が「マイケル・マクドナルドを呼ぼうかな」と言い出したんだ。そのときに、俺は本当にオシッコをチビるかと思ったよ(笑)。マジで冷静を装ってた。ケニーがマイケル・マクドナルドに連絡してくれたんだ。マイケルも、たまたま娘さんが俺の大ファンだったから、一緒に仕事をしてくれることになったんだ。ケニーとマイケルがスタジオに来たんだけど、ケニーは「何年間もマイケルに会ってないよ」と言ってた。どうやら、ふたりは10年以上も一緒に曲を作ってなかったみたいで、それにもびっくりしたね。ことの重大さに気づくと、正直心の中ではすごくビビったし、すごくプレッシャーを感じたよ。俺は彼らに曲のアイデアや、新曲、古い曲を聴かせたんだ。それから「Show You The Way」を完成させようということになった。
- Thundercat

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THUNDERCAT Presents
"DRUNK" JAPAN TOUR

さらに、今回のアルバム・リリースの発表に合わせ、単独来日ツアーも決定! これまで〈Brainfeeder〉のレーベル・ショウケースや、フライング・ロータス、エリカ・バドゥのバンド・メンバーとして幾度も来日をしてきたサンダーキャットだが、今回が初の単独公演となる。サンダーキャットの超絶ベース・プレイはもちろん、長らくバンド活動をともにしているドラマーのジャスティン・ブラウン、キーボード奏者のデニス・ハムという超一流ミュージシャン3人による縦横無尽なバンド・アンサンブルと強靭なグルーヴ、そして何より素晴らしい楽曲の数々とサンダーキャットの美しい歌声……そのすべてを至近距離で体験できるこの貴重な機会をお見逃しなく!

【東京】
2017.4.27 (木) LIQUIDROOM

OPEN 18:30 / START 19:30
前売 ¥6,000 (税込 / ドリンク代別途)

チケット詳細
[先行販売]
LAWSONチケット プレリクエスト抽選先行: 1/28 (土) 12:00~2/5 (日) 23:59
beatkart [shop.beatink.com]: 2/6 (月)~
チケットぴあ プレリザーブ: 2/6 (月) 11:00~2/13 (月) 11:00
イープラス・プレオーダー: 2/6 (月) 12:00~2/12 (日) 18:00
LAWSONチケット プレリクエスト2次抽選先行: 2/8 (水) 12:00~2/12 (日) 23:59
[一般発売]:2/18 (土)~
ローソンチケット (Lコード: 76628)、チケットぴあ (Pコード: 322-585)、イープラス [https://eplus.jp]、Beatkart [shop.beatink.com]
INFO: Beatink 03-5768-1277 / www.beatink.com

【名古屋】
2017.4.28 (金) 名古屋ブルーノート

1stステージ 開場17:30 開演18:30 / 2ndステージ 開場20:30 開演21:15
一般価格 ¥8,900 / 名古屋ブルーノートメンバーズ ¥8,500

チケット詳細
2/22 (水)~ 名古屋ブルーノートメンバーズ会員先行
3/1 (水)~ 一般予約受付開始
INFO: 名古屋ブルーノート 052-961-6311

【京都】
2017.4.29 (土) 京都METRO

OPEN 18:30 / START19:30 → 21:00 close 予定
前売 ¥6,000 (税込 / ドリンク代別途)
当日 ¥6,500 (税込 / ドリンク代別途)
早割 ¥5,500 (税込 / ドリンク代別途) [受付期間:1/27~2/2]←枚数限定!

チケット詳細
[一般発売]:2/18 (土)~
チケットぴあ (Pコード: 323-052) 、ローソンチケット (Lコード: 57107)、e+ [https://eplus.jp/]
[限定早割]
★一週間限定! 特別先行早割チケットを発売!!
¥5,500 ドリンク代別途 [受付期間:1/27~2/2]←枚数限定!
※『特別先行早割お申し込み方法』→タイトルを「4/29 サンダーキャット早割希望」
としていただいて、お名前と枚数を明記して 宛てでメールして下さい。
※枚数限定のため、キャンセルは不可となっております。何卒ご了承下さい。
INFO: 京都 METRO 075-752-4765 https://www.metro.ne.jp
Supported by α-STATION 京都FM

【大阪】
2017.4.30 (日) Conpass

OPEN 18:00 / START 19:00
前売 ¥6,000 (税込 / ドリンク代別途) ※未就学児入場不可


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サンダーキャット待望の3rdアルバム『Drunk』は、2月24日(金)に世界同時リリース。国内盤にはマック・ミラー参加のボーナストラックを含め、計24曲が収録され、歌詞対訳と解説書が封入される。初回限定生産盤はスリーヴケース付。iTunesでアルバムを予約すると、公開された“Show You The Way (feat. Michael McDonald & Kenny Loggins)”がいちはやくダウンロードできる。

label: Brainfeeder / Beat Records
artist: Thundercat ― サンダーキャット
title: Drunk ― ドランク

cat no.: BRC-542
release date: 2017/02/24 FRI ON SALE
初回限定生産盤:スリーヴケース付き
国内盤CD:ボーナストラック追加収録/解説書/英詞・歌詞対訳封入
定価:¥2,200+税

Shobaleader One - ele-king

 べつにゴリラズに刺戟されたわけではない、のだろう。2010年代以降のスクエアプッシャーの作品のなかでいちばんおもしろいアルバムは、「架空のバンド」をコンセプトにした『d'Demonstrator』(2010年)である。その前の年には6弦ベース1本による即興ライヴのアルバムをリリースしていたので、ふむふむその次はバンドか、新しい方向を模索しているなーと当時はわくわくしたものだが、いざリリースしてみたらあまり反応がよくなかったのか、それともすぐに飽きてしまったのか、いずれにせよその後「ショバリーダー・ワン」という名前を耳にすることはなかった……昨年までは。
 近年はロボットのプロデューサーを務めたり独自のソフトウェアを開発したり、国民投票の後にはブレグジットに抗議する新曲を公開したりしていたスクエアプッシャーだけれど、そんな彼がふたたび「ショバリーダー・ワン」という名前を掲げて帰ってきた。

 はい。往年のファンならもうおわかりだろう。「Big Loada」の1曲目である。垂涎とはまさにこのことで、公開されたトラックリストを眺めていると、他にもズラリと往年の名曲たちが並んでいることに驚く。スクエアプッシャー率いるバンドによるスクエアプッシャーのカヴァー集、という感じなのだろうか。
 期待のアルバムは3月8日に日本先行でリリースされる。それにあわせて、4月には来日公演も開催される。正直に言って、楽しみでしかたがない。

STROBE NAZARD / SQUAREPUSHER / COMPANY LASER / ARG NUTION

スクエアプッシャー率いる超絶技巧バンド、ショバリーダー・ワン
デビュー・アルバム『Elektrac』の日本先行リリース&来日ツアーを発表!
数量限定Tシャツ付セットの販売も決定!

昨年末にワールドツアーが発表され、アルバムの存在をほのめかすトレーラー映像とともに、本格始動が明らかになったショバリーダー・ワン。驚くなかれ、その正体こそ、スクエアプッシャー率いる超絶技巧バンドである。SQUAREPUSHER(ベース)、ARG NUTION(ギター)、STROBE NAZARD(キーボード)、COMPANY LASER(ドラム)の覆面の凄腕4人で構成された彼らのデビュー・アルバム『Elektrac』は、スクエアプッシャーの数々の名曲たちに生演奏の迫力を加えた驚きの内容。今回の発表に合わせ、ファン垂涎の名曲「Journey To Reedham」の音源が公開された。

Shobaleader One - Journey To Reedham
YouTube: https://www.youtube.com/watch?v=IXtQDsf4gJA
Apple Music: https://apple.co/2k2f9PG
Spotify: https://spoti.fi/2jzvZc0

Shobaleader One - SHBLDR Album Teaser
https://youtu.be/m-cSYexUKRI

本作『Elektrac』は、3月8日(水)に日本先行でリリースされ、国内盤2枚組CD(ブックレット付の特殊パッケージ)には、オリジナルのシースルー・ステッカーが封入される。またスペシャル・フォーマットとして数量限定のTシャツ付セットの販売も決定!


セットTシャツ


CD+Tシャツ・セット


オリジナル・シースルー・ステッカー

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完売必至の来日ツアー決定!!

さらに、そんな彼らの超絶テクを堪能できる来日ツアーも決定! スクエアプッシャーの初期作品を中心に、ジャズ~フュージョン~ドラムンベース~エレクトロニカを横断する超刺激的なライブは、スクエアプッシャー・ファンならずとも必見! サポートアクトには、昨年のプライマル・スクリームの来日公演でも、メンバー直々の指名でオープニングアクトの大役を果たすなど、世界中のロック~アンダーグラウンド・ヒーロー達に愛される、オルタナ・ガールズ・バンド、にせんねんもんだいが決定。来週1月25日(水)より、Beatink on-line shop “beatkart”にて、全公演のチケット先行販売開始!

SUPPORT ACT
にせんねんもんだい

東京公演
4/12 (WED) 渋谷 O-EAST
OPEN 18:30 / START 19:30
前売TICKET ¥6,000 (税込・1ドリンク別途)
主催: シブヤテレビジョン
INFO: BEATINK 03-5768-1277 [ www.beatink.com ]

● BEATINK WEB SHOP "beatkart":1/25(水)~ [ shop.beatink.com ]
● イープラス最速先行(抽選):1/19(木)21:00 ~ 1/24(火)23:59
● チケットぴあ先行:1/25(水)11:00~1/30(月)11:00
● イープラス・プレオーダー(先着):1/28(土)12:00~2/1(水)18:00"

名古屋公演
4/13 (THU) 名古屋 CLUB QUATTRO
OPEN 18:30 / START 19:30
前売TICKET ¥6,000 (税込・1ドリンク別途) ※未就学児童入場不可
INFO: 名古屋クラブクアトロ 052-264-8211 [ https://www.club-quattro.com/ ]

● BEATINK WEB SHOP "beatkart":1/25 (水)~ [ shop.beatink.com ]
● QUATTRO WEB先行:1/28 (土) 12:00~1/30 (月) 18:00 [ https://www.club-quattro.com ]
● 各PG先行:1/28 (土) 12:00~1/30 (月) 18:00

大阪公演
4/14 (FRI) 梅田 CLUB QUATTRO
OPEN 18:30 / START 19:30
前売TICKET ¥6,000 (税込・1ドリンク別途) ※未就学児童入場不可
INFO: SMASH WEST 06-6535-5569 [ https://smash-jpn.com ] [ https://smash-mobile.com ]

● イープラス最速先行受付:1/20 (金) 12:00~1/25 (水) 23:59 [ https://eplus.jp/shobaleader-one/ ]
● QUATTRO WEB先行:1/21~1/23
● イープラス・プレオーダー:1/28~2/1

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スクエアプッシャー率いる超絶技巧バンド、ショバリーダー・ワンのデビュー・アルバム『Elektrac』は、3月8日(水)に日本先行リリース! 国内盤2枚組CD(ブックレット付の特殊パッケージ)には、オリジナルのシースルー・ステッカーと解説書が封入される。iTunesでアルバムを予約すると、公開された「Journey To Reedham」がいちはやくダウンロードできる。

label: Warp Records / Beat Records
artist: Shobaleader One ― ショバリーダー・ワン
title: Elektrac ― エレクトラック

cat no.: BRC-540
release date: 2017/03/8 WED ON SALE(日本先行発売)
初回生産特殊パッケージ
国内盤2CD:オリジナル・シースルー・ステッカー/解説書 封入
定価:¥2,500+税

【ご予約はこちら】
CD
beatkart: https://shop.beatink.com/shopdetail/000000002134
amazon: https://amzn.asia/e5z41Uv
T-SHIRTS SET
beatkart: https://shop.beatink.com/shopdetail/000000002135
amazon
Sサイズ:https://amzn.asia/bbgvNip
Mサイズ:https://amzn.asia/j4w010R
Lサイズ:https://amzn.asia/37Gwzdt
XLサイズ:https://amzn.asia/6K2McNr

iTunes Store: https://apple.co/2jzwuDa

商品詳細はこちら:
https://www.beatink.com/Labels/Warp-Records/Squarepusher/BRC-540

Tracklisting
Disc 1
01 The Swifty
02 Coopers World
03 Don't Go Plastic
04 Iambic 5 Poetry
05 Squarepusher Theme
Disc 2
01 E8 Boogie
02 Deep Fried Pizza
03 Megazine
04 Delta-V
05 Anstromm Feck 4
06 Journey To Reedham

interview with Jameszoo - ele-king


Jameszoo
Fool

Brainfeeder/ビート

AbstractAvant-garde JazzExperimental

Amazon

 カマシ・ワシントンの大作を筆頭に、サンダーキャットやニーボディ&デイデラスなどカッティング・エッジな現代ジャズを送り出し続けるかたわら、ジュークのDJペイパルをリリースしたり、はたまたジョージ・クリントン御大と契約を交わしたりと、近年の〈Brainfeeder〉の勢いには目を見張るものがある。その怒濤のような快進撃のなか、フライング・ロータスが自信を持って発掘してきたのが、オランダの若き才能・ジェイムスズーことミシェル・ファン・ディンサーである。たしかにそのサウンドを聴けば彼が大いなる可能性を秘めたタレントであることはおのずとわかるのだけど、いざその音楽がどういうものか説明しようとすると、なかなかどうして一筋縄ではいかない。

 ジェイムスズーが昨年リリースしたアルバム『Fool』を初めて聴いたとき、「IDM的な感性のもとでジャズをやる」というのがコンセプトなのかなと思った。けれど何度か再生しているうちに、ジャズから影響を受けたプログレッシヴ・ロックのようにも聴こえてきた。フリー・ジャズそのもののようなトラックがある一方で、ブラジリアン・ジャズから影響を受けたようなトラックもある。変拍子があったり沈黙があったりとアヴァンギャルドな側面が展開される一方で、メロディの部分はときにユーモラスであったりときにメランコリックであったりと、一体どういう文脈に位置づけたらいいのかわからない。その後彼の来日公演を体験する機会があったのだけど、そのあまりに雑食なDJセットにこちらのはてなマークはますます増殖していった。アルバムを出す前はダブステップ――しかも、かなり独特のそれ――をやっていたし、いやはや、ジェイムスズーとは一体何者なのだろう?

 天真爛漫。先に結論を述べてしまうと、この言葉こそジェイムスズーにふさわしい。彼はミュージシャンである前に、ひとりの無邪気な音楽ファンだったのである。そんな彼は現代っ子らしく、「俺にはルーツがないんだ」と言う。それはなぜかと言うと、彼は音楽をはじめるまでは……ここから先は以下をお読みください。

音楽って、人がそのトラックの背景から判断して決めるものじゃなくて、内容でジャンル分けされるべきものだと思う。

小林(●)、野田(■)

あなたのアルバムをベスト30に選出したのは、ビヨンセの作品のように世の中にプロテストする内容であったり、あるいはブレグジットやトランプみたいな暗い世界を反映したようなアルバムが多い中、あなたのアルバムには何か突き抜けた感じがあったからです。すごい知的なんだけれどもファンキーで、あなたがどんな内容のアルバムを作ろうとしたのかがわからないくらい他の作品とは違い、印象に残ったからです。

ジェイムスズー(以下、JZ):ありがとう。俺は音楽の教育を全く受けていなくて、音楽学校に行くことを考えたこともあったんだけど、結局実現せず、きちんとした曲作りの知識がないんだ。でも、フリー・ジャズなんかも好きだし、俺自身も自分なりにレコードを作ってみようと思った。知識はなくても、自分が大好きな音楽をコンピュータで表現してみようと思って作ったのが、このアルバムに収録されているトラックなんだよ。

なぜ『Fool』というタイトルにしたのですか?

JZ:アルバムを作っているプロセスの中で、「フール」な決断をしてしまう自分がいたんだ。自分自身に納得がいかないことが多々あったしね。そういう自分の状態からこのタイトルをとったというわけ(笑)。なりたくはないけど、「バカ」になってしまう自分もいる。そんな自分のポートレイトみたいなタイトルなんだ。それに、「フール」って言葉そのものがおもしろい名前だと思うしね。タイトルに関しては、変に凝ったりはしていない。アルバムもそうだし、タイトルもそうだし、長いタイトルはあまりつけたくないんだ。音楽ってみんなそれぞれに意味のあるものだと思うから、その内容を決めつけるようなタイトルはつけたくないんだよ。

たしかに、曲のタイトルもワンワードで短いものばかりですね。

JZ:タイトルで格好つけたくないんだ。最近の音楽って、内容よりも状況や背景を重視しすぎたものが多いと思う。それでIDMとか呼ばれたりもしてるけど、音楽って、人がそのトラックの背景から判断して決めるものじゃなくて、内容でジャンル分けされるべきものだと思う。

ついでにもうひとつ言葉の質問をすると、なぜジェイムスズー(Jameszoo)という名前にしたのですか?

JZ:特に理由はないよ(笑)。名前を考えているときに、たまたま思いついたのがこの言葉だったんだ。で、じゃあそれでいいやって思って(笑)。

アルバムに収録されたスティーヴ・キューンの曲も、原曲“Pearlie's Swine”のタイトルが“The Zoo”に変えられていますが、それには何か意味があるのでしょうか?

JZ:彼は以前〈Buddah〉っていうレーベルにいたんだけど、そのレーベルが破産して、パブリッシングの都合で、スティーヴ自身がタイトルを“The Zoo”に変えたんだよ。タイトルを変えたのは俺じゃないんだ。

ジェイムスズー(Jameszoo)の「zoo」と繋がってるのかなと思っていました(笑)。

JZ:最高の偶然だよね(笑)。あの曲は、アルバムの中でも俺のお気に入りでもあるし。

俺にはルーツがないんだよ(笑)。おもちゃ屋にいる子どもみたいなんだ。音楽のすべてが魅力的で、ひとつひとつの作品に興奮する。

スティーヴ・キューンとはどういう経緯で出会ったのですか?

JZ:9ヶ月くらいずっと彼とメール交換をしていたんだけど……

通訳:メール交換はそもそもどうやってすることに?

JZ:知り合いを通じて、彼の連絡先を知って、俺から彼にメッセージを送ったんだ。会ってもらうまで長いこと彼を説得しないといけなかったんだけど、9ヶ月経って彼がやっとニューヨークに招待してくれた。で、ニューヨークに着いて、彼から来るように言われたバーに行くと、ジョーイ・バロンとバスター・ウィリアムスもそこに座っていてさ(笑)。スティーヴだけいると思ってたからいきなり3人のレジェンドと一緒に座ることになって緊張したね(笑)。その3人の前で「スティーヴがなぜ自分とコラボするべきなのか」っていうのを説明しなきゃいけなかったんだ。変な雰囲気だったよ(笑)。最初は何ともいえない雰囲気だったけど、シュトックハウゼンに関する話をしはじめると、自分も彼も好きなミュージシャンの話でどんどん盛上がって、「今日自分のセットで“The Zoo”をプレイするから、もしそれを気に入ったらコラボしよう」と彼が言ってきてくれた。それから数日後にニューヨークのスタジオに入って、一緒に曲を作ったんだ。

彼から学んだことはありましたか?

JZ:彼のファンすぎて、学ぶというよりはただただ魅了されていたね(笑)。もっといろいろ学ぶべきだったと思うけど、雰囲気に圧倒されてしまっていたから。

もうひとり、このアルバムにはビッグなアーティストが参加しています。アルトゥール・ヴェロカイとはどのようにして出会ったのでしょう?

JZ:〈Brainfeeder〉の前、俺は〈Kindred Spirits〉っていうレーベルにいたんだけど、そのレーベルをはじめたキース・ヒューズ(Kees Heus)が、アムステルダムのパラディソ(Paradiso)っていうイベントのプロモーター兼オーガナイザーだったんだ。で、彼がアルトゥールをそのイベントに招待したんだけど、キースが俺にメールしてきて、「アルトゥールが来ることになったから、彼に自分の音源を送ってみろよ。もしかしたら、彼が来たときに一緒にスタジオに入って何か作れるかもしれないぞ」と言ってきた。それでアルトゥールのFacebookに音源を送ったら、彼から「いいよ。コラボしよう」という返事が来て、彼がオランダに来たときに3時間くらいジャムをして、そこから俺が一部を取って曲を作ったんだ。アルトゥールはいままで自分が出会った中でもいちばんと言ってもいいくらい良い人だったよ。アルトゥールとスタジオに入っていたときは、アルバムを作ろうなんて考えもなかった。でも『Fool』を作りはじめたとき、あのセッションを使った作品を絶対入れようと思ったんだ。

普段からブラジリアン・ミュージックは聴くんですか?

JZ:そうだね。エルメート・パスコアール、ペドロ・サントス、カエターノ・ヴェローゾ、ティン・マイアも好きだし、好きなミュージシャンはたくさんいるよ。

あなたの作品からは、あなたが一体どんな音楽を聴いて影響されてきたのかがわからないくらい、すごくたくさんの音楽の要素が聴き取れますが、実際はどんな音楽を聴いて影響されてきたのか教えて下さい。たとえば、この『Fool』には、ジャズの要素もあり、エレクトリックの要素もあり、ソフト・マシーンのような音楽性も感じられます。

JZ:そうそう。ロバート・ワイアットにこのレコードに参加してほしかったんだけど、実現しなかったんだ(笑)。ロバートから、「君の音楽を気に入っている」っていうメッセージはもらったよ。でも、彼はもう音楽制作をやっていないから、コラボできなかったんだ。俺は、ミュージシャンである以前に音楽ファンなんだよね。だから、家にいるときはつねにeBayやDiscogsをチェックしているし、すべての音楽サイトをチェックして新しい音楽を追い続けている。そのすべてから影響を受けているんだ。エレクトロニック・ミュージックというジャンルひとつでも、俺はミュジーク・コンクレートやシュトックハウゼンからディムライトやドリアン・コンセプトまで、昔のエレクトロニック・ミュージックから現代のそれに至るまで、そのジャンルのすべてを知りたいと思うし、知ろうとするんだ。ジャズも同じ。オーネット・コールマンからペーター・ブロッツマンに至るまで、できるだけたくさんのミュージシャンの作品を聴いて学ぶようにしているよ。

先日あなたのDJを聴いていて、ジャズやヒップホップはもちろんなのだけれども、『AKIRA』のサントラだったりスティーヴ・ライヒだったり、あるいはエイフェックス・ツインからバトルズまでがかかって、あなたの音楽のルーツがわからないところがすごくおもしろかったんですが、いまの話を聞いてあなたが深い音楽ファンであることが伝わってきました。

JZ:俺にはルーツがないんだよ(笑)。おもちゃ屋にいる子どもみたいなんだ。音楽のすべてが魅力的で、ひとつひとつの作品に興奮する。DJをするときは、サウンドシステムをチェックして、それに合ったセットをプレイするようにしているんだ。初めて日本でプレイしてみて、日本のオーディエンスはヨーロッパのオーディエンスと違うなと思った。ヨーロッパってダンスのムードを作り出すことがすべてだけど、日本のオーディンスは音を聴き込もうとするんだよね。それに合わせたセットを考えるのは、自分にとって新しい経験だったよ。俺も音楽を聴きたい派だから、嬉しかったね。

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音楽を作りはじめる前、俺はプロのテコンドー選手で、それで生活していたんだ。

あなたはいまもデンボスに暮らしているんですよね?

JZ:そう。

あまりシーンと関係ない場所で暮らしているという意味で、日本人と近い部分があるのかもしれませんね。

JZ:たしかに。

いまでも故郷に住み続けている理由とは?

JZ:友だちや家族がいるからさ。

音楽活動のためにアムステルダムに引っ越そうと思ったことはありませんか?

JZ:アムステルダムからもたくさんオファーが来たし、友だちもたくさんいるけど、俺にとって、アムステルダムという場所は、「作品の内容よりも背景を重視した場所」なんだよね。音楽を作るのに、たくさんのものや特別な環境は必要ない。俺に必要なのは、家と友だちだけなんだ。

アムステルダムの〈Kindred Spirits〉から作品をリリースするようになった経緯を教えてもらえますか?

JZ:音楽を作りはじめる前、俺はプロのテコンドー選手で、それで生活していたんだ。

一同:へえええ!

JZ:その経験で歯を折ったり膝を痛めたり、身体がボロボロになって、もうやっていけないと思った。で、また学校に戻ろうと思ったんだ。でも、実際戻ってみると、自分には合ってなかった。で、学校に行かないとしたら何ができるだろうと考えていたんだけど、隣の席のクラスメイトが音楽を作っていたから、自分もそれをやろうと思ったんだ。テコンドーをやめてからは酒が飲めるようになって、地元のバーに行ったんだけど、『Beat Dimensions Vol.1』っていうコンピレイションを作ったシナマン(Cinnaman)というDJが、ハドソン・モホークやディムライト、サミヤムをプレイしていたんだ。それを聴いて、自分もそれを作りたいと思った。で、アップルストアに行ってパソコンを買って、そこから4曲を作って、それを友だちに送ったんだ。そしたら彼が〈Kindred Spirits〉に送って、リリースが決まった。音楽を作りはじめて半年で、音楽がリリースされることになったんだ(笑)。

それはあなたが何歳のとき?

JZ:たぶん19か20歳だったと思う。

それ以前は音楽は作ってなかったんですよね?

JZ:作ってなかったね。

しかし、なぜテコンドーの選手になろうと?(笑)

JZ:父親がテコンドーのプロだったからだよ。俺は若すぎてオリンピックには出られなかったけど、オランダの国内では優勝したこともあるし、12ヶ国が参加する大会でも賞をとったことがある。世界選手権では2位になったし、(『Fool』は『ele-king』の年間ベスト30で9位だったので)ミュージシャンとしてよりもファイターとしての方が上なんだ(笑)。

間違いなく、いまの音楽シーンの中でいちばん強い男ですね(笑)。

JZ:だね(笑)。

その後〈Rwina〉からダブステップを取り入れたような作品を出していますが、それは、音楽ファンとしてダブステップが好きでインスピレイションを受けていたからそのような音楽を作ったのですか?

JZ:そう。〈Kindred Spirits〉からのリリースの後、ショウをやるようになったからDJをはじめたんだけど、そこからクラブに行く機会が増えて、クラブ・ミュージックにハマっていったんだ。デジタル・ミスティックス、マーラ、コーキ……そのへんのアーティストを聴くようになったね。だから、そういった音楽の自分ヴァージョンを作りたくなったんだ。そうしてEP「Faaveelaa」ができあがったんだ。

そしてその後、フライング・ロータスと知り合うんですよね?

JZ:そうだよ。その前に、彼とはニューヨークのレッドブル・ミュージック・アカデミーで会ったことはあったけどね。でも、そのときはアルバムを作るつもりもなかったし、あえて彼に自分の音楽を聴かせたわけではなかった。ただスタジオで音を作って楽しんでいるところに、たまたま彼が入ってきて、俺がそのときに作っていた音を聴いたんだ。〈Brainfeeder〉と正式な契約の話をしはじめたのはそのずっと後なんだ。アルバムを作りたいと思ってすべてを完成させたときに、初めてそれを〈Brainfeeder〉に送ったんだ。

彼は初めてあなたの音楽を聴いてどういう反応でした?

JZ:レッドブルのときはすごくエンジョイしてたみたいだよ。音源を送ったときは、俺はオランダにいたからわからない。でも聞くところによると、彼のマネージャーがすごく気に入っていたらしい。ふたりで一緒に聴いて、リリースを決めたらしいよ。

俺はケイジ・ハイノ(灰野敬二)の大ファンなんだけど、彼はいつも、どう演奏してほしいかを楽器に尋ねているらしい(笑)。俺はその考え方が好きなんだよね。


Jameszoo
Fool

Brainfeeder/ビート

AbstractAvant-garde JazzExperimental

Amazon

あなたはたくさんの音楽を聴いているので、今回のアルバムに反映されているのはその中のほんの一部だと思います。次に出す作品はまったく違うものになる可能性もあるのでしょうか?

JZ:あるね。オランダでちょっとしたフェスをスタートしたんだけど、スピーカー・ミュージックやミュジーク・コンクレートのフェスで、ピエール・ブーレーズ、ピエール・シェフェール、ピエール・アンリ、シュトックハウゼン、クセナキスとか、最近はそういった音楽にインスパイアされているんだ。そのフェスをきっかけに友だちと一緒にデンボスでスタジオに協力することになって、そのスタジオで新しいアルバムを制作しようと考えているよ。

そのアルバムも〈Brainfeeder〉から?

JZ:そう。そのスタジオは自分のものではないけれど、スタジオ・セッションを仕切っているんだ。(そう言って、スタジオにある50年代の機材の写真を見せてくれる。)

その当時の機材でないと作れない音があるとは思うのですが、それに拘る理由とは?

JZ:やはり、その時代の機材でしか作れない音があるんだよ。ギアって、ひとつひとつ作れる音が違うと思うし、そういった機材を使うことは、俺にとってはチャレンジなんだ。俺はケイジ・ハイノ(灰野敬二)の大ファンなんだけど、彼はいつも、どう演奏してほしいかを楽器に尋ねているらしい(笑)。俺はその考え方が好きなんだよね。俺自身も楽器や機材の使い方を勉強したわけではないし、自分で探り出すしかないからね。

シュトックハウゼンやブーレーズやクセナキスのような音楽は、クラシックの延長にあるもので、いうなれば理論的な、すごく理屈っぽい音楽なんですけど、そういう意味でいうと、あなたはもっと感覚というか、直感的に音楽を作っていますよね? そんなあなたにとって、50年代のああいった現代音楽はどこが魅力ですか?

JZ:サウンド・デザインがいまだに時代を感じさせないところ。いまでこそみんながコンピュータを使っているけど、当時はテープやそういうものを使っていたわけで、知識がある人も誰もいなかったわけだよね。そこが魅力的なんだ。みんな勉強不足だったわけではなくて、新しいサウンドだったから知識の持ちようがなかった。ブライアン・イーノも、何か新しいものを作る場合、そこにクオリティは存在しないと言っていたしね。

ブライアン・イーノは好きですか?

JZ:大好きだよ。デヴィッド・バーンとの作品とか素晴らしいと思う。

このアルバムには、音が突然止まって間が生まれる瞬間のある曲がいくつかあります。そういった間や沈黙は意識して作っているんですか?

JZ:そうだね。俺はダイナミックな作品が好きだから。音楽制作において、いちばんパワフルな手法は静寂だと思うんだ。たとえばファンクのブレイクも、奏者がそれをどうプレイするかではなくて、どうストップするかがすべて。ときには、どういう音を鳴らすかではなくて、どこで音を鳴らさないかが大切なんだよ。ジェイムス・ブレイクが大好きなんだけど、彼の作品も複雑すぎない。サウンドは少ないのにいい曲を作り出しているところがすごいと思うね。

テコンドー、スポーツと音楽の共通点はあると思いますか? 私も柔道をやっていたのですが、リズムの外し方って大事ですよね? その辺で共通するのかなと思って。

JZ:そうそう。タイミング。相手のタイミングを見計らいながら動くというところ。それって即興みたいなものだと俺は思うんだ。セットされたリズムはないわけだしさ。

だいぶあなたの音楽の秘密がわかってきました(笑)。

JZ:だね(笑)。

テコンドーをやっていた頃も、音楽は聴いていたんですよね?

JZ:いや、聴いてなかったよ。

ということは、短期間ですごい量の音楽を聴いてきているわけですね?

JZ:そうなんだ。本当にハマったからね。まるで中毒さ。家族は誰も音楽ファンじゃなかったし、周りに音楽はなかったからね。

音楽にハマりだしたとき、お母さんから何か言われませんでした?

JZ:最初は不安がっていたけど、シュトックハウゼンなんかに関する音楽理論があって、それを俺が勉強しているのを知って、息子がいかに真剣かがわかったらしい。パフォーマンスをするときはジャズ・バンドとやるんだけど、それを見たとき、本気なんだなと感じたみたいだね。

パフォーマンス、DJ、音楽制作、いろいろと活動されていますが、どの作業がいちばん好きですか?

JZ:すべてだね。どれが欠けてもダメさ。どれかひとつだけをやるんじゃなくて、すべてのバランスをエンジョイしているよ。

テコンドーでは怪我などがあったと思いますが、音楽活動をはじめて何かマイナスな面はありましたか?

JZ:自己中心的にならなければいけないときがあることかな。そんな自分の一面とは向き合いたくないけど、向き合わなければいけないし、自己中になっている自分に気づかされる。ライヴがうまくいかないとか、そういうのはあまり気にしないんだ。ミスは犯して当然だし、そこから学ぶしね。でも、我が強くなるのはあまり心地よくはない。テコンドーでは身体を痛めつけていたけど、音楽制作はマインドを痛めつけている感じかな。

アルバムが出てからしばらく経ちますが、これからのご予定は?

JZ:2017年の春にEPをリリースする予定。内容はもっとエレクトロニックだよ。で、そのあと次のアルバム作りに集中するつもり。今度もまたさまざまな音楽が詰まった内容になるだろうね。あと、『Fool』のアートワークを手がけてくれたペインターとのコラボのプロジェクトも計画しているんだ。

もし次の作品にリミックスを入れるとすれば、誰にリミックスを頼みたいですか?

JZ:ペーター・ブロッツマン。またはケイジ・ハイノ(灰野敬二)、メルツバウ。

ありがとうございました!

JZ:こちらこそありがとう!

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