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Swindle

DubstepJazz

Swindle

Peace, Love & Music

Butterz / Pヴァイン

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小川充高橋勇人   Oct 28,2015 UP
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クラブ・ミュージックにおける初期衝動
小川充

 ダブステップとジャズを繋ぐ作品として、スウィンドルの『ロング・リヴ・ザ・ジャズ』(2013年)を挙げないわけにはいかない。マーラ主宰の〈ディープ・メディ・ミュージック〉からリリースされたこのアルバムは、クールなトランペットやサックス・フレーズ、ソリッドなウッドベースのビートといった、極めてわかりやすいジャズの記号を随所に散りばめていた。楽曲の基本構造はグライム~ダブステップで、もちろんジャズだけでなくソウルやファンクなどさまざまな要素が混在していたのだが、タイトル曲や先行シングルの「ドゥ・ザ・ジャズ」「フォレスト・ファンク」などに顕著なように、ジャズという符号がこのアルバムの核にあったことは間違いない。そこには黎明期のクラブ・ジャズ、例えばユナイテッド・フューチャー・オーガニゼイションの「ラウド・マイノリティ」に代表されるスタイリッシュなストリート感覚があり、ロニ・サイズやDJクラスト、ペシェイやロンドン・エレクトリシティなど、かつてのドラムンベース勢(当時はジャズステップと呼ばれていた)に通じるシャープなファンクネスがあった。ちなみに、ロニ・サイズは『ロング・リヴ・ザ・ジャズ』収録の「ランニング・コールド」もリミックスしている。

 そうしたジャズの匂いがあったからこそ、ジャイルス・ピーターソンのようなジャズDJからもスウィンドルの作品は支持され、そのジャイルス主宰の〈ブラウンズウッド〉からもEPの「ウォルターズ・コール」をリリースしている。1987年生まれのスウィンドルとジャズとの接点は、ギタリストだった父親の影響で、8歳からピアノの演奏をはじめたところにあるようだ。その頃はジャングル~ドラムンベース全盛期でもあり、そこからグライム、ダブステップと進んできた彼の足取りに、ジャズ・ファンク、ソウル、レゲエが影響を及ぼすのは当然のことだろう。そして、マーラによる『マーラ・イン・キューバ』のライヴ・バンドの鍵盤奏者であり、ジャズ・キーボードの大御所のロニー・リストン・スミスとも共演するといった経歴を見れば、『ロング・リヴ・ザ・ジャズ』のようなアルバムが出来あがったのも道理でと頷ける。

 それから2年ぶりのセカンド・アルバム『ピース、ラヴ&ハーモニー』は、基本的には『ロング・リヴ・ザ・ジャズ』の世界を継承し、より強固なものとしている。それと同時に、この2年の間にDJやライヴで世界中をツアーし、その土地それぞれの独自の音楽を吸収したことにより、それらを自身の音楽の中に取り入れ、融合した成果も見られるアルバムとなった。つまり、音楽的な幅広さは前作とは比べものにならないほど広がっている。アフリカ音楽を取り入れた「ファインド・ユー」、エキゾティックな映画音楽の様相を呈した「ブラック・バード」、フィリピン音楽をモチーフにした「マラシンボ」、箜篌(中国の琴)のような音色が印象的な「上海(シャンハイ)」など、これらは前作にはなかったタイプの作品だ。ちなみにその「マラシンボ」「上海」ほか、「東京」「デンバー」など、彼が回った世界の都市が題名となる曲があり、そこでは現地の言葉で「愛と平和と音楽の使者、スウィンドル」というスピーチが入る。彼から見た「東京」の音楽はこうしたものなのかと、なかなか興味深い。フィリピンや中国のようにルーツ音楽がモチーフとなっておらず、ゲームやアニメを連想させるところが、いまの海外の人から見た日本なのだろうか。ともあれ、スウィンドルの音楽に対する貪欲な探究心や研究心、面白ければ少々強引だろうが何でもトライしてみようという、ダンス・ミュージックやクラブ・ミュージックにおいてもっとも大切な資質、初期衝動が如実に表れたアルバムである。

小川充

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