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Swindle

DubstepJazz

Swindle

Peace, Love & Music

Butterz / Pヴァイン

Tower HMV Amazon

小川充高橋勇人   Oct 28,2015 UP
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“愛と平和”のグローバル・レディオ
髙橋勇人

 グライムやダブステップの頭に「UK」と付くことがあるけれど、実際に南のイングランドで生まれた音楽が、スコットランドまで北上するのは難しいようだ。もちろんグラスゴーにはマンゴズ・ハイファイのようなサウンドシステム文化の伝道師がいる。でもグライムのMCがマイクを握るような夜はほとんどない。にもかかわらず、スウィンドルはスコットランドで何回かギグをしているのだから、そこには何かしらの理由があるはずだ。

 〈ディープ・メディ〉から『ロング・リヴ・ザ・ジャズ(ジャズよ、永遠なれ)』を出した2013年に、スウィンドルはグラスゴーでもライヴを行った。ドラマーがいて、ギター、ホーン・セクション……そしてスウィンドルがキーボードを弾く。ダブステップは早い段階でシルキーというマルチ・プレイヤーを生んでいるけれど、重低音をコントロールしつつ、ソウル、ファンク、そしてジャズの即興を生で演奏できるやつが現れるなんて、たぶん誰も想像していなかった。

 リスナーが異なるジャンルの愛好者で、特定アンセムを知っていなくとも、彼らを音で踊らせる能力をスウィンドルは持っているといっていい。ライヴに限らず、彼はDJでもそれができる。ロンドンのマナーは通じないかもしれないが、本物の才能にグラスゴーは寛容なのである。

 「平和、愛そして音楽」と銘打たれた今回のアルバムを理解する上でも、スコットランドは欠かせない要素のひとつで、それが如実に現れているのが5曲めと6曲めの“ウォークン・スカンク・レディオ”“グローバル・ダンス”だ。「ウォークン・スカンク(Walk ‘N’ Skank)」とはマンゴズ・ハイファイのパーティとネット・ラジオ番組の名前で、ここではその放送を聞いているかのように、マンゴズのメンバーのスコットランド訛りの会話が流れ、いきなりブラス・セクションへと突入する。

 ここでのスピードはBPM150。ダブステップとグライムのプロパーである140よりも早く、ドラムンベースの170よりも遅い。クラブ・ユースのトラックでは良くも悪くもBPMをある程度固定して曲を作ることがマナーなわけだが、スウィンドルにそのルールは無意味だ。その姿勢は他のトラックにも現れていて、BPMの檻を破壊した自由さがアルバム全体を漂う(あの“ドゥ・ザ・ジャズ”は140だった)。そこでラップをするフロウダンも、独自の区切りと冷たいフロウを保ちつつ、スウィンドルとマンゴズによるトラックとシンクロしている。結果、「グローバル・ダンス」というワードが呪文のように聞こえてくるのが恐ろしい。曲そのものはいたって陽気なのだが。

 この曲はシングルとしてもリリースされたのだが、その際アルバムから収録されたもう1曲が、JME(先日コウとの共演が噂されたスケプタの兄弟)との“マッド・ティング”。英語ネイティヴのグライム・ファンによると、ストリート叩き上げMCのフロウダンに対し、JMEは大学出のインテリジェンスな気質があり、それは彼のMCのことばにも出ているそうだ。
 そこに判別をつけるのは、グライムに慣れ親しんでいないリスナー、こと日本語の話者には難しい。けれども、バック・トラックの素地となっているブラック・ミュージックの振れ幅や、散りばめられたエスニックなマテリアルによって生じる大きなわかり易い差異だけではなく、英語の中における微妙なニュアンスにおいても、作品の広がりが生まれていることを知っておいて損はないだろう(スコティッシュが聞こえてくるこの手のレコードを聴いたのは初めてだったかもしれない)。

 今作はスウィンドルが世界をツアーで回った軌跡でもあるので、そのグローバルな視点を軽んじることはできない。それに加えて、さきほどのマンゴズの例に限らず、折々で聞こえてくるアナウンスや、その音のテクスチャーから、アルバムはラジオっぽさを残していることも指摘したい。収録されている曲の一貫性のなさからも、ラジオの持つある種の偶然性に通じるものがある。これが彼のツアー先との結び付きから生まれた作品だとわかっていても、たまに聞こえてくる多言語の音声によって、異国の電波を傍受している気分にも……、なれるひとはなれる。

 もし仮に現代において、ネットではなく、ラジオ、しかも海賊ラジオ(UKダンス・カルチャーの重要なファクター)が世界規模で発達していたとする。車に乗っているあなたは、どこかから飛んでくる違法電波を傍受しようとダイヤルを回し、車の停車位置を変えやっきになっている。それでやっとスピーカーから流れてきた音楽が何なのか。個人的にはそれが『ラヴ、ピース&ミュージック』であってもいいんじゃないかと思う。その資質と能力と、飼い慣らされていない自由さをもってして、スウィンドルは生(ライヴ)でありつづけるのである。

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