「Lea Lea」と一致するもの

Matthew Halsall - ele-king

 ゴーゴー・ペンギン、ママル・ハンズ、ポルティコ・カルテットなどを輩出し、2010年代UKジャズの隆盛の一翼を担った〈Gondwana〉。あるいは今年はチップ・ウィッカムのフジロック出演もあったわけだけど、同レーベルの設立
者であり自身も多く作品を発表しているマシュー・ハルソールが来日することになった。10月19日、ピーター・バラカン監修のフェス《Live Magic》に出演(@恵比寿ガーデンホール&ガーデンルーム)、その後10月21日にはBlue Note TOKYOにてパフォーマンスを披露する。
 また、この来日公演を記念し、日本独自企画としてマシュー・ハルソールのベスト・アルバムがリリースされる。『Togetherness』と題されたそれは10月2日に発売。ライヴの予習にもぴったりです。

2000年代以降のUKジャズシーンに多大な影響を与えているGondwana Recordsの創設者にして現代スピリチュアル・ジャズを新たな地平へと導くトランペット奏者、マシュー・ハルソールの初来日公演を記念した日本オリジナルベスト盤がリリース決定! 松浦俊夫氏からのコメントも到着!

14年間続けている私のラジオ番組「TOKYO MOON」。その中で、マシュー・ハルソールの名はリスナーにとっても、もはや親しいものとなっている。

彼の新作がリリースされるたび、その美しく繊細な音の世界をリスナーと分かち合ってきた。ジャズでありながら、ミニマルやフォークのエッセンスを感じさせるそのサウンドは、静謐でありながらも心の奥深くに響き、まるで夜空に浮かぶ月がもたらす安らぎと力強さを同時に宿しているかのようだ。それはまた、どこか懐かしい風景に再び出会ったような、ほのかな既視感を呼び起こす。そして今、彼のバンドが初めて日本の地を踏み、ライブパフォーマンスを行うという知らせを聞いたとき、胸に湧き上がるのは、深い感慨と共に、心からの祝福の気持ちである。 ──松浦俊夫 (DJ/選曲家/プロデューサー)

ぼくが最初にマシュー・ハルソールの音楽を耳にしたのは今から2、3年前だったと思います。彼がトランペット奏者なのに決してトランペットが中心というわけではないアンサンブルの優しいグルーヴの演奏、そして曲自体の存在が印象に残るとても新鮮な響きにすぐに魅了されたものです。そして2023年に出た「An Ever Changing View」(常に変わり続ける風景)には特に惚れ込み、何度も繰り返し聞くうちに、結局自分にとっての年間ベストとなりました。ぼくが監修するフェスティヴァルLive Magicにマシューのバンドが出演することがきっかけで、今回本人の選曲による日本だけのベスト盤が発売されるわけですが、この形で彼のスピリチュアル・ジャズが更に多くの人の心に響くことを祈ります! ──ピーター・バラカン

2000年代以降のUKジャズシーンに多大な影響を与えているGondwana Recordsの創設者にして、現代スピリチュアル・ジャズを新たな地平へと導くトランペット奏者/作曲家/プロデューサー、マシュー・ハルソール待望の初来日公演を記念した日本独自企画となるベスト・アルバムがリリース決定! 本国UKではもちろんのこと日本国内でも高い評価を得た最新アルバム『An Ever Changing View』(2023)から初期名盤『Colour Yes』(2009)までGondwanaとともに歩んだ十数年のキャリアから選りすぐりの楽曲を収録!さらに昨年のツアー会場限定で販売され即完、再プレスとなった12インチから「Bright Sparkling Light」も追加収録!

【Release Information】
アーティスト:MATTHEW HALSALL / マシュー・ハルソール
タイトル:Togetherness - The Best of Matthew Halsall / トゥゲザーネス – ザ・ベスト・オブ・マシュー・ハルソール
フォーマット:CD/DIGITAL
発売日:2024.10.2
品番:PCD-25423
価格:¥2,750(税抜¥2,500)
レーベル:P-VINE

【Track List】
01.Cherry Blossom from the album “Fletcher Moss Park” (2012)
02.Fletcher Moss Park from the album “Fletcher Moss Park” (2012)
03.The Sun in September from the album “Fletcher Moss Park” (2012)
04.Calder Shapes from the album “An Ever Changing View” (2023)
05.Mountains, Trees and Seas from the album “An Ever Changing View” (2023)
06.Colour Yes from the album “Colour Yes” (2009)
07.Together from the album “Colour Yes” (2009)
08.The Eleventh Hour from the EP “The Temple Within” (2022)
09.The Land Of from the album “Into Forever” (2015)
10.Into Forever from the album “Into Forever” (2015)
11.Bright Sparkling Light* from the limited tour EP “Bright Sparkling Light” (2023)
*Bonus track

【Matthew Halsall(マシュー・ハルソール)】
GoGo Penguin、Mammal Hands、Hania Raniといった先鋭的なジャズ・ミュージシャンを多数輩出するGondwana Recordsの創設者であり、Pharoah SandersやAlice Coltraneといったジャズ・レジェンドの精神性を受け継ぎながらも90年代以降のDJカルチャーにも共鳴し、そのしなやかで洗練されたフレイジングと革新的なアプローチで2000年代以降の現代スピリチュアル・ジャズを体現するトランペット奏者、作曲家、プロデューサー、Matthew Halsall。UK/マンチェスターに生まれ、拠点として活動を続ける中で立ち上げたGondwana Recordsの最初のリリース作品でもある1stアルバム『Sending My Love』(2008)から最新作『An Ever Changing View』(2023)まで9枚のアルバムと多数のEP、シングルを発表、ジャズシーンのみならず多方面のシーンやアーティストに影響を与え、現在のUKジャズシーンを確立した立役者として絶大な支持を集めている。2023年9月には『An Ever Changing View』のリリースを記念して数多くの名演を披露してきたロンドンのロイヤル・アルバート・ホールでのコンサートを実施、2024年6月にはUK最大級のフェスティバル、Glastonbury Festivalにも出演するなどジャズのカテゴリに収まらない活動で高い評価を得ているアーティストである。

Anna Butterss - ele-king

 マカヤ・マクレイヴン『Universal Beings』に参加していたり、ジェフ・パーカーらとの共演盤もあったりと、実力者からその才を認められているジャズ・ベーシスト、アンナ・バターズ。あるいはこれは、いま静かに波が起こっているジャズとアンビエントの融合の流れに分類することもできる音楽かもしれない。10月23日、〈rings〉よりセカンド・アルバムの国内盤がリリース。

『Anna Butterss / Mighty Vertebrate』
2024.10.23 CD Release

Larry Goldings、Josh Johnsonらとの共演や、Makaya McCravenの『Universal Beings』、Daniel Villarealの『Panamá 77』などの参加メンバーとして、LAの多くの名だたるミュージシャンたちからその実力を認められている、ベーシストAnna Butterss期待の2ndアルバムが国内盤CDでリリース‼ 今盛り上がりを見せるアンビエント・ジャズ・シーン最前線の音が記録された、2024年必聴盤。

ジェフ・パーカーやマカヤ・マクレイヴンがその才能に惚れ込んだアンナ・バターズの魅力がこのアルバムには詰まっている。アンナは、ポップスの世界でも認められたベーシストであり、パーカー率いるETA IVtetやスーパーグループSMLの創造性豊かなサウンドの中心にもいる。『Mighty Vertebrate』は、高い評価を得たファースト・ソロ・アルバム『Activities』も凌ぐ、自由でオープンな発想から生まれた音楽だ。トータスのジョン・ハーンドンがアートワークを描いていることも象徴的だ。 (原 雅明 ringsプロデューサー)

【リリース情報】
アーティスト名:Anna Butterss (アンナ・バターズ)
アルバム名:Mighty Vertebrate (マイティ・バーテブレイト)
リリース日:2024年10月23日
フォーマット:CD
品番:RINC125
JAN: 4988044122659
価格: ¥3,080(tax in)
レーベル:rings

オフィシャルURL:https://www.ringstokyo.com/anna-butterss-mighty-vertebrate/
販売リンク:https://diskunion.net/portal/ct/detail/1008900027

C.E - ele-king

 ファッション・ブランド〈C.E〉による2024年最初のパーティがWWW Xにて開催される。大人気のベン・UFOを筆頭に、ベルギーから初来日のキャリアー、日野浩志郎のソロ・プロジェクト=YPY、昨年の〈C.E〉のパーティにも登場したChangsie、〈Incienso〉のDJ'JにDJ Trysteroと、なかなか刺戟的なラインナップだ。9月21日(土)、きっとこのころには涼しくなっていることでしょう。秋の夜長にひと踊り。

C.E presents
Ben UFO, Carrier, YPY
Changsie, DJ’J, DJ Trystero

2024年度初となるC.Eのパーティが9月21日土曜日、WWW Xで開催。

洋服ブランドのC.E(シーイー)が、2024年9月21日土曜日、東京は渋谷に位置するWWW Xを会場にパーティを開催します。

C.Eは、2011年のブランド発足以来、不定期ながら国内外のミュージシャンやDJを招聘しパーティを開催してきました。

2024年初の開催となるC.E presentsでは、イギリスよりBen UFO(ベン・ユーエフオー)、ベルギーよりCarrier(キャリアー)、日本よりYPY(ワイピーワイ)、Changsie(チャンシー)、DJ Trystero(ディージェイ トライステロ)の3名、アメリカよりDJ’J(ディージェイ ジェイ)をゲストに迎えます。

C.E presents

Ben UFO
Carrier
YPY
Changsie
DJ’J
DJ Trystero

開催日時:2024年9月21日土曜日11:30 PM
会場:WWW X www-shibuya.jp
料金:Door 3,000 Yen
Advance 2,000 Yen
t.livepocket.jp/e/20240921wwwx

Over 20's Only. Photo I.D. Required.
20歳未満の方のご入場はお断り致します。年齢確認のため顔写真付きの公的身分証明書をご持参願います

■Ben UFO
イギリスを拠点とするBen UFOは、インターネットラジオ局であるSub.FMにおいて番組The Ruffage Sessions(Loefahの楽曲名に由来)を2007年にスタートさせ、同年には友人であるPangaea、Pearson Soundと共に音楽レーベルHessle Audioを立ち上げた。2008年から現在に至るまでレーベルと同名のラジオ番組をロンドンのRinse FMで隔週で担当している。
現在に至るまでにミックスCD並びにミックステープがThe Trilogy Tapes、Rinse、Fabriclive、Wichelroede、Cav Emptよりリリースされており、FACT Magazine、RA、Boiler Room、Little White Earbuds、Truants、Blowing Up The Workshopなどにミックス音源の提供を行っている。
soundcloud.com/benufo
hessleaudio.com

■Carrier
90年代半ばから音楽制作を続けるGuy Brewerによるプロジェクト。
ドラムンベースのプロデューサー兼DJとしてキャリアをスタートさせ、その後約10年間にわたりShiftedの名義をメインに据えつつ、そのサイドプロジェクトとして数多の名義で楽曲を発表してきたGuyがShiftedを終了させ、新たにスタートさせたCarrier。
昨年23年にThe Trilogy TapesよりCarrier初のアルバム「Lazy Mechanics」を発表し、その後EPを3枚、ミックステープを1つリリースした。
SHXCXCHCXSHなどのリリースで知られる音楽レーベルAvian主宰。

「2020年に完成したShifted 名義における最後のLPを作った過程を考えると、私はすでに切り離すことを模索していました。今から思えば、私はすでに次に行くべき場所を模索し始めていたんです」
「Carrierは、ドラムンベース、テクノ、あるいはエクスペリメンタルなど、私がアナリストとして歩んできた中で拾いあげてきたものすべてに踏み込むことを意味していると思います。それらすべては自身のレンズを通して見てきたもので、私はそれを区画化してきました。Carrierでは、私のパレットを使い、これらの影響を取り入れたものへと適用し、統一感を生み出すことを目指しています」
soundcloud.com/driftingover

■YPY
日野浩志郎によるソロプロジェクト。
国内外のアンダーグラウンドミュージシャンのリリースを行うカセットレーベル「Birdfriend」、コンテンポラリー/電子音楽をリリースするレーベル「NAKID」主宰。
「goat」、「bonanzas」というバンドのプレイヤー兼コンポーザーであり、これまでの主な作曲作品は、クラシック楽器や 電子音を融合させたハイブリッドオーケストラ「Virginal Variations」(2016)、多数のスピーカーや移動する演奏者を混じえた全身聴覚ライブ「GEIST(ガイスト)」(2018-)の他、サウンドアーティストFUJI|||||||||||TAと共に作曲・演奏した作品「INTERDIFFUSION A tribute to Yoshi Wada」(2021-)等。佐渡を拠点に活動する太鼓芸能集団 鼓童とは2019年以降コラボレーションを重ねており、中でも延べ1ヶ月に及ぶ佐渡島での滞在制作で映像化した音楽映画「戦慄せしめよ/Shiver」(2021、監督 豊田利晃)では全編の作曲を日野が担当し、その演奏を鼓童が行った。
soundcloud.com/koshiro-hino
twitter.com/po00oq
instagram.com/po00oq/

■Changsie
千葉は銚子の潮風が育んだ1988年産DJ。2010年代初頭に出会ったダブステップをきっかけに、DJとしての活動を開始。UKのベースミュージックを軸に古今東西の様々なジャンルを織り交ぜるプレイスタイルで、国内外のいたるフロアで低音を轟かせてきた。
2020年にはロンドンに拠点を移し、現地でラジオ番組配信やクラブイベントへの出演を重ねる。
NTS Radioでバイマンスリー番組を担当中。
nts.live/shows/changsie
soundcloud.com/changsie

■DJ’J
1/2 of Incienso.
1/3 of down2earth.
soundcloud.com/jennyslattery
inciensorecs.bandcamp.com
soundcloud.com/down-2-earth

■DJ Trystero
東京を拠点とする音楽プロデューサー兼DJ。
インディペンデント音楽レーベルCity-2 St. Giga(シティー トゥ セント・ギガ)主宰。
英国のThe Trilogy Tapesより2枚のEP、米国のInciensoよりLPを1枚、日本のCav Emptからミックステープを1つ、葵産業よりミックスCD1枚をリリースしている。
soundcloud.com/djtrystero
instagram.com/st._giga/

Godspeed You! Black Emperor - ele-king

 Godspeed You! Black Emperorが新作『No Title As of 13 February 2024 28,340 Dead』のリリースを発表した。欧米では10月4日に発売。
 また、アルバムのリリース発表に際して、あらたなステイトメントも発表した。

明白な真実
我々はそのなかを漂い、議論した
毎日が新しい戦争犯罪で、
毎日が花を咲かせる
私たちは一緒に座り、
ひとつの部屋でそれを書き、
そして別の部屋に座って録音した

タイトルはない=小さな体が倒れながら、どのようなジェスチャーが意味をなすのか? 
どのような背景があるのか?
どのような壊れたメロディがあるのか?
そして、線上の一点を示すための集計と日付、
負のプロセス
増え続ける山
灰のベッドに沈む太陽

我々が一緒に座って議論しているあいだ
旧世界秩序はかろうじて気にかけるふりをした
新世紀はさらに残酷になるだろう
戦争がはじまる
諦めるな
どちらかを選べ
がんばれ
愛を
GY!BE


“No Title As of 13 February 2024 28,340 Dead”:

01 Sun Is a Hole Sun Is Vapors
02 Hole Sun Is Vapors Babys in a Thundercloud
03 Raindrops Cast in Lead
04 Broken Spires at Dead Kapital
05 Pale Spectator Takes Photographs
06 Grey Rubble – Green Shoots


Gastr del Sol - ele-king

 ジム・オルークは、かつて自身が‶音楽の中の時間の問題〟と呼ぶものについて語ったことがある。つまり、音楽は構造的には(映画や文学とちがって)本質的に直線状であるため、前のモチーフや形を参照することでしか時間を遡ることができないということだ。
 『We Have Dozens of Titles』は、ジム・オルークを完全に満足させるような形で時間の問題に注意を向けさせることはないかもしれないが、実はこの作品において、時間は演奏される楽器のひとつのように扱われている。これはある意味ではレアな作品、未発売のトラックとライヴ・レコーディングのコレクションだが、一方ではまったく新しいガスター・デル・ソルのアルバムのように感じられる。さらに言えば、これはバンドとリスナー共々、一緒に過ごしたあの落ち着きのない実験に特徴付けられる1990年代という時間に遡る旅なのだ。100分を超えるアルバムのなかで、馴染み深いもの、予期せぬもの、そして不気味なものが互いにこすれ合い、途切れることなくいつの間にかすり抜けるか、正面からぶつかり合う。

 このようなレンズを通してアルバムに目を向けると、冒頭が“The Seasons Reverse(季節が逆戻り)”のライヴ・ヴァージョンというのは、待ちきれない熱心なリスナーが彼らの考えを知ろうと過剰反応するための安易な餌を、バンド自身が与えてからかっているように感じられる。そしてそれは、いくつかの点において時間の問題を浮き彫りにする選択でもある。“The Seasons Reverse”のスタジオ・ヴァージョンは、ガスター・デル・ソルの1998年のアルバム『Camofleur』のオープニング・トラックであり、今回再びこの曲からはじめるというトリックを使うのは、逆転させることよりもこだまさせること、あるいは参照させる行為であって、聴き手に時間の再構築を促すよりもその瞬間を思い起こすように誘っている。だが、それがライヴ・ヴァージョンであることが、コトを少し複雑にする。本質的にライヴ・ヴァージョンを聴くというのは参照する行為であり、慣れ親しんだ時間を呼び起こしてそれを現在に再配置し、前に進む時にも一緒に携えていくものだ。そしてガスター・デル・ソルは常に動き続けるバンドであり、このヴァージョンではヴォーカル、パーカッション、トランペットの華やかさを剥ぎ取るかわりに、アコースティック・ギターとエレクトロニクスにリズムとスペースを見出している。それでもライヴ・ヴァージョンの録音は、このトラックをその瞬間に固定してより明確に過去に位置付けている。曲の最後で、オルークがフランス語を話す子どもたちとの会話に失敗するサンプルは、スタジオ・ヴァージョンの曲の締めくくりで使われたものと同一であることから、ある瞬間の‶エコーのエコーのエコー〟という山びこ現象を創り出している。

 このアルバムでも、時間はさほど混乱せず、解決しにくい方法で流れてはいる。当然ガスター・デル・ソルの7年ほどの活動の瞬間に触れる数々の楽曲は、非線形的ではあるものの、独自の響きと鏡に満ち溢れている。そして時計の針をさらに巻き戻してみると、以前のアーティストのレンズを通してガスター・デル・ソルの音楽を眺めることもできるのだ。

 ガスター・デル・ソルはそのルーツを、ジョン・マッケンタイアを通じてシカゴ・シーンの同世代バンドのトータスと、バンディ・K・ブラウンとは前身バンド、バストロのオリジナル・ラインナップとしての役割を通して共有している。そして彼らがたとえ、本質的には決してポスト・ロックであったことはなかったにしても、アコースティック、エレクトロニック、ミュージック・コンクレートの要素をコラージュのようにミックスしていることから、少なくとも同一の一般的な音楽的生態系には置かれている(マッケンタイアは自身のバンド名を、ガスター・デル・ソルの“The C in Cake”のタイトルにちなんで‶The Sea And Cake〟としたほどだ)。彼らはさらに1980年代のデイヴィッド・グラブスを通じてスリントと、そしてケンタッキーのパンク・バンド、スクイレル・ベイト のブライアン・マクマハンとブリット・ウォルフォードとも関係している。言うまでもなく、スリントと同世代のビッチ・マグネットのメンバーとしても短期間活動していたからだ。ガスター・デル・ソルの旅路は、明らかにこれらのバンドが演奏していたロックの領域を避けて通っていたかもしれないが、静けさから大音量へ、あるいはより深遠な音とテクスチュアの衝突へ、時には厳しく暴力的な変化を求める耳を持つという点で一致していた。

 これはまったく別のバンドであるかのように、それぞれの曲にアプローチをする彼らの折衷主義的な習慣に起因している部分もあるのだが、同時にこのような鋭い転換は、我々をガスター・デル・ソルの音楽における時間の問題に立ち返らせることになる。「The Japanese Room At La Pagode」(1995年のトニー・コンラッドとのスプリット・シングル)ではアンビエントなフィールド・レコーディングが激しい電子音に中断され、曲の始まりに登場したピアノとヴォーカルのモチーフが舞い戻って来る箇所がある。曲の序盤ではその逆の転換があり、全く異なる様相で曲の断片が止まると、背後で鳴るフィールド・レコーディングがまるでずっとそこにあって最初から聴こえていたかのように感じられる。
 これと同じようなことがより拡張された、やはり1995年の曲“The Harp Factory On Lake Street”でもみられ、ここでは静寂からクライマックスへと突然何の警告もなく豹変したり、シークエンスの途中で閉幕するかのような沈黙が訪れたりするが、これは異なるペルソナの間でチャンネル・サーフィンするバンドということではなく、作品自体が時間のなかを行ったり来たりしながら点滅しているようだ。このような伝統的な構造の断絶はアヴァンギャルド・ジャズとも多くの共通点があるが、シュトックハウゼンが提唱した、音楽の形式が伝統の直線的な進行やナラティヴからの脱却を試み、各パートが独自の永遠の‶今〟として捉えられる〝モメント形式〟とも似ている。

 時計の針を再び現在まで進めてみると、ジム・オルークは大部分の激しい転換モード、つまり聴衆にマシンの内部構造の仕組みを披露する喜びを捨て去っている。その代わり、彼はリスナーをある場所から別の場所へと気付かせることなく移動させる方法を探求することを好む。アルバムの18分に及ぶ最終トラック“Onion Orange”は、アルバムを現在へと繋ぐ結合組織の役割を担っており、表面上で繰り返されるグラブスのギター・モチーフをゆっくりと繊細に、だが決定的にリスナーをオルークの電子的な操作で表面下へと運ぶのだ。

 このアルバムに入っている音楽を作った当時のデイヴィッド・グラブスとジム・オルークは若くて、多くの点でいまよりも洗練されたミュージシャンではなかった。しかし、いま私たちが聴くことができるアルバムの完成版を編集し、プロデュースし、シークエンスしたのは、年齢を重ねたこの男たちだ。その意味では、現在が過去の状況を操作し続け、エコー(反響)やレファレンス(参照)という言語で機能しているのだ。
 これほど多様でそれぞれの異なる断片を繋ぎ合わせたものとしては、このアルバムは並外れて理路整然としているが、ガスター・デル・ソルの首尾一貫した一貫性のなさこそが本作の連続性というものを手助けしたに違いない。これはまた、過去の作品を巡る旅でもあり、音楽の中にある繋がりや潮流を探求することで突然の衝撃なしに曲から曲へと移り変われるのに加えて、現在からの導きの手が過去についての物語を一緒に紡いでくれている。
 けれども、過去もまた、『We Have Dozens of Titles』を生み出す交渉における積極的な参加者だった。おそらく、ライヴ録音がその性質上、音楽を過去に定着させると同時に慣れ親しんだ形から記憶を逸脱させるものであるからこそ、過去のライヴの瞬間がアルバム全体に散りばめられて現代のアーキテクト(計画立案者)たちを助け、時間を逆行する旅であるかのようにその手で断片を繋ぎ合わせると同時に、新鮮な創造的衝動とその場にとどまることのない意志を吹き込んだのだ。


by Ian F. Martin

Jim O’Rourke has spoken in the past about what he describes as “the problem of time in music”, meaning that, structurally, music (unlike cinema or literature) is essentially linear and can only travel backwards by referencing earlier motifs and shapes.

“We Have Dozens of Titles” might not address the problem of time in a way that could ever fully satisfy O’Rourke, but it’s a work in which time is very much one of the instruments being played. On one level, it’s a collection of rareties, unreleased tracks and live recordings; on another, it feels like a brand new Gastr del Sol album; on still another, it’s a backwards journey through time, returning both band and listener to the state of restless experimentation that characterised their time together in the 1990s: familiar, unexpected and eerie rubbing up against each other, slipping seamlessly by, or colliding head-on throughout the album’s 100+ minutes.

Looking at the album through this lens, the fact it opens with a live version of “The Seasons Reverse” feels almost too easy a bait not to snatch hungrily at, like the band are teasing the eager listener to make too much of the idea. And it’s a choice that highlights the problem of time in a few ways. The studio version of “The Seasons Reverse” is the song that opened Gastr del Sol’s 1998 album “Camofleur”, so repeating the trick here is an act of echo or reference rather than reversal, inviting the listener to recall the moment rather than restructuring time. Being a live version complicates that a little, though. The nature of a live version is to be an act of reference, calling back to a familiar time and relocating it in the present, bringing it along with you as you move forward. And Gastr del Sol were always a band on the move, the version of the song here stripping away the vocals, percussion and trumpet flourishes, finding its rhythm and space in the acoustic guitar and electronics. Nonetheless, a recording of a live version anchors the track in that moment in time, locating it more explicitly in the past. The sample of O’Rourke failing to communicate with some French speaking kids that closes the track is the same one that ends the studio version, creating an echo of an echo of an echo of a moment.

Time flows through the album in less confusing and irresolvable ways too. Of course through the way the tracks touch on moments throughout Gastr del Sol’s seven or so years of activity, albeit in a nonlinear way, full of its own echoes and mirrors. But wind the clock back even further and you can see Gastr del Sol’s music through the lens of earlier artists still.

Gastr del Sol share roots with Chicago scene contemporaries Tortoise through John McEntire and Bundy K. Brown’s role in the band’s original lineup and precursor band Bastro, and if they were never exactly post-rock per se, the collage-like mix of acoustic, electronic and musique concrète elements that they employ at least places them in the same general musical ecosystem (McEntire even named his band The Sea And Cake after Gastr del Sol’s song “The C in Cake”). They also share a connection with Slint through David Grubbs’ time in the 1980s alongside Brian McMahan and Britt Walford in Kentucky punk band Squirrel Bait, not to mention a brief period as a member of Slint contemporaries Bitch Magnet. Gastr del Sol’s journey may have skirted clear of the rock territory these bands played in, but they shared a similar ear for harsh, sometimes violent transitions, whether from quiet to loud or more esoteric collisions of sounds and textures.

Some of this comes down to the band’s eclectic habit of approaching each song as if they were a different band entirely, but these sorts of sharp transitions also bring us back to the matter of time in Gastr del Sol’s music. There’s a point in “The Japanese Room At La Pagode” (from a 1995 split with Tony Conrad) when a stretch of ambient field recording is interrupted by a harsh, electronic squeal that gives way to a return of the piano and vocal motif that began the track. Earlier in the song, the reverse transition occurs very differently, when the song fragment stops and it feels like the background field recording had always been there and was in fact what you’d always been listening to all along.

There are parallels with this in the more expansive “The Harp Factory On Lake Street”, also from 1995, where transitions from quiet to climactic moments happen suddenly and without warning, or closure-like silences fall midway through a sequence — not like a band channel surfing between different personas but as if the piece itself is blinking back and forth in time. This breakdown in traditional structure shares a lot with avant-garde jazz, but also with Stockhausen’s “moment form”, where the structure of the music tried to break free of traditional linear progression and narrative, rather seeing each part as its own eternal now.

Wind the clock forward again to the present and Jim O’Rourke has largely abandoned this mode of harsh transitions: this glee in showing the audience the inner workings of the machine. Instead, he prefers to explore ways of carrying you from one place into another without you even noticing the transition has occurred. The album’s 18-minute final track “Onion Orange” offers some connective tissue to this present in the way it takes Grubbs’ superficially repetitive guitar motif and slowly, subtly, but irrevocably transports the listener via O’Rourke’s electronic manipulations beneath the surface.

The David Grubbs and Jim O’Rourke who made the music on this album were younger and in many ways less sophisticated musicians than they are now, but it’s those older men who compiled, produced and sequenced the finished work we can now listen to. And in that sense, the present continues to pull the strings of the past, working in the language of echo or reference.

It’s a remarkably coherent album for something pieced together from such diverse fragments, though this sense of continuity was surely helped by how consistent in their inconsistency Gastr del Sol always were. It’s also a trip through pieces of the past that seeks out connections and currents within the music which allow songs to transition from one to another without sudden jolts: guiding hands from the present stringing a narrative about the past together.

However, the past is nonetheless an active participant in the negotiation that created “We Have Dozens of Titles”. Perhaps because of the way live recordings, by their nature, both anchor music in the past but also to deviate from a form memory has rendered familiar, these live moments from the past help the album’s present-day architects, spread throughout the album, their hands holding its pieces together as both a trip backwards through time and something infused with a fresh creative impulse and unwillingness to stay put.

DJ Ramon Sucesso - ele-king

 ラモンは私のレーダーに映った。何の前触れもなく、自然に。2トン爆弾が腰に突き刺さるかのように。ウェブ上に蔓延しているバイラル動画が、ドゥーム・スクロール中の私の注意を引いたのだ。各動画は、TikTokのバイラル・アテンション・スパンにぴったりな短いもので、何の変哲もない室内(おそらく彼の寝室)で撮影され、ラモンがパーソナル・デッキの前で最初からコントローラーを操作し、ヴォーカルと散らばったビートをその場で何段階にもミックスしている。コール・アンド・レスポンスのサウンドスケープは瞬く間に合体し、解決への疑念は消え去り、轟音とどよめきのベースビートが鳴り響くたびにカメラが激しく揺れ、404のエラー・イマジネーションは大きく損なわれる。
 ラモン(ブラジル人、21歳)は、リオデジャネイロにほど近いノバ・イグアスのパルハダで生まれ育った。ファベーラ・ファンクのカリオカに膝まで浸かり、ビート・ボーリャから発せられる火花を屈伸させながら、まるで金属鍋の上で熱々のベーコンをジュージューと焼くような揺れのひとつひとつにアフリカの伝統を見せつける。

 ラモンの動画のテイスト(味)は、緊急に冷やした夏のフルーツに似ている。ラモンは、ほとんど忘れられた一族の末裔だ。DJデッキのまわりで何気なく踊りながら、たまにミキサーのツマミに触れ、自分たちが魔法を生み出し、オーディエンスが天才を目撃していると錯覚させるようなUSBメモリ使いのDJたちとは一線を画しているのだ。いまや多くの場合、DJはAIプレイリスト・セレクターと何ら変わりなく、オリジナル・トラック制作者の手柄を横取りしている。それゆえ、DJのスペクタクルはテクニックや才能ではなく、いかにセクシーに見えるか、エキゾチックに見えるか、いかにイヴェントを楽しく見せるかにある。観客を魅了するDJソーダの魅惑的なポゴ 「ジャンプ 」を思い浮かべてほしい。

 ラモンは、おそらく知らず知らずのうちに、実際にDJをしていた本物のDJたちの弟子であり、エレクトロニック/ダンス・ミュージックを革新してきた黒人の長い系譜に連なる革新的な信念の持ち主だ。ジャマイカのサウンドシステム・ヤーマン・ヴァイヴスや初期のニューヨーク・ラップの黄金期に習得された数々のテクニックのエコーが、彼の若い手に反映されている。
 しかし、彼は使徒でもある。機材を使い、マッシュし、スマッシュし、ミックスし、サノスの存在から新しい何かを振動させる。ラモンはDJ機材を選曲マシーンではなく、楽器のように扱う。ラモンは決して動きを止めず、創作に対する彼の精神的な鋭敏な注意は、絶対的に明瞭で白黒はっきりしている。ネット上の動画はどれも短く、ミキシングはダンスフロアの脳をメルトダウンさせるために振り切れている。

 よって、ブラジル行きの飛行機に乗れない私たちの多くが知りたいのは、芝居がかった動画ではなく、彼の長く録音されたミックスがいったいどんなものなのか、ということ。新たなスターダムを知るにはいいタイミングだろう、私はレーベル〈Lugar Alto〉から2023年末の11月にリリースされたリリースを手に入れた。
 最初に言っておく。ベースが鳴っていない。多くの人が彼のミキシング・スペクトラムの幅広い使い方に慣れているいま、ミックスは期待するほどドラスティックではない。私たちは皆、自分のステレオやiPhoneがそれを扱えることを知っている。『Sexta dos Crias』はふたつの長いミックスで構成されている。完全に楽しめるし、彼のユニークなスキルから期待されるべきものだ。しかし、他のダンス・レコードの中で完全に際立っているわけでもない……トラック2の途中までは。
 “Distorcendo a Realidade"では、急にテンションが上がり、彼の動画にあったダーティな雰囲気にへと変化する。ここまで来るのに時間がかかるのはどうかと思うが、だからといってそれまでの数分間が無駄というわけではない。いや、彼の計り知れない才能を判断するには、別のメディア、別の創作形態、圧縮の幅が必要なだけだ。『Sexta dos Crias』の2曲は、ほとんどのミックスがそうであってほしいようなペースで進んでいく。しかも彼はこれをリアルタイムでやっているわけだ! 私がDJプレイにこれほど興奮したのは、ジェフ・ミルズを見て以来のことだ。踊りたい、興奮もしたいし、絶頂に達するほど刺激されたい。DJが実際にデッキでパフォーマンスするのを見ることで、私の注意を惹きつけてほしい。世界中のDJがこのことに注目し、ベッドルームに戻って自分の能力をスパイスアップすることを願う。DJラモンは他の追随を許さない。

---

Ramon came on my radar like any genuine sensation should. Spontaneously and without warning. Randomly and like a two ton bomb to the waist. Videos viral in their pervasiveness across the web caught my attention while doom scrolling. Short and perfect for TikTok viral attention span, each video was simply shot in one non-descript inside location ( possibly his bedroom?) with Ramon in front of his personal decks massaging the controllers from the get go, conjuring a multi level on-the-fly mix of vocals and scattered beats. The call and response soundscape quickly coalesces, all doubt of resolution is killed, and the 404 error imagination is severely damaged by the camera shaking violently with each thunderous, throbbing bass beat.
Ramon, Brazilian, 21 years old born and raised in Palhada, Nova Iguaçu, an area close to Rio de Janeiro, knee deep in favela funk carioca flexing the sparks emanating from beat bolha, shows his
African heritage with each tremor that sizzles hot bacon as if on a metal pan.

The taste of a Ramon video is similar to summer fruit chilled for immediate effect. Ramon follows in a line almost forgotten among 2024 USB stick carrying DJs who casually dance around dj decks only once in a blue moon touching the knobs of their mixers to make the dancing public falsely believe they are creating magic and they, the audience , witnessing genius. Often times djs are no different than AI playlist selectors taking the credit for the original track maker’s creation.
Hence the spectacle of Djing isn’t on technique or talent now but how sexy you look or exotic or how fun you make the event seem.
Ramon, most likely unknowingly, is a disciple of the OG DJs who actually DJed, a innovation believer in a long line of Black people innovating electronic / dance music. Echoes of the many techniques mastered before in Jamaican sound system yah-man vibes and the golden age of early NYC rap are reflected in his young hands.

But he is also an apostle. Using the equipment to mash, smash, mix and vibrate out of Thanos existence something new. Ramon treats DJ equipment like an instrument rather than a track selecting machine. Ramon never stops moving and his mental acute attention to creating is black and white with absolute clarity. Each video online is short and mixing is left in the red for dance floor brain meltdown.

So that brings one to wonder what would a longer recorded mix without the video theatrics sound like since most of us can’t grab a flight to Brazil. Just in time to capitalize on his new stardom, we have been graced with this first release put out in November at the tail end of 2023 by label Lugar Alto. I will disappoint you first. The bass ain’t bass-ing. The mix isn’t as drastic as one would hope especially as many people are now used to his wide use of the mixing spectrum. We all know that our stereos and iPhones can handle it. “Sexta dos Crias” comprises only 2 long mixes. Entirely enjoyable and what we should expect from his unique skills. But it also doesn`t stand out entirely from other dance records..... UNTIL mid way through track 2
“Distorcendo a Realidade” which suddenly turns waaaay up and gets grimy dirty resembling his videos. Too bad we have to wait so long but that doesn’t mean the preceding minutes are a waste. No, just a different medium, a different form of creation and compression range to judge his immense talent. The 2 tracks of “Sexta dos Crias” move at a pace that I wish most mixes moved at. Mind you he does this in real time! I haven’t been so excited about DJ work since I saw Jeff Mills. I want to dance but I want to also be excited and stimulated to the point of climax. I want the DJ to earn my attention in watching him actually perform on the decks. I hope all DJs worldwide take note and go back to their bedrooms to spice up their abilities. DJ Ramon is unmatched.

interview with Keiji Haino - ele-king

 灰野敬二さん(以下、敬称略)の伝記本執筆のためにおこなってきたインタヴューの中から、編集前の素の対話を公開するシリーズ。前回(第4回)は、紙版エレキングに掲載したが、第5回は再びウェブ版で。
 今回は、80年代初頭のフレッド・フリスとの出会い、そして初渡米の時のエピソードを語ってもらった。

81年7月21日、池袋の「スタジオ200」でおこなわれた「通俗―異端―音楽実験室 Beat Complex 2」なるイヴェントでフレッド・フリスと初共演しましたが、どういう経緯だったんですか?

灰野:俺の初ソロ・アルバム『わたしだけ?』がピナコテカから出る直前だったけど、マイナーの佐藤隆史さんが俺のいろんな音源を入れたカセットをフリスに送ったら、日本に行った時に共演してみたいと彼が言ったらしい。でも……もしかしたら、それ以前からフリスとやりとりしていた盛岡の即興演奏家・金野吉晃さん(第五列)が、佐藤さんから渡された俺の音源をフリスに送ったのかもしれない。


フレッド・フリス初来日公演チラシ

この時フリスを招聘したのはフールズ・メイト誌の北村昌士さんで、7月10日から日本各地でライヴをやりました。突然ダンボールやグンジョーガクレヨンとも共演したり。翌年には『Live In Japan』というフリスのアルバムも出た。

灰野:この21日は、たぶん佐藤さんか「スタジオ200」が1日だけ公演を買いとってセッティングしたのかもしれないね。

フリスはこの後、フールズ・メイトのインタヴューで「灰野はロックのインプロヴィゼイションの本質をつかんでる非凡なアーティストだ」と絶賛したそうですが、ライヴはどんな感じだったんですか?

灰野:フリスの希望で、最初から最後までずっとデュオだった。フリスはテーブル・ギターで、俺はギターとヴォイス、そして天井からもう1本別のギターをぶら下げた。ギターをただ弾くのではなく、吊り下げたギターにバスケットボールをぶつけて、転がってきたボールを更に手元のギターにこすりつけて別の音を出したり、それを一つのリフとして提示して繰り返した。サウンド・インスタレイションのように思われるだろうけど、当時から俺の中では、あらゆるものはつながっているという意識があって、それら全体が演奏だと思っていた。フリスも当時既に、いろんな方法でギターの音を出していたけど、その後まもなく始めたスケルトン・クルー(Skeleton Crew)では、演奏形態を一段と拡張し始めたよね。この時の俺との共演も大きなヒントになったんじゃないかな。このデュオ・ライヴの音源はディスク・ユニオンの関係者が持っているようだから、いつかリリースされるかもしれないね。


Skeleton Crew 『Learn To Talk』より「It's Fine」(1984)

その後85年にフリスがプロデュースした日本のアヴァン・ロックのコンピ盤『Welcome To Dreamland (Another Japan)』にも、灰野さんの演奏が収録されましたよね。

灰野:俺の曲「As It Is, I Will Never Let It End...」は84年に GOK Studio で録音したもので、本当は30分ぐらいあったものをフリスが3分に編集したんだ。だからフリスは「Scissors (はさみ)」とクレジットされている。

初共演後、フリスとのつきあいは?

灰野:俺の最初の渡米は彼がサポートしてくれたんだよ。82年の7~8月。フリスにアメリカでライヴをやりたいと言ったら、ライヴや宿泊のサポートをするから、前年に出た『わたしだけ?』を10枚持ってきてくれと言われた。関係者に配りたいと。実際、ジョン・ゾーンやデイヴィッド・モス、クリスティアン・マークレイ、アート・リンゼイ、エリオット・シャープなど、当時フリスが親しかったNYのミュージシャンたちは全員、フリスから受け取ったみたい。

まずLAに着いたんでしたっけ?

灰野:そう。実験音楽集団の「LAFMS」 (Los Angeles Free Music Society) のメンバーだったジョン・ダンカンを最初に訪ねた。ジョンとは渡米の2ヵ月前に、例の「通俗―異端―音楽実験室 Beat Complex」のVol.9 で共演しており、彼もいろいろとサポートしてくれたの。
 当時のレートは1ドル=250円で大変だったけど、何よりも準備に一番苦労したんだ。米大使館からヴィザをなかなかもらえなくてね。当時は観光ヴィザでも、東京の米大使館で面接があった。運悪く、その直前にNYで核兵器反対運動の大規模なデモがあり、日本人は歓迎されざる国民というムードになっていたから、それも関係あったんだと思うけど、なかなかヴィザが下りなかった。どういう人間なのかを説明するために、雑誌の記事を10本ぐらいコピーして持って行ったけど、9時から5時まで待たされたあげく面接もなく、翌週また行った。不法滞在をしない証拠として、帰国後のライヴの出演依頼書をライヴハウスの担当者などから書いてもらって。で、やっと45日間のヴィザが下りた。でも、渡米予定日が計画から1週間ズレてしまったため、フリスとジョン・ダンカンがいろいろとお膳立てしてくれていたLAとNYのライヴのスケジュールなどが全部ダメになってしまった。
 LAでは急遽ダンカンが新たにライヴをセッティングしてくれたんだけど、その会場はたくさんの人間がスクワットしている怪しいビルの地下スペースで、かなりのトラブルになった。
 次のオークランドでは、森の中にあるヘンリー・カイザーの自宅に1週間ほど泊めてもらった。ラルフ・レコードからLPを出していたアヴァンギャルド・バンド、MX-80 SOUND のメンバーとヘンリーの自宅でセッションをやったんだけど、そのメンバーの一人がやっている爬虫類屋さんに前日遊びに行った時、そこでニシキヘビにネズミを食べさせるという、俺にとってはとても許せないものを見せられたんだ。俺は激怒して、セッションの時、おそらく宇宙いっぱいの怒りをこめて演奏したら、そいつはビビって途中で逃げていってしまった。ヘンリー・カイザーは笑っていたけどね。


MX-80 Sound 『Crowd Control』より「Why Are We Here」 (1981)

ヘンリー・カイザーとはこの渡米時に初めて会ったんですよね?

灰野:そう。フリスが俺のレコードを事前に渡していてくれたので、泊めてもらえたんだ。彼からは「飛行機に乗る時は、ギターは絶対に預けないで機内に持ち込め」とアドヴァイスされ、それ以来ずっと守っている。
 オークランドの後はNYに行き、最後に再び西海岸のパサディナに移動して、LAから帰国したんだけど、パサディナでは「LAFMS」の中心メンバーのリック・ポッツのところに1週間ほど泊めてもらった。その時にドゥードゥエッツやリック・ポッツとやったセッション・ライヴが、2002年に出た『Free Rock』というアルバムだよ。パサディナは、小さなカフェが1軒あるだけのすごい田舎で、ボーッとして過ごすしかなかった。


Doo-Dooettes with Keiji Haino & Rick Potts『Free Rock』

オークランドの次に行ったNYでは、フリスが待っていたわけですね?

灰野:そう。でも、計画が1週間ズレたせいで、会えるはずだった人たちともほとんど会えず、ライヴもフリスが急遽セットしたものが1度だけになった。エリオット・シャープのバンドのオープニング・アクトをフリスと一緒にやったんだけど、客席は超満員だった。俺はいろいろと鬱憤がたまっていたこともあって、かなりワイルドなプレイになり、フリスもちょっとあたふたしていた。終わった後、フリスは「Keiji is from hell」と言って笑っていたけど、客席にいたフリスのファンからは「フリスはとてもいいやつだから、あんまりいじめないでくれ」と言われてしまった(笑)。

いろいろとトラブルが多く、アメリカはこりごりだと思ったんじゃないですか?

灰野:いや、そんなことはない。そのまま不法滞在しようかなとも思ったぐらいだよ。計画どおりにはいかなかったけど、NYはやはり面白かった。ジョン・ゾーンからも、ライヴが素晴らしかったと言われたし、フリスが配った『わたしだけ?』も評判がよく、共演したがっている奴が多いと聞かされた。単純に、他でやってない音楽、聴いたことのない音楽ということで興味を持たれたんだと思う。実際、そういう空気を自分でも肌で感じた。でも俺は、とりあえず帰国した。いろいろ準備を整えてから改めて渡米しようと思って。

アメリカで活動したいという気持ちは、滞米時に初めて芽生えたんですか?

灰野:いや、既に70年代後半には、アメリカでどれぐらい通用するのかやってみたい、英語以外では絶対に負けないぞ(笑)という気持ちがあった。『No New York』やテレヴィジョンのレコードを聴いて、こういうのが成立するんだったら大丈夫だなと、ある種の自信を持ったんだ。俺はその10年近く前にロスト・アラーフをやってたわけで。これはもうアメリカに行かなくちゃいけないな、勝負してみたいなと。だから、フリスから声がかかって81年に初めて共演した時は、これがいいきっかけになるといいなという期待もあった。

実際行ってみると、西海岸と東海岸は人間の気質も文化もだいぶ違いますよね。灰野さんが活動の場として考えていたのはやはりNYでしょうね。

灰野:そうだね。LAとNYは人間も文化も全然違う。西海岸は気候も人間もあったかい。泊まるところがないんだったらうちに来いよと気軽に声をかけてくれるし。1週間予定がズレたせいで、NYの初日なんて、ひどいところに泊まったんだよ。スタジオ・ヘンリーという地下のライヴハウスの楽屋で石の床に新聞紙を敷いて寝た。スタジオ・ヘンリーの経営者は、グレン・ブランカの『The Ascension』(81年)でドラムを叩いていたスティーヴン・ウィッシャース (Stephan Wischerth) だった。最初の夜、ヘトヘトになって楽屋で熟睡したんだけど、翌日の昼に突然聴こえてきた爆音でたたき起こされた。楽屋から出ると、ジョン・ゾーンとアート・リンゼイとデイヴィッド・モスがリハーサルをやっていた。3人と会ったのは、その時が初めてだった。


Glenn Branca 『The Ascension』より「Light Field (In Consonance)」(1981)

 NYで一番強く感じたのは「速い」ということ。なにもかもが。東京の速度もかなりだけど、レヴェルが違う。気分がガガガーっと押される感じ。煽られるというか。その後何度もNYに行き、ダメな点もいろいろわかったけど、他の街と比べるとやっぱり腐ってもNYだと思う。新陳代謝がすごい。くやしいけど、NYだけはやはり特別だよ。あそこはNYという一つの国だと思う。

予想外のうれしい出会いはなかったんですか?

灰野:オークランドでクイックシルヴァー・メッセンジャー・サーヴィスのジョン・シポリナに会えたことがうれしい驚きだった。ヘンリー・カイザーがライヴに連れて行ってくれて、楽屋で挨拶、握手したんだ。そのライヴは、クイックシルヴァーにちょっと関わっていたミュージシャンのバンドにジョン・シポリナも加わったもので、特に面白いとは思わなかったけど、シポリナがギターを弾くシーンは特に大きくフィーチャーされていた。当時彼は地味にソロ活動をしている時期だったけど、伝説的スターのオーラがあった。楽屋で会ってみると、思ったより小柄な人で、ドラッグでボロボロになっている感じではあったけど、やはりカッコ良かったね。


John Cipollina 1981年のライヴから

NYではいろんなライヴを観たんじゃないですか?

灰野:いや、さっき言ったアート・リンゼイ、ジョン・ゾーン、デイヴィッド・モスのトリオ以外には何も観なかった。NYの連中は西海岸みたいに親切に世話をしてくれる感じではなく、ほっとかれていたし。
 レコード屋にも行ったけど、ひどい目にあったんだよ。実は、レコードのトレードをしようと思って、『わたしだけ?』10枚のほかに30枚ぐらいのLPを持って行ってたの。バーズやプロコル・ハルムなどのきれいな日本盤ばかり。ザ・フーとジミヘンの缶セット(『Battle Of The Who & Jimi Hendrix』)もあった。そういうのがあっちではすごく高値で売買されるという情報を耳にしていたから。で、トレードをしてくれるというマンハッタンの中古レコード屋に持っていったら、店員の目の色が変わった。店の在庫のどんなレコードとトレードできそうか調べるので、一時預からせてくれと言われ、全部彼に預けた。数日後に店に行ったら、そいつが、面と向かって「いや、預かってない」と言って、返してくれないんだ。あんた、誰? みたいな感じ。ひどいんだよ。日本では考えられないでしょう。らちがあかないので、フレッド・フリスに相談したら、彼が激怒して弁護士を連れて店に乗り込んでくれ、それでようやく全部取りもどせたんだよ。

 なお、今回は本文を書き上げた後、一つだけ追加質問をさせてもらった。

今日までずっと日本で活動を続けてきたわけですが、この初渡米の後、もし活動拠点をNYに移していたら、その後のキャリアはどうなっていたと思いますか? 希望も含めて想像してください。

灰野:私はこの国、日本に住んでいます。最近、とても日本ということを意識します。もし、私がNYに移って、そこでずっと活動していたら、この戦争に負けた国と言われている民族に対して、戦争に勝った民族の人間たちと共に生きていられることが、私にできたでしょうか。

Sahara - ele-king

 こだま和文との共作『2 Years / 2 Years in Silence』でより広い層へとその名を知らしめたダブ・ユニット、Undefined。その片割れであるサハラによるソロEP「Whole Earth Dub / In The Wall」がリリースされている。リリース元は、本人主宰の〈Newdubhall〉(デジタルで出すのはレーベル初の試みだそうだ)。
 なおSaharaは、8月28日に発売される河村祐介監修のディスクガイド『DUB入門』に掲載された座談会にも参加している。ぜひそちらもチェックを。

国内外の先鋭的なダブ・アーティストをリリースしてきたNewdubhall初のデジタル・リリースはUndefined サハラによるソロ・プロジェクト!

これまで国内外の先鋭的なダブ・アーティストをリリースしてきたNewdubhall。2024年の2作目は、Newdubhall主宰、Undefinedのキーボード、エレクトロニクス、Saharaによるソロ・プロジェクト、2曲のEP“Whole Earth Dub / In The Wall”となる。レーベル発足以来アナログ・リリースが続いたが、ここで初のデジタル・リリース。

そこに存在しないベースラインをクラックル・ノイズとエコーの余韻だけで導き出す静寂なダブ“Whole Earth Dub”。
そしてテープ・エコーのノイズからイメージを膨らませたという、ゆっくりとした鼓動のようなビートと差し色のシンセがホワイトノイズのレイヤーとともにミニマル・ダブの亡霊を呼び出す“In The Wall”の2曲だ。

どちらの曲もこだま和文& Undefined『2 Years / 2 Years in Silence』における「in Silence」サイドの「次」を感じさせるサウンド。マスタリングはレーベル作品にはおなじみのe-mura(Bim One Production)が手がけている。またNewdubhallでは、Undefinedのジ・アザー、ドラマーのOhkumaのソロを9月にリリースする模様だ。

河村 祐介

発売日:8月8日 各種配信、データ販売開始
Sahara
1. Whole Earth Dub
2. In The Wall
released from newdubhall - ndh-d-001
特設サイト:https://solo.newdubhall.com

ZULI - ele-king

 エジプトはカイロ出身で、現在は、ベルリンを拠点とするエレクトロニック・ミュージック・アーティストのズリの新作が、あのエンプティセットのジェイムズ・ギンズバーグがファウンダーを務めるブリストルのレーベル〈Subtext〉からリリースされた。ジェイムズ・ギンズバーグは本作のミックスも手掛けている。
 『Lambda』は2020年10月にカイロで制作開始され、2023年7月にベルリンで完成した。はじめに断っておく。本作は間違いなく彼の最高傑作である。なぜか。これまでの解体と再構成を同時におこなうようなディコンストラクション的なサウンドをさらに推し進め、解体と「優雅さ」を同時に共存させるような音響空間を構築しているからである。絶縁体の隙間から漏れ出るノイズと綺麗な空気のなかを漂うアンビエントが並列に鳴っているとでもいうべきか。

 結論へと至る前に、まずはズリの経歴を簡単に振り返っておくべきった。ズリは本名を Ahmed El Ghazoly という。彼はその活動初期においてカイロで地元のラッパーたちにビートを提供して経験を積んだ。その後、カイロでも急成長中のアンダーグラウンド・ダンス・ミュージックに関心を移し、イベントのプロモートや、DJとしても精力的に活動を展開する。いわば現場からの叩き上げといってもいい。その点、頭でっかちの実験音楽家ではない点も信頼がおける点だ。
 とはいえ私のようなオタクなリスナーがズリのことを知ったのはリー・ギャンブルが主宰するレーベル〈UIQ〉から2018年に出たアルバム『Terminal』だったと思う。10年代尖端音楽の代表のひとりといっていいリー・ギャンブルが見出した音という点に最初は惹かれたのだ。じっさいその音を聴いてみると、ヒップホップとジャングルが高密度に圧縮・解体(押しつぶされていくような)サウンドを展開しており、そのうえアブストラクトかつコラージュ的なトラックに仕上がっていて衝撃を受けた。まさに10年代尖端音楽が爛熟期に入ったと実感したものである。
 2019年以降は、ズリとラマ(ふたりは2019年に連名で『Noods Mixtape』をリリース)とともにレーベル〈irsh〉を発足させ、2020年に自身のシングルやコンピレーション・アルバム『did you mean irish』をリリースしていく。2022年には『did you mean irish vol. 2』を発表した。
 ズリはベルリンに拠点をしさらに精力的に活動を展開していく。昨年、同郷のカイロのアンダーグラウンド・レーベル〈Nashazphone〉よりリリースされた『Digla Dive - Live』はIDM、ヒップホップ、ジャングルなどをカオティックにミックスしたような強烈なアルバムで、まさに『Terminal』の進化形のような音で驚いたものだ。この音楽家は長い時間かけて自身のサウンドを深化させているのだなと思った。
 『Digla Dive - Live』から1年待たずにリリースされた本作『Lambda』は、いわばカオスの先にある美麗かつロマンティック、そして分解と再構成を繰り返すようなアンビエンスとサウンドスケープを実現しているアルバムであった。彼の音の向こうに眠っていた「優雅さ」が全面化したようなアルバムとでもいうべきか。彼は本作で明らかに新たな音の領域を探究し見出しているといえよう。

 アルバムには全12曲が収録されており、どの曲もノイズとアンビエントと電子音と声が解体され再構築され音楽と音の中間領域の池に浮かぶ花たちのように浮遊している。インダストリアル、テクノ、アンビエント、トリップホップなどがバラバラに解体され、その果てに再構成されていくような仕上がりなのだ。アルバムのオープナーである “Release +ϕ” では本作の音響の質感(透明、解体的な質感というべきか)を見事に提示し、作品世界へとリスナーを誘う(エンド・トラック “Release -ϕ” と対になっていることは明白で、アルバム自体が円環を描くように構成されているといえよう)。
 いわばどのトラックも電子音がコナゴナに粉砕され再構成されていくようなディコンストラクト的な音響世界を展開している。まったく方向性は異なるが長谷川白紙の傑作『魔法学校』の横に置いてみてもいいかもしれない。
 なかでも MICHAELBRAILEY を招いた8曲目 “10000 (Papercuts pt. 1) ” に注目してほしい。声と音とノイズとメロディの境界線が曖昧になり、同時にクリアでシャープな音像を実現しているのだ。デジタルの粒子が空間に漂うような未来的ポップ・ソングだ。MICHAELBRAILEY は3曲目 “Syzygy” ではヴォーカルに加えてサウンド・メイクにも関わっており、ズリとの密接な協働関係を窺わせる。また、あのコビー・セイ(!)をヴォーカルに起用した12曲目 “Ast” も印象に残るトラックだ。カラカラと乾いた音でリリカル・ミニマル・メロデイが鳴り、そこにヴォイスが絡みつく。
 ズリ単独の曲 “Trachea” も加工されたヴォイスに、どこか切迫感のあるアンビエントを絡める見事なトラックを展開する。“Fahsil Qusseer” では、ズリの父親の手紙を朗読する。この曲では自身の声とテープ録音された声が融解していく。過去と現在の境界線が曖昧になっていく。
 どの曲もバラバラに解体されたアンビエントのような音でありながら、 MICHAELBRAILEY、コニー・セイや Abdullah Miniawy らのヴォーカル/声が発するポップネスもあり、実験一辺倒ではない聴きやすさもある。
 まさに一筋縄ではいかない仕上がりのアルバムだ。優雅にして不穏、不穏にして美麗、解体的にして再構築的なサウンドスケープなのである。いくつもの相反する要素が交錯・共存しつつ、全体としては美麗な音響空間が生成されているわけだ。

 いわばズリが、自身の人生を振り返るように鳴らす音が、単純な「ひとつの人生」に帰結せずに、ノイズとアンビエンスのはざまから無数の音が生成されるように、複数の人生が立ち上がってくるようなサウンドに思えたのだ。いわば解体と再構築を繰り返し、つねに未知の領域へと進化/深化する「尖端音楽」の現在形。たとえば今年リリースされたベン・フロストの新作と合わせて聴いてもよいアルバムかもしれない。

Karnage - ele-king

 この春自身のレーベル〈Nocturnal Technology〉を始動させたMars89。いまのところ、現行ダブの鍵を握る一組、シーカーズインターナショナルとの共作『Dangerous Combination』と、ファッション・ブランド、ザンダー・ゾウのコレクションのサウンドトラック『A​.​I​.​VOLUTION (Original Soundtrack)』の2作がリリースされているが、第3弾として Karnage のアルバムがアナウンスされている。発売は8月8日、カセットとデジタルの2フォーマット。名古屋拠点のプロデューサーによるインダストリアル・ダブを堪能しよう。

名古屋を拠点に活動するKarnageが、Nocturnal Technologyより、最新アルバム「Dystopian Synthesis」をリリース
未来的かつディストピア的なインダストリアルサウンドを特徴とし、重低音、ダブ、ノイズが交錯する壮大な世界へと聴く者を誘い込む。

Nocturnal Technologyからの3作品目は、デトロイトで活動を開始し、現在は名古屋を拠点に活動している、Karnageによるインダストリアルダブアルバム「Dystopian Synthesis」。

ダブステップでのキャリアに裏付けられた重低音を土台に、ノイズやメタルなどから影響を受けた破壊的なサウンドが、ダブの技術の中で融合している。

フォーマットはデジタルとカセットテープの二種類。物理的に作品を所有する喜びと、未来のための持続可能性を両立させるための方法として、再生プラスチックを使用したカセットテープが採用されている。

artist: Karnage
title: Dystopian Synthesis
label: Nocturnal Technology
release: 8 Aug 2024

tracklist:
1. Netsphere
2. Falsed Frozen ft. Marshall Applewhite
3. A Silent Loner
4. GBE
5. The City
6. Silicon Life ft. Marshall Applewhite
7. Megastructure
8. Stepping Stone
9. Lore

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140