「Low」と一致するもの

KANDYTOWN - ele-king

 勢いが止まらない。メンバー各々が精力的にソロ活動を繰り広げるなか、今度はKANDYTOWN本体が動き出した。去る9月29日、かれらにとって2017年最初のリリースとなる新曲“Few Colors”が配信でリリースされたけれど、この度そのMVが公開された。メンバーたちが一堂に会し、同じブーツを着用している風景はじつに壮観である。今後もかれらの動向から目が離せそうにない。


東京の街を生きる幼馴染たち、総勢16名のヒップホップ・クルー:KANDYTOWN
2017年第1弾リリースとなる新曲“Few Colors”(ティンバーランド 2017年FALL&WINTERタイアップソング)のMUSIC VIDEOを遂に公開!

昨年11月に発売した1stアルバム『KANDYTOWN』がiTunes HIP HOPチャート1位を獲得し、各メンバーのソロ名義でのリリースも活発に行い話題のヒップホップ・クルー:KANDYTOWNが、ティンバーランドの2017年FALL&WINTERタイアップ・ソングとなっていることでも話題の2017年第1弾リリースとなる新曲“Few Colors”のMUSIC VIDEOを公開した!

これまでこの映像は“Few Colors”のiTunes Store限定バンドル特典としてしか見ることができなかったが、新曲“Few Colors”が配信されるや否や、各配信サイトのHIP HOPチャートの上位を賑わせている中での、まさに待望のMUSIC VIDEO公開となった! 今回のMUSIC VIDEOも、KANDYTOWN内のIO、YOUNG JUJUが所属するクリエイティヴ・チーム:TAXi FILMSが手掛けており、映像中では、ティンバーランドのアイコンとも言うべき、シックスインチプレミアムブーツを着用したメンバー全員が出演している。重厚感のある楽曲同様、これまで以上に深く、濃くKANDYTOWNの世界観を味わえる内容となっている。

そんな、KANDYTOWNはティンバーランドとのコラボレーションを記念して、MUSIC VIDEO同様にTAXi FILMSが手掛けたビジュアルを始めとしたスペシャル・コンテンツを擁した特設ウェブサイトもOPENしているので、是非チェックしてみよう!

【“Few Colors”YOUTUBE URL】
https://www.youtube.com/watch?v=pKb2qbY7ccg

【“Few Colors”作品詳細】

配信日:2017年9月29日(金)0:00
タイトル:Few Colors(ティンバーランド 2017 FALL&WINTERタイアップソング)
配信URL: https://lnk.to/KFQE0
備考: iTunes限定で特典にMUSIC VIDEOが付いたバンドル配信も決定。

【KANDYTOWN|Timberland特設ウェブサイト】
https://goo.gl/LFdZSK

【KANDYTOWN オフィシャルHP】
https://kandytownlife.com/

【KANDYTOWN WARNERMUSIC JAPAN HP内ARTIST PAGE】
https://wmg.jp/artist/kandytown/

【KANDYTOWN プロフィール】
東京の街を生きる幼馴染たち、総勢16名のヒップホップ・クルー。
2014年 free mixtape『KOLD TAPE』
2015年 street album『BLAKK MOTEL』『Kruise』
2016年 1st album『KANDYTOWN』
2017年 1st album『KANDYTOWN』(4LP)

ハテナ・フランセ - ele-king

 現在日本では衆院選の真っ最中ですが、フランスでは9月24日に議会上院の選挙が行われたばかり。とはいえ上院は直接的な国民投票ではなく議員による投票なので、国民の関心も薄い。そんなわけで今回は6月の選挙で約2/3が初当選の議員が占めることになったフランスの下院議会、そして個人的に注目している議員フランソワ・リュファンのお話をしたく。
 先の下院選でマクロン大統領率いる新党、「共和国前進」は協力政党の「民主運動」と合わせると国民議会の6割に上る議席を獲得し大勝利を納めた。与党が過半数を占める議会となった選挙ではあったが、議員の顔ぶれは大きく変わった。これまでの2大政党の共和党は113議席、社会党は29議席史上最低の数字を記録。大統領選の最終決戦に残ったマリン・ルペンの率いる国民戦線は、大統領選時のルペンのディベートが振るわなかったせいで勢いを削がれたが、それでも前回の4倍に当たる8議席を獲得。そんな中で大統領選にも出馬したジャン=リュック・メランションの左派新政党、「屈しないフランス」がフランス議会で会派を形成できる15議席をからくも超えた17議席を獲得して健闘した。この党の中でも抜群の好感度を誇るのが先に触れたフランソワ・リュファンだ。

 現在42歳のリュファンは左寄りの季刊新聞Fakirの創刊者でありジャーナリスト。マイケル・ムーアに影響を受けて「メルシー、パトロン!(社長さま、ありがとう)」というドキュメンタリー映画を撮り50万人を動員する大ヒット記録した。ディオールやルイ・ヴィトンなどを傘下に持つLVMHのCEOにして世界で5本の指に入る大富豪、ベルナール・アルノーに、リストラされた工場労働者の老夫婦とともに立ち向かう様をユーモアたっぷりに描いた本作。世界最大とも言われるファッション・グループから送られてくる百戦錬磨な社員たちを相手に、職を失い家も失う危機に瀕した下層労働者階級の老夫婦を、弁護士などの援護なしにアイデアのみで窮地から救っていく様は「スターウォーズ ジェダイの帰還」でイウォークが帝国を工夫と団結力で倒したような爽快感だ。そして全編に散りばめられたベルナール・アルノー=富と冷酷な資本主義の象徴に対する、徹頭徹尾ふざけたおちょくり&反抗精神が、観る者に「何もできないと諦めていたけど、本当は自分でも何かできるかもしれない」という希望と政治参加を喚起した。この映画をきっかけにフランスではNuit Debout(夜、立ち上がれ)というデモ運動が始まり、パリならばレピュブリック広場で夜を徹して資本主義に偏った社会をどうしたら変えられるか討論が行われている。その活動はフランスだけでなくスペイン、ベルギー、ドイツ、イギリス、イタリアなど、ヨーロッパ中に広がってさえいる。その運動の中心となったフランソワ・リュファンが今年6月の下院選で初当選したのは当然の流れと言えるかもしれない。

 当選してからもリュファンの姿勢はジャーナリストそのもので、いわゆる社会の底辺で困難にあえぐ人たちの話を聞きに足を運び、徹底して大企業や政治家の不正や不誠実さを調べ上げ議会で追求する。例えば8月末に政府が発表した労働法改定案は、雇用者が今よりも解雇をしやすくしたり、賃金交渉が労働組合を通さないでも行えるような抜け道を誘導するような法案で、経営者、雇用者側に有利で市場原理主義のマクロンそのものといえるものだ。その法案に反対するべく、リュファンは大手スーパー、オーシャンの例を上げる。「売上を14%伸ばし株の配当も75%伸ばし、経営者のジェラール・ミュリエは260億ユーロの資産を持っているにもかかわらず、870人もが解雇された。この意識の高いみなさんの集まる議会で、我々はどうやって経済的弱者が経済的強者から搾取されることを防げるのか。共和国前進の議員諸君教えてくれ給え!」と、時に笑いを誘いながら正確なリサーチに基づきリュファンはしつこく問いかけ続ける。また最新のエピソードとしては、フランス最大の精肉会社ビガーの社員への不当な扱いを非難し、調査委員会で口座開示を求めた。もちろん企業側はのらりくらりと返答を避け、当然口座開示も拒否。それに対抗して民主運動の議員とともに正式な口座開示要請の手紙を送りつける様をもちろんSNSで公開。ただリュファン始め「屈しないフランス」などの議員たちが提出する修正案や法案などはことごとく「共和国前進」の議員たちの反対にあい、残念ながら通ることはないのだ。少なくとも今のところは。このように現在のフランス議会は既成の政治への否定に始まり、市場原理主義の「共和国前進」に対し彼らの行きすぎた資本主義を大きく引き戻そうと「屈しないフランス」などが抵抗する場になっている。「屈しないフランス」党首のジャン=リュック・メランションは、今後「共和国前進」の議員たちの造反が少しずつでも増えてくることを密かに狙っているようだが、どうなることやら。

 ただ個人的には野心と私利私欲に駆られた誠実さのかけらもない政治家ばかりなのだろうかと絶望しつつある今日この頃、社会の底辺で困窮する人々を救うために何をするべきかという使命感のもとに活動する政治家を目にすると、ちょっと希望を抱かされるし自分なりに社会貢献をしてみたくなったりするのだった。頑張れリュファン!  SNSフォローし続けるからね!

interview with Ryohu - ele-king


Ryohu - Blur
LIQUOR&FOODS I.K / Less+ Project.

Hip Hop

Amazon Tower HMV iTunes

 グループとしても、それぞれのソロとしても、快進撃を続けるKANDYTOWN。その中でも、まだKANDYTOWNがこれほどまで名前をシーンで上げる以前から、ソロでのリリースや、Base Ball BearやSuchmosといったヒップホップ・シーン外のアーティストへの客演でも注目を集めていたラッパー/トラックメイカーのRyohu。それらに加えプロデュース・ワークや、ラッパーとして参加しているバンド Aun beatzでの動きなど、その活動の幅と創作意欲の高さは衆目を集めていたが、ソロでのリリースとしては「Green Room」や「All in One EP」などがあったものの、現場売りや限定リリースなど、そのリリースは大きな形ではなかった。しかし今回リリースとなる「Blur」は、インディ・リリースではあるが初の全国流通盤となり、その存在をより広い形で伝えることになる作品となるだろう。そして、そのアルバムはバンド ampleの河原太朗を共同プロデューサーに迎え、インタビューでも語られる通り、打ち込みによるヒップホップやクラブ・ミュージックならではの構造性と、バンドとしての音楽的なカラーの豊かさを両立させた作品として完成させた。ラップのアプローチとしても、これまでとも繋がるロマンティックで垢抜けたリリシズムに加え、そのイメージをやや変えるような創作性も垣間見え、そのポテンシャルを作品に塗り込める。確実な進歩を感じさせる、理屈を超えた「気持ちよさ」を感じさせる1枚だ。


やっぱりDJプレミアが多かったですね。リアル・タイムのものより、ナズとかジェル・ザ・ダマジャ、ブラック・ムーン、モブ・ディープみたいな、90年代クラシックを死ぬほど、もうぶち狂うぐらい聴いてて。

まずRyohuくんの音楽的な原点から教えてください。

Ryohu:子どもの頃からバスケやってて、試合で遠征する時はチーム・メイトの家族の車に分乗して会場まで行くんですけど、その中にロック好きなお父さんがいて、その車ではいつもボン・ジョヴィの“It's My Life”がかかってたんですよね。その曲が聴きたいがために、その車に乗ってたのを覚えてます(笑)。ラップはKICK THE CAN CREWとかRIP SLYMEみたいな、当時のポップ・チャートに登場してた人も聴いてたんだけど、最初に衝撃を受けたのはキングギドラの『最終兵器』でしたね。それが小5~6だったと思う。ギドラを聴いて、こういうラップ、ヒップホップがあるんだ、格好いいなってしっかり聴き始めて。世代的にも『空からの力』は後追いですね。

ハードコア・ヒップホップの方がピンときたと。

Ryohu:そうっすね。中学の時には妄走族のライヴも行ってたし。

それは意外!

Ryohu:妄走族はかなり聴いてましたね。雷家族も超好きだったし、練マザファッカーがテレビに出る前からD.Oさんの音源も聴いてて。

ある意味で、KANDYTOWNは世間的にはクールでお洒落な感じで受け取られている部分もあるし、実際にそういう部分もあるんだけど、IOくんは「BOOT STREET」で働いてたり、いわゆる渋谷宇田川カルチャーとも繋がりがあるんですよね。

Ryohu:やっぱり好きなものと、自分がアーティストとして提示したい自分らしいものって違うじゃないですか。だから、その意味でも最終的にハードコアな方向には行かなかったけど、やっぱりリスナーとしては影響を受けてましたね、特に当時は。そういうライヴって、やっぱり中学生なんてほぼいないんだけど、その中に同世代で来てたのがYUSHIで、そこで知り合ったんですよね。

学校の繋がりではないんですね。

Ryohu:俺やB.S.Cは普通の公立校で、YUSHIは和光中学に通ってて。

いわばストリートで出会ったと。

Ryohu:格好良く言えば(笑)。それでYUSHIやIO、KIKUMARUとか和光の人間とも遊ぶようになって。俺は駒場高校に進んで超真剣に部活でバスケやってたんだけど、遊ぶのは後にBANKROLLになる連中ばっかりでしたね。自分の高校の人間とはあんまり遊ばなかったし、行事も参加しないで、部活が終わったらBANKROLLの連中と遊ぶっていう。だから、学校では謎キャラだったと思います(笑)。

自分の高校にはラップを聴いてる人はいなかった?

Ryohu:いたと思うけど、BANKROLLのメンバーぐらい詳しかったり、感覚の合う人間はいなくて。

ではラップを始めたキッカケは?

Ryohu:せざるをえなくなったんですよね。

それはどういうこと?

Ryohu:YUSHIは中学からラップやってたし、一緒に遊んでる人間も高校に入るとみんなラップ始めて、遊ぶ時はみんなフリースタイルしてるんですよ。最初は「俺はいいわ」とか言ってたんですけど、結局みんなそうやって遊んでるから、つまんなくなるじゃないですか。それで「俺もラップするしかねえか」みたいな(笑)。本当はやりたいんだけど、恥ずかしいっていう気持ちが勝ってて踏み出せなかった部分もあって。それで一回やってみたら、あとはもう楽しくなっちゃって、インスト聴いたら曲書こうって感じだったし、MTRでひたすら録ってましたね。それは俺もそうだし、KANDYのメンツはみんな。だから世に出てない曲は山ほどありますよ。

当時、ラップを載っけてたビートは?

Ryohu:やっぱりDJプレミアが多かったですね。リアル・タイムのものより、ナズとかジェル・ザ・ダマジャ、ブラック・ムーン、モブ・ディープみたいな、90年代クラシックを死ぬほど、もうぶち狂うぐらい聴いてて。当時、俺らが格好いいと思ってたライフ・スタイルに、90sのNYヒップホップが近い部分があったと思うんですよね。夜、集団でオーバー・サイズ着て、歩いてたり溜まってるみたいな感じがかっけえっていう。俺らの遊ぶ時もそういう感じでしたね。

高校卒業ぐらいのタイミングで、ズットズレテルズにも参加しますね。後にOKAMOTO'Sに繋がるグループですが、Ryohuくんはどういう経緯で入ったの?

Ryohu:なんなんすかね?

それを聞いてるんだけどさ(笑)。

Ryohu:いや、なんかやろう、ぐらいだったと思いますね。あんまり深い意味はなかったと思います。

話によると、和光の卒業イベントのために結成したんだけど、賞金が欲しくて「閃光ライオット」にもチャレンジしたということですが。

Ryohu:そんな感じだったかもしれない(笑)。でもとにかく一緒にいて、バンドのジャム・セッションに合わせて、YUSHIと俺がフリースタイルするって感じで、とにかく一緒に音楽をやってましたね。実際には半年ぐらいしか活動してないけど、その間ズレテルズのメンバーととにかく一緒に音楽を作ってましたね。それでハマ(オカモト)くんが当時、ズレテルズとは別にEdBUSっていうバンドのサポートやってて、その流れで下北沢GARAGEに出入りしてたんですよね。それで、その年の「閃光ライオット」に出た挫・人間とか関取花ちゃん、ブライアン新世界たちと一緒に、ズレテルズ主催でGARAGEでイヴェントをやったんですよ。そこで当時店長だった出口(和宏)さんが俺のことを気に入ってくれて、それからGARAGEに出入りするようになって。それで当時MPC1000を買って――確か楽器屋に取りに行くのに、IOの車で送ってもらった記憶があります――トラックメイクも始めたんですよね。MPC1000は持ち運びができたんで、夜な夜なGARAGEに機材を持ってって、楽屋兼事務所に溜まってるみんなと、朝まで一緒に曲作ったり。そこでコイちゃん(小出祐介、Base Ball Bear)に出会ったんですよね。

ベボベの“クチビル・ディテクティヴ”に参加したのも、GARAGEの流れだったんですね。

Ryohu:そうですね。あと、閃光ライオットでコイちゃんが審査員だったっていうのもあって。ただ俺はバンドを全然聴いてなかったんで、出会った時にベボベのことも、コイちゃんのことも知らなかったんですよ。それよりも、やたらラップの上手い人って印象でしたね。それで事務所で一緒に遊び終わった後に、そのまま飯食いに行ったんですよね。それで下北の駅前を通ったら「ベボベ武道館」っていうポスターが貼ってあって、一緒にいた人に「これ、コイちゃんのバンド」って言われて、「え、スゴいことですよね、武道館ワンマンて」って(笑)。同じようにGARAGEで出会った(ペトロールズの長岡)亮介さんも知らなかったんで、ライヴを見て「めっちゃギター黒いっすね」とか軽く言ったりして。亮介さんには「マジあの時はすみませんでした」って今も謝ってるんですけど(笑)、単純に生意気な奴って感じだったと思いますね。

同時期には元SIMI LABのQNの別名義、EARTH NO MADの「MUD DAY」にも参加しますね。

Ryohu:BANKROLLは町田のFLAVAとかでライヴをやってたんで、同じようにFLAVAに出てたSIMI LABとも繋がってたんですよね。そこでQNから、「別名義でリリースするからRyohuも入ってくれない?」ってオファーをもらって。で、歌詞書かないでいって、フリースタイルで録って、その時間をタイトルにするっていう(笑)。

いい加減だな~。

Ryohu:もうしっかりしなさいよ、って感じですよ、いまから振り返ると(笑)。

ふと「考えるの止めよう、山に登ろう」と思って、ひとりで山に登ったんですよね。

そうやっていろんなオファーがあったけど、ソロ作にはたどり着いていませんね。

Ryohu:リリースの勧めもあったんですけど、そういうモードじゃなかったというか、俺自身、実際に何をしたいのかが、自分でわかってなくて。だからリリースとかよりも、遊んでたかったっぽいですね。勿論、そこには音楽が付随してて、いろんな出会いだったりがあって、そこで新しい音楽の遊び方を覚えたりはしてるんだけど、「リリース」とか「制作」には自分から向かわなかった。

それはBANKROLLやKANDYTOWNとして動きたかったという部分もある?

Ryohu:正直、それはハナからなかったですね(笑)。なんならIOと超しょうもないこと――かつ完全に俺が悪い内容で――喧嘩してて、1年ぐらい口きいてなかったんじゃないかな、KANDYの仲間と一緒にいたりするのに(笑)。かつ、GARAGEに出入りするようになってたんで、KANDYよりも、そっちが遊ぶ中心になってて。ライヴもやってたけど、人に求められるからやるっていうか。自分からっていう感じでは正直なかったかもしれないですね。

その意味では、アーティストとしてやってこうと思ったタイミングは?

Ryohu:それこそベボベの作品に何作か参加させてもらって、普通に音楽でお金もらってるんだなとは感じてたけど、その時はこれを仕事にしようとは思ってなかったんですね。でも、22~3ぐらいのタイミングで、ふと、ちゃんとしなきゃな、音楽をちゃんとやってみようかな、と思ったんですけど、でもやり方がわかんねえ、みたいな、ただただ時間だけが過ぎてくみたいな期間があって。その中で音楽と向き合うために、11年に「Green Room」を作ったんですけど(リリースは13年)、とにかく暗くなっちゃって。それでふと「考えるの止めよう、山に登ろう」と思って、ひとりで山に登ったんですよね。

また急激な展開(笑)。

Ryohu:体動かしたほうがいいかなって(笑)。その帰りに、KANDYのメンバーではないんだけど、その周りにいる仲間に出会って、「これはもうこの環の中からは逃れられないってことだし、それでいいんだな」って。そこで、スゴくいろんなことに関して軽く考えられるようになったんですよね。

「Blur」に収録される“The More, The Better”には、山の話が出てきますが。

Ryohu:その時に書いたリリックなんですよ。自分の中でのもがきとか、悩みの霧が晴れて、もっと簡単に考えていいんだ、って思った時の曲で。tengal6を手がけたのもその時期じゃなかったかな。

ラップ・アイドル lyrical schoolの前身である、tengal6の「まちがう」に収録された“ルービックキューブ”などを手がけられましたね。アイドルの制作に参加したキッカケは?

Ryohu:ミュージシャンのリキヒダカともGARAGEで繋がったんですけど、彼の繋がりでtengal6のプロデューサーのキム・ヤスヒロくんから連絡をもらって「ラップの指導をやってくんない?」って。それでオーディションぐらいから関わらせてもらったんですよね。

そして、KANDYTOWNが14年に初のミックス「KOLD TAPE」をWEBにアップして、その1年後には「BLAKK MOTEL」「Kruise'」をリリースして、いよいよ本格的に動き始めることになりますね。Ryohuくんはそれと並行して、Suchmos「THE BAY」に収録された“GIRL (feat. Ryohu)”にも参加と。

Ryohu:やっぱりKANDYが注目され始めたのは個人的に嬉しかったですよ。それまでほとんど俺しか表に出てなかったんで、リリースはこれから動こうぜっていうキッカケにもなって。去年フル・アルバム『KANDYTOWN』まで上手いこと進めたし、その流れに沿ってそれぞれのソロもリリースされて、普通に嬉しいみたいな。雑誌の表紙も何人もやってるし、「みんなで、有名になるの良くねえ?」って感じでもあるし、一方で勝ち負けじゃないけど、みんな頑張ってるから俺も負けられねえ、っていう気持ちにもさせられて。

IOくんやYOUNG JUJUくんたちは全国流通作をリリースしていますが、Ryohuくんは現場売りが中心でしたね。昨年リリースの「All in One EP」も流通としてはライヴ会場やタワーレコード限定のリリースでした。

Ryohu:結局、関わる人間が増えれば増えるほど、いろんなことがあるし、ものづくりをする上で、あまり人に関わらせたくなかったというか、アーティストが一番でありたかったんですよね。俺が作った俺の音楽なんだから、って。「Green Room」の頃までは、まだとんがってたと思いますね。「All in One EP」はそれが晴れて、自分からいろんな人に働きかけたら、みんな快く引き受けてくれて。そこで「頼んでもいいんだ、手伝ってくれるんだ」って発見もあったんですよね。それで「Blur」は全国流通で展開しようって。

バンドだとありえない音楽構造で作曲するのは、ヒップホップのトラックメイカーができることだけど、バンドとしての素晴らしさは、やっぱりバンドにしか出せないですよね。そのふたつを組み合わせたくて。

その「Blur」ですが、バンド ampelの河原太朗さんを共同プロデューサーに起用した、バンド・サウンドが基調になった作品ですね。

Ryohu:生音を使ったらどうなるんだろうっていうのは興味あったんですよね。それがキッカケで、太朗ちゃんに声をかけて。

作り方としてはどのように?

Ryohu:俺は楽器ができないんで「こういう感じの曲を作りたい」「こういう曲にしたい」っていうザックリしたイメージを太朗ちゃんに伝えて、それを「こういう感じ?」って組み立ててもらうんですよね。それで「それがいい」「コード感はもう少し明るめ」「これに合うのはこういうドラムだね」とか、ディスカッションで進めていった感じですね。だから、土台を作る時はふたりで部屋にずっとこもってましたね、2日間(笑)。ただ、ドラムは打ち込みにしたかったんですよ。

それはなぜ?

Ryohu:バンドで制作したのは、あまりヒップホップ・サウンドにしすぎないようにっていうイメージだったんですが、でも一方でクラブ対応にはしたくて。

音圧や低音部の響きは、やはり打ち込みならではの強さがありますね。

Ryohu:ジョーイ・バッドアスとかケンドリック・ラマーが提示するような、それぐらいのベースじゃないと物足りないと思ったんですよね。

個人的にはチャンス・ザ・ラッパーのアプローチにも近いモノを感じました。

Ryohu:バンドだとありえない音楽構造で作曲するのは、ヒップホップのトラックメイカーができることだけど、バンドとしての素晴らしさは、やっぱりバンドにしか出せないですよね。そのふたつを組み合わせたくて。

その意味でもKANDYで求められてるものと、Aun beatzやRyohuくんのソロで求められてるものの、両方を納得させられる作品になっていると感じました。また「Blur」というタイトルだけど、リリックは情景がしっかり見えるような構成になっているのと同時に、「君」や「あなた」という二人称が多くて、それは「聴いてるあなた」といったような、具体的な相手が想定されてるのかなとも思えて。

Ryohu:自分の中で見えてる景色があって、その中に登場してる人に向けてる感じですね。「Blur」は単にぼんやりっていう意味じゃなくて、そうなるには何色かが足されて「Blur」になると思うんですよ。例えば、夜と朝、昼と夜が混じり合う微妙な時間とか。その感じが自分にとって「Blur」。だから、それぞれの楽曲にはカラーがあるけど、それが混ざり合ってこの作品ができているので、タイトルを「Blur」にしたんですよね。

今までの作品もそうですが、全体的にロマンティックだし、Ryohuくんはロマンチストだなと。

Ryohu:ロマンティックあふれ出てますか、今回も(笑)。

言わなきゃ良かった(笑)。

Ryohu:俺も含め、KANDYはジェントルマンですから。女の人に優しいのは大事じゃん、っていう。確かに、普通に考えたらクソ恥ずかしいことを書いてるとは思うんですよ。特に“All in One”とか。でも恥ずかしいけど、それを超えて格好いいことを書いてるから、言えちゃうんですよね。“Say My Name”とかも照れるようなリリックではあるけど、格好いいから言えちゃうと思うし、格好いいものを作れば、それは肯定されると思うんですよね。

ただ“Desserts”では、ややサイコパスとも言える男も形にしていて。しかもビートが変わるタイミングで、どんどん狂気じみていくのも面白い。

Ryohu:ストリーテリングとして、愛の表現をもっと狂気じみた感じにしてみたんですよね。だから俺の愛し方ではないんで、勘違いされたらやだなーとか思いながら書きました(笑)。

Ryohuくんのプロジェクトとしては、外部仕事も含めたソロ、Aun beatz、KANDYTOWN、トラックメイクが挙げられると思いますが、その違いは?

Ryohu:KANDYはいまだにみんなで集まって遊びの延長で作るって感じだし、BANKROLLの頃と変わらないですね、俺自身は。トラック提供は基本的にKANDYのメンバーに向けてなんですが、「こういうのがあってもいいんじゃない」みたいな、提供するメンバーが今まで選んできたものとはちょっと違ったり、ギリギリのラインを攻める感じですね。Aunはバンドが作ってきたサウンドに対して、どう返すかっていうチャレンジ。ソロは完全に自分に没入したオタクって感じですね。だから自分の作品が一番難しいですね。誰かと作る作品は、こうした方が面白いかもとか、こういうのが欲しいとかが浮かぶけど、自分のこととなると、どうしたらいいのかなって悩みますね。だから、いろんな動きがそれぞれ良い息抜きになってるんですよ。

外仕事だとエゴを通せない部分もあるし、ソロだけだと煮詰まるし……。

Ryohu:ソロだけだったらリリースしないかもしれないですね。ずっと自分の中で作ってて、それに飽きたらリリースしないで捨てちゃうかもしれない(笑)。だからいろ0んなアプローチがあることで、一生音楽を作り続けられると思うし、関わってくれる皆さんありがとうございますって感じですね。

[10/17追記]

ラッパー/DJでありながら、KANDYTOWNのメンバーであり、Suchmosやペトロールズへの客演参加を行い、ヒップホップとロックをクロスオーバーして活動の幅を広げているアーティスト、Ryohu(呂布)。待望の初全国流通盤EP『Blur』がリリースを迎えたばかりだが、Ryohuと親交深いアーティストの皆さんよりコメント・メッセージが到着!

HIP HOPとMUSIC、
LIFEとSTYLE、
SETAGAYAとSEKAI、
Ryohuは『接着剤』なんだよね。
軽やかさ、柔軟さが、唯一無二。
もんのすんごく、
期待しています!!!!!
――Mummy-D (Rhymester)

〈完璧じゃならない絵に〉(“Say My Name”)というフレーズがたまらなく好きだ。
言い切っているようで、言っていない部分がすごく多い。
だからこそ、漠然とした大事なことが漠然としたまま迫ってくる。
この手渡し方に、Ryohuの感性や在り方が詰まっていると思う。
そして、作品の額縁には「Blur」つまり『曖昧』という題が。
少なくとも完璧にRyohuだよ。
――小出祐介(Base Ball Bear)

気取ってなくて素直、芯があって少し無骨、世代差を感じない人懐こさ、結果としてすごく虫が好く。
出会った時から変わらないRyohuの印象そのままの音楽だね。リリースおめでとう!
雰囲気が好きなアルバム、“って事だけは確か”。
――三浦淳悟(ペトロールズ)

いつも1番暖かくて1番クール。それで、今1番カッコいい。
――オカモトショウ(OKAMOTO'S)

呂布くんの声は軽やかさと切なさと、すこしファニーさ、グッとくるものが全部入っているのだ。
なんでそんなセクシーなのさ?
――オカモトコウキ(OKAMOTO'S)

気持ちよかった、ありがとう。
――ハマ・オカモト(OKAMOTO'S)

タイトなラップでキメるB-boyは無条件でカッコ良いということを再確認させられました。
――オカモトレイジ(OKAMOTO'S)

また、『Blur』の発売を記念して開催される、12/8(金)の渋谷WWWにてRyohu “Blur” Release Partyのチケット一般販売もスタート。
ゲスト・アーティストはSIMI LABに決定!
前売購入者には特典として、Ryohuによる選曲音源を収録したExclusive Cassette Tape「No Pay No Play」をプレゼントとなるので、是非お買い逃しないように。

【イベント情報】

Ryohu “Blur” Release Party

12/8 (Fri) @ Shibuya WWW
OPEN 18:30 / START 19:30
ADV ¥3,000(+1D) / DOOR ¥3,600(+1D)
※前売購入者特典として、Ryohuによる選曲音源を収録したExclusive Cassette Tape「No Pay No Play」をプレゼント

出演者:
Ryohu (Band Set)
SIMI LAB [10/17追記]

10/5(木)~ e+にて先行販売開始
https://eplus.jp/sys/T1U14P0010163P0108P002240412P0050001P006001P0030001

10/14(土)〜 プレイガイド一般発売
▼チケットぴあ 【Pコード:347-789】
https://t.pia.jp/
※電話予約あり:0570-02-9999

▼ローソンチケット 【Lコード:76979】
https://l-tike.com/order/?gLcode=76979
※電話予約なし

▼WWW店頭
03-5458-7685

Shigeto - ele-king

 月曜日は憂鬱である。あっという間に過ぎ去ってしまった貴重な休日に対する惜別の念を抱きながら、そしてこれから訪れるであろう一週間の悪夢を想像しながら、ぎゅうぎゅう詰めの電車に乗り込み、急ぎ足で舗道を歩み抜ける。もちろん人によって置かれている状況は異なるだろう。職場の環境があまりにも劣悪なケース。上司や同僚が人権侵害やハラスメントの常習犯であるケース。作業の量が膨大だったりそもそも内容自体が無理ゲーだったりするケース。薄給に長時間の拘束――なんにせよ、賃労働というものはつねに理不尽であり、人の心をブルーにさせる。月曜日は憂鬱である。
 そんな月曜日を迎えてしまった人びとのために、デトロイトのモーター・シティ・ワインというバーでは、毎週月曜日にイベントが開催されている。月曜だからこそ酒を飲み、音楽を聴いて身体を揺らす。かれらは「新しい月曜日」のあり方を提案する。その名も「Monday Is The New Monday」。なんとも素敵なコンセプトではないか。そのイベントを動かしているのが、デトロイトを拠点に活動しているトラックメイカー兼ドラマーのシゲトである。彼の4年ぶりとなる新作のタイトル『The New Monday』も、そのイベントから採られている。
 もちろん、一口にブルーといっても、そのあり方は人びとの数だけ存在している。その多様さを表しているのだろうか、パーカッションにローズにサックスにと、1曲め“Detroit Part II”からもうさまざまな音が入り乱れている。ある時期のサンジェルマンを想起させるハウスのビートを軸にしながら、短い間隔で色とりどりのサウンドが入れ替わっていくその様は、聴く者の心にぽつぽつと小さな明かりを燈していく。たしかに月曜日は憂鬱だけれども、この曲を聴いていると少しくらいは良いことだってあるんじゃないかと、そんな気がしてくる。

 リード・トラックとなるこの曲に代表されているように、この『The New Monday』はどの曲もじつにさまざまな種類の音を呼び込んでいて、まったく聴き手を飽きさせない。ハットとキックの絡み合いが最高に心地良い5曲め“There's A Vibe Tonight”、ヒップホップに寄ってがらりとアルバムの雰囲気を変更する6曲め“A2D”、何かに急き立てられているかのような疾走感が印象的な7曲目“Wit Da Cup”など、どのトラックもこれでもかというくらい徹底的に作り込まれており、ひとつひとつの音が差し込まれる箇所も入念に練られている。とりわけドラムやパーカッションの多彩さには目を見張る。
 とくに素晴らしいのは2曲め“Barry White”で、すぐさま入り込んでくる抜けの良いパーカッションと ZelooperZ によるラップがリスナーを不思議な音響世界へと導いていく。客演している ZelooperZ はデトロイトのラッパーで、ダニー・ブラウンの属するクルー、ブルーザー・ブリゲイドのメンバーでもあり(ダニー・ブラウンの2013年作『Old』にも参加)、シゲトとはZGTOというサイド・プロジェクトを組む仲間でもあるが、気がつくとそのラップはいつの間にか歌へと変容しており、アシッドがぶりぶりと唸り始める頃には曲の雰囲気は一変している。この奇妙なハイブリディティは、いわゆる「デトロイト・サウンド」のイメージを超越・解体していると言っていいだろう。

 18~19世紀のパリでは、日曜日のリズムを翌日まで持ち越して、仕事なんか休んで飲んだくれている労働者たちがそれなりに多くいたのだそうだ。せっかく昨日まで自分のリズムで動いていたのだから、労働なんか放棄して、酒をかっくらって、今日という日を聖なるものにしてしまおう――シゲトのこのアルバムを聴いていると、かつて「聖月曜日」と呼ばれたその素敵な習慣のことを思い出さずにはいられない。きっとこの『The New Monday』は僕たちにストライキを勧めているんだと思う。憂鬱な月曜日を、吹き飛ばすために。

Good Time - ele-king

 これ、なかなかおもしろい映画ですよ。前作『神様なんかくそくらえ』で東京国際映画祭グランプリと最優秀監督賞を受賞したジョシュ&ベニー・サフディ監督による新作、『グッド・タイム』。下層に生きる人間の生を独特の角度から捉えつつ、ハラハラドキドキも忘れない、素敵な映画に仕上がっております。OPNによる音楽も刺戟的で、挿入箇所がこれまたなんとも絶妙なのです。そんな『グッド・タイム』、日本での公開は11月3日ですが、それに先駆け、10月24日に渋谷ユーロライブにて先行試写会が催されます。本編上映後には、映画・音楽ジャーナリストの宇野維正氏をお迎えしたトーク・イベントも開催される予定です。
 その『グッド・タイム』試写会に、10名様をご招待いたします。件名に「グッド・タイム試写応募」と入れ、本文にお名前とメール・アドレスをご記入の上、下記までメールをお送りください。当選された方にのみ、編集部よりご案内を差し上げます。

応募先:info@ele-king.net
応募〆切:10月15日(日)23:59

『トワイライト』『ディーン 君がいた瞬間(とき)』
ロバート・パティンソンの神演技を世界が絶賛!
第70回カンヌ国際映画祭 コンペティション部門選出作品
『グッド・タイム』
試写会プレゼントのご案内

【日程】 10月24日(火) 
18:30開場 19:00スタート予定 (上映時100分)

【場所】 ユーロライブ

住所:渋谷区円山町1-5 KINOHAUS 2F ユーロスペース内
JR・地下鉄 渋谷駅から徒歩10分。駅よりかなり遠いため、余裕を持ってお越しください。
ご招待数:10名様 (提供:ファインフィルムズ)

●応募先・当せん案内:ele-king編集部(info@ele-king.net)
●当日は受付で、当せん案内メールもしくは、当せん案内メールをプリントアウトしたものを確認させて頂きます。
満席の際、及び開映後のご入場はいかなる理由でも、一切お断りいたします。予めご了承ください。
●本試写会はSNSアカウントをお持ちで、SNSからの感想、口コミ拡散をご協力頂ける方のみご応募下さい。
●当日は上映後にトークイベントがございます。
本作はR15+の作品の為、15歳未満の方の応募はご遠慮ください。

●主演は『トワイライト』シリーズで一躍世界的に有名になり、『ディーン 君がいた瞬間(とき)』(アントン・コービン監督)、『コズモポリス』(デヴィッド・クローネンバーグ監督)など、著名監督の作品にも次々出演してきた人気俳優ロバート・パティンソン。本作ではニューヨークの最下層で生き、投獄された弟を助けようともがく孤独な男コニーを演じ、カンヌ映画祭で“パティンソンのキャリア史上最高の演技”と称賛された。監督は、『神様なんかくそくらえ』で2014年・第27回東京国際映画祭グランプリと最優秀監督賞をW受賞した兄弟監督ジョシュ&ベニー・サフディ。コニーの弟ニック役にはベニー・サフディが監督と兼任し、他『ヘイトフル・エイト』のジェニファー・ジェイソン・リーらが出演。音楽にも監督自ら力を注ぎ、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー(OPN)に音楽制作をオファー。伝説のロックスター、イギー・ポップも参加したサントラで「カンヌ・サウンドトラック賞」を見事受賞している。本作は11月3日(祝・金)よりシネマート新宿、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開。

【ストーリー】 ニューヨークの最下層で生きるコニーと弟ニック。2人は銀行強盗を行うが、弟だけ捕まり投獄されてしまう。コニーは言葉巧みに周りを巻き込み、夜のうちに金を払って弟を保釈できるよう奔走する。しかしニックは獄中で暴れ病院送りになっていた。それを聞いたコニーは、病院へ忍び込み警察が監視するなか弟を取り返そうとするが……。

出演:ロバート・パティンソン(『トワイライト』)、ベニー・サフディ(監督兼任)、ジェニファー・ジェイソン・リー(『ヘイトフル・エイト』)、バーカッド・アブディ(『キャプテン・フィリップス』)
監督:ジョシュ&ベニー・サフディ(『神様なんかくそくらえ』)
2017/アメリカ/カラー/英語/100分
原題:GOOD TIME
配給:ファインフィルムズ
© 2017 Hercules Film Investments, SARL
公式HP:www.finefilms.co.jp/goodtime

Loyle Carner - ele-king

 イギリス・サウスロンドン出身のラッパー、ロイル・カーナーは10歳の頃からラップをしていたという。エイミー・ワインハウスやアデルなどを輩出したブリット・スクールの出身で、しかもそこではキング・クルールと同級生になるが、専攻していたのはなんと演劇。本格的に音楽一本でやりはじめたのは2014年頃だそうだ。そこからあっという間に、期待の新人をピックアップしたBBCのサウンド・オブ・2016に選ばれるのだから、驚嘆するしかない。
 また、カーナーはADHD(注意欠陥・多動性障害)とディスレクシア(難読症)であることを公言している。そうした境遇の難しさや世間の無理解を知るカーナーは、ADHDの子どもを対象にした料理教室も主催するなど、堅実な草の根活動をおこなっている。ちなみに料理の腕前は“Florence”のMVで見られるが、テキパキと作業する姿はかなり手慣れたものだ。

 そんなカーナーを知るキッカケは、ケイト・テンペストとコラボレーションした“Guts”だった。2014年に発表されたこの曲でカーナーは、ひとつひとつの言葉を丁寧かつ鋭く紡いでいた。ケイト・テンペストを追いかけるために聴いたのだが、これは嬉しい発見だ! と心が躍ったのをいまでも鮮明に覚えている。それ以降の筆者はカーナーを熱心に追いかけるようになり、シングル「Tierney Terrace」やEP「A Little Late」など、カーナーの作品が出れば必ず手に入れた。
 もちろん、2017年度のマーキュリー・プライズにノミネートされたファースト・アルバム、『Yesterday's Gone』も手元に置いている。インタヴューでスケプタルーツ・マヌーヴァをお気に入りに挙げるなど、ヒップホップやグライムからの影響を隠さないカーナーだが、本作でもこのふたつの要素は見られる。とはいえ、オープニングの“The Isle Of Arran”では、S.C.I. ユース・クワイアの“The Lord Will Make A Way”というゴスペル・ソングをサンプリングし、作品全体としてもファンク、ソウル、ジャズの要素が色濃く表れている。ベースがリズミカルなのも特徴で、横ノリのグルーヴに合わせて踊れる曲が多い。カーナーの両親はソウル、ジャズ、ファンクを愛聴していたそうだが、その両親の嗜好を受け継いだ多彩な音楽性が本作の特徴だ。ザ・ピューリストやクウェズなど多くのプロデューサーを迎えたことも、多彩な音楽性を生みだす一助になっている。

 歌詞は、本作以前と同様に身近な題材が多い。なかでも頻繁に登場するのは母親だ。“Sun Of Jean”では母親の語りがフィーチャーされ、30秒弱の小品“Swear”はカーナーと母親の会話をそのまま収録したものだ。一方で、“Florence”では架空の妹についてラップしたりと、遊び心も見られる。しかしとりわけ目を引くのは、成熟したカーナーの姿だ。「A Little Late」に収められた“The Money”で文字通りお金を稼がなきゃとラップし、どこか焦燥を滲ませていた姿がそこにはない。日常の風景を的確にとらえる鋭い観察眼と落ち着きが際立っている。ひとつひとつの言葉は風格を漂わせ、今年で22歳になる若者だと知らなければ、ベテラン・ラッパーの新作と言われてもなにひとつ疑わないはずだ。こうした成長は、自身の信仰心に言及した“The Isle Of Arran”という名曲の誕生にもつながっている。深く内省したこの曲には、本作以前のカーナーでは込めることが難しかったであろう説得力がある。

 本作においてカーナーは、家族への愛情をこれでもかと示している。本作でも頻繁に登場することからもわかるように、母親に対しては特に熱烈だ。このような姿は、親元から離れ自立するのが“男”の理想像だと考える者にとって、珍しいものに映るかもしれない。たとえば、社会学者の平山亮による『介護する息子たち』は、庇護される立場である男性性(息子性)の姿を鮮明に描くことで、“男”の自立性は周囲のお膳立てによってもたられるものであり、自立を良しとする“男”の理想像は幻想に過ぎないと喝破した。このように旧態依然とした価値観を解きほぐす視点が、本作にもある。“男は仕事、女は家庭”という性役割に基づく家族モデルがいまだ根強い現在において、カーナーが本作で示す視点はオルタナティヴになりえるのではないか。そういった意味で本作は、現代的な問題を孕んでいる。

近藤真弥

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 UKのラップ・ミュージック、と聞いて多くの人が真っ先に思い浮かべるのはグライムだろう。2000年代前半にストリートから生まれたその音楽は、紆余曲折を経て現在、UKポピュラー・ミュージックの大きな一角を占めている。昨年スケプタがマーキュリー・プライズを受賞したのは象徴的な出来事だったし、今年リリースされたストームジーのファースト・アルバムが全英チャートで1位を獲得したことは、昨今のグライムの怒濤のような勢いを物語っている。
 サウス・ロンドンに生まれ、クロイドン南部で育ったUKのラッパー、ロイル・カーナー。彼が小学生の頃に子どもたちのあいだで人気だったのは、まさにそのグライムだったそうだ。イースト・ロンドンで生まれたその音楽は、カーナーらキッズたちにとってアクセスしやすいものだったようで、彼は幼い頃からグライムに触れて育ち、それによって人生を変えられたとまで言っている。だが急いで付け加えておかねばならないのは、カーナーのこのファースト・アルバムはいわゆるグライムではまったくないということだ。
 カーナーはグライムとともに90年代~00年代初頭の音楽もよく聴いて育ったのだという。なかでもコモンやモス・デフがお気に入りだったそうで、本作に直接的な影響を与えているのはそういったかつてのUSヒップホップである。じっさい、ギターのリフが耳に残る12曲め“No CD”では、ジェイ・Zやオール・ダーティ・バスタードといったレジェンドの名が巧みに韻を踏まれながら登場している。
 要するに、グライムを同時代的に受容して育った若者が、そのスタイルを直接取り入れるのではなく、自分よりも上の世代の音楽である90年代USヒップホップからの影響を独自に昇華することで作り上げたアルバムが、この『Yesterday's Gone』なのである、とひとまずは言うことができるだろう。

 カーナーはエイミー・ワインハウスやアデルを輩出したことで知られるブリット・スクールの出身で、当時キング・クルールとは同級生だったそうだけれど、在学中は音楽ではなく演劇を学んでいたという。その頃の彼にとってヒップホップはまだ余興のようなものだった。しかし彼は在学中の2012年に、ダブリンでおこなわれたMFドゥームのギグでサポートを務める機会に恵まれる。その体験が彼にとって大きな転機となったようで、カーナーはブリット・スクール卒業後、演劇の学校であるドラマ・センター・ロンドンに入学するものの、2014年に継父が亡くなったのを契機にドロップアウトし、音楽に専念することを決める。
 そうしてカーナーは2014年の9月にEP「A Little Late」を自主リリース。そこに収められた“Cantona”は、亡くなった継父に敬意を表した曲で、タイトルはその継父が好きだったというフットボーラー、エリック・カントナの名から採られている。この曲はMVも制作され、その後もたびたびBBCで取り上げられるなど、カーナー初期の代表曲と呼んでいいだろう。続いて彼は12月に、自身がリリックを書く上で大きな影響を受けたというスポークン・ワード・アーティスト、ケイト・テンペストとの共同名義で7インチ「Guts」を発表。翌2015年にはジョーイ・バッドアスのUKツアーでサポートを務め、グラストンベリーにも出演。同年8月にはアフリカ・エクスプレスの作品も出している〈Transgressive〉から7インチ「Tierney Terrace」をリリースしている。
 2016年には同じくサウス・ロンドン出身のトラックメイカー、トム・ミシュのLPや10インチに客演し、穏やかながらも芯のあるラップを披露しているが、とくに「Reverie」に収録された“Crazy Dream”は、そのジャジーな心地良さもあってか多くのリスナーから好評をもって迎えられたようで、カーナーの名もより多くの層へと広まり、同年10月にはナズのロンドン公演でサポートを務めるまでに至っている。

 このように順調にステップアップを重ねてきたカーナーが満を持してリリースしたファースト・アルバムが、本作『Yesterday's Gone』である。ゴスペル・クラシックのサンプリングで幕を開ける1曲め“The Isle Of Arran”や、前述のトム・ミシュをフィーチャーした4曲め“Damselfly”を筆頭に、本作には90年代を想起させるジャジーでレイドバックしたトラックが並んでいる。ここにあるのはハードでサグなヒップホップとはまたべつの、メロウでぬくもりに溢れたヒップホップだ。本作にはカーナー自身が制作したトラックも多く含まれており、彼がMCとしてだけではなくトラックメイカーとしての才能も併せ持っていることがうかがえるが、ここで触れないわけにはいかないのがクウェズの存在だろう。
 このアルバムでクウェズは、ソング・ライターおよびプロデューサーとして“Florence”、“Mrs C”、“Sun Of Jean”の3曲に関与している。これらはいずれも叙情的かつ哀愁漂う鍵盤が耳に残るトラックで、他の曲たちとは趣を異にしているが、これらカーナーとクウェズのコラボこそがこのアルバムの肝と言っていい。というのも、この3曲からは、カーナーに間接的な影響を与えたグライムとも直接的な影響を与えたUSヒップホップとも異なる、独特の風味が滲み出ているからだ。

 カーナーと同じくサウス・ロンドンを拠点に活動しているクウェズは、いまやUKを代表するバンドへと成長を遂げたジ・エックス・エックスの第1作『xx』(2009年)のデモ制作に関わったことで注目を浴びたアーティストである。その後ミカチューとのコラボやさまざまなリミックス・ワークを通して頭角を現し、2011年にはDRCミュージックに参加。翌年にはスピーチ・デベルのアルバムをプロデュースするなど、着々とその名を轟かせていった。同2012年にはEP「Meantime」を、翌2013年にはアルバム『ilp』をリリースし、ジェイムス・ブレイク以降のソウル/ポップを担うアーティストのひとりとしてその地位を確立。その後本人名義による作品の発表は停滞しているものの、プロデュース業やリミックス・ワークは相変わらず精力的におこなっている。昨秋リリースされたソランジュのアルバムにプロデューサーとして関わったことも記憶に新しい。彼とともにそのソランジュの作品に参加したサンファは、2008~09年頃にクウェズにフックアップしてもらったことによって自らの方向性に自信を持つことができたと語っているが、このようにクウェズは、本人自身が優れたアーティストであるとともに、新しい才能を発掘したりフックアップしたりする手腕にも長けているのである。そんな彼が次に手を組む相手はいったい誰なのか――その答えがロイル・カーナーのこのアルバムなのだ。

 UKで独自の発展を遂げたグライムを空気を吸うように幼い頃から享受してきたタレントが、本場USのヒップホップを憧憬をもって追いかけながら、ジェイムス・ブレイク以降のソウル/ポップ感覚と邂逅することで生み出したアルバム――それがロイル・カーナーのこのアルバムなのである。

小林拓音

Ryohu - ele-king

 つい先日MASATO & MinnesotahによるミックスCDがリリースされたばかりだというのに、KANDYTOWNの勢いは留まるところを知らないようだ。世田谷より飛び立ったこのヒップホップ・クルーから、今度はRyohu(呂布)が待望のソロEPをリリースする。タイトルは「Blur」で、発売日は10月11日(水)。それに先駆け、本日、同作収録の“All in One”のミュージック・ヴィデオが公開された。このMVはRyohuにとって初となるMVで、監督は映像作家の中村壮志が務めている。また、今回のEP発売を記念したリリース・パーティの開催も決定している。日時は12月8日(金)で、場所は渋谷WWW。MCだけでなくDJやトラック・メイキングまでこなすこの才能の新たな飛翔を見逃すな!

待望のソロ作「Blur」を10/11にリリースするRyohu(呂布)。
自身初となるMusic Video “All in One”が公開、
さらにはEP発売を記念したリリース・パーティを
12/8(金)に渋谷WWWで行うことが決定。

ラッパー/DJでありながら、近年ではSuchmosやペトロールズへの客演参加を行い、活動の幅を広げているオールラウンド・プレイヤーなアーティスト、Ryohu(呂布)。
いよいよ10月11日にリリースが迫る、初の全国流通盤EP「Blur」より、リード・トラックとなる“All in One”のミュージック・ヴィデオが公開となった。

Ryohu - All in One (Music Video)
https://youtu.be/qnIs6B1Viik

監督は、映像作家として、インスタレーション作品やファッション・フィルムを多く手がけている、中村壮志が担当。
Ryohuと共に赴いた欧州で撮影を敢行、夕暮れ時のマジックアワーに撮影を行ったワンカットのみのスタイリッシュな映像作品に仕上がっている。

また、「Blur」の発売に際して、12/8(金)に渋谷WWWにてRyohu “Blur” Release Partyを行うことが決定した。前売チケットは本日よりe+先行販売がスタート、前売購入者には特典として、Ryohuによる選曲音源を収録したExclusive Cassette Tape『No Pay No Play』をプレゼント。出演者は後日発表となる。

そして、店頭購入者への先着特典の詳細も発表となった。
リード曲“All in One”のリミックスとして盟友KANDYTOWNよりIOの客演がアナウンスされている。

■店舗共通特典(初回分のみ)
ステッカー2種(2枚1組)

■TOWER RECORDS オリジナル特典
Ryohu "All in One (Remix) feat. IO" 収録DLコード付きポストカード

【作品情報】

アーティスト:Ryohu(呂布)
タイトル:Blur(ブラー)
品番:LFIW-03
価格:¥2,000+税
POS:4943566231807

[トラックリスト]
1. The More, The Better
2. All in One
3. Shapeless
4. Desserts
5. Feelings (White Bird)
6. Shake
7. Say My Name

iTunes
https://itunes.apple.com/jp/album/id1279593525?app=itunes
Apple Music
https://itunes.apple.com/jp/album/id1279593525?app=music
TOWER RECORDS
https://tower.jp/item/4591081/Blur

【イベント情報】
Ryohu “Blur” Release Party
12/8 (Fri.) @Shibuya WWW
OPEN 18:30 / START 19:30
ADV ¥3,000 (+1D) / DOOR ¥3,600 (+1D)
※前売購入者特典として、Ryohuによる選曲音源を収録したExclusive Cassette Tape『No Pay No Play』をプレゼント

出演者:
Ryohu (Band Set)
and more

10/5(木)~ e+にて先行販売開始
https://eplus.jp/sys/T1U14P0010163P0108P002240412P0050001P006001P0030001

10/14(土)~ プレイガイド一般発売
ローソンチケット / チケットぴあ / WWW店頭

【プロフィール】
KANDYTOWN、Aun beatz、ズットズレテルズ。
いつでも、どこでも、だれとでものスタイルは崩さず“今”重要な場所に現れては音と人、出来事をつなぐラッパー。DJやトラック制作も手掛け、その楽曲にも定評がある。
2016年に初となるソロEPを完全自主制作にてリリース、同年にはKANDYTOWNとして1st ALを〈Warner Music Japan〉からリリース。
SXSW2017ではオースティンでプレイするstarRoと東京のステージをリアルタイムに繋ぐCYBER TELEPORTATION TOKYOショーケースに出演。

HP: https://www.ryohu.com/
Twitter: @ryohu_tokyo
instagram: @ryohu_tokyo

OGRE YOU ASSHOLE - ele-king

 オウガ・ユー・アスホールの『ハンドルを放す前に』、あのアルバムの変態ダンス・ミュージック“頭の体操”、そして“なくした”の2曲がヨ・ラ・テンゴのジェイムズ・マクニューによってリミックスされた。ジェイムズ・マクニューが『ハンドルを放す前に』を高く評価していることから、この話にいたったそうだ。
 7インチEP「頭の体操/なくした」は10月4日発売。完売必至なので、早めにどうぞどうぞ。

 また、これらリミックス・ヴァージョンは、アメリカでのリリースも決定している。リリース元は、コナー・オバースト(ブライト・アイズ)と彼のマネージャーのネイト・クレンケルによって設立されたニューヨークのレーベル、〈ティーム・ラヴ〉。来年、それぞれのオリジナル・ヴァージョンを収録したCDとカセットの2フォーマットでリリースされる予定。

《ライブ情報》
「tour 2017」~2017年・ワンマンツアー

OGRE YOU ASSHOLE tour2017 名古屋公演
2017.12.8 (fri) 伏見 JAMMIN'

OGRE YOU ASSHOLE tour2017 東京公演
2017.12.17 (sun) 恵比寿 LIQUIDROOM

OGRE YOU ASSHOLE tour2017 大阪公演
2017.12.22 (fri) 大阪 Shangri-La

エンドレス・ポエトリー - ele-king

 初めてルキノ・ヴィスコンティ『家族の肖像』(74)を観たときは「なんてスゴい映画なんだ」とトリハダ大感動だったにもかかわらず、2~30年してもう一度観たら、ぜんぜん意味がわからなかったことがある。とくに後半の政治談義はさっぱりで、なんで、学生時代の自分にはこれが面白かったのか、それもまたナゾであった。二度観ることで印象が変わってしまう映画はざらにあるし、間隔が空いていればそれはなおさら。ちゃんと楽しめるようになっていたり、前よりも深く没入できた時はいいけれど、たいていは前に観た時よりもヒドいと感じてしまい、好きな映画がどんどん減っていくのはけっこう笑える。こんなものに長く囚われていたのかと。意味もなく大切にしていたゴミをついに捨てた気分。
 アレハンドロ・ホドロフスキー『エル・トポ』(69)にも同じようなところがあり、最初に観た時はそれこそ圧倒された。そして、その記憶だけが増幅されていった。難解な映画の代表作のように言われる作品だし、それ以上、自分の言葉にできなかったというのはやはりダメなのだろう。これもやはり30年ぐらいしてからもう一度観たことで何かが頭の上からどいた気分になった。もう一度観ることがないとは思わないけれど、とりあえずいったんは捨て去ることができた。もう一度観るにはやはり新たなキーワードが必要である。『アモーレス・ペロス』や『散歩する惑星』が「虚無」をアップデートした時代に『エル・トポ』というのはどれだけ応えてくれる作品なのか、それを説いてくれる言葉が。『クスクス粒の秘密』や『パラダイス:愛』が束になってかかってくる現代に。

 とはいえ『エル・トポ』を観直そうと思ったのは、4年前、『リアリティのダンス』(13)にまたしても異様な感動を覚えたからだった。同作はホドロフスキーが23年ぶりに映画界に舞い戻った凱旋作で、強権的で異常なほど抑圧的だった父親(スターリン主義者)の半生を受け入れるためにどうしてもつくらざるを得なかったとしか思えない自伝作であり、世界というものがどんなところかわかり始めてきた少年の視点と実際の時代背景が絶妙に入り混じった自己セラピー映画だった(悪くいえば捏造記憶の映像化)。『リアリティのダンス』を観れば氷解することだけれど、『エル・トポ』は父親のやったことはすべて徒労でしかなく、あげくに焼身自殺させてしまうというストレートな父殺しの映画だった。それと同じようなことを今度はコミカルにやり直したのが『リアリティのダンス』で、人というものは幼少期に感じた恐怖を笑いにすることでしか乗り越えられないという学説を裏付けているようなところがある。そういうことを80歳過ぎてもやったと。しかもそれが無類に面白かった。さらには父親の人生をテロリストとして再生することでそれなりの意義も認めているところは大きな変化である。もともと『エル・トポ』でも父に捨てられた息子は再会した父に向かって「殺す」と告げたにもかかわらず実際には殺せず、自分の手で父殺しはできないという留保は付けられていた。このちょっとしたためらいを彼の人生という別なスケールの中に移し変えてみると、ホドロフスキーが創作へと向かうエネルギーはすべて父親がくれたようなものだと無意識に理解していたということにはならないだろうか。『エル・トポ』で父を殺せなかった自分という図式は『リアリティのダンス』ではイバニェス大統領を暗殺できなかった父親という関係でもう一度リピートされる。権力が強大であればあるほどカウンターの力も増すという図式を彼は温存したかったのだろう。そう、『戸川純全歌詞解説集 疾風怒濤ときどき晴れ』を読んでいただいた方には伝わったかもしれないけれど、戸川純は同じように幼少期に父親から受けた暴力を“好き好き大好き”という曲にして、早々と笑いに転化していた。ホドロフスキーよりもぜんぜん早熟である。しかも“シアー・ラバーズ”という曲では父との距離感を次のステップまで進めている。ホドロフスキーが生きている間にその境地まで辿り着くとは思えない。そんなことはないのかな。どうだろう。そう思っていたら『リアリティのダンス』の続編にあたる『エンドレス・ポエトリー』が公開されることに。青年期の始まりである。

『リアリティのダンス』と同じくシュールレアリズムというものの方法論を再認識させられる作品である。しかし、父親との確執を前面に押し出した前作と違い、貧しい暮らしを背景に芸術を求める青年像という筋書きはややありきたりに感じられた。まったく様式性の異なる演出にしてしまえばよかったのかも知れないけれど、やはりイメージを喚起する力はさすがなので観ている間は圧倒されっぱなし。モノクロとカラーを組み合わせて異なる時間軸を共存させ、ギターケースには肉を、巨大なアトリエにカーニバルを詰め込んだり。それらが洪水のように流れていくものの、彼にとっての父親と違い、目の前を流れていく風景はトラウマには発展していかない。どちらかというとホドロフスキーにも普通の時期があったんだなという感慨の方が僕には強く残ってしまった。チリからパリに移り、シュールレアリズムから神秘主義へ転じ、最初にハプニングを始めたアート・パフォーマーとも言われ、メキシコでは前衛演劇、さらにはLSD、映画、コミック、マジックショーと知れば知るほどこんな人間が本当に存在するのかと思うような才能がともすると『ゲゲゲの女房』や『苦役列車』と同じ地点に立っていたことがわかるような映画なのである。これは微妙である。いっそのこと自分とは完全にかけ離れたような存在でいて欲しかったような気もしてしまうし、共通点がないとそもそもこの人に興味を抱かなかったかも知れないし。ただし、経歴からもわかるようにホドロフスキーの作品は徹底的に身体性から発しているものなので、一見、整合性のないストーリーでも、なるほどダンスを踊るかのように意識も持って行かれてしまい、体を動かすことが嫌いではない人たちは興味の有無とは別に作品には同調しやすいのではないかと。それこそ身体性のまったく欠如したデヴィッド・リンチの映画が苦手だという人にはアピールしやすいとも(ホドロフスキーもリンチも同じように好きだという人はちょっと信用できない)。全身を真っ赤なタイツで包んだ人々の行進と同じように黒と白でドクロ模様が描かれたタイツを着た人たちの行進が混じり合い、めくるめく血と骨のイリュージョンに包み込まれたかと思うと赤と黒と白がナチスの旗に変換される刹那など政治的に支配されていくプロセスを的確にコントロールされたようで、恐怖感は倍増だった。あのシーンにはほんとに逆らえなかった。

『エンドレス・ポエトリー』では父親との確執を前面に押し出さなかったと先に書いた。しかし、エンディングはパリに向かおうとしたホドロフスキーが港で父親とケンカになるシーンである。両者ともに罵りまくる。これもホドロフスキーにしては普通すぎる。『リアリティのダンス』では暴力でしかなかったものがコミュニケイションに変化している。実際に父と息子はこの時が今生の別れとなったらしく、もしかするとリアルに再現したのかも知れないけれど、『リアリティのダンス』をつくったからこのような屈託のない描き方もできるようになったのだろう。セラピー後の表現というのは概して面白くないものである。それは仕方がない。それに第3部としてパリ編もこの後につくられるらしく、つなぎとしてはどうしても必要なシーンだったのだろう。「父親」後の世界が始めるためには。

 僕は『スター・ウォーズ』を一本も観たことがない。同シリーズはホドロフスキーがハリウッドに持ち込んだアイディアの残骸だったと明かされる『ホドロフスキーのDUNE』を観た時、僕はそのことをちょっと誇りに思った。


Ben Frost - ele-king

 スピーカーがぶっ飛んだのだという。本作のレコーディングをしている最中の出来事だったそうだ。そのエピソード自体がすでにこのアルバムのユニークさを物語っている。やはりまずはスティーヴ・アルビニのことから話し始めなければならないだろう。
 つい先日、アルビニ本人が、『In Utero』を録音する際に使用した3本のマイクをオークションに出品したことが報じられて話題になったばかりだが(YouTubeに動画も上がっている)、そのニルヴァーナのラスト・アルバムをはじめ、PJハーヴェイの『Rid Of Me』やモグワイの「My Father My King」など、彼がその独特の音の処理法――時間を空間化して喩えるならそれは、まるで音を「折って」いるかのような響きである――でオルタナティヴ・ロックの歴史に大きな痕跡を残したことは間違いない。
 ……のだけれど、どういうわけかここ数年、クラブ・ミュージックの文脈でも彼の名をよく耳にするようになった。「アルビニ・サウンド」の言い間違いをそのまま名義として採用したアルビノ・サウンドはまたべつの次元に属する例かもしれないが、パウウェルの一件は象徴的な出来事だったように思う。
 パウウェルは“Insomniac”というシングル曲でビッグ・ブラックの音源をサンプリングしているが、その許可を得るためにアルビニ本人にメールを送ったところ、「俺は君がやっていることに反対しているし、君の敵なんだ」という答えが返ってきたのだという。音源の使用自体は認めてくれたものの、アルビニは「この地球上の何よりも深くクラブ・カルチャーを憎んでいる」のだそうで、曰く「俺が好きなエレクトロニック・ミュージックは、ラディカルで他と違ったもの──ホワイト・ノイズ、クセナキス、スーサイド、クラフトワーク、それから初期のキャバレー・ヴォルテール、SPKやDAFみたいな連中だ」、云々。それと同じ思いを抱いていたパウウェルは、アルビニの返信をロンドンの看板に掲載し、自身の広告として利用する。そして、昨今のクラブ・ミュージックに対するアンチを宣言しているかのようなアルバム『Sport』をリリースしたのだった。

 そこで、ベン・フロストである。彼の音楽はパウウェルのそれとは異なるスタイルに属するものではあるが、エレクトロニックかつ実験的という点において両者は共通している(アルビニ=パウウェルが敬愛しているという上記のアーティストたちの名前は、そのままベン・フロストのプレイリストに登録されていてもまったく不自然ではない)。かれらのような野心的なエレクトロニック・サウンドのクリエイターたちが新たなサウンドを追求するにあたりアルビニの存在を必要とし始めたことは、ここ1年の重要な傾向のひとつと言っていいだろう。
 件のパウウェルの曲ではあくまでビッグ・ブラックがサンプリングされているだけだったのに対し、ベン・フロストのこの新作にはアルビニが全面的に関与している。プロダクションを手掛けているのはローレンス・イングリッシュ、ポール・コーリー、ダニエル・レジマー、ヴァルゲイル・シグルズソンの4名で、アルビニが担当しているのは例によって録音とミックスのみなのだけれど、その成果は如実にサウンドに表れ出ており、たとえば3曲め“Trauma Theory”冒頭の切り刻まれたノイズの断片や、7曲め“Ionia”の凍てつくような旋律からは、アルビニ特有の音の「折り方」を聴き取ることができる(ちなみに、アルバムのリリースに先駆けて“Ionia”のジェイリンによるリミックスが発表されており、これがまた最高にかっこいいトラックなのだけれど、それも原曲のアルビニのエンジニアリングがあってこそ成立しているように感じられる)。そういった目立ったトラック以外でも、 “Threshold Of Faith”や“Eurydice's Heel”、“All That You Love Will Be Eviscerated”など、ほとんどのトラックで異様な重量を伴った持続音が轟いており、それらすべてにアルビニの影を認めることができる。要するに、これまでベン・フロストが探究してきたふたつのベクトル、すなわちインダストリアルとドローンと、その双方にアルビニの魔法がかけられているのである。

 リリカルな要素の減退も前作『Aurora』との差違ではあるが、やはりこのアルバムの核心はその重厚な音響の呈示にこそあるだろう。アルビニによってもたらされたこの「重さ」こそ、前作『Aurora』で圧倒的な成功を収めたベン・フロストが新たに導き出した解なのである。
 ティム・ヘッカーが切り拓いたノイズ/ドローンの荒野を着々と進み行き、道中アンビエントの創始者たるブライアン・イーノと邂逅し惑星『Sólaris』を訪れるも、けっしてそこに停留することはせず、むしろスワンズの進路を視界に収めながらメタル/インダストリアルを摂取することで、『Aurora』というひとつのターミナルへと辿りついたベン・フロストは、いま、アルビニという魔法使いと出会ったことで、まだ誰も生還したことのないダンジョンへ足を踏み入れようとしている。パウウェルが「プロローグ」だとしたら、ベン・フロストのこの新作は「第1章」だ。このアルバムを契機に今後、同じ強度の音響を構築しようと試みる猛者たちが次々と後に続くことになるだろう。単に「ドローン+インダストリアル」でもなく、単に「エレクトロニック・ミュージック+スティーヴ・アルビニ」でもない、この『The Centre Cannot Hold』という「第三の道」に気づいた彼らもまた、きっと近い将来どこかのスタジオでスピーカーをぶっ飛ばすことになるに違いない。

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