ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Brian Eno ──ブライアン・イーノがレーベル〈Opal〉を再始動、あわせて00年代の2作品がリイシュー
  2. Arca - XXXXX
  3. interview with Actress UKテクノ界の奇才が語るみずからの哲学 | ──アクトレス、インタヴュー
  4. 細野晴臣 - Yours Sincerely | Haruomi Hosono
  5. Klara Lewis - Opening | クララ・ルイス
  6. R.I.P. 鷲巣功
  7. 別冊ele-king パンク50周年記念号──それは何だったのか、何でありえるのか
  8. Loraine James ——ロレイン・ジェイムズの新作、突如のリリース(しかも無料DL)
  9. interview with Cameron Picton (My New Band Believe) 元ブラック・ミディのキャメロン・ピクトン、新バンドにかける想い | ──初のアルバムを送り出したマイ・ニュー・バンド・ビリーヴ
  10. ele-king vol.37 ボーズ・オブ・カナダ大研究/サイケ&ドリーミー特集
  11. interview with caroline いま、これほどロマンティックに聞こえる音楽はほかにない | キャロライン、インタヴュー
  12. Future Sound of Jazz ——蘇る「フューチャー・ジャズ」、ドイツの〈Compost〉の人気シリーズが16作目
  13. This Is Lorelei - The Singer in My Band | ディス・イズ・ローレライ
  14. 異次元の常識──パンク/ハードコアの思想とメッセージ
  15. interview with Wendell Harrison 音楽の楽園=デトロイトから、ウェンデル・ハリソンがファラオ・サンダースとサン・ラーの思い出を語る
  16. 別冊ele-king 坂本慎太郎の世界
  17. RYUICHI SAKAMOTO + SHIRO TAKATANI AMBIENT KYOTO - TOKYO -
  18. Tohji - angel
  19. Kim Doeon - SLAPSTICK | キム・ドオン
  20. Arca - &&&&&  | アルカ、Jesse Kanda,Distroid

Home >  Reviews >  Album Reviews > The XX- XX

The XX

The XX

XX

Young Turks/Hostess

Amazon iTunes

國枝志郎 Nov 12,2009 UP
E王

 いま、UKで話題となっているティーンエイジャー(19歳だって?)4人組The XX(ザ・エックス・エックス)のデビュー・アルバムである。先行シングル(2枚)は聴いてないので、実はこれがぼくにとっての初XX体験。

 My Spaceなどから集めた情報を先に開陳しておこう。結成は2005年。ロミー・メイドリー・クロフト(ギター、ヴォーカル)とオリヴァー・シム(ベース、ヴォーカル)が、ホット・チップやフォー・テットを輩出したロンドンの高校でバンドを結成。ライヴを行うためにバリア・クレシ(キーボード)とジェイミー・スミス(トラックメイカー)が加わって現在の形に。もともと4人とも小学生からの知り合いだという。ドラマーがおらず、エンジニアとサンプル操作を担当するメンバーがいるところは現代的。

 レーベルはXL傘下の〈Young Turks〉で、今年になって2枚のシングル(「Crystalized」「Basic Space」......どちらもナイスなタイトル!)を発表。その後アルバムの制作に入るが、なんとここで当初起用されたというプロデューサーの名前を見て驚愕。ディプロ(M.I.A.など)とKwes.だって? それだけでもこのバンドにレーベルがかける情熱が感じられると思うが、しかし彼らはいち度はバンドとの作業に着手するものの、バンド側の納得いくものとならなかったというのだ。そこでこのアルバムは、バンドによるセルフ・プロデュースで完成されている。
 まずは隙間だらけの(よく言えば空間をうまく生かした)トラックが異様だが、このスペース感こそがこのバンドのカラーを決めている。リズムはサンプルっぽく、ギターとベースはあるけど一般的なクリシェっぽいフレーズはあまり感じられず、ギターにいたってはほとんど単音弾きで、むしろ効果音だ。そしてそこに、あまり抑揚のない男女のヴォーカルが絡む。

 直感的に連想されるのはヤング・マーブル・ジャイアンツとか「Faith」の頃のキュアとかで、暗くひんやりとした肌触りのサイケデリアではあるのだが、そこはたとえばディプロなどとの共同作業の経験も手伝っていることもあると思うけど、サウンドそのものにヒップホップやテクノ、ダブステップなどを存分に呼吸していることを感じさせるものがあって、彼らが現代のバンドであることを意識させる瞬間がいくつも用意されている。しかもそこには――誤解を恐れずに言えば――作り手の年齢を感じさせない成熟がある。が、さらに彼らをユニークな存在としているのはロミーとオリヴァーによる歌詞の内容かもしれない。「僕たちはスーパースターだ」(「VCR」)と嘯いてみたり、「君はさよならも言わずに去って行ったけれど/ぼくは君の瞳にそれを聞いたよ」(「Infinity」)とか「最初のデートで一線を引くけど/それを超えてもいいのよ/もう少し遅い時間になったら」(「Stars」)など――ティーンエイジャーらしい誇大妄想と甘さ! スカしたサウンドと軽く乖離しているところが、他のバンドにはない魅力のひとつなのではないかと思ったりもする。そこには80年代のサイケデリアには普遍的にあった「死」への幻想はない。しかし、だからといって手放しの陽性をひけらかすポジティヴィティとも違う。真昼間のぎらつく太陽と凍てつく深夜の月光の時の狭間にあって聴き手を篭絡する幻のような存在、次の瞬間にはおそらくまったく別の姿になってしまうような気がするけど、このアルバムの価値は変わらないだろう。

國枝志郎