「Noton」と一致するもの

Prins Thomas - ele-king

 2004年、ノルウェーの首都オスロからの、リンドストロームのダビーでスペーシーなフュージョン・ディスコは、ダンス・ミュージックを更新した。イタロ・ディスコ・リヴァイヴァルと共振し、それは〝コズミック・ディスコ〟とタグ付けされた。当時のリンドストロームの作品には、エディットやミキシングでプリンス・トーマスが関わっていたし、ふたりはコンビとして何枚かのアルバムも残している。そういえば、2014年、『It's Album Time』のヒットも記憶に新しいトッド・テリエは、プリンス・トーマスのレーベル〈Full Pupp〉のカタログ#の1番目のプロデューサーだった。
 ブームがひと段落したあとも、ノルウェーのコズミック・ディスコは相変わらず広範囲にわたっての調査を続けているようだ。作品のクオリティの高さによって人気を確保しているのだ。プリンス・トーマスの新作の評判がすこぶる良い。

 CDで2枚組、通算4枚目のアルバム『プリンシペ・デル・ノルテ』に加味されたレイヤーはアンビエント──そして例によってミニマル、プログレッシヴ・ロックめいた電子音、70年代ベルリン・スクールのクラウツ・シュルツおよびマニュエル・ゲッチング、テリー・ライリーの『A Rainbow In Curved Air』、スティーヴ・ヒレッジの『Rainbow Dome Music』(個人的にかつて熱心に聴いたものばかりなので、懐かしい)──そう、このレヴューがなかなか書き終えられないのは、聴いているとぼーっとしてきて寝てしまうからなのだ。ゆっくり進む乗り物のなかで微妙に揺られながら、意識が遠のいていく。
 (1時間経過)
 70年代風のシンセサイザーのアルペジオが規則正しく繰り返し、繰り返し、繰り返し……は、北欧特有の透明感をともなって再現される。サイケデリックの要素はあるが、過剰でも極少でもない。綺麗な渦がぐるぐるまわるような、ヒプノティックで、幻覚性を孕んだこの宇宙サウンドは、わりと誰もが入りやすく、わりと誰もが現実を忘れることができる。宇宙の4次元空間を知ることはできないが、ルーティーンから逃れることはできる。穏やかなトリップだ。
 しかしこの人は70年代のベルリン・スクールが本当に好きだ……いかん、また眠たくなってきた。CD1の最後のトラックは、90年代のアンビエント・テクノへのオマージュだ。さっさと結論を言おう。2016年になったからといってエスケーピズムが要らないわけではないのであり、目眩がするかもしれないが、二日酔いの朝聴いていいのは陶酔的なCD1のほうで、ファンキーなリズムが通ったCD2ではない(そっちはそっちで良いのだが)。

New Order - ele-king

 待ち望まれていた来日、ついに決まりました。10年ぶりの新作『ミュージック・コンプリート』をさっげて、マンチェスターの大物がやって来ます! 当日は、会場限定商品の販売(『ミュージック・コンプリート:風呂敷ボックス・セット』など)もあり。
 4月上旬には「Turri Frutti-石野卓球 Remix」の12インチがリリースされる予定。

■ニュー・オーダー来日情報
東京
5月25日(水) 新木場スタジオコースト
OPEN 18:00/ START 19:00

TICKET 
1F スタンディング¥10,000(税込/別途1ドリンク)
2F 指定席¥14,000(税込/別途1ドリンク)
  バルコニースタンディング¥14,000(税込/別途1ドリンク)

※未就学児入場不可
一般プレイガイド発売日:3/26(土)  
<問>クリエイティブマン 03-3499-6669
企画制作・招聘:クリエイティブマン 協力:Traffic

Treatment - ele-king

 『クラブ/インディ レーベル・ガイドブック』をつくっている時に、テクノやハウスの分野で多大なフォローを依頼した河村祐介が「このところロウ・ハウスからオールド・エレクトロに流れが変わってきた」という大胆かつ不敵な指摘をしていて、それにはまー、僕も一票だなと思った(18歳以上はみな一票)。DJオーヴァードーズが騒がれはじめたのももうだいぶ前だし、同じくダッチ・エレクトロのレゴヴェルトが第2のピークに突入してか らもだいぶ経っている。エレクトロがそのような単線のリヴァイヴァルであれば、細分化された趣味の一部にフィットする程度の波でしかないのかもしれないけれど、ピンクマンやセントラル・プロセッシング・ユニットといったレーベル、パウウェルやロブスター・ボーイ、そして、ベルリンからビンことジャーマン・グエンとトルコ系のウヌル・ウザー(『カシュミール』!)が新たに組んだトリートメントはベルリンでももっとも新しい傾向といわれ (詳しくは『クラブ/インディ レーベル・ガイドブック』p.144)、いわゆるヴィラロボス・タッチのミニマル・ハウスを柔軟にエレクトロに移し変えたものとなっている。DJとしての評価が鰻上りに高まっているビンはとくに、ここ数年、90年代後半にイギリスで起きたディープ・ハウス・リヴァイヴァルに関心があったそうで、ということは「リコズ・ヘリー」や『タイニー・リマインダーズ』の時期のアンディ・ウェザオールを通過しない わけがない。イージーにいえば、下品ではないエレクトロ。そう、トリートメントのデビューLP『LP』はオールド・エレクトロのさらに次を突いてきた(https://soundcloud.com/efd-tokyo/sets/treatment-untitled-02- treatment

 アルビジョア十字軍によるカタリ派の大虐殺があった南フランスで4年に渡ってカタリ派の儀式「コンヴェナンザ」をテーマとしてきたアンディ・ ウェザオールもSSWに転身していたニーナ・ウォルシュとのタッグを前年から回復したせいか(ディープ・ハウスなどを聴かせるザ・ウッドレイ・リ サーチ・ファシリティ名義『ザ・フェニックス・サバーブ』)、90年代のテイストを織り込むような作風に戻っていることがわかる。トリートメント 『LP』と『コンヴェナンザ』を交互に聴いていると、若さと老練の両サイドから同じテーマを畳み掛けられているようで、肩の力が抜けたウェザオー ル&ウォルシュに驚くほど洗練されたビン&ウザーが同じ螺旋状の異なるポイントに位置しているようで、短時間の間に時間が伸び縮みしているような 安上がりの錯覚に陥ってしまう。もちろん『コンヴェンザ』にはスペシャルズやニュー・オーダーみたいなところもあるし(ヴォーカル・アルバムで す、念のため)、トリートメントはほとんどの曲がルーマニアン・ミニマルとオーヴァーラップするなど異なる面も多い。しかし、『LP』のクロージング・トラックなんてTLS『ザ・フィフス・ミッション』の未発表曲にしか聴こえないし。

 さらに、ここ最近でもっともエレクトロの可能性を感じさせてくれたのがよくも悪くもライアン・リー・ウエストによる3作め『ハウル(=遠吠え)』 だった。前作まではオルター・イーゴ“ロッカー”を思わせるエレクトロ(クラッシュ)にしか聴こえなかったリズムが4年も経つうちにポリリズム化し、ジュークのような16分刻みのベースを取り入れたり、全体にトライバル・ビートを強調しながらもメロディはクラシカルな重厚さを持たせるな ど、なんというか、ポスト・クラシカルとエレクトロクラッシュが出会ったような奇妙なサウンドに様変わりしていたのである(僕も最初はダブステップに聴こえたほど)。とてもエレクトロが原型にあるとは思えないし、様式性を求める人にはありえない展開としか言えず、物悲しいトーンはリスナーをえり分けてしまうだろう(IDMヴァージョンのキュアーというか、メランコリック・ヴァージョンのパウウェルというか。実際、ボーズ・オブ・カ ナダとはファン層が被るっぽい)。


Nyantora / Duenn / Hair Stylistics - ele-king

 本作は中村弘二(ニャントラ)、ダエン、中原昌也(ヘアスタイリスティックス)らが、2015年2月にYCAM(山口情報芸術センター)で行ったライヴ演奏の記録である。 その音は、まるで薄明かりの中で生まれる電子・電気のモノオト/ノイズである。全31分1トラックによる電子音生成の記録。

 3人についての説明は、もはや不要だろう。元スーパーカーでナカコーの愛称で知られる中村は、ソロから別名義のアンビエント・プロジェクトまで、音楽の領域を切り開く多様な活動を続けている。作家・文筆家でもある中原は、ヘアスタイリスティックス名義で、多くのアルバムを爆撃的にリリースし、この現代日本のどうしようもない状況にノイズと乾いた笑いによる介入を実行している。そしてダエンは、日本で随一のカセット・レーベル〈ダエン〉の主宰者で、新世代を代表する(電子)音楽家でもある。彼らの競演は世界初であり、まさに歴史に残る事件ではないか。

 しかし、真に重要な点は、貴重な競演という話題性だけではない。むろん、それだけでも十分に素晴らしい出来事なのだが、なにより、この演奏/音響が耳の興味を引きつけるのだ。一聴して誰もがわかるように、ここでの3人は互いの音に敏感に、かつ大胆に反応しあいながら、ひとつの、そして新しい音響を生み出しているのである。本作において、どの音が誰の音なのか、という問いはそれほど意味をなさない(もちろん、この音が誰の音かと想像するのは楽しいのだが)。反応と生成によって、ここにしかない音響的時間が生まれていることが重要なのである。

 冒頭の暗闇から聴こえるような微かな音、声の反復、そして微かに震えるノイズ、グリッチな高音、霞んだ音色の持続音、突如鳴りはじめる透明なコードまで、3人の音は、まるで水槽の中で群れをなして動く生命たちのように敏感に、かつ優雅に反応しあっていくのだ。その一筋縄ではいかない電子音/ノイズの饗宴を聴いた者は、この演奏/競演がCDとして後世に残す価値がある作品だと確信するはずだ。そう、この『ワイカム ライブ』には、3つの才能が交錯することで生まれる濃密な音響が収められているのだ。本作の薄明かりの中に蠢くような音を聴きながら、私は不意に谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』を思い出しもした。どこか日本的ともいえる薄明かりの美意識。

 本作をリリースするのは、日本・東京で、高品質な電子音響/エクスペンタル・ミュージックをリリースしている〈サッドレック〉である。同レーベルはこれまでもトーマス・フィリップ、フランシスコ・ロペスなどの作品を送り出しており、美しく刺激的な音を求めるリスナーたちの耳を潤して(震わして)きた。統一感のあるアートワークも素晴らしく、日本における〈タッチ〉や〈ライン〉のような存在ともいえるだろう。
 その高精度な音の秘密(?)には、サウンドに対する職人的ともいえるこだわりにあるように思えてならない。それもそのはずで、本作などはマスタリング・スタジオ〈サッドラボ〉も運営する主宰ドヴァスキーによるDSDアップコンバート・マスタリングが行われており、音そのものの存在感が凄まじいのである。この種の作品にありがちな高い音域で、いたずらに刺激させるだけの音ではなく、小さな響きからノイジーな音響まで、幅広い音域の中で、音の肌理や質感があますことなく銀盤に収められている。長く聴ける音響への拘りを強く感じさせてくれるアルバムである。

 また、本作と同時リリースされるドイツのサウンド・アーティストであるサスピションブリーズコンフィデンス『エーロゾル』にも注目だ。〈パン〉以降のエクスペリメンタル/インダストリアルな状況に投下される最新鋭のダーク電子音響アルバムで(アートワークも美しい!)、ノイズ・環境音・ビート・メロディの断片など、さまざまな音のフィギュールが交錯し、心理的影響を与えるようなサウンドの情景が生成されていくのである。まるで電子音響の劇場空間。この『エーロゾル』もドヴァスキーによるマスタリングが行われており、末永く聴き込める電子音響/電子ノイズの逸品に仕上がっている。『ワイカム ライブ』とあわせての聴取を強くおすすめしたい。どちらも限定300枚である。

KiliKiliVilla - ele-king

 いま日本で猛烈な勢いで新作をリリースしている元気いっぱいのインディ・ロックのレーベル、〈キリキリヴィラ〉からマヒトゥー・ザ・ピーポー率いるGEZANの写真集が刊行されました!
 2015年の夏、アメリカのバンド、MEAN JEANSとTHE GUAYSとGEZANによる13日間の公演ツアーの模様をドキュメントしたもので、撮影は新進気鋭のカメラウーマン、池野詩織さん。バンドに密着しながらでなければ撮れない写真ばかりで、ライヴハウスをかけめぐるロック・バンドの非日常的な激しさと日常的なセンチメントが交錯する。ロックの生々しい現場の断片からは、何とも言えないエモーションが立ち上がる。こういうリアリティって、ネットや雑誌では、なかなかお目にかかれない。手作りのジンだからこそ伝わるものだ。
 限定500部なので、お早めに!

池野詩織
『BUBBLE BLUE』
kilikilivilla
https://kilikilivilla.com/

レーベルで聴く、レーベルを聴く
21世紀クラブ系レーベルの画期的ガイドブック!


アシッドにロウ・ハウス、チルウェイヴとヴェイパーウェイヴ、
アンビエント&ドローンから、
テクノ、ハウス、インディ・ロックの老舗まで、
超細分化された現代のシーンの、
いまもっとも重要な──23カ国、217レーベル、930枚を通覧する画期的ガイドブック!

デモテープを送りたい人のためにも、
わかる範囲でレーベルの住所や連絡先なども掲載、
電話帳のようにも使える!

DJノブ、行松陽介、マイク・スンダらDJに訊く「オススメのレーベル」
浅沼優子による「ベルリンにインディ・レーベルが集中する理由」などコラムも掲載。


監修:三田格/編集:松村正人
執筆:浅沼優子、飯島直樹、Yusaku Shigeyasu、高橋勇人、館脇悠介、デンシノオト、野田努、橋元優歩

John Coltrane - ele-king

 「あなたっていままで笑ったことがないの?」、1955年、最初の妻ナイーマがコルトレーンとクラブで初めて会ったとき、彼女はこうたずねている。このひとこまは、パオロ・パリーシが描くコルトレーンを象徴している。また、パリージは、痛めつけられた魂(激変する社会、薬物依存など)を振り切るように、サックスを吹く彼を描こうとする。
 この生真面目なコルトレーンこそ、故相倉久人が日本に言い伝えている、演奏が終わった楽屋でもひとりサックスを吹いているコルトレーンである。
 41歳を目前に夭折したジョン・コルトレーンの短い生涯には、じつにいろいろな出来事が凝縮されている。ブラック・パワー・ムーヴメントの渦中でもあった。なによりも、数々の伝説的なジャズメンと出会っている。パリージは、このコミックのなかで、とくマイルス・デイヴィスとの関係、そしてエリック・ドルフィーとの死別に誌面を割いている。よって増村和彦くんが好きなエルヴィン・ジョーンズへの言及がないことは、ファンにとってはフラストレーションになるかもしれない。しかし、アリス・コルトレーンとの恋愛、そして『アセンション』をクライマックスに描いた本書『コルトレーン』は、それはそれでひとつの真実を描いているように思う。

 ele-king booksからジョン・コルトレーンの生涯を描いたコミック本を刊行した。すでに世界計7カ国で出版されたコミック・ノヴェルで、書いたのはイタリア人のグラフィック・アーティスト、パオロ・パリーシ。彼はロンドンの〈ソウル・ジャズ〉レーベルのアートワークなども手掛けている。
 解説は大谷能生氏が執筆。この機会に、ジョン・コルトレーンの激動の人生を振り返ってみよう。

CLUB/INDIE LABEL GUIDE - ele-king

 いま、キミはどのレーベルが好き? 好きなレーベルを3つ挙げよ。80年代や90年代だったら、この問いに容易に答えられた。しかしいまは違う。え、いま、どんなレーベルがあったっけ? これがほとんどの人の反応だろう。
 メジャーの音楽産業が売り上げで悪戦苦闘しているいっぽうインディ・シーンといえば、ひと言で言ってカオスである。そもそもインディとは、メジャーの二軍でも売れない人たちでもなく、能動的なメジャーからの自律を意味していたもので、それがゆえの表現の自由度(音楽スタイル、そのハイブリッド、実験、ときには政治性や文学性など)があった。
 インディ・ロックなる言葉が有名無実化してからずいぶん久しいが、その文化がなくなったわけではないし、〝自律〟は途中、90年代からクラブ/ダンス・カルチャーにも受け継がれ拡大している。だかだそれも、インターネットの普及にともなってカオスとなった。
 先日、ぼくはユーリ・シュリジンのレヴューで、現代のインディ・レーベルの役割や意味のひとつを、ウィリアム・モリスのアーツ・アンド・クラフツ運動を例に出して説明した。これはもう、デジタルの魔界には足を踏み入れずに、断固として昔ながらの音楽の消費のされ方を墨守し、音楽が評価されることを信じている人たち。現代へのひとつの態度表明だ。ところが、こういうのはもちろん少数派で、多くはデジタルの波にどのように関わるかを考えている。デジタルの世界には、いろんな魑魅魍魎がいるが、たとえばヴェイパーウェイヴのように、過去の音源をスクリューさせる(ゆっくり再生させる)だけで充分に面白いじゃんというムーヴメントは、怪しげなノスタルジーをともなって、音楽を作るとはどういうことなのかという根源的な問いさえもシーンの喉元に突き付けている。
 エイフェックス・ツインにもシカゴのジュークにもクラブやダンスがあるが、OPNやジェームス・フェラーロといった連中にはそれがない。あるのはインターネットのカオスである。エイフェックス・ツインは田園を、シカゴのジュークはゲットーの熱気を想起させるが、OPNやフェラーロの音楽に見られるローファイなグリッチとそのアンビエンスは、我々の生活のなかにPCの向こう側が確実に入り込んでいることをあらためて思い知らせてもいる。
 向こう側は、たくさんのものが自由に選べるが、同時にたくさんのゴミが、これでもかと言わんばかりのゴミもある。そういうなかにも音楽やレーベルがあり、情報戦、文化闘争(というほどのものかどうかはわからないが終わらない分断化)……が繰り広げられるカオスの世界だ。ジャム・シティのファーストはそのことをじつによく表していたわけだが、ハイパーモダンなビルのレセプションで迷子にならないように、インディ・レーベルは自分のたちの足元をよく見ている。最後にもうひとつ、現代のレーベルの役目の例を挙げておくと、文化紹介ということがある。これが、じつは現代のワールド・ミュージックの拡大の土台である。目利きのレーベルがいろんな国のいろんな音楽を発掘し、紹介する。オマール・ソレイマンなどは、こうした流れから突然脚光を浴びて、欧米で評価された好例だ。
 カオスとはいえ、インディ・レーベルは現代も現代なりの文化的な功績をあげている。ただし、状況は、複数の次元において変化が起きている現代では、それらが昔のようにひとつのまとまった勢力になっているとは言い難い。つまり、それを1冊の本にまとめるのは、至難の業。
 わりとこの2年ぐらいにものに絞ってあるので、円安によって輸入盤の高騰に拍車がかかってからレコード店には行ってない人もぜひ手にとってください。また、デモテープの送り先で困っている人のために、わかる範囲でレーベルの住所も記載してあるので、電話帳のように使ってくれたら幸いです。
 DJノブ、松陽介、マイク・スンダらDJのインタヴュー、浅沼優子のベルリン・コラムなども掲載しております。

コルトレーン - ele-king

ジョン・コルトレーン──
その少年時代、軍隊時代、薬物依存、政治活動、そして恋愛と数々の伝説的レコーディング、その常軌を逸した生き方や時代、自らの背景を形成した重大な歴史の出来事を浮かび上がらせる評伝がコミックで登場。

2009年にイタリアで出版され、現在では、英、米、仏、デンマーク、ブラジル、アルゼンチンと計7カ国で出版されたスピリチュアル・ジャズ・コミック、
待望の日本語訳!

 ノース・カリフォルニアでの辛い極貧な少年時代を経て、ジョン・コルトレーンは時代でもっとも偉大なジャズ・ミュージシャンへと成長した。セッション・ミュージシャン時代からチャーリー・パーカー、ディジー・ギレスピーそしてマイルス・デイヴィスのバンドでの活動を通じて、その本物の才能と実験精神はジャズにおける新たな旋風を巻き起こした。50年代と60年代におけるジャズの中心部で、コルトレーンとそのカルテットは、もっとも革新的で表現に富んだ時代の音を創造した──今日に至るまでインスピレーションを与え続ける音楽を生み出した伝説的なパイオニアの証言の集大成がイタリア人のグラフィック・アーティストによってコミックとして刊行!
 2009年にイタリアで出版された本書は、評判に評判を呼んで、この6年間ですでに6カ国語に訳されて、7カ国にて刊行されている。

(解説:大谷能生)

この短い本は愛にあふれた賛辞に思えるのだ。
──ロブ・ヤング、『ワイアー』

このエッジの効いた実験の音楽的な流れはファンを楽しませるだろう。現存するクールな伝統に加えるべき、また別のクールな作品である。
──ティム・マーティン,『デイリー・テレグラフ』

徹頭徹尾わくわくする読書体験。愛に溢れた描写とふさわしい讃辞が込められたたグラフィック・ノベルだ。
──スペンサー・グレイディ, 『レコード・コレクター』

KING - ele-king

 3人組黒人女性コーラス・グループのキングを最初に耳にしたのは2011年のこと。「ザ・ストーリー」という3曲入りの自主EPで、その中の“ヘイ”という曲はジャイルス・ピーターソンのコンピ『ブラウンズウッド・バブラーズ』にも収録されたので、その頃からチェックしていた人も多いだろう。音楽マガジンやブログなどでも評判を呼び、ケンドリック・ラマーはミックス・テープ『セクション80』で“ヘイ”のサンプリングを正式に依頼したそうだ。そうして彼女たちの魅力の虜になったひとりにプリンスがおり、自身のライヴの前座に迎えている。ツアーではエリカ・バドゥ、ミシェル・ンデゲオチェロ、ローラ・マヴーラ、リアン・ラ・ハヴァスなどもサポートしている。そして忘れてならないのが、ロバート・グラスパー・エクスペリメントの『ブラック・レディオ』での“ムーヴ・ラヴ”への抜擢だ。このアルバムはグラミーにも輝いたので、それに伴って彼女たちも一気に脚光を集めたことだろう。

 自身の作品はまだ「ザ・ストーリー」のみにもかかわらず、彼女たちの元にはさまざまなコラボ・オファーが届き、アヴィーチー、ザ・フォーリン・エクスチェンジ、ジル・スコットの作品へ参加し、ビラル、エリック・ロバーソンとは共同で作曲を行うといった具合だ。ほかにもフェラ・クティ・トリビュートの『レッド・ホット+フェラ』へ“ゴー・スロウ”という曲を提供し、これから公開予定のマイルス・デイヴィスの伝記映画のサントラやリミックス企画への参加も伝えられる。アルバム・デビュー前に既にこれだけ話題となっているアーティストもあまり記憶にないが、「ザ・ストーリー」から5年も待たされてようやく完成したのが『ウィー・アー・キング』である(なお、「ザ・ストーリー」の3曲もエクステンディッド・ヴァージョンで収められている)。

 キングはミネアポリス生まれの双子の姉妹パリス・ストローザーとアンバー・ストローザーが、ロサンゼルス生まれのアニタ・バイアスとボストンで出会って結成された。現在はロサンゼルスをベースに活動し、パリスを中心に自らサウンド・プロダクションも行う。3人ともけっして声量があるわけではなく、正直なところ線の細い歌声だが、そのかわりジャネット・ジャクソンやアリーヤのような可憐な声質なので、繊細な表現はもってこいだろう。3人がバラバラにソロをとることはほぼなく、息のあったハーモニーを常に聴かせる。コーラス・ワークはアトモスフェリックな質感を大切にしたスウィートなもので、サウンドもスローやミディアムが中心。エレクトリックなサウンド・プロダクションを持ち込んではいるが、あくまで歌声の持つナチュラルさやアコースティックなテイストを損なわないように配慮している。伝統的なソウル・コーラス/R&Bグループ・スタイルに基づきながらも、アレンジは現代的。そんなレトロ・フューチャーなところがキングの魅力ではないだろうか。“スーパーナチュラル”がそうした1曲で、ロバート・グラスパー・エクスペリメントに彼女たちが迎えられた理由がわかるだろう。“ヘイ”にしても、1960年代的なスウィートなソウル・コーラスにソフト・サイケに通じるコズミックなサウンド・プロデュースを施し、まるでザ・シュープリームスがフリー・デザインといっしょにやったかのようなドリーミーな世界がおもしろい。

 “ザ・ライト・ワン”や“ザ・グレーテスト”はライやジ・インターネットあたりと、“ザ・ストーリー”はハウ・トゥ・ドレス・ウェルあたりと同列で聴くことができるオルタナ系R&B。ただし、アレンジをいくら現代的にしていても、核となるソウル・ミュージックからは外れておらず、彼女たちがベーシックな作曲技法を持っていることがわかる。“ラヴ・ソング”や“キャリー・オン”などを聴くと、クインシー・ジョーンズ、スティーヴィー・ワンダー、パトリース・ラッシェンなど往年のアーティストたちのエッセンスをきちんと受け継いでいることがわかるだろう。同時にスティーリー・ダンにも影響を受けたと述べているように、少しひねくれたポップ・センスやAORテイストもあり、そんなところがありきたりのR&Bではないキングの魅力のひとつとなっているのではないか。いまの時流だけで音楽をやっているアーティストではなく、継承すべき伝統はしっかりと身につけているのがキングだ。

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